説明

振動波攪拌方法、その方法に使用される密閉容器及び攪拌容器

【課題】振動波により液体を攪拌させるにあたり、液体に分注させるべき物質の分注と、この物質を分注した液体の攪拌とが異なる手段で行われることで生じる問題を解決する。
【解決手段】攪拌容器1は、攪拌すべきR1試薬とカプセル2とを隔壁1aで密閉状態に取り囲んでなる一方、カプセル2は、R1試薬に分注すべきR2試薬を密閉状態に取り囲む殻2aを有し、この殻2aが振動波により破壊されるものとしてなり、これらを用いて、R2試薬を充填したカプセル2を攪拌容器1内のR1試薬に配置して、振動波により、攪拌容器1内のR1試薬を攪拌し、また、カプセル2を破壊する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、生化学検査機器において、一方の試薬を他方の試薬に分注して攪拌するにあたり、その攪拌を振動波で行う方法、その方法に使用される密閉容器及び攪拌容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学検査の分野において、検体、R1試料及びR2試料の3つを反応させる場合、従来は、検体とR1試料との反応(これにより生じる中間生成物を以下、「一次反応物」という)や、一次反応物とR2試料との反応に、スクリュー状の棒を用いて攪拌を行っていたが、近年、表面弾性波(SAW)を用いた非接触式の攪拌方法が使用されつつある(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2004−534633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、2つの試薬を攪拌するにあたっては、一方の試薬を収容した保管容器からピペットロボット等の吸引・排出手段を用いて、攪拌容器に収容した他方の試薬に分注するため、実際に一方の試薬を分注するまでに時間が掛かる。しかも、こうした問題は、1つの試薬に対して分注される試薬の数が増えるに従い顕著に現れる。このため、分注完了までの時間に無駄があり、結果的に、攪拌完了までに要する全体時間に改善の余地がある。
【0004】
また、試薬を吸引して分注する場合、液垂れ等による攪拌容器の汚染を考慮しなければならない。加えて、こうした汚染を考慮して吸引・排出(分注)を行う場合、精度の高い制御が要求され、制御(装置)が複雑になるという問題がある。しかも、こうした問題も、1つの試薬に対して分注される試薬の数が増えるに従い顕著に現れる。
【0005】
本発明の解決すべき課題は、振動波により液体を攪拌させるにあたり、液体に分注させるべき物質の分注と、この物質を分注した液体の攪拌とが、異なる手段によって行われることにあり、
本発明の目的とするところは、攪拌容器に分注すべき液体や当該液体に分注すべき物質の分注と、分注後の攪拌が一元化された振動波攪拌方法、その方法に使用される密閉容器及び攪拌容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明である、振動波攪拌方法は、物質を充填した密閉容器を攪拌容器内の液体に配置して、振動波により、攪拌容器内の液体を攪拌し、また、密閉容器を破壊し、又は、密閉容器から物質を染み出させることを特徴とする方法である。
【0007】
本発明に係る「物質」は、液体や固体(例えば、粒状物)等、その状態や種類は問わない。また、振動波により、液体を攪拌させるタイミングと、密閉容器を破壊し、又は、密閉容器から物質を染み出させるタイミングは、同一であっても、異なっていてもよい。
【0008】
例えば、密閉容器に用いられる材料を、表面弾性波(SAW)を発生させる周波数帯で破壊や物質の染み出しを生じさせるものに選択すれば、1つの振動波発生装置を用いて分注及び攪拌を行うことができる。
【0009】
これに対し、密閉容器に用いられる材料を、表面弾性波の発生する周波数帯以外の周波数帯で破壊や物質の染み出しを生じさせるものに選択すれば、周波数の調整が可能な1つの振動波発生装置を用いて攪拌及び破壊を行う場合、攪拌に用いる振動波の制御が周波数の変化として連続的に行えるため好適である。
【0010】
本発明方法では、上記方法を行う前工程として、微量な液体を収容した前記攪拌容器内に前記密閉容器を配置して、振動波により、前記密閉容器を破壊し、又は、前記密閉容器から液体を染み出させて当該液体を前記攪拌容器に収容させることができる。
【0011】
また、本発明方法では、密閉容器を破壊し、又は、密閉容器の内容物を染み出させる振動波を発生させる装置と、攪拌容器内の液体を攪拌させる振動波を発生させる装置とを別個に設けることも可能であるが、少なくとも周波数及び振幅の調整が可能な1つの振動波発生装置を設け、振動波の周波数及び振幅のうちの少なくとも周波数を変更することで、容器を破壊し、又は、密閉容器の内容物を染み出させ、また、他の容器内に充填された液体を攪拌させることが好ましい。
【0012】
本発明である、振動波攪拌方法に使用される密閉容器は、分注すべき内容物を密閉状態に取り囲む殻を有し、この殻が振動波により破壊され、又は、内容物を染み出させることを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明である、振動波攪拌方法に使用される攪拌容器は、攪拌すべき液体と、この液体に分注すべき内容物を密閉状態に取り囲む殻を有し、この殻が振動波により破壊され、又は、内容物を染み出させる密閉容器とを、隔壁で密閉状態に取り囲んでなることを特徴とするものである。
【0014】
本発明である密閉容器の殻としては、例えば、プラスチック等の合成樹脂やガラス等を材料した薄肉(例えば、0.01〜0.5mm)のものが挙げられ、また、その形状も、円筒形、角柱形、球形、楕円形等、様々な形状のものが挙げられるが、これらは、使用状態に応じて、適宜変更することができる。また、密閉容器の表面には、破壊しやすいように、予め溝や微細孔等を形成しておいてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明方法によれば、密閉容器を攪拌容器に配置して振動波を与えるだけで、容器に収容された液体に、分注すべき物質を分注して当該物質と共に液体を攪拌することができる。
【0016】
即ち、本発明方法によれば、分注と攪拌とを一元化することができるので、攪拌容器の液体に、分注すべき物質を保管容器から取り出して分注する必要がない分、分注完了までの時間、即ち、攪拌完了までに要する全体時間の短縮化を図りつつも、方法全体としては複雑にならず、しかも、液垂れ等による汚染を生じることがない。
【0017】
加えて、本発明方法によれば、上記方法を行う前工程として、微量な液体を収容した前記攪拌容器内に前記密閉容器を配置して、振動波により、前記密閉容器を破壊し、又は、前記密閉容器から液体を染み出させて当該液体を前記攪拌容器に収容させれば、攪拌容器に分注すべき液体を保管容器から取り出して分注する必要がない分、分注完了までの時間、即ち、攪拌完了までに要する全体時間を更に短縮化できる。
【0018】
加えて、本発明方法において、振動波の周波数及び振幅のうちの少なくとも周波数を変更することで、密閉容器を破壊し、又は、密閉容器の内容物を染み出させ、また、攪拌容器内に収容された液体を攪拌させれば、2つの振動波発生器を用いることなく、1つの振動波発生器を制御するだけで、液体に分注すべき物質又は攪拌容器に分注すべき液体の分注及び攪拌を実現できるので、方法や装置の簡素化に更に役立つ。
【0019】
また、本発明である振動波攪拌方法に使用される密閉容器として、分注すべき内容物を密閉状態に取り囲む殻を有し、この殻が振動波により破壊され、又は、内容物を染み出させる容器を用いれば、振動波を利用した分注と攪拌との一元化を可能にしつつ、例えば、比色分析等の光学的な分析を用いる場合に、密閉容器が破壊されることで攪拌容器内で邪魔にならず、分析結果が目視しやすくなり、使い勝手がよい。
【0020】
また、本発明である振動波攪拌方法に使用される密閉容器として、分注すべき内容物を密閉状態に取り囲む殻を有し、この殻が振動波により内容物を染み出させる容器を用いれば、振動波を利用した分注と攪拌との一元化を可能にしつつ、例えば、比色分析等の光学的な分析を用いる場合に、密閉容器を着色して背景とすることで、分析結果が目視しやすくなり、使い勝手がよい。
【0021】
加えて、本発明である振動波攪拌方法に使用される攪拌容器として、攪拌すべき液体と、この液体に分注すべき内容物を密閉状態に取り囲む殻を有し、この殻が振動波により破壊され、又は、内容物を染み出させる密閉容器とを、隔壁で密閉状態に取り囲んでなる容器を用いれば、全体をユニット化したことから、振動波を利用した分注と攪拌との一元化を可能にしつつ、分注完了までの時間、即ち、攪拌完了までに要する全体時間を更に短縮化できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な形態を詳細に説明する。
【0023】
図1(a)〜(e)はそれぞれ、生化学検査機器において、検体S、R1試料及びR2試料の3つの反応させて比色分析を行うにあたり用いられる、本発明に従う振動波攪拌方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【0024】
符号1は、隔壁1aによりその内側を取り囲んで密閉空間を形成してなる攪拌容器である。この攪拌容器1の密閉空間には、攪拌すべき液体としてのR1試料が、後述するカプセル(密閉容器)2と共に、空隙Cを形成するように収容されている。
【0025】
カプセル2は、プラスチック等の合成樹脂やガラスで形成された薄肉の殻2aで構成され、特定の周波数帯の振動波、例えば、超音波(10KHz以上、好ましくは20〜100KHz)により破壊することができる。また、カプセル2の内側には、R1試料に分注すべき物質としてのR2試料が、殻2aにより区画された密閉空間に充填されている。
【0026】
符号3は、攪拌容器1に収容された試薬を攪拌させると共に、カプセル2を破壊するための振動波発生器である。振動波発生器3は、圧電素子(ピエゾ素子)を利用したホーンタイプのものであり、分注・攪拌の段階で、攪拌容器1の隔壁1aに押し当てることにより、所定の周波数の振動波を、R1試料及びカプセル2に伝播させる。
【0027】
また、振動波発生器3は、CPUを搭載した図示せぬコントローラを有し、使用者の操作や様々なセンサから入力される外部情報を基に、振動波の強度(例えば、周波数や振幅)を適宜変更することで、その出力が制御される。
【0028】
次に、図1を参照して、本発明に従う振動波攪拌方法を説明する。
【0029】
先ず、比色分析を行わない保管状態にあっては、図1(a)に示すように、攪拌容器1は、R1試薬とカプセル2とを内包し、携帯可能なカートリッジとして存在するが、検体の比色分析を行う段になると、図1(b)に示すように、ピペットPを攪拌容器1に差し込んで、R1試薬内に、分析すべき検体Sを注入し、R1試薬と検体Sとを混在させる。なお、ピペットPを差し込むにあたっては、攪拌容器1の開口部を破断可能なシール材で封止しておき、それを突き破る方法等を採用する。
【0030】
次に、図1(c)に示すように、振動波発生器3を攪拌容器1の隔壁(側壁)1aに押し当てて、振動波発生器3により生じた表面弾性波(SAW)により、検体Sと共にR1試薬を攪拌させる。これにより、攪拌容器1内で、検体SとR1試薬とが反応して、中間生成物としての一次反応物Aが生成される。
【0031】
一次反応物Aが生成された後は、振動波発生器3の出力を制御して、振動波発生器3から発せられる振動波の強度を変えることで、図1(d)に示すように、カプセル2を破壊する(破砕片を符号2bで示す。)。具体例としては、振動波発生器3から出力される振動波が、SAW以外の周波数帯の振動波(本形態では、SAW以外の周波数帯の振動波よりも周波数帯の高い、所謂、超音波)になるように制御してカプセル2を破壊する。これにより、一次反応物A内に、分注すべきR2試薬を分注し、一次反応物AとR2試薬とを混在させる。なお、振動波の強度を変更するタイミングは、例えば、振動波発生器3からの出力を開始してからコントローラ内のタイマを動作させて、タイマが所定時間をカウントしたときをもって行う。
【0032】
一次反応物AとR2試薬との混合物は、このままの状態でも攪拌されて反応が促されるが、好適には、振動波の強度を戻すことで、再度SAWによる攪拌を行う。これにより、必要な反応が完了して、図1(e)に示す最終反応物Bが生成されることで、検体Sについての比色分析が可能となる。
【0033】
本発明に従う上述の振動波攪拌方法によれば、カプセル2を攪拌容器1に配置して振動波を与えるだけで、攪拌容器1内の一次反応物Aに、分注すべきR2試薬を分注して当該R2試薬と共に一次反応物Aを攪拌することができる。
【0034】
即ち、上述の振動波攪拌方法によれば、R2試薬の分注とその攪拌とを一元化することができるので、攪拌容器1のR1試薬に、分注すべきR2試薬を保管容器から取り出して分注する必要がない分、分注完了までの時間、即ち、攪拌完了までに要する全体時間の短縮化を図りつつも、方法全体としては複雑にならず、しかも、攪拌容器1に、R2試薬の垂れ等による汚染を生じることがない。
【0035】
加えて、上述の振動波攪拌方法では、振動波発生器3から出力される振動波の周波数及び振幅のうちの少なくとも周波数を変更することで、カプセル2を破壊し、また、攪拌容器1のR1試薬や一次反応物Aを攪拌させることで、2つの振動波発生器を用いることなく、1つの振動波発生器3を制御するだけで、R1試薬に分注すべきR2試薬の分注及び、R1試薬や一次反応物Aの攪拌を実現できるので、方法や装置の簡素化に更に役立つ。
【0036】
また、上述の振動波攪拌方法にて、分注すべきR2試料を密閉状態に取り囲む殻2aを有し、この殻2aが振動波により破壊されるカプセル2を用いることで、振動波を利用した分注と攪拌との一元化を可能にしつつ、比色分析等の光学的な分析を用いる場合に、図1(d)に示すように、カプセル2が破壊されることで攪拌容器1内で邪魔にならず、分析結果が目視しやすくなり、使い勝手がよい。
【0037】
加えて、上述の振動波攪拌方法にて、攪拌すべきR1試料と、カプセル2とを、隔壁1aで密閉状態に取り囲んでなる攪拌容器1を用いることで、全体をユニット化したことから、振動波を利用した分注と攪拌との一元化を可能にしつつ、分注完了までの時間、即ち、攪拌完了までに要する全体時間を更に短縮化できる。
【0038】
また、本発明の振動波攪拌方法によれば、図1にて説明した方法の前工程として、振動波により破壊可能なカプセルにR1試薬を充填することで、このR1試薬を攪拌容器1に分注することもできる。
【0039】
図2(a)〜(c)はそれぞれ、本発明に従う振動波攪拌方法において、上記方法の前工程として、攪拌容器1内にR1試薬を分注する方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【0040】
この攪拌容器1の密閉空間には、カプセル2及びカプセル3と共に、微量な液体(例えば、R1試薬や純水)R0が収容されている。
【0041】
カプセル3も、プラスチック等の合成樹脂やガラスで形成された薄肉の殻3aで構成され、特定の周波数帯の振動波により破壊することができる。また、カプセル3の内側には、攪拌されるべきR1試薬が、殻3aにより区画された密閉空間に充填されている。
【0042】
この場合、保管状態にあっては、図2(a)に示すように、攪拌容器1は、微量の液体R0とカプセル2とカプセル3を内包し、携帯可能なカートリッジとして存在するが、検体の比色分析を行う段になると、図2(b)に示すように、振動波発生器3を攪拌容器1の隔壁(側壁)1aに押し当てて、振動波発生器3から出力された振動波により、図2(c)に示すように、カプセル3を破壊する。
【0043】
これにより、図1(a)に示すような、R1試薬とカプセル2とを内包する攪拌容器1が完成する。なお、それ以降は、図1にて説明した工程に従う。また、本形態では、カプセル2の破壊に要する振動波の周波数帯と、カプセル3の破壊に要する振動波の周波数帯とが異なっているが、互いに一致させてもよい。
【0044】
即ち、上述の工程を含んだ本発明に従う振動波攪拌方法によれば、カプセル2及びカプセル3を攪拌容器1に配置して振動波を与えるだけで、攪拌容器1にR1試薬を分注し、更には、当該R1試薬を攪拌することができる。
【0045】
従って、上述の工程を含む本発明に従う振動波攪拌方法によれば、攪拌容器1に分注すべきR1試薬を保管容器から取り出して分注する必要がない分、分注完了までの時間、即ち、攪拌完了までに要する全体時間を更に短縮化できる。
【0046】
ところで、攪拌容器1内の試薬やカプセルにSAW等の振動波を伝播させる手段としては、ホーン式の振動波発生器3に限らず、図3に示すように、攪拌容器1を圧電性物質で構成し、その表面に、上述したコントローラにより制御されるインターデジタル変換器(IDT)10を設けてもよい。
【0047】
符号11は、複数の延長部12を一体に有し、攪拌容器1の隔壁1aの表面に、互いに向き合うように蒸着等の方法により形成される電極である。電極11の間に電圧を加えると、当該電極11における延長部12のそれぞれが周期的な歪みを発生させることにより、攪拌容器1を振動させる。これにより、攪拌容器1内には、SAW等による振動が発生することになる。
【0048】
なお、攪拌容器1を構成する圧電性物質としては、例えば、リチウムニオブ酸塩が挙げられるが、これに代えて、攪拌容器1の表面に、例えば、酸化亜鉛のような圧電被膜を形成し、その上に、インターデジタル変換器10を設けてもよい。
【0049】
更に、本発明に従う攪拌容器としては、マイクロプレートを使用してもよい。
【0050】
図4(a),(b)はそれぞれ、本発明に従うマイクロプレート5を模式的に示す斜視図及び、その要部断面図である。
【0051】
この場合、マイクロプレート5に形成された複数のセル6にそれぞれ、隔壁5aによりその内側を取り囲んで密閉空間を形成してなり、この密閉空間内に、攪拌すべきR1試料が、カプセル2と共に、空隙Cを形成するように収容されている。
【0052】
こうしたマイクロプレートの形態をとった攪拌容器であっても、上述した本発明に従う振動波攪拌方法を実現することができる。
【0053】
また、密閉容器も、振動波により破壊されるものに限らず、例えば、密閉容器の殻を
PVC製の樹脂等で構成すれば、SAW等の振動波により密閉容器の内容物を染み出させる構成を取ることも可能であり、この場合、分注と攪拌とを同一タイミングで行えるので、1つの振動波発生装置を用いての、分注及び攪拌が可能になる。
【0054】
更に、こうした内容物を染み出させるカプセル等の密閉容器を用いれば、振動波を利用した分注と攪拌との一元化を可能にしつつ、例えば、密閉容器を着色して背景とすることで、分析結果が目視しやすくなり、使い勝手がよい。
【0055】
また、本発明に係る密閉容器に用いられる材料を、SAWの発生する周波数帯以外の周波数帯で破壊や物質の染み出しを生じさせるものに選択すれば、周波数の調整が可能な1つの振動波発生装置を用いて攪拌及び破壊を行う場合、攪拌に用いる振動波の制御が周波数の変化として連続的に行えるため好適である。
【0056】
上述したところは、本発明の好適な形態をしたものであるが、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明によれば、攪拌容器1は、カプセル2を予め内包するものではなく、カプセル2を別途投入してもよい。また、上述の各形態に採用されている構成等はそれぞれ、用途等に応じて適宜組み合わせて使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明は、少なくとも一種の物質を攪拌容器内の液体に分注して振動波により攪拌する方法であれば、様々な場合に適用させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】(a)〜(e)はそれぞれ、本発明に従う振動波攪拌方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)〜(c)はそれぞれ、本発明に従う振動波攪拌方法において、上記方法の前工程として、攪拌容器内にR1試薬を分注する方法の各工程を模式的に示す断面図である。
【図3】本発明の振動波攪拌方法において、攪拌容器内の液体や密閉容器にSAW等の振動波を伝播させる他の振動波発生器を例示する模式正面図である。
【図4】(a),(b)はそれぞれ、本発明に従うマイクロプレートを模式的に示す斜視図及び、その要部断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 攪拌容器
1a 隔壁
2 カプセル(密閉容器)
2a 殻
2b 破砕片
3 振動波発生器
4 カプセル(密閉容器)
4a 殻
4b 破砕片
5 マイクロプレート(攪拌容器)
6 セル
10 インターデジタル変換器
11 電極
12 電極延長部
11試薬
22試薬
S 検体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を充填した密閉容器を攪拌容器内の液体に配置して、振動波により、攪拌容器内の液体を攪拌し、また、密閉容器を破壊し、又は、密閉容器から物質を染み出させることを特徴とする、振動波攪拌方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法を行う前工程として、微量な液体を収容した前記攪拌容器内に前記密閉容器を配置して、振動波により、前記密閉容器を破壊し、又は、前記密閉容器から液体を染み出させて当該液体を前記攪拌容器に収容させることを特徴とする、振動波攪拌方法。
【請求項3】
振動波の周波数及び振幅のうちの少なくとも周波数を変更することで、密閉容器を破壊し、又は、密閉容器の内容物を染み出させ、また、攪拌容器内に収容された液体を攪拌させる請求項1又は2に記載の振動波攪拌方法。
【請求項4】
分注すべき内容物を密閉状態に取り囲む殻を有し、この殻が振動波により破壊され、又は、内容物を染み出させることを特徴とする振動波攪拌方法に使用される密閉容器。
【請求項5】
攪拌すべき液体と、
この液体に分注すべき内容物を密閉状態に取り囲む殻を有し、この殻が振動波により破壊され、又は、内容物を染み出させる密閉容器とを、隔壁で密閉状態に取り囲んでなることを特徴とする振動波攪拌方法に使用される攪拌容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−307451(P2008−307451A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−156498(P2007−156498)
【出願日】平成19年6月13日(2007.6.13)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】