振動抑制装置
【課題】吊物の水平方向の振動を確実に抑制することができる振動抑制装置を提供する。
【解決手段】天井4側からワイヤ3により吊られた昇降式の吊物Mの振動を減衰させるための振動抑制装置10は、天井4側に固定された固定フレーム11と、水平方向に延在する制震フレーム12と、一端が固定フレーム11に連結され、他端が制震フレーム12に連結されると共に、制震フレーム12の水平方向の振動を減衰させる減衰手段13と、制震フレーム12に連結されると共に、ワイヤ3が挿通するガイド手段14と、を備えている。
【解決手段】天井4側からワイヤ3により吊られた昇降式の吊物Mの振動を減衰させるための振動抑制装置10は、天井4側に固定された固定フレーム11と、水平方向に延在する制震フレーム12と、一端が固定フレーム11に連結され、他端が制震フレーム12に連結されると共に、制震フレーム12の水平方向の振動を減衰させる減衰手段13と、制震フレーム12に連結されると共に、ワイヤ3が挿通するガイド手段14と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時などに、天井からワイヤなどで吊られた昇降式の吊物の振動を減衰させるための振動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような分野の技術として、特開2001−12541号公報がある。この公報に記載された振動抑制装置において、吊り具(吊材)により吊り下げられた吊物(例えばシャンデリアなどの照明機器)の上端側には箱体が設けられ、この箱体の内部空間には、往復移動する錘が入れられている。このような振動抑制装置では、地震時に吊物が水平方向に振動することに伴って箱体内で錘が往復移動し、錘が壁面と衝突することによって、吊物の振動を減衰させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−12541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の構造物の大型化及び高層化に伴ってビルなどの構造物自体の振動の影響が大きくなっており、吊物及び吊材で構成される振動系と建物などの構体系との間で共振が発生する場合には、吊物の揺れの成長を速やかに抑制することが求められている。特に、大型施設の室内で高い位置から大きな吊物(例えば大型のシャンデリア)を吊り下げた場合は、吊物が水平方向に大きく揺れることによって、吊物の下にいる人に恐怖感を与えてしまう可能性があるので吊物の水平方向の振動を確実に抑える必要がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、吊物の水平方向の振動を確実に抑制することができる振動抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天井側からワイヤにより吊られた昇降式の吊物の振動を減衰させるための振動抑制装置において、
天井側に固定された固定フレームと、
水平方向に延在する制震フレームと、
一端が固定フレームに連結され、他端が制震フレームに連結されると共に、制震フレームの水平方向の振動を減衰させる減衰手段と、
制震フレームに連結されると共に、ワイヤが挿通するガイド手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
この振動抑制装置において、昇降式の吊物における水平方向の振動を減衰させるために、減衰手段の一端が制震フレームを介して、ワイヤに連結されている。そして、地震時に吊物が振動した場合、ワイヤが水平方向に揺れ、このワイヤの揺れをガイド手段及び制震フレームを介して減衰手段により減衰させる。従って、簡単な構造によって、吊物の水平方向の振動を確実に抑制することができる。さらに、ガイド手段はワイヤが挿通する構成になっているので、吊物の昇降を可能にし、吊物の昇降時にワイヤが水平方向に揺れた場合でも、ワイヤの揺れをガイド手段及び制震フレームを介して減衰手段により素早く減衰させることができる。これにより、昇降時に吊物が大きく揺れ難く、吊物を鉛直方向に確実に昇降させることができる。
【0008】
また、ガイド手段は、ワイヤの表面に当接する摺動面が設けられた筒体であると好適である。
このような構成を採用すると、ワイヤが損傷しにくくなると共に、ワイヤをガイド手段内で滑らすことができる。
【0009】
また、ガイド手段は、筐体と、筐体内でワイヤを挟むように配置されたローラと、を備えると好適である。
このような構成を採用すると、ワイヤを損傷することなく、ワイヤをガイド手段内で滑らすことができる。
【0010】
また、ローラは、水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側ローラ部と下側ローラ部とからなると好適である。
このような構成を採用すると、ガイド手段内でワイヤが前後左右方向に移動することを確実に抑制することができるので、ワイヤの損傷を更に確実に防止することができる。
【0011】
また、制震フレームは、制震フレーム支持手段により水平方向に支持されていると好適である。
制震フレーム支持手段により水平方向に制震フレームを支持することで、吊物の昇降時や地震時に制震フレームの水平方向の振動を確実に抑制することができる。
【0012】
また、制震フレーム支持手段は、一端が天井側に連結され、他端が制震フレームに連結されたワイヤ又はロッドであると好適である。
このような構成を採用すると、制震フレーム支持手段の構成を簡素化させることができる。
【0013】
また、制震フレーム支持手段は、関節部を有するアームであり、アームの一端は固定フレームに軸支され、制震フレームはアームの他端に軸支されていると好適である。
制震フレーム支持手段が関節部を有するアームであることで、関節部を回転型ダンパーとすることにより、制震フレームの水平方向の運動エネルギーをアームでも吸収させることができる。よって、吊物の水平方向の振動エネルギーをより効果的に減衰させることができる。なお、減衰力が小さく済む場合には、関節部を、支持手段と減衰手段とを兼ね備えた回転ダンパー部にすることで吊物の振動を抑制することも可能であり、その構造も簡素化できる。
【0014】
また、制震フレーム支持手段は、制震フレームの下面に当接する玉部と、天井側から垂下する垂下部材に固定されると共に、玉部を回転自在に保持する座部と、を備えると好適である。
制震フレームの重量を下から支えることで、制震フレームの水平方向の振動を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吊物の水平方向の振動を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る振動抑制装置の第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示された振動抑制装置の機能が概略的に示された断面図である。
【図3】ガイド手段を示す図である。(a)が断面図であり、(b)が(a)のIII−III線に沿った端面図である。
【図4】地震などで吊物が揺れた状態を示す平面図である。
【図5】地震などで吊物が揺れた状態を示す断面図である。
【図6】吊物を降下させた状態を示す断面図である。
【図7】ガイド手段の第1の変形例を示す図である。(a)が断面図であり、(b)が(a)のVII−VII線に沿った端面図である。
【図8】ガイド手段の第2の変形例を示す図である。(a)が断面図であり、(b)が(a)のVIII−VIII線に沿った端面図である。
【図9】制震フレーム支持手段の第1の変形例を示す断面図である。
【図10】制震フレーム支持手段の第2の変形例を示す断面図である。
【図11】制震フレーム支持手段の第3の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る振動抑制装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
ホテルのロビーや宴会会場等の天井に吊されている大型の照明機器(例えばシャンデリア)には、昇降装置が備わっており、メンテナンス時には昇降装置によって大型の照明機器をフロアまで降ろして掃除や機器の点検が行われる。
【0019】
図1及び図2に示されるように、シャンデリア等の大型の吊物Mの上部には円板状の取付板1が設けられており、この取付板1は、ボルトによって円板状の吊物支持部2に固定され、吊物Mは、吊物支持部2から垂下するように支持されている。また、昇降式の吊物Mを達成させるために、取付金具3aが吊物支持部2にボルト止めされると共に、吊物Mが、取付金具3aを介してワイヤ3により天井4側から吊されている。そして、吊物Mは、図示しないウインチによってワイヤ3を巻き取ったり繰り出したりすることで昇降させられる。吊物Mが支持されている吊物支持部2は、天井4に形成された開口4a内に嵌り込むようにセットされる。
【0020】
このような吊物Mにあっては、大型施設の室内で高い位置から大型のシャンデリアとして吊り下げられているので、このような吊物Mが地震時に水平方向に大きく揺れることによって、吊物Mの下にいる人に恐怖感を与えてしまう可能性があり、吊物Mの水平方向の振動を迅速且つ確実に抑える必要がある。そこで、昇降式の振動抑制装置10が発案された。
【0021】
天井側4からワイヤ3により吊られた昇降式の吊物Mの振動を減衰させるための振動抑制装置10は、天井4側に固定された固定フレーム11と、水平方向に延在する制震フレーム12と、一端が固定フレーム11に連結され、他端が制震フレーム12に連結されると共に、制震フレーム12の水平方向の振動の減衰させる減衰手段13と、制震フレーム12に連結されると共に、ワイヤ3が挿通するガイド手段14と、を備えている。
【0022】
天井4側に固定された固定フレーム11は、天井4で水平方向に延在する天井下地フレーム11aと、上面が天井下地フレーム11aの下面に固定されると共に水平方向に延在する矩形の上フレーム11bからなる。
【0023】
水平方向に延在する制震フレーム12は、中央に矩形の開口部が形成された正方形をなし、上フレーム11bの下側で上フレーム11bを囲むようにして水平方向に延在している。また、制震フレーム12は、制震フレーム支持手段15によって水平方向に支持されている。この制震フレーム支持手段15は、一端が天井4側に固定され、他端が制震フレーム12に固定されたワイヤ又はロッドである。制震フレーム支持手段15によって制震フレーム12を水平方向に支持することで、吊物Mの昇降時や地震時に、制震フレーム12の水平運動を確実に行わせることができる。
【0024】
減衰手段13は、エアーダンパー又はオイルダンパーからなり、上フレーム11bの周囲に均等に4個配置され、各減衰手段13は、直線的に配列されて互いに押し合う第1及び第2のダンパー13A,13Bからなる。各ダンパー13A,13Bの一端は、上フレーム11bの突片11cに軸部31aを介して連結され、ダンパー13A,13Bの他端は、制震フレーム12に軸部31bを介して連結されている。
【0025】
ガイド手段14は、矩形の制震フレーム12の各コーナに固定されている。図3に示されるように、ガイド手段14は、制震フレーム12に固定される筒体42と、筒体42の内表面に固定された耐摩耗性の摺動部材41と、からなる。従って、ワイヤ3が摺動面41aに当接することで、ワイヤ3の損傷を防ぐと共に、吊物Mの昇降時にワイヤ3をガイド手段14内で滑らすことができる(図6参照)。
【0026】
前述したような振動抑制装置10にあっては、図5に示されるように、地震時に吊物Mが振動した場合、ワイヤ3が水平方向に揺れ、このワイヤ3の揺れをガイド手段14及び制震フレーム12を介して減衰手段13により減衰させる。従って、簡単な構造によって、吊物Mの水平方向の振動を確実に抑制することができる。さらに、ガイド手段14はワイヤ3が挿通する構成になっているので、吊物Mの昇降を可能にし、吊物Mの昇降時にワイヤ3が水平方向に揺れた場合でも、ワイヤ3の揺れをガイド手段14及び制震フレーム12を介して減衰手段13により素早く減衰させることができる。これにより、昇降時に吊物Mが大きく揺れ難く、吊物Mを鉛直方向に確実に昇降させることができる。
【0027】
吊物Mを減衰させるにあたって、図4及び図5に示されるように、第1及び第2のダンパー13A,13Bのロッド13a,13bのうちの一方が伸び、他方が縮むような運動をすることで、吊物Mの振動が減衰させられる。また、吊物Mを降下させるにあたって、図6に示されるように、図示しないウインチの駆動によってワイヤ3がガイド手段14を介して繰り出されることによって、吊物Mを降下させることができる。
【0028】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0029】
図7に示されるように、第2の変形例に係るガイド手段14Aは、四角筒形状の筐体43と、筐体43内で水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側ローラ部44a及び下側ローラ部44bと、からなる。そして、上側ローラ部44aと下側ローラ部44bは、筐体43の壁を貫通する回転軸44cによりが軸支されている。このようなガイド手段14にあっては、ワイヤ3が前後左右方向に移動することを確実に抑制することができるので、ワイヤ3の損傷を確実に防止することができる。
【0030】
図8に示されるように、第3の変形例に係るガイド手段14Bは、四角筒形状の筐体45と、筐体45内で水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側シーブ部46a及び下側シーブ部46bと、からなる。筐体45は、その断面から分かるように、十字状の中空部Sを有し、ワイヤ3の周りを囲むようにシーブ46a,46bが中空部S内に配置されている。よって、このガイド手段14Bにあっては、ワイヤ3が前後左右方向に移動することを確実に抑制することができるので、ワイヤ3の損傷を確実に防止することができる。
【0031】
図9に示されるように、第4の変形例に係る制震フレーム支持手段15Aは、関節部51Aを有するアーム52Aであり、アーム52Aの一端は、上フレーム11bに軸支され、制震フレーム12はアーム52Aの他端に軸支されている。この制震フレーム支持手段15Aにあっては、アーム52Aの関節部51Aを回転型ダンパーにすることにより、制震フレーム12の水平方向の運動エネルギーをアーム52Aの運動により吸収させることができるので、吊物Mの水平方向の振動エネルギーを更に効果的に減衰させることができる。制震フレーム支持手段15Aの関節部51Aが減衰手段13の機能を兼ね備えた回転ダンパー部になることにより、構造を簡素化して減衰を得ることもできる。
【0032】
図10に示されるように、第5の変形例に係る制震フレーム支持手段15Bは、関節部51Bを有するアーム52Bであり、アーム52Bの一端は、上フレーム11bに軸支され、制震フレーム12はアーム52Bの他端から吊るされたワイヤ53によりに支持されている。この制震フレーム支持手段15Bにあっては、制震フレーム12の水平方向の運動エネルギーをアーム52Bの運動により吸収させることができるので、吊物Mの水平方向の振動エネルギーを更に効果的に減衰させることができる。
【0033】
図11に示されるように、第6の変形例に係る制震フレーム支持手段15Cは、制震フレーム12の下面に当接する玉部54と、天井4側から垂下する垂下部材55に固定されると共に、玉部54を回転自在に保持する座部56と、から構成されてもよい。制震フレーム支持手段15Cは、制震フレーム12の重量を下から支えるので、制震フレーム12の水平運動を確実に行わせることができる。
【符号の説明】
【0034】
10・・・振動抑制装置、2・・・吊物支持部、3・・・ワイヤ、4・・・天井、11・・・固定フレーム、12・・・制震フレーム、13・・・減衰手段、14,14A,14B・・・ガイド手段、15A,15B,15C・・・制震フレーム支持手段、41a・・・摺動面、42・・・筒体、43,45・・・筐体、44a・・・上側ローラ部、44b・・・下側ローラ部、46a・・・上側シーブ部、46b・・・下側ローラ部、51A,51B・・・関節部、52A,52B・・・アーム、53・・・ワイヤ、54・・・玉部、55・・・垂下部材、56・・・座部、M・・・吊物。
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震時などに、天井からワイヤなどで吊られた昇降式の吊物の振動を減衰させるための振動抑制装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のこのような分野の技術として、特開2001−12541号公報がある。この公報に記載された振動抑制装置において、吊り具(吊材)により吊り下げられた吊物(例えばシャンデリアなどの照明機器)の上端側には箱体が設けられ、この箱体の内部空間には、往復移動する錘が入れられている。このような振動抑制装置では、地震時に吊物が水平方向に振動することに伴って箱体内で錘が往復移動し、錘が壁面と衝突することによって、吊物の振動を減衰させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−12541号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の構造物の大型化及び高層化に伴ってビルなどの構造物自体の振動の影響が大きくなっており、吊物及び吊材で構成される振動系と建物などの構体系との間で共振が発生する場合には、吊物の揺れの成長を速やかに抑制することが求められている。特に、大型施設の室内で高い位置から大きな吊物(例えば大型のシャンデリア)を吊り下げた場合は、吊物が水平方向に大きく揺れることによって、吊物の下にいる人に恐怖感を与えてしまう可能性があるので吊物の水平方向の振動を確実に抑える必要がある。
【0005】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、吊物の水平方向の振動を確実に抑制することができる振動抑制装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、天井側からワイヤにより吊られた昇降式の吊物の振動を減衰させるための振動抑制装置において、
天井側に固定された固定フレームと、
水平方向に延在する制震フレームと、
一端が固定フレームに連結され、他端が制震フレームに連結されると共に、制震フレームの水平方向の振動を減衰させる減衰手段と、
制震フレームに連結されると共に、ワイヤが挿通するガイド手段と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
この振動抑制装置において、昇降式の吊物における水平方向の振動を減衰させるために、減衰手段の一端が制震フレームを介して、ワイヤに連結されている。そして、地震時に吊物が振動した場合、ワイヤが水平方向に揺れ、このワイヤの揺れをガイド手段及び制震フレームを介して減衰手段により減衰させる。従って、簡単な構造によって、吊物の水平方向の振動を確実に抑制することができる。さらに、ガイド手段はワイヤが挿通する構成になっているので、吊物の昇降を可能にし、吊物の昇降時にワイヤが水平方向に揺れた場合でも、ワイヤの揺れをガイド手段及び制震フレームを介して減衰手段により素早く減衰させることができる。これにより、昇降時に吊物が大きく揺れ難く、吊物を鉛直方向に確実に昇降させることができる。
【0008】
また、ガイド手段は、ワイヤの表面に当接する摺動面が設けられた筒体であると好適である。
このような構成を採用すると、ワイヤが損傷しにくくなると共に、ワイヤをガイド手段内で滑らすことができる。
【0009】
また、ガイド手段は、筐体と、筐体内でワイヤを挟むように配置されたローラと、を備えると好適である。
このような構成を採用すると、ワイヤを損傷することなく、ワイヤをガイド手段内で滑らすことができる。
【0010】
また、ローラは、水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側ローラ部と下側ローラ部とからなると好適である。
このような構成を採用すると、ガイド手段内でワイヤが前後左右方向に移動することを確実に抑制することができるので、ワイヤの損傷を更に確実に防止することができる。
【0011】
また、制震フレームは、制震フレーム支持手段により水平方向に支持されていると好適である。
制震フレーム支持手段により水平方向に制震フレームを支持することで、吊物の昇降時や地震時に制震フレームの水平方向の振動を確実に抑制することができる。
【0012】
また、制震フレーム支持手段は、一端が天井側に連結され、他端が制震フレームに連結されたワイヤ又はロッドであると好適である。
このような構成を採用すると、制震フレーム支持手段の構成を簡素化させることができる。
【0013】
また、制震フレーム支持手段は、関節部を有するアームであり、アームの一端は固定フレームに軸支され、制震フレームはアームの他端に軸支されていると好適である。
制震フレーム支持手段が関節部を有するアームであることで、関節部を回転型ダンパーとすることにより、制震フレームの水平方向の運動エネルギーをアームでも吸収させることができる。よって、吊物の水平方向の振動エネルギーをより効果的に減衰させることができる。なお、減衰力が小さく済む場合には、関節部を、支持手段と減衰手段とを兼ね備えた回転ダンパー部にすることで吊物の振動を抑制することも可能であり、その構造も簡素化できる。
【0014】
また、制震フレーム支持手段は、制震フレームの下面に当接する玉部と、天井側から垂下する垂下部材に固定されると共に、玉部を回転自在に保持する座部と、を備えると好適である。
制震フレームの重量を下から支えることで、制震フレームの水平方向の振動を確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、吊物の水平方向の振動を確実に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る振動抑制装置の第1の実施形態を示す平面図である。
【図2】図1に示された振動抑制装置の機能が概略的に示された断面図である。
【図3】ガイド手段を示す図である。(a)が断面図であり、(b)が(a)のIII−III線に沿った端面図である。
【図4】地震などで吊物が揺れた状態を示す平面図である。
【図5】地震などで吊物が揺れた状態を示す断面図である。
【図6】吊物を降下させた状態を示す断面図である。
【図7】ガイド手段の第1の変形例を示す図である。(a)が断面図であり、(b)が(a)のVII−VII線に沿った端面図である。
【図8】ガイド手段の第2の変形例を示す図である。(a)が断面図であり、(b)が(a)のVIII−VIII線に沿った端面図である。
【図9】制震フレーム支持手段の第1の変形例を示す断面図である。
【図10】制震フレーム支持手段の第2の変形例を示す断面図である。
【図11】制震フレーム支持手段の第3の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明に係る振動抑制装置の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
ホテルのロビーや宴会会場等の天井に吊されている大型の照明機器(例えばシャンデリア)には、昇降装置が備わっており、メンテナンス時には昇降装置によって大型の照明機器をフロアまで降ろして掃除や機器の点検が行われる。
【0019】
図1及び図2に示されるように、シャンデリア等の大型の吊物Mの上部には円板状の取付板1が設けられており、この取付板1は、ボルトによって円板状の吊物支持部2に固定され、吊物Mは、吊物支持部2から垂下するように支持されている。また、昇降式の吊物Mを達成させるために、取付金具3aが吊物支持部2にボルト止めされると共に、吊物Mが、取付金具3aを介してワイヤ3により天井4側から吊されている。そして、吊物Mは、図示しないウインチによってワイヤ3を巻き取ったり繰り出したりすることで昇降させられる。吊物Mが支持されている吊物支持部2は、天井4に形成された開口4a内に嵌り込むようにセットされる。
【0020】
このような吊物Mにあっては、大型施設の室内で高い位置から大型のシャンデリアとして吊り下げられているので、このような吊物Mが地震時に水平方向に大きく揺れることによって、吊物Mの下にいる人に恐怖感を与えてしまう可能性があり、吊物Mの水平方向の振動を迅速且つ確実に抑える必要がある。そこで、昇降式の振動抑制装置10が発案された。
【0021】
天井側4からワイヤ3により吊られた昇降式の吊物Mの振動を減衰させるための振動抑制装置10は、天井4側に固定された固定フレーム11と、水平方向に延在する制震フレーム12と、一端が固定フレーム11に連結され、他端が制震フレーム12に連結されると共に、制震フレーム12の水平方向の振動の減衰させる減衰手段13と、制震フレーム12に連結されると共に、ワイヤ3が挿通するガイド手段14と、を備えている。
【0022】
天井4側に固定された固定フレーム11は、天井4で水平方向に延在する天井下地フレーム11aと、上面が天井下地フレーム11aの下面に固定されると共に水平方向に延在する矩形の上フレーム11bからなる。
【0023】
水平方向に延在する制震フレーム12は、中央に矩形の開口部が形成された正方形をなし、上フレーム11bの下側で上フレーム11bを囲むようにして水平方向に延在している。また、制震フレーム12は、制震フレーム支持手段15によって水平方向に支持されている。この制震フレーム支持手段15は、一端が天井4側に固定され、他端が制震フレーム12に固定されたワイヤ又はロッドである。制震フレーム支持手段15によって制震フレーム12を水平方向に支持することで、吊物Mの昇降時や地震時に、制震フレーム12の水平運動を確実に行わせることができる。
【0024】
減衰手段13は、エアーダンパー又はオイルダンパーからなり、上フレーム11bの周囲に均等に4個配置され、各減衰手段13は、直線的に配列されて互いに押し合う第1及び第2のダンパー13A,13Bからなる。各ダンパー13A,13Bの一端は、上フレーム11bの突片11cに軸部31aを介して連結され、ダンパー13A,13Bの他端は、制震フレーム12に軸部31bを介して連結されている。
【0025】
ガイド手段14は、矩形の制震フレーム12の各コーナに固定されている。図3に示されるように、ガイド手段14は、制震フレーム12に固定される筒体42と、筒体42の内表面に固定された耐摩耗性の摺動部材41と、からなる。従って、ワイヤ3が摺動面41aに当接することで、ワイヤ3の損傷を防ぐと共に、吊物Mの昇降時にワイヤ3をガイド手段14内で滑らすことができる(図6参照)。
【0026】
前述したような振動抑制装置10にあっては、図5に示されるように、地震時に吊物Mが振動した場合、ワイヤ3が水平方向に揺れ、このワイヤ3の揺れをガイド手段14及び制震フレーム12を介して減衰手段13により減衰させる。従って、簡単な構造によって、吊物Mの水平方向の振動を確実に抑制することができる。さらに、ガイド手段14はワイヤ3が挿通する構成になっているので、吊物Mの昇降を可能にし、吊物Mの昇降時にワイヤ3が水平方向に揺れた場合でも、ワイヤ3の揺れをガイド手段14及び制震フレーム12を介して減衰手段13により素早く減衰させることができる。これにより、昇降時に吊物Mが大きく揺れ難く、吊物Mを鉛直方向に確実に昇降させることができる。
【0027】
吊物Mを減衰させるにあたって、図4及び図5に示されるように、第1及び第2のダンパー13A,13Bのロッド13a,13bのうちの一方が伸び、他方が縮むような運動をすることで、吊物Mの振動が減衰させられる。また、吊物Mを降下させるにあたって、図6に示されるように、図示しないウインチの駆動によってワイヤ3がガイド手段14を介して繰り出されることによって、吊物Mを降下させることができる。
【0028】
本発明は、前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。
【0029】
図7に示されるように、第2の変形例に係るガイド手段14Aは、四角筒形状の筐体43と、筐体43内で水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側ローラ部44a及び下側ローラ部44bと、からなる。そして、上側ローラ部44aと下側ローラ部44bは、筐体43の壁を貫通する回転軸44cによりが軸支されている。このようなガイド手段14にあっては、ワイヤ3が前後左右方向に移動することを確実に抑制することができるので、ワイヤ3の損傷を確実に防止することができる。
【0030】
図8に示されるように、第3の変形例に係るガイド手段14Bは、四角筒形状の筐体45と、筐体45内で水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側シーブ部46a及び下側シーブ部46bと、からなる。筐体45は、その断面から分かるように、十字状の中空部Sを有し、ワイヤ3の周りを囲むようにシーブ46a,46bが中空部S内に配置されている。よって、このガイド手段14Bにあっては、ワイヤ3が前後左右方向に移動することを確実に抑制することができるので、ワイヤ3の損傷を確実に防止することができる。
【0031】
図9に示されるように、第4の変形例に係る制震フレーム支持手段15Aは、関節部51Aを有するアーム52Aであり、アーム52Aの一端は、上フレーム11bに軸支され、制震フレーム12はアーム52Aの他端に軸支されている。この制震フレーム支持手段15Aにあっては、アーム52Aの関節部51Aを回転型ダンパーにすることにより、制震フレーム12の水平方向の運動エネルギーをアーム52Aの運動により吸収させることができるので、吊物Mの水平方向の振動エネルギーを更に効果的に減衰させることができる。制震フレーム支持手段15Aの関節部51Aが減衰手段13の機能を兼ね備えた回転ダンパー部になることにより、構造を簡素化して減衰を得ることもできる。
【0032】
図10に示されるように、第5の変形例に係る制震フレーム支持手段15Bは、関節部51Bを有するアーム52Bであり、アーム52Bの一端は、上フレーム11bに軸支され、制震フレーム12はアーム52Bの他端から吊るされたワイヤ53によりに支持されている。この制震フレーム支持手段15Bにあっては、制震フレーム12の水平方向の運動エネルギーをアーム52Bの運動により吸収させることができるので、吊物Mの水平方向の振動エネルギーを更に効果的に減衰させることができる。
【0033】
図11に示されるように、第6の変形例に係る制震フレーム支持手段15Cは、制震フレーム12の下面に当接する玉部54と、天井4側から垂下する垂下部材55に固定されると共に、玉部54を回転自在に保持する座部56と、から構成されてもよい。制震フレーム支持手段15Cは、制震フレーム12の重量を下から支えるので、制震フレーム12の水平運動を確実に行わせることができる。
【符号の説明】
【0034】
10・・・振動抑制装置、2・・・吊物支持部、3・・・ワイヤ、4・・・天井、11・・・固定フレーム、12・・・制震フレーム、13・・・減衰手段、14,14A,14B・・・ガイド手段、15A,15B,15C・・・制震フレーム支持手段、41a・・・摺動面、42・・・筒体、43,45・・・筐体、44a・・・上側ローラ部、44b・・・下側ローラ部、46a・・・上側シーブ部、46b・・・下側ローラ部、51A,51B・・・関節部、52A,52B・・・アーム、53・・・ワイヤ、54・・・玉部、55・・・垂下部材、56・・・座部、M・・・吊物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井側からワイヤにより吊られた昇降式の吊物の振動を減衰させるための振動抑制装置において、
前記天井側に固定された固定フレームと、
水平方向に延在する制震フレームと、
一端が前記固定フレームに連結され、他端が前記制震フレームに連結されると共に、前記制震フレームの水平方向の振動を減衰させる減衰手段と、
前記制震フレームに連結されると共に、前記ワイヤが挿通するガイド手段と、
を備えたことを特徴とする振動抑制装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記ワイヤの表面に当接する摺動面が設けられた筒体であることを特徴とする請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項3】
前記ガイド手段は、筐体と、前記筐体内で前記ワイヤを挟むように配置されたローラと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項4】
前記ローラは、水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側ローラ部と下側ローラ部とからなることを特徴とする請求項3に記載の振動抑制装置。
【請求項5】
前記ガイド手段は、筐体と、前記筐体内で前記ワイヤを挟むように配置されたシーブと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項6】
前記制震フレームは、制震フレーム支持手段により水平方向に支持されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の振動抑制装置。
【請求項7】
前記制震フレーム支持手段は、一端が前記天井側に連結され、他端が前記制震フレームに連結されたワイヤ又はロッドであることを特徴とする請求項6に記載の振動抑制装置。
【請求項8】
前記制震フレーム支持手段は、関節部を有するアームであり、前記アームの一端は前記固定フレームに軸支され、前記制震フレームは前記アームの他端に軸支されていることを特徴とする請求項6に記載の振動抑制装置。
【請求項9】
前記制震フレーム支持手段は、前記制震フレームの下面に当接する玉部と、前記天井側から垂下する垂下部材に固定されると共に、前記玉部を回転自在に保持する座部と、を備えたことを特徴とする請求項6に記載の振動抑制装置。
【請求項1】
天井側からワイヤにより吊られた昇降式の吊物の振動を減衰させるための振動抑制装置において、
前記天井側に固定された固定フレームと、
水平方向に延在する制震フレームと、
一端が前記固定フレームに連結され、他端が前記制震フレームに連結されると共に、前記制震フレームの水平方向の振動を減衰させる減衰手段と、
前記制震フレームに連結されると共に、前記ワイヤが挿通するガイド手段と、
を備えたことを特徴とする振動抑制装置。
【請求項2】
前記ガイド手段は、前記ワイヤの表面に当接する摺動面が設けられた筒体であることを特徴とする請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項3】
前記ガイド手段は、筐体と、前記筐体内で前記ワイヤを挟むように配置されたローラと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項4】
前記ローラは、水平方向に延在する回転軸が直交するように上下で対向して配置された上側ローラ部と下側ローラ部とからなることを特徴とする請求項3に記載の振動抑制装置。
【請求項5】
前記ガイド手段は、筐体と、前記筐体内で前記ワイヤを挟むように配置されたシーブと、を備えたことを特徴とする請求項1に記載の振動抑制装置。
【請求項6】
前記制震フレームは、制震フレーム支持手段により水平方向に支持されていることを特徴とする請求項1〜5の何れか一項に記載の振動抑制装置。
【請求項7】
前記制震フレーム支持手段は、一端が前記天井側に連結され、他端が前記制震フレームに連結されたワイヤ又はロッドであることを特徴とする請求項6に記載の振動抑制装置。
【請求項8】
前記制震フレーム支持手段は、関節部を有するアームであり、前記アームの一端は前記固定フレームに軸支され、前記制震フレームは前記アームの他端に軸支されていることを特徴とする請求項6に記載の振動抑制装置。
【請求項9】
前記制震フレーム支持手段は、前記制震フレームの下面に当接する玉部と、前記天井側から垂下する垂下部材に固定されると共に、前記玉部を回転自在に保持する座部と、を備えたことを特徴とする請求項6に記載の振動抑制装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−2594(P2013−2594A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−136392(P2011−136392)
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月20日(2011.6.20)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】
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