説明

持続性アレルギー性鼻炎の治療のためのエフレチリジンの使用

本発明は、持続性アレルギー性鼻炎の治療のためにエフレチリジンの医薬品への使用に関係する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続性アレルギー性鼻炎(persistent allergic rhinitis)の治療に有効な薬物の製造のためのエフレチリジンの使用に関する。
【0002】
エフレチリジンは、季節性及び四季に関係なく生じるアレルギー性鼻炎の治療に使用されることで知られている。
【0003】
今回、驚くべきことに、エフレチリジンは持続性アレルギー性鼻炎の治療に特に有用性をもたらす治療上の性質を有していることが発見された。
【0004】
本発明の目的は、持続性アレルギー性鼻炎の治療に関係する。
【0005】
本発明は、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩を含む医薬組成物を患者に投与することにより持続性アレルギー性鼻炎を治療するという予想外の知見に基づいている。
【0006】
本発明は、治療有効量のエフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩を患者に投与することを含む持続性アレルギー性鼻炎の治療方法を包含する。
【0007】
本発明はまた、持続性アレルギー性鼻炎の治療を意図する医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用を包含する。
【0008】
本発明は、持続性アレルギー性鼻炎の症状を弱めそして生活の質を改善することを意図する医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用に関連する。
【0009】
この明細書に使用された用語「エフレチリジン」は、2−[2−[4−[ビス(4−フルオロフェニル)メチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]酢酸のことである。
【0010】
エフレチリジン(INN:国際的一般名(International Non−proprietary Name))としても知られており、この明細書において以降エフレチリジンと呼ぶ、2−[2−[4−[ビス(4−フルオロフェニル)メチル]−1−ピペラジニル]エトキシ]酢酸は、次の式の化合物である:
【化1】

【0011】
エフレチリジンは、置換ベンズヒドリルピペラジン誘導体に関係する本出願人名義のヨーロッパ特許番号58146の一般式Iの中に包含される。
【0012】
エフレチリジンは、優れた抗ヒスタミン性の性質を有することが見出された。それはヒスタミンH−受容体拮抗物質の薬理学的クラスに属し、インビトロにおいてH−受容体に対する高い親和性及び選択性を示す。それは抗アレルギー剤及び抗ヒスタミン剤として有用である。
【0013】
この明細書に使用されている用語「結晶形」とは、エフレチリジンの偽多形相(psendo polymorphic form)又は多形相(polymorphic form)を意味し、特にヨーロッパ特許番号1034171に記述されているエフレチリジン二塩酸塩、すなわち無水エフレチリジン二塩酸塩及びエフレチリジン二塩酸塩一水和物の二つの偽多形相の結晶形のいずれか、及び国際特許出願WO 03/009849に記載されているエフレチリジン二塩酸塩の別の偽多形相を意味する。
【0014】
エフレチリジン又はその医薬として受容し得る塩の製造工程は、ヨーロッパ特許1034171、及び国際特許出願WO 97/37982及びWO 03/009849に記述されている。
【0015】
この明細書に使用されている用語「医薬として受容し得る塩」とは、医薬として受容し得る非毒性有機酸及び無機酸、例えば酢酸、クエン酸、マレイン酸、コハク酸、アスコルビン酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸及びリン酸などとの付加塩のみならず、その金属塩(例えばナトリウム又はカリウム塩)又はアンモニウム塩、アミン塩及びアミノ酸塩のことでもある。最も良い結果はエフレチリジン二塩酸塩により得られる。
【0016】
患者とは、幼児、児童、青年及び成人を意図する。
【0017】
用語「アレルギー性鼻炎」とは、鼻の粘膜がアレルゲンに暴露された後にIgEに仲介される炎症により誘発される鼻の異常症状を意図する。アレルギー性鼻炎の症状には、鼻漏(rhinorrhea)、鼻閉(nasal obsruction)、鼻の掻痒感(nasal itching)、くしゃみ(sneezing)、眼の掻痒感(ocular pruritis)が含まれる。この明細書に使用された用語「持続性アレルギー性鼻炎」とは、症状が週当たり4日間を超えそして4週間を超えて続く場合の疾患のことである。これは軽度及び中等度−重度の鼻炎に分類される。睡眠が正常で、正常な日常活動、スポーツ、レジャー、正常な仕事及び通学に障害が無く、困る症状がない場合に「軽度」といわれる。睡眠が異常で、日常活動、スポーツ、レジャーに障害があり、仕事及び通学に問題があり、困る症状がある場合に「中等度−重度」といわれる。
【0018】
エフレチリジン又はその医薬として受容し得る塩の治療有効量は、持続性アレルギー性鼻炎の治療又はその影響の緩和に使用される。投与量は本質的に特別な投与の方法、治療の目的、及び疾患の重症度に依存する。個人別の投与量及び投与方法は、その症例の個別の評価に基づいて最良のものを決定することができる。関係する因子を決定するために必要な方法は当業者には良く知られている。
【0019】
好ましい一日投与量は、エフレチリジン又はその医薬として受容し得る塩の約0.01mgから約5mg/kg体重/患者である。特に好ましい一日投与量は、約0.1から約3mg/kg体重/患者である。最良の結果は約0.1から2mg/kg体重/患者の一日用量で得られた。投与量は1日1回で、又はそれより少ない量に、例えば1日1〜4回に、好ましくは1〜3回に分割して投与することができるし、又は所与総投与量に達するように約24時間かけて投与することもできる。組成物が投与される正確な投与量は、使用するタイプ、使用方法、患者の要求により変えることができ、熟練した医師により決定される。患者に対する正確な投与量は、具体的には病気の重症度、使用される特別な製剤及び併用されることがある他の薬物を考慮して当業者により調節されることができる。
【0020】
本発明により使用される医薬組成物は、通常の方法のいずれかにより投与することができる。投与経路としては、皮内、経皮、筋肉内、経口、眼内、直腸内及び鼻腔内がある。他の投与に適する経路、例えば、上皮又は粘膜皮膚内層(mucocutaneous linings)を介する吸収のいずれかを使用することができる。
【0021】
本発明により使用される医薬組成物は即時放出型投与形態又は徐放性投与形態とすることができる。
【0022】
本発明による医薬製剤は、薬剤師により使用される通常の方法により調製することができる。製剤は他の成分又は生物学的に活性な物質、表面活性剤、担体、希釈剤及び賦形剤のような医薬として受容し得る賦形剤と共に投与することができる。
【0023】
本発明の医薬組成物は治療上不活性な通常の担体のいずれかを含む。医薬組成物は不活性な添加物並びに薬力学的に活性な添加物を含むことができる。例えば、液体組成物は、水と混合することができる滅菌溶液の形態をとることができる。さらに、通常、保存剤、安定剤、保湿剤及び乳化剤として使用される物質、並びに浸透圧を変えるための塩のような物質、緩衝剤のようなpHを変える物質、及びその他の添加物を併存させることができる。必要があれば、抗酸化剤を医薬組成物中に含めることができる。組成物に用いる医薬として受容し得る賦形剤又は担体には、生理食塩液、緩衝化食塩液、デキストロース又は水が含まれる。組成物はまた、マンノース及びマンニトールを含む糖のような特別な安定剤を含むことができる。担体物質及び希釈剤としては、有機及び無機の物質、例えば水、ゼラチン、ラクトース、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、タルク、アラビアゴム、ポリアルキレングリコールなどがある。医薬組成物の製造に使用される補助剤及び物質は全て毒性がないことが前提である。
【0024】
医薬組成物はスプレー吸入により投与することができる。スプレー吸入用の通常の医薬組成物はいずれも使用することができる。その他の好ましい投与方法はエアロゾルによるものである。
【0025】
本発明の医薬組成物は局所適用用に製剤化することもできる。局所適用用の組成物は水溶液、ローション又はゲル、油性溶液又は懸濁液又は油性若しくは乳剤軟膏の形態にすることができる。
【0026】
本発明の医薬組成物は経皮又は筋肉内治療系による除放持続放出性製剤又は経口除放に適する製剤のために使用することもできる。
【0027】
本発明による医薬組成物は経口的に又は直腸内に投与することもできる。点鼻、エアロゾル又は軟膏若しくはクリームの形態でも投与することができる。経口投与に使用できる医薬組成物は、固体であっても液体であってもよく、例えばコートしない又はコートした錠剤、丸剤、トローチ、ゼラチンカプセル、溶液、シロップ、などの形態であり得る。直腸経路による投与には、本発明の化合物を含む組成物は一般的に坐剤の形態で使用される。
【0028】
錠剤、カプセル、ペレット、滴剤、点眼剤、坐剤などのような医薬製剤は、通常の薬学的方法により調製される。本発明の化合物は、固体又は液体の、毒性がなく、医薬として受容し得る担体と混合され、場合によっては分散剤、崩壊剤、安定剤などと混合される。適切であれば、保存剤、甘味剤、着色剤などを加えることも可能である。
【0029】
好ましくは、本発明の医薬組成物は、フィルムコーティングした錠剤、カプセル、トローチ、及びシロップのような経口液体製剤として、通常の経口投与用の形態で投与される。
【0030】
本発明による組成物の一例として、次のフィルムコーティング錠剤の製剤が好ましい:エフレチリジン二塩酸塩、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラクトース、クロスカルメロース及び二酸化珪素。
【0031】
本発明による組成物の一例として、次のシロップ製剤が好ましい:エフレチリジン二塩酸塩、メチル及びプロピルパラベン、サッカリン及び精製水。
【0032】
本発明の医薬組成物は、持続性アレルギー性鼻炎を治療するために有用である。これらの組成物は持続性アレルギー性鼻炎の影響を緩和することができる。
【0033】
本発明のその他の利点は、生活の質を改善し、持続性アレルギー性鼻炎の全ての症状を改善する能力である。
【0034】
本発明の方法は、持続性アレルギー性鼻炎に罹患しやすい患者に使用するのに特に適すると考えられる。
【0035】
本発明のその他の利点は、エフレチリジン二塩酸塩は4週間以上もの間持続性鼻炎に対し効果があることである。
【0036】
エフレチリジン二塩酸塩は生活の質に対して4週間以上効果があることが示されている。
【0037】
エフレチリジン二塩酸塩は鼻充血に効果があることが示されている。
【0038】
本発明は、以下の実施例を参照してさらに説明される。
【実施例】
【0039】
プラセボと比較したときに、約6ヶ月間のエフレチリジン治療が、持続性アレルギー性鼻炎に罹患した成人患者の生活の質及び臨床症状を改善することができるか否かをintention−to−treat (ITT母集団)において確立するために、エフレチリジン二塩酸塩の臨床効果に関する試験が計画される。
【0040】
有効性の二次パラメーターは、治療期間の差、症状の差、生活の質アンケートの差、アレルギー性鼻炎に関連していると疑われる共存症の発生及び医療経済学的変数等である。エフレチリジンによる長期間治療の安全性も評価される。
【0041】
この試験の標的母集団は持続性アレルギー性鼻炎に罹患した18歳以上の成人からなる[WHO Initiative on Allergic Rhinitis and its Impact on Asthma(ARIA),2000,pages S147−S149]。登録されるためには、被検者は選抜期間中に充分な鼻炎症状を示す必要がある。最初の診察の前にENT(耳鼻咽喉)又は眼の感染症のある患者は除外する。
【0042】
試験は、エフレチリジン二塩酸塩のプロスペクティブ、無作為、二重盲検、平行群及びプラセボ比較試験である。
【0043】
臨床症状の重症度は、各日に0から3までのスコアによりそれぞれ数値化するT5SS(くしゃみ、鼻漏、鼻の掻痒感、眼の掻痒感、鼻の充血)により評価する。生活の質に関係する健康に対する影響は、鼻結膜炎生活の質アンケート(RQLQ,SF36)を使用して測定する(E.JUNIPER and G.H.GUYATT,Development and testing of a new measure of health status for clinical trials in rhinoconjunctivitis,Clinical and Experimental Allergy 1991;21:77−83;E.JUNIPER,Measuring Health Related Quality of Life in rhinitis,J.Allergy Clin.Immunol.1997;99:S742−9)。
【0044】
試験の治療は約6ヶ月間継続する。
【0045】
有効性の主なエンドポイントは最初の4週間におけるT5SSの減少である。
【0046】
有効性の二次的パラメーターは、試験の種々の時点における平均T5SS,RQLQ及びSF−36アンケート(Medical Outcomes Survey Short Form 36)、及び6ヶ月間の応急治療の発生率と期間である。
【0047】
有効性の探索パラメーターは、試験の異なる時点における各個人の鼻炎スコア、各RQLQドメイン及びSF−36アンケートの各スケール、4週間及び6ヵ月後の総合評価スケール、アレルギー性鼻炎に関係すると疑われる合併症の発生率、及び6ヶ月間の直接及び間接の医療費である。
【0048】
診察ごとに、日記の記入(T5SS,RQLQ,SF−36,間接医療費パラメーター、併用薬、外来患者診察及び副作用)を確認し、臨床記録用紙(Clinical Record Form)に転記し、直接医療費パラメーターを記録する。患者は、バイタルサイン測定を含めて、健康診断を受ける。試験の開始時及び終了時に、女性については妊娠検査を含めて、安全性臨床検査も受け、診察4及び7回目に総合評価スケールを記入する。
【0049】
有害事象は、患者により日記帳に記入され、各診察日に調査員と討議する。重篤な副作用は直ちに報告されなければならない。
【0050】
目的は、エフレチリジンが投与されている間持続性アレルギー性鼻炎を治療することができ、そしてまた短期間の試験において認められた単なる症状改善以上に患者の日常活動を変えることができることを立証することである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
持続性アレルギー性鼻炎の治療を意図した医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用。
【請求項2】
持続性アレルギー性鼻炎の症状の軽減及び生活の質の改善を意図した医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用。
【請求項3】
鼻漏の治療を意図した医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用。
【請求項4】
鼻閉の治療を意図した医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用。
【請求項5】
鼻の掻痒感の治療を意図した医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用。
【請求項6】
くしゃみの治療を意図した医薬品の製造のためにエフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用。
【請求項7】
眼の掻痒感の治療を意図した医薬品の製造のための、エフレチリジン、その結晶形又はその医薬として受容し得る塩の使用。
【請求項8】
塩がエフレチリジン二塩酸塩である請求項1から請求項7のいずれか一つに記載の使用。

【公表番号】特表2007−500197(P2007−500197A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529911(P2006−529911)
【出願日】平成16年5月24日(2004.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005572
【国際公開番号】WO2004/105760
【国際公開日】平成16年12月9日(2004.12.9)
【出願人】(504000041)ユセベ ファルシム ソシエテ アノニム (9)
【Fターム(参考)】