説明

振動式測定装置

【課題】本発明は、センサチューブの振幅の増大を抑制することを課題とする。
【解決手段】振動式測定装置20は、マニホルド120と、マニホルド120の上面に接続され、平行に形成されたセンサチューブ140,150と、センサチューブ140,150の円弧状の中間部分140c,150c間に取り付けられた加振器160と、センサチューブ140と150との流入側の相対変位を検出する流入側ピックアップ180と、センサチューブ140と150との流出側の相対変位を検出する流出側ピックアップ200とを有する。マニホルド120の上部には、金属ケース170が取り付けられている。金属ケース170の内壁には、センサチューブ140,150の中間部分140c,150cに対向する位置にセンサチューブ140,150の振幅を抑制する振幅抑制部材220が固定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は振動式測定装置に係り、特に被測流体が流れるセンサチューブを振動させて質量に応じたセンサチューブの上流側、下流側の変位をピックアップにより検出し、上流側、下流側の変位の位相差(時間差)から被測流体の密度、質量流量を測定するよう構成された振動式測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被測流体が流れる流路を有するセンサチューブを振動させて被測流体の物理量(質量や密度など)を測定する測定装置として、コリオリ式質量流量計または振動式密度計と呼ばれる振動式測定装置がある。以下では、被測流体の質量流量を測定するコリオリ式質量流量計について説明する。
【0003】
この振動式測定装置では、例えば、被測流体の質量流量を測定する場合、被測流体が流れるセンサチューブを当該センサチューブの固有振動数(共振周波数)で加振器により管径方向に振動させ、小さな駆動力でセンサチューブの振幅を大きくすることで、質量流量に比例したコリオリ力によるセンサチューブの変位をピックアップにより検出するように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
センサチューブにおける被測流体の流速がゼロ(流量=ゼロ)のときは、上流側直管部分、下流側直管部分の相対変位が同じであるので、検出信号の時間差がゼロとなる。また、コリオリ力は、センサチューブの振動方向に働き、且つ上流側と下流側とで逆方向に作用するため、センサチューブの中間部分では捩れが生じる。すなわち、センサチューブにおける被測流体の流速がゼロ以上のときは、上流側直管部分における変位量に応じた検出信号は位相が進み、下流側直管部分における変位量に応じた検出信号は位相が遅れる。そのため、センサチューブの捩れ角に応じて得られた両検出信号の時間差が質量流量に比例する。
【0005】
また、センサチューブは、ステンレス材などの金属パイプからなり、例えば、コリオリ力の検出感度を上げるために、肉薄パイプを使用した場合、温度の影響を受けやすくなる。さらに、センサチューブを流れる被測流体の温度が大幅に上昇したり、低下した場合には、センサチューブの弾性係数(ヤング率)が変化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭58−117416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記従来の振動式測定装置においては、例えば、被測流体の温度変化に伴ってセンサチューブの弾性係数が変化した場合、同じ加振力でセンサチューブを振動させていてもセンサチューブの振幅が大きくなってしまうことがあり、センサチューブ自体が変形するおそれがあった。
【0008】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、上記課題を解決した振動式測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明は以下のような手段を有する。
(1)本発明は、被測流体が流れるセンサチューブと、
該センサチューブを収納するケースと、
前記センサチューブを加振する加振器と、
前記加振器による加振力を制御する励振制御手段と、
前記センサチューブの流入側、流出側の変位を検出する変位検出器と、
前記変位検出器の検出信号から流入側変位と流出側変位との時間差を計測する計測制御手段と、
を備えた振動式測定装置において、
前記センサチューブの振幅が所定以上に増幅された場合に前記センサチューブの振動を抑制する振幅抑制部材を前記ケースの内壁に設けたことを特徴とする。
(2)本発明の前記計測制御手段は、前記センサチューブが前記振幅抑制部材に当接することで前記変位検出器より得られた出力波形の形状が変化した場合に異常発生と判定する波形監視手段を備えたことを特徴とする。
(3)本発明の前記励振制御手段は、前記波形監視手段により異常発生と判定された場合に前記加振器による加振力を低下または停止させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、例えば、被測流体の温度上昇に伴ってセンサチューブの弾性係数が変化してセンサチューブの振幅が大きくなった場合でもセンサチューブの振動を抑制することができ、センサチューブの振幅が所定以上に増幅された場合でもセンサチューブが変形することを防止ができる。
また、本発明によれば、変位検出器より得られた出力波形を監視することにより、センサチューブが振幅抑制部材に当接したことを判定することが可能になる。
【0011】
また、本発明によれば、異常発生と判定された場合に加振器による加振力を低下または停止させるため、センサチューブが振幅抑制部材に当接することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明による振動式測定装置の一実施例が適用されたガス供給装置を模式的に示す系統図である。
【図2】図1に示すガス供給装置の制御装置が実行する制御処理を説明するためのフローチャートである。
【図3】本発明による振動式測定装置の一実施例の正面図である。
【図4】図3に示す振動式測定装置の側面図である。
【図5】加振器160がセンサチューブ140を振動させる状態を模式的に示す図である。
【図6】振動するセンサチューブ140に作用するコリオリ力を模式的に示す図である。
【図7】ピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。
【図8】センサチューブ140,150に他の振動たとえばねじり振動が発生した場合に検出されたピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。
【図9】流量計測制御回路300の構成を示すブロック図である。
【図10】ピックアップ180,200のセンサ信号の波形図であり、(A)は正常な場合、(B)は振幅が増大した場合の波形図である。
【図11】波形監視回路が実行する制御処理1を説明するためのフローチャートである。
【図12】波形監視回路が実行する制御処理2を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は本発明による振動式測定装置の一実施例が適用されたガス供給装置を模式的に示す系統図である。図1に示されるように、ガス供給装置10は、例えば自動車12の燃料タンク(被充填タンク)14に都市ガスを所定圧力に圧縮した圧縮天然ガス(CNG)を供給するガス供給ステーションなどに設置されている。
【0015】
ガス供給装置10は、大略、都市ガスを所定圧力に圧縮し加圧されたガスを生成する圧力発生ユニット(図示せず)と、圧力発生ユニットにより圧縮されたガスを燃料タンク14に供給するためのディスペンサユニット16とを有する。
【0016】
また、ディスペンサユニット16のガス供給経路18には、上流側から順に、ガス供給経路18を流れるガスの供給量を計測する質量流量計としての振動式測定装置20と、電磁弁よりなりガス供給経路18を開又は閉とするガス供給開閉弁22と、下流側(被充填側)へ供給されるガスの流量・圧力を制御する制御弁24と、制御弁24により制御された2次圧力を測定する圧力伝送器(圧力トランスミッタ)26とが配設されている。
【0017】
さらに、ガス供給経路18の下流側端部には、ガス充填ホース28が連通されており、ガス充填ホース28の下流側端部には、電磁駆動式の三方弁30が接続されている。三方弁30は、ガス充填ホース28が接続された流入ポートaと、脱圧管路32が接続された排気ポートbと、ガス充填カップリング34が接続された充填ポートcとを有する。この三方弁30は、ガス充填時に流入ポートaと充填ポートcとが連通された開弁状態に切替えられ、ガス充填完了後の脱圧操作を行う際に排気ポートbと充填ポートcとが連通するように切替えられてガス充填カップリング34内の圧力を減圧する。
【0018】
また、圧力伝送器26は、ガス供給開閉弁22、制御弁24の下流に配置され、三方弁30を流入ポートaと充填ポートcとが連通された開弁状態に切替えることにより、燃料タンク14に連通されたガス供給経路18の圧力を測定することで、間接的に燃料タンク14の残留圧力を測定することができる。
【0019】
さらに、ディスペンサユニット16には、制御装置40、充填開始スイッチ釦42、充填停止スイッチ釦44、流量表示器46が配設されている。ディスペンサユニット16の制御装置40は、充填開始スイッチ釦42がオンに操作されると、ガス供給経路18に設けられたガス供給開閉弁22の開閉制御、三方弁30の切替制御を行なうと共に、振動式測定装置20により測定された流量測定値、及び圧力伝送器26により測定された圧力測定値に基づいて制御弁24の弁開度制御を行なうことで、燃料タンク14に目標圧力のガスを充填する。
【0020】
また、制御装置40は、振動式測定装置20及び圧力伝送器26から出力された流量及び圧力の検出信号により燃料タンク14に供給された供給量及び供給圧力を演算する。
【0021】
上記振動式測定装置20は、被測流体が流れる流路を有するセンサチューブを振動させ、この振動する流路内を流れるガス流量に応じたコリオリ力による管路の流入側と流出側との時間差が流量に比例することを利用して流量計測を行うコリオリ式質量流量計である。尚、振動式測定装置20の詳細は、後述する。
【0022】
また、制御弁24は、制御装置40からの指令により弁開度が制御されて燃料タンク14へ供給されるガス供給量(流量は圧力×時間により求まる)を制御する。
【0023】
また、自動車12では、ディスペンサユニット16のガス充填カップリング34が連結される被充填側のレセプタクル50と、レセプタクル50と燃料タンク14とを連通する管路52と、管路52に配設され、燃料タンク14に充填されたガスの逆流を防止する逆止弁54とを有する。
【0024】
制御装置40のメモリ(ROM)には、ガス供給経路18の下流端部が燃料タンク14側に連結された状態で、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を開としてガス供給経路18に所定圧力のガスを供給する制御プログラムが格納されている。そして、制御装置40は、後述するようにメモリに格納された各制御プログラムを読み込んでガス供給開閉弁22の開閉制御、三方弁30の切替制御を行なうと共に、振動式測定装置20により測定された流量、及び圧力伝送器26により測定された圧力測定値に基づいて制御弁24の弁開度制御を実行する。
【0025】
次に上記構成になるガス供給装置10におけるガス充填作業について説明する。上記自動車12の燃料タンク14にガスを充填する際、作業者は、先ず、ディスペンサユニット15の掛止部(図示せず)からガス充填カップリング34を外して自動車12のレセプタクル50に結合させる。そして、作業者は、充填開始スイッチ釦42をオンに操作する。
【0026】
これにより、制御装置40は、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を開弁させて三方弁30より上流のガス供給経路18を最大供給圧力(目標圧力)に昇圧させる。次に、制御装置40は、ガス供給開閉弁22を閉弁させてから三方弁30を開弁状態(ポートa−c連通)に切替えてガス供給開閉弁22より下流のガス供給経路18に充填されたガスを燃料タンク14に供給する。尚、上記所定圧力は、燃料タンク14の上流に設けられた逆止弁54の閉弁力(弁体を付勢する力)より十分大きい圧力値に設定されている。
【0027】
そして、制御装置40は、ガス供給開閉弁22より下流のガス供給経路18の圧力が燃料タンク14の圧力と均衡した状態になったとき、圧力伝送器26により測定された圧力測定値をメモリに記憶し、この圧力測定値に基づいて燃料タンク14の容積及び残留ガス量を演算し、この燃料タンク14の容積及び残留ガス量に応じた制御則(一定圧力制御あるいは一定流量制御)により制御弁24の弁開度を制御する。
【0028】
燃料タンク14へのガス供給が行なわれて圧力伝送器26により測定された圧力測定値が目標圧力に達すると、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を閉弁した後、三方弁30を脱圧状態に切替えてガス充填カップリング34の圧力を減圧する。これにより、作業者は、軽い力でガス充填カップリング34を自動車12のレセプタクル50から分離させることが可能になる。
【0029】
その後、作業者は、ディスペンサユニット16のガス充填カップリング34を掛止部(図示せず)に掛止させる。そして、充填停止釦44がオンに操作されると、一連のガス充填作業が完了する。
【0030】
ここで、上記構成になるガス供給装置10の制御装置40が実行するガス供給制御処理につき図2のフローチャートを参照して説明する。
【0031】
制御装置40は、図2のS11において、ガス充填カップリング34が自動車12のレセプタクル50に結合されて充填開始スイッチ釦42がオンに操作されると(YESの場合)、S12に進み、燃料タンク14に充填すべき最大供給圧力(目標圧力)Pをメモリから読み込む。続いて、S13に進み、三方弁30を脱圧状態(流入ポートaが閉止、排気ポートbと充填ポートcとが連通)に切替える。尚、前回のガス供給終了時には、三方弁30を脱圧状態に切替えているが、本実施例では、三方弁30より上流側のガス供給経路18を確実に密閉させるため、三方弁30の流入ポートaを閉止させる。
【0032】
次のS14では、ガス供給開閉弁22及び制御弁24を開弁させる。これにより、三方弁30より上流のガス供給経路18に圧力発生ユニットで生成された高圧ガスが供給される。そのため、三方弁30より上流のガス供給経路18を瞬時に最大供給圧力(目標圧力)に昇圧させることができる。
【0033】
続いて、S15に進み、圧力伝送器26により測定された圧力測定値を読み込み、測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したか否かをチェックする。このS15において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したときは(YESの場合)、S16に進み、ガス供給開閉弁22を閉弁させてガス供給経路18へのガス供給を停止させる。続いて、S17では、三方弁30を開弁状態(流入ポートaと充填ポートcとが連通、排気ポートbが閉止)に切替える。これにより、ガス供給開閉弁22と三方弁30との間のガス供給経路18に充填されたガスは、ガス充填カップリング34、レセプタクル50を介して逆止弁54を開弁させ、自動車12の燃料タンク14に供給される。
【0034】
次のS18では、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pより低下したか否かをチェックする。このS18において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が低下した場合(YESの場合)、S19に進み、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が所定時間一定値を維持するか否かをチェックする。このS19において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が低下している場合(NOの場合)には、測定された圧力測定値が所定時間一定値を維持するまでS18,S19の処理を繰り返して待機状態となる。
【0035】
そして、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が所定時間一定値を維持した場合には、S20に進み、この一定圧力値を燃料タンク14に残留している充填前タンク圧力値Ptとして記憶する。続いて、S21では、燃料タンク14の容積を上記充填前タンク圧力値Ptから演算する。尚、この燃料タンク14の容積を求める演算式としては、例えば、ガス供給開閉弁22と三方弁30との間のガス供給経路18の容積と、この容積に充填されたガス量(振動式測定装置20の流量測定値)との関係式から求まり、既に周知であるので、その詳細な説明は省略する。
【0036】
次のS22では、ガス供給開閉弁22を開弁して燃料タンク14に対するガス供給を開始すると共に、制御弁24の弁開度を燃料タンク14の容積に応じた制御則(定圧力上昇制御または定流量制御など)により制御する。これにより、燃料タンク14へのガス供給が行なわれ、タンク圧力も徐々に上昇する。
【0037】
S23では、振動式測定装置20によりガス供給経路18を流れるガス流量を計測しており、振動式測定装置20から出力された流量パルスを積算して瞬時流量及び積算流量(燃料タンク14に充填されたガス量)を演算する。S23aでは、現時点での積算流量を流量表示器46に表示する。これにより、流量表示器46に表示される積算流量の数値が随時更新される。
【0038】
次のS24では、現時点での積算流量が予め設定された制御則による目標流量に達したか否かをチェックする。S24において、現時点での積算流量が目標流量に達していないときは(NOの場合)、S25に進み、積算流量が目標流量に近づくように制御弁24の弁開度を制御する。その後は、S23に戻り、S23〜S25の処理を繰り返す。また、S24において、現時点での積算流量が目標流量に達したときは(YESの場合)、S26に進む。
【0039】
次のS26では、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したか否かをチェックする。このS26において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達しないときは(NOの場合)、S23に戻り、S23〜S26の処理を繰り返す。
【0040】
また、S26において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が最大供給圧力(目標圧力)Pに達したときは(YESの場合)、S27に進み、ガス供給開閉弁22、制御弁24を閉弁させてガス供給経路18へのガス供給を停止させる。そして、次のS28に進み、三方弁30を脱圧状態(流入ポートaが閉止、排気ポートbと充填ポートcとが連通)に切替える。これにより、ガス充填カップリング34及びレセプタクル50の圧力が減圧されると共に、逆止弁54が圧力差により閉弁する。この後、作業者は、ガス充填カップリング34をレセプタクル50から分離させてディスペンサユニット16の掛止部(図示せず)に掛止させる。これで、燃料タンク14に対するガス供給作業が終了する。
【0041】
また、上記S18において、圧力伝送器26により測定された圧力測定値が低下しない場合には、ガス供給開閉弁22が閉弁できない等の異常が発生しているため、S29に進み、警報を発した後、S28に進み、三方弁30を脱圧状態(流入ポートaが閉止、排気ポートbと充填ポートcとが連通)に切替えてガス供給を中止する。
【0042】
ここで、振動式測定装置20の構成について説明する。
【0043】
図3は本発明による振動式測定装置の一実施例の正面図である。図4は振動式測定装置の側面図である。尚、振動式測定装置は、被測流体の密度、及び密度を利用して質量流量を求めることができるため、振動式密度計及びコリオリ式質量流量計として用いられる。振動式密度計とコリオリ式質量流量計とは、同様な構成であるので、本実施例では質量流量計として用いた場合について詳細に説明する。
【0044】
図3及び図4に示されるように、振動式測定装置20は、マニホルド120と、マニホルド120の上面に接続され、平行に形成された逆U字状のセンサチューブ140,150と、センサチューブ140,150の円弧状の中間部分140c,150c間に取り付けられた加振器160と、センサチューブ140と150との流入側の相対変位を検出する流入側ピックアップ(変位検出器)180と、センサチューブ140と150との流出側の相対変位を検出する流出側ピックアップ(変位検出器)200を有する。マニホルド120は、例えば、直方体形状の金属ブロックからなり、一方の端部に流入口120aが設けられ、他方の端部に流出口120bが設けられている。そして、センサチューブ140,150の流入側端部140a,150aが流入口120aに連通され、センサチューブ140,150の流出側端部140b,150bが流出口120bに連通されている。従って、流入口120aに流入された流体は、センサチューブ140,150を通過して流出口120bより外部に流出される。
【0045】
マニホルド120の上部には、ステンレス板などからなる金属ケース170が取り付けられている。金属ケース170は、底部が開口となった箱状に形成されており、センサチューブ140,150全体を収納する大きさに形成されている。また、金属ケース170の内壁には、センサチューブ140,150の中間部分140c,150cに対向する位置に振幅抑制部材220が固定されている。
【0046】
振幅抑制部材220は、例えば、ゴムやフエルト等の弾性材により形成されており、センサチューブ140,150の中間部分140c,150cが通常の振幅以上に振動した場合に中間部分140c,150cが当接するY方向位置に突出している。すなわち、振幅抑制部材220は、センサチューブ140,150の中間部分140c,150cが通常よりも大きく振動した場合、センサチューブ140,150の振動を吸収すると共に中間部分140c,150cの最大振幅が小さくなるように振動を抑制する。
【0047】
例えば、被測流体の温度が上昇した場合には、センサチューブ140,150の弾性係数(ヤング率)が変化してセンサチューブ140,150の振幅が規定以上に増幅されることがある。このような場合でもセンサチューブ140,150の中間部分140c,150cは、振幅抑制部材220に当接することで振動による加速度を減速されると共に、金属ケース170の内壁に衝突することが防止される。
【0048】
図4に示されるように、センサチューブ140,150の中間部分140c,150cと振幅抑制部材220との間には、寸法Ya、Ybの隙間が形成されている。そのため、中間部分140c,150cが寸法Ya、Yb以上の振幅で振動した場合には、中間部分140c,150cが振幅抑制部材220に当接して振幅を規制されるため、センサチューブ140,150が変形することが防止されると共に、センサチューブ140,150に過大な力が作用して金属ケース170を強打することも防止される。
【0049】
加振器160は、センサチューブ140の先端に取り付けられた励振コイル160aとセンサチューブ150の先端に取り付けられたマグネット160bからなる。また、ピックアップ200は、センサチューブ140に取り付けられたセンサコイル200aと、センサチューブ150に取り付けられたマグネット200bとからなる。尚、ピックアップ180は、図4において、ピックアップ200と重なってみえないが、ピックアップ200と同様に、振動するセンサチューブ140に取り付けられたセンサコイル180aと、センサチューブ150に取り付けられたマグネット180bとからなる。
【0050】
また、センサチューブ140,150の流入側またはマニホルド120の流入口120a付近の温度を測定する温度センサ210が設けられている。
【0051】
加振器160、流入側ピックアップ180、流出側ピックアップ200は、図3に示すように正面からみてセンサチューブ140,150の中間位置を横切る縦線に対して対称に、且つ加振器160を中心に流入側ピックアップ180と流出側ピックアップ200とが対称に設けられている。そして、加振器160は流量計測制御回路300により駆動制御され、流入側ピックアップ180、流出側ピックアップ200により検出された検出信号は、流量計測制御回路300に入力される。
【0052】
加振器160は、励振コイル160aに正負のある交番電圧(交流信号)が印加されて生じる磁界に対してマグネット160bが吸引または反発することで、センサチューブ140の中間部分を水平方向(Y方向、図4参照)に振動させる。当然センサチューブ150へはその反力として同じ力が働き、反対方向に振動する。
【0053】
流入側ピックアップ180のセンサコイル180aは、センサコイル180aとマグネット180bの変位量に応じた検出信号(電圧)v1を出力する。また、流出側ピックアップ200のセンサコイル200aは、センサコイル200aとマグネット200bの変位量に応じた検出信号(電圧)v2を出力する。
【0054】
ここで、振動式測定装置20による計測動作について説明する。
【0055】
上記構成になる振動式測定装置20において、流量計測時は流量計測制御回路300によって加振器160が駆動され、センサチューブ140および150の振動特性(固有振動数)に応じた周期、振幅でセンサチューブ140,150の中間部分140c,150c(図3、図4参照)を振動させる。そして、センサチューブ140,150は、マニホルド120に固定された両端を支点として近接、離間方向(Y方向、図4参照)に振動する。
【0056】
このとき、振動するセンサチューブ140と150に流体が流れると、その流量に応じた大きさのコリオリ力が発生する。そのため、センサチューブ140,150の流入側と流出側で動作遅れが生じ、これにより流入側ピックアップ180のセンサ信号と流出側ピックアップ200のセンサ信号との間に時間差が生じる。
【0057】
流量計測制御回路300は、上記流入側センサ信号と流出側センサ信号との時間差が流量に比例するため、当該時間差に基づいて流量を演算する。よって、センサチューブ140,150の変位が流入側ピックアップ180及び流出側ピックアップ200により検出されると、上記センサチューブ140,150の振動に伴う上記時間差が流量計測制御回路300により質量流量に変換される。
【0058】
ここで、上記センサチューブ140を加振器160により振動させて被測流体の流量を計測する場合の原理について図5及び図6を参照して説明する。図5は加振器160がセンサチューブ140を振動させる状態を模式的に示す図である。図6は振動するセンサチューブ140に作用するコリオリ力を模式的に示す図である。
【0059】
図5に示されるように、流量計測時は、加振器160の励振コイル160aに対して上記流量計測制御回路300の励振回路から正負のある交番電圧(交流信号)が交互に出力されることで、励振コイル160aとセンサチューブ150に設置されているマグネット160bに同じ値で反対方向の力が発生するので、センサチューブ140,150の中間部分とセンサチューブ15は共振状態で振動する。
【0060】
図6に示されるように、センサチューブ140の流入側と流出側とでは、逆方向のコリオリ力+F,−Fが作用する。これにより、センサチューブ140と150は、流入側と流出側とで振動に時間差が生じる。
【0061】
すなわち、センサチューブ140の中間部分140cが図5中一点鎖線で示すように駆動されるとき、図6中破線で示すようにセンサチューブ140の流入側にコリオリ力+Fが作用し、センサチューブ140の流出側にコリオリ力−Fが作用する。また、センサチューブ140が図5中破線で示すように駆動されるとき、図6中実線で示すようにセンサチューブ140の流入側にコリオリ力−Fが作用し、センサチューブ140の流出側にコリオリ力+Fが作用する。
【0062】
このセンサチューブ140の変位は、ピックアップ180,200のセンサコイル180a,200aにより検出され、流量計測制御回路300において、加振器160に入力された励振信号との時間差(位相差)Δtの信号に変換され、さらに流量パルスに変換される。即ち、流量計測制御回路300は、次式の演算を用いて質量流量Qmを算出する。
Qm=A・Δt…(1)
但し、(1)式において、Aは当該質量流量計固有の定数である。
【0063】
また、コリオリ力は、センサチューブ140の振動周波数と同じ周波数で作用する。しかしながら、外部からの雑音や振動などの外乱によって引き起こされたセンサチューブ140の捩れ振動は、センサチューブ140の振動周波数と異なった周波数である。そのため、外乱振動がセンサチューブ140に入力された場合、時間差Δtは、質量流量が一定であっても大きくなったり小さくなったりするというような現象が起こる。
【0064】
ここで、ピックアップ180,200から出力されるセンサ信号(検出信号)の波形による時間差(位相差)について図7、図8を参照して説明する。また、図7、図8において、一定の流量を計測した場合の実験データであり、一定のコリオリ力が発生している。ここでは、正弦波の縦軸中央(センサ信号が0ボルト)の点での時間差Δtを測定したように図示してある。
【0065】
図7(A)(B)はピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。図7(A)に示されるように、流入側のセンサ信号S1(実線で示す)と流出側のセンサ信号S2(破線で示す)との時間差Δtは、コリオリ力によって生じた時間差であり、図7(B)に示されるように、流量が時間の経過と共に一定であれば、一定値となる。
【0066】
図8(A)(B)はセンサチューブ140,150に他の振動たとえばねじり振動が発生した場合に検出されたピックアップ180,200のセンサ信号の波形図である。図8(A)に示されるように、流入側のセンサ信号S1(実線で示す)と流出側のセンサ信号S2(破線で示す)との時間差Δtは、A領域でプラスであるが、B領域でほとんどゼロに変化し、C領域でプラスに戻る。通常の流量計測において、流量が変化した場合には、時間差Δtが流量変化に比例して増減する。
【0067】
しかしながら、センサチューブ140,150に他の振動、例えばねじり振動(外乱)が発生した場合には、時間差Δtが急速に増減したり、流量があるのにゼロに低下するといった現象が生じる。例えば、図8(B)に示されるように、領域Bの時間差Δtがゼロに低下した場合は、センサチューブ140,150に外乱によるねじり振動が発生したものと判定することが可能になる。このような捩れ振動の発生原因としては、センサチューブ140,150の加工誤差や加振器160、ピックアップ180,200の取付け位置のずれなどが考えられる。
【0068】
また、図8(A)に示すセンサ信号の波形では、ピックアップ180のセンサ信号S1とピックアップ200のセンサ信号S2は、時々刻々と時間軸方向の間隔すなわち時間差(位相差)が発生しており、図8(B)に示されるように、時間差Δtの測定結果(センサ信号S1とS2の時間差)には1周期ごとにばらつき(階段状に変化)が生じることが分かる。
【0069】
この時間差Δtの変動(ばらつき)は、周期的に発生するため、センサチューブ140,150にねじり振動によって生じているものと考えられる。そして、センサチューブ140,150にねじり振動が生じた場合、センサチューブ140,150の流入側と流出側とでは、一方で位相が進み、他方で位相が遅れため、流入側と流出側の時間差の平均値との差をとれば外乱成分が相殺されることになる。
【0070】
ここで、コリオリ力の演算方法について説明する。
【0071】
コリオリ力Fcは、次式(2)により求まる。
【0072】
Fc=2mvω・・・(2)
(2)式において、mは質量、vは速度、ωは角速度であるが、質量流量Qmは質量mと速度vをかけたものと等しい。
【0073】
ここで、加振器160の加振力Fとコリオリ力Fcは、90度の位相差があり、センサチューブ140、150の振幅に比例した加振力Fが必要となる。しかし、振幅を大きくすると、式(2)の角速度ωがそれに比例して大きくなるので、加振力Fとコリオリ力Fcとの比は、振幅に影響されない。
【0074】
コリオリ力Fcは、センサチューブ140、150を捩る力として働くが、センサチューブ140、150が捩じられる量は、ばね定数に反比例するので、温度が上がってヤング率が下がった場合には、励振している加振力Fと捩る力Fcとの比が同じでも温度上昇によりセンサチューブ140、150の剛性が低下して軟らかいので、時間差は増大することになる。また、これとは逆に、温度が下がってヤング率が上がった場合には、励振している加振力Fと捩る力Fcとの比が同じでも温度低下によりセンサチューブ140、150の剛性が増大するので、時間差は減少することになる。
【0075】
この温度変化に伴う時間差の変化分は、後述するヤング率演算回路においてヤング率が演算されることにより補正される。
【0076】
また、センサチューブ140、150は、完全に垂直に組み立てられることが難しいので、被測流体の温度が変化すると、センサチューブ140、150の伸縮によりセンサコイル180a,200aとマグネット180b,200bとの相対位置にずれが生じる。従って、被測流体が流れていないときでも上記理由により、温度変化に応じてゼロ点(質量流量がゼロのときの時間差)がずれてしまうため、ヤング率以外のゼロ点補正が必要になる。
【0077】
図9は流量計測制御回路300を示すブロック図である。図9に示されるように、流量計測制御回路(計測制御手段)300は、本質安全防爆バリア回路420、励振回路(励振制御手段)440、振幅検出・励振・位相差検出回路(以下「位相差検出回路」という)460とを有する。
【0078】
励振回路440は、位相差検出回路460より得られた振幅信号Lと、バリア回路420から入力された速度信号v2に基づき、センサチューブ140、150が固有振動周波数の駆動電圧Vを加振器160の励振コイル160aに出力する。従って、加振器160は、励振回路440からの駆動電圧Vが励振コイル160aに入力されると共に、所定の加振用ゲインに応じた加振力を発生させてセンサチューブ140、150を加振する。
【0079】
また、励振回路440は、後述する波形監視回路(波形監視手段)700によりピックアップ180、200から出力されるセンサ信号の波形が正弦波(振幅正常の場合)から正弦波の頂部をカットした台形状波形(振幅異常の場合)に変化したことが検出されて異常検出による加振停止信号または加振用ゲインのゲイン低下信号が入力されると、励振コイル160aに出力する駆動電圧Vをゼロまたは1/2に低下させてピックアップ180、200の振幅を減少させる。そのため、被測流体の温度変化によりセンサチューブ140、150の弾性係数が変動した場合でもセンサチューブ140、150の振幅が抑制されてセンサチューブ140、150が変形することが防止される。
【0080】
さらに、流量計測制御回路300は、温度センサ210により検出された温度信号が入力されるバリア回路320、温度測定回路340、ヤング率演算回路360を有する。
【0081】
温度センサ210により検出された温度データが入力されたバリア回路320は、温度センサ210からの温度データを温度測定回路340に出力する。温度測定回路340は、温度センサ210からの温度データに対応した温度信号Tをヤング率演算回路360に出力する。ヤング率演算回路360は、温度測定回路340からの温度信号Tによりヤング率と連動するばね定数を補正する。
【0082】
また、流量計測制御回路300は、位相差検出回路460から出力された位相差(時間差)信号aをヤング率演算回路360から入力された温度補正値bに基づいて補正するゲイン可変アンプ500と、ヤング率・V/F変換を行って流量パルスcを出力する流量出力回路(流量信号出力手段)520と、位相差(時間差)の変動周期に応じて位相差信号aを平均化するフィルタリング回路(流量信号出力手段)540とを有する。
【0083】
センサチューブ140、150のばね定数が温度に応じたヤング率に比例するので、同じ質量流量を流したときのコリオリ力は同じであるものの、ばね定数がヤング率に比例しているので、ヤング率演算回路360においてヤング率の温度特性の補正を行なう。そして、ゲイン可変アンプ500は、ヤング率演算回路360から入力された温度補正値bに基づいてゲイン可変することで位相差信号aを補正する。
【0084】
また、ヤング率演算回路360から入力されたばね定数(ヤング率)の補正値bに基づいてゲイン可変アンプ500において補正された位相差信号aを入力された流量出力回路520は、ヤング率・V/F変換を行って流量パルス信号cを制御装置40に出力する。
【0085】
さらに、流量計測制御回路300は、位相差信号aの振幅変化を測定する振幅変化測定回路600と、振幅変化測定回路600より出力された捩れ振動周波数e、捩れ振動振幅fより平均化時間(変動周期)を演算してフィルタ定数gを変更するフィルタ定数変更回路620とを有する。
【0086】
フィルタ定数変更回路620は、コリオリ力以外の外乱によりセンサチューブ140,150が周期的に変動する場合に、その周期を求め、フィルタ定数を変更して変動周期に応じた平均化時間を演算する。フィルタリング回路540は、フィルタ定数変更回路620から出力されたフィルタ定数に基づいて時間差信号を平均化する。
【0087】
前述したように振動式測定装置20において、流量計測時は流量計測制御回路300によって加振器160が駆動され、センサチューブ140および150の振動特性に応じた周期、振幅でセンサチューブ140,150の中間部分140c,150cを振動させる。そして、センサチューブ140,150は、マニホルド120に固定された両端を支点として円弧状の中間部分140c,150cが近接、離間方向(Y方向、図4参照)に振動する。
【0088】
このとき、振動するセンサチューブ140と150に流体が流れると、その流量に応じた大きさのコリオリ力が発生する。そのため、センサチューブ140,150の流入側と流出側で動作遅れが生じ、これにより流入側ピックアップ180のセンサ信号v1と流出側ピックアップ200のセンサ信号v2との間に位相差が生じる。
【0089】
流量計測制御回路300は、上記流入側センサ信号と流出側センサ信号との位相差が流量に比例するため、当該位相差に基づいて流量を演算する。よって、センサチューブ140,150の変位が流入側ピックアップ180及び流出側ピックアップ200により検出されると、上記センサチューブ140,150の振動に伴う上記位相差が流量計測制御回路300により質量流量に変換される。
【0090】
例えば、振動式測定装置20を水素ディスペンサに設けて高圧水素の流量計測及び充填制御を行う場合、センサチューブ140,150を振動させて質量流量に比例するコリオリ力を流入側の振動波形と流出側の振動波形との差から測定する。高圧水素に耐えうるセンサチューブ140,150の肉厚では、発生する時間差が小さく現行の大きさや長さでは測定できない位相差(時間差)となってしまう。そのため、センサチューブ140,150の長さを伸ばしたり、マニホルド120との接続部分の間隔を振動ピックアップ取付位置の間隔よりも小さくすることでセンサチューブ140,150を捩れやすくして位相差を大きくすることが必要となってくる。しかし、コリオリ力に対する感度を上げることは、外部からの振動に対して弱くなることを意味しており、センサチューブ全体がコリオリ力と同じ方向に振動してしまい、長時間かかって減衰するような現象が見られる。
【0091】
そのため、コリオリ力による位相差(DC成分:流量)の他に外部からの振動(外乱)でセンサチューブ140,150が捩れるような振動が残る現象が発生することがある。この場合には、真の流量と異なった信号に基づいて流量制御することになり、流量がゼロのときに流量パルスを出力するためのゼロカット回路が動作して、実際の流量と異なった値を出力することになる。さらに、1周期ごとの流量信号のばらつきは長時間平均化するとゼロとなるが、ばらつきが大きい場合には、必要な精度にまで平均化するための時間が長くなる。
【0092】
そこで、本実施例では、位相差信号(時間差信号)の一周期ごとのばらつき(移動平均やフィルタした値との差)が大きい場合に、センサチューブ140,150が励振モードの他に、捩れ振動が存在して振動が異常となっていると判断する手段として振幅変化測定回路600と、その振動を抑制する制御回路としてフィルタ定数変更回路620、フィルタリング回路540を設けている。
【0093】
流量計測制御回路300において、コリオリ力に対しての位相差信号aは、DC成分であり、捩れ振動に対してはAC成分として観測される。そのため、測定した位相差信号aの一周期ごとに変化するAC成分のみを出力するフィルタリング回路540、振幅変化測定回路600及びフィルタ定数変更回路620を設け、振幅変化測定回路600でフィルタリング回路540の信号の大きさと周波数から外部振動によるセンサチューブ140,150の捩れ振動を求め、フィルタ定数変更回路620で捩れ振動を減衰させるように信号処理条件を変更する。
【0094】
これにより、センサチューブ140,150のバランスが温度などで変化して、捩れ信号の挙動(振幅や周波数)が変化しても捩れ振動の影響がない位相差信号が得られるので、精度よく高圧流体(例えば、水素やCNGなど)を計測することができる。また、流量計測制御回路300は、流量制御などの用途に応じて応答周波数や時定数を設定した場合でも、フィルタリング回路540、振幅変化測定回路600及びフィルタ定数変更回路620により捩れ振動の周波数の影響がないフィルタ定数や平均化処理ができるので、精度よく高圧流体を計測することができる。
【0095】
また、フィルタリング回路540は、フィルタ定数変更回路620により平均化処理されたフィルタ定数に基づいて、ゲイン可変アンプ500から入力された位相差信号に対する移動平均処理を行なった流量信号(アナログ出力)dを制御装置40に出力する。そのため、制御装置40は、流量信号(パルス出力)cを積算して得られた積算流量(供給量)を流量表示器46に表示すると共に、流量信号dに基づいて制御弁24の弁開度を制御する。
【0096】
さらに、流量計測制御回路300は、センサ信号の波形を監視する波形監視回路700と、警報装置(報知手段)710とを有する。ピックアップ180、200から出力されるセンサ信号は、正常のときの波形が正弦波(図10(A)参照)であるのに対し、振幅が増大したときのセンサチューブ140,150が振幅抑制部材220に当接して振幅を規制されるとセンサ信号の頂部がカットされた台形状の波形(図10(B)参照)となる。センサチューブ140,150が振幅抑制部材220に当接した場合のセンサ信号では、図10(B)において、破線で示す部分が振幅抑制部材220によって規制された領域である。
【0097】
従って、波形監視回路700は、ピックアップ180、200の何れか一方から出力されたセンサ信号の波形を監視し、正弦波形か、あるいは台形状波形かを判別することにより、センサチューブ140,150が振幅抑制部材220に当接したか否かを検出する。
【0098】
ここで、図11のフローチャートを参照して波形監視回路700が実行する制御処理1について説明する。図11に示されるように、波形監視回路700は、S41でピックアップ200から出力されたセンサ信号の波形を計測する。
【0099】
続いて、S42に進み、計測された当該センサ信号の波形が正弦波か否かをチェックする。S42において、当該センサ信号の波形が正弦波である場合(YESの場合)は、正常であるので、今回の処理を終了する。
【0100】
また、S42において、当該センサ信号の波形が正弦波でない場合(NOの場合)は、異常であるので、センサチューブ140,150が振幅抑制部材220に当接したものと判断してS43に進み、励振回路440に停止信号を出力して加振器160を停止させる。これにより、加振器160によるセンサチューブ140,150への加振力がゼロになるため、センサチューブ140,150の振動が停止して振幅抑制部材220に当接することが防止される。
【0101】
続いて、S44に進み、警報装置710にアラーム信号hを出力して警報を発する。これにより、管理者にセンサチューブ140,150の振動状態が異常(振幅増大)であることが報知される。
【0102】
次に波形監視回路700が実行する制御処理の変形例について説明する。
【0103】
図12は波形監視回路700が実行する制御処理2について説明するためのフローチャートである。尚、図12において、S51、S52の処理は、前述した図11のS41、S42と同一であるので、その説明は省略する。
【0104】
図12のS52において、当該センサ信号の波形が正弦波でない場合(NOの場合)は、異常であるので、センサチューブ140,150が振幅抑制部材220に当接したものと判断してS53に進み、警報装置710にアラーム信号hを出力して警報を発する。これにより、管理者にセンサチューブ140,150の振動状態が異常(振幅増大)であることが報知される。
【0105】
続いて、S54に進み、励振回路440に対してゲイン低下信号を出力し、励振回路440の加振用ゲインを1/2に減少させる。これにより、加振器160によるセンサチューブ140,150への加振力が半分に減少されるため、センサチューブ140,150の振幅が小さくなり、振幅抑制部材220に当接することが防止される。尚、S54において、励振回路440の加振用ゲインの減少率は任意に設定することができ、1/2に限らず、例えば、加振用ゲインを2/3または3/5に減少させるようにしても良いのは勿論である。
また、励振回路440の加振用ゲインの減少率の設定方法としては、例えば、温度センサ210により測定された温度に基づいて加振用ゲインの減少率を任意の値に設定することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0106】
尚、上記実施例では、センサチューブ140,150の形状を逆U字状に形成した場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、他の形状(例えば、直管状、流入側端部と流出側端部との間隔を狭くしたΩ形状、あるいはJ字状に曲げた形状など)でも良いのは勿論である。
【0107】
また、上記実施例では、計測される高圧流体として水素やCNGを例示したが、これ以外の高圧ガスを計測する場合にも適用できるのは言うまでもない。
【0108】
また、上記実施例では、被測流体の質量流量を測定する場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、被測流体の密度を測定する密度計にも本発明を適用することができるのは勿論である。
また、上記実施例では、回路動作の説明をアナログ回路を用いて行なったが、全ての演算処理をデジタル値で行なうことも可能である。
【0109】
また、上記実施例では、センサチューブ140,150が振幅抑制部材220に当接して振幅を規制されるとセンサ信号の頂部がカットされた台形状(図10(B)参照)の波形になった否かを監視する場合を例に挙げて説明したが、センサ信号の波形が正弦波から他の形状に変化した場合にセンサチューブ140,150が振幅抑制部材220に当接したものと判定することができるので、例えば、正弦波の頂部が直線状になったか否かを監視するようにしても良いのは勿論である。
【符号の説明】
【0110】
10 ガス供給装置
12 自動車
14 燃料タンク
16 ディスペンサユニット
18 ガス供給経路
20 振動式測定装置(質量流量計)
22 ガス供給開閉弁
24 制御弁
26 圧力伝送器
28 ガス充填ホース
30 三方弁
32 脱圧管路
34 ガス充填カップリング
40 制御装置
42 充填開始スイッチ釦
44 充填停止スイッチ釦
46 流量表示器
50 レセプタクル
120 マニホルド
140,150 センサチューブ
140a,150a 流入側端部
140b,150b 流入側端部
140c,150c 中間部分
160 加振器
160a 励振コイル
160b マグネット
180 流入側ピックアップ
200 流出側ピックアップ
180a、200a センサコイル
180b、200b マグネット
210 温度センサ
220 振幅抑制部材
300 流量計測制御回路
320 バリア回路
340 温度測定回路
360 ヤング率演算回路
420 本質安全防爆バリア回路
440 励振回路
460 位相差検出回路
500 ゲイン可変アンプ
520 流量出力回路
540 フィルタリング回路
600 振幅変化測定回路
620 フィルタ定数変更回路
700 波形監視回路
710 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測流体が流れるセンサチューブと、
該センサチューブを収納するケースと、
前記センサチューブを加振する加振器と、
前記加振器による加振力を制御する励振制御手段と、
前記センサチューブの流入側、流出側の変位を検出する変位検出器と、
前記変位検出器の検出信号から流入側変位と流出側変位との時間差を計測する計測制御手段と、
を備えた振動式測定装置において、
前記センサチューブの振幅が所定以上に増幅された場合に前記センサチューブの振幅を抑制する振幅抑制部材を前記ケースの内壁に設けたことを特徴とする振動式測定装置。
【請求項2】
前記計測制御手段は、前記センサチューブが前記振幅抑制部材に当接することで前記変位検出器より得られた出力波形の形状が変化した場合に異常発生と判定する波形監視手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の振動式測定装置。
【請求項3】
前記励振制御手段は、前記波形監視手段により異常発生と判定された場合に前記加振器による加振力を低下または停止させることを特徴とする請求項2に記載の振動式測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate