説明

振動溶接システム

【課題】システム信頼性に優れた振動溶接システムを提供する。
【解決手段】第1加工物支持部に結合され、第1加工物支持部の往復移動を行うための1対の電磁石と、電磁石に結合され、第1加工物支持部の往復移動を行うために、電磁石を互いに位相ずれで連続的に付勢および消勢する電気駆動システムとを有する。この駆動システムは、DC電流源と、電源を電磁石の各々に制御可能に結合し、電源を電磁石の各々から制御可能に切断する多数の制御可能電子スイッチング・デバイスと、電磁石に結合され、電磁石に供給される電流を表す信号を生成する電流センサと、電子スイッチング・デバイスに結合され、電流センサが生成した信号を受け取り、電磁石の付勢および消勢を制御して第1加工物支持部の往復移動を行うために、スイッチング・デバイスをオンおよびオフにする制御回路とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、振動溶接に関し、特に振動溶接用電子駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] リニア振動溶接装置は、当業界においては、一方の部品の他方の部品に対する直線発振運動を発生することによって、2つのプラスチック部品を溶接するために用いられている。これらの部品が力によって互いに押圧されると、振動運動が熱を発生し、プラスチック部品の隣接する表面を溶融し、部品が冷却した後に溶接品が作成される。
【0003】
[0003] 一方の部品の他方の部品に対する振動運動は、溶接装置の可動部と固定部との間に配置されている2つの電磁石によって発生する。双方の電磁石は、同じ座標線に沿って、しかし逆方向に力を加える。これらの電磁石は、180°位相ずれで付勢され、第1電磁石が付勢されているとき、第2電磁石は消勢されるようになっている。逆に、第2電磁石が付勢されているときは、第1電磁石は消勢されている。
【0004】
[0004] 溶接される部品への最大限のエネルギ移転に備えるためには、溶接装置の可動機械部品の共振周波数に、付勢サイクルの周波数を維持することが望ましい。また、溶接の間所望のレベルのプラスチック溶融を維持するためには、電磁石に加えられるエネルギを制御することが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[0005] 電磁石を制御する従来の方法は、付勢/消勢サイクル間に180°の位相ずれを形成する(例えば、米国特許第7,520,308号参照)が、これらには未だ欠点がある。例えば、2つの電磁石を制御するために三相出力駆動を用いると、位相の内2つが2つの電磁石を駆動するために用いられ、双方の電磁石は、第3位相に接続された共通ワイヤを有する。この第3位相は、したがって、第1または第2位相のいずれよりも2倍の負荷がかかり、第3位相の制御エレメント(通例、IGBTトランジスタ)に応力がかかる。また、付勢および消勢の全体的なタイミングは固定であるが、各電磁石に配信されるエネルギ量を制御するためにPWMが用いられる。何故なら、三相モータ制御ではPWMコントローラが標準的な駆動策となっているからである。しかし、これには、応答時間がPWMコントローラの周波数によって制限されて遅くなるという欠点がある。加えて、PWMコントローラをこの用途に用いると、出力電力エレメント(IGBTトランジスタ)の過剰な切り替えが発生し、このために、望まれない電力損失、過剰な電気ノイズ、およびシステム信頼性の低下に至る。
【0006】
[0006] 可動機械系の共振周波数を測定する従来の方法では、周波数掃引が必要であった。掃引モードでは、かなり低い電圧(通例、最大値の10%から25%)が電磁石に印加され、周波数は、機械の動作範囲(通例200Hzから240Hz)の最低周波数から最高周波数まで小さな刻み(通例0.1Hz)で増加した。周波数を増加させながら、振幅フィードバックおよび/または駆動電流出力を監視した。最も高い振幅フィードバックおよび/または最も低い電流出力駆動となる周波数を、共振周波数に決定した。一旦共振周波数の値が決定すると、これを制御モジュール(通例、プログラマブル・ロジック・コントローラまたはPLC)のメモリに格納し、ドライブにその固定動作周波数として受け渡した。この共振周波数を定める方法は、かなり高精度であったが、様々な内在的な欠点がある。第1に、操作者は周波数を掃引するために「チューニング」モードに移ることを覚えていなければならないが、製造環境では忘れられることが頻繁であった。第2に、その手順自体にかなり時間がかかり、3〜5分もかかる可能性があり、大量生産環境においては望ましくなかった。第3に、掃引ルーティング(sweep routing)は、大量および高負荷型の用途において、機械および工具(tooling)の加熱の問題に対処するものではなかった。機械およびその構成部品が加熱するにつれて、共振周波数は低下する。新たな共振周波数が発見されなかった場合、機械はその最適な機械的共振から外れて運転し、したがってより多くの電流を引き出し、その重要な構成部品により多くの熱を発生しより多くの応力を誘発する。雪崩効果(またはランナウェイ状態)が発現する可能性もある。これを矯正するためには、操作者は1時間毎等に周波数掃引を行わなければならないが、このために再び製造効率が悪化した。
【0007】
[0007] 溶接プロセスを制御する従来の方法は、PLCの使用に基づいていた。溶接される部品の直線位置、および溶接の間における溶接される部品間の圧力は、PLCによって監視され制御されていた。センサから得られる情報に基づいて、テーブルを持ち上げ溶接された部品を係合する油圧シリンダは、PLCによって制御されていた。PLCはこのような制御に備えるために必要な入力/出力チャネルを全て有していたが、その応答時間は、非常に遅く(通例5msから20ms)、溶接プロセスの再現性および精度に影響を及ぼす可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 本開示は、第1および第2加工物を互いに推し進めながら、第2加工物に対する第1加工物の往復運動を行うことによって、第1および第2加工物を溶接する振動溶接システムを提供する。この振動溶接システムは、第1および第2加工物支持部を含み、第1加工物支持部は、第2加工物支持部に対して往復運動可能に取り付けられている。1対の電磁石が、第1加工物支持部の往復運動を行うために、第1加工物支持部に結合されており、電気駆動システムが、これらの電磁石に結合されており、互いに位相ずれとなってこれらの電磁石を連続的に付勢および消勢して、第1加工物支持部の往復運動を行う。このシステムは、DC電流源と、電源を電磁石の各々に制御可能に結合し、電源を電磁石の各々から制御可能に切断する多数の制御可能電子スイッチング・デバイスと、電磁石に結合され、電磁石に供給される電流を表す信号を生成する電流センサと、電子スイッチング・デバイスに結合され、電流センサが生成した信号を受け取り、電磁石の付勢および消勢を制御して第1加工物支持部の往復移動を行うために、スイッチング・デバイスをオンおよびオフにする制御回路とを含む。
【0009】
[0009] 一実施形態では、が、振動の共振周波数を有する可動機械系の一部であり、制御回路が、電磁石の各々を付勢および消勢する各連続サイクルに対して、既選択時間間隔を維持するようにプログラムされており、この既選択時間期間が、可動機械系の共振周波数に対応する。
【0010】
[0010] 一実施態様では、が、電流センサによって生成された信号を、既設定電流レベルと比較し、電磁石に供給される電流を制御することによって、電磁石したがって加工物に供給されるエネルギ量を制御するように構成されている。
【0011】
[0011] 一実施態様では、第2加工物が、制御回路によって活性化される油圧ドライブによって係合される。係合された第1および第2加工物間における圧力、および第2加工物の直線位置が、制御回路によって監視される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
[0012] 本発明は、以下の説明を添付図面と合わせて参照することによって、最良に理解することができる。
【図1】図1は、振動溶接装置の電気制御システムの模式図である。
【図2】図2は、図1の電気制御システムによって、振動溶接装置の中にある2つの駆動電磁石に供給される付勢電流のタイミング図である。
【図3】図3は、振動溶接装置における電磁石の内の1つと関連付けられている4つの絶縁ゲート・バイポーラ・トランジスタ(IGBT)に、図1の電気制御システムによって供給される制御信号のタイミング図である。
【図4】図4は、図2の上側のグラフ(line)の第1サイクルに対応するが、振動溶接装置における電磁石に供給される電流の最大値に対して異なる設定点を有するタイミング図である。
【図5A】図5Aは、振動溶接装置における電磁石の内の1つと関連付けられている4つのIGBTの電気回路模式図であり、図2のタイミング図における電流の1つの1サイクル中においてこれらのIGBTを通過する電流を示す。
【図5B】図5Bは、振動溶接装置における電磁石の内の1つと関連付けられている4つのIGBTの電気回路模式図であり、図2のタイミング図における電流の1つの1サイクル中においてこれらのIGBTを通過する電流を示す。
【図5C】図5Cは、振動溶接装置における電磁石の内の1つと関連付けられている4つのIGBTの電気回路模式図であり、図2のタイミング図における電流の1つの1サイクル中においてこれらのIGBTを通過する電流を示す。
【図5D】図5Dは、振動溶接装置における電磁石の内の1つと関連付けられている4つのIGBTの電気回路模式図であり、図2のタイミング図における電流の1つの1サイクル中においてこれらのIGBTを通過する電流を示す。
【図6】図6は、IBGTの内の1つを制御するために、図1の電気制御システムの中にある制御モジュールに含まれる電気回路の一実施形態の電気回路模式図である。
【図7】図7は、図1から図6のシステムの動作の「ピング」モード(ping mode)を示す波形のタイミング図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0020] 本発明は、ある種の好ましい実施形態と関連付けて説明するが、本発明はこれら特定の実施形態に限定されるのではないことは言うまでもない。逆に、本発明は、添付した特許請求の範囲によって定められる発明の主旨および範囲に含まれると考えられる代替物、変更物、および均等構成を全て包含することを意図している。
【0014】
[0021] 図1は、2つの固定電磁石LおよびL(たとえば、固定フレームに取り付けられている)を含むリニア振動溶接装置を示す。固定電磁石LおよびLは、プラスチック部品Pを搬送する移動エレメント12の対向端に、ロータ10および11を有する。電磁石Lが付勢されると、溶接装置の移動エレメント12が左に(図1で見る場合)移動させられる。また、電磁石Lが付勢されると、移動エレメント12は右に移動させられる。2つの電磁石LおよびLは、180°位相ずれで順次付勢および消勢され、移動エレメント12と、この移動エレメント12に固定的に取り付けられているプラスチック部品Pとの振動を発生させる。プラスチック部品Pを振動させると、油圧シリンダ28によってプラスチック部品Pは固定プラスチック部品Pに向かって押圧されるので、固定プラスチック部品Pに対して振動するプラスチック部品Pの発振運動(oscillatory motion)が、熱を発生して、この熱のために双方のプラスチック部品の係合面が溶融するので、振動を停止させると2つの部品が互いに溶着する。
【0015】
[0022] 2つの電磁石LおよびLのコイルには、電源Vから電流が供給される。電源Vは、DC電流を、4つのIGBT Q1〜Q4を通じてLコイルに、そして4つのIGBTQ5〜Q8を通じてLコイルに供給する。2組の4つのIGBT Q1〜Q4およびQ5〜Q8は、対応するLおよびLコイルに対して二相駆動システムを形成し、これら2つのコイルに対して全体的に同期四相駆動システムを形成する。第1位相は、IGBTのQ1およびQ2を含み、第2位相はIGBTのQ3およびQ4を含み、第3位相はIGBTのQ5およびQ6を含み、第4位相はIGBTのQ7およびQ8を含む。電磁石Lは、第1および第2位相によって給電され、一方電磁石Lは第3および第4位相によって給電される。4つの位相は、第1および第3位相が第2および第4位相に対して180°位相がずれていることを除いて、全て電気的に同一である。これについては、以下で更に詳細に論ずることにする。
【0016】
[0023] IGBTのQ1〜Q8の切り替えは、1対のIおよびI制御モジュール20および21、ならびにシステム周波数インターフェース・モジュール22によって制御される。システム周波数インターフェース・モジュール22は、IGBTのQ1〜Q8をオンおよびオフにするときを制御する。具体的には、制御モジュール20は、4つのゲート電圧V1、V2、V3、V4を、それぞれ、IGBTのQ1〜Q4に発生し、制御モジュール21は、4つのゲート電圧V5、V6、V7、V8をそれぞれIGBTのQ5〜Q8に発生する。制御モジュール20および21の各々は、1対の電流センサ23および24の1つからの入力信号を用いて、直接フィード・フォワード電流制御を実施する。センサ23および24は、それぞれのLおよびLコイルにおける実際の電流を表す信号を生成する。また、双方のモジュールは、LおよびLの各々に供給される最大電流を表す既選択電流値Iset、ならびに各コイルを繰り返し付勢および消勢する頻度を表す既選択時間期間Tsetも用いる。既選択電流値Isetは、LおよびLコイルに供給されるエネルギ量を効果的に制御して、プラスチック部品PおよびPの係合面の所望の溶融レベルを、これらの部品の振動溶接の間維持する。既選択時間期間Tsetは、電磁石LおよびLの連続付勢および消勢の各サイクルの期間を効果的に制御して、プラスチック部品PおよびPの振動溶接の間、これらの部品に最大のエネルギが送られるように、振動溶接装置の機械的部分の共振周波数を一致させる(match)。
【0017】
[0024] Lコイルを流れる電流は、電流センサ23によって監視される。電流センサ23は、この電流の瞬時的な大きさを表す出力信号Iを生成する。同様に、Lコイルを通過する電流は、電流センサ24によって監視される。電流センサ24は、この電流の瞬時的な大きさを表す出力信号Iを生成する。制御モジュール20および21は、信号IおよびIをそれぞれ既設定値Isetと比較する。図2は、IGBのQ1〜Q4をオンおよびオフにする制御信号を発生するために、信号IおよびIがモジュール20によってどのように用いられるのかを示すタイミング図である。
【0018】
[0025] 図2において、上側の図はLコイルにおける電流の流れを表し、下側の図はLコイルにおける電流の流れを表す。1回の完全なサイクルは、時点tから時点tに及ぶ。この図示した例では、Lコイルの付勢は、制御モジュール20がIGBT QをオンにしIGBT Q2をオフにする制御信号を発生するときである、時点tにおいて開始する。直前のサイクルから、IGBT Q3はオフのままであり、IGBT Q4はオンのままである。図5Aに示すように、4つのIGBTのQ1〜Q4に対するこの状態の組み合わせが、電流を電源+VからLコイルに通過させて、時点tにおけるゼロから時点tにおける既選択値Isetまで増大させる。tおよびt間の時間間隔の長さは、IがレベルIsetに達するときによって決定され、制御モジュール20において連続的にIを既選択値Isetと比較することによって検出される。
【0019】
[0026] 時点tにおいてIがIsetに達すると、制御モジュール20は、IGBT Q1をオフにしIGBT Q2をオンにする制御信号を発生するので、Lコイルにおける電流レベルをそれ以上増大させることはできない。IBGT Q3はオフのままであり、IGBT Q4はオンのままである。図5Bに示すように、4つのIGBT Q1〜Q4に対するこの状態の組み合わせは、Lコイルに印加される電圧をゼロに低下させ、Lコイルにおける電流を、時点tまで、IsetのレベルでIGBTのQ2およびQ4を通じてLコイルに流れ続けさせる。
【0020】
[0027] tおよびt間の時間間隔の長さは、モジュール22の中にあるメモリに格納されている既選択値1/2Tsetによって決定される。モジュール22は、更に、t後の経過時間を測定するマイクロプロセッサも含む。この経過時間が1/2Tsetに等しくなったとき、マイクロプロセッサは、IGBT Q3をオンにしIGBT Q4をオフにする制御信号を発生する。IGBT Q1はオフのままであり、IGBT Q2はオンのままである。図5Cに示すように、IGBTのQ1〜Q4に対するこの状態の組み合わせは、逆電圧−VをLコイルに印加し、電源−VからLコイルにIGBTのQ3およびQ2を通じて電流を通過させ、時点tにおけるIsetから時点tにおけるゼロに減少させる。tおよびt間における時間間隔の長さは、Iが0に達するときによって決定され、制御モジュール20においてIをゼロ基準値と連続的に比較することによって検出される。
【0021】
[0028] Iがゼロに達すると、制御モジュール20は、IGBT Q3をオフにしIGBTQ4をオンにする制御信号を時点tにおいて発生し、Lコイルにおけるゼロ電流状態を維持する。IGBT Q1はオフのままであり、IGBT Q2はオンのままである。図5Dに示すように、4つのIGBTに対するQ1〜Q4のこの状態の組み合わせは、Lコイルに印加される電圧をゼロに低下させ、時点tまでLコイルにおいてゼロ電流状態を維持する。時点tは、次のサイクルが開始するときである。
【0022】
[0029] 図2および図3において見られるように、tおよびt間における時間間隔の長さは、tおよびt間における時間間隔とほぼ同じである。何故なら、電流の変化、即ち、Isetおよびゼロの間の差は、双方の間隔において同じであるからである。tおよびt間における時間間隔の長さは、モジュール22の中にあるメモリに格納されている既選択値Tsetによって決定される。モジュール22は、t後の経過時間を測定するマイクロプロセッサも含む。この経過時間がTsetに等しくなったとき、マイクロプロセッサは、次のサイクルを開始するために、IGBT Q1をオンにしIGBT Q3をオフにする制御信号を発生する。
【0023】
[0030] 図2における下側の図は、Lコイルにおける電流の流れを表す。1つの完全なサイクルは、時点tから時点tに及ぶ。この図示した例では、Lコイルの消勢は、制御モジュール20がIGBT Q7をオンにしIGBT Q8をオフにする制御信号を発生するときである、時点tにおいて開始する。直前のサイクルから、IGBT Q5はオフのままであり、IGBT Q6はオンのままである。4つのIGBTのQ5〜Q8に対するこの状態の組み合わせでは、逆電圧−VがLコイルに印加され、これによって、IGBTのQ6およびQ7を通じてLコイルに流れる電流が減少する。
【0024】
[0031] Lコイルにおける電流がゼロに減少すると、制御モジュール20においてIをゼロ基準値と連続的に比較することによって検出され、制御モジュールは、IGBT Q7をオフにしIGBT Q8をオンにする制御信号を時点tにおいて発生する。IGBT Q5はオフのままであり、IGBT Q6はオンのままである。IGBTQ5〜Q8に対するこの状態の組み合わせにより、Lコイルに印加される電流がゼロに減少し、時点tまでLコイルにおいてゼロ電流状態が維持される。
【0025】
[0032] tおよびt間における時間間隔の長さは、モジュール22の中にあるメモリに格納されている既選択値1/2Tsetによって決定される。また、モジュール22は、t後の経過時間を測定するマイクロプロセッサも含む。経過時間が1/2Tsetに等しくなったとき、マイクロプロセッサは、IGBT Q5をオンにしIGBT Q6をオフにする制御信号を発生する。IGBT Q7はオフのままであり、IGBT Q8はオンのままである。IGBTのQ5〜Q8に対するこの状態の組み合わせにより、電圧+VがLコイルに印加され、これによって、IGBTのQ5およびQ8を通じてLコイルに流れる電流が、時点tにおけるゼロから時点tにおけるIsetに増大する。tおよびt間における時間間隔の長さは、IがレベルIsetに達したときによって決定され、制御モジュール20においてIを既選択値Isetと連続的に比較することによって検出される。
【0026】
[0033] 時点tにおいてIがIsetに達すると、制御モジュールは、IGBT Q7をオフにしIGBT Q8をオンにする制御信号を発生するので、Lコイルにおける電流レベルをそれ以上増大させることはできない。IGBT Q5はオフのままであり、IGBT Q6はオンのままである。IGBTのQ5〜Q8に対するこの状態の組み合わせにより、Lコイルにおける電流は、時点tまで、IsetのレベルでIGBTのQ6およびQ8を通じてLコイルに流れ続ける。
【0027】
[0034] tおよびt間における時間間隔の長さは、モジュール22の中にあるメモリに格納されている既選択値Tsetによって決定される。また、モジュール22は、t後の経過時間を測定するマイクロプロセッサも含む。この経過時間がTsetと等しくなったとき、マイクロプロセッサは、次のサイクルを開始するために、IGBT Q5をオンにしIGBT Q6をオフにする制御信号を発生する。
【0028】
[0035] 図3は、電磁石10または11の内の1つのコイルに供給される駆動電流の1周期を拡大したタイミング図である。2つの電磁石に供給される駆動電流は、互いに180°位相がずれていることを除いて、同一である。
【0029】
[0036] LおよびLコイルの各々の両端にかかる電圧Vは、以下の式で表すことができる。
【0030】
【数1】

【0031】
ここで、
Vは電磁石のコイルの両端にかかる電圧である。
Rは電磁石のコイルの等価直列抵抗である。
Lは電磁石のコイルの等価インダクタンスである。
iは電磁石のコイルにおける電流である。
[0037] 電磁石の物理的なサイズが大きいために、LコイルまたはLコイルのいずれの等価直列抵抗も、コイルの等価インダクタンスと比較すると、無視できる程小さいと見なすことができる。したがって、式(1)を次のように近似することができる。
【0032】
【数2】

【0033】
diをΔiと置換し、dtをΔtと置換して、Δiについて解くと、次の式が得られる。
【0034】
【数3】

【0035】
[0038] 式(3)によれば、tおよびt間における時間間隔は、Lコイルを通過しΔi=(Iset−0)だけ線形に増大する電流、電圧V、およびLコイルのインダクタンスによって決定される。式(3)から、v=0であれば、Δi=0となる。つまり、コイルを通過する電流は変化せず、V=0である限り、実質的に一定の値に留まる。
【0036】
[0039] このサイクルの周期は、tおよびt間における時間間隔Tsetによって正確に定義され、一方電流波形の形状は、Iset値によって定義される、フィード・フォワード電流制御によって定義されることがわかる。例えば、図4は、Isetおよび1/2Tsetについて電流波形の形状を示す。1/2Tsetについては、時間間隔(t−t)および(t−t)は、図2および図3における同じ間隔の約1/2に縮小するが、間隔(t−t)および(t−t)が延長するので周期Tset全体は同じままである。
【0037】
[0040] 図示したシステムは、対称四相駆動を設け、各制御エレメントに等しく負荷がかかり、いずれの制御エレメントにも他の制御エレメントよりも多い応力が電気的にかかることはない。電磁石制御のタイミング図は、要求エネルギ・レベルの関数として変化するが、付勢および消勢サイクルの全体的な頻度は、設定された頻度レベルで維持される。IGBT制御モジュール20および21は、直接フィード・フォワード電流制御を実施する。これは、電磁石に供給される電流の高速で、直接的で、その上動的に精度が高い制御を行い、これによって加工物への溶接エネルギの高精度な配信が可能になる。1つのIGBTに対するフィード・フォワード制御の構造を図6に示す。
【0038】
[0041] 各段階の開始時において、信号STARTがフィリップ・フロップ62の出力を高電圧レベルに設定する。IGBT Q1は導通状態に切り替わり、Lコイルにおける電流は徐々に増大する。電流がIfbに達すると、比較器61がフリップ・フロップをリセットし(信号STOP)、これによってIGBT Q1をオフにする。この構成によって、各充電−放電期間内において所望の電流値Isetを直接設定することが可能になる。
【0039】
[0042] 図1の第2固定プラスチック部品Pは、油圧シリンダ28によって係合され、油圧シリンダ28は溶接プロセス・リアルタイム・コントローラ25によって制御される。コントローラ25は、直線位置センサ26および圧力センサ27からの値を繰り返しサンプリングする。直線位置センサ26からのサンプリング値は、プラスチック部品Pのプラスチック部品Pに対する位置を示す。圧力センサ27からのサンプリング値は、プラスチック部品PおよびP間における圧力を示す。この圧力が設定点に達すると、溶接プロセスが開始する。
【0040】
[0043] 圧力センサおよび直線位置センサからの値がサンプリングされ、これらの値は、2つの係合部品間の圧力および第2加工物の位置を正確に監視するため、そしてドライブの位置および圧力を制御するために、ドライブの内部リアルタイム制御回路によって用いることができる。内部リアルタイム制御回路の応答時間は非常に短く(通例5μsから50μs)、したがって溶接プロセスの再現性および精度を大幅に向上させる。
【0041】
[0044] また、図1に示したシステムは、振動センサ29も含む。振動センサ29は、移動エレメント12の振動を検出する誘導型センサ、または他のいずれかのセンサとすることができる。センサ29の移動部品は、移動エレメント12としっかりとリンクされているので、センサ29のコイルにおけるAC EMFがエレメント12の移動の振幅および頻度を反映する。センサ29の出力は、システム周波数インターフェース・モジュール22によってサンプリングされ、一方、システム周波数インターフェース・モジュール22は、制御モジュール20および21に受け渡される値Tsetを定める。
【0042】
[0045] また、図示したシステムは、溶接サイクルにわたって溶接継手に印加される実際の電力量を制御することによって、溶接動作の電力分析(profiling)も行うことができる。これによって、溶接プロセスおよび溶接継手の品質双方の高精度の制御が可能になる。溶接継手に印加される電力Pは、コイルLおよびLに供給される電圧Vおよび電流I双方の関数である。即ち、P=V×Iとなる。電流Iは、前述したIsetの値によって制御され、予め設定されたプロファイルにしたがって、溶接サイクルにわたってこの値を変化させることができる。コイルLおよびLに印加される電圧は、駆動システムに供給される電圧Vの値によって制御され、この値も、図6に示す閉ループ電流制御システムのような閉ループ電圧制御システムを用いることによって、予め設定されたプロファイルにしたがって、溶接サイクルにわたって変化させることができる。電流Iおよび/または電圧Vを制御することによって、溶接継手に配信される電力を、各溶接サイクルにわたって正確に制御して、所望の電力プロファイルを達成することができる。あるいは、予め設定された電力プロファイルに追従することを要求されるP=V*Iの変化を達成するために、油圧シリンダ28によって加工物に加えられる力を調節することによって、所望の電力プロファイルを達成することもできる。
【0043】
[0046] 溶接装置のQファクタは、そのばね、コイル、積層担体(lamination carrier)、駆動および実際の上部工具(upper tooling)の品質の関数である。ばね、コイル、積層担体、およびドライブは、かなり正確な再現性および厳格な許容度を有するが(何故なら、これらは機械間で共有されている標準的な構成部品であるからである)、上部工具は溶接される部品毎に唯一である。したがって、工具の設計および製造の品質は、溶接装置全体の性能に大きな影響を及ぼす可能性がある。振動溶接装置のQファクタに典型的な値は、100および160の間である。この値が大きい程、構築されるシステムは優れており、少ない損失で効率的に動作し、信頼性も高い。この値は、工場検査の間に測定され機械コントローラに格納される。機械は経年変化するので、Qを監視し元の値と比較する。その減少は、工具および機械劣化の早期警告として役立つことができる。また、これはトラブルシューティングの目的にも有益である。ユーザは、このような発生を警告するために、Q値付近に制限を設定することができる。ユーザが工具を交換する場合、新たなQ値を計算する。また、一旦新たな工具を検査したなら、この機構は、工具の品質の定量的尺度としても用いることができる。
【0044】
[0047] 機械的部品の共振周波数を決定するために、図1におけるシステム周波数インターフェース・モジュール22は、「ピング」方法を用いる。この方法は、システム周波数インターフェース・モジュール22が「ピング」イネーブル・パルス(図7参照)を発生したときに開始する。「ピング」イネーブル・パルスは、制御モジュール20および21が、既選択の初期周波数で短い時間期間(通例50msおよび200msの間であり、動作周波数の約10から40サイクルに対応する)コイルXおよびYを活性化することを可能にする。次いで、制御モジュール20および21をディスエーブルする。機械的部品は、音響音叉と同様に、その共振周波数で減衰発振(damped oscillation)を続ける。誘導型センサ29の出力をサンプリングすることによって、発振の周波数Foscをシステム周波数インターフェース・モジュール22によって測定する。測定を多数のサイクルにわたって行い、多数の周期の平均を取り、こうして高い測定精度を得る。次いで、この周波数Foscは、次の「ピング」サイクルにおいて用いられる。
【0045】
[0048] 「ピング」周波数の測定は、溶接装置のスループットに影響を与えないように、溶接サイクルの間に行われる。測定された共振周波数Foscを、システム周波数インターフェース・モジュール22のメモリに格納し、傾向報告を作成する。この報告は、温度変化または他の要因が原因で発生する周波数変動を追跡するために利用される。加えて、各測定の後、新たな周期Tsetを次のように計算する。
【0046】
set=1/Fosc (4)
そして、制御モジュール20および21に受け渡す。
【0047】
[0049] 可動機械系のQファクタを次のように測定する。
Q=Fosc(t−t) (5)
ここで、
Qは、システムQ(品質)ファクタである。
は、「ピング」信号が終わった後の最大振幅の時点である(図7)。
は、振幅が半分に減少したときの時点である(図7)。
oscは、測定された周波数である。
【0048】
[0050] 以上、本発明の特定の実施形態および用途について図示し説明したが、本発明は、本明細書において開示した構造および組成そのものに限定されるのではなく、種々の修正、変更、および変形は、添付した特許請求の範囲において定義される発明の主旨および範囲から逸脱することなく、以上の説明から明白であると考えられることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0049】
10、11 ロータ
12 移動エレメント
20、21 IおよびI制御モジュール
28 油圧シリンダ
22 システム周波数インターフェース・モジュール
23、24 電流センサ
61 比較器
62 フリップ・フロップ
、L固定電磁石
プラスチック
固定プラスチック部品
電源
Q1〜Q4、Q5〜Q8 IGBT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1加工物の第2加工物に対する往復運動を行いつつ、前記加工物同士を互いに推し進めることによって、前記第1および第2加工物を溶接する振動溶接装置であって、
第1および第2加工物支持部であって、前記第1加工物支持部が前記第2加工物支持部に対して往復移動可能に取り付けられている、第1および第2加工物支持部と、
前記第1加工物支持部に結合され、前記第1加工物支持部の往復移動を行うための1対の電磁石と、
前記電磁石に結合され、前記第1加工物支持部の前記往復移動を行うために、前記電磁石を互いに位相ずれで連続的に付勢および消勢する電気駆動システムと、
を備えており、前記電気駆動システムが、
DC電流源と、
前記電源を前記電磁石の各々に制御可能に結合し、前記電源を前記電磁石の各々から制御可能に切断する多数の制御可能電子スイッチング・デバイスと、
前記電磁石に結合され、前記電磁石に供給される電流を表す信号を生成する電流センサと、
前記電子スイッチング・デバイスに結合され、前記電流センサが生成した信号を受け取り、前記電磁石の付勢および消勢を制御して前記第1加工物支持部の往復移動を行うために、前記スイッチング・デバイスをオンおよびオフにする制御回路と、
を備えている、振動溶接システム。
【請求項2】
請求項1記載の振動溶接システムにおいて、前記第1加工物支持部が、振動の共振周波数を有する可動機械系の一部であり、前記制御回路が、前記電磁石の各々を付勢および消勢する各連続サイクルに対して、既選択時間間隔を維持するようにプログラムされており、この既選択時間期間が、前記可動機械系の前記共振周波数に対応する、振動溶接システム。
【請求項3】
請求項1記載の振動溶接システムにおいて、前記制御回路が、前記電流センサによって生成された前記信号を、既設定電流レベルと比較し、前記電磁石に供給される電流を制御することによって、前記電磁石に、したがって、前記加工物に供給されるエネルギ量を制御するように構成されている、振動溶接システム。
【請求項4】
請求項3記載の振動溶接システムにおいて、前記制御回路が、既設定電流レベルIsetが検出されるまで、各電磁石に供給される電流を増大するように構成されている、振動溶接システム。
【請求項5】
請求項3記載の振動溶接システムにおいて、溶接サイクルの間に前記加工物に配信されるエネルギ量についての既設定電力プロファイルに従うように、前記電磁石に、したがって、前記加工物に供給されるエネルギ量を調節するために、前記既設定電流レベルが前記溶接サイクルの間に調節される、振動溶接システム。
【請求項6】
請求項5記載の振動溶接システムにおいて、溶接サイクルの間に前記加工物に配信されるエネルギ量についての既設定電力プロファイルに従うようするために、前記電磁石に、したがって、前記加工物に供給されるエネルギ量を調節するように、前記溶接サイクルの間において前記電磁石の両端にかかる電圧が制御される、振動溶接システム。
【請求項7】
請求項5記載の振動溶接システムにおいて、前記電磁石に供給される電流Iおよび電圧Vが、溶接サイクルの間に前記加工物に配信される電力量Pについての既設定プロファイルに従う電力P=V*Iを、前記加工物に供給するように、前記溶接サイクルの間に制御される、振動溶接システム。
【請求項8】
請求項1記載の振動溶接システムであって、前記第1および第2加工物の間における圧力、および前記第2加工物の直線位置を監視するセンサを含む、振動溶接システム。
【請求項9】
請求項1記載の振動溶接システムであって、前記2つの加工物同士を互いに推し進める油圧シリンダと、前記加工物間における圧力を検出する圧力センサとを含み、前記油圧シリンダの移動が、前記圧力センサによる既選択圧力の検出に応答して開始される、振動溶接システム。
【請求項10】
請求項1記載の振動溶接システムであって、当該振動溶接システムの機械部分の振動を検出し、前記機械部分の共振周波数を測定するときに用いるための出力信号を生成する振動センサを含み、前記制御回路が、前記可動機械系のQを決定するように構成されており、
前記制御回路が、前記電磁石の各々を付勢および消勢する各連続サイクルに対して既選択時間期間を維持するように構成されており、前記既選択時間期間が、前記可動機械系の前記共振周波数に対応する、振動溶接システム。
【請求項11】
第1加工物の題2加工物に対する往復運動を行いつつ、前記加工物同士を互いに推し進めることによって、前記第1および第2加工物を溶接する振動溶接方法であって、
第2加工物支持部に対する往復移動を可能にするように、第1加工物支持部を取り付けるステップと、
前記第1加工物支持部に結合されている1対の電磁石によって、前記第1加工物支持部の往復移動を行うステップと、
前記第1加工物支持部の前記往復移動を行うために、前記電磁石を互いに位相外れで連続的に付勢および消勢するステップであって、
DC電流源を前記電磁石の各々に制御可能に結合し、そして制御可能に切断し、
前記電磁石に供給される電流を表す信号を生成し、
前記電流を表す前記信号を用いて、前記第1加工物支持部の往復移動を行うために、前記電磁石の付勢および消勢を制御する、
ことによって、付勢および消勢を行うステップと、
を備えている、振動溶接方法。
【請求項12】
請求項11記載の振動溶接方法において、前記第1加工物支持部が、振動の共振周波数を有する可動機械系の一部であり、前記制御回路が、前記電磁石の各々を付勢および消勢する各連続サイクルに対して、既選択時間間隔を維持するようにプログラムされており、前記既選択時間期間が、前記可動機械系の前記共振周波数に対応する、振動溶接方法。
【請求項13】
請求項11記載の振動溶接方法において、前記第1加工物支持部が、振動の共振周波数を有する可動機械系の一部であり、前記方法が、前記可動機械系のQを決定するステップを含む、振動溶接方法。
【請求項14】
請求項13記載の振動溶接方法であって、前記可動機械系を評価するためまたはそのトラブルシューティングを行うために、前記可動機械系の前記Qを設定制限値と比較するステップを含む、振動溶接方法。
【請求項15】
請求項13記載の振動溶接方法において、前記可動機械系を発振信号でピングし、次いで前記系の周波数を、前記発振信号の終了後のリング・ダウンの間に測定し、前記発振信号の終了と前記リング・ダウンの振幅がその初期値の半分に減少したときとの間の時間期間を測定することによって、 前記可動機械系の前記Qを決定する、振動溶接方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【図6】
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【図7】
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