説明

振動センサ

【課題】設置に際して制限の少ない振動センサを提供する。
【解決手段】種類の異なる第一流体41及び第二流体42を密閉する容器40に、流体界面43に向けて投光する投光用光ファイバ20と、その光を受光する受光用光ファイバ30とを設置して、センサヘッド部50とする。振動により流体界面43が揺動すると受光用光ファイバ30の受光量が変化するので、本体部10が受光量の変化に基づいて振動を検知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、光電センサを用いて流体表面の揺動を測定することにより振動を検知する振動センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
液面状態の変動を利用した振動センサとして、例えば特許文献1には、底部に光を反射する液体が入った逆円錐形状の容器と、該液体の上方に容器内を照射する光源と、光源が発する光のうち液体表面からの反射光を受光してその光量を電気信号に変換する光電変換素子と、光電変換素子の出力信号が所定値よりも大きいとき出力を発する信号処理部とを設ける構成が記載されている。このような従来の振動センサは、エレベータ等の特定箇所に据え置いて設置され、液体が振動により揺動を起こすとこの液体表面からの反射光の変化を検出して、振動が発生したことを検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平6−76829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の振動センサは以上のように構成されているので、センサ本体に光源、光電変換素子及び信号処理部といった電気回路を内蔵することによってセンサ本体が大きくなり、設置スペースが制約されてしまった。また、電気回路が発火点になり得るために可燃性ガスを含む環境下では使えず、防爆構造が必要となる等、設置環境も制約されていた。さらに、光源と光電変換素子が液体容器内に固定されているため、設置方向も制約されていた。このように、従来の振動センサは設置に際して制約が多いという課題があった。
また、電気回路をセンサ本体に内蔵することにより、ノイズの影響を受けやすいという課題もあった。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、設置に際して制限の少ない振動センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明に係る振動センサは、二種類の異なる流体を密閉する容器と、容器内の流体界面に向けて光を投光する投光用光ファイバと、投光用光ファイバが流体界面に向けて投光した光を受光する受光用光ファイバと、受光用光ファイバが受光した光量の変化に基づいて振動を検知する振動検知部とを備え、容器の壁面のうち、投光用光ファイバの投光側の先端部及び受光用光ファイバの受光側の先端部に対面する壁面が透光性部材で形成されるようにしたものである。
【0007】
請求項2の発明に係る振動センサは、投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部が、流体界面の同じ側に向けて設置されるようにしたものである。
【0008】
請求項3の発明に係る振動センサは、投光用光ファイバと受光用光ファイバを一体に束ねて形成したバンドルファイバを用いるようにしたものである。
【0009】
請求項4の発明に係る振動センサは、投光用光ファイバの投光側の先端部が流体界面の一方側に向けて設置され、受光用光ファイバの受光用の先端部が流体界面の他方側に向けて設置されるようにしたものである。
【0010】
請求項5の発明に係る振動センサは、投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部が、流体界面と同じ高さに、当該流体界面に向けて設置されるようにしたものである。
【0011】
請求項6乃至請求項8に係る振動センサは、投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部のうち少なくとも一方に、レンズ/プリズム/反射鏡が装着されるようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1から請求項8の発明によれば、二種類の異なる流体を密閉する容器に、投光用光ファイバの投光用の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部を取り付け、容器と振動検知部とを光ファイバで接続するようにしたので、容器側は電気回路を含まず小さく構成できるようになり、設置に際して制限の少ない振動センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係る振動センサの構成を示す模式図である。
【図2】図1に示す本体部10の内部構成を示すブロック図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る振動センサのうち、センサヘッド部50を抜粋した模式図である。
【図4】図3に示すセンサヘッド部50の設置方向を90度回転した設置例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1は、この発明の実施の形態1に係る振動センサの構成を示す模式図である。図1に示す振動センサは、本体部10と、投光用光ファイバ20と、受光用光ファイバ30と、センサヘッド部50とから構成される。なお、図において各部材間の縮尺は理解の容易のため実際とは異なる場合がある。
【0015】
図2は、本体部10の内部構成を示すブロック図であり、本体部10は電源線11によって外部から電源供給を受ける。この本体部10は、投光用光ファイバ20に光を供給する光源を有する投光部12と、受光用光ファイバ30からの光を受光して、受光量に応じた電気信号に変換する光電変換素子を有する受光部13と、受光部13が出力する電気信号に基づいて振動を検知する振動検知部14とを備える。振動検知部14の処理は後述する。
【0016】
投光用光ファイバ20は、センサヘッド部50側の先端にファイバヘッド21を備え、投光部12が供給する光をファイバヘッド21へ導光する。他方、受光用光ファイバ30は、センサヘッド部50側の先端にファイバヘッド31を備え、ファイバヘッド31で受光した光を受光部13へ導光する。
【0017】
容器40には、第一流体41及び第二流体42を入れた状態で、これら流体が容器40から流れ出ることの無いよう封止する。第一流体41及び第二流体42は少なくとも、容器40を所定時間静置したときに互いに分離して界面を形成する流体である必要がある。また、種類が異なり、かつ相互に混ざらないものであることが好ましい。このような性質を有する限り第一流体41、第二流体42にはどのような流体を用いてもよいが、更に好ましくは第一流体41と第二流体42との相対屈折率が高い流体を用いる。ここでは説明の便宜上、2種類の流体のうち比重が小さい方を第一流体41、比重が大きい方を第二流体42と称す。
【0018】
この容器40の上側には投光用光ファイバ20のファイバヘッド21を設置して、図1に矢印で示すように、ファイバヘッド21から第一流体41と第二流体42の流体界面43に向けて光を投光する。同様に、容器40の上側に受光用光ファイバ30のファイバヘッド31を設置して、流体界面43で反射した反射光を受光する。なお、ファイバヘッド21とファイバヘッド31の設置角度は適宜決定すればよく、また、ファイバヘッド21が投光する光の光芒特性、光量、波長も適宜決定すればよい。
【0019】
第一流体41及び第二流体42と、ファイバヘッド21,31との間には、仕切りとして透光性壁面44を設置し、この透光性壁面44が容器40を密閉している。
以上、容器40、第一流体41、第二流体42、透光性壁面44、ファイバヘッド21及びファイバヘッド31がセンサヘッド部50を構成する。なお、容器40の外から容器40内へ入射する外乱光の影響を避けることにより検出の精度を向上すべく、容器40は遮光性材料を用い、あるいは遮光性を有するような表面加工を施すことが好ましい。
【0020】
次に、振動センサの測定原理を説明する。
センサヘッド部50が静止状態に置かれている場合は、容器40内の第一流体41及び第二流体42も静止状態にあり、従って流体界面43も静止状態にある。そのため、図1に矢印で示すように、ファイバヘッド21から投光され、流体界面43で反射してファイバヘッド31に入る光の光量(以下、受光量)は、略一定である。
他方、センサヘッド部50が振動すると、容器40内の第一流体41及び第二流体42が揺動して流体界面43の形状が変化するので、ファイバヘッド21から投光された光の反射の態様も変化する。そのため、ファイバヘッド31の受光量も変化する。
振動検知部14は、受光部13から電気信号として入力される、ファイバヘッド31の受光量の変化量が所定範囲内であれば振動が発生していないと判定して静止状態にあると判断し、一方、受光量の変化量が所定範囲以上であれば振動が発生していると判定して振動状態にあると判断する。なお、静止状態を確認するための受光量の変化量と、振動を検知するための受光量の変化量とに、異なる値を設定してもよいし、同一の値を設定してもよい。
【0021】
このように、振動センサの全体が振動せずとも、センサヘッド部50が振動すれば、その振動を本体部10により検知することができる。従って、このセンサヘッド部50のみを測定場所に設置すればよいため、設置スペースの制約が少ない。また、センサヘッド部50は電気回路を含まないため、可燃性ガスを含む環境及び防爆機器を要求される環境等にも設置することができる。
【0022】
また、センサヘッド部50は電気回路を含まないため、ノイズの影響を低減できる。
さらに、電気回路を含む本体部10は、センサヘッド部50と同一場所に設置しなくてもよいので、本体部10は大きくても構わない。そこで、本体部10にノイズ対策用の部材を追加して、ノイズの影響をさらに低減する構成にしてもよい。これにより、本体部10に含まれる電気回路内の微小信号ラインに影響を与えるような、外部から来るノイズの影響を低減できる。
【0023】
以上より、実施の形態1によれば、種類の異なる第一流体41及び第二流体42を密閉する容器40と、投光部12が発した光を容器40内の流体界面43に向けて投光する投光用光ファイバ20と、投光用光ファイバ20が流体界面43に向けて投光した光を受光する受光用光ファイバ30と、受光用光ファイバ30が受光した光量を電気信号に変換する受光部13と、受光部13が変換する電気信号が表す受光量の変化に基づいて振動を検知する振動検知部14とを備え、容器40のファイバヘッド21,31と第一流体41及び第二流体42を仕切る壁面を透光性壁面44にする構成にした。このため、センサヘッド部50に電気回路を含めず小さく構成できるので、設置に際して制限の少ない振動センサを提供することができる。
【0024】
なお、上記実施の形態1では、ファイバヘッド21,31を所定角度に傾けてV字状に容器40に取り付けたが、これに限定されるものではなく、ファイバヘッド21,31を平行に並べて容器40に取り付ける構成にしてもよい。なお、容器40へのファイバヘッド21,31設置方法はどのような方法であってもよく、例えば図1に示すようにファイバヘッド21,31を直接容器40に取り付ける構成にしてもよいし、別体の取付部材を用いて容器40にファイバヘッド21,31を固定する構成にしてもよい。
【0025】
また、上記実施の形態1では、投光用光ファイバ20と受光用光ファイバ30を別体のケーブルで構成したが、これに限定されるものではなく、中心側に投光用光ファイバ20を、その周囲に受光用光ファイバ30を束ねて同心円型に一体化したバンドルファイバを用いる構成にしてもよい。又は、中心側に受光用光ファイバ30を、その周囲に投光用光ファイバ20を束ねて一体化したバンドルファイバでもよいし、同心円型に限らず、いわゆるランダムミックスや2分割型などの形態としてもよい。
【0026】
また、上記実施の形態1では、静止状態の場合に、投光用光ファイバ20が投光した光が流体界面43に反射してファイバヘッド31へ入るように構成したが、これに限定されるものではなく、静止状態の場合にファイバヘッド21が投光した光が流体界面43に反射してもファイバヘッド31へ直接入らないようにしておき、流体界面43が揺動すると反射した光がファイバヘッド31へ入るように、ファイバヘッド21,31の設置角度を調整して構成してもよい。この構成の場合にも、振動検知部14は、受光部13から電気信号として入力される、ファイバヘッド31の受光量の変化量が所定範囲内であれば振動が発生していないと判定し、一方、受光量の変化量が所定範囲以上であれば振動が発生していると判定すればよい。
【0027】
実施の形態2.
図3は、この発明の実施の形態2に係る振動センサのうち、センサヘッド部50を抜粋して示した模式図である。図3において図1と同一又は相当の部分については同一の符号を付し説明を省略する。また、本実施の形態2の振動センサも図2に示す本体部10を備える。
【0028】
図3に示すセンサヘッド部50は、容器40の上側にファイバヘッド21を設置し、容器40の下側にファイバヘッド31を設置して、ファイバヘッド21が投光した光が流体界面43を透過してファイバヘッド31に入る構成である。センサヘッド部50が振動すると、容器40内の第一流体41及び第二流体42が揺動して流体界面43の形状が変化するので、ファイバヘッド21から投光された光の反射及び屈折の態様も変化する。そのため、流体界面43を透過する光量が変動し、ファイバヘッド31の受光量も変化する。
振動検知部14は、上記実施の形態1と同様に、ファイバヘッド31の受光量の変化量が所定範囲内であれば振動が発生していないと判定し、一方、受光量の変化量が所定範囲以上であれば振動が発生していると判定する。
【0029】
以上より、実施の形態2によれば、センサヘッド部50を、投光用光ファイバ20のファイバヘッド21が流体界面43の一方側に向けて設置され、受光用光ファイバ30のファイバヘッド31が流体界面43の他方側に向けて設置されるように構成して、振動検知部14が流体界面43を透過した光の変化に基づいて振動を検知するようにした。このため、上記実施の形態1と同様に、センサヘッド部50に電気回路を含めず小さくできるので、設置に際して制限の少ない振動センサを提供することができる。
【0030】
なお、上記実施の形態2では、ファイバヘッド21を容器40の上側、ファイバヘッド31を下側に設置したが、逆にファイバヘッド31を容器40の上側、ファイバヘッド21を下側に設置してもよい。
【0031】
また、センサヘッド部50を、図3に示す状態から任意の角度に傾けた状態に設置してもよい。この設置方向でも、ファイバヘッド21から投光した光が流体界面43を透過してファイバヘッド31へ入るので、振動検知部14が受光量の変化に基づいて振動を検知することができる。あるいは、ファイバヘッド21とファイバヘッド31の容器40への取り付け位置を、図3に示すような重力方向上の対向位置から、例えば重力方向に交差するような斜めの対角線上の対向位置へ変更してもよい。このように、センサヘッド部50の設置方向又はファイバヘッド21,31の取り付け位置を測定場所に応じて変更することができるので、上記実施の形態2と同様の効果に加えて、設置方向の制約が少ないという効果もある。
【0032】
図3に示す状態からさらにセンサヘッド部50を傾けて、図4へ示す状態へ、センサヘッド部50を90度回転して設置することもできる。図4は、図3に示すセンサヘッド部50の設置方向を90度回転した設置例を示す模式図である。
図4に示す設置方向の場合には、ファイバヘッド21とファイバヘッド31が流体界面43と略同一の高さになるように調整して、ファイバヘッド21が投光した光が揺動する流体界面43で反射及び屈折して変化するようにしておく。そして、流体界面43の形状変化に起因した受光量の変化を振動検知部14が検知すればよい。
このように、センサヘッド部50を、投光用光ファイバ20のファイバヘッド21と受光用光ファイバ30のファイバヘッド31が流体界面43と同じ高さに、当該流体界面43に向けて設置される構成にした場合にも、上記実施の形態2と同様の効果を奏する。
【0033】
また、上記実施の形態1,2のファイバヘッド21,31に対して、レンズ、プリズム、あるいは反射鏡等のユニットを装着して、投光及び受光の方向を調整する構成にしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
10 本体部
11 電源線
12 投光部
13 受光部
14 振動検知部
20 投光用光ファイバ
21 ファイバヘッド
30 受光用光ファイバ
31 ファイバヘッド
40 容器
41 第一流体
42 第二流体
43 流体界面
44 透光性壁面
50 センサヘッド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二種類の異なる流体を密閉する容器と、
前記容器内の流体界面に向けて光を投光する投光用光ファイバと、
前記投光用光ファイバが前記流体界面に向けて投光した光を受光する受光用光ファイバと、
前記受光用光ファイバが受光した光量の変化に基づいて振動を検知する振動検知部とを備え、
前記容器の壁面のうち、前記投光用光ファイバの投光側の先端部及び前記受光用光ファイバの受光側の先端部に対面する壁面が透光性部材で形成されることを特徴とする振動センサ。
【請求項2】
投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部が、流体界面の同じ側に向けて設置されることを特徴とする請求項1記載の振動センサ。
【請求項3】
投光用光ファイバと受光用光ファイバを一体に束ねて形成したバンドルファイバを用いることを特徴とする請求項2記載の振動センサ。
【請求項4】
投光用光ファイバの投光側の先端部が流体界面の一方側に向けて設置され、受光用光ファイバの受光用の先端部が前記流体界面の他方側に向けて設置されることを特徴とする請求項1記載の振動センサ。
【請求項5】
投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部が、流体界面と同じ高さに、当該流体界面に向けて設置されることを特徴とする請求項1記載の振動センサ。
【請求項6】
投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部のうち少なくとも一方に、レンズが装着されることを特徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記載の振動センサ。
【請求項7】
投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部のうち少なくとも一方に、プリズムが装着されることを特徴とする請求項1から請求項6のうちのいずれか1項記載の振動センサ。
【請求項8】
投光用光ファイバの投光側の先端部と受光用光ファイバの受光用の先端部のうち少なくとも一方に、反射鏡が装着されることを特徴とする請求項1から請求項7のうちのいずれか1項記載の振動センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−145157(P2011−145157A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−5870(P2010−5870)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006666)株式会社山武 (1,808)
【Fターム(参考)】