説明

振動ミルおよびその運転方法

【課題】多数または多種類の原料物質をコンタミなく破砕処理する際、作業時間が短く、作業要員も少なくできる振動ミルおよびその運転方法を提供することにある。
【解決手段】予め投入された破砕媒体によって原料物質を破砕処理して破砕産物とする破砕チャンバー1と、破砕チャンバー1を垂直面内で円振動させる振動装置とを備えた振動ミル30であって、破砕チャンバー1は、円筒形状をなし、その上部に原料物質の投入口7を有する胴体部2と、胴体部2の一端側に配置され、胴体部2の内部に水または海水を注水するための注水口8を有する注水側蓋3と、胴体部2の他端側に配置され、破砕産物を通過させ、破砕媒体は通過させない大きさで開口する排出口9を有する排出側仕切り板4と、排出側仕切り板4の外側で排出口9に対応する位置に開閉自在に取り付けられる排出側蓋5とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉱石、岩石、その他の原料物質(例えば、ダイヤモンドを内包する貝殻を含む土砂)を金属またはセラミックのボール、金属ロッド等の破砕媒体で破砕処理するために使用される振動ミルおよびその運転方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉱石等の破砕処理に使用される振動ミルとして、特許文献1には、垂直面内で円振動される横型円筒形の破砕チャンバー(文献では粉砕筒)を有する振動ミルが記載されている。そして、振動ミルが有する破砕チャンバーは、その胴体上部の中間部および一端部には投入口が設けられ、破砕チャンバーの胴体下部の両端部および両端板下部には、大きさが異なり、かつ、閉鎖可能な排出口が設けられている
【特許文献1】特公平1−12543号公報(請求項1、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
鉱石や広大な地域の中で偏在する埋蔵物や堆積物などを採掘し、産業化する場合には、多数の試堀を実施して膨大なサンプル(原料物質)を採取し個別に破砕・分別を行って、目的物の含有量分布を計測し、回収を最大の効率で実施できるように戦略を立てる必要がある。
【0004】
しかしながら、従来の振動ミルでは、投入するサンプル(原料物質)を変える場合、先の原料物質のコンタミを防止するためには、破砕チャンバー内の内容物を破砕媒体も含めて全量排出し、破砕チャンバー内を水等で洗浄し、また、破砕媒体も水等で洗浄して、破砕チャンバー内に再充填しなければならなかった。原料物質の性状、処理量、所要破砕粒度にもよるが、ある場合には原料投入および破砕運転に要する時間が数分しか必要なくとも、破砕チャンバーからの内容物排出、破砕チャンバーの洗浄、破砕チャンバーへの内容物の再充填に1時間以上もかかってしまうことがあった。そのため、多数のサンプルの破砕処理には、多くの作業時間がかかり、作業要員も多く必要とするという問題もあった。なお、サンプル(原料物質)の種類を変える場合にも同様な問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題を解決すべく創案されたもので、その目的は、多数または多種類の原料物質をコンタミなく破砕処理する際、作業時間が短く、作業要員も少なくできる振動ミルおよびその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、請求項1に係る振動ミルは、予め投入された破砕媒体によって原料物質を破砕処理して破砕産物とする破砕チャンバーと、前記破砕チャンバーを垂直面内で円振動させる振動装置とを備えた振動ミルであって、前記破砕チャンバーは、円筒形状をなし、その上部に前記原料物質の投入口を有する胴体部と、前記胴体部の一端側に配置され、当該胴体部の内部に水または海水を注水するための注水口を有する注水側蓋と、前記胴体部の他端側に配置され、前記破砕産物を通過させ、前記破砕媒体は通過させない大きさで開口する排出口を有する排出側仕切り板と、前記排出側仕切り板の外側で前記排出口に対応する位置に開閉自在に取り付けられる排出側蓋とを備える。
【0007】
前記構成によれば、胴体部の一端側に注水口、他端側に排出口を備えることによって、胴体部の下部内壁面に軸方向に沿った水流が発生し、破砕媒体に拘束されずに、破砕産物が排出口から排出される。それにより、胴体内部および破砕媒体の洗浄効率が向上する。また、排出口が破砕産物を通過させ、破砕媒体は通過させない大きさで開口することによって、破砕産物のみが排出口から排出され、胴体部内部への破砕産物の残留がなくなると共に、破砕媒体の胴体部内部からの排出、胴体部内部への再充填の必要がなくなる。
【0008】
請求項2に係る振動ミルは、前記注水側蓋の注水口が、前記胴体部の下部円周に沿う位置に配置される。
【0009】
前記構成によれば、注水口が胴体部の下部円周に沿う位置に配置されていることによって、胴体部の軸方向に沿った水流が発生しやすくなり、胴体内部および破砕媒体の洗浄効率がより一層向上し、排出口からの破砕産物の排出もより一層促進される。
【0010】
請求項3に係る振動ミルは、前記注水側蓋の内側に配置され、前記破砕媒体は通過させない大きさで開口する点検口を有する注水側仕切り板を備え、前記注水側蓋が、前記注水側仕切り板の外側で前記点検口に対応する位置に開閉自在に取り付けられる。
【0011】
前記構成によれば、点検口を有する注水側仕切り板を備え、注水側蓋が注水側仕切り板の外側で点検口に対応する位置に取り付けられることによって、注水側蓋を開けるだけで、点検口を介して、胴体部内部における破砕産物の残留量を容易に確認ができる。
【0012】
請求項4に係る振動ミルは、前記排出側蓋が、前記排出口と当接する側に、前記排出口と嵌合する突起部を有する。
【0013】
前記構成によれば、排出側蓋が排出口と嵌合する突起部を備えることによって、排出側仕切り板の内側側面(胴体部内部側の側面)が、ほぼ凹凸のない滑らかな平面となるため、破砕処理の際に、投入された原料物質および破砕媒体によって、排出口が摩耗し、減損することが緩和される。
【0014】
請求項5に係る振動ミルは、前記注水側蓋が、前記点検口と当接する側に、前記点検口と嵌合する突起部を有する。
【0015】
前記構成によれば、注水側蓋が点検口と嵌合する突起部を備えることによって、注水側仕切り板の内側側面(胴体部内部側の側面)がほぼ凹凸のない滑らかな平面となるため、破砕処理の際に、投入された原料物質および破砕媒体によって、点検口が摩耗し、減損することが緩和される。
【0016】
請求項6に係る振動ミルの運転方法は、請求項1ないし請求項5に記載の振動ミルの運転方法であって、前記注水側蓋および前記排出側蓋を閉じて、前記投入口から前記胴体部内部に原料物質、および、水または海水を投入する準備工程と、前記胴体部を所定振動数で円振動させ、前記胴体部内部に予め投入された破砕媒体によって前記原料物質を破砕処理して破砕産物を産出する破砕工程と、前記注水口から前記胴体部内部に水または海水を注水し、前記排出側蓋を開けて、前記胴体部を前記所定振動数または前記所定振動数より低い振動数で円振動させ、前記排出口から前記破砕産物、および、前記水または海水を排出する洗浄工程とを含む。
【0017】
前記手順によれば、胴体部に水を注水しながら、胴体部を円振動させ、排出口から破砕産物、および、水または海水を排出する洗浄工程を含むことによって、胴体部内部に軸方向に沿った水流が発生し、破砕媒体に拘束されずに破砕産物が排出口から排出される。それにより、胴体内部および破砕媒体の洗浄効率が向上する。
【0018】
請求項7に係る振動ミルの運転方法は、請求項1ないし請求項5に記載の振動ミルの運転方法であって、前記注水側蓋を閉じ前記排出側蓋を開いた状態で、前記投入口から前記胴体部内部に原料物質、および、水または海水を連続的に投入しつつ、前記胴体部を所定振動数で円振動させ、前記胴体部内部に予め投入された破砕媒体によって前記原料物質を破砕処理して破砕産物を産出し、前記排出口から前記破砕産物を排出する破砕工程と、 破砕処理が終了した後、前記胴体部の円振動を続けながら、前記注水口から前記胴体部内部に水または海水を注水し、前記排出口から前記破砕産物の残留物、および、前記水または海水を排出する洗浄工程とを含む。
【0019】
前記手順によれば、破砕工程において、原料物質、および、水または海水を連続的に投入しつつ、胴体部を円振動させることによって、原料物質が連続的に破砕処理され、振動ミルの運転効率が向上する。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る振動ミルおよびその運転方法によれば、胴体部内部の破砕産物が短時間で排出され、かつ、破砕媒体の胴体内部からの排出洗浄、破砕媒体の胴体部内部への再充填も必要ないため、コンタミ防止のための破砕チャンバー(胴体部)の洗浄作業が簡便になると共に、時間も短くなる。それにより、多数または多種類の原料物質をコンタミなく破砕処理する際、作業時間が大幅に短縮できると共に、作業要員も少なくできる。また、短時間で多量の原料物質の性状を調べることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明に係る振動ミルおよびその運転方法の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、振動ミルに使用される破砕チャンバーの構成を示す横断面図、図2は図1の破砕チャンバーを注水側(一端側)から見た側面図、図3は図1の破砕チャンバーを排出側(他端側)から見た側面図、図4(a)は図1の破砕チャンバーを注水側(一端側)から見た斜視図、(b)は図1の破砕チャンバーを排出側(他端側)から見た斜視図である。
【0022】
まず、本発明に係る振動ミルについて説明する。
図1〜図4(a)、(b)に示すように、本発明に係る振動ミル30は、破砕チャンバー1と、振動装置(図示せず)とを備える。
【0023】
振動装置は、図示しないが、破砕チャンバー1を支持する支持プレートPと、この支持プレートPの両側または片側に破砕チャンバー1に接続するように配置された回転軸およびアンバランスウエイト等から構成される振動手段と、支持プレートPおよび振動手段を支持する弾性体と、この弾性体を支持するフレーム体と、このフレーム体に弾性体を介して支持されている振動手段を作動させるユニバーサルジョイント等の駆動伝達手段と、この駆動伝達手段を介して振動手段を作動させるための駆動モータとを備えている。したがって、振動装置の駆動モータが駆動すると、駆動モータから駆動伝達手段を介して回転軸に回転が伝達される。そして、回転軸は、アンバランスウエイトによって、弾性体の許容範囲において偏心した状態で回転する。そのため、回転軸に支持プレートPを介して接続されている破砕チャンバー1は、垂直面内で円振動する。
【0024】
破砕チャンバー1は、予め投入された破砕媒体によって原料物質を破砕処理して破砕産物とするもので、胴体部2と、胴体部2の一端側に配置された注水側蓋3と、胴体部2の他端側に配置された排出側仕切り板4と、排出側蓋5とを備える。
【0025】
胴体部2は、円筒形状をなし、その上部に原料物質、水または海水を投入する投入口7を備える。投入口7は、必要に応じて蓋7aにより閉鎖可能に構成されている。なお、破砕チャンバー1は、胴体部2の内側に、耐摩耗性を有する鋼材またはセラミックス等からなる円筒体で構成された胴体ライナー(図示せず)を備えたものであってもよい。また、破砕チャンバー1は、排出側仕切り板4の内側に、耐摩耗性を有する鋼材またはセラミックス等からなる円板で構成されたエンドライナー(図示せず)を備えたものであってもよい。
【0026】
胴体部2の一端側に配置された注水側蓋3は、胴体部2の内部に水または海水を注水するために、複数の注水口8と、注水口8に連通する水ジャケット20とを有する。水ジャケット20は屈曲可能なホース21等の手段により給水源(図示せず)に接続されている。
また、胴体部2の他端部に配置された排出側仕切り板4は、胴体部2の内部から破砕産物を外部に排出するための排出口9を有する。そして、排出側仕切り板4の外側には排出側蓋5を備えている。
【0027】
そして、胴体部2の一端側に注水口8、他端側に排出口9を備えることによって、胴体部2の下部内壁面に軸方向に沿った水流が発生し、破砕媒体に拘束されずに、破砕産物が排出口9から排出され、胴体内部および破砕媒体の洗浄効率が向上する。したがって、注水口8および排出口9の位置は、注水口8が胴体部2の一端側、排出口9が胴体部2の他端側に配置されれば、特に限定されない。しかしながら、軸方向に沿った水流が発生しやすいことから、注水口8および排出口9の両者が、胴体部2の下部円周に沿って配置されることが好ましい。
【0028】
図1、図3、図4(b)に示すように、排出側仕切り板4は、円板からなり、胴体部(円筒形状)2と、胴体部(他端側)2の円周に沿って所定間隔で設けられるボルト10で接合される。排出側蓋5は、排出側仕切り板4の略半分の大きさを有する半円板で構成され、排出側仕切り板4の外側で、排出口9に対応する位置に開閉自在に取り付けられている。すなわち、排出側蓋5の上端部が、排出側仕切り板4の略中央部に蝶番11で固定され、排出側蓋5の下端部が、排出側仕切り板4の下端部にボルト12で固定されている。
なお、図示しないが、胴体部2と、注水側蓋3とは、胴体部(一端側)2の円周に沿って所定間隔で設けられるボルトで接合されている。
【0029】
そして、胴体部2の内部から破砕産物を排出する際には、排出側蓋5(下端部)のボルト12による固定を解除して、排出側蓋5を排出側仕切り板4の上端側に反転させ、排出側仕切り板4の上端部にボルト13で固定する。これにより、排出側仕切り板4の排出口9が露出し、破砕産物が排出口9から排出される。同時に、注水口8から胴体部2の内部に注水された水または海水も、排出口9から排出される。
【0030】
排出口9は、破砕産物を通過させ、破砕媒体を通過させない大きさで開口する。排出口9がこのような大きさで開口することによって、破砕産物のみが排出口9から排出され、胴体部内部への破砕産物の残留がなくなる。排出口9の形状は、図面に記載された縦長のスリット形状に限定されず、目的にかなうものであれば花弁状(放射状)のスリット形状、または、横長のスリット形状等の任意の形状を採用してもよい。排出口9の縁形状は、テーパ状であってもよい。また、排出口9の数も、破砕産物の排出が十分であれば、特に限定されない。
【0031】
排出側蓋5は、排出口9と当接する側に、排出口9と最小の隙間で嵌合する突起部14を有することが好ましい。突起部14の形状および数は、排出口9の形状および数と同一が好ましい。
【0032】
排出側蓋5が排出口9と嵌合する突起部14を備えることによって、排出側蓋5を閉じた際、排出側仕切り板4の内側側面(胴体部内部側の側面)が、ほぼ凹凸のない滑らかな平面となるため、破砕処理の際に、投入された原料物質および破砕媒体によって、排出口9が摩耗し、減損することが緩和される。その結果、排出口9の開口が大きくなって、破砕媒体が、排出口9から外部へ出るようなことが発生し難くなる。
【0033】
図1〜図4(a)、(b)に示すように、本発明に係る振動ミル30を構成する破砕チャンバー1は、注水側蓋3の内側に注水側仕切り板6を備えてもよい。そして、注水側仕切り板6は点検口18を有する。点検口18は、胴体部2の下部円周に沿って配置されることが好ましい。なお、胴体部2(投入口7)、排出側仕切り板4(排出口9)、排出側蓋5については、前記と同様であるので、説明を省略する。
【0034】
図1、図2、図4(a)に示すように、注水側仕切り板6は、円板からなり、胴体部(円筒形状)2と、胴体部(一端側)2の円周に沿って所定間隔で設けられるボルト15で接合される。注水側蓋3は、注水側仕切り板6の略半分の大きさを有する半円板で構成され、注水側仕切り板6の外側で、点検口18に対応する位置に開閉自在に取り付けられている。すなわち、注水側蓋3の上端部が、注水側仕切り板6の略中央部に蝶番16で固定され、注水側蓋3の下端部が、注水側仕切り板6の下端部にボルト17で固定されている。
【0035】
そして、注水側蓋3を開ける際には、注水側蓋3(下端部)のボルト17による固定を解除して、注水側蓋3を注水側仕切り板6の上端側に反転させる。これにより、注水側仕切り板6の点検口18が露出し、胴体部2の内部を確認することが可能となり、破砕産物の残留量を確認できる。
【0036】
点検口18は、破砕媒体は通過させない大きさで開口する。点検口18がこのような大きさで開口することによって、破砕媒体が点検口18から外部に出ることを防止できる。点検口18の形状は、図面に記載された縦長のスリット形状に限定されず、目的にかなうものであれば花弁状(放射状)のスリット形状、または、横長のスリット形状等の任意の形状を採用してもよい。点検口18の縁形状は、テーパ状であってもよい。また、点検口18の数も、破砕産物の残留量が確認できれば、特に限定されない。
【0037】
注水側蓋3は、点検口18と当接する側に、点検口18と最小の隙間で嵌合する突起部19を有することが好ましい。突起部19の形状および数は、点検口18の形状および数と同一が好ましい。また、突起部19には、前記した注水口8が設けられている。
【0038】
注水側蓋3が点検口18と嵌合する突起部19を備えることによって、注水側蓋3を閉じた際、注水側仕切り板6の内側側面(胴体部内部側の側面)が、ほぼ凹凸のない滑らかな平面となるため、破砕処理の際に、投入された原料物質および破砕媒体によって、点検口18が摩耗し、減損することが緩和される。その結果、点検口18の開口が大きくなって、破砕媒体が、点検口18から外部へ出るようなことが発生し難くなる。
【0039】
次に、本発明に係る振動ミルの一つの運転方法について、図面を参照して説明する。図5は振動ミルの運転方法の工程フロー、図6は振動ミルの運転方法を模式的に示す概略図である。なお、振動ミルの各構成については、図1〜図3を適宜参照して説明する。
振動ミルの運転方法は、図5に示すように、準備工程(S1)と、破砕工程(S2)と、洗浄工程(S3)とを含む。以下、各工程の手順について説明する。
【0040】
(準備工程:S1)
(1)破砕チャンバー1の胴体部2の両端に備えられた注水側蓋3および排出側蓋5を閉じて、投入口7から胴体部2の内部に原料物質、および、水または海水を投入する。なお、胴体部2の内部には、予め、破砕媒体が投入されている(図6(a)参照)。
【0041】
(破砕工程:S2)
(2)振動装置(図示せず)を駆動し、胴体部2を所定振動数(A)で円振動させる。胴体部2の円振動によって、原料物質を破砕媒体で破砕処理して、破砕産物を産出する(図6(b)参照)。
(3)所定時間の円振動後、振動装置の駆動を停止する。
【0042】
(洗浄工程:S3)
(4)排出側蓋5を開けて、注水口8から胴体部2の内部に水または海水を注水する。
(5)注水口8からの注水を続けながら、振動装置を駆動し、胴体部2を所定振動数または所定振動数より低い振動数(B、A≧B)で円振動させる。注水と、胴体部2の円振動によって、排出口9から、破砕産物、および、水または海水が排出される(図6(c)参照)。
なお、注水量は、(胴体部2の内容積の0.2〜2.0倍)/毎分が好ましく、(胴体部2の内容積の0.5倍)/毎分がさらに好ましい。
(6)注水口8からの注水を停止する。注水側蓋3を開けて、胴体部2の内部での破砕産物の残留量を目視確認することもできる。(図6(d)参照)。
(7)次の別の種類の原料物質を準備して、(1)〜(6)の手順を行う。これにより、種々の原料物質がお互いに混ざることなく破砕処理できる。
【0043】
前記の洗浄工程S3を行うことによって、胴体部の下部内壁面に軸方向に沿った水流が発生し、破砕媒体に拘束されずに破砕産物が排出口から排出される。それにより、胴体内部および破砕媒体の洗浄効率が向上する。
【0044】
本発明に係る振動ミルの運転方法は、以下の方法で行ってもよい。
予め破砕媒体が投入されている胴体部2の注水側蓋3を閉じ、排出側蓋5を開いた状態で、投入口7より胴体部2の内部に原料物質及び水または海水を連続投入しつつ、振動装置を駆動して、胴体部2を所定振動数で円振動させる。これにより細かく破砕処理された原料物質は排出口側へ移動し、十分に細かくなった破砕産物は水または海水と共に排出口9の開口より連続的に外部へ排出される。
破砕処理が終了した後、振動ミル30を運転しつつ注水口8より所要量の水を注水し、残留物を排出して振動ミル内を洗浄する。洗浄が完了したら、注水を停止し同時に投入口7より別種の原料物質と水または海水を投入し、間をおかずに次の破砕運転を開始する。このような方法をとることにより、振動ミル30の運転効率を上げることができる。
【実施例】
【0045】
次に、本発明の実施例について、説明する。
(実施例)
図1〜図3に記載された振動ミル30を使用し、前記した運転方法で運転した。なお、運転条件は、以下のとおりとした。
原料物質:貝を含む土砂3kgを使用した。
なお、原料物質と共に、水3kgを投入した。
破砕媒体:ボール径25〜40mmの金属ボールを使用し、ボール量は胴体部2内容積
の75%とした。
破砕工程:胴体部2を、ミル速度(胴体部2の円振動数)50Hzで60秒間、円振動
させた。
洗浄工程:胴体部2に水を注水(30リットル/毎分)して、胴体部を、ミル速度30
Hzで20秒間、円振動させた。
【0046】
(比較例)
実施例の比較対象として、従来の振動ミル(特公平1−12543号に記載の振動ミル)を使用し、実施例と同様の運転条件で運転した。なお、振動ミルの粉砕筒の上部に注水口を設け、洗浄工程において、原料物質(破砕媒体)の上方から水が注水されるようにした。
【0047】
実施例および比較例の振動ミルについて、運転終了後、胴体部内部を目視し、破砕産物の残留量を確認した。実施例の振動ミルにおいては、破砕産物の残留は確認されなかった。しかしながら、比較例の振動ミルにおいては、破砕産物の残留が確認され、洗浄工程の円振動を10分間行っても、破砕産物の残留が確認された。
【0048】
以上、本発明を実施するための最良の形態について、詳細に説明したが、本発明は、かかる実施形態(実施例、図面含む)に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で、適宜変更可能である。
例えば、本発明に係る振動ミルは、振動装置の支持プレートに複数の破砕チャンバーが支持されたものでもよい。また、振動ミルは、原料物質の投入を手動または自動で行う投入手段、排出側蓋および注水側蓋の開閉を手動または自動で行う開閉手段(シリンダー等)、排出側蓋および注水側蓋と仕切り板との密閉をシリンダー等による加圧により実施する密閉手段を備えてもよい。さらに、振動ミルは、破砕産物の残留量の確認手段として、電流値、重量、音響などの計測手段を備えてもよい。そして、本発明に係る振動ミルの運転方法は、洗浄工程において、前記計測手段を用いて、破砕産物の残留を確認するものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る振動ミルに使用される破砕チャンバーの構成を示す横断面図である。
【図2】図1の破砕チャンバーを注水側(一端側)から見た側面図である。
【図3】図1の破砕チャンバーを排出側(他端側)から見た側面図である。
【図4】(a)は図1の破砕チャンバーを注水側(一端側)から見た斜視図、(b)は図1の破砕チャンバーを排出側(他端側)から見た斜視図である。
【図5】本発明に係る振動ミルの運転方法の工程フローである。
【図6】(a)〜(d)は、本発明に係る振動ミルの運転方法を模式的に示す概略図である。
【符号の説明】
【0050】
1 破砕チャンバー
2 胴体部
3 注水側蓋
4 排出側仕切り板
5 排出側蓋
6 注水側仕切り板
7 投入口
8 注水口
9 排出口
14、19 突起部
18 点検口
30 振動ミル
S1 準備工程
S2 破砕工程
S3 洗浄工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め投入された破砕媒体によって原料物質を破砕処理して破砕産物とする破砕チャンバーと、前記破砕チャンバーを垂直面内で円振動させる振動装置とを備えた振動ミルであって、
前記破砕チャンバーは、
円筒形状をなし、その上部に前記原料物質の投入口を有する胴体部と、
前記胴体部の一端側に配置され、当該胴体部の内部に水または海水を注水するための注水口を有する注水側蓋と、
前記胴体部の他端側に配置され、前記破砕産物を通過させ、前記破砕媒体は通過させない大きさで開口する排出口を有する排出側仕切り板と、
前記排出側仕切り板の外側で前記排出口に対応する位置に開閉自在に取り付けられる排出側蓋とを備えることを特徴とする振動ミル。
【請求項2】
前記注水側蓋の注水口は、前記胴体部の下部円周に沿う位置に配置されることを特徴とする請求項1に記載の振動ミル。
【請求項3】
前記注水側蓋の内側に配置され、前記破砕媒体は通過させない大きさで開口する点検口を有する注水側仕切り板を備え、
前記注水側蓋は、前記注水側仕切り板の外側で前記点検口に対応する位置に開閉自在に取り付けられることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の振動ミル。
【請求項4】
前記排出側蓋は、前記排出口と当接する側に、前記排出口と嵌合する突起部を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の振動ミル。
【請求項5】
前記注水側蓋は、前記点検口と当接する側に、前記点検口と嵌合する突起部を有することを特徴とする請求項3または請求項4に記載の振動ミル。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5に記載の振動ミルの運転方法であって、
前記注水側蓋および前記排出側蓋を閉じて、前記投入口から前記胴体部内部に原料物質、および、水または海水を投入する準備工程と、
前記胴体部を所定振動数で円振動させ、前記胴体部内部に予め投入された破砕媒体によって前記原料物質を破砕処理した破砕産物を産出する破砕工程と、
前記注水口から前記胴体部内部に水または海水を注水し、前記排出側蓋を開けて、前記胴体部を前記所定振動数または前記所定振動数より低い振動数で円振動させ、前記排出口から前記破砕産物、および、前記水または海水を排出する洗浄工程とを含むことを特徴とする振動ミルの運転方法。
【請求項7】
請求項1ないし請求項5に記載の振動ミルの運転方法であって、
前記注水側蓋を閉じ前記排出側蓋を開いた状態で、前記投入口から前記胴体部内部に原料物質、および、水または海水を連続的に投入しつつ、前記胴体部を所定振動数で円振動させ、前記胴体部内部に予め投入された破砕媒体によって前記原料物質を破砕処理して破砕産物を産出し、前記排出口から前記破砕産物を排出する破砕工程と、
破砕処理が終了した後、前記胴体部の円振動を続けながら、前記注水口から前記胴体部内部に水または海水を注水し、前記排出口から前記破砕産物の残留物、および、前記水または海水を排出する洗浄工程とを含むことを特徴とする振動ミルの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−95761(P2009−95761A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−269855(P2007−269855)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【出願人】(503245465)株式会社アーステクニカ (54)
【Fターム(参考)】