説明

振動式測定装置

【課題】複数の振動で得られた時間差の平均値を演算する振動式測定装置で、出力タイミングが遅れることを回避する。
【解決手段】振動式測定装置の流量計測制御回路400は、本質安全防爆バリア回路420、励振回路440、積分回路460、流量信号生成部470とを有する。流量信号生成部470は、第1の時間差演算回路480と、第2の時間差演算回路490と、第1の平均化回路500と、第2の平均化回路510と、補正演算回路520と、第1の流量換算回路530と、第2の流量換算回路540とを有する。第1の時間差演算回路480は、加振器160により所定の振動周波数でセンサチューブを加振したとき、一対のピックアップ180,200により得られた各検出信号の時間差aを高速で演算する。第2の時間差演算回路490は、一対のピックアップ180,200により得られた各検出信号の時間差bを詳細に演算する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動式測定装置に係り、特に被測流体が流れるセンサチューブを振動させて被測流体の質量に応じたセンサチューブの上流側、下流側の変位をピックアップにより検出し、上流側、下流側の変位の時間差(位相差)を測定するよう構成された振動式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測流体が流れる流路を有するセンサチューブを振動させて被測流体の物理量(質量や密度など)を測定する測定装置として、コリオリ式質量流量計または振動式密度計と呼ばれる振動式測定装置がある。以下では、被測流体の質量流量を測定するコリオリ式質量流量計について説明する。
【0003】
この振動式測定装置では、例えば、被測流体の質量流量を測定する場合、被測流体が流れるセンサチューブを加振器により管径方向に振動させ、質量流量に比例したコリオリ力によるセンサチューブの変位をピックアップにより検出するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、振動式測定装置において、一対のセンサチューブを対称に配置し、一対のセンサチューブ間の上流側直管部分、下流側直管部分の夫々に加振器及びピックアップを配置させる構成になっており、一対のセンサチューブの上流側直管部分同士、及び下流側直管部分同士を加振器により互いに近接、離間する方向に振動させて上流側直管部分、下流側直管部分における相対変位をピックアップにより検出する。
【0005】
コリオリ力は、センサチューブの振動方向に働き、且つ上流側と下流側とで逆方向に作用するため、センサチューブの中間部分では捩れが生じる。すなわち、センサチューブにおける被測流体の流速がゼロ以上のときは、上流側直管部分における変位量に応じた検出信号は位相が進み、下流側直管部分における変位量に応じた検出信号は位相が遅れる。そのため、センサチューブの捩れ角に応じて得られた両検出信号の時間差が質量流量に比例する。
【0006】
従って、振動式測定装置の流量演算部では、センサチューブの上流側直管部分、下流側直管部分に設けられた一対のピックアップから出力された検出信号の時間差を演算し、この時間差に基づいてセンサチューブを流れる質量流量を計測している。
【0007】
ところで、センサチューブは、コリオリ力の作用方向と同じ方向に加振されるため、例えば、他の振動成分がセンサチューブに作用した場合、あるいは加振器、ピックアップの取付位置精度やセンサチューブの加工精度のばらつきがあると、ピックアップから出力される検出信号に雑音(ノイズ)が重畳される。そのため、コリオリ力による捩れ角に応じた両検出信号の時間差は、誤差を含んでいるおそれがある。
【0008】
また、センサチューブは、ステンレス材などの金属パイプからなり、例えば、コリオリ力の検出感度を上げるために、肉薄パイプを使用した場合、加振器及びピックアップを従前と同じものを使用してしまうと、センサチューブに付加質量を追加したことになり、センサチューブの振動が正弦波から外れることがある。
【0009】
そのため、各加振器、ピックアップのコイルとマグネットの寸法、及び質量を減らす必要が生じ、コイルに対するマグネットの磁束は、各ピックアップ毎に不均衡となる現象が発生する。
【0010】
このような、ピックアップから出力される検出信号のばらつきを解消する方法として、振動式測定装置の流量演算部では、複数の振動から得られる検出信号の時間差を平均化した流量を演算して出力している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平6−331406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記のような複数の振動で得られた時間差の平均値を演算することで質量流量を求める振動式測定装置では、複数の振動から得られる検出信号の時間差を平均化する演算処理を行なってから流量計測値が出力されるため、流量計測値の出力タイミングが遅れるという問題がある。
【0013】
例えば、被測流体の供給経路に振動式測定装置を設け、当該振動式測定装置により計測された流量計測値に基づいて制御弁の弁開度を制御する流量制御システムにおいては、被測流体の供給が開始されても流量計測値が出力されるまで制御弁の弁開度を制御することができないので、目標流量に制御されるまでに時間かかり、制御系統に遅れが生じてしまう。
【0014】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した振動式測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、被測流体が流れるセンサチューブと、該センサチューブを振動させる加振器と、前記センサチューブの上流側部分と下流側部分の各変位を検出する一対のピックアップと、該一対のピックアップより出力された検出信号の時間差信号を生成する時間差信号生成部とを有する振動式測定装置において、
前記時間差信号生成部は、
前記一対のピックアップにより得られた各検出信号の時間差を高速で演算する第1の時間差演算回路と、
前記一対のピックアップにより得られた各検出信号の時間差を詳細に演算する第2の時間差演算回路と、
を備えたことを特徴とする。
(2)本発明の前記時間差信号生成部は、
前記第1の時間差演算回路で高速演算された時間差の信号を流量制御用信号として出力すると共に、前記第2の時間差演算回路で詳細に演算された時間差を流量表示用信号として出力することを特徴とする。
(3)本発明の前記時間差信号生成部は、
前記第1の時間差演算回路で高速演算された前記時間差を平均化する第1の平均化回路と、
前記第2の時間差演算回路で詳細に演算された時間差を平均化する第2の平均化回路と、
前記第1の時間差演算回路で高速演算された前記時間差から前記第1の平均化回路より出力された第1の平均値を減算すると共に、前記第2の平均化回路より出力された第2の平均値を加算する補正演算回路と、
を有することを特徴とする。
(4)本発明は、前記第1の時間差演算回路は、前記一対のピックアップより出力された検出信号の立上がりの時間差及び立下がりの時間差を演算し、
前記第1の平均化回路は、前記立上がりの時間差及び立下がりの時間差を平均化し、
前記補正演算回路は、前記立上がりの時間差及び立下がりの時間差から前記立上がり及び立下がり時間差の平均値を減算すると共に、前記第2の平均化回路より出力された第2の平均値を加算することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、一対のピックアップにより得られた各検出信号の時間差を高速で演算する第1の時間差演算回路と、一対のピックアップにより得られた各検出信号の時間差を詳細に演算する第2の時間差演算回路とを有するため、例えば、高速演算処理を要求される場合には、第1の時間差演算回路から出力された時間差の信号を用いて遅れの無い状態で演算することが可能になり、より正確な演算処理を要求される場合には、第2の時間差演算回路から出力された時間差の信号を用いてより正確な演算を行なうことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による振動式測定装置の一実施例が適用されたガス供給装置を模式的に示す系統図である。
【図2】図1に示すガス供給装置の制御装置が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明による振動式測定装置の一実施例の正面図である。
【図4】図3に示す振動式測定装置の側面図である。
【図5】加振器160がセンサチューブ140を振動させる状態を模式的に示す図である。
【図6】振動するセンサチューブ140に作用するコリオリ力を模式的に示す図である。
【図7】流量計測制御回路400の構成を示すブロック図である。
【図8】ピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。
【図9】センサチューブ140,150に他のねじり振動が発生した場合に検出されたピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。
【図10】ねじれ振動(外乱)が加わった場合の時間差信号の変化をグラフIとフィルタ処理を行ったグラフIIを示す波形図である。
【図11】ねじれ振動(外乱)が加わった場合の時間差信号の変化をグラフIと移動平均処理を行ったグラフIIIを示す波形図である。
【図12】ねじれ振動(外乱)が加わった場合の時間差信号の変化をグラフIと移動平均処理を行ったグラフIVを示す波形図である。
【図13】流量計測制御回路400の変形例を示すブロック図である。
【図14】ピックアップ180,200から出力される信号をx、y座標で描いた場合の図形を示す図である。
【図15】リサージュ波形の立上がり、立下がりを拡大して示す図である。
【図16】リサージュ波形の立上がり、立下がりのゼロ点付近、立上がり、立下がりの時間差、立上がり、立下がりの時間差のベクトルを時系列的に並べて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明による振動式測定装置の一実施例が適用されたガス供給装置を模式的に示す系統図である。図1に示されるように、ガス供給装置10は、例えば自動車12の燃料タンク(被充填タンク)14に都市ガスを所定圧力に圧縮した圧縮天然ガス(CNG)を供給するガス供給ステーションなどに設置されている。
【0020】
ガス供給装置10は、大略、都市ガスを所定圧力に圧縮し加圧されたガスを生成する圧力発生ユニット(図示せず)と、圧力発生ユニットにより圧縮されたガスを燃料タンク14に供給するためのディスペンサユニット16とを有する。
【0021】
また、ディスペンサユニット16のガス供給経路18には、上流側から順に、ガス供給経路18を流れるガスの供給量を計測する質量流量計としての振動式測定装置20と、電磁弁よりなりガス供給経路18を開又は閉とするガス供給開閉弁22と、下流側(被充填側)へ供給されるガスの流量・圧力を制御する制御弁24と、制御弁24により制御された2次圧力を測定する圧力伝送器(圧力トランスミッタ)26とが配設されている。
【0022】
さらに、ガス供給経路18の下流側端部には、ガス充填ホース28が連通されており、ガス充填ホース28の下流側端部には、電磁駆動式の三方弁30が接続されている。三方弁30は、ガス充填ホース28が接続された流入ポートaと、脱圧管路32が接続された排気ポートbと、ガス充填カップリング34が接続された充填ポートcとを有する。この三方弁30は、ガス充填時に流入ポートaと充填ポートcとが連通された開弁状態に切替えられ、ガス充填完了後の脱圧操作を行う際に排気ポートbと充填ポートcとが連通するように切替えられてガス充填カップリング34内の圧力を減圧する。
【0023】
また、圧力伝送器26は、ガス供給開閉弁22、制御弁24の下流に配置され、三方弁30を流入ポートaと充填ポートcとが連通された開弁状態に切替えることにより、燃料タンク14に連通されたガス供給経路18の圧力を測定することで、間接的に燃料タンク14の残留圧力を測定することができる。
【0024】
さらに、ディスペンサユニット16には、制御装置40、充填開始スイッチ釦42、充填停止スイッチ釦44、流量表示器46が配設されている。ディスペンサユニット16の制御装置40は、充填開始スイッチ釦42がオンに操作されると、ガス供給経路18に設けられたガス供給開閉弁22の開閉制御、三方弁30の切替制御を行なうと共に、振動式測定装置20により測定された流量測定値、及び圧力伝送器26により測定された圧力測定値に基づいて制御弁24の弁開度制御を行なうことで、燃料タンク14に目標圧力のガスを充填する。
【0025】
また、制御装置40は、振動式測定装置20及び圧力伝送器26から出力された流量及び圧力の検出信号により燃料タンク14に供給された供給量及び供給圧力を演算する。
【0026】
上記振動式測定装置20は、被測流体が流れる流路を有するセンサチューブを振動させ、この振動する流路内を流れるガス流量に応じたコリオリ力による管路の流入側と流出側との時間差が流量に比例することを利用して流量計測を行うコリオリ式質量流量計である。尚、振動式測定装置20の詳細は、後述する。
【0027】
また、制御弁24は、制御装置40からの指令により弁開度が制御されて燃料タンク14へ供給されるガス供給量(流量は圧力×時間により求まる)を制御する。
【0028】
また、自動車12では、ディスペンサユニット16のガス充填カップリング34が連結される被充填側のレセプタクル50と、レセプタクル50と燃料タンク14とを連通する管路52と、管路52に配設され、燃料タンク14に充填されたガスの逆流を防止する逆止弁54とを有する。
【0029】
制御装置40のメモリ(ROM)には、ガス供給経路18の下流端部が燃料タンク14側に連結された状態で、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を開としてガス供給経路18に所定圧力のガスを供給する制御プログラムが格納されている。そして、制御装置40は、後述するようにメモリに格納された各制御プログラムを読み込んでガス供給開閉弁22の開閉制御、三方弁30の切替制御を行なうと共に、振動式測定装置20により測定された流量、及び圧力伝送器26により測定された圧力測定値に基づいて制御弁24の弁開度制御を実行する。
【0030】
次に上記構成になるガス供給装置10におけるガス充填作業について説明する。上記自動車12の燃料タンク14にガスを充填する際、作業者は、先ず、ディスペンサユニット15の掛止部(図示せず)からガス充填カップリング34を外して自動車12のレセプタクル50に結合させる。そして、作業者は、充填開始スイッチ釦42をオンに操作する。
【0031】
これにより、制御装置40は、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を開弁させて三方弁30より上流のガス供給経路18を最大供給圧力(目標圧力)に昇圧させる。次に、制御装置40は、ガス供給開閉弁22を閉弁させてから三方弁30を開弁状態(ポートa−c連通)に切替えてガス供給開閉弁22より下流のガス供給経路18に充填されたガスを燃料タンク14に供給する。尚、上記所定圧力は、燃料タンク14の上流に設けられた逆止弁54の閉弁力(弁体を付勢する力)より十分大きい圧力値に設定されている。
【0032】
そして、制御装置40は、ガス供給開閉弁22より下流のガス供給経路18の圧力が燃料タンク14の圧力と均衡した状態になったとき、圧力伝送器26により測定された圧力測定値をメモリに記憶し、この圧力測定値に基づいて燃料タンク14の容積及び残留ガス量を演算し、この燃料タンク14の容積及び残留ガス量に応じた制御則(一定圧力制御あるいは一定流量制御)により制御弁24の弁開度を制御する。
【0033】
燃料タンク14へのガス供給が行なわれて圧力伝送器26により測定された圧力測定値が目標圧力に達すると、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を閉弁した後、三方弁30を脱圧状態に切替えてガス充填カップリング34の圧力を減圧する。これにより、作業者は、軽い力でガス充填カップリング34を自動車12のレセプタクル50から分離させることが可能になる。
【0034】
その後、作業者は、ディスペンサユニット16のガス充填カップリング34を掛止部(図示せず)に掛止させる。そして、充填停止釦44がオンに操作されると、一連のガス充填作業が完了する。
【0035】
ここで、上記構成になるガス供給装置10の制御装置40が実行するガス供給制御処理につき図2のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
制御装置40は、図2のS11において、ガス充填カップリング34が自動車12のレセプタクル50に結合されて充填開始スイッチ釦42がオンに操作されると(YESの場合)、S12に進み、燃料タンク14に充填すべき最大供給圧力(目標圧力)Pをメモリから読み込む。続いて、S13に進み、三方弁30を脱圧状態(流入ポートaが閉止、排気ポートbと充填ポートcとが連通)に切替える。尚、前回のガス供給終了時には、三方弁30を脱圧状態に切替えているが、本実施例では、三方弁30より上流側のガス供給経路18を確実に密閉させるため、三方弁30の流入ポートaを閉止させる。
【0037】
次のS14では、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を開弁させる。これにより、三方弁30より上流のガス供給経路18に圧力発生ユニットで生成された高圧ガスが供給される。そのため、三方弁30より上流のガス供給経路18を瞬時に最大供給圧力(目標圧力)に昇圧させることができる。
【0038】
続いて、S15に進み、圧力伝送器26により測定された圧力測定値を読み込み、測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したか否かをチェックする。このS15において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したときは(YESの場合)、S16に進み、ガス供給開閉弁22を閉弁させてガス供給経路18へのガス供給を停止させる。続いて、S17では、三方弁30を開弁状態(流入ポートaと充填ポートcとが連通、排気ポートbが閉止)に切替える。これにより、ガス供給開閉弁22と三方弁30との間のガス供給経路18に充填されたガスは、ガス充填カップリング34、レセプタクル50を介して逆止弁54を開弁させ、自動車12の燃料タンク14に供給される。
【0039】
次のS18では、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pより低下したか否かをチェックする。このS18において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が低下した場合(YESの場合)、S19に進み、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が所定時間一定値を維持するか否かをチェックする。このS19において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が低下している場合(NOの場合)には、測定された圧力測定値が所定時間一定値を維持するまでS18,S19の処理を繰り返して待機状態となる。
【0040】
そして、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が所定時間一定値を維持した場合には、S20に進み、この一定圧力値を燃料タンク14に残留している充填前タンク圧力値Ptとして記憶する。続いて、S21では、燃料タンク14の容積を上記充填前タンク圧力値Ptから演算する。尚、この燃料タンク14の容積を求める演算式としては、例えば、ガス供給開閉弁22と三方弁30との間のガス供給経路18の容積と、この容積に充填されたガス量(振動式測定装置20の流量測定値)との関係式から求まり、既に周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0041】
次のS22では、ガス供給開閉弁22を開弁して燃料タンク14に対するガス供給を開始すると共に、制御弁24の弁開度を燃料タンク14の容積に応じた制御則(定圧力上昇制御または定流量制御など)により制御する。これにより、燃料タンク14へのガス供給が行なわれ、タンク圧力も徐々に上昇する。
【0042】
S23では、振動式測定装置20によりガス供給経路18を流れるガス流量を計測しており、振動式測定装置20から出力された流量パルスを積算して瞬時流量及び積算流量(燃料タンク14に充填されたガス量)を演算する。S23aでは、現時点での積算流量を流量表示器46に表示する。これにより、流量表示器46に表示される積算流量の数値が随時更新される。
【0043】
次のS24では、現時点での積算流量が予め設定された制御則による目標流量に達したか否かをチェックする。S24において、現時点での積算流量が目標流量に達していないときは(NOの場合)、S25に進み、積算流量が目標流量に近づくように制御弁24の弁開度を制御する。その後は、S23に戻り、S23〜S25の処理を繰り返す。また、S24において、現時点での積算流量が目標流量に達したときは(YESの場合)、S26に進む。
【0044】
次のS26では、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したか否かをチェックする。このS26において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達しないときは(NOの場合)、S23に戻り、S23〜S26の処理を繰り返す。
【0045】
また、S26において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したときは(YESの場合)、S27に進み、ガス供給開閉弁22、制御弁24を閉弁させてガス供給経路18へのガス供給を停止させる。そして、次のS28に進み、三方弁30を脱圧状態(流入ポートaが閉止、排気ポートbと充填ポートcとが連通)に切替える。これにより、ガス充填カップリング34及びレセプタクル50の圧力が減圧されると共に、逆止弁54が圧力差により閉弁する。この後、作業者は、ガス充填カップリング34をレセプタクル50から分離させてディスペンサユニット16の掛止部(図示せず)に掛止させる。これで、燃料タンク14に対するガス供給作業が終了する。
【0046】
また、上記S18において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が低下しない場合には、ガス供給開閉弁22が閉弁できない等の異常が発生しているため、S29に進み、警報を発した後、S28に進み、三方弁30を脱圧状態(流入ポートaが閉止、排気ポートbと充填ポートcとが連通)に切替えてガス供給を中止する。
【0047】
ここで、振動式測定装置20の構成について説明する。
【0048】
図3は本発明による振動式測定装置の一実施例の正面図である。図4は振動式測定装置の側面図である。尚、振動式測定装置は、被測流体の密度、及び密度を利用して質量流量を求めることができるため、振動式密度計及びコリオリ式質量流量計として用いられる。振動式密度計とコリオリ式質量流量計とは、同様な構成であるので、本実施例では質量流量計として用いた場合について詳細に説明する。
【0049】
図3及び図4に示されるように、振動式測定装置20は、マニホルド120と、マニホルド120の上面に接続され、平行に形成された逆U字状のセンサチューブ140,150と、センサチューブ140,150の円弧状の中間部分140c,150c間に取り付けられた加振器160と、センサチューブ140と150との流入側の相対変位(相対速度)を検出する流入側ピックアップ180と、センサチューブ140と150との流出側の相対変位(相対速度)を検出する流出側ピックアップ200を有する。マニホルド120は、例えば、直方体形状の金属ブロックからなり、一方の端部に流入口120aが設けられ、他方の端部に流出口120bが設けられている。そして、センサチューブ140,150の流入側端部140a,150aが流入口120aに連通され、センサチューブ140,150の流出側端部140b,150bが流出口120bに連通されている。従って、流入口120aに流入された流体は、センサチューブ140,150を通過して流出口120bより外部に流出される。
【0050】
加振器160は、センサチューブ140の先端に取り付けられた励振コイル160aとセンサチューブ150の先端に取り付けられたマグネット160bからなる。また、ピックアップ200は、センサチューブ140に取り付けられたセンサコイル200aと、センサチューブ150に取り付けられたマグネット200bとからなる。尚、ピックアップ180は、図4において、ピックアップ200と重なってみえないが、ピックアップ200と同様に、振動するセンサチューブ140に取り付けられたセンサコイル180aと、センサチューブ150に取り付けられたマグネット180bとからなる。
【0051】
加振器160、流入側ピックアップ180、流出側ピックアップ200は、図3に示すように正面からみてセンサチューブ140,150の中間位置を横切る縦線に対して対称に、且つ加振器160を中心に流入側ピックアップ180と流出側ピックアップ200とが対称に設けられている。そして、加振器160は流量計測制御回路400により駆動制御され、流入側ピックアップ180、流出側ピックアップ200により検出された検出信号は、流量計測制御回路400に入力される。
【0052】
加振器160は、励振コイル160aに正負のある交番電圧(交流信号)が印加されて生じる磁界に対してマグネット160bが吸引または反発することで、センサチューブ140の中間部分を水平方向(Y方向、図4参照)に振動させる。当然センサチューブ150へはその反力として同じ力が働き、反対方向に振動する。
【0053】
流入側ピックアップ180のセンサコイル180aは、センサコイル180aとマグネット180bの変位量(変位速度)に応じた検出信号(電圧)v1を出力する。また、流出側ピックアップ200のセンサコイル200aは、センサコイル200aとマグネット200bの変位量(変位速度)に応じた検出信号(電圧)v2を出力する。
【0054】
ここで、振動式測定装置20による計測動作について説明する。
【0055】
上記構成になる振動式測定装置20において、流量計測時は流量計測制御回路400によって加振器160が駆動され、センサチューブ140および150の振動特性(固有振動数)に応じた周期、振幅でセンサチューブ140,150の中間部分140c,150c(図3、図4参照)を振動させる。そして、センサチューブ140,150は、マニホルド120に固定された両端を支点として近接、離間方向(Y方向、図4参照)に振動する。
【0056】
このとき、振動するセンサチューブ140と150に流体が流れると、その流量に応じた大きさのコリオリ力が発生する。そのため、センサチューブ140,150の流入側と流出側で動作遅れが生じ、これにより流入側ピックアップ180のセンサ信号と流出側ピックアップ200のセンサ信号との間に時間差が生じる。
【0057】
流量計測制御回路400は、上記流入側センサ信号と流出側センサ信号との時間差が流量に比例するため、当該時間差に基づいて流量を演算する。よって、センサチューブ140,150の変位が流入側ピックアップ180及び流出側ピックアップ200により検出されると、上記センサチューブ140,150の振動に伴う上記時間差が流量計測制御回路400により質量流量に変換される。
【0058】
ここで、上記センサチューブ140を加振器160により振動させて被測流体の流量を計測する場合の原理について図5及び図6を参照して説明する。図5は加振器160がセンサチューブ140を振動させる状態を模式的に示す図である。図6は振動するセンサチューブ140に作用するコリオリ力を模式的に示す図である。
【0059】
図5に示されるように、流量計測時は、加振器160の励振コイル160aに対して上記流量計測制御回路400の励振回路440から正負のある交番電圧(交流信号)が交互に出力されることで、励振コイル160aとセンサチューブ150に設置されているマグネット160bに同じ値で反対方向の力が発生するので、センサチューブ140,150の中間部分とセンサチューブ15は共振状態で振動する。
【0060】
図6に示されるように、センサチューブ140の流入側と流出側とでは、逆方向のコリオリ力+F,−Fが作用する。これにより、センサチューブ140と150は、流入側と流出側とで振動に時間差が生じる。
【0061】
すなわち、センサチューブ140の中間部分140cが図5中一点鎖線で示すように駆動されるとき、図6中破線で示すようにセンサチューブ140の流入側にコリオリ力+Fが作用し、センサチューブ140の流出側にコリオリ力−Fが作用する。また、センサチューブ140が図5中破線で示すように駆動されるとき、図6中実線で示すようにセンサチューブ140の流入側にコリオリ力−Fが作用し、センサチューブ140の流出側にコリオリ力+Fが作用する。
【0062】
このセンサチューブ140の変位は、ピックアップ180,200のセンサコイル180a,200aにより検出され、流量計測制御回路400において、加振器16に入力された励振信号との時間差(位相差)Δtの信号に変換され、さらに流量パルスに変換される。即ち、流量計測制御回路400は、次式の演算を用いて質量流量Qmを算出する。
Qm=A・Δt…(1)
但し、(1)式において、Aは当該質量流量計固有の定数である。
【0063】
また、コリオリ力は、センサチューブ140の振動周波数と同じ周波数で作用する。しかしながら、外部からの雑音や振動などの外乱によって引き起こされたセンサチューブ140の捩れ振動は、センサチューブ140の振動周波数と異なった周波数である。そのため、外乱振動がセンサチューブ140に入力された場合、時間差Δtは、質量流量が一定であっても大きくなったり小さくなったりするというような現象が起こる。
【0064】
図7は流量計測制御回路400を示すブロック図である。図7に示されるように、流量計測制御回路400は、本質安全防爆バリア回路420、励振回路440、積分回路460、流量信号生成部(時間差信号生成部)470とを有する。励振回路440は、センサコイル200aの検出信号v1より得られた速度と、積分回路460により得られた振幅L2とに基づき、センサチューブ140、150が所定の振動周波数で振動するように励振コイル160aに対して駆動電圧Vを印加する。積分回路460は、センサコイル180a、200aからの検出信号(速度)v1,v2を積分して振幅(変位量)を演算し、センサチューブ140、150の流入側変位量L1、流出側変位量L2を出力する。
【0065】
また、流量信号生成部470は、第1の時間差演算回路480と、第2の時間差演算回路490と、第1の平均化回路500と、第2の平均化回路510と、補正演算回路520と、第1の流量換算回路530と、第2の流量換算回路540とを有する。
【0066】
第1の時間差演算回路480は、加振器160により所定の振動周波数でセンサチューブ140、150を加振したとき、一対のピックアップ180,200により得られた各検出信号の時間差aを高速で演算する。ここで、上記各検出信号の時間差aを高速で演算するとは、一対のピックアップ180,200より連続的に出力される各検出信号から当該各検出信号の時間差を所定時間未満(または所定の検出信号数未満)で演算することである。すなわち、第1の時間差演算回路480では、積分回路460により生成されたセンサコイル180a,200aからの各検出信号に対応する振幅信号の時間差aを短時間(例えば、1周期毎)で演算すると共に、当該時間差aの信号を加工せずにそのまま出力する。
【0067】
第2の時間差演算回路490は、一対のピックアップ180,200により得られた各検出信号の時間差bを詳細に演算する。ここで、上記各検出信号の時間差bを詳細に演算するとは、一対のピックアップ180,200より連続的に出力される各検出信号の時間差を所定時間以上(または所定の検出信号数以上)で第1の時間差演算回路480において時間差を演算するために使用された時間差の演算回数よりも多い回数分の時間差を演算し、当該演算された回数分の時間差の平均値を演算することである。すなわち、第2の時間差演算回路490では、積分回路460により生成されたセンサコイル180a,200aからの各検出信号に対応する振幅信号の時間差bを演算すると共に、例えば、時間差bの移動平均化処理を行なう。
【0068】
第2の時間差演算回路490は、時間差の変動周期に応じて時間差信号を平均化するフィルタリング回路と、時間差信号の振幅変化を測定する振幅変化測定回路と、振幅変化測定回路より出力された捩れ振動周波数、捩れ振動振幅より平均化時間(変動周期)を演算してフィルタ定数を変更するフィルタ定数変更回路とを有する。
【0069】
フィルタ定数変更回路は、コリオリ力以外の外乱によりセンサチューブ140,150が周期的に変動する場合に、その周期を求め、フィルタ定数を変更して変動周期に応じた平均化時間を演算する。また、フィルタリング回路は、フィルタ定数変更回路から出力されたフィルタ定数に基づいて時間差信号を平均化する。この演算処理により、各検出信号の時間差bを詳細に演算することができる。
【0070】
第1の平均化回路500は、第1の時間差演算回路480から出力された時間差aの信号を予め設定された複数の振動に対する平均化処理を行なって平均値cを出力する。
【0071】
第2の平均化回路510は、第2の時間差演算回路490から出力された時間差bの信号を予め設定された複数の振動に対する平均化処理を行なって平均値dを出力する。
【0072】
補正演算回路520は、第1の時間差演算回路480より出力された時間差aから第1の平均化回路500より出力された平均値cを減算すると共に、第2の平均化回路510より出力された平均値dを加算し、これらの演算結果の時間差(a−c+d)を出力する。
【0073】
第1の流量換算回路530は、補正演算回路520より出力された時間差(a−c+d)を流量に換算して得られた流量制御用信号e(アナログ出力)を制御装置40に出力する。制御装置40は、第1の流量換算回路530より出力された流量制御用信号eを単位時間毎に積算して瞬時流量を演算し、現時点での瞬時流量が目標流量(図2のS24を参照)に達したか否かを確認する。
【0074】
第2の流量換算回路540は、第2の時間差演算回路490から出力された時間差bを流量に換算して得られた流量パルス信号f(デジタル出力)を制御装置40に出力する。制御装置40は、第2の流量換算回路540より出力された流量パルス信号fを積算して積算流量値を演算し、当該演算された積算流量値を流量表示器46に表示させる。
【0075】
ここで、補正演算回路520の演算処理について説明する。補正演算回路520は、時間差(a−c+d)の信号を出力するが、ガス供給開始当初は、第1の時間差演算回路480より出力された時間差aのみしか入力されていないため、制御装置40にガス供給開始と同時に時間差aを出力する。(ガス供給開始当初は、c=0、d=0)
従って、流量信号生成部470においては、第1の時間差演算回路480で高速演算された時間差aに基づく流量出力信号eを流量制御用信号として出力dされると共に、第2の時間差演算回路490で詳細に演算された時間差bに基づく流量パルス信号fを流量表示用信号として出力する。
【0076】
そのため、制御装置40は、ガス供給開始時の時点では、高速演算された時間差aに基づく流量出力信号eから得られた瞬時流量が目標流量に達するように生成された制御信号により制御弁24の弁開度を制御する。よって、ガス供給装置10は、ガス供給開始時における制御弁24の制御遅れに伴うガス供給遅れを解消することができる。
【0077】
また、補正演算回路520は、ガス供給開始から時間の経過と共に、第1の平均化回路500より出力された平均値cが徐々に大きくなるため、第1の時間差演算回路480より出力された時間差aから平均値cを減算した時間差(a−c)を流量に換算し、時間差(a−c)に基づく流量出力信号eを制御装置40に出力する。さらに、第2の平均化回路510より出力された平均値dが徐々に増大すると共に、第1の時間差演算回路480より出力された時間差aの平均値cが時間差aに近づき、やがてa≒cとなる。そのため、補正演算回路520から出力される時間差(a−b+d)は、ガス供給開始から所定時間が経過して流量が安定した時点では、誤差を含む時間差aが減少し、時間差a、bを平均化した平均値c、dの割合が増加した流量出力信号eとなる。そして、補正演算回路520から出力される時間差は、a≒cにより(a−c+d)≒dとなる。
【0078】
そのため、制御装置40は、制御弁24による流量制御が安定した時点で第2の平均化回路510より出力された時間差の平均値dを流量に換算して得られた流量制御用信号eを制御装置40に出力する。これにより、制御装置40は、時間差の平均値dに基づく正確な瞬時流量を目標流量と比較して生成された制御信号により制御弁24の弁開度を制御することが可能になる。
【0079】
ここで、ピックアップ180,200から出力されるセンサ信号(検出信号)の波形による時間差(位相差)について図8、図9を参照して説明する。また、図8、図9において、一定の流量を計測した場合の実験データであり、一定のコリオリ力が発生している。ここでは、正弦波の縦軸中央(センサ信号が0ボルト)の点での時間差Δtを測定したように図示してある。
【0080】
図8(A)(B)はピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。図8(A)に示されるように、流入側のセンサ信号S1(実線で示す)と流出側のセンサ信号S2(破線で示す)との時間差Δtは、コリオリ力によって生じた時間差であり、図8(B)に示されるように、流量が時間の経過と共に一定であれば、一定値となる。
【0081】
図9(A)(B)はセンサチューブ140,150に他の振動たとえばねじり振動が発生した場合に検出されたピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。図9(A)に示されるように、流入側のセンサ信号S1(実線で示す)と流出側のセンサ信号S2(破線で示す)との時間差Δtは、A領域でプラスであるが、B領域でほとんどゼロに変化し、C領域でプラスに戻る。通常の流量計測において、流量が変化した場合には、時間差Δtが流量変化に比例して増減する。
【0082】
しかしながら、センサチューブ140,150に他の振動、例えばねじり振動(外乱)が発生した場合には、時間差Δtが急速に増減したり、流量があるのにゼロに低下するといった現象が生じる。例えば、図9(B)に示されるように、領域Bの時間差Δtがゼロに低下した場合は、センサチューブ140,150に外乱によるねじり振動が発生したものと判定することが可能になる。このような捩れ振動の発生原因としては、センサチューブ140,150の加工誤差や加振器160,ピックアップ180,200の取付け位置のずれなどが考えられる。
【0083】
また、図9(A)に示すセンサ信号の波形では、ピックアップ180のセンサ信号S1とピックアップ200のセンサ信号S2は、時々刻々と時間軸方向の間隔すなわち時間差(位相差)が発生しており、図9(B)に示されるように、時間差Δtの測定結果(センサ信号S1とS2の時間差)には1周期ごとにばらつき(階段状に変化)が生じることが分かる。
【0084】
この時間差Δtの変動(ばらつき)は、周期的に発生するため、センサチューブ140,150にねじり振動によって生じているものと考えられる。そして、センサチューブ140,150にねじり振動が生じた場合、センサチューブ140,150の流入側と流出側とでは、一方で位相が進み、他方で位相が遅れため、流入側と流出側の時間差の平均値との差をとれば外乱成分が相殺されることになる。
【0085】
従って、流量計測制御回路400では、図7に示す回路構成(第1の平均化回路500、第2の平均化回路510)とすることにより、この時間差信号から捩れ振動の周波数、振幅を求め、ねじれ振動による外乱成分を除去するように演算している。すなわち、流量計測制御回路40においては、時間差信号に含まれるDC成分(これがコリオリ力による時間差)と時間差信号に含まれるAC成分(センサチューブ140,150が捩れて振動している信号)を分離することで、センサチューブ140,150のねじれ振動を検出し、その信号に応じて流量信号を生成する。
【0086】
図10にセンサチューブ140,150に流体を流した状態でねじれ振動(外乱)が加わった場合の時間差信号の変化をグラフI(破線)で示す。この一定流量を計測する状態において、時間差信号は、例えば、センサチューブ140,150のねじれ振動によって4周期に1回程度で時間差信号が上下(増減方向に変動)している。また、本実施例のセンサチューブ140,150を用いた場合には、4周期のn倍の周期のねじれ振動(外乱)による時間差信号成分が存在していることが実験データより分かる。
【0087】
ここで、第2の時間差演算回路490によりフィルタ処理および移動平均処理した場合の時間差信号の変化を見てみると、時定数固定とした場合のフィルタ処理のグラフII(図11参照)と平均時間固定の移動平均処理のグラフIII(図12参照)では、1周期の4分の1の周波数の成分が残っていることが分かる。(尚、図11の平均時間は、10周期に相当している。)
また、本実施例では、センサチューブ140,150のねじれ振動が4周期に1回起こっていることから、4周期の1回の倍数平均時間を平均時間となるように移動平均の処理を変えてみると、図12のグラフIVに示されるように、時間差のばらつきが減少しており、平均時間固定に比べ約1/2に減少し、フィルタ処理に比べて時間差信号の変動が約1/3に減少することが分かる。
【0088】
このように、センサチューブ140,150に発生したねじり振動の周期に応じた時間差信号の平均化処理を行うことにより、ねじり振動による時間差のばらつきを減少させることができ、振動式測定装置20による計測精度をより高めることが可能になる。特に、比較的比重の小さい水素やCNGなどの高圧ガスの質量流量を計測する場合には、計測感度を高めるためにセンサチューブ140,150の剛性や支持強度を下げることがある。このような、センサチューブ140,150の剛性や支持強度が低下した場合においては、前述したようなセンサチューブ140,150にねじれ振動(外乱)が発生することおそれがある。しかしながら、本実施例のように流量計測制御回路400においては、時間差信号に含まれるコリオリ力による時間差(位相差)とセンサチューブ140,150が捩れて振動している信号成分を分離することで、センサチューブ140,150のねじれ振動を検出し、その信号に応じて流量信号を移動平均する回路の定数を変更して、流量信号を生成するため、ねじれ振動(外乱)による信号成分を除去した時間差信号が得られ、流量計測精度が確保される。
【0089】
(変形例)
図13は流量計測制御回路400の変形例を示すブロック図である。尚、図13において、前述した図7に示す実施例と同一部分は、同じ符合を付してその説明を省略する。
【0090】
図13に示されるように、流量計測制御回路400Aは、本質安全防爆バリア回路420、励振回路440、積分回路460、流量信号生成部(時間差信号生成部)470Aとを有する。
【0091】
また、流量信号生成部470Aは、第1の時間差演算回路480と、第2の時間差演算回路490と、第1の平均化回路500と、第2の平均化回路510と、補正演算回路520と、第1の流量換算回路530と、第2の流量換算回路540と、切替回路560とを有する。
【0092】
第1の時間差演算回路480は、第1Aの時間差演算回路480Aと、第1Bの時間差演算回路480Bとを有する。第1Aの時間差演算回路480Aは、加振器160により所定の振動周波数でセンサチューブ140,150を加振して一対のピックアップ180,200により得られた各検出信号の立上がりの時間差a1を短時間(例えば、1周期毎)で演算すると共に、時間差a1の信号を加工せずにそのまま出力する。また、第1Bの時間差演算回路480Bは、加振器160により所定の振動周波数でセンサチューブ140,150を加振して一対のピックアップ180,200により得られた各検出信号の立下がりの時間差a2を短時間(例えば、1周期毎)で演算すると共に、時間差a2の信号を加工せずにそのまま出力する。
【0093】
第1の平均化回路500は、第1Aの平均化回路500Aと、第1Bの平均化回路500Bとを有する。第1Aの平均化回路500Aは、第1Aの時間差演算回路480Aから出力された時間差a1の信号を予め設定された複数の振動に対する平均化処理を行なって平均値c1を出力する。また、第1Bの平均化回路500Bは、第1Bの時間差演算回路480Bから出力された時間差a2の信号を予め設定された複数の振動に対する平均化処理を行なって平均値c2を出力する。
【0094】
補正演算回路520は、第1Aの補正演算回路520Aと、第1Bの補正演算回路520Bとを有する。第1Aの補正演算回路520Aは、第1Aの時間差演算回路480Aより出力された立上がり時間差a1から第1Aの平均化回路500Aより出力された立上がり時間差a1の平均値c1を減算すると共に、第2の平均化回路510より出力された平均値dを加算し、これらの演算結果の時間差g1=(a1−c1+d)を出力する。また、第1Bの補正演算回路520Bは、第1Bの時間差演算回路480Bより出力された立下がり時間差a2から第1Bの平均化回路500Bより出力された立下がり時間差a2の平均値c2を減算すると共に、第2の平均化回路510より出力された平均値dを加算し、これらの演算結果の時間差g2=(a2−c2+d)を出力する。
【0095】
切替回路560は、デジタル回路でいうところのオア回路に相当する回路であり、積分回路460から入力された振幅L1の信号をトリガにして第1Aの補正演算回路520Aまたは第1Bの補正演算回路520Bから出力された時間差の信号g1,g2を第1の流量換算回路530に対して交互に出力するように信号出力系統を切替える。
【0096】
従って、第1の流量換算回路530は、第1Aの補正演算回路520Aまたは第1Bの補正演算回路520Bから出力された時間差の信号g1,g2が交互に入力されるため、信号g1,g2を継ぎ目なく流量に換算して得られた流量制御用信号e(アナログ出力)を制御装置40に出力する。尚、第1Aの補正演算回路520A及び第1Bの補正演算回路520Bの演算処理は、前述した実施例の補正演算回路520の演算処理と同様であるので、その説明を省略する。
【0097】
ここで、ピックアップ180,200で検出されるセンサ信号及び流入側、流出側の時間差の信号について説明する。
【0098】
図14はピックアップ180,200から出力される信号をx,y座標で描いた場合の図形を示す図である。図14に示されるように、ピックアップ180,200から出力される検出信号に時間差がある場合、リサージュ波形Rとなり、右上がりの45度に傾いた楕円形で表せる。
【0099】
ピックアップ180,200から出力される検出信号は、センサコイル180a,200aとマグネット180b,200bとの相対位置によって直線性の曲がりが同時に発生することや、センサチューブ140,150の位置関係などの誤差によって、図10に示されるようにゼロ点を中心に対称にはならない。ゼロ点は、センサコイル180a,200aがゼロVの電圧(検出信号)を出力する位置であり、実際にはセンサチューブ140,150が振動していない状態(停止しているとき)のときの位置である。
【0100】
図15はリサージュ波形の立上がり、立下がりを拡大して示す図である。図15に示されるように、ピックアップ180,200から出力される検出信号v1,v2の立上がりのゼロ点での時間差Δt1、ピックアップ180,200から出力される検出信号v1,v2の立下がりのゼロ点での時間差Δt2となる(Δt1>Δt2)。従って、ピックアップ180,200の位置やセンサチューブ140,150の加工誤差によって、被測流体の流量が一定でも立上がりと立下がりで時間差Δt1,Δt2が異なった値で検出される。
【0101】
また、リサージュ波形の立上がり、立下がりを時系列的に並べると、図16(A)〜(D)のように表せる。図16(A)に示されるように、リサージュ波形の立上がり、立下がりのゼロ点付近の信号は、振動周波数に応じた時間間隔で交互に検出される。
【0102】
図16(B)に示されるように、立上がりの時間差Δt1、立下がりの時間差Δt2を時間軸方向に並べると、時間差Δt1と時間差Δt2のベクトル(横実線で示す)が時間差の大、小で縦軸方向にずれた位置(半周期毎)で時間軸方向に交互に検出される。すなわち、立上がりの時間差Δt1、立下がりの時間差Δt2を半周期毎に交互に検出することにより、
図16(C)に示されるように、立上がりの時間差Δa1のベクトル(細い横実線で示す)と立上がりの時間差の平均値c1のベクトル(太い横実線で示す)とが縦軸方向にずれた位置で時間軸方向に所定間隔で検出される。
【0103】
図16(D)に示されるように、立下がりの時間差Δa2のベクトル(細い横実線で示す)と立上がりの時間差の平均値c2のベクトル(太い横実線で示す)とが縦軸方向にずれた位置で時間軸方向に所定間隔で検出される。
【0104】
そして、立上がりの時間差Δa1、平均値c1は、立下がりの時間差Δa2、平均値c2と時間軸方向にずれて交互に検出されるため、図13に示す第1Aの補正演算回路520Aまたは第1Bの補正演算回路520Bにおいては、時間差の信号g1,g2が所定時間間隔で交互に出力される。そのため、立上がりの時間差Δa1または立下がりの時間差Δa2の何れか一方のみによって流量信号を生成すると、被測流体が連続して計測されているのに流量信号が間欠的に出力されることになり、被測流体が計測されない時間が存在してしまう。
【0105】
よって、本変形例の流量計測制御回路400Aでは、立上がりの時間差Δa1と立下がりの時間差Δa2とが時間軸上で交互に検出されると共に、切替回路560において、入力された時間差の信号g1,g2を第1の流量換算回路530に交互に出力するように切替えることで、時間差の信号を連続して生成する可能になる。
【0106】
また、流量計測制御回路400Aでは、立上がりの時間差Δa1と立下がりの時間差Δa2により、半周期毎に第2の平均化回路510により詳細に演算された平均値dと合致する信号が得られることから、切替回路560により半周期毎に時間差の信号g1,g2を切替えても流量制御用信号eは変化せず、被測流体の流量に応じた安定した信号として出力される。よって、流量計測制御回路400Aによれば、立上がりの時間差Δa1と立下がりの時間差Δa2とを半周期毎に計測すると共に、時間差の信号g1,g2を第1の流量換算回路530に交互に出力することにより、制御弁24の制御遅れを防止し、且つ計測精度を高めることが可能になる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
尚、上記実施例では、センサチューブ140,150の形状を逆U字状に形成した場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、他の形状(例えば、直管状、流入側端部と流出側端部との間隔を狭くしたΩ形状、あるいはJ字状に曲げた形状など)でも良いのは勿論である。
【0108】
また、上記実施例では、計測される高圧流体として水素やCNGを例示したが、これ以外の高圧ガスを計測する場合にも適用できるのは言うまでもない。
【0109】
また、上記実施例では、被測流体の質量流量を測定する場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、被測流体の密度を測定する密度計にも本発明を適用することができるのは勿論である。
【0110】
また、上記実施例では、回路動作の説明をアナログ回路を用いて行なったが、全ての演算処理をデジタル値で行なうことも可能である。デジタル回路を用いる場合は、時間差の演算をソフトウエアにより行なうので、演算時間を短縮できるか否かによって詳細な演算と高速演算とを区別しても良い。また、高速演算をデジタル回路で行なう場合には、演算時間を短縮するため、近似値を用いても平均値が一致することになるので、流量制御用信号で流量を積算することにより、流量積算用信号を積算した場合と同じ精度が得られ、且つ応答性の高い測定装置を実現することができる。
【符号の説明】
【0111】
10 ガス供給装置
12 自動車
14 燃料タンク
16 ディスペンサユニット
18 ガス供給経路
20 振動式測定装置(質量流量計)
22 ガス供給開閉弁
24 制御弁
26 圧力伝送器
28 ガス充填ホース
30 三方弁
32 脱圧管路
34 ガス充填カップリング
40 制御装置
42 充填開始スイッチ釦
44 充填停止スイッチ釦
46 流量表示器
50 レセプタクル
120 マニホルド
140,150 センサチューブ
140a,150a 流入側端部
140b,150b 流入側端部
140c,150c 中間部分
160 加振器
160a 励振コイル
160b マグネット
180 流入側ピックアップ
200 流出側ピックアップ
180a,200a センサコイル
180b,200b マグネット
400,400A 流量計測制御回路
420 本質安全防爆バリア回路
440 励振回路
460 積分回路
470,470A 流量信号生成部(時間差信号生成部)
480 第1の時間差演算回路
480A 第1Aの時間差演算回路
480B 第1Bの時間差演算回路
490 第2の時間差演算回路
500 第1の平均化回路
500A 第1Aの平均化回路
500B 第1Bの平均化回路
510 第2の平均化回路
520 補正演算回路
520A 第1Aの補正演算回路
520B 第1Bの補正演算回路
530 第1の流量換算回路
540 第2の流量換算回路
560 切替回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測流体が流れるセンサチューブと、該センサチューブを振動させる加振器と、前記センサチューブの上流側部分と下流側部分の各変位を検出する一対のピックアップと、該一対のピックアップより出力された検出信号の時間差信号を生成する時間差信号生成部とを有する振動式測定装置において、
前記時間差信号生成部は、
前記一対のピックアップにより得られた各検出信号の時間差を高速で演算する第1の時間差演算回路と、
前記一対のピックアップにより得られた各検出信号の時間差を詳細に演算する第2の時間差演算回路と、
を備えたことを特徴とする振動式測定装置。
【請求項2】
前記時間差信号生成部は、
前記第1の時間差演算回路で高速演算された時間差の信号を流量制御用信号として出力すると共に、前記第2の時間差演算回路で詳細に演算された時間差を流量表示用信号として出力することを特徴とする請求項1に記載の振動式測定装置。
【請求項3】
前記時間差信号生成部は、
前記第1の時間差演算回路で高速演算された前記時間差を平均化する第1の平均化回路と、
前記第2の時間差演算回路で詳細に演算された時間差を平均化する第2の平均化回路と、
前記第1の時間差演算回路で高速演算された前記時間差から前記第1の平均化回路より出力された第1の平均値を減算すると共に、前記第2の平均化回路より出力された第2の平均値を加算する補正演算回路と、
を有することを特徴とする請求項1または2に記載の振動式測定装置。
【請求項4】
前記第1の時間差演算回路は、前記一対のピックアップより出力された検出信号の立上がりの時間差及び立下がりの時間差を演算し、
前記第1の平均化回路は、前記立上がりの時間差及び立下がりの時間差を平均化し、
前記補正演算回路は、前記立上がりの時間差及び立下がりの時間差から前記立上がり及び立下がり時間差の平均値を減算すると共に、前記第2の平均化回路より出力された第2の平均値を加算することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の振動式測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−223804(P2010−223804A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72127(P2009−72127)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(水素安全利用等基盤技術開発 水素インフラに関する研究開発 水素充てん機の実用化技術の開発、産業活力再生特別措置法第30条の適用を受けるもの)
【出願人】(000110099)トキコテクノ株式会社 (264)
【Fターム(参考)】