説明

振動受粉装置

【課題】人工授粉のための作業を単純化し、植物に傷をつけることなく効率を向上させるとともに、栽培装置による栽培においても効率を向上させる振動受粉装置を提供すること。
【解決手段】植物Pに対して空気によって振動によって振動を与える加振手段110を有する振動受粉装置100であって、加振手段110が、閉鎖空間を構成するチャンバー室130内に収容された植物Pに振動を与えること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物に対して空気によって振動を与える加振手段を有する振動受粉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、果樹類やトマト、ナス、ピーマン等の果実を収穫する植物の栽培において、確実に着果させるため人工授粉が行われている。
この人工授粉は、花一つ一つに対して人手で行う方法では、その成果は確実ではあるものの非常に手間がかかり効率が悪い。
【0003】
そこで、人工授粉を効率的に行うために、加振手段によって植物に振動を与えて花粉を散らし、花の雌ずいの柱頭に付着させる振動受粉装置が知られている。
これらの振動受粉装置は、手持ち式の加振手段を直接植物に接触させて振動を与えたり、ワイヤ等を植物に固定しワイヤに振動を与えて植物に振動を与えたりしている(例えば、特許文献1、2等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−289105号公報(全頁、全図)
【特許文献2】特開2002−112653号公報(全頁、全図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの公知の振動受粉装置では、ある程度の効率化は図れるものの、前者の手持ち式の加振手段によれば、人工授粉の際に植物の一株一株に対して直接接触させるための作業が発生し、後者のワイヤ等を植物に固定するものによれば、植物の一株一株に対して直接ワイヤを固定するための作業が発生し、依然として手間がかかり効率が悪いものであった。
【0006】
また、直接植物に接触させることにより植物に傷をつける虞もあり、加振作業あるいはワイヤを固定する作業には細心の注意を払う必要があり、作業効率を上げることが困難であった。
【0007】
さらに、栽培の自動管理、栽培工程の自動化、面積あたりの栽培効率の向上等を目的として、植物栽培トレイを載置する栽培棚を複数備える栽培装置によって、植物栽培トレイを移動させたり多段に配置して植物を栽培することが行われており、このような場合、公知の振動受粉装置では栽培効率を充分に向上させることは不可能であった。
【0008】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、人工授粉のための作業を単純化し、植物に傷をつけることなく効率を向上させるとともに、栽培装置による栽培においても効率を向上させる振動受粉装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本請求項1に係る発明は、植物に対して空気によって振動を与える加振手段を有する振動受粉装置であって、前記加振手段が、閉鎖空間を構成するチャンバー室内に収容された植物に振動を与えることにより、前記課題を解決するものである。
【0010】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記チャンバー室が、前記加振手段と一体に構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0011】
本請求項3に係る発明は、請求項2に記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記チャンバー室が、植物栽培トレイを収容可能、かつ、取出可能に構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0012】
本請求項4に係る発明は、請求項3に記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記チャンバー室が、植物栽培トレイを載置する栽培棚を複数備える栽培装置に隣接して設けられ、前記栽培装置が、前記栽培棚から前記チャンバー室に植物栽培トレイを搬送する搬送手段を有することにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項5に係る発明は、請求項4に記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記チャンバー室が、前記植物栽培トレイのメンテナンスステーションを兼ねることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0014】
本請求項6に係る発明は、請求項1に記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記チャンバー室が、前記加振手段とは別体で、かつ、空気によって振動を伝達するよう接続可能に構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0015】
本請求項7に係る発明は、請求項6に記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記チャンバー室が、植物栽培トレイを載置する栽培棚を複数備える栽培装置の各栽培棚に対応して設けられ、前記加振手段が、前記各栽培棚に対応して設けられたチャンバー室と空気によって振動を伝達するよう接続する位置に移動可能に構成されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0016】
本請求項8に係る発明は、請求項7に記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記加振手段が、前記栽培装置の各栽培棚に植物栽培トレイを搬送する搬送手段に支持されていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0017】
本請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載された振動受粉装置の構成に加えて、前記チャンバー室が、開閉可能なシャッターを有することにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0018】
本請求項1に係る発明の振動受粉装置は、植物に対して空気によって振動を与える加振手段を有する振動受粉装置であって、加振手段が閉鎖空間を構成するチャンバー室内に収容された植物に振動を与えることにより、植物の一株一株に対して直接接触させるための作業がなくなるため、作業量が大幅に減少して効率を向上することができる。
【0019】
また、直接植物に接触することがないため、植物に傷をつけることはない。
さらに、閉鎖空間を構成するチャンバー室を設けることで、加振手段から効果的に振動を与えることができるため、加振作業を効率良く素早く行うことができるとともに、外部に音や振動が伝わるのを抑制することができる。
【0020】
本請求項2に係る発明の振動受粉装置は、請求項1に係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、チャンバー室が加振手段と一体に構成されていることにより、単純な構成で、加振手段から振動を最適な効率で植物に与えることができるとともに、加振手段とチャンバー室との接続部から外部に音や振動が伝わることを防止できる。
【0021】
本請求項3に係る発明の振動受粉装置は、請求項2に係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、チャンバー室が、植物栽培トレイを収容可能、かつ、取出可能に構成されていることにより、授粉の時期となった植物のみを搬送して受粉作業を行うことができ、最低1つのチャンバー室を設けることで加振作業を行うことができる。
【0022】
本請求項4に係る発明の振動受粉装置は、請求項3に係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、チャンバー室が植物栽培トレイを載置する栽培棚を複数備える栽培装置に隣接して設けられ、栽培装置が栽培棚からチャンバー室に植物栽培トレイを搬送する搬送手段を有することにより、植物栽培トレイを移動させたり多段に配置して植物を栽培する栽培装置においてさらに自動化を進めることができる。
【0023】
本請求項5に係る発明の振動受粉装置は、請求項4に係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、チャンバー室が植物栽培トレイのメンテナンスステーションを兼ねることにより、植物栽培トレイを移動させたり多段に配置して植物を栽培する栽培装置におけるスペース効率をさらに向上することができる。
【0024】
本請求項6に係る発明の振動受粉装置は、請求項1に係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、チャンバー室が加振手段とは別体で、かつ、空気によって振動を伝達するよう接続可能に構成されていることにより、複数のチャンバー室を設けてもチャンバー室より少ない数の加振手段を移動させることで、全てのチャンバー室において受粉作業を行うことができるため、栽培装置におけるスペース効率を向上することができる。
【0025】
本請求項7に係る発明の振動受粉装置は、請求項6に係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、チャンバー室が植物栽培トレイを載置する栽培棚を複数備える栽培装置の各栽培棚に対応して設けられ、加振手段が各栽培棚に対応して設けられたチャンバー室と空気によって振動を伝達するよう接続する位置に移動可能に構成されていることにより、植物栽培トレイを移動させることなく受粉作業を行うことができる。
【0026】
本請求項8に係る発明の振動受粉装置は、請求項7に係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、加振手段が栽培装置の各栽培棚に植物栽培トレイを搬送する搬送手段に支持されていることにより、加振手段を移動させるための移動装置を独立して設ける必要がない。
【0027】
本請求項9に係る発明の振動受粉装置は、請求項1乃至請求項8のいずれかに係る振動受粉装置が奏する効果に加えて、チャンバー室が開閉可能なシャッターを有することにより、チャンバー室内に植物を収容するための不可避の開放部分を設ける必要がないため、チャンバー室の密閉性が向上し、加振手段からの振動を最適な効率で植物に与えることができるとともに、開放部分から外部に音や振動が伝わることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の振動受粉装置の基本説明図。
【図2】本発明の第1実施例である振動受粉装置の説明図。
【図3】本発明の第2実施例である振動受粉装置の説明図。
【図4】本発明の第3実施例である振動受粉装置の説明図。
【図5】本発明の第4実施例である振動受粉装置の説明図。
【図6】図5の振動受粉装置の植物栽培トレイ搬送時の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の振動受粉装置は、植物に対して空気によって振動を与える加振手段を有する振動受粉装置であって、加振手段が閉鎖空間を構成するチャンバー室内に収容された植物に振動を与えるものであって、人工授粉のための作業を単純化し、植物に傷をつけることなく効率を向上させるとともに、栽培装置による栽培においても効率を向上させるものであれば、その具体的な実施態様はいかなるものであっても何ら構わない。
【0030】
すなわち、本発明の振動受粉装置に用いる加振装置は、空気によって振動を発生させるものであれば、直接振動板および電磁アクチュエータによって空気振動を発生でするものであっても良く、空気圧を導入して流体的に振動を発生させるものであっても良い。
また、一般的ないわゆるスピーカーユニットであっても良い。
さらに、チャンバー室内に向かって空気を送り込む、ブロアー等の送風機であっても良い。
ブロアー等の送風機の場合は、予め採取した花粉を空気と共に送り込むことで、さらに確実な授粉が可能となる。
【0031】
まず、本発明の基本的構成である振動受粉装置について図面に基づいて説明する。
本発明の振動受粉装置100は、図1に模式的に示すように、空気によって振動を発生させる加振手段110と、該加振手段110に接続されるチャンバー室130とを有している。
【0032】
加振手段110は、空気振動を発生させる振動板111と、該振動板111に振動を与える電磁アクチュエータ112からなり、電磁アクチュエータ112が駆動手段120からの電気信号によって駆動されることにより振動板111が振動して空気振動が発生する。
【0033】
チャンバー室130は、植物Pを栽培する植物栽培トレイTを収容可能な閉鎖空間を構成しており、加振手段110が発生する空気振動が植物Pの花Fに振動を与えることによって、人工授粉作業が行われるように構成されている。
【0034】
加振手段110から発生する空気振動は、閉鎖空間であるチャンバー室130内で共鳴して植物Pの花Fが効果的に振動する振幅、振動数に設定され、当該振動により花粉を散らし、花の雌ずいの柱頭に付着させることで確実に受精させて着果させることができる。
また、チャンバー室130は閉鎖空間であることにより、外部に音や振動が伝わるのを抑制することができる。
【0035】
なお、植物Pやその花Fの大きさ、重さ、形状、向きに応じて最適な振幅、振動数は変化するため、駆動手段120が規則的あるいは不規則に振幅、振動数を変化させても良く、別途モニタリングしながら自動的に調整するようにしても良い。
【実施例1】
【0036】
本発明の第1実施例である振動受粉装置200は、図2に示すように、多段式の栽培装置240の各栽培棚241にそれぞれチャンバー室230を設け、各チャンバー室230に対応して一体的に加振手段210を設けたものである。
【0037】
栽培装置240は、上下方向に多段に設けられた栽培棚241と、該栽培棚241の側方で昇降レール252に沿って昇降可能な搬送テーブル251を有する搬送手段250とを備えている。
【0038】
また、上下方向に多段に設けられた栽培棚241は、図示の表裏方向に複数列設けられており、搬送手段250は、昇降レール252の上下に設けられた走行手段253によって図示の表裏方向に移動可能に設けられており、植物Pを栽培する植物栽培トレイTは、搬送テーブル251によって、各段、各列の栽培棚241間を自由に搬送可能に構成されている。
【0039】
各栽培棚241は、搬送手段250と反対側に加振手段210が一体的に設けられ、搬送手段250側にはシャッター231が設けられ、他の周囲を閉塞して閉鎖空間とするチャンバー室230に形成されている。
【0040】
シャッター231は、栽培棚241と搬送テーブル251との間で植物栽培トレイTを移動する際に開放し、人工授粉作業の際に閉鎖するように構成されており、常時は栽培条件に応じて開放状態、閉鎖状態のいずれであっても良い。
また、シャッター231の構造、動作機構は、いかなるものであっても良い。
【0041】
なお、図示の例では全ての栽培棚241をチャンバー室230としたが、最低1つの栽培棚241をチャンバー室230とし、人工授粉時に搬送手段250によって植物栽培トレイTを当該チャンバー室230に搬送するようにしても良い。
【実施例2】
【0042】
本発明の第2実施例である振動受粉装置300は、図3に示すように、多段式の栽培装置340の各栽培棚341と搬送手段350を挟んで反対側に独立してチャンバー室330を設け、該チャンバー室330に一体的に加振手段310を設けたものである。
【0043】
栽培装置340は、第1実施例と同様に、上下方向に多段に設けられた栽培棚341と、該栽培棚341の側方で昇降レール352に沿って昇降可能な搬送テーブル351を有する搬送手段350とを備えている。
【0044】
また、上下方向に多段に設けられた栽培棚341は、図示の表裏方向に複数列設けられており、搬送手段350は、昇降レール352の上下に設けられた走行手段353によって図示の表裏方向に移動可能に設けられている。
【0045】
多段式の栽培装置340の各栽培棚341と搬送手段350を挟んで反対側には、独立してチャンバー室330が設けられており、植物Pを栽培する植物栽培トレイTは、搬送テーブル351によって、各段、各列の栽培棚341およびチャンバー室330間を自由に搬送可能に構成されている。
【0046】
チャンバー室330は、搬送手段350と反対側に加振手段310が一体的に設けられ、搬送手段350側にはシャッター331が設けられ、他の周囲を閉塞して閉鎖空間とされ、植物栽培トレイTが収容されて人工授粉が行われるとともに、施肥、給水、成長状態の検査、間引き等の作業を行うメンテナンスステーション342を兼ねている。
【0047】
シャッター331は、搬送テーブル351との間で植物栽培トレイTを移動する際に開放し、人工授粉作業の際に閉鎖するように構成されており、常時は栽培条件に応じて開放状態、閉鎖状態のいずれであっても良い。
また、シャッター331の構造、動作機構は、いかなるものであっても良い。
【実施例3】
【0048】
本発明の第3実施例である振動受粉装置400は、図4に示すように、段式の栽培装置440の各栽培棚441にそれぞれチャンバー室430を設け、各チャンバー室430の搬送手段450と反対側に加振手段410が接続される接続開孔433を設け、加振手段410を移動可能に設けたものである。
【0049】
栽培装置440は、第1実施例と同様に、上下方向に多段に設けられた栽培棚441と、該栽培棚441の側方で昇降レール452に沿って昇降可能な搬送テーブル451を有する搬送手段450とを備えている。
【0050】
また、上下方向に多段に設けられた栽培棚441は、図示の表裏方向に複数列設けられており、搬送手段450は、昇降レール452の上下に設けられた走行手段453によって図示の表裏方向に移動可能に設けられており、植物Pを栽培する植物栽培トレイTは、搬送テーブル451によって、各段、各列の栽培棚441間を自由に搬送可能に構成されている。
【0051】
各栽培棚441は、搬送手段450と反対側に接続開孔433が設けられ、搬送手段450側にはシャッター431が設けられ、他の周囲を閉塞して閉鎖空間とするチャンバー室430に形成されている。
【0052】
加振手段410は、栽培棚441の搬送手段450と反対側に設けられた加振手段昇降レール413に沿って昇降可能に設けられ、加振手段昇降レール413は、上下に設けられた加振手段走行手段414によって図示の表裏方向に移動可能に設けられている。
【0053】
そして、人工授粉作業の際には、加振手段410が所望の栽培棚441のチャンバー室430に設けられた接続開孔433に対向する位置まで移動し、当該チャンバー室430に空気振動を与えて、収容された植物Pの花Fに振動を与えるように構成されている。
【0054】
シャッター431は、栽培棚441と搬送テーブル451との間で植物栽培トレイTを移動する際に開放し、人工授粉作業の際に閉鎖するように構成されており、常時は栽培条件に応じて開放状態、閉鎖状態のいずれであっても良い。
また、シャッター431の構造、動作機構は、いかなるものであっても良い。
【0055】
なお、本実施例では加振手段410を加振手段走行手段414によって図示の表裏方向に移動可能としたが、加振手段走行手段414を省略し、図示の表裏方向の一列の栽培棚441のみをチャンバー室430として、人工授粉時に搬送手段450によって植物栽培トレイTを当該列のチャンバー室430に搬送するようにしても良い。
また、加振手段410をチャンバー室430の接続開孔433に密着する方向に移動可能にとしても良い。
【実施例4】
【0056】
本発明の第4実施例である振動受粉装置500は、図5、図6に示すように、多段式の栽培装置540の各栽培棚541にそれぞれチャンバー室530を設け、加振手段510を搬送手段550とともに移動可能に設け、各チャンバー室530の搬送手段550側に加振手段510が接続されるように構成したものである。
【0057】
栽培装置540は、第1実施例と同様に、上下方向に多段に設けられた栽培棚541と、該栽培棚541の側方で昇降レール552に沿って昇降可能な搬送テーブル551を有する搬送手段550とを備えている。
【0058】
また、上下方向に多段に設けられた栽培棚541は、図示の表裏方向に複数列設けられており、搬送手段550は、昇降レール552の上下に設けられた走行手段553によって図示の表裏方向に移動可能に設けられており、植物Pを栽培する植物栽培トレイTは、搬送テーブル551によって、各段、各列の栽培棚541間を自由に搬送可能に構成されている。
【0059】
各栽培棚541は、搬送手段550側にシャッター531が設けられ、他の周囲を閉塞して閉鎖空間とするチャンバー室530に形成されている。
加振手段510は、搬送テーブル551の下方に設けられており、搬送テーブル551と一体的に昇降可能かつ、図示の表裏方向に移動可能に設けられている。
【0060】
シャッター531は、栽培棚541と搬送テーブル551との間で植物栽培トレイTを移動する際に大きく開放し、人工授粉作業の際に加振手段510と接続が可能な分開放するように構成されており、常時は栽培条件に応じて開放状態、閉鎖状態のいずれであっても良い。
また、シャッター531の構造、動作機構は、いかなるものであっても良い。
【0061】
搬送テーブル551は、人工授粉作業の際には、図5に示すように、加振手段510が所望の栽培棚541のチャンバー室530のシャッター531の開放部分に対向する位置まで移動し、当該チャンバー室530に空気振動を与えて、収容された植物Pの花Fに振動を与えるように構成されている。
また、搬送テーブル551は、図6に示すように、植物栽培トレイTの搬送の際には、その上面が栽培棚541の上面と一致する位置まで移動するように構成されている。
【0062】
なお、図示の例では全ての栽培棚541をチャンバー室530としたが、最低1つの栽培棚541をチャンバー室530とし、人工授粉時に搬送手段550によって植物栽培トレイTを当該チャンバー室530に搬送するようにしても良い。
また、加振手段510をチャンバー室530のシャッター531の開放部分に密着する方向に移動可能にとしても良い。
【0063】
以上述べたように、本発明によれば、人工授粉のための作業を単純化し、植物に傷をつけることなく効率を向上させるとともに、栽培装置による栽培においても効率を向上することができるなど、その効果は甚大である。
【符号の説明】
【0064】
100、200、300、400、500 ・・・振動受粉装置
110、210、310、410、510 ・・・加振手段
111 ・・・振動板
112 ・・・電磁アクチュエータ
413 ・・・加振手段昇降レール
414 ・・・加振手段走行手段
120 ・・・駆動手段
130、230、330、430、530 ・・・チャンバー室
231、331、431、531 ・・・シャッター
432 ・・・接続開孔
240、340、440、540 ・・・栽培装置
241、341、441、541 ・・・栽培棚
342 ・・・メンテナンスステーション
250、350、450、550 ・・・搬送手段
251、351、451、551 ・・・搬送テーブル
252、352、452、552 ・・・昇降レール
253、353、453、553 ・・・走行手段
T ・・・植物栽培トレイ
P ・・・植物
F ・・・花

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物に対して空気によって振動を与える加振手段を有する振動受粉装置であって、
前記加振手段が、閉鎖空間を構成するチャンバー室内に収容された植物に振動を与えることを特徴とする振動受粉装置。
【請求項2】
前記チャンバー室が、前記加振手段と一体に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動受粉装置。
【請求項3】
前記チャンバー室が、植物栽培トレイを収容可能、かつ、取出可能に構成されていることを特徴とする請求項2に記載の振動受粉装置。
【請求項4】
前記チャンバー室が、植物栽培トレイを載置する栽培棚を複数備える栽培装置に隣接して設けられ、
前記栽培装置が、前記栽培棚から前記チャンバー室に植物栽培トレイを搬送する搬送手段を有することを特徴とする請求項3に記載の振動受粉装置。
【請求項5】
前記チャンバー室が、前記植物栽培トレイのメンテナンスステーションを兼ねることを特徴とする請求項4に記載の振動受粉装置。
【請求項6】
前記チャンバー室が、前記加振手段とは別体で、かつ、空気によって振動を伝達するよう接続可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の振動受粉装置。
【請求項7】
前記チャンバー室が、植物栽培トレイを載置する栽培棚を複数備える栽培装置の各栽培棚に対応して設けられ、
前記加振手段が、前記各栽培棚に対応して設けられたチャンバー室と空気によって振動を伝達するよう接続する位置に移動可能に構成されていることを特徴とする請求項6に記載の振動受粉装置。
【請求項8】
前記加振手段が、前記栽培装置の各栽培棚に植物栽培トレイを搬送する搬送手段に支持されていることを特徴とする請求項7に記載の振動受粉装置。
【請求項9】
前記チャンバー室が、開閉可能なシャッターを有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の振動受粉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−85586(P2012−85586A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−235669(P2010−235669)
【出願日】平成22年10月20日(2010.10.20)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】