説明

振動モータ

【課題】 モータ落下等により衝撃がかかった場合、偏心錘の位置が何処にあっても、回転シャフトに働く力を最小限に抑える錘カバーにおいて、錘カバーの保持強度を格段に向上させ、錘カバーの脱落を防止する振動モータと偏心錘及び錘カバーとの組付け構造を提供する。
【解決手段】 シャフト4には偏心錘20及び錘カバー30が固定されており、偏心錘20はシャフト4に固定される固定部21と、固定部21と一体となっている錘部22からなり、錘カバー30は、シャフト4を挟んで錘部22の反対側に位置し、偏心錘20を挟み込む挟み込み部31及び連結部32と、振動モータに衝撃が加わった際の当て止めとなる突出部33からなっている。
シャフト4の中心から錘部22の最外周までの距離と、同じくシャフト4の中心から突出部33の最外周までの距離は実質的に等しくなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯電話の着信報知等に使用される振動モータに関し、特に振動モータと偏心錘及び錘カバーとの組付け構造に関する。
【背景技術】
【0002】
振動モータでは、モータ本体より突出した回転シャフトに偏心錘を取り付けることで、モータの回転により回転シャフトと共に偏心錘が回転し振動を得るものであるが、従来の振動モータでは、モータを誤って落下させた際に、偏心錘の位置によっては例えば特開平7−336941の図21のように回転シャフトに強い力が働き、回転シャフトが曲がってしまうという不具合があった。
【0003】
そこで、特開平7−336941のように偏心錘に円板状の曲がり防止体を設け、モータ落下等により衝撃がかかった場合、偏心錘の位置が何処にあっても、曲がり防止体が速やかに外部と接触し、回転シャフトに働く力を最小限に抑えることを可能とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−336941
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、円板状の曲がり防止体の構造ではその固定強度に不安があり、モータに強い衝撃が加わった際に曲がり防止体が衝撃に耐えられず、曲がり防止体自体が偏心錘から脱落してしまうという不具合があった。
【0006】
曲がり防止体を回転シャフトに固定しても同様の不具合の不安があり、固定強度を強化する為曲がり防止体の厚さを増し、回転シャフトとの固定強度を上げた場合には、今度は振動モータの大型化や、相対的に偏心錘が薄くなり振動量が低下するといった不具合がある。
【0007】
さらに、偏心錘から曲がり防止体を一体成形する構成も考えられているが、この場合、曲がり防止体の脱落の不具合は無くなるものの、偏心錘と同じ材料で形成される曲がり防止体が偏心錘のシャフトを挟んだ反対側に位置することになるため、偏心錘の振動量を相殺してしまうという不具合があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為、本発明に係る振動モータと偏心錘及び錘カバーとの組付け構造は、一方より回転自在のシャフトが突出し、他方には端蓋が固定されたモータ本体と、シャフトに固定される偏心錘及び偏心錘よりも比重の軽い材料で成形された錘カバーからなる振動モータにおいて、偏心錘は、シャフトに固定される固定部及び固定部と一体となっている錘部からなり、錘カバーはシャフトを挟んで錘部の反対側に位置し且つ偏心錘を挟み込んで固定されており、シャフトの中心から錘部及び錘カバー各々の最外周までの距離が実質的に等しいことを特徴とする。
【0009】
このような振動モータと偏心錘及び錘カバーとの組付け構造では、錘カバーが偏心錘を挟み込んで固定されている為、錘カバーの保持強度が格段に向上し、錘カバーの脱落を防止できる。また、錘カバーは偏心錘より比重の軽い別部材で成形されているため、振動量に与える影響も少なくて済む。錘カバーの偏心錘への固定方法は任意で良く、例えば、偏心錘に突起を成形し、錘カバーの突起に対応する位置に穴、若しくは凹部を成形して嵌め込むような構造でも良い。
【0010】
錘カバーの偏心錘への固定方法において、錘カバーが偏心錘の両側を挟み込み、当該両側において各々シャフトに固定される構造を採用しても良い。この場合、錘カバーがシャフトの2箇所で固定され、また、偏心錘を挟み込んで偏心錘と一緒に固定される為、脱落強度が一層向上し、もはや錘カバー自体が破損しない限り脱落することは無くなる。また、シャフト固定部分の厚みは最小限で良い為、振動モータの大型化や、相対的に偏心錘が薄くなり振動量が低下するといった不具合は無くなる。
【0011】
偏心錘はシャフトに固定される固定部を加締めることでシャフトに固定されるが、錘カバーに固定部を露出させる開口部を成形する構造を採用すると、錘カバーを偏心錘及びシャフトに設置してからでも、偏心錘の加締め固定を容易に行なうことが出来る為、取付け作業が容易になると共に、開口部の分だけ錘カバーの重量が減少する為、振動モータの振動量が向上する。この構造は特に、錘カバーが偏心錘の両側を挟み込み、当該両側において各々シャフトに固定される構造に対して有効である。
【0012】
また、錘カバーは、モータに強い力がかかった場合に、どこか一部分でも外部と接触すればシャフトに働く力を最小限に抑えることが可能になることから、錘カバーはシャフトの中心から錘部の最外周までの距離と実質的に等しい距離だけ突出した突出部をシャフトの長さ方向の一部にのみ持つ構造であれば良い。この場合、錘カバーの重量を最小限に抑えることが可能になる為、振動モータの振動量が向上する。なお、突出部はモータ本体付近に成形しても構わないが、モータ本体と反対側の偏心錘の先端部分に設けたほうがより速やかに突出部が外部と接触し、シャフトに働く力を最小限に抑えることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の振動モータと偏心錘及び錘カバーとの組付け構造では、振動モータに衝撃が加わった際のシャフトの曲がりを防止する錘カバーの保持強度が格段に向上し、脱落を防止できると共に、比重の軽い別部材で成形されているため、振動量に与える影響も少なくて済む。
【0014】
また、錘カバーに開口部を成形することで、錘カバーを偏心錘及びシャフトに設置してからでも、偏心錘の加締め固定を容易に行なうことが出来ると共に、開口部の分だけ錘カバーの重量が減少する為、振動モータの振動量が向上する。
【0015】
さらに、錘カバーに突出部を成形する構造では、錘カバーの重量を最小限に抑えることが可能になり、振動モータの振動量がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(A)は本発明の実施例1に係る振動モータの斜視図で、(B)は同振動モータの縦断面図である。
【図2】同振動モータの組立斜視図である。
【図3】本発明の他の実施例2に係る振動モータの斜視図である。
【図4】本発明の他の実施例3に係る振動モータの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基いて説明する。
【実施例1】
【0018】
図1(A)は本発明の実施例1に係る振動モータの斜視図、(B)は同振動モータの縦断面図、図2は同振動モータの組立斜視図である。
【0019】
本発明の振動モータは、モータ本体10のモータケース1の一方から、軸受2、3により回転自在に保持されたシャフト4が突出しており、モータケース1の他方はモータケース1の開口部を塞ぐように端蓋5が固定されている。6はモータ本体10を携帯電話の基板等に設置する為の保持枠、7はモータ本体10に外部電力を供給する為の端子部である。
【0020】
シャフト4には偏心錘20及び錘カバー30が固定されており、偏心錘20は例えば密度が0.0175g/mmのタングステン材料等で成形されており、シャフト4に固定される固定部21と、固定部21と一体となっている錘部22からなり、錘カバー30は、シャフト4を挟んで錘部22の反対側に位置し、例えば密度が0.001g/mmの樹脂材等で成形されており、偏心錘20を挟み込む挟み込み部31及び連結部32と、振動モータに衝撃が加わった際の当て止めとなる突出部33からなっている。
シャフト4の中心から錘部22の最外周までの距離と、同じくシャフト4の中心から突出部33の最外周までの距離は実質的に等しくなっており、振動モータに衝撃が加わった際には、錘部22又は突出部33のいずれかが速やかに外部と接触し、シャフト4に働く力を最小限に抑えることが可能となる。
錘カバー30は、挟み込み部31にて偏心錘20の固定部21の両側を挟み込み、シャフト4を貫通させることで、偏心錘20と一緒に固定されている。錘カバー30がシャフト4の2箇所で固定され、また、中に偏心錘20を挟み込んで一緒に固定している為、錘カバー30自体が破損でもしない限り、錘カバー30が脱落することは無い。また、間に偏心錘20を挟み込んだ固定の為、錘カバー30そのものはシャフト4との固定強度を確保する必要は無く、その為、挟み込み部分31の厚みは最小限で良い。
【0021】
錘カバー30には、開口部34が成形されており、この開口部34からは偏心錘20の固定部21が露出している。その為、錘カバー30を偏心錘20及びシャフト4に設置してからでも、固定部21を加締めることで偏心錘20をシャフト4に固定することができ、取付け作業が容易になる。また、併せて、開口部34を形成した分だけ錘カバー30の重量が減少する為、振動モータの振動量が向上する。
【実施例2】
【0022】
図3は本発明の実施例2に係る振動モータの斜視図である。なお、実施例1と同構造の部分には同じ符号を使用し、その説明は省略する。
【0023】
本実施例が実施例1と異なる部分は、錘カバー30’であり、錘カバー30’の突出部33’がモータ本体10付近には無く、モータ本体10と反対側の錘カバー30’の先端部分にのみ成形されている。
【0024】
錘カバー30’は、モータに強い力がかかった場合に、どこか一部分でも外部と接触すればシャフト4に働く力を最小限に抑えることが可能になることから、本実施例のような突出部33’においても本発明の目的は達成できる。加えて、本実施例では錘カバー30’の重量を最小限に抑えることが可能になる為、振動モータの振動量が向上する。
【0025】
突出部33’はモータ本体10付近にのみ成形しても良いが、モータ本体10と反対側の錘カバー30’の先端部分に成形するほうが、より速やかに突出部33’が外部と接触し、シャフト4に働く力を最小限に抑えることが可能になる。
【実施例3】
【0026】
図4は本発明の実施例3に係る振動モータの斜視図である。なお、実施例1及び実施例2と同構造の部分には同じ符号を使用し、その説明は省略する。
【0027】
本実施例では、実施例1の振動モータ構造に加え、シャフト4が端蓋5より他方向にも突出し、シャフト4の両端にそれぞれ、偏心錘20、40及び錘カバー30、50が固定されている。端蓋5より他方向に突出したシャフト4に固定された偏心錘40及び錘カバー50も実施例1と同じく、偏心錘40は例えば密度が0.0175g/mmのタングステン材料等で成形されており、シャフト4に固定される固定部41と、固定部41と一体となっている錘部42からなり、錘カバー50は、シャフト4を挟んで錘部42の反対側に位置し、例えば密度が0.001g/mmの樹脂材等で成形されており、偏心錘40を挟み込む挟み込み部(図示せず)及び連結部52と、振動モータに衝撃が加わった際の当て止めとなる突出部53からなっている。
シャフト4の中心から錘部42の最外周までの距離と、同じくシャフト4の中心から突出部53の最外周までの距離は実質的に等しくなっており、振動モータに衝撃が加わった際には、錘部42又は突出部53のいずれかが速やかに外部と接触し、シャフト4に働く力を最小限に抑えることが可能となる。
錘カバー50は、挟み込み部(図示せず)にて偏心錘40の固定部41の両側を挟み込み、シャフト4を貫通させることで、偏心錘40と一緒に固定されている。錘カバー50がシャフト4の2箇所で固定され、また、中に偏心錘40を挟み込んで一緒に固定している為、錘カバー50自体が破損でもしない限り、錘カバー50が脱落することは無い。また、間に偏心錘40を挟み込んだ固定の為、錘カバー50そのものはシャフト4との固定強度を確保する必要は無く、その為、挟み込み部分(図示せず)の厚みは最小限で良い。
【0028】
錘カバー50には、開口部54が成形されており、この開口部54からは偏心錘40の固定部41が露出している。その為、錘カバー50を偏心錘40及びシャフト4に設置してからでも、固定部41を加締めることで偏心錘40をシャフト4に固定することができ、取付け作業が容易になる。また、併せて、開口部54を形成した分だけ錘カバー50の重量が減少する為、振動モータの振動量が向上する。
また、本実施例においても実施例2と同じく、突出部53、33をモータ本体10付近には成形せず、モータ本体10と反対側の錘カバー50の先端部分にのみ成形することも可能である。
【0029】
なお、本発明は上記各実施例に限定されるものではなく、本発明の目的を損なわない範囲で適宜構造の変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1…モータケース
2、3…軸受
4…シャフト
5…端蓋
6…保持枠
7…端子部
10…モータ本体
20、40…偏心錘
21、41…固定部
22、42…錘部
30、30’、50…錘カバー
31…挟み込み部
32、52…連結部
33、33’、53…突出部
34、54…開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方より回転自在のシャフトが突出し、他方には端蓋が固定されたモータ本体と、前記シャフトに固定される偏心錘及び前記偏心錘よりも比重の軽い材料で成形された錘カバーからなる振動モータにおいて、
前記偏心錘は、前記シャフトに固定される固定部及び前記固定部と一体となっている錘部からなり、前記錘カバーは前記シャフトを挟んで前記錘部の反対側に位置し且つ前記偏心錘を挟み込んで固定されており、前記シャフトの中心から前記錘部及び前記錘カバー各々の最外周までの距離が実質的に等しいことを特徴とする振動モータ。
【請求項2】
請求項1に記載の振動モータにおいて、前記錘カバーは前記偏心錘の両側を挟み込み、当該両側において各々前記シャフトに固定されることを特徴とする振動モータ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の振動モータにおいて、前記錘カバーは前記固定部を露出させる開口部を有することを特徴とする振動モータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3に記載の振動モータにおいて、前記錘カバーは前記シャフトの中心から前記錘部の最外周までの距離と実質的に等しい距離だけ突出した突出部を前記シャフトの長さ方向の一部にのみ持つことを特徴とする振動モータ。
【請求項5】
一方より回転自在のシャフトが突出し、他方には端蓋が固定されたモータ本体と、前記シャフトは前記端蓋より他方向にも突出し、前記シャフトの両端各々に固定される偏心錘と、当該偏心錘の少なくとも一つと一緒に前記シャフトに固定される前記偏心錘よりも比重の軽い材料で成形された錘カバーからなる振動モータにおいて、
前記偏心錘は、前記シャフトに固定される固定部及び前記固定部と一体となっている錘部からなり、前記錘カバーは前記シャフトを挟んで前記錘部の反対側に位置し且つ前記偏心錘を挟み込んで固定されており、前記シャフトの中心から前記錘部及び前記錘カバー各々の最外周までの距離が実質的に等しいことを特徴とする振動モータ。
【請求項6】
請求項5に記載の振動モータにおいて、前記錘カバーは前記偏心錘の両側を挟み込み、当該両側において各々前記シャフトに固定されることを特徴とする振動モータ。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載の振動モータにおいて、前記錘カバーは前記固定部を露出させる開口部を有することを特徴とする振動モータ。
【請求項8】
請求項5乃至請求項7に記載の振動モータにおいて、前記錘カバーは前記シャフトの中心から前記錘部の最外周までの距離と実質的に等しい距離だけ突出した突出部を前記シャフトの長さ方向の一部にのみ持つことを特徴とする振動モータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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