説明

振動テーブル

剛性基台(11)、基台(11)の上に固定された剛性三次元枠体(12)、および頂面が平面であって、発生する振動の節となる位置にて剛性三次元枠体(12)に支持固定されたボルト締めランジュバン型超音波振動子(13)からなる振動テーブル(10)を用いることにより、加工対象物を高い精度で機械加工することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラスやシリコンなどの硬く且つ脆い材料から形成された加工対象物を機械加工する際に有利に用いることのできる振動テーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス、セラミックもしくはシリコンなどの硬く且つ脆い材料から形成された加工対象物に切断、穴あけ、切削、研削あるいは研磨などの機械加工を高精度で施すことは容易ではない。このため、従来より、このような加工対象物を、超音波振動を付与した工具によって機械加工する方法が提案されている。例えば、バイトなどの工具に超音波振動を付与しながら加工対象物を切削する方法は、超音波切削加工と呼ばれている。
【0003】
超音波切削加工は、超音波振動を工具に付与することで切削抵抗が小さくなるため、工具の寿命が長くなるという利点を有している。また、超音波切削加工においては、工具に加工対象物の固有振動数よりも高い周波数の超音波振動が付与されるため、加工対象物にビビリなどの有害な振動を生じ難い。このため超音波切削加工は、優れた加工精度を示すとされている。
【0004】
特開2002−355726号公報には、機械加工する際に加工対象物が仮固定されるテーブルの下側表面に超音波振動装置を固定した構成の超音波振動テーブル装置が開示されている。この振動テーブル装置は、超音波振動装置にて超音波振動を発生させ、この超音波振動をテーブルの上側表面に仮固定された加工対象物に付与する。そして、この振動テーブル装置上で超音波振動が付与された加工対象物は、例えば、ドリルなどの工具を用いて機械加工される。
【0005】
この振動テーブル装置は、裏面プレート上に固定された筒状のケーシング、このケーシングの上端に支持固定された超音波振動装置、及びこの超音波振動装置の上側表面に固定されたテーブルなどから構成されている。超音波振動装置は、テーブルの下側表面に固定された伝達ホーンと、この伝達ホーンの下側表面に固定された振動子から構成されている。伝達ホーンの高さ方向の中間位置にはフランジ部が形成されており、超音波振動装置はその伝達ホーンのフランジ部にてケーシングの上端に支持固定されている。そして、この振動テーブル装置には、テーブルの外側下部から下方に突出し、ケーシング上部に形成された案内用凹部に挿入されたガイド部材が備えられている。
【0006】
この振動テーブル装置は、テーブルに備えられたガイド部材によってテーブルが上下方向にのみフリーに保持されているために振動エネルギーのロスが少ないため、この振動テーブル装置を用いることにより加工対象物を精度良く機械加工できるとされている。そして、同公報には、この超音波振動テーブル装置の複数台を並べて配置することができるとの記載がある。
【0007】
特開2003−220530号公報には、加工対象物を仮固定する円盤状のテーブルの下側表面に複数個の円柱状のボルト締め振動子を固定した構成の振動テーブル装置が開示されている。円盤状のテーブルは、円筒状のケースの上端に支持固定されており、各々のボルト締め振動子はテーブルの下側表面に宙づりの状態で固定されている。そして、ボルト締め振動子にて発生した超音波振動をテーブルの上側表面に仮固定された加工対象物に付与することにより、硬く且つ脆い材料から形成された加工対象物の極微小径穴あけ加工や溝入れ加工が容易になり、そして機械加工に要する時間が短縮できるとされている。
【特許文献1】特開2002−355726号公報(図1)
【特許文献2】特開2003−220530号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の特開2002−355726号公報に記載の振動テーブル装置は、その超音波振動装置が、下側表面に振動子を備える伝達ホーンのフランジ部にてケーシングの上端に支持固定されている。一般に、振動子はその長さの二倍の波長を有する超音波振動を発生させ、そして伝達ホーンの長さは振動子が発生する超音波振動の波長の半分の長さに設定される。すなわち、伝達ホーンの長さは振動子の長さと同程度の長さに設定される。このため、下側表面に振動子を備えるホーンをフランジ部にてケーシングの上端に支持固定するためには、ケーシングの高さを振動子の長さの1.5倍以上の高さに設定する必要がある。また、振動テーブル装置の高さは、振動子の長さの2.0倍以上の高さになる。
【0009】
このように高さの高いケーシングを用いると、ケーシングに横方向の揺れを生じ易くなり、ケーシングの上端に伝達ホーンを介して固定されたテーブル表面も横方向に揺れ易くなる。このため、この振動テーブル装置を用いた場合には、ガイド部材によってケーシングに対するテーブルの横方向の揺れは低減されるものの、ケーシング自体の横方向の揺れによってテーブルに横方向の揺れを生じ易いため、機械加工の精度を十分に高くすることは難しい。また、高さの高い振動テーブル装置は、既製の機械加工装置、例えば、既製のボール盤のように工具の可動距離が限られている機械加工装置に組み込むことが困難であったり、組み込みが可能であっても機械加工する際の作業性を悪化させ易い。
【0010】
また、この振動テーブル装置は、テーブルの下側表面の中央に超音波振動装置が一台固定された構成であるため、テーブルの上側表面の中央部分は大きく、そして端部に近づくに従い小さく振動し易い。このため、テーブルの上側表面に大きなサイズの加工対象物を仮固定して、テーブルの端部近傍の上方の位置にて機械加工をすると、テーブルの中央上方の位置にて機械加工した場合と較べて機械加工の精度が低下し易い。すなわち、この振動テーブル装置は、大きな加工対象物を均一に且つ高い精度で機械加工することが難しいという別の問題も有している。
【0011】
一方、同公報には、上記の振動テーブル装置の複数台を並べて配置してもよいと記載されている。しかしながら、同公報に記載の振動テーブル装置の複数台を並べて配置しただけでは、上記の場合と同様に各々のテーブルに横方向の揺れを生じ易いために十分に高い機械加工の精度が得られない場合があり、そして既製の機械加工装置への振動テーブル装置の組み込みも困難である。
【0012】
また、特開2003−220530号公報に記載の振動テーブル装置のように、円盤状のテーブルの下側表面にボルト締め振動子の複数個を宙づりの状態で固定することにより、テーブルの上側表面をある程度は均一に超音波振動させることができ、また振動テーブル装置の高さを振動子の長さと同程度の高さにすることができる。しかしながら、この振動テーブル装置は、テーブルの下側表面に宙づりの状態で固定されたボルト締め振動子の質量、テーブルの上側表面に置かれる加工対象物の質量、あるいは機械加工の際に工具がテーブルに与える力によってテーブルに撓みを生じ易い。また、ボルト締め振動子によってテーブルに付与した超音波振動が、円盤状のテーブルを支持固定する円筒状のケースを伝わって外部に逃げ易く、加工対象物に大きな超音波振動を付与することが難しい。このため、この振動テーブル装置を用いた場合の機械加工の精度を、ある程度以上に高くすることは難しい。
【0013】
さらに、円盤状のテーブルはその周縁部にて円筒状のケースの上端に支持固定されているため、テーブルの周縁部ではその超音波振動の振幅は零で、テーブルの中央に近づくに従い振幅が大きくなる。すなわち、テーブルの超音波振動の振幅がテーブル上側表面内において均一でない。このため、同公報に記載の振動テーブル装置を用いると、加工対象物をテーブルの中央の上方の位置にて機械加工した場合には、ある程度は高い精度で機械加工することができるものの、テーブルの周縁近傍の上方の位置にて機械加工した場合には、十分な機械加工の精度が得られない場合がある。
【0014】
本発明の目的は、加工対象物を高い精度で機械加工するために有利に用いることができ、そして既製の機械加工装置への組み込みも容易な振動テーブルを提供することにある。
本発明の目的はまた、大きなサイズの加工対象物を均一に且つ高い精度で機械加工するために有利に用いることのでき、そして既製の機械加工装置への組み込みも容易な振動テーブルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、剛性基台、この基台上に固定された剛性三次元枠体、および頂面が平面であって、発生する振動の節となる位置にて上記の剛性三次元枠体に支持固定されたボルト締めランジュバン型超音波振動子からなる振動テーブルにある。
【0016】
本発明の振動テーブルの好ましい態様は、下記の通りである。
(1)剛性三次元枠体が、基台に固定されたスペーサと、このスペーサ上部に接続する平面状の支持板とからなり、そしてボルト締めランジュバン型超音波振動子が、上記の支持板と圧電振動子板との積層体を、上側と下側のそれぞれに配置された金属部材と共にボルトにより締め付けてなるランジュバン型超音波振動子である。
(2)上側の金属部材の頂面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積の1.1倍以上、8.0倍以下である。
(3)上側の金属部材の底面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積以上で、上側の金属部材の頂面の面積以下である。
(4)積層体が、支持板と、この支持板の上側表面もしくは下側表面に重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる。
(5)積層体が、支持板と、この支持板の上側表面と下側表面のそれぞれに重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる。
(6)ボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面に剛性板が固定されている。
【0017】
本発明はまた、剛性基台、この基台上に並列固定された複数の剛性三次元枠体、および頂面が平面であって、発生する振動の節となる位置にて上記の剛性三次元枠体のそれぞれに一個ずつ支持固定された互いに同一の複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子からなり、これらの複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子が、それぞれの頂面が同一平面上に位置するように位置を調整された振動テーブルにもある。
【0018】
この複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子を備える本発明の振動テーブルの好ましい態様は、下記の通りである。
(1)各々の剛性三次元枠体が、基台に固定されたスペーサと、このスペーサ上部に接続する平面状の支持板とからなり、そして各々の剛性三次元枠体に支持固定されたボルト締めランジュバン型超音波振動子が、上記の支持板と圧電振動子板との積層体を、上側と下側のそれぞれに配置された金属部材と共にボルトにより締め付けてなるランジュバン型超音波振動子である。
(2)各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の上側の金属部材の頂面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積の1.1倍以上、8.0倍以下である。
(3)各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の上側の金属部材の底面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積以上、上側の金属部材の頂面の面積以下である。
(4)各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の積層体が、支持板と、この支持板の上側表面もしくは下側表面に重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる。
(5)各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の積層体が、支持板と、この支持板の上側表面と下側表面のそれぞれに重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる。
(6)各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面に剛性板が固定されている。
(7)各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子に固定された剛性板がその側面にて互いに連結されて、一体化され連結剛性板を形成している。
(8)各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子に、各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の共振周波数に対応する周波数の交流電圧を印加する駆動装置が備えられている。
【0019】
本発明はまた、上記の複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子を備える本発明の振動テーブルの上に、一個のボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面の面積より大きい加工対象物を配置し、少なくとも加工対象物に接するボルト締めランジュバン型超音波振動子により超音波振動を発生させることにより、この超音波振動を加工対象物に付与しながら加工対象物を機械加工する機械加工方法にもある。
【0020】
なお、本明細書において「振動の節となる位置」とは、超音波振動するボルト締めランジュバン型超音波振動子において、時間の経過とは無関係に超音波振動の振幅が零である位置から、この超音波振動の波長の八分の一に対応する距離の範囲内にある位置を意味する。また、超音波振動するボルト締めランジュバン型超音波振動子において超音波振動の振幅が零である位置は、例えば、有限要素法を用いた振動解析用のソフトウエア「ANSYS」(ANSYS,Inc.製)によるコンピュータシミュレーションによって正確に特定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の振動テーブルは、そのボルト締めランジュバン型超音波振動子がその振動の節となる位置にて、剛性基台上に固定された高さの低い剛性三次元枠体によって安定に支持されているため、その高さを低くすることができ、また加工対象物が仮固定されるランジュバン型振動子の頂面に横方向の揺れを生じ難い。このため、本発明の振動テーブルのボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面に加工対象物を仮固定し、そしてランジュバン型振動子により超音波振動を発生させることにより、この超音波振動を加工対象物に付与しながら加工対象物を高い精度で機械加工することができる。また、本発明の振動テーブルは、その高さを低くできるため、既製の機械加工装置への組み込みが容易であるという利点も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の振動テーブルを添付の図面を用いて説明する。図1は、本発明の振動テーブルの構成例を示す正面図であり、図2は、図1の振動テーブルの平面図であり、そして図3は、図1の振動テーブルの分解斜視図である。
【0023】
図1から図3に示す振動テーブル10は、剛性基台11、基台11の上に固定された剛性三次元枠体12、および頂面13aが平面であって、発生する振動の節となる位置にて剛性三次元枠体12に支持固定されたボルト締めランジュバン型超音波振動子13から構成されている。
【0024】
振動テーブル10は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子(以下、ランジュバン型振動子ともいう)13にて超音波振動を発生させ、この超音波振動をランジュバン型振動子13の頂面13aに仮固定された加工対象物に付与する。そして超音波振動が付与された加工対象物は、例えば、ドリル、バイトあるいは砥石などの工具を用いて機械加工される。
【0025】
振動テーブル10のランジュバン型振動子13の頂面13aに加工対象物を仮固定する方法の例としては、ボルトを用いて仮固定する方法、磁気的もしくは静電的に仮固定する方法、ランジュバン型振動子の頂面に水を介して加工対象物を配置してこの水を凍らせて加工対象物を仮固定する方法、およびランジュバン型振動子の頂面に真空ポンプに接続する吸気口を形成し、この吸気口上に配置された加工対象物を真空吸着して仮固定する方法が挙げられる。加工対象物は、加工対象物の支持板(例、金属板、樹脂板、あるいはカーボン板など)を介してテーブル面に仮固定してもよい。加工対象物支持板は、機械加工に用いる工具によるランジュバン型振動子の頂面の損傷を防止する。
【0026】
剛性三次元枠体12は、基台11に固定されたスペーサ12aと、スペーサ12aの上部に接続する平面状の支持板12bとから構成されている。そしてボルト締めランジュバン型超音波振動子13は、上記の剛性三次元枠体12の支持板12bと圧電振動子板14a、14bとの積層体を、その上側と下側のそれぞれに配置された金属部材15a、15bと共にボルトにより締め付けて構成されたランジュバン型超音波振動子である。
【0027】
ボルト締めランジュバン型超音波振動子13は、その発生する振動の節となる位置にて剛性三次元枠体12に固定されている。ボルト締めランジュバン型超音波振動子13は、発生する超音波振動の振幅が零である位置を上記のようにコンピュータシミュレーションにより特定し、この超音波振動の振幅が零である位置から、超音波振動の波長の八分の一に対応する距離の範囲内にある位置にて剛性三次元枠体12に支持固定される。ボルト締めランジュバン型超音波振動子13を支持固定する位置が超音波振動の振幅が零である位置から離れるに従い、発生した超音波振動が剛性三次元枠体12、そして剛性基台11を介して外部に逃げ易くなり、ランジュバン型振動子13の頂面13aの超音波振動の振幅が小さくなる傾向にある。このためボルト締めランジュバン型超音波振動子は、超音波振動の振幅が零である位置にて剛性三次元枠体に支持固定されていることが最も好ましい。
【0028】
通常、ボルト締めランジュバン型超音波振動子13の長さは、発生する超音波振動の波長の二分の一の長さとなるように設計される。このように設計されたボルト締めランジュバン型超音波振動子において超音波振動の振幅が零となる位置は、圧電振動子板14a、14bや金属部材15a、15bの形状、材料あるいは質量によって変動するが、概ねランジュバン型振動子13の長さ方向の中央の位置となる。従って、ボルト締めランジュバン型超音波振動子13は、上記のようにコンピュータシミュレーションによりランジュバン型振動子13の超音波振動の振幅が零である位置を特定して、この位置にて剛性三次元枠体に支持固定されていることが最も好ましいが、実用上はその長さ方向のおよそ中央の位置にて剛性三次元枠体12に支持固定されていれば良い。
【0029】
このようにしてボルト締めランジュバン型超音波振動子13をその振動の節となる位置にて剛性三次元枠体12に支持固定すると、剛性三次元枠体12の高さをランジュバン型振動子13の長さの半分程度の高さ、すなわち上記の特開2002−355726号公報の振動テーブル装置のケーシングの高さの三分の一程度の高さにすることができる。そしてボルト締めランジュバン型超音波振動子13は、このように非常に高さの低い剛性三次元枠体に安定に支持固定されているために横方向の揺れを生じ難い。このため、振動テーブル10を用いることにより、加工対象物を高い精度で機械加工することができる。また振動テーブル10は、その高さが同公報に記載の振動テーブル装置の高さの半分程度であり、既製の機械加工装置への組み込みも容易である。
【0030】
一方、上記の特開2003−220530号公報に記載の振動テーブル装置は、その高さをボルト締め振動子の長さと同程度の高さにすることは可能であるものの、上記のようにボルト締め振動子をテーブルの下側表面に宙づりの状態で固定しているために加工対象物を仮固定するテーブルに撓みを生じ易い。このため、同公報に記載の振動テーブル装置を用いた場合には、機械加工の精度をある程度以上に高くすることが難しい。これに対して本発明の振動テーブルを用いた場合には、加工対象物が剛性三次元枠体に安定に支持固定されたボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面に仮固定されるため、加工対象物を高い精度で機械加工することができる。
【0031】
また、上記の特開2003−220530号公報に記載の振動テーブル装置は、ボルト締め振動子によってテーブルに付与した超音波振動がテーブルを支持固定するケースを伝わって外部に逃げ易く、加工対象物に大きな超音波振動を付与することが難しい。これに対して本発明の振動テーブルは、ボルト締めランジュバン型超音波振動子がその振動の節となる位置にて剛性三次元枠体に固定されているために超音波振動が外部に逃げ難く、加工対象物に大きな超音波振動を付与することができる。このため、本発明の振動テーブルを用いることにより、加工対象物を高い精度で機械加工することができる。
【0032】
次に、図1及び図3を参照しながら、図1の振動テーブル10の作製方法などについて説明する。振動テーブル10は、例えば、次のようにして作製される。
【0033】
先ず、剛性三次元枠体12の支持板12bと圧電振動子板14a、14bとを重ね合わせて積層体を構成する。次に、この積層体の上側と下側のそれぞれに金属部材15a、15bを配置して、上記の積層体を金属部材15a、15bと共にボルト16により締め付けることにより、ボルト締めランジュバン型超音波振動子13を構成し且つこれを剛性三次元枠体12の支持板12bに支持固定する。そしてボルト締めランジュバン型超音波振動子13が支持固定された剛性三次元枠体12のスペーサ12aの底部を、ボルトなどで剛性基台11の上に固定することにより図1の振動テーブル10が作製される。
【0034】
剛性基台11は、例えば、鉄やチタンなどの金属材料、あるいはステンレススチールなどの合金材料から形成される。また、剛性基台11は、Fe−Ni−Co−Si合金(例、商品名ノビナイト、(株)榎本鋳工所製)などの制振材料から形成することも好ましい。また、本発明の振動テーブルは、例えば、既製のボール盤が備える加工対象物を仮固定する金属製のテーブルの上に配置して使用することもできる。このような場合には、剛性基台11を磁性ステンレスから形成することにより、振動テーブルをボール盤が備える金属製のテーブルの上に安定に配置することができる。
【0035】
剛性三次元枠体12は、基台に固定されるスペーサ12aと、スペーサ12aの上部に接続する平面状の支持板12bとから構成され、例えば、ステンレススチールなどの金属材料から形成される。支持板12bには、ボルト16の直径よりも大きな径の透孔が形成されている。
【0036】
圧電振動子板14a、14bのそれぞれには、ボルト16の直径よりも大きな径の透孔が形成されている。圧電振動子板14a、14bはそれぞれ、例えば、ジルコン酸チタン酸鉛系の圧電セラミック材料から形成された円環状の圧電体と、その各々の表面に付設された円環状の電極板から構成される。電極板としては、例えば、銀やリン青銅などから形成された薄板状(もしくは薄膜状)の電極が用いられる。なお、金属部材15a、金属部材15b及び支持板は導電性を有しており圧電振動子板の電極として用いることもできるため、これらのいずれかに接触している圧電振動子板の表面には電極板が付設されていなくても良い。
【0037】
圧電振動子板14a、14bのそれぞれが備える圧電体は、例えば、それぞれ図3に記入した矢印18a、18bが示す方向に分極処理される。そして圧電振動子板14a、14bのそれぞれに交流電圧を印加することにより、圧電振動子板14aはランジュバン型振動子13の頂面13aに垂直な方向に振動する超音波振動を発生し、そして圧電振動子板14bは図1に記入した矢印17が示す方向に振動する超音波振動を発生する。これらの圧電振動子板14a、14bに印加する交流電圧の位相差を90度に設定することにより、ランジュバン型振動子13の頂面13aは、頂面13aに垂直な方向に振動する振動成分と、図2に記入した矢印17が示す方向に振動する振動成分とからなる楕円振動をする。このような楕円振動を加工対象物に付与することにより、例えば、加工対象物を矢印17の示す方向に沿って高い精度で効率良く平面研削加工することができる。
【0038】
圧電振動子板14a、14bが備える圧電体は、それぞれ厚み方向に分極されていても良い。この場合には、圧電振動子板14a、14bを、各々の圧電体の分極方向が互いに逆向きとなるように重ね合わせて配置することが好ましい。圧電振動子板14a、14bが備える圧電体がそれぞれ厚み方向に分極処理されていると、ボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面を上下方向に大きく超音波振動させることができる。このような大きな超音波振動を加工対象部に付与することにより、例えば、ドリルを用いて加工対象物を高い精度で効率良く穴あけ加工することができる。
【0039】
金属部材15a、15bは、例えば、ステンレススチールなどの金属材料から形成される。上側の金属部材15aは、例えば、ステンレススチール製の角材の一部分を旋盤を用いて円柱状に機械加工して作製される一個の金属部品である。
金属部材15aは、ボルト16と嵌め合わされる雌ねじが形成された穴を備えている。そして金属部材15bは、ボルト16と嵌め合わされる雌ねじが形成された透孔を備えている。金属部材15aと金属部材15bは、ボルト16を介して互いに電気的に接続される。
【0040】
ボルト締めランジュバン型超音波振動子13には、例えば、図1に示すように交流電源19が電気的に接続される。ボルト締めランジュバン型超音波振動子の上側の金属部材15aは、感電を防止するために接地されていることが好ましい。上側の金属部材15aは、ボルト16、そして下側の金属部材15bを介して接地される。そして図1に示すように、圧電振動子板14aの下側の電極板及び圧電振動子板14bの上側の電極板に交流電源19を用いて交流電圧を印加することにより、圧電振動子板14a、14bがそれぞれ超音波振動し、ボルト締めランジュバン型超音波振動子13が超音波振動を発生する。
【0041】
ボルト締めランジュバン型超音波振動子を構成するための積層体は、剛性三次元枠体12の支持板12bと、支持板12bの下側表面に重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板から構成されていることが好ましい。これは、圧電振動子板の枚数が奇数枚であると、感電を防止するために金属部材15a、15b及び支持板12bをそれぞれ接地して、例えば、最も下側に配置された圧電振動子板以外の全ての圧電振動子板のそれぞれに交流電圧を印加するためには、最も下側に配置された圧電振動子板の上側表面及び下側表面を共に接地する必要があり、この圧電振動子板に交流電圧を印加できないからである。圧電振動子板の枚数は、二枚、四枚あるいは六枚であることが実用的である。圧電振動子板の枚数を多くするほどランジュバン型振動子を大きく超音波振動させることができるが、消費電力が大きくなり、また圧電振動子板と交流電源との電気的な接続が複雑となるからである。
【0042】
また、本発明の振動テーブルにおいて、ボルト締めランジュバン型超音波振動子の上側の金属部材の頂面の面積は、圧電振動子板(圧電振動子板を複数枚備える場合には最も上側に配置された圧電振動子板)の上側表面の面積の1.1倍以上、8.0倍以下であることが好ましい。図1の振動テーブル10が備えるボルト締めランジュバン型超音波振動子13の上側の金属部材15aの頂面の面積は、圧電振動子板14aの上側表面の面積の約4.5倍に設定されている。
【0043】
ボルト締めランジュバン型超音波振動子13の上側の金属部材15aの頂面の面積を圧電振動子板の上側表面の面積よりも大きくすることにより、上側の金属部材15aの頂面の超音波振動の振幅が小さくなる傾向にあるが、振動テーブルの負荷が変動した場合、例えば、ランジュバン型振動子の頂面に質量の大きな加工対象物が置かれた場合、あるいは機械加工に用いる工具によってランジュバン型振動子の頂面に大きな力が加わった場合にも加工対象物を安定した精度で機械加工できることが実験によって判明している。この原因は、次のように理解される。
【0044】
一般に、振幅の大きな超音波振動を得るために、超音波振動子に金属製のホーンを接続することが知られている。ホーンとしては、例えば、頂面の面積が底面よりも小さく設定された円錐台の形状の金属部材が用いられる。このようなホーンを、その底面にて超音波振動子に固定すると、超音波振動子の発生した超音波振動はホーンの頂面に到達した際にその振幅が増大することが知られている。そして超音波振動子が発生する超音波振動の持つエネルギーは一定の大きさであるため、ホーンの頂面に到達した超音波振動はその振幅は大きくなるものの、この超音波振動によりホーンの頂面に接続された負荷に与える力は小さくなることも知られている。
【0045】
本発明の振動テーブルにおいて、上記のようにボルト締めランジュバン型超音波振動子13の上側の金属部材15aの頂面の面積を底面の面積よりも大きく設定すると、ホーンの場合とは逆に上側金属部材の頂面の超音波振動の振幅は減少するものの、この超音波振動により加工対象物に与える力が大きくなり、加工対象物を安定に超音波振動させることができると理解される。このため、上側の金属部材の頂面の面積を底面の面積よりも大きく設定されたランジュバン型振動子を備える振動テーブルを用いることにより、振動テーブルの負荷が変動した場合にも加工対象物を安定した精度で機械加工することができると理解される。
【0046】
また、ボルト締めランジュバン型超音波振動子13の上側の金属部材15aの底面の面積は、圧電振動子板14aの上側表面の面積以上で、上側の金属部材15aの頂面の面積以下であることがさらに好ましい。上側の金属部材15aの底面の面積が圧電振動子板14aの上側表面の面積よりも小さいと、圧電振動子板14aの金属部材15aに接触しない表面部分にて発生した超音波振動が上側金属部材14aに伝わらないため、ランジュバン型振動子13の頂面13aの超音波振動の振幅が小さくなるからである。一方、上側金属部材15aの底面の面積が頂面の面積よりも大きいと、ホーンの場合と同様にランジュバン型振動子13の頂面13aの超音波振動の振幅は大きくなるものの、この超音波振動が加工対象物に与える力が小さくなって、負荷変動に対して機械加工の精度が不安定になるからである。
【0047】
また、本発明の振動テーブルのボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面には、金属材料などから形成された剛性板が固定されていても良い。剛性板は、例えば、ボルトなどを用いてランジュバン型振動子の上側金属部材の頂面に固定することができる。剛性板が固定されている場合にも、この剛性板は、その下側表面にてボルト締めランジュバン型超音波振動子によって安定に支持されるため、その表面に横方向の揺れを生じ難い。この剛性板の上側表面に加工対象物を仮固定し、そして加工対象物に超音波振動を付与することにより、加工対象物を高い精度で機械加工することができる。剛性板を固定することにより、ボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面を、機械加工に用いる工具による損傷から保護することができる。
【0048】
図4は、本発明の振動テーブルの別の構成例を示す正面図である。図4の振動テーブル40の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子43を構成するための積層体が、剛性三次元枠体12の支持板12bと、支持板12bの上側表面と下側表面のそれぞれに一枚ずつ配置された圧電振動子板14a、14bから構成されていること以外は図1の振動テーブルと同様である。振動テーブル40においては、ボルト締めランジュバン型超音波振動子43にて超音波振動を発生されるために支持板12bに交流電圧を印加する。このため、支持板12bを備える剛性三次元枠体12と基台11とは、互いに電気的に絶縁されていることが好ましい。
【0049】
図5は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。図5の振動テーブル50の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子53を構成するための積層体が、剛性三次元枠体12の支持板12bと、支持板12bの上側表面に重ねて配置された二枚の圧電振動子板14a、14bから構成されていること以外は図1の振動テーブルと同様である。圧電振動子板の枚数は、図1の振動テーブル10の場合と同様の理由で偶数枚であることが好ましい。
【0050】
図6は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。図6の振動テーブル60の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子63を構成するための積層体が、剛性三次元枠体12の支持板12bと、支持板12bの上側表面と下側表面のそれぞれに重ねて配置された二枚の圧電振動子板(合計で四枚の圧電振動子板14a、14b、14c、14d)から構成されていること以外は図1の振動テーブル10と同様である。このようにボルト締めランジュバン型超音波振動子を構成するために積層体を、支持板と、支持板の上側表面と下側表面のそれぞれに重ねて配置された圧電振動子板から構成する場合には、支持板の上側表面と下側表面のそれぞれに偶数枚の圧電振動子板を重ねて配置することが好ましい。これにより振動テーブル63の金属部材65a、65b及び剛性三次元枠体12を接地することができる。
【0051】
上記のように、上側の金属部材の頂面の面積が圧電振動子板の上側表面の面積の1.1倍以上、8.0倍以下の範囲に設定されたランジュバン型振動子を備える振動テーブルを用いることにより、負荷が変動した場合にも加工対象物を安定した精度で機械加工することができる。このように上側の金属部材の頂面の面積を大きくする場合、上側の金属部材の形状はボルト締めランジュバン型超音波振動子の軸に対して対称な形状であることが好ましい。
【0052】
図7は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。図7の振動テーブル70の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子73の上側の金属部材75aとして、頂面の面積が底面の面積よりも大きい角錐台状の金属部材が用いられていること、そして円筒状のスペーサ72aとスペーサ72aの上部に接続する平面状の支持板72bから構成される剛性三次元枠体72が用いられていること以外は図1の振動テーブル10と同様である。
【0053】
図8は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。図8の振動テーブル80の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子83の上側の金属部材85aとして、頂面の面積が圧電振動子板14aの上側表面の面積よりも大きい円柱状の金属部材が用いられていること、そして剛性三次元枠体82の円筒状のスペーサ82aの直径が上側金属部材85aの直径と等しくされていること以外は図7の振動テーブル70と同様である。
【0054】
図9は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。図9の振動テーブル90の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子93の上側の金属部材95aとして、頂面の面積が底面の面積よりも大きい円錐台状の金属部材の上側部分を頂面が正方形となるように垂直に切断して作製された金属部材が用いられていること以外は図7の振動テーブル70と同様である。
【0055】
図10は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。図10の振動テーブル100の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子103の上側の金属部材105aとして、正方形の頂面を有する直方体状の金属部材が用いられていること以外は図7の振動テーブル70と同様である。
【0056】
図11は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す斜視図である。図11の振動テーブル110の構成は、ボルト締めランジュバン型超音波振動子113の上側の金属部材115aとして、頂面の面積が底面の面積よりも大きい円錐台状の金属部材が用いられていること、そしてランジュバン型振動子113が、その上側の金属部材115aと一体に形成された剛性三次元枠体112の円環状の支持板112bに支持固定されていること、そして支持板112bが四本の柱状のスペーサ112aにより剛性基台11に固定されていること以外は図7の振動テーブル70と同様である。このように、ボルト締めランジュバン型超音波振動子は、その上側の金属部材(あるいは下側の金属部材)にて剛性三次元枠体に支持固定されていても良い。
【0057】
図12は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成を示す正面図であり、そして図13は、図12の振動テーブルの平面図である。図12及び図13に示す振動テーブル120は、剛性基台121、基台121の上に固定された合計で四個の剛性三次元枠体122、および頂面123aが平面であって、発生する振動の節となる位置にて剛性三次元枠体122にそれぞれ支持固定された合計で四個の円柱状のボルト締めランジュバン型超音波振動子123から構成されている。四個のボルト締めランジュバン型超音波振動子123は、それぞれの頂面123aが同一平面上に位置するように位置が調節されている。
【0058】
剛性三次元枠体122は、基台に固定されたスペーサ122aと、スペーサ122aの上部に接続する平面状の支持板122bとから構成されている。剛性三次元枠体122の横方向の揺れを低減するため、支持板122bの下側表面の中央の位置には補強用の支柱127が備えられている。また、各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子123の構成は、上側の金属部材125aとして圧電振動子板14aの直径と等しい円柱状の金属部材が用いられていること以外は図1の振動テーブル10のボルト締めランジュバン型超音波振動子13と同様である。
【0059】
このように剛性三次元枠体に複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子が支持固定された振動テーブルの上に、一個のランジュバン型振動子の頂面の面積より大きい加工対象物を配置し、少なくとも加工対象物に接するランジュバン型振動子により超音波振動を発生させ、この超音波振動を加工対象物に付与しながら加工対象物を機械加工すると、加工対象物が各々加工対象物に超音波振動を付与する複数のランジュバン型振動子によって安定に支持されるため、大きなサイズの加工対象物を均一に且つ高い精度で機械加工することができる。
【0060】
図14は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図であり、そして図15は、図14の振動テーブルの平面図である。図14及ぶ図15に示す振動テーブル140は、剛性基台141、基台141の上に並列固定された複数(例えば、九個)の剛性三次元枠体12、および頂面13aが平面であって、発生する振動の節となる位置にて剛性三次元枠体12のそれぞれに一個ずつ支持固定された互いに同一の複数(例えば、九個)のボルト締めランジュバン型超音波振動子13から構成され、これらの複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子13は、それぞれの頂面13aが同一平面上に位置するように位置を調整されている。各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子13の構成は、図1の振動テーブル10に用いるものと同一である。
【0061】
複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子13は、例えば、剛性基台141の上に各々ボルト締めランジュバン型超音波振動子を備える複数の剛性三次元枠体を並べて固定したのち、複数のランジュバン型振動子の頂面を剛性基台の底面に対して平行に研磨あるいは研削するという簡単な操作により、各々の頂面が同一平面上に位置するように位置を調節することができる。
【0062】
振動テーブル140は、各々のランジュバン型振動子13が剛性基台に安定に支持固定されているために横方向の揺れを生じ難い。このため振動テーブル140の上に、一個のランジュバン型振動子13の頂面13aの面積より大きい加工対象物を配置し、少なくとも加工対象物に接するランジュバン型振動子により超音波振動を発生させ、この超音波振動を加工対象物に付与しながら加工対象物を機械加工することにより、大きなサイズの加工対象物を均一に且つ高い精度で機械加工することができる。また、図1の振動テーブルの場合と同様に、振動テーブル140は、その高さが低いために既製の機械加工装置への組み込みが容易である。
【0063】
図16は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図であり、そして図17は、図16の振動テーブルの平面図である。図16及び図17に示す振動テーブル160の構成は、複数のランジュバン型振動子13が、各々の上側の金属部材15aの上方側面にて樹脂材料167により互いに接合されていること、そして複数のランジュバン型振動子13を樹脂材料167を介して囲む枠体168が備えられていること以外は図14の振動テーブル140と同様である。
【0064】
複数のランジュバン型振動子13を互いに接合する樹脂材料167は、機械加工の際に、例えば、水や油などの研削液を用いた場合に、この研削液がランジュバン型振動子間の隙間から基台151へと流れ落ちることを防止する。
【0065】
樹脂材料167としては、例えば、エポキシ樹脂が用いられる。この樹脂材料167と、例えば、ステンレススチールからなる上側の金属部材15aとの音響インピーダンスは互いに大きく異なる値を示すため、各々のランジュバン型振動子13にて発生した超音波振動は他の振動子には伝わり難く、複数のランジュバン型振動子13のそれぞれは、ほぼ独立に超音波振動する。すなわち複数のランジュバン型振動子振動子の上に配置された大きなサイズの加工対象物に、各々のランジュバン型振動子から同じ大きさの超音波振動が付与される。このため、振動テーブル160を用いることにより、大きなサイズの加工対象物を均一に且つ高い精度で機械加工することができる。
【0066】
図18は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図であり、そして図19は、図18の振動テーブルの平面図である。
【0067】
図18及び図19に示す振動テーブル180の構成は、各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子183の上側の金属部材185aの頂面の形状が六角形とされていること、剛性基台181の形状が円盤状とされていること、そして枠体188として各々のランジュバン型振動子の上側の金属部材185aをその上方にて囲む透孔を備えた円盤状の金属板が用いられていること以外は図16の振動テーブル160と同様である。
【0068】
このように、各々のランジュバン型振動子の上側の金属部材の頂面の形状を六角形にすることにより、上面の形状が四角形である場合と比べてランジュバン型振動子の頂面をより均一に超音波振動させることができる。
【0069】
図20は、本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す斜視図である。図20の振動テーブル200は、剛性基台201、基台201の上に並列固定された剛性三次元枠体92、および頂面が平面であって、発生する振動の節となる位置にて剛性三次元枠体92のそれぞれに一個ずつ支持固定された互いに同一の四個のボルト締めランジュバン型超音波振動子93から構成され、これらの複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子93は、それぞれの頂面が同一平面上に位置するように位置を調整されている。各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子93及び枠体92の構成は、図9の振動テーブル90に用いるものとそれぞれ同一である。
【0070】
図20の振動テーブル200の各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子93の頂面には、剛性板(図示は略する)を固定することもできる。この剛性板は、その側面にて互いに連結されて、一体化され連結剛性板を形成していても良い。図20に示すように、連結剛性板207は、例えば、ボルトなどを用いて複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子93の上に固定することができる。
【0071】
図21は、本発明の振動テーブルが備えるボルト締めランジュバン型超音波振動子の駆動装置の構成例を示す電気回路ブロック図である。
【0072】
図21の駆動装置211は、振動テーブルが備えるボルト締めランジュバン型超音波振動子13に、その共振周波数に対応する周波数、通常は15乃至100kHzの範囲にある周波数の交流電圧(例、正弦波電圧)を印加する。
【0073】
図21の駆動装置211のPLL(Phase-locked loop)回路212は、ランジュバン型振動子13の共振周波数に対応する周波数の矩形波電圧を発生させる。この矩形波電圧は、ドライバー回路213にて電力増幅されたのち、整合回路214にて電気力率の改善が行なわれ、ランジュバン型振動子13に正弦波電圧として印加される。ランジュバン型振動子が二個の圧電振動子板を備えている場合には、この正弦波電圧を各々の圧電振動子板に印加する。
【0074】
整合回路214とランジュバン型振動子13との間に備えられた電圧/電流検出回路215は、ランジュバン型振動子13に付与される交流電圧、交流電流、及びこれらの位相を検出する。
【0075】
電力制御部217は、電圧/電流検出回路215にて検出された交流電圧、交流電流、及びこれらの位相をもとにランジュバン型振動子13に付与されている電力値を算出する。そして電力制御部217は、ランジュバン型振動子に所定の大きさの電力が付与されるように、算出した電力値をもとにドライバ回路213の電力増幅率を制御する。
【0076】
一方、位相回路216は、電圧/電流検出回路215から出力される、ランジュバン型振動子13に流れる電流を電流電圧変換した信号を入力し、周波数制御ブロック218の制御周波数がランジュバン型振動子13の共振周波数になるように、その信号を位相シフトさせた後、パルス状の電圧に変換した電圧信号をPLL回路212に出力する。
【0077】
PLL回路212は、位相回路216が出力するパルス状の電圧と、PLL回路が出力する矩形波電圧との位相が一致するように、PLL回路が出力する矩形波電圧の周波数を制御する。このような制御により、ランジュバン型振動子13の共振周波数が、例えば、環境温度の変動によって僅かに変動した場合にも、ランジュバン型振動子13に常にその共振周波数に対応する周波数の交流電圧を印加することができため、ランジュバン型振動子13にて振幅の大きな超音波振動を発生させることができる。
【0078】
また、振動テーブルに複数のランジュバン型振動子が備えられている場合には、各々のランジュバン型振動子に図14の駆動装置を一台ずつ接続することが好ましい。これにより、各々のランジュバン型振動子の共振周波数が変動した場合であっても、各々のランジュバン型振動子に常にその共振周波数に対応する周波数の交流電圧を印加することができる。このため、各々のランジュバン型振動子にて振幅の大きな超音波振動を発生させることができる。
【0079】
また、振動テーブルが複数のランジュバン型振動子を備える場合には、複数のランジュバン型振動子のそれぞれに同一の位相の交流電圧を印加することも好ましい。この場合には、各々のランジュバン型振動子に印加する交流電圧の大きさを調節して、各々のランジュバン型振動子の頂面を同一の振幅で超音波振動させることがさらに好ましい。また、複数のランジュバン型振動子を電気的に並列に接続して、並列接続されたランジュバン型振動子に一台の駆動装置を用いて交流電圧を印加しても良い。
【0080】
図21に示すように駆動装置211には、中央処理装置(CPU:central processing
unit)222、記憶手段223、および表示手段224が備えられていることが好ましい。
【0081】
中央処理装置222は、電圧/電流検出回路215にて検出された交流電圧、交流電流、及びこれらの位相をもとにしてランジュバン型振動子13に付与されている電力値を算出する。そして中央処理装置222は、ランジュバン型振動子13に所定の大きさの電力が付与されるように、算出した電力値をもとにドライバ回路213の電力増幅率を制御するとともに、算出された電力値のデータを記憶手段223に出力する。記憶手段223に記憶された電力値のデータは、例えば、ディスプレイ上に表示されたり、あるいはプリンタなどに出力される。
【0082】
また、中央処理装置222は、PLL回路212が出力する矩形波電圧の振幅や周波数などを表示手段(例えば、ディスプレイ装置)224により表示させるとともに、PLL回路212が出力する矩形波電圧、あるいは電圧/電流検出回路215が出力するランジュバン型振動子13に付与される交流電圧や交流電圧などの情報をもとに、ランジュバン型振動子13に異常状態が生じた場合(例、振動子への配線が断線した場合、あるいは振動子の共振周波数の変動に応じた印加電圧の制御がされていない場合)には、表示手段224に警告表示を行なう。このような駆動装置211を用いると、ランジュバン型振動子13の制御の状態を確認できるため、振動テーブルを用いて機械加工を行なう際に加工不良の発生を早期に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の振動テーブルの構成例を示す正面図である。
【図2】図1の振動テーブルの平面図である。
【図3】図1の振動テーブルの分解斜視図である。
【図4】本発明の振動テーブルの別の構成例を示す正面図である。
【図5】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。
【図6】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。
【図7】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図8】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図9】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図10】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す一部切り欠き斜視図である。
【図11】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す斜視図である。
【図12】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。
【図13】図12の振動テーブルの平面図である。
【図14】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。
【図15】図14の振動テーブルの平面図である。
【図16】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。
【図17】図16の振動テーブルの平面図である。
【図18】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す正面図である。
【図19】図18の振動テーブルの平面図である。
【図20】本発明の振動テーブルのさらに別の構成例を示す斜視図である。
【図21】本発明の振動テーブルが備えるボルト締めランジュバン型超音波振動子の駆動装置の構成例を示す電気回路ブロック図である。
【符号の説明】
【0084】
10、40、50、60 振動テーブル
11 剛性基台
12 剛性三次元枠体
12a スペーサ
12b 支持板
13、43、53、63 ボルト締めランジュバン型超音波振動子
13a ボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面
14a、14b、14c、14d 圧電振動子板
15a、15b 金属部材
16 ボルト
18a、18b 圧電振動子板が備える圧電体の分極方向を示す矢印
19 交流電源
45a、45b 金属部材
55a、55b 金属部材
65a、65b 金属部材
70、80、90、100、110 振動テーブル
72、82、92、102、112 剛性三次元枠体
72a、82a、92a、112a スペーサ
72b、92b、102b、112b 支持板
73、83、93、103、113 ボルト締めランジュバン型超音波振動子
75a、75b 金属部材
85a、85b 金属部材
95a、95b 金属部材
105a、105b 金属部材
115a、115b 金属部材
120 振動テーブル
121 剛性基台
122 剛性三次元枠体
122a スペーサ
122b 支持板
123 ボルト締めランジュバン型超音波振動子
123a ボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面
125a、125b 金属部材
127 支柱
140、160、180 振動テーブル
141、181、201 剛性基台
167 樹脂材料
168、188 枠体
183 ボルト締めランジュバン型超音波振動子
183a ボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面
185a、185b 金属部材
200 振動テーブル
206 連結剛性板取り付け用のボルト
207 連結剛性板
211 駆動装置
212 PLL(Phase-locked loop)回路
213 ドライバー回路
214 整合回路
215 電圧/電流検出回路
216 位相回路
217 電力制御部
218 周波数制御ブロック
219 電力制御ブロック
222 中央処理装置(CPU:central processing unit)
223 記憶手段
224 表示手段


【特許請求の範囲】
【請求項1】
剛性基台、該基台上に固定された剛性三次元枠体、および頂面が平面であって、発生する振動の節となる位置にて該剛性三次元枠体に支持固定されたボルト締めランジュバン型超音波振動子からなる振動テーブル。
【請求項2】
剛性三次元枠体が、基台に固定されたスペーサと該スペーサ上部に接続する平面状の支持板とからなり、そしてボルト締めランジュバン型超音波振動子が、該支持板と圧電振動子板との積層体を、上側と下側のそれぞれに配置された金属部材と共にボルトにより締め付けてなるランジュバン型超音波振動子である請求項1に記載の振動テーブル。
【請求項3】
上側の金属部材の頂面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積の1.1倍以上、8.0倍以下である請求項2に記載の振動テーブル。
【請求項4】
上側の金属部材の底面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積以上で、上側の金属部材の頂面の面積以下である請求項3に記載の振動テーブル。
【請求項5】
積層体が、支持板と該支持板の上側表面もしくは下側表面に重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる請求項2に記載の振動テーブル。
【請求項6】
積層体が、支持板と該支持板の上側表面と下側表面のそれぞれに重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる請求項2に記載の振動テーブル。
【請求項7】
ボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面に剛性板が固定されている請求項1に記載の振動テーブル。
【請求項8】
剛性基台、該基台上に並列固定された複数の剛性三次元枠体、および頂面が平面であって、発生する振動の節となる位置にて該剛性三次元枠体のそれぞれに一個ずつ支持固定された互いに同一の複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子からなり、該複数のボルト締めランジュバン型超音波振動子が、それぞれの頂面が同一平面上に位置するように位置を調整された振動テーブル。
【請求項9】
各々の剛性三次元枠体が、基台に固定されたスペーサと該スペーサ上部に接続する平面状の支持板とからなり、そして各々の剛性三次元枠体に支持固定されたボルト締めランジュバン型超音波振動子が、該支持板と圧電振動子板との積層体を、上側と下側のそれぞれに配置された金属部材と共にボルトにより締め付けてなるランジュバン型超音波振動子である請求項8に記載の振動テーブル。
【請求項10】
各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の上側の金属部材の頂面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積の1.1倍以上、8.0倍以下である請求項9に記載の振動テーブル。
【請求項11】
各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の上側の金属部材の底面の面積が、圧電振動子板の上側表面の面積以上、上側の金属部材の頂面の面積以下である請求項10に記載の振動テーブル。
【請求項12】
各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の積層体が、支持板と該支持板の上側表面もしくは下側表面に重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる請求項9に記載の振動テーブル。
【請求項13】
各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の積層体が、支持板と該支持板の上側表面と下側表面のそれぞれに重ねて配置された偶数枚の圧電振動子板からなる請求項9に記載の振動テーブル。
【請求項14】
各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面に剛性板が固定されている請求項8に記載の振動テーブル。
【請求項15】
各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子に固定された剛性板がその側面にて互いに連結されて、一体化され連結剛性板を形成している請求項14に記載の振動テーブル。
【請求項16】
各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子に、各々のボルト締めランジュバン型超音波振動子の共振周波数に対応する周波数の交流電圧を印加する駆動装置が備えられている請求項8に記載の振動テーブル。
【請求項17】
請求項8に記載の振動テーブルの上に、一個のボルト締めランジュバン型超音波振動子の頂面の面積より大きい加工対象物を配置し、少なくとも該加工対象物に接するボルト締めランジュバン型超音波振動子により超音波振動を発生させることにより、この超音波振動を加工対象物に付与しながら該加工対象物を機械加工する機械加工方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【国際公開番号】WO2005/044509
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【発行日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−515340(P2005−515340)
【国際出願番号】PCT/JP2004/016554
【国際出願日】平成16年11月8日(2004.11.8)
【出願人】(500222021)
【Fターム(参考)】