説明

振動式搬送装置及びシュート部材

【課題】サイクルタイム向上のために振動式搬送装置の振動を大きくしても、搬送する部品をピックアップ位置で安定して止めることができるようにする。
【解決手段】振動式搬送装置に取り付けるシュート部材17には、部品13を搬送する樋状の部品搬送路16を形成すると共に、この部品搬送路16のピックアップ位置には、部品13を嵌り込ませて位置決めする位置決め凹部18を形成する。この位置決め凹部18の形状は、部品13の下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみを嵌り込ませる形状に形成されている。この構成では、振動により部品搬送路16を搬送されて位置決め凹部18に到達した部品13は、その下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみが位置決め凹部18内に落ちて嵌り込んだ状態となる。これにより、傾いた姿勢で搬送される形状の部品13をピックアップ位置で水平な姿勢で安定して支えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品搬送路に供給された部品を振動搬送動作によりピックアップ位置まで搬送する振動式搬送装置及び部品搬送路を構成するシュート部材に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、部品搬送路を構成する部材を振動させることで、該部品搬送路に供給された部品をピックアップ位置まで搬送する振動式搬送装置が知られている。この振動式搬送装置は、一般に、部品搬送路(シュート部材)の先端部にピックアップ位置を決めるストッパ部を設け、部品搬送路に沿って搬送されてくる部品がストッパ部に突き当たることで、部品の搬送がピックアップ位置で止められるようになっている。
【0003】
しかし、この構成では、部品搬送路とストッパ部とが一体に振動しているため、その振動により、搬送される部品がストッパ部に衝突しては跳ね返されるという動作を何回も繰り返すことになる。その結果、部品ピックアップ動作時に搬送装置の振動を停止してピックアップ位置の部品を移載ヘッドでピックアップしようとしても、その部品の位置がピックアップ位置からずれていることがあり、そのために、移載ヘッドで部品を安定してピックアップできないという問題があった。
【0004】
この対策として、特許文献1(特開2000−165091号公報)に記載されているように、ストッパ部を部品搬送路(シュート部材)とは分離し、振動しないベース部材側にストッパ部を取り付けて、該ストッパ部を振動させないようにすることで、部品がストッパ部に衝突する際の跳ね返りを少なくするようにしたものがある。
【特許文献1】特開2000−165091号公報(第1頁等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1のように、振動搬送動作中にピックアップ位置のストッパ部が振動しないように構成しても、部品がストッパ部に衝突する際の跳ね返りを完全には防止することができず、部品の跳ね返り量が少なくなるだけである。
【0006】
しかも、サイクルタイムを上げるためには、装置の振動を大きくして搬送時間を短くする必要があるが、装置の振動を大きくすると、ストッパ部が振動しなくても、部品がストッパ部に衝突する際の跳ね返り量が大きくなってしまう。
【0007】
このため、上記特許文献1の技術でも、部品の位置がピックアップ位置からずれてしまうことがあり、移載ヘッドで部品を安定してピックアップできないという従来の問題を完全には解消することができない。
【0008】
本発明はこのような事情を考慮してなされたものであり、従ってその目的は、サイクルタイム向上のために装置の振動を大きくしても、搬送する部品をピックアップ位置で安定して止めることができる振動式搬送装置及びシュート部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、部品搬送路のうちのピックアップ位置に、搬送する部品の下面側の形状に合致した位置決め凹部を形成し、当該部品が振動搬送動作により前記位置決め凹部内に嵌り込むことで、当該部品が前記ピックアップ位置で位置決めされるように構成したものである。この構成では、サイクルタイム向上のために装置の振動を大きくしても、部品が位置決め凹部内に落ちて嵌り込むことで、当該部品の動きがほぼ止められた状態(当該部品が位置決め凹部内でガタ分しか動けない状態)となるため、従来のピックアップ位置のストッパ部による部品の跳ね返りの問題を完全に解消することができる。これにより、本発明では、サイクルタイム向上のために装置の振動を大きくしても、搬送する部品をピックアップ位置で安定して位置決めして止めることができ、移載ヘッドで当該部品を安定してピックアップすることができる。
【0010】
ところで、搬送する部品には、様々な形状のものがあり、水平な姿勢で搬送される形状の部品もあるが、傾いた姿勢で搬送される形状の部品(下面側の形状が高さ違いのあるアンバランスな形状の部品)もある。
【0011】
水平な姿勢で搬送される形状の部品に関しては、位置決め凹部の形状を部品の下部全体の形状に合致させて、部品の下部全体を位置決め凹部内に嵌り込ませるようにすれば良い。この場合は、位置決め凹部の底面は水平な平坦面であれば良い。
【0012】
一方、傾いた姿勢で搬送される形状の部品に関しては、その部品の下部全体を位置決め凹部内に嵌り込ませる場合、位置決め凹部の底面形状を、部品の下面側の高さ違いの形状に合わせて高さ違いのある底面形状に形成すれば良い。これにより、傾いた姿勢で搬送される形状の部品を、位置決め凹部内(ピックアップ位置)でピックアップに適した姿勢で安定して支えることができる。
【0013】
また、傾いた姿勢で搬送される形状の部品に関しては、位置決め凹部の形状を、部品の下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみを嵌り込ませる形状に形成し、当該下方に突出する部分のみが位置決め凹部内に嵌り込むことで、当該部品がピックアップ位置でピックアップに適した姿勢(例えば水平な姿勢)で位置決めされるように構成しても良い。この構成でも、傾いた姿勢で搬送される形状の部品をピックアップ位置でピックアップに適した姿勢で安定して支えることができる。
【0014】
ところで、傾いた姿勢で搬送される形状の部品をピックアップ位置で水平な姿勢に支える場合、部品搬送路の底面の片側に、部品の下面側の高さ違い分に相当する高さの高さ修正凸部を搬送方向に沿って形成し、この高さ修正凸部で部品の下面の片側を持ち上げることで、傾いた姿勢で搬送される形状の部品をピックアップ位置で水平な姿勢で支えるようにすることが考えられる。
【0015】
しかし、この構成では、振動搬送動作により部品の片側を高さ補正凸部に滑らせて乗り上がらせるために、高さ補正凸部の搬入側の部分を搬送方向に徐々に高くするように上り勾配の傾斜面に形成する構成になるため、搬送装置の振動が小さいと、部品の片側が高さ補正凸部の上り勾配の傾斜面を上りきれなくなって、部品がピックアップ位置まで到達しないことがある。この対策として、振動を大きくすると、部品がピックアップ位置のストッパ部に衝突する際の跳ね返りも大きくなってしまい、移載ヘッドで部品を安定してピックアップできないという問題が発生する。しかも、この構成では、部品搬送路に対してその側壁方向の部品の傾きを水平姿勢に修正できても、部品搬送路の前後方向の部品の傾きを修正することはできない。
【0016】
これに対して、本発明のように、傾いた姿勢で搬送される形状の部品を位置決め凹部内に嵌り込ませることでピックアップに適した姿勢で支えるようにすると、搬送する部品を上り勾配の傾斜面を滑り上がらせる必要がなくなるため、確実にピックアップ位置(位置決め凹部)まで部品を搬送できると共に、ピックアップ位置のストッパ部による部品の跳ね返りの問題も確実に解消することができる。しかも、部品搬送路に対してその側壁方向の部品の傾きのみならず、部品搬送路の前後方向の部品の傾きもピックアップに適した姿勢に修正することができ、部品のあらゆる方向の傾きをピックアップに適した姿勢に修正することができる利点がある。
【0017】
また、本発明は、部品搬送路と位置決め凹部とを1つのシュート部材に形成して、該シュート部材を振動搬送台上に取替え可能に取り付けるようにすると良い。このようにすれば、搬送する部品を変更する際に、その部品の形状に合った位置決め凹部を持つシュート部材に取り替えることで、様々な形状の部品に対応することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいて振動式搬送装置全体の構成を簡単に説明する。
振動式搬送装置の装置本体11の上面側には、振動搬送台12が振動発生装置(図示せず)によって斜め上下方向に振動可能に支持され、その振動により部品13を搬送方向(図1において右方向)に搬送するようになっている。
【0019】
振動搬送台12上には、複数の部品13(本実施例ではコネクタ)を一列に整列して収容したスティック14を支持するスティックホルダ15と、スティック14から滑り落ちる部品13をピックアップ位置へ搬送する部品搬送路16を構成するシュート部材17とが設けられている。スティック14は、その部品出口がシュート部材17(部品搬送路16)内に連続するようにスティックホルダ15に支持され、スティック14から滑り落ちる部品13がシュート部材17の部品搬送路16内に自然に導入されるようになっている。
【0020】
次に、シュート部材17の構造を図2に基づいて説明する。
シュート部材17は、プラスチック等により樋状に形成されて、その内側を部品搬送路16として使用し、その前進端側のピックアップ位置には、搬送する部品13の下面側の形状に合致した位置決め凹部18が形成されている。このシュート部材17には、複数箇所にネジ挿通孔19が形成され、各ネジ挿通孔19に上方からネジを挿通して振動搬送台12に締め付けることで、シュート部材17が振動搬送台12上に取替え可能に取り付けられている。
【0021】
シュート部材17の長さは、例えば2個以上の部品13が一列に整列する長さに形成され、その内側の部品搬送路16の幅は、その入口端から位置決め凹部18の少し手前までのスティック導入部分Dについては、スティック14の先端部を差し込むためにスティック14の先端部の幅に合わせて形成され、このスティック導入部分Dから位置決め凹部18に至る部分は、前進側ほど通路幅が狭くなるガイド通路部20となっており、このガイド通路部20によって部品13を位置決め凹部18に向かって徐々に位置決めしながら搬送するようになっている。従って、ガイド通路部20の前進端側の幅は、部品13の幅Eに合わせて形成されている。
【0022】
また、スティック導入部分Dとガイド通路部20との境界に小さな段差21が付けられて、ガイド通路部20がスティック導入部分Dよりも僅かに高くなるように形成され、その段差21がスティック導入部分Dに対するスティック14の先端の差し込み位置を規制するストッパとしての役割を果たしている。そして、スティック14から出る部品13が段差21に引っ掛からないようにするために、段差21の高さはスティック14の底面部の厚みよりも低くなっている。尚、スティック導入部分Dのうちの段差21に隣接する部分の側壁には、段差21の隅角部を正確に切削加工するのに必要な逃げ凹部22が上下方向に形成されている。
【0023】
ところで、搬送する部品には、様々な形状のものがあり、水平な姿勢で搬送される形状の部品もあるが、本実施例では、図3(a)に示すように、搬送する部品13が傾いた姿勢で搬送される形状のコネクタ(下面側の形状が高さ違いのあるアンバランスな形状の部品)である。図4はこの部品13(コネクタ)の平面図を示している。
【0024】
この点を考慮して、本実施例の位置決め凹部18の形状は、図3(b)に示すように、部品13の下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみを嵌り込ませる形状に形成されている。この構成では、振動により部品搬送路16を搬送されて位置決め凹部18(ピックアップ位置)に到達した部品13は、その下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみが位置決め凹部18内に落ちて嵌り込んだ状態となる。これにより、傾いた姿勢で搬送される形状の部品13をピックアップ位置でピックアップに適した水平な姿勢で安定して支えることができる。
【0025】
部品13が位置決め凹部18内に嵌り込んだ状態では、部品13の動きがほぼ止められた状態(部品13がガタ分しか動けない状態)となるため、従来のピックアップ位置のストッパ部による部品の跳ね返りの問題を完全に解消することができる。これにより、サイクルタイム向上のために装置の振動を大きくしても、搬送する部品13をピックアップ位置(位置決め凹部18)で安定して位置決めして止めることができ、移載ヘッドで当該部品を安定してピックアップすることができる。しかも、部品13の下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみが位置決め凹部18内に落ちて嵌り込んだ状態となるため、部品搬送路16に対してその側壁方向の部品13の傾きのみならず、部品搬送路16の前後方向の部品13の傾きも水平姿勢に修正することができ、部品13のあらゆる方向の傾きを水平姿勢に修正することができる利点がある。
【0026】
尚、傾いた姿勢で搬送される形状の部品の下部全体を位置決め凹部内に嵌り込ませる場合は、位置決め凹部の底面形状を、部品の下面側の高さ違いの形状に合わせて高さ違いのある底面形状に形成すれば良い。このようにしても、本実施例と同様の効果を得ることができる。
【0027】
一方、水平な姿勢で搬送される形状の部品に関しては、位置決め凹部の形状を部品の下部全体の形状に合致させて、部品の下部全体を位置決め凹部内に嵌り込ませるようにすれば良い。この場合は、位置決め凹部の底面は水平な平坦面であれば良い。
【0028】
また、本実施例では、部品搬送路16と位置決め凹部18とを1つのシュート部材17に形成して、該シュート部材17を振動搬送台12上に取替え可能に取り付けるようにしたので、搬送する部品を変更する際に、その部品の形状に合った位置決め凹部18を持つシュート部材17に取り替えることで、様々な形状の部品に対応することができる利点がある。
【0029】
尚、本発明は、位置決め凹部によって部品を水平な姿勢に位置決め支持する構成に限定されず、特殊な形状の部品についてはピックアップに適した適宜の姿勢に位置決め支持する構成としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例における振動式搬送装置全体の構成を要部を破断して示す正面図である。
【図2】(a)はシュート部材の平面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(b)のB−B断面図である。
【図3】(a)は傾いた姿勢で搬送する部品の搬送状態を示すシュート部材の断面図、(b)は部品が位置決め凹部内に嵌り込んだ状態を示すシュート部材の断面図である。
【図4】部品(コネクタ)の平面図である。
【符号の説明】
【0031】
12…振動搬送台、13…部品、14…スティック、15…スティックホルダ、16…部品搬送路、17…シュート部材、18…位置決め凹部、19…ネジ挿通孔、20…ガイド通路部、21…段差、22…逃げ凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品搬送路を構成する部材を振動させることで、該部品搬送路に供給された部品をピックアップ位置まで搬送する振動式搬送装置において、
前記部品搬送路のうちの前記ピックアップ位置に、搬送する部品の下面側の形状に合致した位置決め凹部を形成し、当該部品が振動搬送動作により前記位置決め凹部内に嵌り込むことで、当該部品が前記ピックアップ位置で位置決めされることを特徴とする振動式搬送装置。
【請求項2】
搬送する部品は、前記部品搬送路を傾いた姿勢で搬送される形状の部品であり、
前記位置決め凹部は、前記搬送する部品の下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみを嵌り込ませる形状に形成され、当該下方に突出する部分のみが前記位置決め凹部内に嵌り込むことで、当該部品が前記ピックアップ位置でピックアップに適した姿勢で位置決めされることを特徴とする請求項1に記載の振動式搬送装置。
【請求項3】
前記部品搬送路と前記位置決め凹部は、1つのシュート部材に形成され、該シュート部材が振動搬送台上に取替え可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の振動式搬送装置。
【請求項4】
振動式搬送装置の振動搬送台上に取り付けられ、部品搬送路が形成されたシュート部材において、
前記部品搬送路のうちのピックアップ位置に、搬送する部品の下面側の形状に合致した位置決め凹部が形成され、当該部品が振動搬送動作により前記位置決め凹部内に嵌り込むことで、当該部品が前記ピックアップ位置で位置決めされることを特徴とするシュート部材。
【請求項5】
搬送する部品は、前記部品搬送路を傾いた姿勢で搬送される形状の部品であり、
前記位置決め凹部は、前記搬送する部品の下面側の形状のうちの下方に突出する部分のみを嵌り込ませる形状に形成され、当該下方に突出する部分のみが前記位置決め凹部内に嵌り込むことで、当該部品が前記ピックアップ位置でピックアップに適した姿勢で位置決めされるように構成されていることを特徴とする請求項4に記載のシュート部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−326685(P2007−326685A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−159777(P2006−159777)
【出願日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】