説明

振動デバイスの製造方法

【課題】振動デバイスの小型化・微細化や商業的生産の要求に寄与し、かつ、製造工程をより簡便化することができる振動デバイスの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る振動デバイスの製造方法は、ベース基板、及び凹部を有する接着層を前記ベース基板と接合する部分に備えた蓋体を準備する工程と、前記ベース基板に振動片を実装する工程と、前記振動片がキャビティ内に収容されるように、前記接着層を介して前記蓋体を前記ベース基板に接合する工程と、前記凹部を介して前記キャビティ内を脱気処理する工程と、前記接着層を溶融させて、前記凹部を塞ぐ工程と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
加速度や回転角速度等の物理量の検出ができるセンサーモジュール(モーションセンサー)であって、例えばジャイロセンサー水晶振動子(ジャイロ振動辺)等のセンサー素子と、該センサー素子を駆動する半導体回路素子とがベース基板内に収容された振動デバイスが知られている(特許文献1)。このような振動デバイスの製造工程では、パッケージ内にセンサー素子や半導体回路素子を搭載した後、パッケージ内部を減圧状態又は真空状態とする脱気処理を行う封止工程が行われる。
【0003】
このような真空処理を伴う封止工程は、通常、パッケージ又は蓋体に貫通孔を形成しておき、該貫通孔を通じてパッケージ内の脱気処理を行い、脱気処理後、該貫通孔にAu・Ge(金・ゲルマニウム)ボールを入れて、レーザー処理により溶融させることを含む。
【0004】
しかしながら、近年、このような振動デバイスに対し、更なる小型化・微細化や商業的生産の要求が非常に高い。例えば、近年、目標とされる振動デバイスのデバイスサイズは、1mm×1mm程度と非常に小型化が進み、構成部材の微細化が著しい。このような小型化が進む振動デバイスに対し、封止工程のために貫通孔を必要とすることは、製造工程において貫通孔用プロセスが必要となる他に、振動デバイスのレイアウト設計段階で、デバイスの小型化や部材の微細化を図る上での妨げとなる。
【0005】
また、このような封止工程に用いられるAu・Geボールは、非常に高価であり、振動デバイスの生産コストの上昇を招く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−248113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の事情を鑑み、振動デバイスの小型化・微細化や商業的生産の要求に寄与し、かつ、製造工程をより簡便化することができる振動デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る振動デバイスの製造方法は、ベース基板、及び凹部を有する接着層を前記ベース基板と接合する部分に備えた蓋体を準備する工程と、前記ベース基板に振動片を実装する工程と、前記振動片がキャビティ内に収容されるように、前記接着層を介して前記蓋体を前記ベース基板に接合する工程と、前記凹部を介して前記キャビティ内を脱気処理する工程と、前記接着層を溶融させて、前記凹部を塞ぐ工程と、を含む。
【0009】
本発明によれば、振動デバイスの製造工程における封止工程における脱気処理を、ベース基板や蓋体に形成された貫通孔ではなく、接着層に形成された凹部を介して行うことができる。したがって、ベース基板や蓋体に貫通孔を設ける必要がなく、製造工程が簡便化される。また、振動デバイスのレイアウト設計時に、貫通孔用のスペースを考慮する必要がないため、振動デバイスの小型化を図ることができる。また、これまで必要とされたAu・Geボールを必要せずに封止工程を行えるため、振動デバイスの材料コストを低減することができる。以上から、振動デバイスの小型化・微細化や商業的生産の要求に寄与し、かつ、製造工程をより簡便化することができる振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【0010】
本発明に係る振動デバイスの製造方法において、前記蓋体を準備する工程は、第1の面を有する第1の金属基板を準備する工程と、前記第1の金属基板の前記第1の面において、前記接着層と同じ材質からなる導電層を形成する工程と、前記第1の金属基板、及び前記導電層をエッチングする工程と、パターニングされた前記導電層に前記凹部を形成する工程と、を含んでいてもよい。
【0011】
これによれば、ベース基板や蓋体に貫通孔の代わりとなる凹部を設ける工程、蓋体とベース基板を接合する接着層を設ける工程を、蓋体を形成する工程で簡便に行うことができる。したがって、振動デバイスの製造方法の簡便化を図ることができる。
【0012】
本発明に係る振動デバイスの製造方法において、前記蓋体を準備する工程は、前記第1の金属基板から複数の前記蓋体を形成することを含んでいてもよい。
【0013】
これによれば、商業的生産の要求により寄与する振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【0014】
本発明に係る振動デバイスの製造方法において、前記凹部を形成する工程は、前記導電層を切削する工程を含んでいてもよい。
【0015】
これによれば、公知のフォトレジスト技術やエッチング技術でもって形成される貫通孔と比べて、より簡便なプロセスで形成することができる。
【0016】
本発明に係る振動デバイスの製造方法において前記蓋体の前記ベース基板と接合する部分の外形の輪郭は矩形であり、前記凹部は、前記矩形の中心点に対して対称に形成されてもよい。
【0017】
これによれば、封止工程における脱気処理を効率よく行うことができる。
【0018】
本発明に係る振動デバイスの製造方法において、前記凹部は、前記部分の四隅に形成されてもよい。
【0019】
これによれば、封止工程における脱気処理を効率よく行うことができる。
【0020】
本発明に係る振動デバイスの製造方法において、前記ベース基板を準備する工程は、第1の面及び、前記第1の面とは反対側の第2の面を有する第2の金属基板を準備する工程と、前記第2の金属基板を前記第1の面側からエッチングし、複数の金属突起を形成する工程と、複数の前記金属突起を覆うように絶縁層を前記第1の面側に形成する工程と、複数の前記金属突起が互いに独立するように前記第2の金属基板を前記第2の面側からエッチングし、前記金属突起からなる複数の金属部材を形成する工程と、前記絶縁層から複数の前記金属部材が露出するように、前記絶縁層を研削する工程と、前記金属部材に接続する配線パターンを形成する工程と、を含んでいてもよい。
【0021】
これによれば、商業的生産の要求により寄与する振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【0022】
本発明に係る振動デバイスの製造方法において、前記振動片を実装する工程では、複数の前記ベース基板を含む基板に複数の前記振動片がそれぞれ実装され、前記蓋体を前記ベース基板に接合する工程では、複数の前記振動片を複数の前記蓋体によってそれぞれ収容し、前記凹部を塞ぐ工程の後、前記基板を切断する工程を更に含んでいてもよい。
【0023】
これによれば、商業的生産の要求により寄与する振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】振動デバイス100の要部を模式的に示す平面図と断面図。
【図2】図1(B)における破線部IIの拡大図。
【図3】振動デバイス101の要部を模式的に示す断面図と、破線部IIIBにおける拡大図。
【図4】振動デバイス200の要部を模式的に示す断面図と、破線部IVBにおける拡大図。
【図5】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を説明するフローチャート。
【図6】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法の封止工程を説明するフローチャート。
【図7】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法の蓋体を準備する工程を説明するフローチャート。
【図8】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図9】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する平面図。
【図10】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図と平面図。
【図11】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図12】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する平面図。
【図13】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図14】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法のベース基板を準備する工程を説明するフローチャート。
【図15】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図16】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する平面図。
【図17】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図18】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図19】本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図20】変形例に係る振動デバイスの製造方法を模式的に説明する断面図。
【図21】電子機器の一例を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明を適用した実施形態の一例について図面を参照して説明する。ただし、本発明は以下の実施形態のみに限定されるものではない。本発明は、以下の実施形態及びその変形例を自由に組み合わせたものを含むものとする。
【0026】
1. 振動デバイス
以下、図面を参照して、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法が適用された振動デバイスの例について説明する。
【0027】
1.1 第1態様
図1は、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法が適用された振動デバイス100(振動デバイスの第1態様)の構成を示す模式図である。図1(A)は、振動デバイス100の振動片70が実装される面における平面図を、蓋体30を便宜的に省略して模式的に示す平面図であり、図1(B)は、図1(A)のIB−IB線における断面図であり、図1(A)は、振動デバイス100の振動片70が実装される面とは反対側の底面における平面図を、模式的に示す平面図である。図2は、図1(B)の破線部IIにおける拡大図である。
【0028】
図1(A)〜図1(C)に示すように、振動デバイス100は、振動片70が実装されたベース基板10と、振動片70をキャビティ1内に収容する蓋体30と、ベース基板10と蓋体30とを接合する接着層20と、を含む。
【0029】
図1(A)及び図1(B)に示すように、ベース基板10は、後述される振動片70が実装される(電気的に接続される)部材であって、後述される蓋体30と接合し、振動片70をキャビティ1内に収容することができる部材である。
【0030】
キャビティ1は、ベース基板10と後述される蓋体30とによって形成される空間である。キャビティ1は、脱気処理(真空処理又は不活性ガス処理)され、減圧状態、より好適には真空状態であってもよい。また、キャビティ1は、窒素等の不活性ガス雰囲気であってもよい。ここで、ベース基板10又は蓋体30には、キャビティ1内の脱気処理用の貫通孔が形成されていない。
【0031】
ベース基板10の形状及び構成は、蓋体30と接合し、振動片70を収容することができる限り、特に限定されない。ベース基板10は、開口部を有し、該開口部から振動片70を収容する容器型の形状であってもよい(図4参照)。詳細は後述される。
【0032】
ベース基板10は、図1(B)に示すように、第1の面12(振動片70が実装される実装面)と、第1の面12とは反対側の第2の面13(外部端子が形成される底面)を有するプレート状部材であってもよい。第1の面12及び第2の面13は矩形の平坦面であってもよい。図示はされないが、第1の面12及び第2の面13は平坦面ではなく、凹部が形成されていてもよい。
【0033】
ベース基板10の材質は、例えば、金属、樹脂、単結晶シリコン、ガラス、セラミックス等から形成されたプレート状部材であってもよい。より好適には、例えば、図1(B)に示すように、ベース基板10は、複数の金属部材14(14a、14b)、及び複数の金属部材14を保持する絶縁層15から構成されることができる。
【0034】
金属部材14aは、図1(A)〜図1(C)に示すように、柱状部材(ポスト状部材)であって、ベース基板10を貫通し、第1の面12及び第2の面13において露出し、第1の面12及び第2の面13の一部を構成する。
【0035】
金属部材14aの第1の面12における露出部分は、後述される振動片70やICチップ80を実装するためのダイパッドの一部であってもよい。また、金属部材14aの第2の面13における露出部分は、振動デバイス100をマザーボード等の外部基板に接続するための外部端子の一部であってもよい。少なくとも1つの金属部材14aは、グラウンド用の貫通電極であってもよい。また、少なくとも1つの金属部材14aは、電源供給用の貫通電極であってもよい。
【0036】
金属部材14bは、図1(A)〜図1(C)に示すように、複数の金属部材14aを囲む環状部材であって、ベース基板10を貫通せず、第1の面12において露出し、第1の面12の一部を構成する。金属部材14bの第1の面12における露出部分は、ベース基板10の蓋体30との接合部分であってもよい。したがって、金属部材14bの第1の面12における露出部分は、蓋体30の接合部分と対応した形状を有していてもよい。
【0037】
金属部材14a及び14bのベース基板10の厚み方向における断面形状は、第1の面12から第2の面13へ向かう方向において、その断面積(幅)が次第に小さくなるように形成されていてもよい。また、図示はされないが、金属部材14(14a、14b)は、第1の面12から第2の面13へ向かう方向において、金属部材14aの断面積(幅)が同一となるように形成されていてもよい。
【0038】
金属部材14(14a、14b)の材質は、金属である限り、特に限定されない。金属部材14には、例えば、鉄(Fe)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(アルミナ)、42アロイ(Fe‐Ni合金)、コバール(Fe‐Ni‐Co合金)等を用いてもよい。
【0039】
複数の金属部材14を保持する絶縁層15は、図1(B)に示すように、複数の金属部材14(14a、14b)間の空間を充填し、第1の面12及び第2の面13を構成する。絶縁層15の材質は、絶縁性を有する限り、特に限定されない。絶縁層15には、例えば、熱硬化性のエポキシ樹脂等公知の樹脂材料を用いてもよい。
【0040】
図1(A)〜図1(C)に示すように、ベース基板10の第1の面12及び第2の面13には、配線パターン17(17a、17b、17c、17d)が形成される。ベース基板10の第1の面12には第1の配線パターン17a、17b、17cが形成され、第2の面13には第2の配線パターン17dが形成されていてもよい。
【0041】
配線パターン17は、金属部材14aと接続する再配置配線であってもよい。第1の配線パターン17a、17b、17cの一部は、後述される振動片70やICチップ80を実装するための電極パッドであってもよい。第2の配線パターン17dの一部は、マザーボード等の外部基板に接続するための外部接続用端子であってもよい。
【0042】
図1(A)に示すように、第1の配線パターン17a、17b、17cは、金属部材14aと接続して振動片70及びICチップ80が実装される配線パターン17aと、金属部材14aと接続してICチップ80のみが実装される配線パターン17bと、金属部材14bと接続して蓋体30との接合部分に配置される配線パターン17cとを含んでいてもよい。図1(B)に示すように、第2の配線パターン17dは、金属部材14aと接続して第2の面13の四隅において外部接続用端子を形成していてもよい。
【0043】
配線パターン17の材質及び構成は、特に限定されない。配線パターン17は、単層構造であってもよいし、図示はされないが、例えば、複数の導電膜の積層構造で形成されていてもよい。
【0044】
配線パターン17は、例えば、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、Ti(チタン)、W(タングステン)、クロム(Cr)、スズ(Sn)等のいずれかを含む積層構造であってもよい。配線パターン17は、より好適には、チタン/タングステン層(第1層)、銅層(第2層)、ニッケル層(第3層)、及び金層(第4層)の積層構造であってもよい。
【0045】
図1(B)に示すように、ベース基板10の第1の面12側において蓋体30とベース基板10とが接合し、振動片70をキャビティ1内に収容する。図2に示すように、蓋体30は、接着層20を介してベース基板10と接合する。
【0046】
図1(B)及び図2に示すように、接着層20は、ベース基板10と蓋体30とを接合し、キャビティ1内を封止することができる。図2に示すように、例えば、接着層20は、ベース基板10の第1の配線パターン17cと蓋体30とを接合するように設けられていてもよい。接着層20が、ベース基板10と蓋体30との間を充填することによって、真空処理されたキャビティ1内を確実に封止することができる。
【0047】
接着層20は、特定の温度化で溶融し、ベース基板10と蓋体30とを接合できる限り、特に限定されない。接着層20の材質としては、例えば、Snはんだ、Auはんだ等の金属ろう材等を挙げることができる。
【0048】
蓋体30の形状及び構造は、ベース基板10と接合し、振動片70等を収容するキャビティ1を形成することができる限り、特に限定されない。例えば、図1(B)及び図2に示すように、蓋体30は開口部36を有する容器状の形状であってもよい。
【0049】
また、蓋体30は、ベース基板10が容器状の形状であった場合、プレート状の形状であってもよい(図4参照)。詳細は後述される。
【0050】
蓋体30は、図1(B)に示すように、内面31と外面32とを有していてもよい。内面31は、蓋体30のキャビティ1の壁面を構成する面であって、外面32は、反対側の大気側の面である。
【0051】
内面31は、角部を有さず、平面及び/又は曲面から構成されていてもよい。図1(B)に示すように、外面32は、ベース基板10の第1の面12と略平行関係にある上面32a、及び上面32aと連続する側面32bを有していてもよい。
【0052】
ここで、図2に示すように、内面31と側面32bとに連続する面を、接合面33とする。接合面33は、蓋体30がベース基板10と接合する面であって、平坦な面である。
【0053】
蓋体30の材質は、特に限定されない。蓋体30の材質としては、例えば、金属、樹脂、単結晶シリコン、ガラス、セラミックス等を挙げることができる。
【0054】
加工精度や加工の簡便性等の加工性の観点から、蓋体30の材質は、好適には、鉄(Fe)、銅(Cu)、金(Au)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、チタン(Ti)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、酸化アルミニウム(アルミナ)、42アロイ(Fe‐Ni合金)、コバール(Fe‐Ni‐Co合金)等の金属から選択されてもよい。
【0055】
より好適には、蓋体30の材質は、ベース基板10に使用される金属部材14と同じ金属となるように選択されてもよい。これによれば、温度変化に応じて生じる内部応力を緩和することができ、振動デバイス100の信頼性をより向上させることができる。
【0056】
キャビティ1内に収容される振動片70は、どのような態様の振動片であってもよい。振動片70の態様としては、AT振動片、音叉型振動片、SAW振動片、ウォーク型振動片などを例示することができる。また、振動片70は、それ自体が水晶、タンタル酸リチウム、ニオブ酸リチウム等の圧電材料で形成されてもよいし、圧電性を有さない材料で形成されてもよい。振動片70が圧電性を有さない材料で形成された場合は、たとえば、さらに圧電素子を振動片70の構成に含んでもよい。
【0057】
本実施形態では、振動片70が水晶で形成された音叉型振動片である場合を例示する。振動片70は、キャビティ1内の壁面(図示の例では、第1の面12)に、例えば、導電性接着剤、導電性ペースト、ロウ材等の導電性の支持部材76によって支持されることができる。図1(A)に示すように、振動片70は、配線パターン17上の支持部材76によって支持されている。本実施形態の振動片70は、2本の振動碗71を有し、片持ち梁状に基部72によって支持されている。基部72から延出する振動碗71は、キャビティ1内で屈曲振動することができる。図示はされないが、振動碗71および基部72には、少なくとも振動碗71を屈曲振動させるための複数の電極が備えられる。
【0058】
図1(A)及び図1(B)に示すように、キャビティ1内にはベース基板10に実装されたICチップ80が収容されていてもよい。ICチップ80は、図1(B)に示すように、ベース基板10の第1の面12に、例えば、ろう材81によって実装され、配線パターン17と電気的に接続されている。ICチップ80は、発振回路部品であって、振動片70を駆動振動させるための駆動回路と、角速度が加わったときに振動片70に生じる検出振動を検出する検出回路と、を有することができる。
【0059】
以上のいずれかの構成でもって、振動デバイス100を構成することができる。
【0060】
1.2 第2態様
次に、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を適用した振動デバイスであって、別の態様を有する振動デバイス101(振動デバイスの第2態様)について、図面を参照しながら説明する。
【0061】
図3は、振動デバイス101の構成を示す模式図である。図3(A)は、振動デバイス101の断面図であり、断面箇所は、図1(A)のIB−IB線に対応する。図3(B)は、図3(A)の破線部IIIBにおける拡大図である。
【0062】
なお、振動デバイス101は、蓋体30の構成のみにおいて振動デバイス100と異なる。以下、振動デバイス101の説明において、振動デバイス100と実質的に同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0063】
図3(A)及び図3(B)に示すように、蓋体130は、開口部136を有する容器状の形状であって、内面131と外面132とを有する。内面131は、蓋体130のキャビティ1の壁面を構成する面であって、外面132は、反対側の大気側の面である。
【0064】
内面131は、角部を有さず、平面及び/又は曲面から構成されていてもよい。図3(A)及び図3(B)に示すように、外面132は、ベース基板10の第1の面12と略平行関係にある上面132a、上面132aと連続する第1の側面132b、及び第1の側面132bと連続する第2の側面132cを有する。
【0065】
ここで、図3(B)に示すように、内面131と第2の側面132cとに連続する面を、接合面133とする。接合面133は、蓋体130がベース基板10と接合する面であって、平坦な面である。図3(A)及び図3(B)に示すように、第1の側面132bはテーパー面であり、かつ、ベース基板10側に凸な曲面である。また、図3(B)に示すように、第2の側面132cは第1の面12と略直角関係にある平面である。
【0066】
図3(A)及び図3(B)に示すように、蓋体130は、第1の側面132bの一部、第2の側面132c、及び接合面133の一部から構成される外延部134を有する。外延部134は、蓋体130の開口部136において、外側(キャビティ1側とは反対側)方向へ延びる部分である。
【0067】
以上のいずれかの構成でもって、振動デバイス101を構成することができる。
【0068】
1.3 第3態様
次に、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を適用した振動デバイスであって、別の態様を有する振動デバイス200(振動デバイスの第3態様)について、図面を参照しながら説明する。
【0069】
図4は、振動デバイス200の構成を示す模式図である。図4(A)は、振動デバイス200の断面図であり、図4(B)は、図4(A)の破線部IVBにおける拡大図である。
【0070】
なお、振動デバイス200は、ベース基板10及び蓋体30の構成において振動デバイス100と異なる。以下、振動デバイス200の説明において、振動デバイス100と実質的に同じ構成は、同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0071】
図4(A)及び図4(B)に示すように、ベース基板210は、開口部216を有する容器状の形状であって、蓋体230は、プレート状の部材である。
【0072】
図4(A)に示すように、ベース基板210は、振動片70を開口部216から収容することができる形状を有する。ベース基板210は、一部材から形状加工されていてもよいし、図4(A)に示すように、振動片70等が実装されるベース基板211及び、振動片70を収容する壁部212によって構成されていてもよい。
【0073】
図4(A)に示すように、蓋体230は、プレート状の部材であって、ベース基板210の開口部216を封止する。ここで、図4(B)に示すように、ベース基板210と蓋体230とは、接着層20により接合される。
【0074】
以上のいずれかの構成でもって、振動デバイス200を構成することができる。
【0075】
2. 振動デバイスの製造方法
以下、図面を参照して、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法について説明する。図5〜図20は、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を説明する模式図又はフローチャートである。
【0076】
図5は、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法を説明するフローチャートであり、図6は、図5の封止工程(S4)のフローチャートである。
【0077】
図5及び図6に示すように、振動デバイスを製造する工程は、ベース基板10、及び凹部を有する接着層をベース基板と接合する部分に備えた蓋体30を準備する工程(S1)と、ベース基板10に振動片70を実装する工程(S2)と、接着層を介して蓋体30をベース基板10に搭載し、振動片70をキャビティ1内に収容する工程(S4−1)と、凹部を介してキャビティ1内を脱気処理する工程(S4−2)と、接着層を溶融させて、凹部を塞ぐ熱処理工程(S4−3)と、を含む。
【0078】
以下の説明では、まず、図7〜図13を参照しながら、蓋体30、130を準備する工程(S11〜S16)を説明する。次に、図14〜図17を参照しながら、ベース基板10を準備する工程(S21〜S29)を説明した後、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法の全体(S1〜S6)を説明する。
【0079】
2.1 蓋体の準備(S11〜S16)
図7は、蓋体の準備工程を説明するフローチャートである。図8は、蓋体30の製造方法を説明する断面図であり、図9は、凹部形成工程(S15)後の金属基板30´を接着層25側から見た平面図であり、図10は、蓋体の準備工程後の蓋体30を説明する図である。
【0080】
図7に示すように、蓋体30を準備する工程は、金属基板30´を準備する工程(S11)と、金属基板30´に導電層を形成する工程(S12)と、金属基板30´、及び導電層をエッチングする工程(S13、S14)と、パターニングされた導電層に凹部を形成する工程(S15)と、を含む。また、蓋体30を準備する工程は、パターニングされた金属基板30´を個片化し、同時に複数の蓋体30を形成することを含んでいてもよい(S15)。
【0081】
[金属基板の準備(S11)]
まず、金属基板30´を準備する。金属基板30´は、蓋体30となる部材であって、図8(A)に示すように、第1の面30aと、第1の面30aとは反対側の第2の面30bとを有する基板である。したがって、金属基板30´の材質は、蓋体30の材質から選択される。
【0082】
金属基板30´は、複数の第1の領域Aと、第1の領域Aを囲む第2の領域Bが設けられていてもよい。第1の領域Aは、蓋体30となる領域であり、第2の領域Bは、個片化する工程において切断される領域(ダイシングライン)であってもよい。
【0083】
[導電層形成(S12)]
次に、図8(A)に示すように、例えば電解めっきにより、第1の面30aの全面に、導電層20aを形成する。導電層20aは、接着層20となる導電層である。したがって、導電層20aは、第1の融点を有する金属材料から形成される。
【0084】
[レジストパターン形成(S13)]
次に、図8(B)に示すように、公知のフォトリソグラフィー技術によって、導電層20aの上に所望のパターニングを有するレジストパターン50aを形成する。また、第2の面30bにおいても全面を覆うようにレジストパターン50bを形成してもよい。
【0085】
[金属基板及び導電層のエッチング(S14)]
次に、図8(C)に示すように、導電層20a及び金属基板30´を第1の面30a側からのみパターニングする。パターニングする方法は、特に限定されず、ウェットエッチングやドライエッチング等の公知のエッチング技術、サンドブラスト処理や切削工具を用いた物理的処理等を用いることができる。
【0086】
好適には、ディップ式やスプレー式のウェットエッチングを採用することができる。例えば、導電層20aが、スズ(Sn)である場合、導電層20aのエッチング液には塩化第二鉄溶液を使用することができる。また、金属基板30´が42アロイ合金である場合、金属基板30´のエッチング液には塩化第二鉄溶液を使用することができる。
【0087】
金属基板30´のエッチング工程(S14)では、複数の凹部37(37a、37b)を形成するように金属基板30´をハーフエッチングする。凹部37aは、第1の領域Aに形成される凹部であり、凹部37bは、ダイシングラインである第2の領域Bに沿って形成される凹部である。図8(C)に示すように、これによって、複数の金属突出38を形成することができる。また、複数の凹部37(37a、37b)の形状は、スプレー式のウェットエッチングにおいてエッチングの所要時間を制御することで、所望の形状とすることができる。なお、金属基板30´及び導電層20aのエッチング工程の後、レジストパターン50(50a、50b)は適宜除去される。
【0088】
[凹部形成(S15)]
次に、図8(C)に示すように、エッチングされた導電層20aに凹部26を形成する。図9は、本工程(S15)後の、凹部26が形成された金属基板30´を第1の面30a側から見た平面図である。
【0089】
図8(C)及び図9に示すように、凹部26は、導電層20aのベース基板10と接合される面に形成される。凹部26は、環状の導電層20aを切断するように形成される。しかしながら、凹部26は、導電層20aを完全に切断せず、金属基板30´にも達しないように形成される。凹部26は溝状の形状であってもよい。
【0090】
凹部26の形成方法は、特に限定されないが、好適には、カッター等の切削工具や、凹部26の配置及び形状の対応した凸部が形成された切削版を用いて導電層20aを切削することができる。例えば、切削版は、導電層20aよりも固い金属から形成される。
【0091】
本工程により、図9に示すように、金属基板30´のそれぞれの第1の領域Aにおいて、先端部に凹部26が形成された接着層20aが形成された、環状の金属突出38を形成することができる。
【0092】
[個片化(S16)]
次に、接着層20a及び金属基板30´をダイシングラインである第2の領域Bに沿って切断し、複数の第1の領域Aを個片化する。これにより、図8(D)に示すように、凹部26を有する接着層25をベース基板10と接合する部分に備えた蓋体30を形成することができる。また、本工程により、図8(D)に示すように、複数の蓋体30を同時に形成することができる。切断方法は、特に限定されず、公知のダイシング方法を用いることができる。
【0093】
図10(A)は個片化工程(S16)後の蓋体30を説明する断面図であり、図10(B)は、蓋体30の接着層25側からみた平面図である。図10(A)に示すように、以上の工程から内面31、外面32(上面32a、側面32b)、及び接合面33を有する蓋体30を形成することができる。
【0094】
図10(B)に示すように、蓋体30のベース基板と接合する部分(接着層25)の外形の輪郭は平面図において矩形であってもよい。また、凹部26は複数設けられ、接合する部分の外形の輪郭が為す矩形の中心点Cに対して対称に配置されていてもよい。これによれば、効率的に脱気を行うことができる。また、凹部26は、図10(B)に示すように、接合部分の四隅に形成されていてもよい。
【0095】
以上の蓋体30の製造方法によれば、化学エッチングなどの加工精度が高い方法で外形を加工することができる金属基板30´を用いるため、所望の外形の蓋体30を高い寸法精度で準備することが可能となる。
【0096】
また、厚みが実質的に均一な金属基板30´を加工することで、図10(A)に示すように、蓋体30の開口部36周縁部において、上面32aと接合面33間の幅W1を容易に均一にすることができる。換言すれば、厚みが実質的に均一な金属基板30´を用いることで、接合面33の高い平坦度を容易に担保することができる。
【0097】
また、複数の蓋体30が、共通の金属基板30´から加工されるため、蓋体30の寸法での品質のバラつきが低減し、形状品質が向上する。したがって、蓋体30の製造工程における加工精度不良によって、ベース基板10との接合不良が発生する可能性を低減することができる。
【0098】
以上から、金属基板30´を用いた蓋体30の製造方法によれば、高いスループットで、外形品質の高い蓋体30を商業的に製造することができ、ベース基板10との接合信頼性も向上させることができる。
【0099】
次に、図11〜図13を参照して、第2態様に係る振動デバイス101の蓋体130の製造方法を以下に説明する。
【0100】
図11は、蓋体130の製造方法を説明する断面図であり、図12は、凹部形成工程(S15)後の金属基板30´を接着層25側から見た平面図であり、図13は、蓋体の準備工程後の蓋体130を説明する図である。
【0101】
振動デバイス101の蓋体130を準備する工程においても、図7に示すように、蓋体130を準備する工程は、金属基板30´を準備する工程(S11)と、金属基板30´に導電層を形成する工程(S12)と、金属基板30´、及び導電層をエッチングする工程(S13、S14)と、パターニングされた導電層に凹部を形成する工程(S15)と、を含む。以下においては、蓋体130を準備する工程において、蓋体30を準備する工程と異なる工程のみを説明する。
【0102】
[レジストパターン形成(S13)]
図11(A)及び図11(B)に示すように、導電層20aが形成された金属基板30´において、公知のフォトリソグラフィー技術によって、レジストパターン50a及びレジストパターン50bを形成する。蓋体130の準備工程においては、第1の面30a及び第2の面30bの両面において、所望のパターニングを有するレジストパターン50a及びレジストパターン50bが形成される。
【0103】
[金属基板及び導電層のエッチング(S14)]
次に、図11(C)に示すように、導電層20a及び金属基板30´を第1の面30a及び第2の面30b側の両面からエッチングする。導電層20a及び金属基板30´のエッチング工程においては、蓋体30の準備工程と同様に、ディップ式やスプレー式のウェットエッチングを好適に採用することができる。
【0104】
金属基板及び導電層のエッチング工程(S14)では、複数の凹部137(137a、137b)を形成するように金属基板30´をハーフエッチングする。凹部137aは、第1の面30a側から第1の領域Aに形成される凹部であり、凹部37bは、第2の面30b側からダイシングラインである第2の領域Bに沿って形成される凹部である。これによれば、図11(C)に示すように、複数のアーチ部138を形成することができる。これにより、図11(C)及び図10に示すように、金属基板30´のそれぞれの第1の領域Aの周縁部および第2の領域Bにおいて、先端部に導電層20aが形成された、格子状のアーチ部138を形成することができる。
【0105】
[凹部形成(S15)]
次に、図11(C)及び図12に示すように、導電層20aに凹部26を形成する。蓋体130の準備工程では、図12に示すように、凹部26が交差するように形成される。
【0106】
[個片化(S16)]
次に、パターニングされた金属基板30´をダイシングラインである第2の領域Bに沿って切断し、複数の第1の領域Aを個片化する。個片化工程では、アーチ部138の中央部分を切断する。これにより、図11(D)に示すように、外延部134を有する蓋体130を形成することができる。
【0107】
図13に示すように、以上の工程から内面31、外面32(上面32a、側面32b)、及び接合面33を有する蓋体130を形成することができる。以上の工程によれば、蓋体130は、外延部134、及び接着層25(凹部26)を更に備えることができる。
【0108】
2.2 ベース基板の準備(S21〜S29)
次に、図14〜図17を参照しながら、ベース基板10を準備する工程(S21〜S29)を説明する。
【0109】
図14に示すように、ベース基板10を準備する工程は、金属基板を準備する工程(S21)と、金属基板をエッチングし、複数の金属突起を形成する工程(S22〜S25)と、複数の金属突起を覆うように絶縁層を形成する工程(S26)と、複数の金属突起が互いに独立するように金属基板をエッチングし、金属突起からなる複数の金属部材を形成する工程(S27)と、絶縁層から複数の金属部材が露出するように、絶縁層を研削する工程(S28)と、金属部材に接続する配線パターンを形成する工程(S29)と、を含む。
【0110】
[金属基板の準備(S21)]
まず、金属基板10´を準備する。金属基板10´は、ベース基板10の金属部材14(14a及び14b)となる部材であって、図12(A)に示すように、第1の面10aと、第1の面10aとは反対側の第2の面10bとを有する基板である。ここで、第1の面10aは、ベース基板10の第2の面13側となる面であり、第2の面10bは、ベース基板10の第1の面12側となる面であり、かつ、金属基板10´の材質は、金属部材14の材質から選択される。また、金属基板10´は、ベース基板10の設計上の厚みよりも厚い厚みを有する。
【0111】
金属基板10´は、複数の第1の領域A´と、第1の領域A´を囲む第2の領域B´が設けられていてもよい。第1の領域A´は、ベース基板10となる領域であり、第2の領域B´は、個片化する工程において切断される領域(ダイシングライン)であってもよい。
【0112】
次に、金属基板10´を第1の面10a側からエッチングし、複数の金属突起14´を形成する。複数の金属突起14´を形成する工程(S22〜S25)の一例を以下に説明する。
【0113】
[第1レジストパターン形成(S22)]
まず、図15(A)に示すように、公知のフォトレジスト技術により、第1の面10aに第1レジストパターン51aを形成する。第1レジストパターン51aは、第1の領域A´内において、金属突起14´を形成する領域であって、金属部材14aを形成する領域に設ける。したがって、第1の領域A´内において、ベース基板10の金属部材14aの数に対応して第1レジストパターン51aを形成することができる。
【0114】
[第1エッチング(S23)]
第1エッチング工程(S23)では、金属基板10´の第1の面10a側からエッチングを行う。本エッチング工程では、ディップ式やスプレー式のウェットエッチングを採用することができる。例えば、金属基板10´が42アロイ合金である場合、金属基板10´のエッチング液には塩化第二鉄溶液を使用することができる。
【0115】
第1エッチング工程(S23)では、複数の凹部10cを形成するように金属基板10´をハーフエッチングする。複数の凹部10cは、少なくとも第1の深さD1(第1の面10aを基準とする深さ)を有していればよく、互いに同じ深さであってもよいし、互いに異なる深さであってもよい。
【0116】
[第2レジストパターン形成(S24)]
次に、図15(B)に示すように、公知のフォトレジスト技術により、ハーフエッチングされた第1の面10a側の面に、第2レジストパターン51bを形成する。第2レジストパターン51bは、第1の領域A´内において、金属突起14´を形成する領域であって、金属部材14bを形成する領域に設ける。
【0117】
[第2エッチング(S25)]
次に、第2エッチング工程(S24)では、金属基板10´の第1の面10a側から更にエッチングを行う。本エッチング工程では、ディップ式やスプレー式のウェットエッチングを採用することができる。
【0118】
第2エッチング工程(S25)では、複数の凹部10dを形成するように金属基板10´を更にハーフエッチングする。複数の凹部10dは、少なくとも第2の深さD2(第1の面10aを基準とする深さであって、D1<D2)を有していればよく、互いに同じ深さであってもよいし、互いに異なる深さであってもよい。ここで、第2の深さD2は、ベース基板10の設計上の厚みと等しい深さである。
【0119】
以上S22〜S25の工程により、図15(C)に示すように、金属基板10´を第1の面10a側からエッチングし、複数の金属突起14´を形成することができる。図15(C)及び図16に示すように、第1の領域A´中央領域には、複数のポスト状(略円柱状)の金属突起14a´が形成され、中央領域を囲むように、環状の金属突起14b´が形成されていてもよい。
【0120】
なお、図示はされないが、第2エッチング工程の後、第1レジストパターン51a及び第2レジストパターン51bは適宜除去されてもよいし、後述される研削工程(S28)にて除去されてもよい。
【0121】
[絶縁材料充填・固化(S26)]
次に、図17(A)に示すように、複数の金属突起14´(14a´、14b´)を覆うように絶縁材料を充填して固化させ、絶縁層15aを第1の面10a側に形成する。例えば、常温で流動性を有する熱硬化性樹脂材料等の絶縁材料を凹部10dに充填し、かつ、金属突起14´を覆う。その後、充填した絶縁材料を焼成して絶縁層15aを形成する。ここで、図17(A)に示すように、絶縁層15aの上面を上面15bとする。また、第2の領域B´における絶縁層を絶縁層15cとする。
【0122】
また、本工程後、絶縁層15aと金属基板10´とを合わせた最大の厚みをT1(上面15bと第2の面10bの間の厚み)とするとき、T1が、ベース基板10の設計上の厚みD2よりも厚くなるように絶縁層15aを形成する。
【0123】
[第3エッチング(S27)]
次に、第3エッチング工程(S27)において、図17(B)に示すように、複数の金属突起14´が互いに独立するように金属基板10´を第2の面10b側からエッチングし、金属突起14´からなる複数の金属部材14(14a、14b)を形成する。ここで、複数の金属突起14´が互いに独立する状態とは、それぞれの金属突起14´が互いに離間し、電気的に接続されない状態を意味する。本工程において、第2の面10b側において、絶縁層15bが露出する。
【0124】
本工程後の絶縁層15aと金属基板10´とを合わせた最大の厚みをT2とするとき、T2が、ベース基板10の設計上の厚みD2よりも厚くなるように、第3エッチングを行う。
【0125】
なお、本エッチング工程では、ディップ式やスプレー式のウェットエッチング又はドライエッチング等の公知のエッチング技術を採用することができる。
【0126】
[研削(S28)]
次に、図17(C)に示すように、絶縁層15aから複数の金属部材14(14a)が露出するように、絶縁層15aを研削する。研削工程には公知の研削器具を用いることができる。例えば、高速回転する円盤型研削体によって研削加工を行ってもよい。
【0127】
ここで、図17(C)に示すように、第1の面10a及び第2の面10bの両面において研削加工を行ってもよい。また、絶縁層15aから複数の金属部材14aを露出させた後、更に金属部材14a及び絶縁層15aを研削してもよい。これによれば、確実に金属部材14aを露出させることができる。
【0128】
本工程において、被研削体の厚みが、実質的にベース基板10の設計上の厚みD2となるように研削を行う。これにより、図17(C)に示すように、所望の厚みを有する金属部材14(14a、14b)及び絶縁層15を形成することができる。また、平坦な第1の面12及び第2の面13を有するベース基板10(ベース基板10)を製造することができるため、蓋体30との接合信頼性を向上させることができる。
【0129】
[配線パターン形成(S29)]
次に、図17(D)に示すように、金属部材14に接続する配線パターン17(17a、17b、17c、17d)を第1の面12及び第2の面13に形成する。配線パターン17を形成する工程は、公知の成膜技術を用いることができる。配線パターン17は、例えば、スクリーン印刷、インクジェット法、CVD法等により形成されてもよい。
【0130】
図17(D)に示すように、以上の工程から、複数の第1の領域A´において複数のベース基板10が形成され、第1の領域A´を囲む第2の領域B´に絶縁層15cが形成される。ここで、切断領域である第2の領域B´の絶縁層15cを切断することで除去し、ベース基板10を個片化してもよいし、個片化を行わず、複数のベース基板10が絶縁層15cで連続した状態のプレート状部材を、基板2と称してもよい。
【0131】
2.3 振動デバイスの製造(S1〜S6)
次に、図5、図6、図18、及び図19を参照しながら、振動デバイスの製造工程(S1〜S6)を説明する。以下の説明では、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法の一例として、まず、第1形態に係る振動デバイス100の製造方法を説明した後、第2形態に係る振動デバイス101及び第3形態に係る振動デバイス200の製造方法を説明する。
【0132】
2.3.1 振動デバイス100の製造方法
[ベース基板・蓋体の準備(S1)]
図5に示すように、本実施形態に係る振動デバイス100の製造工程のうち、ベース基板10及び蓋体30を準備する工程は、上述の説明の通りである。
【0133】
ベース基板10を準備する工程では、図18(A)に示すように、複数のベース基板10が絶縁層15cで連続したプレート状の基板2を準備してもよい。また、図示されないが、絶縁層15cにおいて切断され、個片化されたベース基板10を準備してもよい。好適には、本工程において、ベース基板10として、基板2を準備することで、複数のベース基板10の取り扱い性が向上し、商業的生産性が向上する。
【0134】
[振動片・ICチップ実装(S2)]
次に、図5に示すように、振動片70・ICチップ80を実装(電気的に接続し固定する)する。本工程で、振動片70及びICチップ80を実装(ダイアタッチ)する順序は特に限定されない。例えば、図18(B)及び図18(C)に示すように、ICチップ80を配線パターン17(17a、17b)に実装した後、振動片70を配線パターン17aに実装してもよい。これにより、振動片70とICチップ80の9集積回路とが電気的に接続される。また、振動片70が、例えば、片持ち梁となるように保持されてもよい。
【0135】
また、図18(C)に示されるように、基板2の複数のベース基板10に振動片70及びICチップ80をそれぞれ実装してもよい。
【0136】
[周波数調整(S3)]
次に、図5に示すように、振動片70の周波数調整を行う。周波数調整方法は、特に限定されず、例えば、振動片70の電極の一部をレザートリミングにより除去して質量を減少させたり、蒸着やスパッタリングなどにより質量を付加させたりしてもよい。または、ICチップ80のデータを書き換えることにより周波数調整を行ってもよい。
【0137】
[封止(S4)]
次に、本実施形態に係る振動デバイスの製造方法の封止工程(S4)を行う。本工程は、図6に示すように、接着層25を介して蓋体30をベース基板10に搭載し、振動片70をキャビティ1内に収容する工程(S4−1)と、凹部26を介してキャビティ1内を脱気処理する工程(S4−2)と、接着層25を溶融させて、凹部26を塞ぐ熱処理工程(S4−3)と、を含む。
【0138】
まず、蓋体30搭載工程(S4−1)では、図19(A)に示すように、振動片70及びICチップ80を覆うように蓋体30をベース基板10に搭載し、振動片70及びICチップ80をキャビティ1内の空間に封止する。ここで、接着層25の表面が部分的に溶融するように熱処理を行い、蓋体30をベース基板10に部分的に接合してもよい。
【0139】
次に、図19(A)に示すように、凹部26を介してキャビティ1内を脱気処理する(A4−2)。これにより、キャビティ1内は真空もしくは減圧状態となる。
【0140】
次に、図19(B)に示すように、接着層25を溶融させて、凹部26を塞ぐ熱処理工程(S4−3)を行う。接着層25は、SnやAuのろう材等から構成されるため、材質の融点まで加熱処理を行うことで溶融する。したがって、凹部26は溶融した接着層25により塞がれて消滅することができる。本工程により、図19(B)に示すように、凹部26を有さず、蓋体30とベース基板10とを接合する接着層20が形成され、キャビティ1は封止される。
【0141】
[個片化(S5)]
次に、図19(C)に示すように、第2の領域B´に沿ってダイシングすることで、基板2に複数形成された振動デバイス100を個片化することができる。
【0142】
[特性検査(S6)]
個片化された振動デバイス100の製造方法は、電気的特性等の特性を検査する工程を含んでいてもよい。
【0143】
以上の工程でもって、本実施形態に係る振動デバイス100の製造方法を構成することができる。
【0144】
本実施形態に係る振動デバイス100の製造方法は、例えば、以下の特徴を有する。
【0145】
本実施形態に係る振動デバイス100の製造方法によれば、振動デバイスの製造工程における封止工程における脱気処理を、ベース基板10や蓋体30に形成された貫通孔ではなく、接着層25に形成された凹部26を介して行うことができる。したがって、ベース基板10や蓋体30に貫通孔を設ける必要がなく、製造工程が簡便化される。また、振動デバイス100のレイアウト設計時に、貫通孔用のスペースを考慮する必要がないため、振動デバイスの小型化を図ることができる。また、これまで必要とされたAu・Geボールを必要せずに封止工程を行えるため、振動デバイスの材料コストを低減することができる。
【0146】
以上から、振動デバイスの小型化・微細化や商業的生産の要求に寄与し、かつ、製造工程をより簡便化することができる振動デバイスの製造方法を提供することができる。
【0147】
2.3.2 振動デバイス101の製造方法
次に、第2形態に係る振動デバイス101の製造方法について、説明する。第1変形例に係る振動デバイス101の製造方法は、振動デバイス100の製造方法のベース基板・蓋体の準備固工程(S1)において、蓋体130を準備することで、振動デバイス101を製造することができる(図9及び図10参照)。
【0148】
2.3.3 振動デバイス200の製造方法
図20は、第2変形例に係る振動デバイス200の製造方法の一例を模式的に示す図である。以下の説明では、振動デバイス200のベース基板230がセラミックである場合について述べる。
【0149】
先ず、図20(A)に示すように、セラミックグリーンシートの状態のベース基板211を準備する。図20(A)に示すように、ベース基板211には、脱気用のスルーホール等が形成されない。
【0150】
次に、図20(A)に示すように、ベース基板211両面に配線パターン17を形成する。本工程は、例えば、導体ペーストをインクとして、スクリーン印刷、インクジェット方式などの印刷法を用いて塗布し、焼成することにより行ってもよい(金属メタライズ)。また、本工程は、一般的な成膜およびパターニングによって行ってもよい。
【0151】
次に、図20(B)に示すように、開口部216を有する壁部212をベース基板211に積層する。壁部212は、セラミックグリーンシートの状態のものを用いてもよい。ベース基板211および壁部212を積層した後、焼成することによって、図20(C)に示すように、一体化したセラミックのベース基板210を形成することができる。
【0152】
次に、図20(C)に示すように、開口部216から振動片70等をベース基板210内に収容し、プレート状の蓋体230を搭載する。蓋体230のベース基板210との接合部分には、凹部26が形成された接着層25が設けられている。これにより、キャビティ1内の封止工程は、凹部26を介して行うことができる。
【0153】
次に、図20(D)に示すように、接着層25を溶融させて、凹部26を塞ぐ熱処理工程を行う。本工程により、図20(D)に示すように、凹部26を有さず、蓋体30とベース基板10とを接合する接着層20が形成され、キャビティ1は封止される。
【0154】
以上の工程により第3形態に係る振動デバイス200を製造することができる。
【0155】
3. 電子機器
次に、本発明に係る振動デバイスの製造方法が適用された振動デバイス100(101、200)が適用される電子機器1000について説明する。本発明に係る振動デバイス100(101、200)が適用される電子機器1000は、例えば、携帯電話、自動車、デジタルカメラ、プロジェクタ、携帯電話基地局、デジタルTV、デジタルビデオカメラ、時計、携帯型デジタル音楽プレーヤー、PDA、パソコン、プリンタ等の電子機器であってもよい。例えば、図21に示すように、電子機器1000が、携帯電話の場合、無線回路やGPS回路の温度補償水晶発振器として、本発明に係る振動デバイス100を使用することができる。またカメラの手ぶれ検出機能等モーションセンシングのために本発明に係る振動デバイス100(101、200)を使用することができる。またワンセグ放送受信のための電圧補償型水晶発振器として、本発明に係る振動デバイス100を使用することができる。
【0156】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には容易に理解できよう。従って、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0157】
1 キャビティ、2 基板、10、210、211 ベース基板、12 第1の面、
13 第2の面、14 金属部材、15 絶縁層、17 配線パターン、
20 接着層、21 内面、22 外面、25 接着層、26 凹部、
30、130、230 蓋体、31 内面、32 外面、33 接合面、36 開口部、
50(50a、50b) レジストパターン、51a 第1レジストパターン、
52a 第2レジストパターン、70 振動片、71 振動碗、72 基部、
76 支持部材、80 ICチップ、81 ろう材、
100、101、200 振動デバイス、1000 電子機器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース基板、及び凹部を有する接着層を前記ベース基板と接合する部分に備えた蓋体を準備する工程と、
前記ベース基板に振動片を実装する工程と、
前記振動片がキャビティ内に収容されるように、前記接着層を介して前記蓋体を前記ベース基板に接合する工程と、
前記凹部を介して前記キャビティ内を脱気処理する工程と、
前記接着層を溶融させて、前記凹部を塞ぐ工程と、
を含む、振動デバイスの製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記蓋体を準備する工程は、
第1の面を有する第1の金属基板を準備する工程と、
前記第1の金属基板の前記第1の面において、前記接着層と同じ材質からなる導電層を形成する工程と、
前記第1の金属基板、及び前記導電層をエッチングする工程と、
パターニングされた前記導電層に前記凹部を形成する工程と、
を含む、振動デバイスの製造方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記蓋体を準備する工程は、前記第1の金属基板から複数の前記蓋体を形成することを含む、振動デバイスの製造方法。
【請求項4】
請求項2において、
前記凹部を形成する工程は、前記導電層を切削する工程を含む、振動デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項において、
前記蓋体の前記ベース基板と接合する部分の外形の輪郭は矩形であり、前記凹部は、前記矩形の中心点に対して対称に形成される、振動デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項5において、
前記凹部は、前記部分の四隅に形成される、振動デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項において、
前記ベース基板を準備する工程は、
第1の面及び、前記第1の面とは反対側の第2の面を有する第2の金属基板を準備する工程と、
前記第2の金属基板を前記第1の面側からエッチングし、複数の金属突起を形成する工程と、
複数の前記金属突起を覆うように絶縁層を前記第1の面側に形成する工程と、
複数の前記金属突起が互いに独立するように前記第2の金属基板を前記第2の面側からエッチングし、前記金属突起からなる複数の金属部材を形成する工程と、
前記絶縁層から複数の前記金属部材が露出するように、前記絶縁層を研削する工程と、
前記金属部材に接続する配線パターンを形成する工程と、
を含む、振動デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか1項において、
前記振動片を実装する工程では、複数の前記ベース基板を含む基板に複数の前記振動片がそれぞれ実装され、
前記蓋体を前記ベース基板に接合する工程では、複数の前記振動片を複数の前記蓋体によってそれぞれ収容し、
前記凹部を塞ぐ工程の後、前記基板を切断する工程を更に含む、振動デバイスの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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