説明

持続性ウイルス感染を治療するための併用療法

本発明は、持続性ウイルス感染を治療するための併用療法に関する。特に、そのような感染を除去するためのワクチンおよびIL−10またはIL−10受容体(IL−10R)アンタゴニストの組み合わせが提供される。一実施形態において、本発明は、慢性または持続性ウイルス感染を治療する方法を提供し、この方法は、慢性または持続性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンの有効量を免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストと組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを含む。1つの実施形態では、ウイルスに対するワクチンと免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストとの組み合わせは、慢性または持続性ウイルス感染の治療において相乗作用を示す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、持続性ウイルス感染を治療するための併用療法を提供する。特に、そのような感染をより効率的に除去するためのワクチンとIL−10またはIL−10受容体(IL−10R)アンタゴニストの組み合わせが提供される。
【背景技術】
【0002】
ウイルス感染は、感染を除去するために極めて重要である強固なT細胞応答の引き金を引く。しかし、一部のウイルス感染に応答して、抗ウイルス性CD4およびCD8 T細胞はウイルス抗原に対して不応答性となり、物理的に除去されるかまたは非機能性状態もしくは「枯渇」状態で存続する。この枯渇状態は、抗ウイルス性および免疫刺激性サイトカインを産生する、ウイルス感染細胞を溶解する、または増殖する能力の欠如によって特徴づけられる(たとえば、非特許文献1;非特許文献2;非特許文献3;および非特許文献4参照)。
【0003】
持続的なT細胞応答が、ヒトにおけるC型肝炎ウイルス(HCV)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染ならびにマウスにおけるリンパ球脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)感染の除去および制御と強く相関するという事実によって明らかにされたように、T細胞機能の多パラメータ喪失は持続を直接促進する(たとえば、Barber(2006)Nature 439:682−687;Brooksら(2006)Nat.Med.12:1301−1309;Ejmaesら(2006)J.Exp.Med.203:2461−2471;Oldstoneら(1986)Nature 321:239−243;Thimmeら(2001)J.Exp.Med.194:1395−1405;GandhiとWalker(2002)Ann.Rev.Med.53:149−172;およびShoukryら(2004)Ann.Rev.Microbiol.58:391−424参照)。現在まで、抗ウイルスT細胞活性を報告し、持続性ウイルス感染を制御するワクチンはごくわずかしか成功を収めていない(たとえば、Autranら(2004)Science 305:205−208参照)。
【0004】
最近、遺伝子欠損および抗体遮断試験に基づき、IL−10が、ウイルス感染を除去するかまたは持続させるかを決定する単一支配的因子として同定された(たとえば、Brooksら(2006)前出;およびEjmaesら(2006)前出参照)。確立された持続性感染の間およびT細胞枯渇後のIL−10の抗体遮断は、ウイルスの除去促進を導くT細胞機能を回復させた。持続性ウイルス感染の間に、プログラム細胞死−1:プログラム細胞死−リガンド1(PD−1:PD−L1)の相互作用はT細胞機能をさらに制限し、PD−L1の抗体遮断はT細胞活性を刺激することができる(たとえば、Barberら(2005)前出参照)。提案された1つの方策は、持続性ウイルス感染を除去するためのIL−10およびPD−1経路の二重拮抗作用である(たとえば、Marinicとvon Herrath(2008)Trends Immunol.23:116−124参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Zajacら、J.Exp.Med.(1998)188:2205−2213
【非特許文献2】Gallimoreら、J.Exp.Med.(1998)187:1383−1393
【非特許文献3】Wherryら、J.Virol.(2003)77:4911−4927
【非特許文献4】Brooksら、J.Clin.Invest.(2006)116:1675−1685
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
IL−10の発現上昇は、ヒトにおける多くの持続性ウイルス感染(たとえばHIV、HCV、HBV)において認められ、T細胞応答性の低下およびウイルス複製の制御の失敗と直接相関する。それゆえ、持続性ウイルス感染においてIL−10活性をよりよく制御する必要がある。本発明は、そのような感染を治療するためにIL−10アンタゴニストを使用する併用療法を提供することによってこの必要性に応えるものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一部には、ワクチンと組み合わせたIL−10活性の中和が、抗ウイルス性CD4およびCD8 T細胞応答を有意に刺激し、ウイルス複製を制御するように相乗作用的に組み合わさるという驚くべきデータに基づく。さらに、IL−10およびPD−1/PD−L1の両方の中和も、持続性ウイルス感染モデルにおけるウイルス負荷の減少において相乗作用を示した。
【0008】
本発明は、慢性または持続性ウイルス感染を治療する方法であって、慢性または持続性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンの有効量を免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストと組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。1つの実施形態では、ウイルスに対するワクチンと免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストとの組み合わせは、慢性または持続性ウイルス感染の治療において相乗作用を示す。さらなる実施形態では、免疫抑制性サイトカインはIL−10である。加えて、免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストは、可溶性IL−10受容体(IL−10R)ポリペプチドを含む。ある実施形態では、可溶性IL−10Rポリペプチドは、抗体分子のFc部分を含む、異種ポリペプチドを含有するか、またはペグ化されている。もう1つの実施形態では、免疫抑制性サイトカインは、中和IL−10もしくはIL−10受容体(IL−10R)抗体またはその抗体フラグメントである。中和IL−10またはIL−10R抗体は、ヒト化抗体または完全なヒト抗体を含む、モノクローナル抗体であり得る。さらなる実施形態では、抗体フラグメントは、Fab、Fab2、Fvおよび一本鎖抗体フラグメントからなる群より選択される。本発明は、慢性または持続性ウイルス感染が、HBV、HCV、HIV、EBVおよびLCMVからなる群より選択されることを企図する。1つの実施形態では、ワクチンはDNAワクチンである。選択的実施形態では、免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストは、ウイルスに対するワクチンの前に投与される。
【0009】
本発明は、慢性または持続性ウイルス感染の治療における使用のための医薬組成物であって、(a)持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに(b)免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストおよび薬学的に受容可能な担体を含有する医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明は、(a)持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに(b)免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストおよび薬学的に受容可能な担体を含むキットを包含する。
【0011】
本発明は、慢性または持続性ウイルス感染を治療する方法であって、持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンの有効量を中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントと組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを含む方法を提供する。特に、ウイルスに対するワクチンと中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントの組み合わせは、慢性または持続性ウイルス感染の治療において相乗作用を示す。1つの実施形態では、中和IL−10またはIL−10R抗体は、ヒト化抗体または完全なヒト抗体を含む、モノクローナル抗体である。1つの実施形態では、ワクチンはDNAワクチンである。中和IL−10またはIL−10R抗体と組み合わせたワクチンの投与は、ワクチンまたは抗体治療単独と比較した場合、ウイルス特異的CD8 T細胞の2倍の増加またはIFN−γを産生するウイルス特異的T細胞の5倍の増加を生じさせ得る。併用治療は、治療前レベルと比較してウイルス力価を24分の1に減少させ得る。ある実施形態では、中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントは、ウイルスに対するワクチンの前に投与される。
【0012】
本発明は、慢性または持続性ウイルス感染の治療における使用のための医薬組成物であって、(a)持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに(b)中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントおよび薬学的に受容可能な担体を含有する医薬組成物を包含する。
【0013】
また、(a)持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに(b)中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントおよび薬学的に受容可能な担体を含むキットも、本発明によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】図1a〜1dは、IL−10Rの遮断が治療的ワクチン接種による抗ウイルスT細胞応答の有効な刺激を可能にすることを示す。図1aは、抗IL−10R抗体治療とDNAワクチン接種の概略図を示す。LCMV−Cl 13感染マウスを、未処置のままにする、DNAワクチン(LVMV−GP全体をコードする)で処置する、抗IL−10R遮断抗体で処置する、またはDNAワクチンプラス抗IL−10R抗体で共処置する、のいずれかを実施した。抗IL−10R処置は、感染後25日目に開始し、2〜3日ごとに2週間継続した。DNAワクチン接種は感染後29日目と34日目に実施した。次に、感染後39日目にT細胞応答を分析した。図1bは、エクスビボでのペプチド刺激と細胞内染色によって定量したサイトカイン産生を示す。フロープロットは、IFN−γ産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の頻度を示す。データは各群につき4匹のマウスを代表する。図1cは、各々の処置レジメン後のIFN−γ産生LCMV−GP33〜41、GP276〜286およびNP396〜404特異的CD8 T細胞の数を示す。円は個々のマウスを示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05、**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。図1dは、アイソタイプ処置群(1に設定する)と比較した各処置群におけるTNF−α産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の数の平均倍数増加を示し、4〜6匹のマウスを含む3回の実験の平均±標準偏差(SD)である。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05。**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。
【図1B】図1a〜1dは、IL−10Rの遮断が治療的ワクチン接種による抗ウイルスT細胞応答の有効な刺激を可能にすることを示す。図1aは、抗IL−10R抗体治療とDNAワクチン接種の概略図を示す。LCMV−Cl 13感染マウスを、未処置のままにする、DNAワクチン(LVMV−GP全体をコードする)で処置する、抗IL−10R遮断抗体で処置する、またはDNAワクチンプラス抗IL−10R抗体で共処置する、のいずれかを実施した。抗IL−10R処置は、感染後25日目に開始し、2〜3日ごとに2週間継続した。DNAワクチン接種は感染後29日目と34日目に実施した。次に、感染後39日目にT細胞応答を分析した。図1bは、エクスビボでのペプチド刺激と細胞内染色によって定量したサイトカイン産生を示す。フロープロットは、IFN−γ産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の頻度を示す。データは各群につき4匹のマウスを代表する。図1cは、各々の処置レジメン後のIFN−γ産生LCMV−GP33〜41、GP276〜286およびNP396〜404特異的CD8 T細胞の数を示す。円は個々のマウスを示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05、**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。図1dは、アイソタイプ処置群(1に設定する)と比較した各処置群におけるTNF−α産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の数の平均倍数増加を示し、4〜6匹のマウスを含む3回の実験の平均±標準偏差(SD)である。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05。**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。
【図1C】図1a〜1dは、IL−10Rの遮断が治療的ワクチン接種による抗ウイルスT細胞応答の有効な刺激を可能にすることを示す。図1aは、抗IL−10R抗体治療とDNAワクチン接種の概略図を示す。LCMV−Cl 13感染マウスを、未処置のままにする、DNAワクチン(LVMV−GP全体をコードする)で処置する、抗IL−10R遮断抗体で処置する、またはDNAワクチンプラス抗IL−10R抗体で共処置する、のいずれかを実施した。抗IL−10R処置は、感染後25日目に開始し、2〜3日ごとに2週間継続した。DNAワクチン接種は感染後29日目と34日目に実施した。次に、感染後39日目にT細胞応答を分析した。図1bは、エクスビボでのペプチド刺激と細胞内染色によって定量したサイトカイン産生を示す。フロープロットは、IFN−γ産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の頻度を示す。データは各群につき4匹のマウスを代表する。図1cは、各々の処置レジメン後のIFN−γ産生LCMV−GP33〜41、GP276〜286およびNP396〜404特異的CD8 T細胞の数を示す。円は個々のマウスを示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05、**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。図1dは、アイソタイプ処置群(1に設定する)と比較した各処置群におけるTNF−α産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の数の平均倍数増加を示し、4〜6匹のマウスを含む3回の実験の平均±標準偏差(SD)である。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05。**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。
【図1D】図1a〜1dは、IL−10Rの遮断が治療的ワクチン接種による抗ウイルスT細胞応答の有効な刺激を可能にすることを示す。図1aは、抗IL−10R抗体治療とDNAワクチン接種の概略図を示す。LCMV−Cl 13感染マウスを、未処置のままにする、DNAワクチン(LVMV−GP全体をコードする)で処置する、抗IL−10R遮断抗体で処置する、またはDNAワクチンプラス抗IL−10R抗体で共処置する、のいずれかを実施した。抗IL−10R処置は、感染後25日目に開始し、2〜3日ごとに2週間継続した。DNAワクチン接種は感染後29日目と34日目に実施した。次に、感染後39日目にT細胞応答を分析した。図1bは、エクスビボでのペプチド刺激と細胞内染色によって定量したサイトカイン産生を示す。フロープロットは、IFN−γ産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の頻度を示す。データは各群につき4匹のマウスを代表する。図1cは、各々の処置レジメン後のIFN−γ産生LCMV−GP33〜41、GP276〜286およびNP396〜404特異的CD8 T細胞の数を示す。円は個々のマウスを示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05、**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。図1dは、アイソタイプ処置群(1に設定する)と比較した各処置群におけるTNF−α産生LCMV−GP33〜41特異的CD8 T細胞の数の平均倍数増加を示し、4〜6匹のマウスを含む3回の実験の平均±標準偏差(SD)である。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05。**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。
【図2A】図2a〜2bは、CD4 T細胞応答がIL−10R遮断とワクチン接種によって増強されることを示す。図2aは、LCMV−Cl 13感染マウスを図1で述べたように処置し、分析したことを示す。サイトカイン産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の頻度をエクスビボでのペプチド刺激と細胞内染色によって定量した。フロープロットは、各々の処置(感染後39日目)後のIFN−γ産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の頻度を示す。図2bは、図2Bで述べたように定量したIFN−γ産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の数を示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05、**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。図2bは、アイソタイプ処置と比較した各処置レジメン後のIL−2産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の数の平均倍数増加を示す。個々のバーは、各群につき4〜6匹のマウスを含む3回の実験の平均値±SDを示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05。**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。
【図2B】図2a〜2bは、CD4 T細胞応答がIL−10R遮断とワクチン接種によって増強されることを示す。図2aは、LCMV−Cl 13感染マウスを図1で述べたように処置し、分析したことを示す。サイトカイン産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の頻度をエクスビボでのペプチド刺激と細胞内染色によって定量した。フロープロットは、各々の処置(感染後39日目)後のIFN−γ産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の頻度を示す。図2bは、図2Bで述べたように定量したIFN−γ産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の数を示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05、**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。図2bは、アイソタイプ処置と比較した各処置レジメン後のIL−2産生LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の数の平均倍数増加を示す。個々のバーは、各群につき4〜6匹のマウスを含む3回の実験の平均値±SDを示す。:未処置およびDNAワクチン接種単独と比較してp<0.05。**:他のすべての処置群と比較してp<0.05。
【図3A】図3aおよび3bは、ワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断がT細胞機能を回復することを示す。感染の前に、マウスにLCMV特異的TcR tg(図3a)CD8+(P14)および(図3b)CD4+(SMARTA)T細胞を接種し、その後LCMV−Cl 13に感染させた。マウスを、図1aで述べたようにアイソタイプ対照抗体、抗IL−10R遮断抗体および/またはDNAワクチンで処置した。棒グラフは、感染後39日目のP14およびSMARTA細胞の数の倍数増加を示す。個々のバーは、各群につき5匹のマウスの平均±SDを示す。:アイソタイプおよびDNAワクチン単独と比較して平均数の有意の(p<0.05)増加。**:他のすべての条件と比較して有意の(p<0.05)増加。
【図3B】図3aおよび3bは、ワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断がT細胞機能を回復することを示す。感染の前に、マウスにLCMV特異的TcR tg(図3a)CD8+(P14)および(図3b)CD4+(SMARTA)T細胞を接種し、その後LCMV−Cl 13に感染させた。マウスを、図1aで述べたようにアイソタイプ対照抗体、抗IL−10R遮断抗体および/またはDNAワクチンで処置した。棒グラフは、感染後39日目のP14およびSMARTA細胞の数の倍数増加を示す。個々のバーは、各群につき5匹のマウスの平均±SDを示す。:アイソタイプおよびDNAワクチン単独と比較して平均数の有意の(p<0.05)増加。**:他のすべての条件と比較して有意の(p<0.05)増加。
【図4】図4a〜4bは、免疫抑制環境を軽減し、T細胞応答を刺激することによる持続性ウイルス感染の制御の促進を示す。図4aは、LCMV−Cl 13感染マウスを図1aで述べたように感染させ、処置したことを示す。棒グラフは、各々の処置レジメンに応答した血清ウイルス力価の倍数減少を示す。倍数減少は、感染後25日目(すなわち処置前)の各マウスにおけるウイルス力価を感染後33日目(すなわち処置期間中)のウイルス力価で除することによって決定した。バーは、各群につき3匹のマウスの平均±SDを示し、各群につき3〜6匹のマウスに関する3回の別々の実験を代表する。図4bは、感染後25日目(灰色の円)および40日目(白色の円)(すべての治療処置の完了後)に血清ウイルス力価を定量したことを示す。各々の円は1匹のマウスを表し、グラフは3回の実験からのデータを含む。破線はアッセイの検出のレベル(200PFU/ml)を示す。は、未処置およびDNAワクチン接種単独と比較して感染後40日目のウイルス力価の有意の(p<0.05)低下を示す。**は、他のすべての処置群と比較して40日目にウイルス力価が有意に(p<0.05)低下したことを示す。各々の群の上部の数字は、感染後25日目から40日目までの間のウイルス力価の平均倍数低下を示す。
【図5A】図5Aは、LCMV Cl 13感染後40日目および以下の処置:a)アイソタイプ対照抗体;b)抗IL−10R遮断抗体単独;c)抗PD−L1遮断抗体単独;または4)抗IL−10R抗体と抗PD−L1遮断抗体による共処置後の、脾臓におけるThy1.1+ tgウイルス特異的CD8 T細胞(P14細胞)の頻度を示す。処置は感染後25日目に開始し、3日ごとに合計5回の処置を実施した。右側のグラフは、各々の処置レジメン後のP14細胞の数を示す。図5Aおよび5Bからのデータは、各処置群につき4〜5匹のマウスおよび2回の実験を代表する。
【図5B】図5Bは、LCMV Cl 13感染後40日目の脾臓におけるIFN−γおよびTNF−α産生P14細胞のパーセンテージを示す。棒グラフは、アイソタイプ処置(1に設定する)と比較した各処置群におけるTNF−α産生P14細胞の数の平均倍数増加±SD(;p<0.05)を示す。図5Aおよび5Bからのデータは、各処置群につき4〜5匹のマウスおよび2回の実験を代表する。
【図6】図6Aは、IL−10R/PD−L1二重遮断後の持続性ウイルス感染の除去を示す。LCMV Cl 13マウスを指示されている抗体で処置し、処置前の25日目(暗い円)、および処置停止後3日目に当たる40日目(白い円)に血清ウイルス力価を定量した。各々の円は各群内の1匹のマウスを表し、グラフは3回の実験からのデータを含む。破線はアッセイの検出のレベル(200プラーク形成単位(PFU)/ml血清)を示す。各群の上部の数字は、25日目から40日目までの間のウイルス力価の平均倍数低下を示す(は、アイソタイプ処置と比較したウイルス力価の低下(p<0.05)である;**は、他のすべての処置群と比較したウイルス力価の低下(p、0.05)である)。図6Bは、前述した処置レジメン後の、LCMV Cl 13感染後40日目の肝ウイルス力価を示す。
【図7】図7は、指示されている組織中に存在するLCMV−GP33〜41およびLCMV−GP276〜286四量体陽性CD8+ T細胞の総数の定量的測定を示す。(−p<0.05;**−p<0.01;および***−p<0.001)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付の特許請求の範囲を含む、本明細書で使用される場合、「a」、「an」および「the」のような語の単数形態は、文脈上明らかに異なる指示が為されない限り、対応する複数の言及を包含する。
【0016】
本明細書で引用されるすべての参考文献は、各々個々の公表文献、特許出願または特許が、参照により本明細書に組み込まれることが具体的且つ個別に指示されているのと同じように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0017】
I.定義
分子の「活性」は、リガンドまたは受容体への分子の結合、触媒活性、遺伝子発現を刺激する能力、抗原活性、他の分子の活性の調節等を表し得るまたは意味し得る。分子の「活性」はまた、細胞間相互作用、たとえば接着を調節するもしくは維持するうえでの活性、または細胞の構造、たとえば細胞膜もしくは細胞骨格を維持するうえでの活性を意味し得る。「活性」はまた、比活性、たとえば[触媒活性]/[mgタンパク質]または[免疫学的活性]/[mgタンパク質]等を意味し得る。
【0018】
本明細書で使用される「慢性ウイルス感染」または「持続性ウイルス感染」は、致死的であることが判明せずに、長期間にわたって、通常は数週間、数ヶ月間または数年間、宿主に感染し、宿主の細胞内で増殖することができる、ヒトまたは他の動物のウイルス感染を意味する。慢性感染を生じさせる、そして本発明に従って治療し得るウイルスの中には、そのすべてが重大な臨床疾患を生じさせ得る、ヒトパピローマウイルス(HPV)、単純ヘルペスおよび他のヘルペスウイルス、B型およびC型肝炎のウイルス(HBVおよびHCV)ならびに他の肝炎ウイルス、麻疹ウイルス、ならびにHIVがある。長期的な感染は、最終的に、患者にとって致死的であり得る疾患、たとえばC型肝炎ウイルスの場合は肝癌の誘発を導き得る。本発明に従って治療し得る他の慢性ウイルス感染は、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、ならびに腫瘍に関連し得るもののような他のウイルス、または動物の場合は、様々な動物ウイルス疾患、たとえばペット動物または農業において重要な農業動物のウイルス疾患を含む。
【0019】
「治療有効量」は、患者にとっての利益を示すのに十分な量で投与されるIL−10アンタゴニストおよびワクチンを意味する。そのような利益は、少なくとも1つの症状の少なくとも改善であり得る。投与される実際の量および投与速度と時間経過は、治療される対象の性質と重症度に依存する。
【0020】
「ワクチン」は、レシピエントにおいて防御免疫を惹起するために使用できる組成物(タンパク質またはベクター;後者はまた、大まかに「DNAワクチン」とも称され得るが、RNAベクターも使用できる)を指す。一部の個体は強固なもしくは防御免疫応答を開始することができないことがあり、または一部の場合、いかなる免疫応答も開始できないことがあり得るので、有効であるために、本発明のワクチンは集団の一部において免疫を惹起できることに留意すべきである。この不可能性は、個体の遺伝的背景から、または免疫不全状態(後天性もしくは先天性)または免疫抑制(たとえば臓器拒絶反応を予防するもしくは自己免疫状態を抑制するための免疫抑制薬による治療、または免疫媒介性免疫抑制)のために生じ得る。効果は動物モデルにおいて立証することができる。
【0021】
「免疫療法」は、病原体特異的免疫応答の活性化に基づく治療レジメンを指す。ワクチンは免疫療法の1つの形態であり得る。
【0022】
「保護する」は、対象においてウイルス感染を、たとえば持続性または慢性ウイルス感染を、適宜に、予防するまたは治療することまたはその両方を意味するために本明細書で使用される。それゆえ、別の作用物質、たとえばIL−10アンタゴニストと組み合わせたワクチンの予防的または治療的投与は、そのような持続性ウイルス感染から受容対象を保護することができる。ワクチンまたは免疫療法の治療的投与は、たとえば、ウイルス関連新生物のような疾患または障害を治療するために、感染に関連する病因からレシピエントを保護することができ、ウイルス関連新生物は、ホジキンリンパ腫、地方病性バーキットリンパ腫、鼻咽喉癌、T細胞リンパ腫、胃癌、子宮平滑筋肉腫、および肝細胞癌を含む。
【0023】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチドワクチン」という用語は、原因因子、たとえばウイルスからの免疫原性ポリペプチドおよび、一般に、アジュバントを含有するワクチンを指す。「アジュバント」という用語は、抗原に対する免疫応答を増強する化合物または混合物を指す。アジュバントは、抗原を緩やかに放出する組織貯留所としておよびまた免疫応答を非特異的に増強するリンパ系活性化剤としての機能を果たすことができる(Hoodら、Immunology,Second Ed.,1984,Benjamin/Cummings:Menlo Park,Calif.,p.384)。しばしば、アジュバントなしでの、抗原単独による一次抗原投与では、体液性または細胞性免疫応答を惹起することができない。アジュバントは、完全フロイントアジュバント、不完全フロイントアジュバント、サポニン、水酸化アルミニウムのような無機質ゲル、リゾレシチンのような表面活性物質、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、オイルまたは炭化水素エマルション、ならびにBCG(bacille Calmette−Guerin)およびCorynebacterium parvumのような潜在的に有用なヒトアジュバントを含むが、これらに限定されない。好ましい合成アジュバントの一例はQS−21である。あるいは、または加えて、本明細書で述べるような免疫刺激タンパク質が、アジュバントとしてまたはワクチンに対する免疫応答を高めるために提供され得る。好ましくは、アジュバントは薬学的に受容可能である。
【0024】
「DNAワクチン」という用語は、組換えベクターによって送達されるワクチンを指すために本明細書で使用される。本明細書で使用される代替的な、そしてより説明的な用語は、「ベクターワクチン」(レトロウイルスおよびレンチウイルスなどの一部の潜在的ベクターはRNAウイルスであり、また一部の場合はDNAではなく非ウイルスRNAを細胞に送達することができるため)である。一般に、ベクターはインビボで投与されるが、樹状細胞のような適切な抗原提示細胞のエクスビボでの形質導入も、形質導入細胞のインビボでの投与を伴って、企図される。以下で述べるベクター系は、本発明の免疫原性ポリペプチドの発現のためのベクターの送達にとって理想的である。
【0025】
本明細書で使用される「ヒトにおける発現のためのベクター」は、ベクターが、少なくとも、ヒト細胞において有効であるプロモーターを含むこと、および好ましくは、ベクターがヒトにおいて安全且つ有効であることを意味する。そのようなベクターは、たとえば、免疫を発現することに関与しない外来遺伝子を含まない。ベクターがウイルスベクターである場合は、複製および強固な感染の発症を可能にする領域を含まず、インビボでの複製能力の発現を回避するように遺伝子操作される。そのようなベクターは、好ましくはヒトにおける使用のために安全である;より好ましい実施形態では、ベクターは、臨床試験またはヒトにおける使用に関して政府の規制機関(食品医薬品局のような)によって承認されている。
【0026】
「免疫原性ポリペプチド」という用語は、免疫原性であり、動物に投与された場合防御免疫応答を惹起するウイルスタンパク質またはその部分を指す。それゆえ、ウイルス免疫防御抗原は全長タンパク質である必要はない。防御免疫応答は一般に、CD4および/またはCD8 T細胞レベルでの細胞性免疫を含む。
【0027】
「免疫原性」という用語は、ポリペプチドが体液性または細胞性免疫応答、好ましくはその両方を惹起できることを意味する。免疫原性ポリペプチドはまた、抗原性である。分子は、それが免疫グロブリン(抗体)またはT細胞抗原受容体のような免疫系の抗原認識分子と特異的に相互作用することができる場合、「抗原性」である。抗原性ポリペプチドは、少なくとも約5個、好ましくは少なくとも約10個のアミノ酸のエピトープを含む。本明細書ではエピトープとも称される、ポリペプチドの抗原性部分は、抗体もしくはT細胞受容体認識に対して免疫優性である部分であり得るか、または免疫のために抗原性部分を担体ポリペプチドに結合することによって分子に対する抗体を作製するために使用される部分であり得る。抗原性である分子は、それ自体が免疫原性である必要はない、すなわち、担体なしで免疫応答を惹起できる必要はない。
【0028】
「突然変異体」および「突然変異」という用語は、遺伝物質、たとえばDNAの何らかの検出可能な変化、またはそのような変化の何らかの過程、機構もしくは結果を意味する。これは、遺伝子の構造(たとえばDNA配列)が変化する遺伝子突然変異、何らかの突然変異過程から生じる何らかの遺伝子またはDNA、および改変された遺伝子またはDNA配列によって発現される発現産物(たとえばタンパク質)を包含する。「変異体」という用語も、改変されたまたは変化した遺伝子、DNA配列、酵素、細胞等、すなわちあらゆる種類の突然変異体を指示するために使用され得る。
【0029】
「治療する」という用語は、対象において疾患の少なくとも1つの症状を軽減するまたは緩和することを意味するために本明細書で使用される。
【0030】
本明細書で使用される「治癒する」または「治癒」という用語は、当技術分野で認められている基準に従ってウイルス感染に関連する疾患、障害または状態の症状を実質的に除去することを指す。本明細書で使用される「治癒された」という用語は、疾患、障害または状態に関連する症状が実質的に存在しない状態を指す。
【0031】
本出願において使用される「対象」という用語は、鳥類および哺乳動物のような、免疫系を有する動物を意味する。哺乳動物は、イヌ、ネコ、げっ歯動物、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジおよび霊長動物を含む。鳥類は、家禽、鳴禽、猛禽等を含む。本発明は、それゆえ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウサギ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、類人猿、サル、ニワトリ、シチメンチョウ、カナリア、ワシ、タカ、フクロウ、および特にヒトにおけるウイルス感染に関連する疾患、障害または状態を治療するために有用である。それゆえ、本発明は、獣医学において、たとえばペット動物、家畜、動物園の実験動物、および野生動物を治療するために使用できる。本発明は、ヒト医学適用のために特に望ましい。
【0032】
「併用療法」という用語は、ウイルスに対するワクチンおよび免疫抑制性サイトカインに対するアンタゴニストの有効量の投与を含む、ウイルス感染、好ましくは慢性または持続性ウイルス感染、たとえばHBV、HCV、HIV、EBV等を治療するための療法を指す。また、IL−10とPD−1/PD−L1アンタゴニストの組み合わせも包含される。本発明の併用療法は、1またはそれ以上の抗ウイルス薬を含み得る。加えて、本発明の併用療法は、持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスへの起こり得る急性暴露後に、これまで感染していない個体において予防的手段として使用することができる。化合物のそのような予防的使用の例としては、母親から乳児へのウイルス伝播の予防および、たとえば作業者がウイルス含有血液製剤に暴露される医療環境における事故のような、伝播の可能性が存在する他の状況が挙げられ得るが、これらに限定されない。さらに、本発明の併用療法は、これまでは感染していない個体であるが、高危険度個体での全身療法または局所殺菌薬として暴露の危険度が高い個体における予防的手段として使用できる。
【0033】
本明細書で使用される「相乗作用」は、2つの治療実体を組み合わせた作用がそれらの個別での作用の総計よりも大きい現象である。
【0034】
「相乗作用的」という用語は、何らかの2またはそれ以上の単一薬剤の相加作用よりも有効である組み合わせを指す。「相乗効果」は、ウイルス感染を治療するまたは予防するために単一療法において抗ウイルス薬のより低い量または用量を使用できることを指す。より低い用量は、典型的には効果の減少を伴わずに毒性の低下をもたらす。加えて、相乗効果は、効果を改善する、たとえば抗ウイルス活性を改善することができるか、または抗ウイルス薬に対する何らかのウイルス耐性を回避するまたは程度を低減することができる。ワクチンまたはその薬学的に受容可能な組成物と免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストまたはその薬学的に受容可能な組成物との間の相乗効果は、たとえば以下で述べるように、従来の抗ウイルスアッセイから決定することができる。アッセイの結果は、併用指数(Combination Index)を得るためのChouとTalalayの組み合わせ法(ChouとTalalay,(1984)Adv.Enzyme Regul.22:27−55)および“Dose Effect Analysis with Microcomputers”ソフトウエア(ChouとChou,1987,Software and Manual.p19−64.Elsevier Biosoft,Cambridge,UK)を使用して解析することができる。1未満の併用指数値は相乗作用を示し、1より大きい併用指数値は拮抗作用を指示し、1に等しい併用指数値は相加作用を示す。これらのアッセイの結果はまた、PritchardとShipman(PritchardとShipman(1990)Antiviral Research 14:181−206)の方法を使用して解析することもできる。
【0035】
「抗ウイルス活性」という用語は、非感染細胞へのウイルス伝播の阻害、ウイルスの複製の阻害、ウイルスが宿主内に定着することの防止、またはウイルス感染によって引き起こされる疾患の症状を改善することもしくは緩和することを指す。これらの作用は、ウイルス負荷の低減または死亡率および/もしくは罹病率の低下によって証明することができ、それらのアッセイを以下で説明する。抗ウイルス物質または抗ウイルス薬は抗ウイルス活性を有し、単独でまたは多剤併用療法の一部として持続性または慢性ウイルス感染を治療するために有用である。
【0036】
本明細書で使用されるまたは結合体化されていない形態の「インターロイキン−10」すなわち「IL−10」は、ホモ二量体を形成するように非共有結合的に連結された2つのサブユニットを含むタンパク質である。「IL−10受容体1」、「IL−10R」または「IL−10R1」は、IL−10に対する特異性を付与するIL−10受容体複合体の1つのサブユニットを指す。本明細書で使用される場合、特に指示のない限り、「インターロイキン−10」、「IL−10」およびIL−10Rは、ヒトもしくはマウスIL−10またはIL−10Rを表し得る。IL−10抗体は、たとえば米国特許第6,239,260号において説明されており;ヒト化抗IL−10抗体は、たとえば米国特許公開公報第2005/0101770号において説明されており;IL−10Rポリペプチドは、たとえば米国特許第5,985,828号において説明されており;そしてIL−10R抗体は、たとえば米国特許第5,863,796号において説明されており、それらのすべてが参照により本明細書に組み込まれる。
【0037】
「PD−1」は、プログラム細胞死受容体1を指す。B7−H1またはB7−4としても知られる「PD−L1」は、PD−1の結合パートナーの1つである。本明細書で使用される場合、PD−1およびPD−L1はヒトまたはマウスタンパク質を指す。ヒトPD−L1ポリペプチド配列は、たとえばGenBankアクセッション番号AAF25807で提供され、そのマウスポリペプチド配列は、たとえばGenBankアクセッション番号AAG31810で提供される。ヒトPD−1ポリペプチド配列は、たとえばGenBankアクセッション番号NP_005009で提供され、マウスPD−1ポリペプチド配列は、たとえばGenBankアクセッション番号AAI20603で提供される。
【0038】
本明細書で使用される「可溶性受容体」は、受容体タンパク質の細胞外ドメインである。
【0039】
「融合タンパク質」は、少なくとも2つの異種タンパク質をコードする少なくとも2つの異種遺伝子のヌクレオチド配列を含む核酸分子によって発現される雑種タンパク質である。たとえば、融合タンパク質は、抗体のFc領域と融合した、IL−10R1ポリペプチドの少なくとも一部、たとえば細胞外ドメインを含み得る。
【0040】
「ペグ化」または「PEG」タンパク質は、結合が安定であるように、リンカーを介してIL−10タンパク質の1またはそれ以上のアミノ酸残基に共有結合的に連結された1またはそれ以上のポリエチレングリコール分子を有するタンパク質またはポリペプチドである。「モノペグ化」および「モノPEG」という用語は、1個のポリエチレングリコール分子が、リンカーを介して多量体タンパク質の1つのサブユニット上の1個のアミノ酸残基に共有結合的に連結されていることを意味する。PEG部分の平均分子量は、好ましくは約5,000〜約50,000ダルトンである。タンパク質またはポリペプチドへのPEG結合の方法または部位は重要ではないが、好ましくは、ペグ化は生物活性分子の活性を変化させないかまたはごくわずかだけ変化させる。好ましくは、半減期の上昇は生物活性の低下を上回る。たとえば、ペグ化IL−10RまたはPEG−IL−10Rは、少なくとも1つのPEG分子に共有結合的に連結されたIL−10Rの細胞外ドメインを含み得る。
【0041】
「抗体」という用語は最も広い意味で使用され、具体的にはモノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(たとえば二重特異性抗体)、およびリガンド特異的結合ドメインを保持するかまたは前記ドメインを含むように修飾されている限り、抗体フラグメントを包含する。本明細書における抗体は、対象とする「抗原」を標的する。好ましくは、抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患または障害に罹患している哺乳動物への抗体の投与は、その哺乳動物において治療上の利益をもたらし得る。しかし、非ポリペプチド抗原(腫瘍関連糖脂質抗原など;米国特許第5,091,178号参照)に対する抗体も企図される。抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通分子(たとえば受容体)または増殖因子のようなリガンドであり得る。例示的な抗原としては、それらのポリペプチドが含まれる。
【0042】
「抗体フラグメント」は、完全長抗体の部分、一般にその抗原結合領域または可変領域を含む。抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab’、F(ab’)およびFvフラグメント;一本鎖抗体分子;二重特異性抗体;直鎖状抗体;および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が含まれる。
【0043】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団、すなわち少量存在し得る天然に起こり得る突然変異を除き、集団を構成する個々の抗体が同一である集団から得られる抗体を指す。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、単一抗原部位を標的する。さらに、典型的には種々の抗原決定基(エピトープ)を標的する種々の抗体を含有する従来の(ポリクローナル)抗体製剤と異なり、各々のモノクローナル抗体は抗原上の単一決定基を標的する。「モノクローナル」という修飾語は、実質的に均質な抗体の集団から得られるという抗体の性質を示し、何らかの特定の方法による抗体の作製を必要とすると解釈されるべきではない。たとえば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohlerら、Nature 256:495(1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法によって作製され得るか、または組換えDNA法(たとえば米国特許第4,816,567号参照)によって作製され得る。「モノクローナル抗体」はまた、たとえばClacksonら(1991)Nature 352:624−628およびMarksら(1991)J.Mol.Biol.222:581−597に述べられている手法を用いてファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
【0044】
本明細書におけるモノクローナル抗体は、特に、重鎖および/または軽鎖の一部が特定種に由来するまたは特定抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同であり、一方鎖の残りの部分は別の種に由来するまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体内の対応する配列と同一または相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、ならびに、それらが所望生物活性を示す限り、そのような抗体のフラグメントを包含する(米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851−6855)。
【0045】
本明細書で使用される場合の「超可変領域」という用語は、抗原結合の原因となる抗体のアミノ酸残基を指す。超可変領域は、「相補性決定領域」または「CDR」からのアミノ酸残基(すなわち軽鎖可変ドメイン内の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン内の残基31〜35(H1)、50〜65(H2)および95〜102(H3);Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))および/または「超可変ループ」からのアミノ酸残基(すなわち軽鎖可変ドメイン内の残基26〜32(L1)、50〜52(L2)および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン内の残基26〜32(H1)、53〜55(H2)および96〜101(H3);ChothiaとLesk(1987)J.Mol.Biol.196:901−917)を含む。「フレームワーク」または「FR」残基は、本明細書で定義される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
【0046】
非ヒト(たとえばマウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンに由来する最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの場合、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域残基が、所望の特異性、親和性および能力を有するマウス、ラット、ウサギまたは非ヒト霊長動物などの非ヒト種(ドナー抗体)に由来する超可変領域残基によって置換されているヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合は、ヒト免疫グロブリンのFvフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基によって置換されている。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体では認められない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体の性能をさらに改善するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全部を含み、超可変ループの全部または実質的に全部が非ヒト免疫グロブリンのものに対応し、FR領域の全部または実質的に全部がヒト免疫グロブリン配列のものである。ヒト化抗体はまた、場合により免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンのものを含む。さらなる詳細については、Jonesら(1986)Nature 321:522−525;Riechmannら(1988)Nature 332:323−329;およびPresta(1992)Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596参照。1つの実施形態では、ヒト化IL−10抗体は米国特許公開公報第2005/0101770号に記載されているとおりである。
【0047】
II.概要
本発明は、ワクチンと免疫抑制性サイトカインに対するアンタゴニストの組み合わせで慢性または持続性ウイルス感染を治療する方法を提供する。
【0048】
免疫抑制環境が持続性ウイルス感染の間のワクチン接種に対するT細胞応答性にどのような影響を及ぼすかを測定するため、以下で述べるように、C57BL/6マウスをリンパ球脈絡髄膜炎ウイルスクローン13(LCMV Cl 13)に感染させた。LCMV−Cl 13による感染は、抗ウイルス免疫を抑制し、ウイルスの持続を導くIL−10の高レベル発現を速やかに誘導する(たとえば、Brooksら(2006)前出;Ejmaesら(2006)前出;およびAhmedら(1984)J.Exp.Med.160:521−540参照)。IL−10が治療的ワクチン接種に対する応答性を阻害するかどうかを測定するため、LCMV−Cl 13持続性感染マウスを、1)アイソタイプ対照抗体単独で処置した;2)アイソタイプ対照抗体で処置し、LCMVの全長糖タンパク質(GP)配列をコードするDNAプラスミドでワクチン接種した;3)抗IL−10R遮断抗体で処置した;または4)抗IL−10R遮断抗体プラスDNAワクチン接種の組み合わせで処置した。抗体処置は、Cl 13感染後25日目に開始し、3日ごとに5〜6回の処置を実施した。DNAワクチン接種は、ウイルス感染後29日目と34日目(すなわち抗IL−10R治療の開始後4日目と9日目)に実施した。処置レジメンを図1aに示す。
【0049】
治療的ワクチン接種が持続性感染の間のT細胞応答を刺激できないことと一致して(たとえば、Wherryら(2005)J.Virol.79:8960−8968参照)、DNAワクチン接種単独では、未処置動物と比較してウイルス特異的CD8 T細胞の頻度または数に影響を及ぼさなかった(図1bおよびc)。他方で、IL−10R遮断は単独で、複数のLCMVエピトープに対するIFN−γ産生CD8 T細胞の頻度と数を増加させ(図1bおよびc)、IL−10が持続性感染の間を通じてT細胞活性を抑制することおよびIL−10活性の遮断単独でT細胞免疫をブーストできることを示した。重要な点として、DNAワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断は、DNAワクチンまたは抗IL−10R治療単独と比較してT細胞応答を著しく増強した(図1c)。抗IL−10RプラスDNAワクチンの2剤併用療法は、IFN−γ産生ウイルス特異的CD8 T細胞の頻度の2倍増加および細胞数の5倍以上の増加を誘導した。CD8 T細胞免疫の同様の増強がMHCクラスI四量体染色によって認められた。IL−10R遮断単独で、アイソタイプ処置と比較してLCMV核タンパク質(NP)395〜404特異的CD8 T細胞の数を増加させたが、DNAワクチン(LCMV−GPエピトープだけを含み、LCMV−NPエピトープを含まない)プラス抗IL−10R治療は、LCMV−NP395〜404特異的CD8 T細胞応答を増強せず、T細胞刺激がDNAワクチンによるものであり、免疫活性化上昇の二次作用に起因するのではないことを明らかにした(図1c)。LCMV−GPをコードしない親対照DNAプラスミドによるワクチン接種は、IL−10R遮断と組み合わせた場合もT細胞応答をさらに増強することはできず、T細胞活性の上昇が外来DNAの導入から生じたのではないことを示した。
【0050】
IL−10R遮断とそれに続くワクチン接種は、機能性ウイルス特異的CD8 T細胞の数を有意に増加させた(図1d)。ワクチン接種単独ではウイルス特異的CD8 T細胞機能を増強せず、IL−10R遮断は単独でTNF−α産生ウイルス特異的CD8 T細胞の数を約2倍だけ増加させたが、ワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断は、TNF−αを産生する機能性CD8 T細胞数の4倍増加を刺激した(図1d)。前記処置は、TNF−α産生CD8 T細胞の頻度を実質的に増加させなかった。むしろ、機能性のサイトカイン産生CD8 T細胞の絶対数の増加だけが認められた(図1d)。
【0051】
IL−10R遮断単独では、CD8 T細胞に関して認められたほど著明ではないCD4 T細胞への作用を及ぼし、IFN−γ産生CD4 T細胞数の小さいが有意の(p<0.05)1.5〜2倍増加を誘導した(図2aおよびb)。他方で、IL−10R遮断プラスDNAワクチン療法は、IFN−γ産生CD4 T細胞の頻度および特に数(アイソタイプ処置と比較して6倍の増加)を有意に増加させた(図2aおよびb)。LCMV−GP61〜80特異的CD4 T細胞の数の同様の増加が、MHCクラスII四量体を使用して認められた(データは示していない)。さらに、DNAワクチンまたは抗IL−10R治療のいずれか単独では、IL−2産生CD4 T細胞の数に控えめな影響を及ぼしたが、併用治療はこれらの機能性細胞の数の4倍増加を刺激した(図2b)。これらのデータは、その他の点では無効のワクチン接種が、IL−10媒介性免疫抑制が中和された場合、持続性ウイルス感染において強固なT細胞応答を刺激し得ることを明らかにする。
【0052】
T細胞機能上昇が、それまで枯渇していたT細胞の再活性化によるのかまたはナイーブT細胞前駆体の新たなプライミングからであるのかを調べるため、Thy1.1+T細胞受容体(TcR)トランスジェニック(tg)CD4 T細胞(SMARTA細胞;LCMV−GP61〜80ペプチドに特異的)およびThy1.1+ TcRトランスジェニックCD8 T細胞(P14細胞;LCMV−GP33〜41ペプチドに特異的)をThy1.2+ C57BL/8マウスに共移入(co−transfer)し、その後マウスをLCMV−Cl 13に感染させた。共移入は、感染の初期から存在し、Thy1.1対Thy1.2発現に基づいて内因性(すなわち宿主由来)抗ウイルスT細胞から区別することができる、LCMV特異的CD4およびCD8 T細胞の分析を可能にした。それらが内因性CD4(図2)およびCD8(図1)T細胞対応物に対しても同様に応答することを確実にするため、これらのtg T細胞の生理的な数を移入した(たとえば、Brooksら(2006)J Clin Invest 116:1675−1685参照)。
【0053】
内因性T細胞応答(図1および2)と同様に、DNAワクチン単独はウイルス特異的tg CD8またはCD4 T細胞の数を増加させなかったが、IL−10R遮断はtg CD8およびCD4 T細胞の数のそれぞれ2倍および4倍増加を刺激した(図3)。DNAワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断は、アイソタイプ対照またはDNAワクチン単独で処置したマウスと比較してtgウイルス特異的CD8 T細胞の数の劇的な6倍増加を誘導し、IL−10R遮断単独と比較した場合は〜3倍増加を誘導した(図3a)。
【0054】
同様に、ワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断は、アイソタイプ対照またはワクチン単独と比較してウイルス特異的tg CD4 T細胞の数の11倍増加、およびIL−10R遮断治療単独と比較して4倍増加を刺激した(図3b)。それらの内因性対応物と同じように、併用療法は機能性ウイルス特異的T細胞(すなわちTNF−α産生tg CD8 T細胞およびIL−2産生tg CD4 T細胞)の数も増加させた。それゆえ、IL−10R遮断は、それまで枯渇していたT細胞がワクチン接種に応答することを可能にする。
【0055】
IL−10R遮断およびワクチン接種後の機能性ウイルス特異的T細胞の数の増加が感染の制御を増強したかどうかを測定するため、処置後(すなわち感染後および、それゆえ、3回の抗IL−10R抗体処置後および/または単回DNAワクチン接種後33日目)にウイルス力価を定量し、治療前レベルと比較した。T細胞応答を刺激できなかったことと一致して、DNAワクチン接種単独はウイルス複製の制御に影響を及ぼさなかった(図4a)。これに対し、IL−10R遮断はウイルス力価の15分の1の低下を誘導した(図4a)。
【0056】
ワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断は、ウイルス力価の24分の1の低下を誘導し、併用療法から生じるT細胞応答の増強がIL−10R遮断単独よりも良好なウイルス複製抑制能力を備えることを示した。共処置後のウイルス除去の促進がわずかに1回のDNAワクチン接種後に認められたことに留意すべきであり、免疫抑制シグナルが中和された場合T細胞が速やかに応答性になることを示唆した。処置後、ウイルス力価は感染後40日間を通じてアイソタイプおよびDNAワクチン接種マウスにおけるのと同様であったが、ウイルス複製は抗IL−10R処置マウスにおいて有意に低下し(p<0.05)、治療の開始から終了までに17分の1に低下した(図4b)。重要な点として、抗IL−10RおよびDNAワクチン共処置マウスにおけるウイルス複製の初期制御促進は、持続性ウイルス感染を制御し、除去する能力の増強をもたらし、最終的には治療の終了後ウイルス複製の49分の1の低下を生じさせた(図4b)。
【0057】
IL−10R遮断単独またはDNAワクチン接種と組み合わせたIL−10R遮断後にウイルス感染を除去する一部の動物の能力には相違があった(図4b)。一部の動物は治療後完全にウイルス感染を除去したが、別の同様に処置した動物はまだウイルス複製を保持していた。図4bは多数の実験からの統合データを示すことおよび治療前ウイルス力価が実験によって異なっていたことに留意すべきである。しかし、一般により高い治療前ウイルス力価を有する動物は治療後のより高いレベルのウイルス複製に対応し、結果は実験内で有意であった。治療後のウイルス除去の反応速度の相違は、マウスの性別または年齢によるものではなかった。重要な点として、ウイルス複製はIL−10R遮断後不在のままであり(感染後>150日間)、処置マウスはその後の再感染から保護された(データは示していない)。興味深いことに、3日ごとの抗IL−10R抗体処置は、持続性ウイルス感染の制御を導くT細胞応答をブーストしたが、週に1回の処置は、所要用量の2倍の抗体による処置を含めて、無効であった。それゆえ、抗体治療の時期は治療効果のための重要な決定因子である。対照DNAワクチン(すなわちLCMV GPをコードしない)と組み合わせたIL−10R遮断は、抗IL−10R処置単独と比較してウイルス力価に影響を及ぼさず、やはりDNAワクチンの作用増強はLCMV特異的細胞の刺激に起因することを明らかにした。それゆえ、IL−10媒介性免疫抑制を中和することは、持続性ウイルス感染を制御する高い能力を備えた強固なウイルス特異的T細胞応答の誘導を促進する。
【0058】
ウイルス媒介性免疫抑制経路に拮抗する併用療法は、抗ウイルスT細胞活性の回復とブースティング、ならびに単剤と比較した場合の相乗作用を示した。1つのそのような併用療法は、前述したLCMVマウスにおいて持続性ウイルス感染を除去するための、IL−10Rに対する抗体とPD−L1に対する抗体の使用であった。マウスモデルにおけるPD−L1およびIL−10に対する遮断抗体の投与は、それまで枯渇していたウイルス特異的T細胞のレベルを上昇させ(図5a参照)、INF−γ/TNF−α産生細胞のレベルも上昇させた(図5b参照)。
【0059】
また、IL−10R/PD−L1の二重遮断も、持続性ウイルス複製を制御する能力の増強を導くと判定された。IL−10およびPD−L1抗体を単独でまたは組み合わせて投与する2週間の治療レジメン後、併用療法を受けたマウスは、単剤治療および対照動物と比較してウイルス除去の有意の上昇を示した(たとえば図6a参照)。ウイルス力価も、アイソタイプ対照処置動物と比較して抗体処置動物の肝臓において低下した(図6b参照)。IL−10とPD−L1の拮抗作用の組み合わせは、各々の処置単独よりも有効に、枯渇したCD8+ T細胞の回復を誘導すると思われる(たとえば図7参照)。
【0060】
III.発現ベクター
多種多様な宿主/発現ベクターの組み合わせ(すなわち発現系)が、本発明の免疫原性ポリペプチドを発現するときに使用され得る。有用な発現ベクターは、たとえば、染色体、非染色体および合成DNA配列のセグメントで構成され得る。適切なベクターとしては、SV40の誘導体および公知の細菌プラスミド、たとえば大腸菌プラスミドcol E1、pCR1、pBR322、SV40およびpMal−C2、pET、pGEX(Smithら、Gene 67:31−40,1988)、pMB9およびそれらの誘導体、RP4のようなプラスミド;Strep.gardoniiのようなグラム陽性ベクター;ファージDNAS、たとえばファージlの数多くの誘導体、たとえばNM989、および他のファージDNA、たとえばM13および糸状一本鎖ファージDNA;2mプラスミドまたはその誘導体のような酵母プラスミド;昆虫細胞または哺乳動物細胞において有用なベクターのような、真核細胞において有用なベクター;ファージDNAまたは他の発現制御配列を使用するように改変されたプラスミドのような、プラスミドとファージDNAの組み合わせに由来するベクター等が含まれる。
【0061】
タンパク質またはポリペプチドの発現は、当技術分野で公知の何らかのプロモーター/エンハンサーエレメントによって制御され得るが、これらの調節エレメントは発現のために選択される宿主において機能性でなければならない。遺伝子発現を制御するために使用し得るプロモーターは、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター(米国特許第5,385,839号および同第5,168,062号)、SV40初期プロモーター領域(BenoistとChambon(1981)Nature 290:304−310)、ラウス肉腫ウイルスの3’ロングターミナルリピートに含まれるプロモーター(Yamamotoら(1980)Cell 22:787−797)、ヘルペスチミジンキナーゼプロモーター(Wagnerら(1981)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.78:1441−1445)、メタロチオネイン遺伝子の調節配列(Brinsterら(1982)Nature 296:39−42);β−ラクタマーゼプロモーターのような原核生物発現ベクター(Villa−Komaroffら(1978)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.75:3727−3731)、またはtacプロモーター(DeBoerら(1983)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.80:21−25);“Useful proteins from recombinant bacteria” in Scientific American,242:74−94,1980も参照のこと;Gal 4プロモーター、ADC(アルコールデヒドロゲナーゼ)プロモーター、PGK(ホスホグリセロールキナーゼ)プロモーター、アルカリホスファターゼプロモーターなどの酵母または他の真菌からのプロモーターエレメント;およびリンパ系細胞において活性である、造血組織特異性を示す制御領域、特に免疫グロブリン遺伝子制御領域(Grosschedlら(1984)Cell 38:647;Adamesら(1985)Nature 318:533;Alexanderら(1987)Mol.Cell Biol.7:1436);骨髄系細胞において活性なβ−グロビン遺伝子制御領域(Mogramら(1985)Nature 315:338−340;Kolliasら(1986)Cell 46:89−94);造血幹細胞分化因子プロモーター;エリスロポエチン受容体プロモーター(Maoucheら(1991)Blood 15:2557)等;ならびに粘膜上皮細胞特異性を示す制御領域を含むが、これらに限定されない。
【0062】
好ましいベクター、特にインビトロでの細胞アッセイおよびインビボまたはエクスビボでのワクチン接種のための好ましいベクターは、ウイルスベクター、たとえばレンチウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、ワクシニアウイルス、バキュロウイルス、鶏痘ウイルス、AVポックスウイルス、改変ワクシニアAnkara(MVA)ウイルスおよび望ましい細胞向性を有する他の組換えウイルスである。特定の実施形態では、ワクシニアウイルスベクターが樹状細胞を感染させるために使用される。もう1つの特定の実施形態では、EBNA−1を発現するバキュロウイルスベクターが作製される。それゆえ、免疫原性ポリペプチドをコードするベクターは、ウイルスベクターを使用してまたはDNAの直接導入を通して、インビボ、エクスビボまたはインビトロで導入することができる。標的組織における発現は、ウイルスベクターもしくは受容体リガンドのような、トランスジェニックベクターを特定細胞に標的することによって、または組織特異的プロモーターを使用することによって、またはその両方によって実施され得る。標的化遺伝子送達は、1995年10月公開の国際特許公報第WO95/28494号に記載されている。
【0063】
インビボまたはエクスビボでのターゲティングおよびワクチン接種手順のために一般的に使用されるウイルスベクターは、DNAに基づくベクターおよびレトロウイルスベクターである。ウイルスベクターを構築し、使用するための方法は当技術分野において公知である(たとえば、MillerとRosman(1992)Bio Techniques 7:980−990参照)。好ましくは、ウイルスベクターは複製欠損性である、すなわちそれらは標的細胞において自律複製することができない。好ましくは、複製欠損ウイルスは最小ウイルスである、すなわちゲノムをキャプシド形成してウイルス粒子を生成するために必要なそのゲノムの配列だけを保持する。
【0064】
DNAウイルスベクターは、たとえば単純ヘルペスウイルス(HSV)、パピローマウイルス、エプスタイン−バーウイルス(EBV)、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス(AAV)、ワクシニアウイルス等のような、しかしこれらに限定されない、弱毒化または欠損DNAウイルスを含む。特定ベクターの例としては、欠損ヘルペスウイルス1型(HSV1)ベクター(Kaplittら(1991)Molec.Cell.Neurosci.2:320−330;1994年9月29日公開の国際特許公報第WO94/21807号;1994年4月2日公開の国際特許公報第WO92/05263号);Stratford−Perricaudetら(1992)J.Clin.Invest.90:626−630によって述べられたベクターのような(La Salleら(1993 Science 259:988−990も参照のこと)、弱毒化アデノウイルスベクター;および欠損アデノ関連ウイルスベクター(Samulskiら(1987)J.Virol.61:3096−3101;Samulskiら(1989)J.Virol.63:3822−3828;Lebkowskiら(1988)Mol.Cell Biol.8:3988−3996)が含まれるが、これらに限定されない。
【0065】
様々な会社が商業的にウイルスベクターを生産しており、Avigen,Inc.(Alameda,Calif.;AAVベクター)、Cell Genesys(Foster City,Calif.;レトロウイルス、アデノウイルス、AAVベクターおよびレンチウイルスベクター)、Clontech(レトロウイルスおよびバキュロウイルスベクター)、Genovo,Inc.(Sharon Hill,Pa.;アデノウイルスおよびAAVベクター)、Genvec(アデノウイルスベクター)、IntroGene(Leiden,Netherlands;アデノウイルスベクター)、Molecular Medicine(レトロウイルス、アデノウイルス、AAVおよびヘルペスウイルスベクター)、Norgen(アデノウイルスベクター)、Oxford BioMedica(Oxford,United Kingdom;レンチウイルスベクター)、ならびにTransgene(Strasbourg,France;アデノウイルス、ワクシニアウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスベクター)が含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
アデノウイルスベクター。アデノウイルスは、本発明の核酸を様々な細胞型に効率的に送達するように改変され得る真核生物DNAウイルスである。様々な血清型のアデノウイルスが存在する。これらの血清型のうちで、本発明の範囲内では、2型もしくは5型ヒトアデノウイルス(Ad2もしくはAd5)または動物起源のアデノウイルス(国際特許公報第WO94/26914号参照)を使用することが好ましい。本発明の範囲内で使用できる動物起源のアデノウイルスは、イヌ、ウシ、マウス(例:Mav1、Beardら(1990)Virology 175(1):81−90)、ヒツジ、ブタ、鳥類およびサル(例:SAV)起源のアデノウイルスを含む。好ましくは、動物起源のアデノウイルスはイヌアデノウイルスであり、より好ましくはCAV2アデノウイルス(たとえばManhattanまたはA26/61株(ATCC VR−800))である。様々な複製欠損アデノウイルスおよび最小アデノウイルスベクターが記述されている(国際特許公報第WO94/26914号、同第WO95/02697号、同第WO94/28938号、同第WO94/28152号、同第WO94/12649号、同第WO95/02697号、同第WO96/22378号)。本発明による複製欠損組換えアデノウイルスは、当業者に公知の何らかの手法によって作製できる(Levreroら(1991)Gene 101:195;欧州特許第EP 185 573号;Graham(1984)EMBO J.3:2917;Grahamら(1977)J.Gen.Virol.36:59)。組換えアデノウイルスはヒト樹状細胞のための効率的で非撹乱性のベクターである(Zhongら(1999)Eur.J.Immunol.29(3):964−72;DiNicolaら(1998)Cancer Gem Ther.5:350−6,1998)。組換えアデノウイルスは、当業者に周知の標準分子生物学手法を用いて回収され、精製される。
【0067】
アデノ関連ウイルス。アデノ関連ウイルス(AAV)は、それらが感染する細胞のゲノム内に安定且つ部位特異的に組み込まれ得る、比較的小さなサイズのDNAウイルスである。それらは、細胞の増殖、形態または分化へのいかなる作用も誘導することなく広いスペクトルの細胞に感染することができ、ヒトの病理に関与しないと思われる。AAVゲノムはクローン化され、配列決定され、特徴づけられている。遺伝子をインビトロおよびインビボで移入するためのAAVに由来するベクターの使用が記述されている(国際特許公報第WO91/18088号;国際特許公報第WO93/09239号;米国特許第4,797,368号、米国特許第5,139,941号、欧州特許第EP 488 528号参照)。本発明による複製欠損組換えAAVは、2つのAAV逆方向末端反復配列(ITR)領域に隣接された対象とする核酸配列を含むプラスミドと、AAVキャプシド形成遺伝子(repおよびcap遺伝子)を担持するプラスミドを、ヒトヘルパーウイルス(たとえばアデノウイルス)に感染している細胞系に同時トランスフェクトすることによって作製できる。作製されたAAV組換え体は、その後、標準的な手法によって精製される。これらのウイルスベクターも、ヒト樹状細胞への遺伝子導入のために有効である(DiNicolaら、前出)。
【0068】
レトロウイルス。もう1つの実施形態では、遺伝子を、たとえばAndersonら、米国特許第5,399,346号;Mannら(1983)Cell 33:153;Teminら、米国特許第4,650,764号;Teminら、米国特許第4,980,289号;Markowitzら(1998)J.Virol.62:1120;Teminら、米国特許第5,124,263号;欧州特許第EP 453242号、同第EP 178220号;Doughertyらによる、1995年3月16日公開の国際特許公報第WO95/07358号;およびKuoら(1993)Blood 82:845に記載されているように、レトロウイルスベクターに導入することができる。レトロウイルスは分裂細胞に感染する組込み型ウイルスである。レトロウイルスゲノムは、2つのLTR、キャプシド形成配列および3つのコード領域(gag、polおよびenv)を含む。組換えレトロウイルスベクターでは、gag、polおよびenv遺伝子は一般に全体的または部分的に欠失しており、対象とする異種核酸配列で置換されている。これらのベクターは、種々のタイプのレトロウイルスから、たとえばHIV、MoMuLV(「マウスモロニー白血病ウイルス」)、MSV(「マウスモロニー肉腫ウイルス」)、HaSV(「ハーベイ肉腫ウイルス」);SNV(「脾臓壊死ウイルス」);RSV(「ラウス肉腫ウイルス」)およびフレンドウイルスから構築できる。適切なパッケージング細胞系は先行技術において記述されており、特にPA317細胞系(米国特許第4,861,719号);PsiCRIP細胞系(国際特許公報第WO90/02806号)およびGP+envAm−12細胞系(国際特許公報第WO89/07150号)が挙げられる。加えて、組換えレトロウイルスベクターは、転写活性を抑制するためのLTR内の修飾ならびにgag遺伝子の一部を含み得る広範囲のキャプシド形成配列を含み得る(Benderら(1987)J.Virol.61:1639)。組換えレトロウイルスベクターは、当業者に公知の標準的な手法によって精製される。
【0069】
レトロウイルスベクターはまた、1サイクルのレトロウイルス複製を許容し、トランスフェクション効率を増強する、DNAウイルスによっても導入され得る(国際特許公報第WO95/22617号、同第WO95/26411号、同第WO96/39036号、同第WO97/19182号参照)。
【0070】
レンチウイルスベクター。もう1つの実施形態では、レンチウイルスベクターが、脳、網膜、筋肉、肝臓および血液を含むいくつかの組織型における導入遺伝子の直接送達および持続的発現のための作用因子として使用できる。このベクターは、分裂および非分裂細胞をこれらの組織に効率よく形質導入し、対象とする遺伝子の長期的な発現を維持することができる。総説については、Naldini(1998)Curr.Opin.Biotechnol.9:457−63参照;また、Zuffereyら(1998)J.Virol.72:9873−80も参照のこと。レンチウイルスパッケージング細胞株が使用可能であり、一般に当技術分野で公知である。それらは、遺伝子治療のための高力価レンチウイルスベクターの生産を促進する。一例は、106IU/ml以上の力価で少なくとも3〜4日間ウイルス粒子を生成することができるテトラサイクリン誘導性VSV−G偽型化レンチウイルスパッケージング細胞株である(Kafriら(1999)J.Virol.73:576−584)。誘導性細胞株によって生産されるベクターは、インビトロおよびインビボで非分裂細胞を効率的に形質導入するために必要に応じて濃縮できる。
【0071】
ワクシニアウイルスベクター。ワクシニアウイルスはポックスウイルスファミリーの成員であり、その大きなサイズと複雑さによって特徴づけられる。ワクシニアウイルスDNAは二本鎖であり、DNAの変性時に一本鎖の環が形成されるように末端で架橋されている。このウイルスは、痘瘡に対するワクチン中で約200年間使用されており、ワクチンにおいて使用した場合のウイルスの性質は公知である(Paoletti(1996)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93:11349−53;およびEllner(1998)Infection 26:263−9)。ワクシニアウイルスによるワクチン接種の危険度は周知で、明確に定義されており、このウイルスは比較的良性とみなされる。ワクシニアウイルスベクターは、外来遺伝子の挿入と発現のために使用できる。外来遺伝子をワクシニアベクターに挿入し、ワクシニアウイルスの合成組換え体を作製する基本的な手法が記述されている(米国特許第4,603,112号、同第4,722,848号、同第4,769,330号および同第5,364,773号参照)。多数の外来(すなわち非ワクシニア)遺伝子がワクシニアにおいて発現されており、しばしば防御免疫を生じさせる(Yamanouchi、BarrettおよびKai(1998)Rev.Sci.Tech.17:641−53により総説されている;Yokoyamaら(1997)J.Vet.Med.Sci.59:311−22;ならびにOsterhausら(1998)Vaccine 16:1479−81:およびGherardiら(1999)J.Immunol.162:6724−33参照)。ワクシニアウイルスは免疫不全または免疫抑制個体への投与には不適切であると考えられる。本発明において使用し得る選択的なポックスウイルスは、鶏痘ウイルス、AVポックスウイルスおよび改変ワクシニアAnkara(MVA)ウイルスを含む。
【0072】
非ウイルスベクター。もう1つの実施形態では、ベクターは、リポフェクションによって、裸のDNAとして、または他のトランスフェクション促進物質(ペプチド、ポリマー等)を用いてインビボで導入することができる。合成カチオン性脂質は、マーカーをコードする遺伝子のインビボトランスフェクション用のリポソームを作製するために使用できる(Felgnerら(1987)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.84:7413−7417;FelgnerとRingold(1989)Science 337:387−388;Mackeyら(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.85:8027−8031;Ulmerら(1993)Science 259:1745−1748参照)。核酸の移入のための有用な脂質化合物および組成物は、国際特許公報第WO95/18863号および同第WO96/17823号、ならびに米国特許第5,459,127号に記載されている。脂質は、ターゲティングのために他の分子に化学的に結合し得る(Mackeyら、前出参照)。標的ペプチド、たとえばホルモンまたは神経伝達物質、および抗体のようなタンパク質、または非ペプチド分子は、リポソームに化学的に結合し得る。
【0073】
他の分子、たとえばカチオン性オリゴペプチド(たとえば国際特許公報第WO95/21931号)、DNA結合タンパク質に由来するペプチド(たとえば国際特許公報第WO96/25508号)、またはカチオン性ポリマー(たとえば国際特許公報第WO95/21931号)も、インビボで核酸のトランスフェクションを促進するために有用である。
【0074】
あるいは、遺伝子治療のための非ウイルスDNAベクターは、当技術分野で公知の方法、たとえば電気穿孔法、微量注入法、細胞融合、DEAEデキストラン法、リン酸カルシウム沈殿法、遺伝子銃の使用(パーティクルガントランスフェクション;たとえば、米国特許第5,204,253号、同第5,853,663号、同第5,885,795号および同第5,702,384参照、ならびにSanford,TIB−TECH,6:299−302,1988;Fynanら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.90:11478−11482;およびYangら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:1568−9572参照)、またはDNAベクタートランスポーターの使用(たとえば、Wuら(1992)J.Biol.Chem.267:963−967;WuとWu(1988)J.Biol.Chem.263:14621−14624;Hartmutら、1990年3月15日出願のカナダ特許出願第2,012,311号;Williamsら(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:2726−2730参照)。受容体を介したDNA送達アプローチも使用できる(Curielら(1992)Hum.Gene Ther.3:147−154;WuとWu(1987)J.Biol.Chem.262:4429−4432)。米国特許第5,580,859号および同第5,589,466号は、哺乳動物における、トランスフェクション促進剤を使用しない外来DNA配列の送達を開示する。最近、エレクトロトランスファーと称される、比較的低電圧で高い効率のインビボDNA導入手法が記述された(Mirら(1998)C.P.Acad.Sci.321:893;国際特許公報第WO99/01157号;同第WO99/01158号;同第WO99/01175号)。
【0075】
IV.IL−10またはIL−10Rアンタゴニスト
IL−10のアンタゴニストは、標準的なワクチン療法と共に投与される。本明細書で使用されるIL−10のアンタゴニストは、中和抗体またはそのフラグメント、IL−10アンチセンスDNA、IL−10R可溶性受容体および/または受容体融合タンパク質(たとえばFc融合タンパク質)、IL−10Rに結合するが、受容体複合体のシグナル伝達を生じさせないIL−10突然変異体タンパク質を包含する。1つの特定の実施形態では、IL−10R融合タンパク質が企図される。
【0076】
V.抗体
本発明により精製される好ましいタンパク質は抗体である。本明細書における抗体は、対象とする抗原を標的する。好ましくは、抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患または障害に罹患している哺乳動物への抗体の投与は、その哺乳動物において治療上の利益をもたらし得る。抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通分子(たとえばサイトカイン受容体)または増殖因子もしくはサイトカインのようなリガンドであり得る。
【0077】
本明細書における抗体は、対象とする抗原、たとえばヒトIL−10Rを標的する。好ましくは、抗原は生物学的に重要なポリペプチドであり、疾患または障害に罹患している哺乳動物への抗体の投与は、その哺乳動物において治療上の利益をもたらし得る。しかし、非ポリペプチド抗原(腫瘍関連糖脂質抗原など;米国特許第5,091,178号参照)に対する抗体も企図される。抗原がポリペプチドである場合、それは膜貫通分子(たとえばサイトカイン受容体)または増殖因子もしくはサイトカインのようなリガンドであり得る。
【0078】
ポリクローナル抗体は、好ましくは、関連抗原およびアジュバントの多回皮下(sc)または腹腔内(ip)注射により動物において惹起される。二官能性試薬または誘導体化剤、たとえばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介して結合)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介して結合)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl、またはRN=C=NR[式中、RとRは異なるアルキル基である]を使用して、抗原を、免疫される種において免疫原性であるタンパク質、たとえばキーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリンまたはダイズトリプシンインヒビターに結合することは有用であり得る。
【0079】
たとえば、タンパク質または結合体100μgまたは5μg(それぞれウサギまたはマウスに関して)を3容量のフロイント完全アジュバントと組み合わせ、その溶液を多数の部位に皮内注射することにより、動物を抗原、免疫原性結合体または誘導体に対して免疫する。1ヶ月後、フロイント完全アジュバント中の最初の量の1/5〜1/10の抗原または結合体を多数の部位に皮下注射することにより、動物をブーストする。7〜14日後、動物から採血し、血清を抗体力価に関して検定する。力価が横ばい状態に達するまで動物をブーストする。好ましくは、同じ抗原の結合体であるが、異なるタンパク質に結合したおよび/または異なる架橋試薬を介して結合した結合体で動物をブーストする。結合体はまた、組換え細胞培養中でタンパク質融合物として作製することもできる。また、ミョウバンのような凝集剤も免疫応答を増強するために適切に使用される。
【0080】
モノクローナル抗体は、Kohlerら(1975)Nature,256:495によって最初に記述されたハイブリドーマ法を使用して作製し得るか、または組換えDNA法(米国特許第4,816,567号)によって作製し得る。
【0081】
ハイブリドーマ法では、マウスまたは他の適切な宿主動物、たとえばハムスターもしくはマカクザルなどを本明細書中で前述したように免疫し、免疫のために使用されるタンパク質に特異的に結合する抗体を産生するまたは産生することができるリンパ球を惹起する。あるいは、リンパ球をインビトロで免疫してもよい。次に、ポリエチレングリコールのような適切な融合剤を使用してリンパ球を骨髄腫細胞と融合し、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。
【0082】
このようにして作製されたハイブリドーマ細胞を、好ましくは、融合していない親骨髄腫細胞の増殖または生存を阻害する1またはそれ以上の物質を含有する適切な培地に接種し、増殖させる。たとえば、親骨髄腫細胞が酵素、ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培地は、典型的には、HGPRT欠損細胞の増殖を妨げる物質である、ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含有する(HAT培地)。
【0083】
好ましい骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択した抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル産生を支持し、HAT培地のような培地に対して感受性であるものである。これらの中で、好ましい骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫系統、たとえばSalk Institute Cell Distribution Center,San Diego,Calif.USAより入手可能なMOPC−21およびMPC−11マウス腫瘍に由来するもの、ならびにthe American Type Culture Collection,Rockville,Md.USAより入手可能なSP−2またはX63−Ag8−653細胞に由来するものである。ヒト骨髄腫およびマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も、ヒトモノクローナル抗体の産生に関して記述されている(Kozbor(1984)J.Immunol.133:3001;Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications pp.51−63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0084】
ハイブリドーマ細胞が増殖中である培地を、抗原に対するモノクローナル抗体の産生に関して検定する。好ましくは、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法によってまたは放射免疫検定法(RIA)もしくは固相酵素免疫検定法(ELISA)のようなインビトロ結合アッセイによって測定される。
【0085】
所望の特異性、親和性および/または活性を有する抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、クローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、標準的な方法によって増殖させてもよい(Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59−103(Academic Press,1986))。このための適切な培地としては、たとえばD−MEMまたはRPMI−1640培地が含まれる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、動物における腹水腫瘍としてインビボで増殖させてもよい。
【0086】
サブクローンにより分泌されるモノクローナル抗体は、たとえば、プロテインA−セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって培地、腹水または血清から適切に分離される。好ましくは、本明細書で述べるプロテインAクロマトグラフィー手順が使用される。
【0087】
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(たとえば、モノクローナル抗体の重鎖および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定される。ハイブリドーマ細胞はそのようなDNAの好ましい供給源として役立つ。ひとたび単離されれば、DNAを発現ベクターに組み込むことができ、次にそれを大腸菌細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはさもなければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトして、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得ることができる。
【0088】
DNAはまた、たとえば、相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖および軽鎖定常ドメインについてのコード配列で置換することによって(米国特許第4,816,567号;Morrisonら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,81:6851)、または非免疫グロブリンポリペプチドについてのコード配列の全部または一部を免疫グロブリンコード配列に共有結合的に連結することによって修飾し得る。
【0089】
典型的には、そのような非免疫グロブリンポリペプチドで抗体の定常ドメインを置換するか、または抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインをそれらで置換して、抗原に対して特異性を有する1つの抗原結合部位と、異なる抗原に対して特異性を有する別の抗原結合部位とを含むキメラ二価抗体を作製する。
【0090】
さらなる実施形態では、モノクローナル抗体は、McCaffertyら(1990)Nature,348:552−554に記載されている手法を使用して生成される抗体ファージライブラリーから単離することができる。Clacksonら(1991)Nature,352:624−628およびMarksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597は、それぞれファージライブラリーを使用したマウスおよびヒト抗体の単離を述べている。その後の公表文献は、鎖シャフリングによる高親和性(nM範囲)のヒト抗体の生産(Marksら(1992)Bio/Technology,10:779−783)、ならびに非常に大きなファージライブラリーを構築するための方策としてコンビナトリアル感染とインビボ組換え(Waterhouseら(1993)Nuc.Acids.Res.,21:2265−2266)を述べている。ゆえに、これらの手法は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なハイブリドーマ手法に対する実施可能な代替法である。
【0091】
ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からその中に導入された1またはそれ以上のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば「輸入(import)」残基と称され、典型的には「輸入」可変ドメインから取り込まれる。ヒト化は、基本的には、Winterと共同研究者(Jonesら(1986)Nature,321:522−525;Riechmannら(1988)Nature,332:323−327;Verhoeyenら(1988)Science,239:1534−1536)の方法に従って、ヒト抗体の対応する配列をげっ歯動物のCDRまたはCDR配列で置換することによって実施できる。従って、そのような「ヒト化」抗体は、無傷ヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が非ヒト種からの対応する配列によって置換されたキメラ抗体である(米国特許第4,816,567号)。実際に、ヒト化抗体は、典型的には一部のCDR残基およびおそらく一部のFR残基がげっ歯動物抗体の類似部位からの残基によって置換されたヒト抗体である。
【0092】
ヒト化抗体を作製するときに使用される、軽鎖および重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減するために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、げっ歯動物抗体の可変ドメインの配列を公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングする。次に、げっ歯動物のものに最も近いヒト配列をヒト化抗体のためのヒトFRとして受け入れる(Simsら(1993)J.Immunol.151:2296)。もう1つの方法は、軽鎖または重鎖の特定サブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定フレームワークを使用する。同じフレームワークをいくつかの異なるヒト化抗体のために使用してもよい(Carterら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,89:4285;Prestaら(1993)J.Immunol.,151:2623)。
【0093】
抗体が、抗原に対する高い親和性および他の好ましい生物学的性質を保持してヒト化されることはさらに重要である。この目標を達成するため、好ましい方法によれば、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを使用して親配列および様々な概念的ヒト化生成物を分析する工程によって作製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に利用可能であり、当業者にはよく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推定三次元立体配座構造を描画し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を検討することにより、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割の分析、すなわち候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基の分析が可能となる。このようにして、標的抗原に対する高い親和性のような所望抗体特性が達成されるように、FR残基をレシピエント配列および輸入配列から選択し、組み合わせることができる。一般に、CDR残基は抗体結合への影響に直接且つ最も実質的に関与する。
【0094】
あるいは、今や、免疫したとき、内因性免疫グロブリン産生を伴わずにヒト抗体の完全なレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(たとえばマウス)を作製することが可能である。たとえば、キメラおよび生殖系列突然変異マウスにおける抗体重鎖結合領域(J)遺伝子のホモ接合性欠失は、内因性抗体産生の完全な阻害を生じさせることが記述されている。そのような生殖系列突然変異マウスへのヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、抗原誘発したときヒト抗体の産生をもたらす。たとえば、Jakobovitsら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA.90:2551;Jakobovitsら(1993)Nature.362:255−258;Bruggermannら(1993)Year in Immuno.,7:33;およびDuchosalら(1992)Nature 355:258参照。ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーから誘導することもできる(Hoogenboomら(1991)J.Mol.Biol.,227:381;Marksら(1991)J.Mol.Biol.,222:581−597;Vaughanら(1996)Nature Biotech 14:309)。
【0095】
抗体フラグメントの作製のために様々な手法が開発されている。伝統的には、これらのフラグメントは無傷抗体のタンパク質分解消化を介して誘導された(たとえば、Morimotoら(1992)Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107−117およびBrennanら(1985)Science,229:81参照)。しかし、これらのフラグメントは、今や、組換え宿主細胞によって直接生成され得る。たとえば、抗体フラグメントは、前記で論じた抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’−SHフラグメントは、大腸菌から直接回収し、化学的に結合してF(ab’)フラグメントを形成することができる(Carterら(1992)Bio/Technology 10:163−167)。もう1つのアプローチによれば、F(ab’)フラグメントは、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体フラグメントの作製のための他の手法は当業者に明白である。他の実施形態では、選択抗体は一本鎖Fvフラグメント(scFv)である。国際特許公報第WO93/16185号参照。
【0096】
多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる抗原に対して結合特異性を有する。そのような分子は通常2つの抗原とだけ結合するが(すなわち二重特異性抗体、BsAb)、三重特異性抗体のようなさらなる特異性を有する抗体は、本明細書で使用される場合この表現に包含される。
【0097】
二重特異性抗体を作製するための方法は当技術分野において公知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な作製は、2本の鎖が異なる特異性を有する、2本の免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づく(Millsteinら(1983)Nature.305:537−539)。免疫グロブリン重鎖と軽鎖のランダムな組み合わせのために、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10の異なる抗体分子の潜在的な混合物を生成し、そのうち1つだけが正しい二重特異性構造を有する。通常アフィニティークロマトグラフィー工程によって実施される正しい分子の精製はかなり面倒であり、生成物の収率は低い。同様の手順が、国際特許公報第WO93/08829号およびTrauneckerら(1991)EMBO J.,10:3655−3659に開示されている。
【0098】
国際特許公報第WO96/27011号に記載されている別のアプローチによれば、抗体分子の対の間の境界(interface)を、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の割合を最大化するように操作することができる。好ましい境界は、抗体定常ドメインのC3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1抗体分子の境界からの1またはそれ以上の小さなアミノ酸側鎖がより大きな側鎖(たとえばチロシンまたはトリプトファン)で置き換えられる。大きなアミノ酸側鎖をより小さな側鎖(たとえばアラニンまたはトレオニン)で置換することにより、大きな側鎖と同一または類似のサイズの代償的な「キャビティー(cavities)」が第2抗体分子の境界上に形成される。これにより、ホモ二量体のような他の望ましくない最終生成物に比べてヘテロ二量体の収率を高めるための機構が提供される。
【0099】
二重特異性抗体としては、架橋抗体または「ヘテロ結合体」抗体が含まれる。たとえば、ヘテロ結合体中の抗体の1つはアビジンに結合し、他方はビオチンに結合することができる。そのような抗体は、たとえば、免疫系細胞を望ましくない細胞に標的するため(米国特許第4,676,980号)およびHIV感染の治療のために(国際特許公報第WO91/00360号、同第WO92/200373号および欧州特許第EP 03089号)提案された。ヘテロ結合体抗体は、何らかの従来の架橋方法を使用して作製され得る。適切な架橋剤は当技術分野において周知であり、米国特許第4,676,980号において多くの架橋手法と共に開示されている。
【0100】
抗体フラグメントから二重特異性抗体を作製するための手法も文献に記載されている。たとえば、二重特異性抗体は化学結合を用いて作製できる。Brennanら(1985)Science,229:81は、無傷抗体をタンパク質分解的に切断してF(ab’)フラグメントを生成する手順を述べている。これらのフラグメントを、ジチオール錯化剤である亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元して、隣接するジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止する。次に、生成されたFab’フラグメントをチオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換する。その後、Fab’−TNB誘導体の1つをメルカプトエチルアミンでの還元によってFab’−チオールに再変換し、等モル量の他のFab’−TNB誘導体と混合して、二重特異性抗体を形成する。作製された二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための作用物質として使用できる。
【0101】
最近の進歩により、大腸菌からのFab’−SHフラグメントの直接回収が容易になり、それらのフラグメントを化学的に結合して二重特異性抗体を形成することができる。Shalabyら(1992)J.Exp.Med.,175:217−225は、完全ヒト化二重特異性抗体F(ab’)分子の作製を述べている。各々のFab’フラグメントを大腸菌から別々に分泌させ、二重特異性抗体を形成するためにインビトロで直接化学結合に供した。このようにして形成された二重特異性抗体は、ErbB2レセプターを過剰発現する細胞および正常ヒトT細胞に結合することができ、ならびにヒト乳房腫瘍標的に対するヒト細胞傷害性リンパ球の溶解活性を誘発することができた。
【0102】
組換え細胞培養物から直接二重特異性抗体フラグメントを作製し、単離するための様々な手法も記述されている。たとえば、ロイシンジッパーを使用して二重特異性抗体が作製された。Kostelnyら(1992)J.Immunol.,148(5):1547−1553。FosおよびJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドを遺伝子融合によって2つの異なる抗体のFab’部分に連結した。この抗体ホモ二量体をヒンジ領域で還元して単量体を形成し、次に再酸化して、抗体のヘテロ二量体を形成した。この方法はまた、抗体ホモ二量体の作製のためにも利用できる。Hollingerら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448によって述べられた「二重特異性抗体」技術は、二重特異性抗体フラグメントを作製するための選択的な機構を提供した。前記フラグメントは、同じ鎖上の2つのドメインの間での対合を可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(V)に連結された重鎖可変ドメイン(V)を含む。従って、1つのフラグメントのVドメインとVドメインは別のフラグメントの相補的なVドメインおよびVドメインと対合することを強いられ、それにより2つの抗原結合部位を形成する。一本鎖Fv(sFv)二量体の使用によって二重特異性抗体フラグメントを作製するための別の方策も報告されている。Gruberら(1994)J.Immunol.,152:5368参照。あるいは、抗体は、Zapataら(1995)Protein Eng.8(10):1057−1062に記載されているような「直鎖状抗体」であり得る。簡単に述べると、これらの抗体は、一対の抗原結合領域を形成する一対の縦列Fdセグメント(V−C1−V−C1)を含む。米国特許公開公報第US2007/0071675号に記載されている、二重可変ドメイン抗体(Dual variable domain antibodies)も企図される。
【0103】
1つの実施形態では、本発明のアンタゴニスト抗体は、たとえば、どちらも参照により本明細書に組み込まれる、米国特許公開公報第US2005/0101770号および同第US2007/0178097号に記載されているヒト化抗IL−10抗体である。
【0104】
VI.ワクチン接種および免疫治療方法
慢性または持続性ウイルス感染に対して対象をワクチン接種するために様々な方法が使用できる。ポリペプチドワクチン製剤は、皮下(s.c.)、腹腔内(i.p.)、筋肉内(i.m.)、真皮下(s.d.)、皮内(i.d.)経路によって、またはエクスビボでの抗原提示細胞への投与とそれに続く対象への前記細胞の投与によって送達することができる。対象への投与の前に、抗原提示細胞を誘導して成熟させてもよい。
【0105】
同様に、たとえば遺伝子銃または直接注入による、裸のDNAおよびRNA送達のような、前述した遺伝子送達方法のいずれもがベクターワクチンを対象に投与するために使用できる。
【0106】
ワクチン接種の有効性は、免疫刺激分子、たとえば免疫刺激性、免疫増強性もしくはプロ炎症性サイトカイン、リンホカインまたはケモカインをワクチンと共に、特にベクターワクチンと共に同時投与することによって増強され得る(SalgallerとLodge(1998)J.Surg.Oncol.68:122)。たとえば、サイトカインまたはサイトカイン遺伝子、たとえばインターロイキン(IL)−1、IL−2、IL−3、IL−4、IL−12、IL−13、顆粒球−マクロファージ(GM)コロニー刺激因子(CSF)および他のコロニー刺激因子、マクロファージ炎症因子、Flt3リガンド(Lyman(1998)Curr.Opin.Hematol.5:192)、ならびにいくつかの鍵となる共刺激分子またはそれらの遺伝子(たとえばB7.1、B7.2)が使用できる。これらの免疫刺激分子は、タンパク質として全身的または局所的に送達され得るか、または分子の発現をコードするベクターの発現によって送達され得る。あるいは、本明細書で述べるように、ワクチンは、免疫抑制分子、たとえばIL−10またはIL−10Rのアンタゴニストと共に投与することができる。免疫原性ポリペプチドの送達に関して前述した手法が免疫刺激分子についても使用できる。
【0107】
ワクチン接種および特に免疫療法は、樹状細胞のターゲティングを通して達成され得る(Steinman(1996)J.Lab.Clin.Med.128:531;Steinman(1996)Exp.Hematol.24:859;Taiteら(1999)Leukemia 13:653;Avigan(1999)Blood Rev.13:51;DiNicolaら(1998)Cytokines Cell.Mol.Ther.4:265)。樹状細胞はT細胞依存性免疫の活性化において決定的な役割を果たす。増殖中の樹状細胞は、免疫原性形態のタンパク質抗原をインサイチューで捕捉し、次に、T細胞によって認識され得る形態でこれらの抗原を提示して、T細胞を刺激するために使用できる(たとえば、Steinman(1996)Exper.Hematol.24:859−862;Inabaら(1998)J.Exp.Med.188:2163−73および米国特許第5,851,756号参照)。エクスビボでの刺激のためには、樹状細胞を培養皿に塗布し、抗原が樹状細胞に結合するのに十分な量で十分な期間、抗原に暴露する(抗原でパルスする)。加えて、樹状細胞を、Zhongら(1999)Eur.J.Immunol.29:964−72;Van Tendelooら(1998)Gene Ther.5:700−7;Dieboldら(1999 Hum.Gene Ther.10:775−86;FrancotteとUrbain(1985)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 82:8149および米国特許第5,891,432号(Casaresら(1997)J.Exp.Med.186:1481−6)によって述べられたように様々な物理的または化学的手段を使用してDNAでトランスフェクトし得る。パルスした細胞を、次に、たとえば静脈内注射によって、治療を受けている対象に移植することができる。好ましくは、自己樹状細胞、すなわち治療を受けている対象から得た樹状細胞を使用するが、タイプ適合性ドナーからまたは所望MHC分子を発現する(および好ましくは望ましくないMHC分子の発現を抑制する)ように樹状細胞を遺伝子操作することによって入手し得る、MHCクラスII適合性樹状細胞を使用することも可能であり得る。
【0108】
好ましくは、樹状細胞は、慢性または持続性感染を引き起こすウイルスに関連するウイルスペプチドの発現のためにインビボで特異的に標的される。抗原提示を媒介する受容体、たとえばDEC−205(Swiggardら(1995)Cell.Immunol.165:302−11;Steinman(1996)Exp.Hematol.24:859)およびFc受容体を利用することにより、インビボで樹状細胞を標的するために様々な方策が使用可能である。前記で論じた標的ウイルスベクターも使用できる。加えて、樹状細胞は、ウイルスベクターによる感染後、インビボでの移植の前に、インビトロで誘導して成熟させてもよい。
【0109】
粘膜ワクチンストラテジは、感染がしばしば粘膜を介して起こるので、多くの病原性ウイルスに対して特に有効である。加えて、組換えワクシニアウイルスワクチンの粘膜送達は、以前の痘瘡ワクチン接種によるポックスウイルスに対する既存免疫を克服できると考えられる(Belyakovら(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.96:4512−7)。粘膜は、EBNA−1ワクチンおよび免疫療法にとっての重要な標的である樹状細胞を保有する。それゆえ、ポリペプチドおよびDNAワクチンの両方について粘膜ワクチン接種法が企図される。粘膜はワクチンの局所送達によって標的され得るが、様々な方策が免疫原性タンパク質を粘膜に送達するために使用されてきた(これらの方策には、たとえば、タンパク質を標的するベクターとして特異的粘膜標的タンパク質を使用することによる、または粘膜標的タンパク質と混合してワクチンベクターを送達することによる、DNAワクチンの送達も含まれる)。
【0110】
たとえば、特定の実施形態では、免疫原性ポリペプチドまたはベクターワクチンは、コレラ毒素Bおよび/もしくはコレラ毒素A/Bキメラのようなコレラ毒素と混合して、またはコレラ毒素との結合体もしくはキメラ融合タンパク質として投与することができる(Hajishengallis(1995)J.Immunol.154:4322−32;JoblingとHolmes(1992)Infect Immun.60:4915−24)。コレラ毒素Bサブユニットの使用に基づく粘膜ワクチンが記述されている(LebensとHolmgren(1994)Dev Biol Stand 82:215−27)。もう1つの実施形態では、熱不安定性エンテロトキシン(LT)との混合物を粘膜ワクチン接種のために調製することができる。
【0111】
他の粘膜免疫法としては、免疫原をマイクロカプセルに封入すること(米国特許第5,075,109号、同第5,820,883号および同第5,853,763号)ならびに免疫増強性膜担体を使用すること(国際特許公報第WO98/0558号)が含まれる。経口投与される免疫原の免疫原性は、赤血球(rbc)もしくはrbcゴーストを使用すること(米国特許第5,643,577号)、またはブルータング(blue tongue)抗原を使用すること(米国特許第5,690,938号)によって増強され得る。標的免疫原の全身投与も粘膜免疫を生じさせることができる(米国特許第5,518,725号参照)。
【0112】
VII.医薬組成物および投与
本発明による、および本発明に従った使用のための医薬組成物は、有効成分に加えて、薬学的に受容可能な賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤または当業者に周知の他の物質を含有し得る。そのような物質は非毒性であるべきであり、有効成分の効果を妨げてはならない。担体または他の物質の正確な性質は投与の経路に依存し、投与の経路は、好ましくは注射、たとえば皮膚、皮下または皮内注射によってであるが、当業者にとって好都合ないかなる経路によってもよい。
【0113】
注射に関して、有効成分は、発熱物質を含まず、適切なpH、等張性および安定性を有する非経口的に許容される水溶液の形態である。薬学的に受容可能であり、好ましいと考えられる適切な希釈剤は既に前記で論じている。
【0114】
医薬組成物が錠剤、カプセル、粉末または液体形態であり得る場合、経口投与を使用し得る。錠剤は、ゼラチンまたはアジュバントのような固体担体を含有し得る。液体医薬組成物は一般に、水、石油、動物もしくは植物油、鉱油または合成油のような液体担体を含有する。生理食塩水、デキストロースまたは他の糖類溶液またはグリコール類、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコールもしくはポリエチレングリコールも含有され得る。
【0115】
ワクチンは、たとえば気道の適切な部分に移動する大きさの粒子を含む、適切な製剤を使用して、エアロゾルによって気道に投与し得る。これは、水性懸濁液ではなく乾燥粉末でもよい。
【0116】
本発明の組成物は、魚類、両生類、鳥類および哺乳動物(哺乳動物としてはサル、ブタ、ウマ、ウシ、イヌ、ネコおよびヒトが含まれるが、これらに限定されない)を含む、いかなる動物にも投与できる。組成物は、たとえば筋肉内、経口、皮下、皮内、膣内、直腸または鼻内投与のような、何らかの適切な投与方法によって投与され得る。好ましい投与方法は、経口、静脈内、皮下、筋肉内または皮内投与である。最も好ましい方法は、皮下投与を含む非経口投与である。
【0117】
必要な場合はブースター投与を含む、投与の頻度、および免疫に関連する他の技術は当業者に周知であり、既に記述または決定されていない場合は、過度の実験を必要とせずに実施できる。たとえば、本発明の組成物の適切な免疫防御性で非毒性且つ固有の免疫応答誘導量は、従来のワクチン中の抗原の有効量の範囲内であり得る。しかし、何らかの特定対象についての特定用量レベルは、対象の年齢、全般的健康状態、性別および食事を含む様々な因子に依存する。用量レベルに影響を及ぼす他の因子としては、投与の時間、投与の経路、投与される何らかの他の薬剤の相乗作用性、相加性または拮抗性相互作用、および求められる防御の量または免疫応答の誘導のレベルが含まれるが、これらに限定されない。たとえば、混合ワクチンでは、本発明のワクチンの用量は、その他のワクチン成分の干渉を相殺するように高める必要があり得る。
【0118】
本発明の組成物、たとえばウイルス特異的ワクチンとIL−10アンタゴニストを含有する治療用ワクチンは、当業者に周知の方法を用いて他のワクチンと組み合わせて使用できる。ウイルスワクチンとしては、ウイルスまたは疾患に対するもの、たとえば肝炎、エプスタイン−バーウイルス、ヒトパピローマウイルス、痘瘡ウイルス、HIV、水痘、耳下腺炎および麻疹に対するものが含まれるが、これらに限定されない。特定ウイルスへの暴露およびその後のワクチンまたは混合ワクチンの投与の様々なレジメンが含まれ、本明細書で提供される開示に基づき、当業者に周知の方法を使用して決定され得る。
【0119】
ウイルス特異的Th1免疫応答を誘導する突然変異ウイルスまたは他の作用物質を、薬学的に受容可能な担体または希釈剤と共に投与することができる。そのような薬学的に受容可能な担体または希釈剤の例としては、水、リン酸緩衝食塩水または重炭酸ナトリウム緩衝液が含まれる。多くの他の許容される担体または希釈剤も当技術分野において公知である。
【0120】
VIII.キット
本発明はさらに、ウイルスに対するワクチンおよび/またはその薬学的に受容可能な組成物ならびに免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストおよび/またはその薬学的に受容可能な組成物、ならびに投与のための指示を含むキットを対象とする。特定の実施形態では、ワクチンと中和IL−10またはIL−10R抗体は、別々にまたは一緒に包装され得る。さらに、キットは他の生物学的製剤も含み得る。
【0121】
本発明の広い範囲は以下の実施例を参照して最もよく理解され、それらの実施例は本発明を特定の実施形態に限定することを意図しない。
【実施例】
【0122】
I.一般的方法
生化学および分子生物学の標準的な方法は、たとえば、Maniatisら(1982)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;SambrookとRussell(2001)Molecular Cloning,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Wu(1993)Recombinant DNA,Vol.217,Academic Press,San Diego,CAに記載されているまたは参照されている。標準的な方法はまた、Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vols.1−4,John Wiley and Sons,Inc.New York,NYにも認められ、これは、細菌細胞におけるクローニングおよびDNA突然変異誘発(Vol.1)、哺乳動物細胞および酵母におけるクローニング(Vol.2)、糖結合体およびタンパク質発現(Vol.3)ならびにバイオインフォマティクス(Vol.4)を述べている。
【0123】
免疫沈降法、クロマトグラフィー、電気泳動、遠心分離および結晶化を含む、タンパク質精製のための方法が記述されている。Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York。化学分析、化学修飾、翻訳後修飾、融合タンパク質の生成、タンパク質のグリコシル化も記述されている。たとえば、Coliganら(2000)Current Protocols in Protein Science.Vol.2,John Wiley and Sons,Inc.,New York;Ausubelら(2001)Current Protocols in Molecular Biology,Vol.3,John Wiley and Sons,Inc.,NY,NY.,pp.16.0.5−16.22.17;Sigma−Aldrich,Co.(2001)Products for Life Science Research,St.Louis,MO;pp.45−89;Amersham Pharmacia Biotech(2001)BioDirectory,Piscataway,N.J.,pp.384−391参照。ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の作製、精製およびフラグメント化は記述されている。Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.1,John Wiley and Sons,Inc.,New York;HarlowとLane(1999)Using Antibodies,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;HarlowとLane、前出。リガンド/受容体相互作用を特徴づけるための標準的な手法は利用可能である。たとえば、Coliganら(2001)Current Protcols in Immunology,Vol.4,John Wiley,Inc.,New York参照。
【0124】
蛍光活性化細胞選別検出システム(FACS(登録商標))を含む、フローサイトメトリーのための方法は利用可能である。たとえば、Owensら(1994)Flow Cytometry Principles for Clinical Laboratory Practice,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ;Givan(2001)Flow Cytometry,2nd ed.;Wiley−Liss,Hoboken,NJ;Shapiro(2003)Practical Flow Cytometry,John Wiley and Sons,Hoboken,NJ参照。たとえば診断試薬としての使用のための、核酸プライマーおよびプローブ、ポリペプチドならびに抗体を含む、核酸を修飾するのに適した蛍光試薬が使用可能である。Molecular Probes(2003)Catalogue Molecular Probes,Inc.,Eugene,OR;Sigma−Aldrich(2003)Catalogue,St.Louis,MO。
【0125】
免疫系の組織学的検査の標準的な方法は記述されている。たとえば、Muller−Harmelink(編集)(1986)Human Thymus:Histopathology and Pathology,Springer Verlag,New York,NY;Hiattら(2000)Color Atlas of Histology,Lippincott,Williams,and Wilkins,Phila,PA;Louisら(2002)Basic Histology:Text and Atlas,McGraw−Hill,New York,NY参照。
【0126】
たとえば抗原性フラグメント、リーダー配列、タンパク質の折りたたみ、機能性ドメイン、グリコシル化部位、および配列アラインメントを決定するためのソフトウエアパッケージおよびデータベースは利用可能である。たとえば、GenBank,Vector NTI(登録商標)Suite(Informax,Inc,Bethesda,MD);GCG Wisconsin Package(Accelrys,Inc.,San Diego,CA);DeCypher(登録商標)(TimeLogic Corp.,Crystal Bay,Nevada);Menneら(2000)Bioinformatics 16:741−742;Menneら(2000)Bioinformatics Applications Note 16:741−742;Wrenら(2002)Comput.Methods Programs Biomed.68:177−181;von Heijne(1983)Eur.J.Biochem.133:17−21;von Heijne(1986)Nucleic Acids Res.14:4683−4690参照。
【0127】
II.マウスおよびウイルス
C57BL/6マウスをthe Rodent Breeding Colony(The Scripps Research Institute,La Jolla,California)より入手した。使用したLCMV−GP61〜80特異的CD4+ TcRトランスジェニック(SMARTA)マウスおよびLCMV−GP33〜41特異的C8+トランスジェニック(P14)マウスは、Oxeniusら(1998)Eur.J.Immunol.28:390−400に記載されている。すべてのマウスをNIHおよびIACUCガイドラインに従って病原体不含条件に収容した。
【0128】
マウスを静脈内経路で2×10プラーク形成単位(PFU)のLCMV−ArmまたはLCMV−Cl 13に感染させた。ウイルス株を調製し、Borrowら(1995)J.Virol.69:1059−1070に述べられているようにウイルス力価を定量した。すべての実験は各群につき3〜6匹のマウスを含み、少なくとも3回反復された。
【0129】
III.T細胞の単離と移入
CD4およびCD8 T細胞を、負の選択によりそれぞれナイーブSMARTAおよびP14マウスの脾臓から精製した(StemCell Technologies,Vancouver,BC)。各々の集団からの1000の精製細胞をC57BL/6マウスに静脈内経路で共移入した。これらのトランスジェニックT細胞集団の各々は、四量体分析および細胞内サイトカイン染色に基づき、それらの内因性(すなわち宿主由来)T細胞対応物と同様に挙動する(たとえば、Wherryら(2003)前出;およびBorrowら(1995)J.Virol.69:1059−1070参照)。SMARTAおよびP14細胞の数を、フローサイトメトリーによって測定されたThy1.1+細胞の頻度に脾細胞の総数を乗じることによって決定した。
【0130】
III.定量的PCR
全脾単核細胞からのRNAを得て、Brooksら(2006)前出に述べられているように増幅した。RNA発現を投入濃度(input concentration)によって正規化し、Qiagen ONE−STEP RT−PCRキット(Qiagen)を使用して増幅した。IL−10 RNAを増幅するためにASSAYS−ON−DEMANDリアルタイムIL−I0発現キット(Applied Biosystems)を使用した。IL−10 RNAを定量するため、Cl 13感染脾細胞からの全脾RNAの10倍連続希釈(1μg対1pg全RNA、標準曲線:r>0.99)によって標準曲線を作成し、IL−10 RNAの相対数を決定した。増幅はABI7700増幅器(Applied Biosystems)で実施した。
【0131】
IV.細胞内サイトカイン分析およびフローサイトメトリー
脾細胞を、50U/mlの組換えマウスIL−2(R&D Systems)および1mg/mlのブレフェルジンA(Sigma)の存在下に、5μg/mlのMHCクラスII拘束性LCMV−GP61〜80または2μg/mlのMHCクラスI拘束性LCMV−NP396〜404、GP33〜41またはGP276〜285ペプチド(すべて99%純粋;Synpep.)で5時間刺激した。IL−2のエクスビボ投与はサイトカイン産生を変化させなかった。細胞をCD4(クローンRM4−5;Pharmingen)およびCD8(クローン53−6.7;Caltag)の表面発現に関して染色した。細胞を固定し、透過処理し、TNF−αに対する抗体(クローンMP6−XT22;ATCC)、IFN−γに対する抗体(クローンXMG1.2;ATCC)およびIL−2に対する抗体(クローンJES6−5H4;ATCC)で染色した。Digital LSF II(Becton Dickinson)を使用してフローサイトメトリー分析を実施した。MHCクラスIおよびクラスII四量体を、Homannら(2001)Nat.Med.7:913−919に記載されているように生成した。四量体またはIFN−γ細胞の頻度に脾臓内の細胞の総数を乗じることによってウイルス特異的T細胞の絶対数を決定した。
【0132】
V.インビボでのIL−10RおよびPD−L1特異的抗体処置
C57BL/6マウスに、LCMV−Cl 13感染後25日目または30日目から開始して3日ごとに5回の処置を継続し、250μg/マウスのIL−10R特異的抗体(クローン1B1.3a;Schering−Plough)を腹腔内(i.p.)注射によっておよび/または200mg/マウスのPD−L1特異的抗体(Harvard Medical School)をi.p.注射によって投与した。ラットIgG1アイソタイプ対照抗体(抗大腸菌β−ガラクトシダーゼMab、クローンKM1.GL113;Schering−Plough)による処置は、T細胞応答またはウイルス複製に影響を及ぼさなかった。
【0133】
VI.DNAワクチン接種
プラスミドpCMV−GPは、全長LCMV糖タンパク質をコードする。親対照ベクター、pCMVはLCMV配列を含まない。pCMV−GPおよび親pCMVベクターの両方が、Yokoyamaら(1995)J.Virol.69:2684−2688に記述されている。pCMV−GPは、CD4およびCD8 T細胞LCMV糖タンパク質エピトープの両方をコードするが、CD4およびCD8 T細胞LCMV核タンパク質エピトープをコードしない。並行して、プラスミドを大腸菌で増殖させ、内毒素不含プラスミド精製キット(Qiagen)を用いて精製した。C57BL/6マウスに、LCMV−Cl 13感染後29日目と34日目にDNA注射(食塩水中のプラスミドDNA(100μg/マウス)の50μl注射を両側前脛骨筋内に)を実施した。
【0134】
VII.統計分析
SigmaStat 2.0ソフトウエア(Systat Softwar,Inc.)を使用してスチューデントt検定を実施した。
【0135】
本明細書中のすべての引用は、各々個々の公表文献または特許出願が参照により本明細書に組み込まれることを具体的且つ個別に指示されているのと同じように、参照により本明細書に組み込まれる。
【0136】
当業者に明白であるように、本発明の多くの修正および変形が、本発明の精神と範囲から逸脱することなく実施され得る。本明細書で述べる特定の実施形態は単なる例として提供され、本発明は、添付の特許請求の範囲の規定によって、そのような特許請求の範囲が与える全範囲の等価物と共に、限定されるものである。そして、本発明は、本明細書中で例として提示された特定の実施形態によって限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
慢性または持続性ウイルス感染を治療する方法であって、該持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンの有効量を免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストと組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項2】
前記ウイルスに対するワクチンと前記免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストとの組み合わせが、前記慢性または持続性ウイルス感染の治療において相乗作用を示す、請求項1に記載の治療の方法。
【請求項3】
前記免疫抑制性サイトカインがIL−10である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストが、可溶性IL−10受容体(IL−10R)ポリペプチドを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記可溶性IL−10Rポリペプチドが異種ポリペプチドを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記異種ポリペプチドが抗体分子のFc部分を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記可溶性IL−10Rポリペプチドがペグ化されている、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストが、中和IL−10もしくはIL−10受容体(IL−10R)抗体またはその抗体フラグメントである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記中和IL−10またはIL−10R抗体がモノクローナル抗体である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モノクローナル抗体がヒト化されているかまたは完全にヒトのものである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体フラグメントが、Fab、Fab2、Fvおよび一本鎖抗体フラグメントからなる群より選択される、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記慢性または持続性ウイルス感染が、HBV、HCV、HIV、EBVおよびLCMVからなる群より選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ワクチンがDNAワクチンである、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストを前記ウイルスに対するワクチンの前に投与する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
慢性または持続性ウイルス感染の治療における使用のための医薬組成物であって、
(a)該持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに
(b)免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストおよび薬学的に受容可能な担体
を含有する医薬組成物。
【請求項16】
(a)持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに
(b)免疫抑制性サイトカインのアンタゴニストおよび薬学的に受容可能な担体
を含むキット。
【請求項17】
慢性または持続性ウイルス感染を治療する方法であって、該持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンの有効量を中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントと組み合わせて、治療を必要とする対象に投与することを含む方法。
【請求項18】
前記ウイルスに対するワクチンと前記中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントとの組み合わせが、前記慢性または持続性ウイルス感染の治療において相乗作用を示す、請求項17に記載の治療の方法。
【請求項19】
前記中和IL−10またはIL−10R抗体がモノクローナル抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記モノクローナル抗体がヒト化されているかまたは完全にヒトのものである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ワクチンがDNAワクチンである、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記中和IL−10またはIL−10R抗体と組み合わせて前記ワクチンを投与することが、ワクチンまたは抗体治療単独と比較した場合ウイルス特異的CD8 T細胞の2倍の増加を生じさせる、請求項17に記載の方法。
【請求項23】
IFN−γ産生ウイルス特異的T細胞が、ワクチンまたは抗体治療単独と比較した場合5倍増加する、請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記中和IL−10またはIL−10R抗体と組み合わせて前記ワクチンを投与することが、治療前レベルと比較してウイルス力価を24分の1に減少させる、請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントを前記ウイルスに対するワクチンの前に投与する、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
慢性または持続性ウイルス感染の治療における使用のための医薬組成物であって、
(a)該持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに
(b)中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントおよび薬学的に受容可能な担体
を含有する医薬組成物。
【請求項27】
(a)持続性または慢性ウイルス感染の原因因子であるウイルスに対するワクチンおよび薬学的に受容可能な担体;ならびに
(b)中和IL−10もしくはIL−10R抗体またはその抗体フラグメントおよび薬学的に受容可能な担体
を含むキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−502163(P2011−502163A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532212(P2010−532212)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2008/081614
【国際公開番号】WO2009/058888
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(501244222)ザ スクリプス リサーチ インスティテュート (33)
【Fターム(参考)】