説明

振動アクチュエータ

【課題】本発明は、薄型化を可能にして、構造を複雑化させることなく耐落下衝撃性を高くすることができる振動アクチュエータを提供する。
【解決手段】振動アクチュエータ1は、振動方向で延在する偏平なコイル6と、振動方向で延在する偏平なマグネット7とを備えているので、筐体4を偏平すなわち薄型化することができる。錘部11,12がシャフト13によって支持されているので、落下衝撃時に、錘部11,12をシャフト13に沿って動かすことができ、これによって、錘部11,12が筐体4内で自由に暴れることがない。また、ばね受け部14と錘部11,12との間にコイルばね16,17を配置させているので、筐体4内で無駄なスペースを作り出すことなく、省スペース化を達成させ、振動アクチュエータ1のコンパクト化すなわち小型化を達成させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話などの携帯無線装置の着信を利用者に知らせる振動発生源や、タッチパネルの操作感触や遊技機の臨場感を指や手に伝えるための振動発生源などに利用される小型の振動アクチュエータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、このような分野の技術として、特開平10−117472号公報がある。この公報の図1に記載された振動アクチュエータは、内側に軟弾性体が固着された枠体を有し、この枠体内には、磁性体からなる円柱状のヨークが配置されている。このヨークは、振動発生用の錘を兼ねると共に、筐体内で板ばねにより支持されている。この板バネは、筐体の開口を塞ぐ板状の第1の弾性体に固定され、中央が盛り上がった渦巻きのような形状を有している。そして、ヨークの端面に形成された環状の溝内には、環状のコイルが挿入され、このコイルは、枠体の開口を塞ぐ板状の第2の弾性体に固定され、溝の壁面には環状のマグネットが固定されている。このような構成の振動アクチュエータは、コイルに所定の周波数の電流を通電させると、錘として機能するヨークが中心軸線に沿って振動し、第1及び第2の弾性体が所望の周波数で共振することにより、所望の振動を枠体に発生させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−117472号公報
【特許文献2】特開2002−177882号公報
【特許文献3】特開2003−24871号公報
【特許文献4】特開2002−200460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した従来の振動アクチュエータは、ヨークが枠体の中心軸線方向に振動するので、ヨークの振幅を大きくすると、円筒状の枠体は中心軸線方向に長くなり、振動アクチュエータの薄型化を達成し難い。また、ヨークは枠体内で比較的自由に揺れ動く。従って、ヨークは落下衝撃によって、激しく枠体に衝突する可能性が高いので、この振動アクチュエータは、耐衝撃性が低い構造であると言え、枠体に対するヨークの衝突を緩和するための様々な対策が必要になり、構造が複雑化するといった問題点がある。
【0005】
本発明は、薄型化を可能にして、構造を複雑化させることなく耐落下衝撃性を高くすることができる振動アクチュエータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、筐体に固定されたコイルと、コイルに対面して配置されたマグネットとの協働により、マグネットがリニアに振動する振動アクチュエータにおいて、
振動方向で延在する偏平なコイルと、
振動方向で延在する偏平なマグネットと、
振動方向で延在して、両端が筐体に固定されたシャフトと、
筐体に設けられると共に、シャフトが貫通するばね受け部と、
シャフトが貫通すると共に、マグネットに連結されて、ばね受け部と筐体との間に配置された錘部と、
一端が錘部で支持され、他端がばね受け部で支持されるばねと、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この振動アクチュエータは、振動方向で延在する偏平なコイルと、振動方向で延在する偏平なマグネットとを備えているので、筐体を偏平すなわち薄型化することができる。また、マグネットが回転するタイプの振動モータに比べて、本発明のように、マグネットが面方向にリニアに振動するタイプの振動アクチュエータの方が、歯切れの良い大きな振動を得やすい。さらに、錘部がシャフトによって支持されているので、落下衝撃時に、錘部をシャフトに沿って動かすことができ、これによって、錘部が筐体内で自由に暴れることなくなるので、筐体に対する錘部の衝突を緩和するための複雑な緩衝手段を必要とせず、しかも、衝突によって錘部が大きく変形することによって引き起こされる振動アクチュエータの動作不良が起き難い。よって、構造を複雑化することなく耐落下衝撃性が高くなる。また、ばね受け部と錘部との間にばねを配置させているので、筐体内で無駄なスペースを作り出すことなく、省スペース化を達成させ、振動アクチュエータのコンパクト化すなわち小型化を達成させることができる。また、効率が高く、小さい空間で繰り返し寿命の長い振動を得ることができる。
【0008】
また、ばねは、シャフトの周囲に巻回されるコイルばねであり、錘部は、振動方向においてマグネットの両側に配置される第1の錘部と第2の錘部とからなり、第1の錘部とばね受け部との間にはコイルばねが配置されていると好適である。
このように、マグネットを挟むように錘部を配置させているので、バランスの良い振動を発生させることができる。さらには、自然長の長いコイルばねを利用することができるので、ばねによる共振を起こし易く、少ない駆動力で大きな振動を得ることができる。
【0009】
また、第2の錘部とばね受け部との間には、別のコイルばねが配置されていると好適である。
ばねは、本来ヒステリシスをもっているが、ばね受け部を挟んで2本のコイルばねを第1の錘部と第2の錘部との間に配置させているので、バランスが極めて良い振動を発生させ、しかも振動の負荷をそれぞれのコイルばねが受け持つことになるので、ばねの耐久性が高められ、長寿命化を可能にする。
【0010】
また、マグネット及びコイルは、振動方向に対して直交する方向で離間して平行に配置された第1のヨーク板と第2のヨーク板との間に配置され、第1及び第2のヨーク板の両端は、第1及び第2の錘部に固定され、マグネットは、第1のヨーク板の平面部に固定され、コイルは、マグネット及び第2のヨーク板に対し離間して対面するように配置されていると好適である。
このように、平行に配置された第1及び第2のヨーク板を採用することで、振動アクチュエータの薄型化を維持しつつ、筐体内で最適な磁気回路を作り出すことができ、効率の良い安定した振動を面方向に得ることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、薄型化を可能にして、構造を複雑化させることなく耐落下衝撃性を高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る振動アクチュエータの第1の実施形態であって内部構造を示す斜視図である。
【図2】本発明に係る振動アクチュエータの蓋部を外した状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る振動アクチュエータの蓋部を切断して内部構造を露出させた状態を示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線に沿う断面図である。
【図5】図3のV−V線に沿う断面図である。
【図6】本発明に係る振動アクチュエータの第2の実施形態を示す平面図である。
【図7】本発明に係る振動アクチュエータの第3の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る振動アクチュエータの好適な実施形態について詳細に説明する。
【0014】
図1〜図5に示すように、振動アクチュエータ1は、ベース板2と蓋部3からなる偏平な筐体4を有している。筐体4内には、ベース板2に固定された環状の偏平なコイル6と、コイル6に対面して配置された板状の偏平なマグネット7とが収容されている。マグネット7は、一方の平面側がN極、他方の平面側がS極になっている2枚のマグネット部7a,7bにより形成されている。このマグネット7は、一方のマグネット部7aのN極と他方のマグネット部7bのS極とを平面上で対向させるようにして、マグネット部7aの側面とマグネット部7bの側面とを接着剤によって貼り合わせることで構成されている。なお、一枚の磁性板に着磁させてマグネット7を形成してもよい。
【0015】
また、コイル6は、ベース板2に設けられたターミナル電極5に配線5aを介して接続さている。そして、ターミナル電極5を介して、コイル6に外部から矩形方形波又は正弦波の電流を印加すると、マグネット7は、面方向でリニアに振動する。
【0016】
このマグネット7は、磁性体からなる第1のヨーク板8の裏面をなす平面部8aに接着剤によって固定され、この第1のヨーク板8の端部は、第1の錘部11と第2の錘部12とを架け渡すように第1及び第2の錘部11,12に取付けられている。第1及び第2の錘部11,12は、同一の形状及び重さをもって振動方向に対して直交する方向に延在し、それぞれの錘部11,12の両端をシャフト13が貫通し、それぞれのシャフト13の両端は、筐体4のベース板2の端部に設けられた起立部2aに固定される。このシャフト13は、振動方向で延在することで、第1及び第2の錘部11,12のガイドと支持とを兼ねている。第1及び第2の錘部11,12は、シャフト13との摺動性を良くするために、樹脂部を設けて、この樹脂部にシャフト13を貫通させてもよい。
【0017】
第1の錘部11と第2の錘部12との間には、筐体4のベース板2に立設されたばね受け部14が設けられ、シャフト13は、このばね受け部14を貫通している。このような構成によって、それぞれの第1及び第2の錘部11,12が、振動方向でばね受け部14と筐体4の蓋部3との間に配置されることになる。
【0018】
第1の錘部11とばね受け部14との間には、第1のコイルばね16が配置され、シャフト13は、第1のコイルばね16を貫通する。第2の錘部12とばね受け部14との間には、第2のコイルばね17が配置され、シャフト13は、第2のコイルばね17を貫通する。第1のコイルばね16と第2のコイルばね17とは、同じばね常数と同じ長さを有している。そして、第1及び第2のコイルばね16,17の両端は、第1の錘部11と第2の錘部12とばね受け部14とに固定されることなく支持されている。
【0019】
マグネット7及びコイル6は、振動方向に直交する方向で離間して平行に配置された第1のヨーク板8と第2のヨーク板18の平板部18Aとの間に配置されている。磁性体からなる第1のヨーク板8は、第1及び第2の錘部11,12の上面に接着剤を介して固定され、磁性体からなる第2のヨーク板18は、第1及び第2の錘部11,12にカシメ固定されている。第2のヨーク板18の両端は、コ字状に折り曲げられ、第2のヨーク板18の平板部18Aの両端で直角に折り曲げられた折曲げ片18a,18bには、第1及び第2の錘部11,12から突出する凸部11a,12aを挿通させるための貫通孔18c,18dが形成され、凸部11a,12aの頭部を押し潰すことにより第2のヨーク板18と第1及び第2の錘部11,12がカシメにより一体化する。
【0020】
そして、マグネット7と第2のヨーク板18の平板部18Aとの間には偏平なコイル6が配置され、コイル6は、マグネット7及び第2のヨーク板18の平板部18Aに対して離間して対面するように配置されている。このように、平行に配置された第1及び第2のヨーク板8,18を採用することで、振動アクチュエータ1の薄型化を維持しつつ、筐体4内で最適な磁気回路を作り出すことができ、効率の良い安定した振動を面方向に得ることができる。
【0021】
このように、前述した振動アクチュエータ1は、振動方向で延在する偏平なコイル6と、振動方向で延在する偏平なマグネット7とを備えているので、筐体4を偏平すなわち薄型化することができる。また、マグネットが回転するタイプの振動モータに比べて、本発明のように、マグネット7が面方向にリニアに振動するタイプの振動アクチュエータ1の方が、歯切れの良い大きな振動を得やすい。
【0022】
さらに、錘部11,12がシャフト13によって支持されているので、落下衝撃時に、錘部11,12をシャフト13に沿って動かすことができ、これによって、錘部11,12が筐体4内で自由に暴れることがなくなるので、筐体4に対する錘部11,12の衝突を緩和するための複雑な緩衝手段を必要とせず、しかも、衝突によって錘部11,12が大きく変形することによって引き起こされる振動アクチュエータ1の動作不良が起き難い。よって、構造を複雑化することなく耐落下衝撃性が高くなる。
【0023】
また、ばね受け部14と錘部11,12との間にコイルばね16,17を配置させているので、筐体4内で無駄なスペースを作り出すことなく、省スペース化を達成させ、振動アクチュエータ1のコンパクト化すなわち小型化を達成させることができる。なお、コイルばねに代えて、他のばね、例えば、板ばねを利用しても同様の効果が得られる。
【0024】
さらに、コイルばね16,17のこのような配置は、自然長の長いコイルばねを利用することができるので、ばねによる共振を起こし易く、少ない駆動力で大きな振動を得ることができる。
【0025】
また、振動方向において、マグネット7を挟むように錘部11,12を配置させているので、バランスの良い振動を発生させることができる。
【0026】
ばねは、本来ヒステリシスをもっているが、ばね受け部14を挟んで2本のコイルばね16,17を第1の錘部11と第2の錘部12との間に配置させているので、バランスが極めて良い振動を発生させ、しかも振動の負荷をそれぞれのコイルばね16,17が受け持つことになるので、ばねの耐久性が高められ、長寿命化を可能にする。
【0027】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0028】
例えば、図6に示すように、他の振動アクチュエータ20は、第1の錘部11とばね受け部14との間にのみコイルばね21を配置させ、コイルばね21の両端を第1の錘部11及びばね受け部14に固定させることで、コイルばね21から第1の錘部11が離れることなく、振動アクチュエータ20を振動させることができ、非通電時の落下衝撃時に錘部11,12が暴れることが少ない。なお、振動アクチュエータ20において、他の構成は、振動アクチュエータ1と同じである。
【0029】
図7に示すように、他の振動アクチュエータ30は、コイル6側の第2のヨーク板18が採用されていない。マグネット7が固定された第1のヨーク板31の両端は、コ字状に折り曲げられ、第2のヨーク板31の平板部31Aの両端で直角に折り曲げられた折曲げ片31a,31bには、第1及び第2の錘部11,12から突出する凸部を挿通させるための貫通孔が形成され、各凸部の頭部を押し潰してカシメることで、第1のヨーク板31と第1及び第2の錘部11,12とが一体化する。なお、振動アクチュエータ30において、他の構成は、振動アクチュエータ1と同じである。
【符号の説明】
【0030】
1,20,30…振動アクチュエータ、4…筐体、6…コイル、7…マグネット、8…第1のヨーク板、8a…平面部、11…第1の錘部、12…第2の錘部、13…シャフト、14…ばね受け部、16…第1のコイルばね、17…第2のコイルばね、18…第2のヨーク板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に固定されたコイルと、コイルに対面して配置されたマグネットとの協働により、前記マグネットがリニアに振動する振動アクチュエータにおいて、
振動方向で延在する偏平な前記コイルと、
振動方向で延在する偏平な前記マグネットと、
振動方向で延在して、両端が前記筐体に固定されたシャフトと、
前記筐体に設けられると共に、前記シャフトが貫通するばね受け部と、
前記シャフトが貫通すると共に、前記マグネットに連結されて、前記ばね受け部と前記筐体との間に配置された錘部と、
一端が前記錘部で支持され、他端が前記ばね受け部で支持されるばねと、を備えたことを特徴とする振動アクチュエータ。
【請求項2】
前記ばねは、前記シャフトの周囲に巻回されるコイルばねであり、前記錘部は、振動方向において前記マグネットの両側に配置される第1の錘部と第2の錘部とからなり、前記第1の錘部と前記ばね受け部との間には前記コイルばねが配置されていることを特徴とする請求項1記載の振動アクチュエータ。
【請求項3】
前記第2の錘部と前記ばね受け部との間には、別のコイルばねが配置されていることを特徴とする請求項2記載の振動アクチュエータ。
【請求項4】
前記マグネット及び前記コイルは、前記振動方向に対して直交する方向で離間して平行に配置された第1のヨーク板と第2のヨーク板との間に配置され、前記第1及び第2のヨーク板の両端は、前記第1及び第2の錘部に固定され、
前記マグネットは、前記第1のヨーク板の平面部に固定され、前記コイルは、前記マグネット及び前記第2のヨーク板に対し離間して対面するように配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の振動アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−97747(P2011−97747A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249316(P2009−249316)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】