説明

振動式測定装置

【課題】 本発明はセンサチューブを収納するケースの耐圧強度を確保すると共に、コンパクトな構成とすることを課題とする。
【解決手段】 質量流量計10は、金属性の耐圧ケース12と、密閉された耐圧ケース12の内部に形成されたU字状のセンサチューブ挿入通路14と、センサチューブ挿入通路14内に挿入されたU字状のセンサチューブ16と、センサチューブ16を加振する加振器18と、流入側管路16bの変位を検出する流入側ピックアップ20と、流出側管路16cの変位を検出する流出側ピックアップ22とを有する。センサチューブ挿入通路14は、センサチューブ16の形状に対応する形状に形成されている。そのため、流入側通路14a、流出側通路14bの内径を必要最小限の大きさに設定しているため、ケース本体12Aをできるだけコンパクトな構成で耐圧強度を維持することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動式測定装置に係り、特にセンサチューブを加振してコリオリ力によるセンサチューブの変位を検出して流量または密度を計測するよう構成した振動式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
流体が供給された管路を振動させて流体の物理量を測定する振動式測定装置として、例えばコリオリ式質量流量計又は振動式密度計がある。以下、コリオリ式質量流量計について説明する。
【0003】
このコリオリ式質量流量計では、被測流体が通過するセンサチューブを加振器により半径方向に振動させ、流量に比例したコリオリ力によるセンサチューブの変位をピックアップにより検出するよう構成されている。また、振動式密度計も上記コリオリ式質量流量計と同様な構成になっており、センサチューブが被測流体の密度に応じた周波数で振動する。
【0004】
従来の振動式測定装置としては、例えば、コリオリ式質量流量計の場合、一対のセンサチューブに流体を流し、加振器(駆動コイル)の駆動力により一対のセンサチューブを互いに近接、離間する方向に振動させる構成とされている。
【0005】
また、加振器及びピックアップは、マグネットとコイルとから構成されており、加振器の駆動コイルに駆動パルスまたは正負のある交番電圧(交流信号)が入力されると、センサチューブに取り付けられた駆動用マグネットに対して吸引力または反発力を作用させてセンサチューブを振動させ、振動するセンサチューブに取り付けられた検出用マグネットの変位をピックアップのセンサコイル(検出部)から出力される検出信号により検出するようになっている。
【0006】
そして、コリオリの力は、センサチューブの振動方向に働き、かつ入口側と出口側とで逆向きであるのでセンサチューブに捩れが生じ、この捩れ角が質量流量に比例する。従って、一対のセンサチューブの入口側及び出口側夫々の捩れる位置に振動を検出するピックアップ(振動センサ)を設け、両センサの出力検出信号の時間差を計測して上記センサチューブの捩れ、つまり質量流量を計測している。
【0007】
ところが、例えば自動車の燃料として使用されるCNG(Compressed Natural Gas)等の高圧に加圧された圧縮性天然ガスを給送するガス供給系路に上記質量流量計を設けて流量計測を行う場合、センサチューブの耐圧強度を高める必要がある。
【0008】
しかしながら、センサチューブの肉厚を厚くすると、センサチューブを振動させる加振器の駆動力を大きくしなければならず、且つセンサチューブの剛性が高くなった分、計測時の共振振幅が小さくなって外乱の影響を受けやすくなったり、流量計測時、流入側及び流出側の振動センサの位相差(ねじれ角)が小さくなったりして、計測精度が低下するといった課題が生じる。
【0009】
そこで、従来の振動式測定装置では、センサチューブの圧力供給孔から収納ケース内に被測流体を供給することにより、センサチューブの内部と外部との圧力をバランスさせて、センサチューブの耐圧強度を高めなくても高圧流体を計測することができるようにしている。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−331406号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の振動式測定装置では、上記のように収納ケースの内部に被測流体を充填させて高圧流体を計測する場合、収納ケースを密閉構造であるため、被測流体の供給圧力が高くなるほど、収納ケースの耐圧強度を高める必要がある。従って、従来のようにセンサチューブの形状に拘わらず、センサチューブ全体を大きな空間内に収納させる構成では、収納ケース内壁の受圧面積が大きくなってしまうため、例えば、燃料電池車の燃料タンクに70MPaの高圧水素を充填する場合には、収納ケースの耐圧強度を確保するためには、圧力増大に応じて収納ケースの肉厚を大幅に厚くしなければならず、収納ケースがかなり大型化して重量増大するという問題が生じる。
そこで、本発明は上記問題を解決した振動式測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記課題を解決するため、以下のような特徴を有する。
【0012】
請求項1記載の発明は、被測流体が流入される流入側管路と被測流体が流出される流出側管路とが平行に配され、前記流入側管路と前記流出側管路との間を連通する連通管路とを有するセンサチューブと、
前記センサチューブを収納するための通路が前記センサチューブの形状に対応するように形成された耐圧ケースと、
前記通路に前記センサチューブを流れる被測流体の一部を供給して前記通路の圧力を前記センサチューブの内部圧力と同圧に保つ圧力供給手段と、
前記耐圧ケースに設けられ、前記流入側管路の端部が連通される流入口と、
前記耐圧ケースに設けられ、前記流出側管路の端部が連通される流出口と、
前記連通管路に取り付けられた駆動用磁石と、前記耐圧ケースに設けられ、前記駆動用磁石を振動方向に駆動する駆動コイルとからなる加振器と、
前記流入側管路及び前記流出側管路に取り付けられた検出用磁石と、前記耐圧ケースに設けられ、前記検出用磁石の変位を検出する検出部とからなるピックアップと、
を有することを特徴とする。
【0013】
請求項2記載の発明は、
前記耐圧ケースは金属塊からなり、
前記通路は、該金属塊に穿設されて形成され前記流入側管路が挿入される流入側通路と、該金属塊に穿設されて形成され前記流出側管路が挿入される流出側通路と、該流入側通路と流出側通路とを接続する接続空間とからなることを特徴とする。
【0014】
請求項3記載の発明は、前記センサチューブの前記流入側管路の端部及び前記流出側管路の端部が着脱可能に前記耐圧ケースに保持されることを特徴とする。
【0015】
請求項4記載の発明は、前記耐圧ケースが、前記駆動用磁石の加振方向に対向する逃げ部を有し、該逃げ部は前記駆動用磁石の側面に接触しない位置に内壁が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、耐圧ケースの内部にセンサチューブを収納するための通路がセンサチューブの形状に対応するように形成し、この通路にセンサチューブを流れる被測流体の一部を供給して通路の圧力をセンサチューブの内部圧力と同圧に保つように構成したため、センサチューブの形状が曲げ部を有するような形状であってもセンサチューブが挿通される通路の受圧面積に応じた肉厚で耐圧ケースを製作できるので、従来のようにセンサチューブ全体を広い空間に収納させるよりも耐圧ケースを小型化及び軽量化することが可能になる。
【0017】
また、センサチューブの流入側管路の端部及び流出側管路の端部が着脱可能に組み付けられるため、組み付け作業が容易に行える。
【0018】
また、耐圧ケースが駆動用磁石の加振方向に対向する逃げ部を有し、該逃げ部が駆動用磁石の側面に接触しない位置に壁部を有するため、センサチューブを加振した際に駆動用磁石が耐圧ケースの内壁に接触せず、センサチューブを安定的に振動させることが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面と共に本発明の一実施例について説明する。
図1は本発明になる振動式測定装置の実施例1としてのコリオリ式質量流量計の縦断面図である。図2は図1中A−A線に沿う横断面図である。図3は図1中B−B線に沿う横断面図である。図4は図1中C−C線に沿う横断面図である。図5は図1中D−D線に沿う横断面図である。
【0020】
尚、振動式測定装置は、被測流体の密度、及び密度を利用して質量流量を求めることができるため、振動式密度計及びコリオリ式質量流量計として用いられる。振動式密度計とコリオリ式質量流量計とは、同様な構成であるので、本実施例では質量流量計として用いた場合について詳細に説明する。
【0021】
図1乃至図5に示されるように、質量流量計10は、ステンレス鋼などの金属塊からなる金属性の耐圧ケース12と、密閉された耐圧ケース12の内部に形成されたU字状のセンサチューブ挿入通路14と、センサチューブ挿入通路14内に挿入されたU字状のセンサチューブ16と、センサチューブ16の湾曲された連通管路16aの中間部分を加振する加振器18と、振動するセンサチューブ16の流入側管路16bの変位を検出する流入側ピックアップ20と、振動するセンサチューブ16の流出側管路16cの変位を検出する流出側ピックアップ22とを有する。センサチューブ挿入通路14は、センサチューブ16の形状に対応する形状に形成されている。
【0022】
耐圧ケース12は、センサチューブ16を収納するケース本体12Aと、ケース本体12Aの上部を密閉する蓋12Bとから構成されている。ケース本体12Aの下部側面の一側には、被測流体(例えば、CNGあるいは水素等の高圧ガス)が流入される流入口24が設けられ、ケース本体12Aの下部側面の他側には、被測流体が流出される流出口26が設けられている。
【0023】
また、ケース本体12Aの下面には、センサチューブ16の流入側管路16bの端部を固定する固定部材28が螺入される流入側固定用孔30と、センサチューブ16の流出側管路16cの端部を固定する固定部材32が螺入される流出側固定用孔34とが設けられている。流入側固定用孔30は、連通路36を介して流入口24と連通されており、流出側固定用孔34は連通路38を介して流出口26と連通されている。
【0024】
また、流入側固定用孔30及び流出側固定用孔34の下面側開口は、閉止プラグ40が螺入されており、閉止プラグ40に保持されたOリングからなるシール部材40aにより被測流体が漏れないように気密状態で閉塞されている。
【0025】
固定部材28,32は、流入側管路16bの端部に固着された固定用ボス44,46を外周から挟持する円錐形状のC字状リング48,50を押圧するテーパ部28a,32aを有する。固定用ボス44,46は、センサチューブ16より大径な円筒形状に形成されており、内部には軸方向に貫通する流路44a,46aを有し、外周には軸方向の切欠きを有するC字状リング48,50が嵌合している。そして、固定部材28,32が流入側固定用孔30及び流出側固定用孔34に螺入されることにより、テーパ部28a,32aがC字状リング48,50を内側に押圧して縮径させ、C字状リング48,50が固定用ボス44,46の外周をクランプする。
【0026】
このように、センサチューブ16の両端は、固定部材28,32及びC字状リング48,50により着脱自在に固定されるため、組み付け作業が容易に行われると共に、メンテナンス作業時にセンサチューブ16を取り出すことも可能である。
【0027】
また、固定部材28は、固定用ボス44が挿通される中央孔28bと、中央孔28bの周囲に形成された貫通孔28cとを有する。この貫通孔28cは、軸方向に貫通しており、流入側固定用孔30とセンサチューブ挿入通路14の流入側通路14aとをバイパスするバイパス通路52に連通される。従って、流入口24から流入した被測流体は、固定用ボス44の流路44aからセンサチューブ16に流入し、その一部が固定部材28の貫通孔28c及びバイパス通路52を介してセンサチューブ挿入通路14に供給される。そして、センサチューブ16内を通過した被測流体は、流出側の固定用ボス46の流路46aから連通路38を介して流出口26へ流出する。
また、貫通孔28cは、固定部材28を螺入させる際の工具(図示せず)を挿入するための工具挿入孔としても使用される。
【0028】
これにより、センサチューブ16の内部の圧力と外部(センサチューブ挿入通路14)の圧力とが同圧になり、センサチューブ16の耐圧強度を高める必要がないので、センサチューブ16の肉厚を計測感度の良い薄さにして計測することが可能になる。
【0029】
また、流入側の固定部材28は、下端が面する流入側固定用孔30の圧力と、上端が面するバイパス通路52の圧力に差がなく、且つ受圧面積の差も小さいので、固定用ボス44に対するC字状リング48の締結力を維持することができる。
【0030】
流出側の固定部材32は、固定用ボス46が挿通される中央孔32bと、中央孔32bの周囲に形成された工具挿入孔32cとを有する。この固定部材32は、流入側のような貫通孔28cが設けられていない。そして、固定部材32の外周をシールするOリングからなるシール部材53と、中央孔32bと固定用ボス46との間をシールするOリングからなるシール部材54とが設けられている。
【0031】
また、流出側固定用孔34は、バイパス通路56を介してセンサチューブ挿入通路14と連通されており、下端が面する流出側固定用孔34の圧力と、上端が面するバイパス通路56の圧力に差がなく、且つ受圧面積の差も小さいので、固定用ボス46に対するC字状リング50の締結力を維持することができる。
【0032】
センサチューブ16は、被測流体が流入される流入側管路16bと被測流体が流出される流出側管路16cとが平行に配され、流入側管路16bと流出側管路16cとの間を連通する連通管路16aとを有する。そして、センサチューブ挿入通路14は、流入側管路16bが挿通される流入側通路14aと、流出側管路16cが挿通される流出側通路14bと、連通管路16aが挿通される平面状通路14c(接続空間)とを有する。
【0033】
この流入側通路14aと流出側通路14bは、ステンレス等の塊に穴を穿設することにより形成される。さらに、平面状通路14cは、連通管路16aの中間位置に取り付けられた四角形状の駆動用マグネット18bの揺動範囲を許容する逃げ部62が設けられている。すなわち、逃げ部62は、内壁が駆動用マグネット18bの側面に接触しない位置に形成されている。
【0034】
駆動用マグネット18bに対向する高さ位置には、加振器18の駆動コイル18aが設けられており、駆動コイル18aからの電磁力によってセンサチューブ16の連通管路16aをY方向(図1中紙面に対して鉛直方向)に駆動する。
【0035】
図2に示されるように、平面状通路14cは、ケース本体12Aの上面に開口するように形成されており、蓋12Bが締結ボルト58によりケース本体12Aに締結されることで密閉される。また、平面状通路14cの上部開口14dは、図2に示されるように、上方からみると流入側通路14aと流出側通路14bとの間に平面状通路14cが介在するため、流入側通路14a、流出側通路14bを囲む円形部分と平面状通路14cを囲む直線部分と逃げ部62を囲む膨らみ部分とを有する。そして、このセンサチューブ挿入通路14の上部開口14dを囲む周縁部分は、上部開口14dの輪郭形状に対応した形状に形成されたシール部材64によって気密にシールされる。
【0036】
図3に示されるように、流入側管路16b及び流出側管路16cの上端間は、平面状通路14cの内部に装架されたサポート部材66により、流入側管路16b及び流出側管路16cが平行な状態に支持されている。
【0037】
図4に示されるように、流入側管路16b、流出側管路16cは、円形の流入側通路14a、流出側通路14bの軸線に沿うように挿通されており、長手方向のほぼ中間位置には四角形状の検出用マグネット20b,22bが取り付けられている。流入側通路14a、流出側通路14bは、検出用マグネット20b,22bが揺動する範囲より大径に形成されており、計測時に検出用マグネット20b,22bが接触しないように設けられている。このように、流入側通路14a、流出側通路14bの内径を必要最小限の大きさに設定しているため、被測流体が流入側通路14a、流出側通路14bに供給された際の耐圧強度を確保するための肉厚も必要最小限で済む。これにより、ケース本体12Aをできるだけコンパクトな構成で耐圧強度を維持することが可能になる。
【0038】
さらに、ケース本体12Aの検出用マグネット20b,22bと同じ高さ位置には、流入側ピックアップ20のセンサコイル20a、流出側ピックアップ22のセンサコイル22aが設けられている。従って、Y方向に振動するセンサチューブ16の、流入側管路16bと流出側管路16cとの位相差は、流量に比例しており、マグネット20b,22bの変位に応じたセンサコイル20a,22aにより検出信号が出力される。
【0039】
このように質量流量計10では、耐圧ケース12の内部にセンサチューブ16を収納するためのセンサチューブ挿入通路14がセンサチューブ16の形状に対応するように形成し、このセンサチューブ挿入通路14にセンサチューブ16を流れる被測流体の一部を供給してセンサチューブ挿入通路14の圧力をセンサチューブ16の内部圧力と同圧に保つように構成したため、センサチューブ16の形状が曲げ部を有するような形状であってもセンサチューブ16が挿通されるセンサチューブ挿入通路14の受圧面積に応じた肉厚で耐圧ケース12を製作できるので、従来のようにセンサチューブ全体を広い空間に収納させるよりも耐圧ケース12を小型化及び軽量化することが可能になる。
【0040】
また、質量流量計10では、流量計測時、流量計測制御回路(図示せず)によって加振器18が駆動され、センサチューブ16の振動特性(固有振動数)に応じた周期、振幅でセンサチューブ16の連通管路16aをY方向に加振させる。
【0041】
このように、振動するセンサチューブ16に流体が流れると、その流量に応じた大きさのコリオリ力が発生する。そのため、センサチューブ16の流入側と流出側で動作遅れが生じ、これにより流入側ピックアップ20と流出側ピックアップ22との出力信号に位相差が生じる。
【0042】
流量計測制御回路は、上記流入側の出力信号と流出側の出力信号との位相差が流量に比例するため、当該位相差に基づいて流量を演算する。よって、センサチューブ16の変位が流入側ピックアップ20及び流出側ピックアップ22により検出されると、流量計測制御回路は上記センサチューブ16の振動に伴う上記位相差を質量流量に変換する。
【0043】
図6はセンサチューブ取付構造の変形例を示す縦断面図である。尚、図6において、上記実施例と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
図6に示されるように、固定用ボス44,46は、固定部材28,32の中央孔28a,32aを貫通して下方に突出するおねじ部44b,46bを有しており、おねじ部44b,46bにはナット70が螺合される。従って、ナット70の締め付けにより固定用ボス44,46を固定部材28,32に固定できるので、上記実施例のC字状リング48,50をなくすことが可能になる。
【0044】
ここで、実施例2について説明する。
図7は本発明の実施例2の縦断面図である。図8は実施例2のセンサチューブ固定構造を拡大して示す縦断面図である。図9は図7中E−E線に沿う横断面図である。図10は図7中F−F線に沿う横断面図である。図11は図7中G−G線に沿う横断面図である。図12は図7中H−H線に沿う横断面図である。図13は図7中I−I線に沿う横断面図である。尚、図7乃至図13において、上記実施例と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。
【0045】
図7乃至図13に示されるように、質量流量計80は、ステンレス鋼などからなる金属性の耐圧ケース82と、密閉された耐圧ケース82の内部に形成された一対のセンサチューブ挿入通路84,85と、一対のセンサチューブ挿入通路84,85の夫々に挿入された一対のセンサチューブ86,87と、センサチューブ86,87の湾曲された連通管路86a,87aの中間部分を加振する一対の加振器18と、振動するセンサチューブ86,87の流入側管路86b,87bの変位を検出する一対の流入側ピックアップ20と、振動するセンサチューブ86,87の流出側管路86c,87cの変位を検出する一対の流出側ピックアップ22とを有する。センサチューブ挿入通路84,85は、センサチューブ86,87の形状に対応するU字状に形成されている。
【0046】
耐圧ケース82は、センサチューブ86,87を収納するケース本体82Aと、ケース本体82Aの上部を密閉する蓋82Bとから構成されている。ケース本体82Aの下部側面の一側には、被測流体(例えば、CNGあるいは水素等の高圧ガス)が流入される流入口24が設けられ、ケース本体82Aの下部側面の他側には、被測流体が流出される流出口26が設けられている。
【0047】
また、ケース本体82Aの下面には、センサチューブ86,87の流入側管路86b,87bの端部を固定する固定部材28が螺入される一対の流入側固定用孔30と、センサチューブ86,87の流出側管路86c,87cの端部を固定する固定部材32が螺入される一対の流出側固定用孔34とが設けられている。一対の流入側固定用孔30は、連通路36を介して流入口24と連通されており、一対の流出側固定用孔34は連通路38を介して流出口26と連通されている。
【0048】
流入側固定用孔30、流出側固定用孔34に螺入された固定部材28,32は、実施例1と同様にC字状リング48,50を介して固定用ボス44,46を外周から挟持する構成である。このように、センサチューブ86,87の両端は、固定部材28,32及びC字状リング48,50により着脱自在に固定されるため、組み付け作業が容易に行われると共に、メンテナンス作業時にセンサチューブ86,87を取り出すことも可能である。
【0049】
また、流入側固定用孔30、流出側固定用孔34には、実施例1と同様に、バイパス通路52,56を介してセンサチューブ挿入通路84,85と連通されている。これにより、センサチューブ86,87の内部の圧力と外部(センサチューブ挿入通路84,85)の圧力とが同圧になり、センサチューブ86,87の耐圧強度を高める必要がないので、センサチューブ86,87の肉厚を計測感度の良い薄さにして計測することが可能になる。
【0050】
また、固定部材28,32は、実施例1と同様に、下端と上端に作用する圧力に差がなく、且つ両端の受圧面積の差も小さいので、固定用ボス44,46に対するC字状リング48,50の締結力を維持することができる。
【0051】
センサチューブ挿入通路84,85の平面状通路84c,85cは、ケース本体82Aの上面に開口するように形成されており、蓋82Bが締結ボルト58によりケース本体12Aに締結されることで密閉される。また、平面状通路84c,85cの上部開口84d,85dは、図9に示されるように、上方からみると流入側通路84a,85aと流出側通路84b,85bとの間に平面状通路84c,85cが介在するため、流入側通路84a,85a、流出側通路84b,84bを囲む円形部分と平面状通路84c,85cを囲む直線部分と逃げ部62を囲む膨らみ部分とを有する。そして、このセンサチューブ挿入通路84,85の上部開口84d,85dを囲む周縁部分は、上部開口84d,85dの輪郭形状に対応した形状に形成された一対のシール部材64によって気密にシールされる。
【0052】
図10に示されるように、センサチューブ86,87は、流入側管路86b,87b及び流出側管路86c,87cの上端間は、平面状通路84c,85cの内部に装架されたサポート部材66により、流入側管路86b,87b及び流出側管路86c,87cが平行な状態に支持されている。
【0053】
図11に示されるように、流入側管路86b,87b及び流出側管路86c,87cは、円形の流入側通路84a,85a、流出側通路84b,85bの軸線に沿うように挿通されており、長手方向のほぼ中間位置には四角形状の検出用マグネット20b,22bが取り付けられている。流入側通路84a,85a、流出側通路84b,85bは、夫々検出用マグネット20b,22bが揺動する範囲より大径に形成されており、計測時に検出用マグネット20b,22bが接触しないように設けられている。このように、流入側通路84a,85a、流出側通路84b,85bの内径を必要最小限の大きさに設定しているため、被測流体が流入側通路84a,85a、流出側通路84b,85bに供給された際の耐圧強度を確保するための肉厚も必要最小限で済む。これにより、ケース本体82Aをできるだけコンパクトな大きさで耐圧強度を維持することが可能になる。
【0054】
図12に示されるように、ケース本体82Aの検出用マグネット20b,22bと同じ高さ位置には、流入側ピックアップ20のセンサコイル20a、流出側ピックアップ22のセンサコイル22aが設けられている。従って、Y方向に振動するセンサチューブ86,87の、流入側管路86b,87bと流出側管路86c,87cとの位相差は、流量に比例しており、マグネット20b,22bの変位に応じたセンサコイル20a,22aにより検出信号が出力される。
【0055】
図12に示されるように、センサチューブ挿入通路84,85の平面状通路84c,85cは、連通管路86a,87aの中間位置に取り付けられた四角形状の駆動用マグネット18bの揺動範囲を許容する逃げ部62が設けられている。また、一対の駆動用マグネット18bに対向する高さ位置には、一対の加振器18の駆動コイル18aがY方向に対称に設けられており、駆動コイル18aからの電磁力によってセンサチューブ86,87の連通管路86a,87aをY方向に駆動する。
【0056】
図13に示されるように、一対の流入側固定用孔30は、連通孔90を介して連通されており、且つ連通孔90は、連通路36を介して流入口24と連通されている。また、一対の流出側固定用孔34は、連通孔92を介して連通されており、且つ連通孔92は、連通路38を介して流出口26と連通されている。
【0057】
このように質量流量計80では、耐圧ケース82の内部にセンサチューブ86,87を収納するためのセンサチューブ挿入通路84,85がセンサチューブ86,87の形状に対応するように形成し、このセンサチューブ挿入通路84,85にセンサチューブ86,87を流れる被測流体の一部を供給してセンサチューブ挿入通路84,85の圧力をセンサチューブ86,87の内部圧力と同圧に保つように構成したため、センサチューブ86,87の形状が曲げ部を有するような形状であってもセンサチューブ86,87が挿通されるセンサチューブ挿入通路84,85の受圧面積に応じた肉厚で耐圧ケース82を製作できるので、従来のようにセンサチューブ全体を広い空間に収納させるよりも耐圧ケース82を小型化及び軽量化することが可能になる。
【0058】
また、質量流量計80では、流量計測時、流量計測制御回路(図示せず)によって一対の加振器18が駆動され、センサチューブ86,87の振動特性(固有振動数)に応じた周期、振幅でセンサチューブ86,87の連通管路86a,87aをY方向に加振させる。
【0059】
このように、振動するセンサチューブ86,87に流体が流れると、その流量に応じた大きさのコリオリ力が発生する。そのため、センサチューブ86,87の流入側と流出側で動作遅れが生じ、これにより流入側ピックアップ20と流出側ピックアップ22との出力信号に位相差が生じる。
【0060】
流量計測制御回路は、上記流入側の出力信号と流出側の出力信号との位相差が流量に比例するため、当該位相差に基づいて流量を演算する。よって、センサチューブ86,87の変位が流入側ピックアップ20及び流出側ピックアップ22により検出されると、流量計測制御回路は上記センサチューブ86,87の振動に伴う上記位相差を質量流量に変換する。
【0061】
尚、上記実施例では、CNGあるいは水素ガスのような可燃性ガスを被測流体として流量計測する場合を例に挙げたが、これに限らず、他の高圧の流体を計測するのにも適用できるのは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明になる振動式測定装置の実施例1としてのコリオリ式質量流量計の縦断面図である。
【図2】図1中A−A線に沿う横断面図である。
【図3】図1中B−B線に沿う横断面図である。
【図4】図1中C−C線に沿う横断面図である。
【図5】図1中D−D線に沿う横断面図である。
【図6】センサチューブ取付構造の変形例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の実施例2の縦断面図である。
【図8】実施例2のセンサチューブ固定構造を拡大して示す縦断面図である。
【図9】図7中E−E線に沿う横断面図である。
【図10】図7中F−F線に沿う横断面図である。
【図11】図7中G−G線に沿う横断面図である。
【図12】図7中H−H線に沿う横断面図である。
【図13】図7中I−I線に沿う横断面図である。
【符号の説明】
【0063】
10,80 質量流量計(振動式測定装置に相当する)
12,82 耐圧ケース
12A,82A ケース本体
14,84,85 センサチューブ挿入通路(請求項1の通路に相当する)
16,86,87 センサチューブ
18 加振器
20 流入側ピックアップ
22 流出側ピックアップ
24 流入口
26 流出口
28,32 固定部材
30 流入側固定用孔
34 流出側固定用孔
36,38,90,92 連通路
44,46 固定用ボス
48,50 C字状リング
56,52 バイパス通路
62 逃げ部(
66 サポート部材
70 ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測流体が流入される流入側管路と被測流体が流出される流出側管路とが平行に配され、前記流入側管路と前記流出側管路との間を連通する連通管路とを有するセンサチューブと、
前記センサチューブを収納するための通路が前記センサチューブの形状に対応するように形成された耐圧ケースと、
前記通路に前記センサチューブを流れる被測流体の一部を供給して前記通路の圧力を前記センサチューブの内部圧力と同圧に保つ圧力供給手段と、
前記耐圧ケースに設けられ、前記流入側管路の端部が連通される流入口と、
前記耐圧ケースに設けられ、前記流出側管路の端部が連通される流出口と、
前記連通管路に取り付けられた駆動用磁石と、前記耐圧ケースに設けられ、前記駆動用磁石を振動方向に駆動する駆動コイルとからなる加振器と、
前記流入側管路及び前記流出側管路に取り付けられた検出用磁石と、前記耐圧ケースに設けられ、前記検出用磁石の変位を検出する検出部とからなるピックアップと、
を有することを特徴とする振動式測定装置。
【請求項2】
前記耐圧ケースは金属塊からなり、
前記通路は、該金属塊に穿設されて形成され前記流入側管路が挿入される流入側通路と、該金属塊に穿設されて形成され前記流出側管路が挿入される流出側通路と、該流入側通路と流出側通路とを接続する接続空間とからなることを特徴とする請求項1記載の振動式測定装置。
【請求項3】
前記センサチューブは、前記流入側管路の端部及び前記流出側管路の端部が着脱可能に前記耐圧ケースに保持されることを特徴とする請求項1記載の振動式測定装置。
【請求項4】
前記耐圧ケースは、前記駆動用磁石の加振方向に対向する逃げ部を有し、該逃げ部は前記駆動用磁石の側面に接触しない位置に内壁が形成されたことを特徴とする請求項1記載の振動式測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2006−17520(P2006−17520A)
【公開日】平成18年1月19日(2006.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−193729(P2004−193729)
【出願日】平成16年6月30日(2004.6.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(水素安全利用等基盤技術開発 水素インフラに関する研究開発 水素充てん機の実用化技術の開発、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】