説明

指示体検出装置

【課題】簡単な構成で複数の指示体の検出を可能とした指示体検出装置を提供する。
【解決手段】センサを構成する細長の導体が第1の方向に所定の間隔で離間して配置されており、導体選択回路によって所定の手順で選択された導体の長手方向の端部間に信号供給回路によって信号発生回路で生成した所定の周波数を有する電圧を電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給し、信号供給回路から電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給した際に導体に生じるそれぞれの信号を受信して得られたそれぞれの信号に基づいて前記導体上の指示体の位置を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、静電結合方式により指などの指示体を検出する指示体検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タッチパネル等に用いられる指示体の位置検出の方式として、近年、静電結合方式の指示体検出装置の開発が盛んに行われている。静電結合方式には、表面型(Surface Capacitive Type)と投影型(Projected Capacitive Type)の2種類の方式がある。両方式ともセンサ電極と指示体(例えば、指、静電ペン等)との間の静電結合状態の変化を検出して、指示体の位置を検出する。
【0003】
例えば特許文献1(特開2009−265759号公報)には、表面型の静電結合方式の指示体検出装置が紹介されている。
【0004】
図11は、この表面型の静電結合方式の指示体検出装置の概要を説明するための図である。図11(A)は、この指示体検出装置のセンサ部1を示すもので、例えば矩形形状のガラスなどの透明基板上や透明フィルム上の全面に導体2が形成されている。したがって、この図11(A)の例のセンサ部1においては、導体2からなる矩形形状領域が、指示体の検出領域3とされる。そして、導体2の左右両端縁には、線状の電極4aおよび4bが、互いに対向するように形成されている。この電極4aおよび4bには、図示を省略する信号処理部が接続される。
【0005】
そして、この信号処理部は、電極4aに電圧Eaを印加し、電極4bに電圧Eb(Ea>Eb;通常は、Eb=0(接地電位))を印加することで、電極4aと電極4bとの間に所定の電圧(Ea−Eb)を印加し、その所定の電圧の印加中の電極4a,4bの一方から電流を導出する。そして、信号処理部は、その電流の変化を検出することにより、指示体、例えば指5の、電極4aと4bとの間の位置を検出する。
【0006】
すなわち、指5が検出領域3上に存在しないときには、電極4a,4bの一方から導出する電流は一定となる。そして、指5が導体2に対して接触あるいは近接する状態になると、電極4a,4b間には、図11(B)に示すような電圧勾配が生じているので、指5の位置に応じた電圧Ecにより、指5から静電容量Coを通じて電流Ioが流れ出す。この電流Ioの流出のため、電極4a,4bの一方から導出する電流は、指5が存在しなかったときに比べて変化する。そして、電極4a,4bの一方から導出する電流の変化の度合いは、指示体の指示入力位置に応じた電圧Ecに応じたものとなる。したがって、信号処理部は、電極4a,4bの一方から導出する電流の変化を検出することにより、電極4aと4b間における指などの指示体の位置を検出することができる。
【0007】
なお、図12に示すように、導体2の上下両端縁にも、線状の電極4c、4dを互いに対向するように設けることにより、この電極4c,4d間の指示体の位置をも検出することができる。この場合には、信号処理部は、左右の電極4a,4bへ電圧を印加して、電極4a,4b間の指示体の位置を検出した後、左右の電極4a,4bへの電圧の印加を停止し、上下の電極4c,4dへ電圧を印加して、電極4c,4d間の指示体の位置を検出するようにする。
【0008】
このようにすることにより、信号処理部は、電極4a,4b間の指示体の位置をX方向座標位置として検出し、電極4c,4d間の指示体の位置をY方向座標位置として検出することができ、検出領域3内における指示体のX,Y座標位置を検出することができる。
【0009】
以上のような表面型に対して、投影型の静電結合方式の指示体検出装置は、例えばガラスなどの透明基板や透明フィルム上に複数の電極を所定パターンで形成して構成し、指示体が接近した際の指示体と電極との静電結合状態の変化を検出する。この投影型の静電結合方式の指示体検出装置は、例えば特許文献2(特開2003−22158号公報)、特許文献3(特開平9−222947号公報)、特許文献4(特開平10−161795号公報)などに開示されている。
【0010】
さらに、従来、投影型静電結合方式を発展させたクロスポイント静電結合方式と呼ばれる方式の指示体検出装置が提案されている。図13に、クロスポイント静電結合方式の指示体検出装置におけるセンサ部100の近傍の概略構成を示す。
【0011】
センサ部100は、一般に、複数の送信導体Y〜Yと、複数の受信導体X〜Xから構成される。なお、送信導体Y〜Yと、受信導体X〜Xとの間には絶縁層が形成される。送信導体Y〜Yは、所定方向(図13中のX方向)に延在した所定の形状を有する導体であり、複数の送信導体Y〜Yは、互いに所定間隔離して並列配置される。また、受信導体X〜Xは、各送信導体Y〜Yの延在方向に交差する方向(図13中のY方向)に延在した所定の形状を有する導体であり、複数の受信導体X〜Xは、互いに所定間隔離して並列配置される。
【0012】
このような構成のセンサ部100では、所定の送信導体に所定の信号を供給し、その所定の送信導体と、受信導体との交差点(以下、クロスポイントという)に流れる電流の変化を各クロスポイントを構成する受信導体で検出する。センサ部100上において、指等の指示体110が置かれている位置では、電流が指示体110を介して分流され、受信導体に流入する電流が変化する。それゆえ、電流が変化するクロスポイントを検出することにより、指示体110の位置を検出することができる。また、図13に示すように、センサ部100上に複数のクロスポイントが形成されるので、クロスポイント静電結合方式の指示体検出装置は、同時に複数の指示体の検出が可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2009−265759号公報
【特許文献2】特開2003−22158号公報
【特許文献3】特開平9−222947号公報
【特許文献4】特開平10−161795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
前述した表面型の静電結合方式の指示体検出装置は、センサ部の構成が非常に簡単であり、信号処理部を含めた構成が小規模となり、安価に構成できる利点がある。しかしながら、この表面型の静電結合方式の指示体検出装置では、同時には、例えば1本の指など、1個の指示体しか検出することができないという問題がある。
【0015】
一方、クロスポイント静電結合方式の指示体検出装置は、前述したように、同時に複数の指示体の検出が可能である。しかしながら、センサ部の構成が複雑であると共に、信号処理部も複雑な構成が必要となり、回路規模が大きくなって、高価な構成となってしまうという問題がある。
【0016】
この発明は、以上の点にかんがみ、同時に複数の指示体の検出を可能としながら、回路規模が大きくならないように構成した指示体検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の課題を解決するために、この発明は、
複数個の細長の導体が第1の方向に所定の間隔で離間して配置されたセンサ部と、
所定の周波数を有する電圧を発生させる信号発生回路と、
前記所定の間隔で離間した前記導体のそれぞれを所定の手順で選択するための導体選択回路と、
前記導体選択回路によって選択された前記導体の長手方向の端部間に前記信号発生回路で生成した電圧を電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給するための第1の信号供給回路と、
前記第1の信号供給回路から電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給した際に前記導体に生じるそれぞれの信号を検出するための受信回路と、
前記受信回路によって検出されたそれぞれの信号に基づいて前記導体上の指示体の位置を検出する位置演算回路と、
を備えることを特徴とする指示体検出装置を提供する。
【0018】
上述の構成のこの発明におけるセンサ部の複数個の導体のそれぞれにおいては、表面型の静電結合方式と同様にして、各導体の長手方向の端部間に存在する指示体の位置が検出される。そして、センサ部の複数個の導体のそれぞれは、導体選択回路により選択されて、複数個の導体のすべてにおいて指示体の位置の検出がなされる。指示体検出装置としては、複数個の導体のそれぞれについての指示体の位置の検出結果の集合が、センサ部における指示体の位置の判別結果として得られる。
【0019】
したがって、一つの導体の領域範囲では同時に複数の指示体を検出することはできないが、センサ部全体としては、異なる複数個の導体により、複数の指示体を検出することができる。
【0020】
そして、この発明においては、各導体における指示体の検出の際、信号発生回路で生成された電圧が、導体の長手方向の端部間に、電圧の印加方向を互いに異ならしめられて供給され、その際に各導体に生じるそれぞれの信号が受信回路で検出される。そして、位置演算回路で、受信回路によって検出されたそれぞれの信号に基づいて導体上の指示体の位置が検出されるので、各導体での指示体の位置を精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0021】
この発明による指示体検出装置によれば、同時に複数個の指示体の検出が可能になり、構成を大規模にすることなく、簡略した構成とすることができる。また、導体への電圧の印加方向を反転させ、それぞれの印加方向に電圧を印加したときの受信電流の変化を用いて、指示体の位置の検出を行うため、簡単な構成で、効率よく、指示体の位置の検出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明による指示体検出装置の第1の実施形態の全体構成を示す図である。
【図2】この発明による指示体検出装置の第1の実施形態のセンサ部の断面図の一部を示す図である。
【図3】この発明による指示体検出装置の第1の実施形態の他の例を説明するために用いる図である。
【図4】この発明による指示体検出装置の第1の実施形態の一部の構成例を示す回路図である。
【図5】この発明による指示体検出装置の第1の実施形態の指示体の検出処理動作の一例を説明するためのフローチャートを示す図である。
【図6】この発明による指示体検出装置の第2の実施形態の全体構成を示す図である。
【図7】この発明による指示体検出装置の第2の実施形態の指示体の検出処理動作の一例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図8】この発明による指示体検出装置の第2の実施形態の指示体の検出処理動作の一例を説明するためのフローチャートの一部を示す図である。
【図9】この発明による指示体検出装置の第1の実施形態の他の例を説明するために用いる図である。
【図10】この発明による指示体検出装置の第3の実施形態の全体構成を示す図である。
【図11】従来の指示体検出装置の例を説明するための図である。
【図12】従来の指示体検出装置の例を説明するための図である。
【図13】従来の指示体検出装置の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明による指示体検出装置の幾つかの実施形態を、図を参照しながら説明する。
【0024】
[第1の実施形態:図1〜図5]
図1は、この発明による指示体検出装置の第1の実施形態の全体の構成例を示すものである。この実施形態の指示体検出装置は、センサ部10と、信号処理部30と、複数個のスイッチ回路21,22,23,24,25と、制御部40とからなる。図2は、センサ部10の、図1におけるA−A線断面の一部を示す図である。
【0025】
センサ部10は、ガラスなどからなる矩形形状の透明基板11上に、複数個の細長の導体12,12,・・・,12(Nは1以上の整数)が配列されて構成されている。なお、以下の説明において、矩形形状のセンサ部10の縦方向をY方向、横方向をX方向として、指示体検出装置は、X−Y平面上における指示体の検出を行うものとする。
【0026】
複数の導体12,12,・・・,12のそれぞれは、その長手方向をY方向として設けられる。そして、複数の導体12,12,・・・,12のそれぞれの長手方向の一方の端部には、線状の電極13a,13a,・・・,13aが設けられる。また、導体12,12,・・・,12のそれぞれの長手方向において、前記一方の端部と対向する他方の端部には、線状の電極13b,13b,・・・,13bが設けられる。
【0027】
そして、複数個の導体12,12,・・・,12は、一方の端部と他方の端部が対向する長手方向とは交差する方向、すなわちX方向に、所定の間隔で、互いに平行となるように配列される。
【0028】
ここで、この例では、複数個の導体12,12,・・・,12の長手方向の長さは、センサ部10における指示体の検出領域のY方向の長さに対応して決定される。
【0029】
また、複数個の導体12,12,・・・,12のそれぞれの長手方向に直交する方向の長さ(導体の幅という)W(図2参照)は、指示体の例としての指による導体に対する指示入力を確実に検知できる長さとされ、例えば10mmとされる。
【0030】
また、図2に示す、隣接する2つの導体間の間隔Dsは、この間隔Dsの領域に指示体の例としての指が位置したときに、これら隣接する2つの導体で同時に指示体が検出されることがないような長さとされ、この例では、Ds=10mmとされる。
【0031】
そして、センサ部10の指示体の検出領域のX方向の長さは、このX方向に配列された複数個の導体12,12,・・・,12のX方向の長さに対応して決定される。
【0032】
図2に示すように、複数の導体12,12,・・・,12の上には、透明の保護カバー部材14が設けられる。
【0033】
以上のように構成されるセンサ部10に対しては、その複数の導体12,12,・・・,12のそれぞれを順次選択するための導体選択回路を構成するスイッチ回路21,22が設けられる。スイッチ回路21は、複数の導体12,12,・・・,12のそれぞれの線状の電極13a,13a,・・・,13aと接続されるN個の端子を備える。また、スイッチ回路22は、複数の導体12,12,・・・,12のそれぞれの線状の電極13b,13b,・・・,13bと接続されるN個の端子を備える。
【0034】
そして、スイッチ回路21とスイッチ回路22とは、複数の導体12,12,・・・,12を順次選択するように、切り替え制御信号SW1により連動して切り替え制御される。すなわち、例えば、スイッチ回路21が、導体12の一方の電極13aに接続されている端子に接続されるときには、スイッチ回路22は導体12の他方の電極13bに接続されている端子が接続されて、導体12が選択されるように連動して切り替えられる。なお、スイッチ回路21,22は、複数の導体12,12,・・・,12のそれぞれを、前記所定時間毎に順次選択する。すなわち、所定の導体選択シーケンスに従って選択される。
【0035】
なお、図1の例では、導体12のそれぞれとスイッチ回路21,22の端子との接続のために、導体12には線状の電極13aおよび13bを設けるようにしたが、線状の電極の代わりに、図3に示すように、導体12のそれぞれの4隅に点状の電極13c,13d,13eおよび13fを設けても良い。すなわち、この点状の電極の場合には、電極13cと13dとを接続して、その接続点をスイッチ回路21の端子に接続すればよい。また、電極13eと13fとを接続して、その接続点をスイッチ回路22の端子に接続すればよい。
【0036】
この実施形態では、スイッチ回路21,22により選択されたそれぞれの導体12に対して、信号処理部30からその印加方向が反転可能に、所定の周波数を備えた電圧Vが印加される。スイッチ回路23,24,25は、導体12の長手方向の端部間に電圧Vを、電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給するための信号供給回路を構成する。
【0037】
スイッチ回路25の入力端子には、信号処理部30からの電圧Vが供給される。このスイッチ回路25の一方の出力端子Aは、スイッチ回路23の一方の入力端子Aに接続され、また、スイッチ回路25の他方の出力端子Bは、スイッチ回路24の他方の入力端子Bに接続される。
【0038】
そして、スイッチ回路23の他方の入力端子Bは接地されると共に、スイッチ回路24の一方の入力端子Aは接地される。スイッチ回路23の出力端子は、スイッチ回路21の共通端子に接続される。また、スイッチ回路24の出力端子は、スイッチ回路22の共通端子に接続される。スイッチ回路23,24および25は、切り替え制御信号SW2により、連動して、一方の端子Aと、他方の端子Bとに切り替えられる。
【0039】
スイッチ回路23,24および25のそれぞれが、一方の端子A側に切り替えられているときには、電圧Vはスイッチ回路25およびスイッチ回路23を通じて、スイッチ回路21に供給される。このとき、スイッチ回路22の共通端子は、スイッチ回路24を通じて接地される。したがって、電圧Vは、スイッチ回路21,22で選択された一つの導体12の一方の電極13a側に印加される状態になる。
【0040】
逆に、スイッチ回路23,24および25のそれぞれが、他方の端子B側に切り替えられているときには、電圧Vはスイッチ回路25およびスイッチ回路24を通じて、スイッチ回路22に供給される。このとき、スイッチ回路21の共通端子は、スイッチ回路23を通じて接地される。したがって、電圧Vは、スイッチ回路21,22で選択された一つの導体12の他方の電極13b側に印加される。
【0041】
次に、信号処理部30について説明する。高周波信号発生回路31は、所定の周波数を有する電圧Vを生成するためのデジタル信号を発生する。この高周波信号発生回路31からのデジタル信号は、デジタル−アナログ変換器32に供給されてアナログ形式の信号に変換される。このデジタル−アナログ変換器32からのアナログ信号は、ドライブ回路33によって増幅されて、スイッチ回路25の入力端子に供給される。
【0042】
ドライブ回路33は、また、受信回路34の入力端子に接続される。この受信回路34は、センサ部10の各導体12に電圧Vが印加された際に、各導体12に生成される信号を電流信号として検出する回路で、その電流信号をアナログ−デジタル変換器35に供給する。
【0043】
図1において点線で囲んだドライブ回路33と受信回路34からなる電圧供給および電流検出回路330は、例えば米国特許7,714、846の図11に記載されているものと同様の構成とすることができる。このドライブ回路33と受信回路34からなる電圧供給および電流検出回路330の回路例を、図4に示す。
【0044】
すなわち、デジタル−アナログ変換器32からの信号は、オペアンプ331の非反転入力端子に供給されると共に、オペアンプ341の反転入力端子に供給される。オペアンプ331の出力端子と反転入力端子との間には、抵抗332とコンデンサ333との並列回路が接続されると共に、オペアンプ331の反転入力端子は、スイッチ回路25の入力端子に接続される。そして、オペアンプ331の出力端子は、オペアンプ341の非反転入力端子に接続される。そして、オペアンプ341の出力端子は、アナログ−デジタル変換器35の入力端子に接続される。
【0045】
この図4の構成により、オペアンプ341からは、センサ部10の各導体12に電圧Vが印加された際に、センサ部10の導体上の指示体の有無に応じて変化する電流信号が検出される。
【0046】
アナログ−デジタル変換器35は、入力された電流信号をデジタル信号に変換し、復調部36に供給する。復調部36は、高周波信号発生回路31から出力されるデジタル信号に基づいて、アナログ−デジタル変換器35からのデジタル信号を復調(同期検波)することで、受信回路34に供給される電流信号のレベルに応じた検波出力を得る。復調部36は、各導体12についての検波出力を、レジスタ37内の当該導体12に対応したアドレスに一時保持する。この場合、導体12に対する電圧Vの印加方向を反転させ、それぞれの印加方向において受信電流信号の検出を行うので、各導体12についての検波出力としては、電圧Vの印加方向のそれぞれに対応して2つの値が一時保持される。
【0047】
レジスタ37には、スイッチ回路21〜25の切り替え制御により、複数の導体12,12,・・・,12のそれぞれについての検波出力が、各導体12に対応したアドレスに順次一時保持される。
【0048】
タイミングコントローラ38は、制御部40からの制御を受けて、タイミング制御信号を発生する。すなわち、タイミングコントローラ38は、高周波信号発生回路31に対して、高周波信号の発生、停止を制御する制御信号を供給する。また、タイミングコントローラ38は、切り替え制御信号SW1を生成して、スイッチ回路21,22に供給すると共に、切り替え制御信号SW2を生成して、スイッチ回路23,24,25に供給する。さらに、タイミングコントローラ38は、レジスタ37に、各導体12に対応した検波出力結果を一時保持するためのタイミング制御信号を供給する。
【0049】
制御部40は、例えばマイクロコンピュータを備えて構成されており、この実施形態の指示体検出装置の全体の動作を制御する。すなわち、制御部40は、タイミングコントローラ38を制御して前記各種制御信号の発生タイミングを制御すると共に、レジスタ37における各導体12に対応した検波出力結果の書き込みアドレスを制御する。
【0050】
また、制御部40は、複数の導体12,12,・・・,12のすべてについて電圧Vの印加および検波出力結果のレジスタ37への格納が終了すると、レジスタ37に一時保持された、複数の導体12,12,・・・,12のすべてについての検波出力結果を読み出して指示体の位置検出処理を実行するための制御を行う。
【0051】
すなわち、指示体の位置検出処理においては、各導体12についての検波出力結果から指示体が指示した位置を検出する。
【0052】
この指示位置の検出においては、導体12に対する電圧Vの印加方向を順方向と逆方向の2方向に設定して得られた検波出力結果を使用する。例えば、電圧Vを、導体12の一方の電極13a側に印加した場合において検出される電流信号と、電圧Vを、導体12の他方の電極13b側に印加した場合において検出される電流信号との差分演算を行なうことで、指示体の位置を検出する。
【0053】
すなわち、例えば、電圧Vを導体12の一方の電極13a側に印加した場合において検出される電流信号から、電圧Vを導体12の他方の電極13b側に印加した場合において検出される電流信号を減算する差分演算を行うと、指示体の位置が導体12の長手方向の中央位置であれば、その差分演算結果はゼロとなる。そして、指示体の位置が、導体12の長手方向の中央位置よりも電極13a側になると、前記差分演算結果は中央位置からの距離に応じた正の値となる。また、指示体の位置が、導体12の長手方向の中央位置よりも電極13b側になると、前記差分演算結果は中央位置からの距離に応じた負の値となる。したがって、差分演算結果を用いることで、指示体の位置を検出することができる。
【0054】
電圧Vを導体12の電極に印加した場合において検出される電流信号には、一般に、不要なオフセット分が含まれるが、上記の差分演算を用いる方法によれば、差分演算により不要なオフセット分をキャンセルすることができるという効果がある。
【0055】
なお、電圧Vを導体12の一方の電極13aに印加した場合と他方の電極13bに印加した場合との両方の演算結果を用いて指示体の位置を検出する方法としては、上述の例の差分演算を用いる方法に限られるものではない。例えば、電圧Vを導体12の一方の電極13a側に印加した場合において検出される電流信号と、電圧Vを導体12の他方の電極13b側に印加した場合において検出される電流信号との比から、指示体の位置を検出するようにすることもできる。その場合には、予め、前記不要なオフセット分を検知しておき、その検知したオフセット分を、前記検出される電流信号のそれぞれから減算して指示体の位置の検出結果の信頼性を高めるようにすることで検出性能を高めることができる。
【0056】
次に、制御部40の制御に基づいて行われる、この実施形態の指示体検出装置における処理動作の一例を、図5のフローチャートを参照しながら説明する。
【0057】
先ず、初期化を行う(ステップS101)。このステップS101では、指示体の検出をする導体を12として、最初の導体12を指定、すなわち、i=1とする。
【0058】
次に、スイッチ回路21,22が切り替え制御信号SW1によって制御されて、導体12が選択される(ステップS102)。
【0059】
次に、スイッチ回路23,24,25が切り替え制御信号SW2によって制御されて、それぞれのスイッチ回路の端子A側が選択されて、信号処理部30からの電圧Vが、当該導体12の一方の電極13a側に印加される(ステップS103)。なお、導体12の他方の電極13b側はスイッチ回路24を通じて接地される。この時、受信電流を検波した結果Daがレジスタ37の導体12用のアドレスに書き込まれる(ステップS104)。
【0060】
次に、スイッチ回路23,24,25が切り替え制御信号SW2によって制御されて、それぞれのスイッチ回路の端子B側が選択されて、信号処理部30からの電圧Vが、導体12の他方の電極13b側に印加される(ステップS105)。なお、導体12の一方の電極13a側はスイッチ回路23を通じて接地される。この時、受信電流を検波した結果Dbがレジスタ37の導体12用のアドレスに書き込まれる(ステップS106)。
【0061】
そして、制御部40は、導体12,12,・・・,12の全てについて、ステップS101〜ステップS106の処理を終了したか否か判別し(ステップS107)、処理を終了してはいないと判別したときには、i=i+1として、次の導体を指定し(ステップS108)、ステップS102に戻り、このステップS102以降の処理を繰り返す。
【0062】
また、ステップS107で、導体12,12,・・・,12の全てが選択されたと判別したときには、制御部40は、レジスタ37に保持されている導体12,12,・・・,12の全てについての検波結果Da,Dbを読み出して、前述した指示体のセンサ10における位置を算出する(ステップS109)。そして、制御部40は、処理をステップS101に戻し、処理を繰り返す。
【0063】
なお、制御部40は、上述したステップS101〜ステップS108の処理と指示体の位置算出を並列処理にて行う。
【0064】
以上説明した実施形態の指示体検出装置によれば、センサ部10においては、複数個の導体12,12,・・・,12のそれぞれにおいて、独立して指示体の検出ができるので、センサ部10の横方向(X方向)に配置された複数個の指示体のそれぞれについて、複数の指示体の指示する位置を同時に検出できる。しかも、上述の実施形態の指示体検出装置では、クロスポイント方式の投影型の指示体検出装置に比べて、回路規模を小さくすることができる。
【0065】
そして、上述の実施形態の指示体検出装置では、電圧Vの導体12への印加方向を反転させ、それぞれの印加方向に電圧Vを印加したときの受信電流の変化を用いて、指示体の位置の検出を行うようにするので、簡単な構成で、効率よく、指示体の位置の検出が可能になる。
【0066】
[第1の実施形態の変形例]
なお、上述の実施形態では、導体12への電圧の印加方向を順方向と逆方向に繰り返し切り替えることで、それぞれの方向における受信電流の変化を検出して、指示体の位置を求めるようにした。しかし、次のようにしても良い。すなわち、センサ10上に指示体が検出されるまでは、所定の周波数を有する電圧Vの導体12への印加方向は一方向として、各導体12について検波結果Daを検出する。そして、検波結果Daに基づいて、センサ10上に指示体が存在しないと判断されている間は指示体検出処理を繰り返す。
【0067】
そして、複数個の導体12,12,・・・,12のそれぞれの検波結果Daから指示体の存在が検出された際には、当該指示体が検出された1または複数個の導体12について、電圧Vの印加方向を反転させて、その受信電流の検波結果Dbを得る。そして、検波結果DaおよびDbを用いて指示体の位置を算出する。この例の場合には、指示体の検出処理が効率的かつ高速となり、電力消費の削減も図ることができる。
【0068】
[第2の実施形態:図6〜図9]
上述した第1の実施形態では、導体12の一方の電極13aと他方の電極13bとの間の位置をY方向の位置として、指示体の位置を検出する。X方向における指示体の位置は、複数個の導体12,12,・・・,12のいずれの導体が選択されているかによって検出している。つまり、指示体の位置は、導体のY方向において、検波結果に基づいて検出し、X方向の位置は検波結果に基づいた検出を行っていない。
【0069】
第2の実施形態は、この点にかんがみ、導体12のそれぞれにおいて、指示体のY方向の位置に加えて、X方向の位置もまた、各導体の選択情報に代えて、受信信号に基づいて検出することができるようにする。
【0070】
図6に、この第2の実施形態の指示体検出装置の全体の構成例を示す。この図6において、図1に示した第1の実施形態の指示体検出装置と同じ構成部分には同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0071】
この第2の実施形態の、透明基板11Aに設けられたセンサ部10Aにおいては、複数の導体14,14,・・・,14のそれぞれには、Y方向の一端部に線状の電極15a,15a,・・・,15aおよびY方向の他端部には線状の電極15b,15b,・・・,15bを備えるだけでなく、Y方向に直交するX方向の一端部に線状の電極15g,15g,・・・,15gを備えると共に、X方向の他端部には線状の電極15h,15h,・・・,15hを備える。
【0072】
そして、第2の実施形態においては、スイッチ回路21と複数の導体14,14,・・・,14のそれぞれとの間にスイッチ回路26,26,・・・,26を設ける。また、スイッチ回路22と複数の導体14,14,・・・,14のそれぞれとの間にスイッチ回路27,27,・・・,27を設ける。
【0073】
スイッチ回路26(i=1,2,・・・,N)の端子Yは、導体14のY方向の一端部の電極15aに接続され、スイッチ回路26の端子Xは、導体14のX方向の一端部の電極15gに接続される。そして、スイッチ回路26の共通端子は、スイッチ回路21の、導体14を選択するためのそれぞれの端子に接続される。
【0074】
また、スイッチ回路27の端子Yは、導体14のY方向の他端部の電極15bに接続され、スイッチ回路27の端子Xは、導体14のX方向の他端部の電極15hに接続される。そして、スイッチ回路27の共通端子は、スイッチ回路22の、導体14を選択するためのそれぞれの端子に接続される。
【0075】
スイッチ回路26およびスイッチ回路27は、切り替え制御信号SW3により、導体14の端子Yと端子Xとを切り替えるために連動制御される。切り替え制御信号SW3はタイミングコントローラ38Aによって生成される。
【0076】
次に、制御部40Aの制御に基づいて行われる、第2の実施形態の指示体検出装置における処理動作の一例を、図7、図8のフローチャートを参照しながら説明する。
【0077】
先ず、初期化(i=1)を行う(ステップS201)。
【0078】
次に、スイッチ回路21,22が切り替え制御信号SW1によって制御されて、導体14を選択する(ステップS202)。
【0079】
次に、スイッチ回路23,24,25のそれぞれが切り替え制御信号SW2によって制御されて、各スイッチ回路の端子A側に切り替えられる、同時に、スイッチ回路26および27が切り替え制御信号SW3により制御されて、各スイッチ回路の端子Y側に切り替えられる。同時に、信号処理部30Aから供給された電圧Vが、当該導体14のY方向における一方の電極15a側に印加される(ステップS203)。このとき、導体14のY方向における他方の電極15b側は接地される。
【0080】
そして、制御部40Aは、当該導体14のY方向における一方の電極15a側に電圧Vを印加したときの受信電流の検波結果YDaを、レジスタ37の導体14用のアドレスに書き込む(ステップS204)。
【0081】
次に、スイッチ回路23,24,25のそれぞれが切り替え制御信号SW2によって制御されて、各スイッチ回路の端子B側に切り替えられる。同時に、信号処理部30Aから供給された電圧Vが、導体14のY方向における他方の電極15b側に印加される(ステップS205)。このとき、導体14のY方向における一方の電極15a側は接地される。
【0082】
そして、制御部40Aは、当該導体14のY方向における他方の電極15b側に電圧Vを印加したときの受信電流の検波結果YDbを、レジスタ37の導体14用のアドレスに書き込む(ステップS206)。
【0083】
そして、制御部40Aは、導体14,14,・・・,14の全てについて、ステップS201〜ステップS206の処理を終了したか否か判別し(ステップS207)、処理が終了してはいないと判別したときには、i=i+1として、次の導体を指定し(ステップS208)、処理をステップS102に戻し、このステップS202以降の処理を繰り返す。
【0084】
また、ステップS207で、導体14,14,・・・,14の全てについて、処理が終了したと判別したときには、制御部40Aは、レジスタ37に保持されている導体14,14,・・・,14の全てについての検波結果YDa,YDbを取り込んで、各導体14のY方向における、指示体の位置を算出する(ステップS209)。
【0085】
次に、制御部40Aは、指示体の存在を検出した導体(以下、指示体を検出した導体を導体14(j=1〜Nのうちの任意の整数)と称する)が存在するか否かを判別する。導体14が存在しないと判別したときには、ステップS201に戻る。
【0086】
図8に示すステップS211で、導体14が存在すると判別したときには、制御部40Aは、導体14を指定する。また、導体14が複数存在する場合にはその一つを選択する(ステップS212)。そして、切り替え制御信号SW3によってスイッチ回路26およびスイッチ27が制御されて、端子X側に切り替えられる。同時に、切り替え制御信号SW2によって、スイッチ回路23,24,25のそれぞれが端子A側に切り替えられて、信号処理部30Aから供給された電圧Vが、当該導体14のX方向における一方の電極15g側に印加される(ステップS213)。このとき、導体14のX方向における他方の電極15h側は接地される。
【0087】
そして、制御部40Aは、導体14のX方向における一方の電極15g側に電圧Vを印加したときの受信電流の検波結果XDaを、レジスタ37の導体14用のアドレスに書き込む(ステップS214)。
【0088】
次に、切り替え制御信号SW2によって、スイッチ回路23,24,25のそれぞれが端子B側に切り替えられて、信号処理部30Aから供給された電圧Vが、導体14のX方向における他方の電極15h側に印加される(ステップS215)。このとき、導体14のX方向における一方の電極15g側は接地される。
【0089】
そして、制御部40Aは、導体14のX方向における他方の電極15h側に電圧Vを印加したときの受信電流の検波結果XDbを、レジスタ37の導体14用のアドレスに書き込む(ステップS216)。
【0090】
そして、制御部40Aは、導体14の全てについて、ステップS211〜ステップS216の処理が終了したか否かを判別する(ステップS217)。ステップS217で、処理が終了していない導体14が他にあると判別したときには、ステップS212に戻る。また、ステップS217で、全ての導体14が処理されたことが判別したときには、制御部40Aは、レジスタ37に書き込まれた、Y方向における検波結果YDa、YDbおよびX方向における検波結果XDa、XDbに基づいて、センサ部10Aにおける指示体の位置を算出する(ステップS218)。
【0091】
そして、ステップS218の作業が終わるとステップS201に戻る。
【0092】
以上のようにして、この第2の実施形態によれば、センサ10A上の各導体14のそれぞれにおいて、X方向における位置およびY方向における位置を検出できるために、指示体の位置を精度良く検出することができる。
【0093】
第2の実施形態においては、センサ部10Aの各導体14のそれぞれにおいては、センサ10A上で指示体が検出されるまでは、センサ10AのY方向における指示体の検出処理のみが実行される。そして、センサ10AのY方向における指示体の検出処理で指示体が検出されたときには、指示体が検出された導体のみについて、センサ部10AのX方向における指示体の検出処理がなされる。したがって、指示体の検出処理が効率的かつ高速となり、電力消費の削減も図ることができるという効果が得られる。
【0094】
なお、導体14,14,・・・,14のそれぞれにおいて、Y方向における検出とX方向における検出を連続して行うようにしても良い。
【0095】
[第2の実施形態の変形例]
なお、図6の例では、導体14には、線状の電極15a、15b、15g、15hを設けるようにしたが、線状の電極の代わりに、図9に示すように、導体16のそれぞれの4隅に点状の電極17c,17d,17eおよび17fを設けても良い。
【0096】
図9は、センサ部10Bの導体16のそれぞれの4隅に、点状の電極17c,17d,17eおよび17fを導体16を設けた場合の要部構成図である。
【0097】
この場合、点状の電極17c,17dのペアは、導体16のY方向における一端部の電極であり、点状の電極17e,17fのペアは、導体16のY方向における他端部の電極である。また、点状の電極17c,17eのペアは、導体16のX方向における一端部の電極であり、点状の電極17d,17fのペアは、導体16のX方向における他端部の電極である。
【0098】
この例の場合には、導体16の4隅の電極17c,17d,17eおよび17fのうちの一つの電極、例えば電極17cを、スイッチ回路21の導体16用の端子に接続する。そして、導体16の4隅の電極17c,17d,17eおよび17fのうち、電極17cと対角に位置する電極17fを、スイッチ回路22の導体16用の端子に接続する。
【0099】
そして、スイッチ回路26の端子Xは、残りの対角位置の電極の一方である電極17eに接続し、このスイッチ回路26の端子Yは、電極17eと対角位置の電極17dに接続する。また、スイッチ回路27の端子Xは、電極17dに接続し、このスイッチ回路27の端子Yは、電極17eに接続する。
【0100】
そして、スイッチ回路26およびスイッチ回路27は、上述の実施形態と同様に、切り替え制御信号SW3によって、端子Y側および端子X側に切り替えられる。
【0101】
この図9の例の構成によれば、導体16のそれぞれには、線状の電極ではなく、点状の電極を設けるだけで良いので、構成が簡単になる。
【0102】
[第3の実施形態:図10]
以上の実施形態においては、一つの導体上では一つの指示体しか検出できない。
【0103】
第3の実施形態は、この問題を解決したものである。図10に、この第3の実施形態の指示体検出装置の全体の構成例を示す。この図10において、図1に示した第1の実施形態の指示体検出装置と同じ構成部分には同一参照符号を付してその説明を省略する。
【0104】
第3の実施形態は、図1に示す第1の実施形態を発展させることで、同時に複数の指示体が検出可能な構成を備える。すなわち、図1において、センサ部10には、ガラスなどからなる矩形形状の透明基板11の一面上に、複数個の細長の導体12,12,・・・,12(Nは1以上の整数)が配列されて構成されており、スイッチ回路21〜25が切り替え制御信号SW1〜2によって制御されることで指示体を検出する構成を備えている。
【0105】
第3の実施形態のセンサ部10Cでは、例えば、透明基板11の他面上に、導体12,12,・・・,12(Nは1以上の整数)と同様な形状を有する、複数個の細長の導体18,18,・・・,18(Mは1以上の整数)が導体12,12,・・・,12とは交差する方向に配列された透明基板11Cを備える。そして、スイッチ回路21〜24と同様なスイッチ回路21X〜24Xが切り替え制御信号SW1X及びSW2Xによって制御される。
【0106】
スイッチ回路21Xおよび22Xは、複数の導体18,18,・・・,18のそれぞれを所定の導体選択シーケンスで選択するための導体選択回路を構成する。また、スイッチ回路23X,24X,25Xは、導体18,18,・・・,18の長手方向の端部間に電圧Vを、電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給するための信号供給回路を構成する。
【0107】
なお、導体18,18,・・・,18(Mは1以上の整数)による指示体の検出処理は、導体12,12,・・・,12による指示体の検出処理と同様な処理であるため、その検出動作の詳細は割愛する。
【0108】
図1に示す第1の実施形態におけるスイッチ回路25とは異なり、第3の実施形態ではスイッチ回路25Yおよびスイッチ回路25Xを備え、それぞれのスイッチ回路は、端子Aおよび端子Bの他に、電圧Vを何処にも出力しない解放端子Cを備える。
【0109】
これは、この第3の実施形態では、複数個の導体12,12,・・・,12と複数個の導体18,18,・・・,18との間で、一方の方向に配置された複数の導体に電圧Vを印加して指示体の検出を行うときには、他の方向に配置された複数の導体への電圧Vの印加を停止させるためである。スイッチ回路25Y,25Xは、切り替え制御信号SW3YおよびSW3Xによって制御される。
【0110】
この第3の実施形態では、タイミングコントローラ38Cは、切り替え制御信号SW1、SW1X、SW2、SW2X、SW3Y、SW3Xを、制御部40Cの制御に基づいて出力する。
【0111】
スイッチ回路25Xは、切り替え制御信号SW3Xにより、導体12,12,・・・,12が動作している時には導体18,18,・・・,18の動作を停止させるために端子Cに切り替えられる。また、スイッチ回路25Yは、切り替え制御信号SW3Yにより、導体18,18,・・・,18が動作しているときには導体12,12,・・・,12の動作を停止させるために端子Cに切り替えられる。
【0112】
そして、導体12,12,・・・,12が動作している時には、スイッチ回路25Yに、切り替え制御信号SW3Yとして図1に示したスイッチ25への切り替え制御信号SW2と同じ信号を供給することで、スイッチ回路23,24の切り替えと相俟って、端子Aおよび端子Bが適宜選択されて、図1に示す動作と同じ動作が遂行される。また、導体18,18,・・・,18が動作している時には、スイッチ回路25Xおよびスイッチ回路23X,24Xに、同様に、端子Aおよび端子Bを適宜選択する切り替え制御信号SW3X、SW2Xを供給することで、端子Aおよび端子Bが適宜選択されて、導体12,12,・・・,12の場合の動作と同様の動作が遂行される。
【0113】
以上の説明から判るように、スイッチ回路25Y,25Xは、制御部40Cによる切り替え制御と相俟って、複数個の導体12,12,・・・,12と複数個の導体18,18,・・・,18とを選択的に動作させるための位置検出動作制御回路を構成する。
【0114】
次に、この第3の実施形態における動作の流れについて説明する。なお、上述したように、導体12,12,・・・,12による指示体の検出処理、および導体18,18,・・・,18による指示体の検出処理は、図1および図5に示す処理と同様であることは明らかであるため、その詳細は割愛する。
【0115】
先ず、タイミングコントローラ38Cは、切り替え制御信号SW3Xをスイッチ回路25Xに供給することで、このスイッチ回路25Xで端子Cを選択させて、導体18,18,・・・,18による指示体の検出処理を停止状態とする。
【0116】
一方、スイッチ回路25Yには、図1に示すスイッチ25への切り替え制御信号SW2と同じ信号を供給すると共に、スイッチ回路23,24に切り替え制御信号SW2を供給することで端子Aおよび端子Bが適宜選択されて、図1に示す動作と同じ動作が遂行される。
【0117】
図5に示した指示体を検出するための一連の導体選択動作が終了すると、切り替え制御信号SW3Yによってスイッチ回路25Yの端子Cが選択されて導体12,12,・・・,12の動作が停止されるとともに、切り替え制御信号SW3Xによってスイッチ回路25Xの端子Aおよび端子Bが適宜選択されて導体18,18,・・・,18による指示体の検出処理が開始させる。
【0118】
そして、スイッチ回路25Xおよびスイッチ回路23X,24Xに、切り替え制御信号SW3XおよびSW2Xを供給することで、端子Aおよび端子Bが適宜選択されて、導体18,18,・・・,18による指示体の検出動作が同様に遂行される。
【0119】
第3の実施形態では、スイッチ25Xおよびスイッチ25Yを切り替え制御信号SW3XおよびSW3Yによって制御することで、導体12,12,・・・,12による指示体の検出処理と、導体18,18,・・・,18による指示体の検出処理とが交互に繰り返えされる。このような制御を行うことによって、センサ部10C上の複数の指示体の位置を検出できる。
【0120】
第3の実施形態では、便宜上、センサ部10Cの一方向に配置された導体を選択して指示体の検出が終了した後に、センサ部10Cの他方向に配置された導体に切り替えて指示体の検出を開始するようにした、複数の指示体を検出するための構成を示した。
【0121】
また、電圧Vが、センサ部10CのY方向における指示体の検出およびセンサ部10CのX方向における指示体の検出の両方で共通に使用するように構成している。これにより、信号処理部30Cの構成が簡単になる。
【0122】
また、第3の実施形態においても、図6および図7で示したように、センサ10C上で指示体が検出されるまでは、センサ部10CのY方向における指示体の検出処理のみを実行し、センサ10CのY方向における指示体の検出処理で指示体が検出されたときには、センサ部10CのX方向における指示体の検出処理を開始する構成を採用することも、その構成の詳細を改めて説明するまでもなく、容易に実現できる。この構成を採用することで、指示体の検出処理が効率的かつ高速となり、電力消費の削減も図ることができるという効果が得られる。
【0123】
[第3の実施形態の変形例]
センサ部10CのY方向における検出処理で使用する電圧Vおよびセンサ部10CのX方向における検出処理で使用する電圧Vを、それぞれ別々の信号処理部で生成してもよい。この場合には、受信電流の検出も、別々の信号処理部で行うことになる。
【0124】
[その他の実施形態または変形例]
上述の実施形態の説明では、指示体は指を例示したが、静電ペンであってももちろん良い。また、導体は、細長の矩形形状としたが、導体は矩形形状に限られるものではない。さらに、センサ部の形状も矩形形状に限られるものではない。
【0125】
また、上述の実施形態では、導体の一方の電極に所定の周波数を有する電圧Vを印加すると共に、他方の電極は接地するようにしたが、他方の電極に所定の電圧を印加するようにしても勿論良い。
【符号の説明】
【0126】
10,10A,10B,10C…センサ部、12,12,・・・,12…導体、13a,13a,・・・,13a…一方の電極、13b,13b,・・・,13b…他方の電極、21,22…スイッチ回路、30…信号処理部、40…制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の細長の導体が第1の方向に所定の間隔で離間して配置されたセンサ部と、
所定の周波数を有する電圧を発生させる信号発生回路と、
前記所定の間隔で離間した前記導体のそれぞれを所定の手順で選択するための導体選択回路と、
前記導体選択回路によって選択された前記導体の長手方向の端部間に前記信号発生回路で生成した電圧を電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給するための第1の信号供給回路と、
前記第1の信号供給回路から電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給した際に前記導体に生じるそれぞれの信号を検出するための受信回路と、
前記受信回路によって検出されたそれぞれの信号に基づいて前記導体上の指示体の位置を検出する位置演算回路と、
を備えることを特徴とする指示体検出装置。
【請求項2】
前記受信回路は、前記第1の信号供給回路から電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給した際に前記導体に生じるそれぞれの信号を電流として検出することを特徴とする請求項1に記載の指示体検出装置。
【請求項3】
前記位置演算回路は、前記受信回路によって受信されたそれぞれの信号の差分演算を行うことで前記導体上の指示体の位置を検出するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の指示体検出装置。
【請求項4】
前記第1の信号供給回路は、前記導体の端部のそれぞれに接続されるスイッチ回路を備え、前記スイッチ回路を介して前記信号発生回路で生成した電圧の印加方向を異ならしめるようにしたことを特徴とする請求項1に記載の指示体検出装置。
【請求項5】
前記導体の長手方向に直交する方向の端部間に前記信号発生回路で生成した電圧を電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給するための更なる第2の信号供給回路を備え、前記第2の信号供給回路から前記導体に供給された電圧に基づいて前記導体に生じるそれぞれの信号も指示体の位置演算に供せられることを特徴とする請求項1に記載の指示体検出装置。
【請求項6】
前記第1の信号供給回路から前記導体に供給された電圧に基づいて前記導体に生じるそれぞれの信号から指示体の存在が検出された場合に、前記第2の信号供給回路から前記導体に供給された電圧に基づいて指示体の位置を検出するようにしたことを特徴とする請求項5に記載の指示体検出装置。
【請求項7】
前記センサ部の第1の方向に直交する第2の方向に更に複数個の細長の導体が所定の間隔で離間配置されており、前記第2の方向に配置された前記導体のそれぞれを所定の手順で選択するための第2の導体選択回路と、
前記第2の導体選択回路によって選択された前記導体の長手方向の端部間に前記信号発生回路で生成した電圧を電圧の印加方向を互いに異ならしめて供給するための更なる信号供給回路と、
前記第1の方向に配置された前記導体と前記第2の方向に配置された前記導体とを選択的に動作させるための位置検出動作制御回路と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の指示体検出装置。
【請求項8】
前記第1の方向に配置された前記導体によって指示体の存在が検出された場合には前記位置検出動作制御回路の制御に基づいて前記第2の方向に配置された前記導体をも選択的に動作させて指示体の位置を検出するようにしたことを特徴とする請求項7に記載の指示体検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−137820(P2012−137820A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287955(P2010−287955)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000139403)株式会社ワコム (118)
【Fターム(参考)】