説明

拭き取り材

【課題】車体等の表面に塗布されたワックス、コンパウンド類等をムラなく多量に拭き取ることができ、また、タールや虫の死骸等の強固に付着した汚れを拭き取り除去するのにも適した拭き取り材を提供する。
【解決手段】弾力性シート状材料(不織布)4の少なくとも片面に、表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織された合成繊維布帛3が積層されてなることを特徴とする拭き取り材。弾力性シート状材料4の他方の面には、面ファスナーの雌材(ループパイル布帛)5が積層されているのが好ましい態様である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、拭き取り材に関するものであり、詳細には、建物の床や自動車の車体、ガラス等の表面に塗布したワックス、コンパウンド類等、あるいはそれらの表面に固着した汚れ等を拭き取って除去するのに適した拭き取り材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば自動車の車体を磨く際に、車体に塗布したワックス等を拭き取って仕上げるための拭き取り材として、不職布等の布、セーム皮、あるいは軟質ポリウレタンフォームよりなるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−9840
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記したような従来の拭き取り材では、車体に塗布したワックス等の量により、磨きムラが起こることがあり、特に、拭き取るべきワックス等の量が多いと、ワックス等によるいわゆる目詰まりの状態となってそれ以上拭き取ることができず、一度に拭き取ることのできる量が少ないという不満があった。また、タールや虫の死骸等の強固に付着した汚れを拭き取ることが困難であった。
【0004】
本発明は、このような現状に鑑みて行われたもので、車体等の表面に塗布されたワックス、コンパウンド類等をムラなく多量に拭き取ることができ、また、タールや虫の死骸等の強固に付着した汚れを拭き取り除去するのにも適した拭き取り材を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明の要旨は次の通りである。
(1)弾力性シート状もしくは板状材料の少なくとも片面に、表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織された合成繊維布帛が積層されてなることを特徴とする拭き取り材。
(2)弾力性シート状もしくは板状材料の片面には、表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織された合成繊維布帛が積層され、他方の面には、面ファスナーの雌材が積層されてなることを特徴とする拭き取り材。
(3)合成繊維布帛は、単糸繊度0.001〜1.0dtexの異形断面繊維を含み、表面における窪みの深さが0.1〜3.0mmであり、当該窪みの個数が10〜60個/cm2であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の拭き取り材。
(4)弾力性シート状もしくは板状材料は不職布よりなるものであることを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の拭き取り材。
【発明の効果】
【0006】
本発明の拭き取り材は、ワックス、コンパウンド類をムラなく大量に拭き取ることができ、拭き取られたワックス等は表面に多数存在する窪みに保持され、拭き取り対象物に再度付着することが防がれる。また、タールや虫の死骸等、強固に付着した汚れ物質をこそげ取るようにして除去することもできる。したがって、本発明の拭き取り材は、特に自動車用に好適に使用でき、ボディーの仕上げ磨きを行う際のワックスの拭き取り、ホイール等におけるコンパウンドの拭き取り、ガラスにおけるコーティング材の拭き取り、各部に固着した汚れの拭き取り等を効率良く行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の拭き取り材は、弾力性シート状もしくは板状材料と、表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織された合成繊維布帛(以下、「凹凸布帛」と略記することがある)とを必須の構成とする。
【0008】
まず、凹凸布帛について説明する。本発明の拭き取り材において、凹凸布帛は、使用時に拭き取り対象物に塗布されているワックス、コンパウンド類(以下、これらをまとめて「ワックス等」と略記することがある)や、タール、虫の死骸等の強固に付着した汚れ物質に直接作用して拭き取り除去する部材であり、その表面の構造に重要な特徴を有している。ここで、凹凸布帛の表面とは、本発明の拭き取り材の使用時に拭き取りの対象物に接する側の面のことである。
【0009】
凹凸布帛の表面においては、多数の窪みが形成されて凹凸を呈していることが重要であるが、この凹凸は、パイル布帛でパイルを凸部と見立てたようなものではなく、製編織により実現された凹凸であり、布帛の織組織や編組織を工夫することにより、布帛表面に高低差のある形態、すなわち高い部分と低い部分とが交互に繰り返された組織とすることで実現されるものである。この低い部分が窪みというわけであり、窪みと窪みの間の領域は相対的に盛り上がったようになるので、本明細書では、この盛り上がった領域を凸部ということがある。このような凹凸を呈していることにより、凹凸布帛の表面の凸部の繊維が拭き取り対象物からワックス等や汚れ物質を掻き取り、その後それらを窪みに保持することで、優れた拭き取り性能が持続的に具備され、大量に拭き取ることができる。この点、凹凸のない平坦な表面の布帛では、せっかく拭き取ったワックス等のカスが、拭き取り対象物に再度付着してしまうおそれがある。
【0010】
また、表面が凹凸構造であるために、凹凸布帛自体に適度なクッション性が付与され、拭き取り性の向上に寄与できる。また、凸部によって強固に付着した汚れを掻き落とし易いという利点もある。
【0011】
窪みの形態としては、特に限定されるものではなく、例えば、図1に例示するようなストライプ状であってもよいが、図2に例示するような、窪み1の周囲が凸部2で囲まれたような形態、すなわち窪みの一つ一つが独立しているような形態とした場合、拭き取り対象物から除去した汚れを窪みに保持する効果が高いので好ましい。そのような独立した窪みの形状としては、特に限定されるものではないが、例えば図2に示されるような略四角形状が挙げられる。
【0012】
上記したような窪みを布帛表面に形成するための組織としては、布帛が織物の場合、例えばワッフル、ストライプ、へリンボン等の組織を採用でき、布帛が編物の場合、例えばワッフル、ストライプ、ツイル、ボーダー等の組織を採用できる。より具体的に説明すると、例えば、布帛が織物の場合には、図4に示すような組織をドビー織機で製織することにより、略四角形状の窪みを多数形成することができる。布帛が編物の場合には、図5に示すような組織を丸編機により製編することにより、同様に略四角形状の窪みを多数形成することができる。
【0013】
凹凸布帛においては、表面が上記のような凹凸を呈しておればこと足りるが、表面と裏面の両面が凹凸を呈する態様を排除するものではない。両面が凹凸を呈する態様としては、例えば図3(図2のIII−III断面図に相当する)に示すように、一方の表面の窪みの箇所が、他方の表面の凸部に対応する組織を挙げることができるが、これに限られない。
【0014】
凹凸布帛の表面の単位面積あたりの窪みの個数としては、10〜60個/cm2であることが好ましく、20〜50個/cm2であることがより好ましい。面積1cm2あたりの窪みの個数が10個に満たないような表面では、凹凸の間隔が広すぎ、逆に、60個/cm2を超えるような表面では凹凸の間隔が細かくなりすぎ、いずれも本発明の目的とする拭き取り性能が得られ難い傾向にあるので好ましくない。
【0015】
また、窪みの深さ、すなわち、凸部の頂点から窪みの底面までの高低差としては、0.1〜3.0mmが好ましい。窪みの深さが0.1mm未満では、窪みが浅すぎるため、窪みに保持できるワックス等や汚れ物質の許容量が少なくなってしまうので好ましくない。また深さが3.0mmを超えると、凸部が高すぎて、拭き取り作業の際に加わる圧力に対して不安定で倒れやすくなることにより、拭き取り性能が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0016】
凹凸布帛は、合成繊維布帛、すなわち合成繊維よりなる布帛である。凹凸布帛から毛羽が脱落すると、拭き取りムラの原因になったり、自動車の車体のように拭き取ることで綺麗に磨き上げることが求められる場合に、毛羽が付着して仕上がりが悪くなったりするので、毛羽の脱落するおそれが少ない合成繊維を用いるのである。合成繊維としては、マルチフィラメントが好ましい。
【0017】
凹凸布帛に用いる合成繊維の種類としては、特に限定されるものではなく、各種の合成繊維を採用することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリオキシエトキシベンゾエート、ポリエチレンナフタレート、シクロヘキサンジメチレンテレフタレート等のポリエステル、あるいはこれらのポリエステルに付加的部分としてさらにイソフタル酸等の酸成分、プロピレングリコール、ブチレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコールのようなジオール成分を共重合した共重合ポリエステルからなるポリエステル系繊維が挙げられる。また、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン等のポリアミドからなるポリアミド系繊維が挙げられる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなるポリオレフィン系繊維が挙げられる。また、アクリルニトリルからなるアクリル系繊維が挙げられる。さらには、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステル化合物からなる生分解性合成繊維が挙げられ、この生分解性合成繊維は、植物由来のものが多いので石油資源の節約につながり、また、土壌中や水中に長時間放置すると微生物などの作用によって炭酸ガスと水に分解され得るので、廃棄時に環境に与える負荷が小さい。
【0018】
合繊繊維のラスターについては、ブライト、セミダル、フルダルのいずれでもよく、酸化チタン等の添加物を繊維中に含有させる量は目的に応じて任意であるが、拭き取り対象物により細かいキズが問題になる場合には、添加量の少ないブライトもしくは添加しない純ブライトとするのが好ましい。
【0019】
また、合成繊維の繊度としては、特に限定されるものではなく、目的に応じて適宜設定すればよいが、いわゆる極細繊維、具体的には単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維を少なくとも一部に使用すると、当該繊維の有する優れた汚れ除去機能により、拭き取り性能を向上させることができるので好ましい。すなわち、凹凸布帛としては、単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維を含んでなることが好ましく、単糸繊度0.001〜1.0dtexの繊維を50%以上含んでなることがより好ましい。なお、本発明に好ましく使用される極細繊維の単糸繊度を0.001〜1.0dtexとするのは、0.001dtex未満では、繊維の切断による毛羽立ちや発塵が生じやすく、拭き取り材としての耐久性を低下させる傾向にあるためであり、一方、1.0dtexを超えると、極細繊維としての機能があまり期待できないことによる。
【0020】
極細繊維の種類としては、特に限定されるものではなく、上記したような合成繊維を形成する繊維形成性ポリマーから直接紡糸された極細繊維、あるいは、同じ系統又は異なる系統の2種類のポリマーを用いた2成分系複合繊維を化的学剥離、物理的剥離、溶解除去
等の方法で処理して極細化した割繊糸と称される極細繊維が使用できる。
【0021】
また、極細繊維として、三角断面、四角断面、五角断面、扁平断面、楔形断面、あるいは、アルファベットを象ったC型断面、H型断面、I型断面、W型断面等の異形断面の極細繊維を用いると、断面のエッジに相当する部分が効率的にワックス等や汚れ物質を掻き取る機能を発揮して、拭き取り性能をより向上させることができるので好ましい。
【0022】
なお、極細繊維に限らず、異形断面の繊維を用いると、丸断面のものを用いた場合に比べて表面の繊維密度を高めることができ、また、繊維断面の凹部にワックス等や汚れ物質を保持できるので拭き取り対象物に再度付着させ難いといった利点もある。
【0023】
異形断面の繊維を得る方法としては、溶融紡糸時に用いる口金の形状による方法や2種類以上のポリマーを複合紡糸して染色加工等の後加工時に分割することにより繊維断面を異形断面とする方法がある。例えば、図4に示すのは、アルカリ難溶成分11bとアルカリ易溶成分11aの2種類のポリマーを接合して複合紡糸した分割型繊維の断面の例であり、布帛の仕上げ工程においてアルカリ処理することによりアルカリ易溶成分11aを溶解して、図5に示すようなアルカリ難溶成分11bからなる、くさび型の異形断面繊維を得ることができる。
【0024】
本発明の拭き取り材は、上記したような凹凸布帛が、弾力性シート状もしくは板状材料(以下、「弾力性部材」と略記することがある)の少なくとも片面に積層されてなるものである。このとき、凹凸布帛の表面は外側に出ている必要があるので、凹凸布帛の裏面が弾力性部材の方に向くように積層されていることはいうまでもない。
【0025】
弾力性部材としては、弾力性のあるシート状もしくは板状の材料であれば、特に限定されるものではなく、例えば、軟質ウレタンフォーム、硬質ウレタンフォーム等の樹脂発泡体、天然もしくは合成ゴム、発泡ゴム、不職布、立体編物、立体繊維集合体(特開平6−322653号公報に開示されている如く、熱可塑性樹脂を溶融紡出して自然落下させ、褶曲させて得られる多数の糸条又は線条が相互に点接着してなる立体繊維集合体をいう)よりなる、シート状もしくは板状の材料が挙げられる。
【0026】
積層された弾力性部材と凹凸布帛とは、接着剤等により互いに貼り合わされ、又は縫製により互いに接合されて一体化していることが好ましい。あるいは、凹凸布帛で成形した袋状物の中に弾力性部材を充填してもよく、このものは、弾力性部材の両面に凹凸布帛が積層された態様のひとつである。
【0027】
本発明の拭き取り材では、凹凸布帛に弾力性部材が積層されていることにより、拭き取りの際にかかる力を弾力性部材が分散させ、部分的に力がかかりすぎる状態を緩和して、拭き取りムラを防ぐことができる。そのような弾力性部材の機能を十分に発揮させるために、弾力性部材の厚みとしては、0.1mm以上が好ましく、0.1〜20mmが特に好ましい。
【0028】
本発明の拭き取り材の態様として、弾力性部材の片面にのみ凹凸布帛が積層されてなるものと、弾力性部材の片面にのみ凹凸布帛が積層されてなるものが挙げられる。後者は、手に持って拭き取り作業を行う場合に適している。なお、前者、後者に限らず、弾力性部材として軟質ウレタンフォームを用いたものは、手に持って拭き取り作業を行う場合に適している。
【0029】
本発明の好ましい態様として、弾力性部材の片面に凹凸布帛が積層され、他方の面に面ファスナーの雌材が積層されてなる拭き取り材がある。このものは、拭き取り材を装着するヘッド部分に面ファスナーの雄材を備えた動力性の拭き取り用機器もしくは研摩機器に装着して使用するのに適している。そのような動力性の拭き取り用機器もしくは研摩機器としては、ヘッドの動き方により回転式、振動式、往復式のものがあるが、拭き取り材の形状としては、上記機器に合わせてディスク状、帯状、四角形状等、適宜選択すればよい。
【0030】
この好ましい態様の拭き取り材においては、拭き取り作業において面方向、垂直方向のいずれにもかなり大きな力がかかることから、弾力性部材としては、厚手の不職布が好ましい。このときの不職布の厚みとしては、0.1〜20mmが好ましく、1〜10mmがより好ましい。また、不職布の繊維充填率(不職布の見かけの体積に占める繊維の体積の割合)としては、2〜10%が好ましく、2〜6%がより好ましい。上記のような厚みと繊維充填率を具備するような不職布は、丈夫でヘタリにくいので、これを用いてなる拭き取り材は、動力性機器を用いての拭き取り作業により拭き取りムラが生じ難く、耐久性にも優れたものとなるので好ましい。
【0031】
不職布を構成する繊維の種類としては、特に限定されるものではなく、ポリオレフィン、ポリエステル等の合成繊維を適宜用いればよい。不職布としては、長繊維よりなる不職布、短繊維よりなる不職布のいずれでもよいが、ニードルパンチされたものが特に好ましい。なお、繊維の一部にバインダー繊維を用いて熱融着させると、弾力性に富んだ比較的硬質の不職布を得ることができる。
【0032】
面ファスナーの雌材としては、特に限定されるものではないが、雄材との係合の強さ、交換時等の着脱のし易さ、コスト等を総合的に考慮すれば、高さが0.3〜5.0mm程度のループパイルを1200〜3500本/cm2程度の密度で有する合成繊維布帛が好ましい。
【0033】
本発明拭き取り材は、上記したように拭き取り性能に優れたものであるが、この拭き取り性能は、次に示す方法により評価することができる。
<拭き取り性能の評価方法>
1.表面を純水洗浄した後にメタノール置換を行ったガラスプレート(厚さ1mm)を用意
し、その中央部のオパシティ値(不透明度合い)を分光光度計(マクベス社製、CE−3100)により測定する(その値をOgとする)。
2.次に、当該ガラスプレート中央部表面の半径1cmの範囲に、汚染源として20mgのグリスを塗布し、同様にオパシティ値を測定する(その値をO0とする)。
3.底面積7.07cm2(直径3.0cmの円形)の拭き取り用ジグに拭き取り材(直径3cmの円盤状に打ち抜いたもの)を装着したものにより、上記ガラスプレートの汚染源を塗布した箇所を、拭き取り荷重14.1g/m2、拭き取り速度3cm/秒(直線片道運動)の条件で拭き取るという拭き取り試験を実施する。このとき、1回拭き取るごとにオパシティ値を測定してから拭き取り材を新しいものに取り替えることとし、1つの試料につき計3回の拭き取り及びオパシティ値測定(累積拭き取り回数n回のときの測定値をOnとする)を行なう。
4.以上の測定結果から、下記数式により算出される汚れ除去率を求め、拭き取り性能の指標とする。
【0034】
【数1】

【0035】
この方法で求められる汚れ除去率は、拭き取り材が汚れを除去してゆく度合いをよく示すものであり、拭き取り性能の定量的な指標となる。この汚れ除去率としては、除去率70%以上、さらには80%以上が1回の拭き取りで達成されることが好ましい。また、除去率90%以上、さらには95%以上が3回以内の拭き取りで達成されることが好ましく、2回以内の拭き取りで達成されることがより好ましい。
【実施例】
【0036】
次に、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、拭き取り性能評価は、上記した汚れ除去率を求めることにより行った。このとき、上記拭き取り用ジグには、両面接着テープを用いて面ファスナーの雄材を貼り付け、ここに実施例で得られた拭き取り材のループパイル布帛面を係合させることにより拭き取り材を装着した。
【0037】
(実施例1)
難溶性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートを使用し、易溶性ポリマーとしてポリエチレンテレフタレートにポリエチレングリコール(分子量6000)12質量%及びスルホイソフタル酸2モル%が共重合された共重合ポリエステルを使用し、易溶性ポリマーが全体の20質量%を占めるように両ポリマーを放射状に配列した8分割の溶解割繊型複合繊維からなる仮撚加工糸(78dtex/48f)と、ポリエステル高収縮糸(33dtex/12f、100℃×30分間での沸水収縮率が25%)とのインターレース混繊糸を用意した。この混繊糸を用いて、33インチ22ゲージの丸編機(福原製機製)で、図6に示す組織にて製編することにより、編地表面に多数の窪みを有する編物を得た。
【0038】
この編物を常法により精練した後、苛性ソーダ20g/L、浴比1:30、温度98℃の条件でアルカリ割繊処理を施すことにより、編地中の上記溶解割繊型複合繊維から易溶性ポリマーを溶解除去して単糸繊度0.16dtexの極細繊維に割繊した。その後、仕上げセットを行うことにより、凹凸布帛を得た。
【0039】
別途、ポリエステル短繊維よりなる、厚み2.0mm、目付け100g/m2のニードルパンチ不織布を用意した。また、ナイロンマルチフィラメント(44dtex/12f)よりなる、面ファスナーの雌材としてのループパイル布帛を用意した。
【0040】
上記の凹凸布帛、不職布、ループパイル布帛の順番に、図7に示す如く積層すると同時にエステル系接着材を用いて張り合わせて一体化することにより、面ファスナーの雌材を備えた好ましい態様の拭き取り材を得た。
【0041】
(比較例1)
ポリエステル仮撚加工糸(84dtex/36f)を用いて、33インチ22ゲージの丸編機(福原製機製)で、図8に示す組織にて製編することにより、編地表面の平坦な編物を得た。この編物を常法により精練した後、染色加工を行ったものを、凹凸布帛の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして、比較例用の拭き取り材を得た。
【0042】
実施例及び比較例で得られた拭き取り材の特性を下記表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
表1から明らかなように、本発明の構成を備えた実施例1の拭き取り材は、拭き取り性に優れたものであった。これに対して比較例のものは、積層された布帛の表面が窪みによる凹凸を呈するものではなかったため、拭き取り性に劣るものであった。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】凹凸布帛の表面を模式的に例示する平面図である。
【図2】凹凸布帛の表面を模式的に例示する平面図である。
【図3】凹凸布帛の断面を模式的に例示する断面図である。
【図4】分割型繊維の横断面図である。
【図5】分割型繊維が分割された状態を示す横断面図である。
【図6】凹凸布帛の一例を編成した組織図である。
【図7】拭き取り材の断面図である。
【図8】表面が平坦な布帛を編成した組織図である。
【符号の説明】
【0046】
1 窪み
2 凸部
3 凹凸布帛
4 不職布
5 ループパイル布帛
11a 接合部
11b 極細繊維
F1〜F5 給糸口


【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾力性シート状もしくは板状材料の少なくとも片面に、表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織された合成繊維布帛が積層されてなることを特徴とする拭き取り材。
【請求項2】
弾力性シート状もしくは板状材料の片面には、表面に多数の窪みが形成されることにより凹凸を呈するように製編織された合成繊維布帛が積層され、他方の面には、面ファスナーの雌材が積層されてなることを特徴とする拭き取り材。
【請求項3】
合成繊維布帛は、単糸繊度0.001〜1.0dtexの異形断面繊維を含み、表面における窪みの深さが0.1〜3.0mmであり、当該窪みの個数が10〜60個/cm2であることを特徴とする請求項1又は2に記載の拭き取り材。
【請求項4】
弾力性シート状もしくは板状材料は不職布よりなるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の拭き取り材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−144055(P2007−144055A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−345836(P2005−345836)
【出願日】平成17年11月30日(2005.11.30)
【出願人】(399065497)ユニチカファイバー株式会社 (190)
【Fターム(参考)】