説明

振動篩装置、および、制御プログラム

【課題】上下の両アンバランスウェイト間の角度を調節しなくとも、篩枠の振動モードを変える。
【解決手段】振動篩装置10は、内部に篩網20を備え、当該篩網20上に投入された分離対象物を分離する篩枠14と、回転軸22と、当該回転軸22に上下に離して取り付けられたアンバランスウェイト23,24と、回転軸22を回転させるモータ28とからなり、アンバランスウェイト23,24を備えた回転軸22をモータ28によって回転させることにより篩枠14に振動を付与する振動付与部31と、モータ28の駆動を制御する制御装置32とを備える。制御装置32は、モータ28の駆動中に回転軸22の回転速度を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、篩枠を振動させることにより当該篩枠内の分離対象物を分離する振動篩装置、および、当該振動篩装置に組み込まれる制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
振動篩装置は、篩枠を振動させることにより、当該篩枠内の篩網上に投入された分離対象物のうち所定の大きさ以下のものをふるい落とし、これにより、篩枠内の分離対象物を分離(分級)する。その振動は、例えば回転軸に上下に離して2個のアンバランスウェイトを取り付け、このようにアンバランスウェイトを備えた回転軸を回転させることにより発生する。また、その振動は、上部アンバランスウェイトと下部アンバランスウェイトとの間の角度により変化することがわかっている。従って、ふるい条件(例えば、篩枠内の篩網上に投入する分離対象物の形状、粒度、比重など)に合わせて上下の両アンバランスウェイト間の角度を調節することで、篩枠の振動モードを変えることが行われている。しかしながら、上下の両アンバランスウェイト間の角度を調節する作業は面倒であることから、このような作業を要することなく振動モードを効率良く変更できる構成が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−1075号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、上下の両アンバランスウェイト間の角度を調節しなくとも、篩枠の振動モードを変えることができる振動篩装置、および、当該振動篩装置に組み込まれる制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、様々な試験、研究を重ねた結果、アンバランスウェイトを備えた回転軸の回転速度を変化させることによっても、篩枠の振動モードを変えることができることを見出し、本発明をするに至った。
【0006】
即ち、請求項1記載の振動篩装置は、内部に篩網を備え、当該篩網上に投入された分離対象物を分離する篩枠と、回転軸と、当該回転軸に上下に離して取り付けられた上部アンバランスウェイトおよび下部アンバランスウェイトと、前記回転軸を回転させる回転駆動部とからなり、前記上部アンバランスウェイトおよび前記下部アンバランスウェイトを備えた前記回転軸を前記回転駆動部によって回転させることにより前記篩枠に振動を付与する振動付与部と、前記回転駆動部の駆動を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、前記回転駆動部の駆動中に前記回転軸の回転速度を変化させる回転速度変化部を備えることに特徴を有する。
請求項7記載の制御プログラムは、内部に篩網を備え、当該篩網上に投入された分離対象物を分離する篩枠と、回転軸と、当該回転軸に上下に離して取り付けられた上部アンバランスウェイトおよび下部アンバランスウェイトと、前記回転軸を回転させる回転駆動部とからなり、前記上部アンバランスウェイトおよび前記下部アンバランスウェイトを備えた前記回転軸を前記回転駆動部によって回転させることにより前記篩枠に振動を付与する振動付与部と、前記振動付与部の前記回転駆動部の駆動を制御する制御装置とを備える振動篩装置の前記制御装置に組み込まれるプログラムであって、前記回転駆動部の駆動中に前記回転軸の回転速度を変化させる回転速度変化処理を前記制御装置に実行させることに特徴を有する。
これら請求項1および請求項7の発明によれば、回転駆動部の駆動中、つまり、篩枠内に投入された分離対象物の分級動作中に回転軸の回転速度を変化させることで、上下の両アンバランスウェイト間の角度を調節しなくとも、篩枠の振動モードを変えることができる。
【0007】
請求項2記載の振動篩装置は、タイミング設定部を備え、前記回転速度変化部は、前記タイミング設定部によって設定されたタイミングに応じて、前記回転軸の回転速度を変化させることに特徴を有する。また、請求項3記載の振動篩装置は、前記タイミング設定部は、複数のタイミングを設定可能であることに特徴を有する。
請求項8記載の制御プログラムは、前記振動篩装置が備えるタイミング設定部によって設定されたタイミングに応じて、前記回転速度変化処理を前記制御装置に実行させることに特徴を有する。また、請求項9記載の制御プログラムは、前記タイミング設定部によって設定された複数のタイミングに応じて、前記回転速度変化処理を前記制御装置に実行させることに特徴を有する。
これら請求項2,3および請求項8,9の発明によれば、回転軸の回転速度を精度良く、且つ、きめ細かく変化させることができる。
【0008】
請求項4記載の振動篩装置は、前記回転速度変化部は、前記回転軸の回転速度を増加させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の中心部に移動するように振動を発生させ、前記回転軸の回転速度を減少させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の周縁部に移動するように振動を発生させることに特徴を有する。
請求項10記載の制御プログラムは、前記回転速度変化処理は、前記回転軸の回転速度を増加させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の中心部に移動するように振動を発生させ、前記回転軸の回転速度を減少させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の周縁部に移動するように振動を発生させる処理であることに特徴を有する。
これら請求項4および請求項10の発明によれば、篩枠内の篩網上に投入された分離対象物を、分級動作中に、篩枠の中心部に寄せたり篩枠の周縁部に寄せたりすることができ、分離対象物の分級を効率良く行うことができる。
【0009】
請求項5記載の振動篩装置は、前記振動付与部は、前記回転駆動部を、前記上部アンバランスウェイトおよび前記下部アンバランスウェイトを備えた前記回転軸とは別体に備えていることに特徴を有する。
振動を発生させるための駆動源となる回転駆動部と振動の発生源(振動が発生する部分)となる回転軸とを一体に備えた構成、つまり、回転軸を回転駆動部によって直接回転させる構成では、回転軸の回転速度を変化させる制御を行うと、回転駆動部に負荷が直接かかってしまう。そのため、回転駆動部が発熱して故障するといった不具合が生じ得る。
請求項5の発明によれば、振動を発生させるための駆動源となる回転駆動部と振動の発生源となる回転軸とを別体に備えたので、回転軸の回転速度を変化させる制御を行った場合に、回転駆動部に負荷が直接かかることがなく、当該回転駆動部の発熱や故障を回避することができる。
【0010】
請求項6記載の振動篩装置は、前記回転駆動部は、インバータモータで構成されていることに特徴を有する。
この請求項6の発明によれば、回転駆動部をインバータモータで構成したので、回転軸の回転速度を変化させる制御において当該回転駆動部の負荷を軽減することができる。また、回転駆動部を低トルクで駆動することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】一実施形態に係るものであり、振動篩装置の構成を右半分を断面にて示す正面図
【図2】篩枠の平面図
【図3】カップリングおよび下部アンバランスウェイトを示す平面図
【図4】振動篩装置の電気的構成を示すブロック図
【図5】アンバランスウェイト間の角度と篩枠内の分離対象物の移動状態との関係を模式的に示す図
【図6】標準型の構成における回転軸の回転速度と振動の大きさおよび篩枠内の分離対象物の移動状態との関係を模式的に示す図
【図7】R型の構成における図6相当図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、振動篩装置10の全体構成を示している。振動篩装置10の架台11上には、複数の枠受スプリング12を介して振動体ベース13が振動自在に支持されている。この振動体ベース13の上部には、篩枠14が固定されている。篩枠14は、振動体ベース13の上部に下円筒枠15,中円筒枠16,上円筒枠17を積み上げた構成である。上円筒枠17の上面には、中央に原料投入口18を有するテーパ状の蓋19が被せられている。篩枠14の内部は、篩網20によって上下に区画されている。この篩網20は、その周縁部が中円筒枠16と上円筒枠17との間に挟み込まれて固定されている。
【0013】
振動体ベース13の中心部の下面には、振動体ハウジング21が固定されている。この振動体ハウジング21には、軸受(図示せず)を介して回転軸22が回転可能に支持されている。この回転軸22のうち振動体ハウジング21の上方に突出した上端部には、上部アンバランスウェイト23が取り付けられている。この上部アンバランスウェイト23は、回転軸22に固定されており、当該回転軸22と一体に回転する。一方、回転軸22のうち振動体ハウジング21の下方に突出した下端部には、下部アンバランスウェイト24が取り付けられている。この下部アンバランスウェイト24は、回転軸22に回動可能に支持されている。
【0014】
回転軸22には、カップリング25および当該カップリング25に固定された駆動スプリング26を介してVプーリ27が取り付けられている。このVプーリ27は、架台11の内底面上に回転可能に支持されている。一方、架台11の内側面には、モータ28(回転駆動部に相当)が固定されている。この場合、モータ28は、インバータ装置(図示せず)によって駆動が制御されるインバータモータで構成されている。このモータ28の回転軸28aには、Vプーリ29が取り付けられている。Vプーリ27とVプーリ29との間には、Vベルト30が掛け渡されている。モータ28は、回転軸28aの回転を、Vプーリ29、Vベルト30、Vプーリ27を介して回転軸22に伝達する。これにより、モータ28は回転軸22を回転させる。なお、これら回転軸22、上下の両アンバランスウェイト23,24、モータ28により振動付与部31が構成されている。振動付与部31は、上下の両アンバランスウェイト23,24を備えた回転軸22をモータ28によって回転させることにより篩枠14に振動を付与する。この場合、振動付与部31は、振動を発生させるための駆動源となるモータ28と、振動の発生源(振動が発生する部分)となる回転軸22とを、Vプーリ27、Vプーリ29、Vベルト30を介して別体に備えた構成である。
【0015】
なお、振動篩装置10は、モータ28によって回転軸22を一方向のみに回転させる標準型の構成としてもよいし、モータ28によって回転軸22を正転方向および逆転方向に回転させるR型(リバース型)の構成としてもよい。振動篩装置10をR型の構成とした場合、図3に示す矢印A方向をモータ28(回転軸22)の正転方向とし、図3に示す矢印A方向とは反対方向をモータ28(回転軸22)の逆転方向とする。
モータ28には、制御装置32が接続されている。この制御装置32を含む振動篩装置10の電気的構成については後述する。
【0016】
篩枠14の一部(この場合、篩枠14の上部)を構成する上円筒枠17の外周部には、篩枠14内の篩網20上に残った分離対象物を振動篩装置10の機外に排出するための網上排出口33が設けられている。この網上排出口33には、当該網上排出口33から外方に延びる排出口体34が設けられている。図2に示すように、この排出口体34は、上円筒枠17(篩枠14)の外周面に対して回転軸22の正転方向側(図3に示す矢印A方向参照)に傾斜して突出している。
【0017】
また、篩枠14の一部(この場合、篩枠14の下部)を構成する下円筒枠15の外周部には、網下排出口(図示せず)が設けられている。この網下排出口には、当該網下排出口から外方に延びる排出口体35が設けられている。下円筒枠15の底面には、円錐状の受け部36が設けられている。篩枠14内の篩網20からふるい落とされ受け部36で受けられた分離対象物は、網下排出口および排出口体35を通して振動篩装置10の機外に排出される。
【0018】
上述したように、上部アンバランスウェイト23は回転軸22に固定されている。これに対して、下部アンバランスウェイト24は回転軸22に回動可能に支持されている。従って、振動篩装置10は、上部アンバランスウェイト23と下部アンバランスウェイト24との間の角度が調整可能である。また、これら両アンバランスウェイト23,24間の角度に応じて、モータ28が駆動して回転軸22が回転されたときに篩枠14(特に篩網20)に発生する振動が異なることが分かっている。
【0019】
図3に示すように、下部アンバランスウェイト24の両側には、第1位置規制部材37および第2位置規制部材38が設けられている。これら位置規制部材37,38は、回転軸22と一体に回転する部材であるカップリング25に設けられている。これら位置規制部材37,38は、それぞれボルト状の部材からなり、その頭部が当接部37a,38aとなっている。また、これら位置規制部材37,38は、その位置を調整可能に構成されている。下部アンバランスウェイト24の調整可能範囲は、これら位置規制部材37,38に規制されることによって定められる。従って、上部アンバランスウェイト23と下部アンバランスウェイト24との間の角度も、これら位置規制部材37,38によって定められる。なお、位置規制部材37,38は、回転軸22と一体に回転する部材ではなく、回転軸22に設けてもよい。
【0020】
カップリング25の周縁部には、回転軸22の中心と上部アンバランスウェイト23の重心とを結んだ直線Bに関し対称的に設けられた円弧状の長孔39,40が設けられている。これら長孔39,40に、位置規制部材37,38のボルト部分(ねじ切り部分)を挿通する。そして、これらボルト部分の下端部をナット(図示せず)で締め付ける。これにより、位置規制部材37,38は、それぞれ、その位置が固定される。
【0021】
そして、これら位置規制部材37,38は、ナットを緩めることにより長孔39,40に沿って移動可能となる。例えばモータ28の正転時における上下の両アンバランスウェイト23,24間の角度を変える際には、第1位置規制部材37を所望の角度の目盛り41に移動させた後、ナットを締め付けて固定する。一方、モータ28の逆転時における上下の両アンバランスウェイト23,24間の角度を変える際には、第2位置規制部材38を所望の角度の目盛り41に移動させた後、ナットを締め付けて固定する。モータ28の正転時には、回転軸22は矢印A方向に回転する。そのため、下部アンバランスウェイト24は、第1位置規制部材37の当接部37aに当接して、上部アンバランスウェイト23に対して同位置、或いは、遅れた位置(上部アンバランスウェイト23側から見て左側の位置)で回転軸22と一体に回転する。一方、モータ28の逆転時には、回転軸22は矢印A方向とは反対方向に回転する。そのため、下部アンバランスウェイト24は、第2位置規制部材38の当接部38aに当接して、上部アンバランスウェイト23に対して同位置、或いは、遅れた位置(上部アンバランスウェイト23側から見て右側の位置)で回転軸22と一体に回転する。
【0022】
次に、振動篩装置10の電気的構成について図4を参照しながら説明する。
制御装置32は、マイクロコンピュータを主体としてRAM、ROMなどを備えて構成されており、制御プログラムに基づいてモータ28の駆動を制御するほか、振動篩装置10の動作全般を制御する。この制御装置32には、操作入力部51およびタイマー52(タイミング設定部に相当)が接続されている。また、制御装置32は、マイクロコンピュータにおいて制御プログラムを実行することにより、回転速度変化部53をソフトウェアによって仮想的に実現する。
【0023】
操作入力部51は、使用者によって操作されるものである。使用者は、この操作入力部51を介して、例えば、回転軸22の回転速度の初期値、後述する回転速度変化処理による変更後の回転軸22の回転速度、回転速度変化処理(後述)を実行するタイミングなどを設定することができる。
【0024】
タイマー52は、回転速度変化部53が回転速度変化処理(後述)を実行するタイミングを設定する。このタイマー52は、回転速度変化処理の実行タイミングとして複数のタイミングを設定可能である。また、タイマー52は、回転速度変化処理の実行タイミングを、モータ28の駆動中における所定の時間範囲内(例えば、モータ28の駆動開始後、0秒から9999時間の範囲内)において、所定の単位時間(例えば、10秒単位)で設定可能である。なお、タイマー52は、使用者が操作入力部51を介して入力したタイミングを回転速度変化処理の実行タイミングとして設定してもよいし、予め制御プログラムで定められたタイミングを回転速度変化処理の実行タイミングとして設定してもよい。
【0025】
回転速度変化部53は、モータ28の駆動中、つまり、篩枠14内に投入された分離対象物の分級動作中に、回転軸22の回転速度を所定範囲内で変化させる回転速度変化処理を制御装置32に実行させる。この場合、回転軸22の回転速度は、この場合、900rpm(30Hz)から2100rpm(70Hz)の範囲で変更可能である。この回転速度変化処理は、回転軸22の回転速度を増加させることにより、篩枠14内の篩網20上に投入された分離対象物が当該篩枠14の中心部に移動するように振動を発生させ、回転軸22の回転速度を減少させることにより、篩枠14内の篩網20上に投入された分離対象物が当該篩枠14の周縁部に移動するように振動を発生させる処理である。具体的には、回転軸22の回転速度を例えば1800rpmに増加させると、篩枠14内の分離対象物が当該篩枠14の中心部に移動するようになる。一方、回転軸22の回転速度を例えば900rpmに減少させると、篩枠14内の分離対象物が当該篩枠14の周縁部に移動するようになる。回転速度変化部53は、モータ28の駆動中(分級動作中)において、タイマー52によって設定された1つ、あるいは、複数の実行タイミングに応じて、回転速度変化処理を制御装置32に実行させる。
【0026】
上記構成の振動篩装置10は、篩枠14の振動モードを2つの態様によって変更可能である。即ち、上下の両アンバランスウエイト23,24の位置調整による振動モードの変更態様と、回転速度変化部53の回転速度変化処理による振動モードの変更態様である。ここで、これら2つの変更態様について順に説明する。
【0027】
(アンバランスウエイトの位置調整による振動モードの変更態様)
まず、上下の両アンバランスウエイト23,24の位置調整による振動モードの変更態様について図5を参照しながら説明する。なお、ここでは、振動篩装置10をR型の構成とした場合について説明する。
図5の上段には、上下の両アンバランスウエイト23,24の位置関係を示している。図5の下段には、図5の上段に示す両アンバランスウエイト23,24の位置関係に対応付けて、篩枠14内の篩網20上の分離対象物の移動状態を篩枠14の上面から見て示している。
【0028】
図5(a)に示すように、下部アンバランスウェイト24が上部アンバランスウエイト23の左側に約90度の角度を有して位置する状態では、篩枠14内の篩網20上の分離対象物は、中心部に向かって矢印A方向に渦巻くように移動する。
図5(b)に示すように、下部アンバランスウェイト24が上部アンバランスウエイト23の左側に約60度の角度を有して位置し、且つ、回転軸22が矢印A方向に回転する状態、或いは、下部アンバランスウェイト24が上部アンバランスウエイト23の左側に約45度の角度を有して位置し、且つ、回転軸22が矢印A方向に回転する状態では、篩網20上の分離対象物は、中心部から周縁部(外周部)に向かって矢印A方向に渦巻くように移動する。
【0029】
図5(c)に示すように、上下の両アンバランスウエイト23,24の位置が一致する状態では、篩網20上の分離対象物は、回転軸22の回転方向に関係なく、中心部から周縁部に向かって概ね直線状に移動する。
図5(d)に示すように、下部アンバランスウェイト24が上部アンバランスウエイト23の右側に約60度の角度を有して位置し、且つ、回転軸22が矢印A方向とは反対方向に回転する状態、或いは、下部アンバランスウェイト24が上部アンバランスウエイト23の右側に約45度の角度を有して位置し、且つ、回転軸22が矢印A方向とは反対方向に回転する状態では、篩網20上の分離対象物は、周縁部に向かって矢印A方向とは反対方向に渦巻くように移動する。
【0030】
なお、上述のように、回転軸22が矢印A方向に回転するとき、下部アンバランスウェイト23は第1位置規制部材37の当接部37aに当接する。一方、回転軸22が矢印A方向とは反対方向に回転するとき、下部アンバランスウェイト23は第2位置規制部材38の当接部38aに当接する。
【0031】
従って、図5(a)および図5(b)に示す振動モードは、回転軸22が矢印A方向に回転したときに得ることができるモードである。また、図5(d)に示す振動モードは、回転軸22が矢印A方向とは反対方向に回転したときに得ることができるモードである。そして、図5(c)に示す振動モードは、回転軸22を矢印A方向、或いは、矢印A方向とは反対方向の何れの方向に回転したときにも得ることができるモードである。
【0032】
また、上記の各振動モードに対応する上下の両アンバランスウエイト23,24間の角度は、位置規制部材37,38の位置を調整することで、ふるい条件(例えば、篩枠14内の篩網20上に投入する分離対象物の形状、粒度、比重など)に応じて適宜調節することができる。
【0033】
(回転速度変化処理による振動モードの変更態様)
次に、制御装置32が回転速度変化部53によって実行する回転速度変化処理による振動モードの変更態様について図6および図7を参照しながら説明する。なお、図6は、振動篩装置10を標準型の構成とした場合を示し、図7は、振動篩装置10をR型の構成とした場合を示す。また、この振動モードの変更態様においては、上下の両アンバランスウエイト23,24の位置を調整せず、両アンバランスウエイト23,24間の角度を所定角度(例えば、45度)で固定する。
【0034】
まず、振動篩装置10を標準型の構成とした場合について図6を参照しながら説明する。
図6(a)には、回転軸22の回転速度と振動の大きさとの関係を示している。この場合、破線Vは、篩枠14(特に篩網20部分)に付与される垂直方向の振動(垂直振動)の大きさを示し、実線Hは、篩枠14(特に篩網20部分)に付与される水平方向の振動(水平振動)の大きさを示している。なお、図6(a)では、回転軸22の回転速度は右側ほど大きく、振動の大きさは上側ほど大きい。図6(b)には、図6(a)に示す回転軸22の回転速度に対応付けて、篩枠14内の篩網20上の分離対象物の移動状態を篩枠14の側面から見て示している。図6(c)には、図6(a)に示す回転軸22の回転速度に対応付けて、篩枠14内の篩網20上の分離対象物の移動状態を篩枠14の上面から見て示している。
【0035】
図6(a)に示すように、篩枠14の水平振動、つまり、篩枠14内の分離対象物を主として水平方向に移動させる振動の大きさ(実線H参照)は、回転軸22の回転速度が小さいほど大きくなる。一方、篩枠14の垂直振動の大きさ、つまり、篩枠14内の分離対象物を主として垂直方向に移動させる振動の大きさ(破線V参照)は、回転軸22の回転速度が大きいほど大きくなる。そして、篩枠14には、回転軸22の回転速度に応じた水平振動と垂直振動とを合成した振動が付与される。
【0036】
従って、図6(b)および図6(c)に示すように、回転軸22の回転速度が小さい状態、つまり、垂直振動よりも水平振動の方が大きい状態では、篩枠14内の分離対象物は、主として水平方向に沿って概ね直線状に、あるいは、主として水平方向に沿って矢印A方向に若干渦巻きながら、篩枠14の周縁部側に移動する。一方、回転軸22の回転速度が大きい状態、つまり、水平振動よりも垂直振動の方が大きい状態では、篩枠14内の分離対象物は、主として垂直方向に沿って矢印A方向に渦巻きながら、篩枠14の中心部側に移動する。なお、分離対象物が篩枠14内において篩網20上を渦巻く領域は、回転軸22の回転速度が大きくなるほど、篩枠14の中心部に向かって狭くなっていく。
【0037】
次に、振動篩装置10をR型の構成とした場合について図7を参照しながら説明する。
R型の構成においては、上述した標準型の構成における挙動(図6参照)が、回転軸22の正転方向側(図7では中央部よりも右側)と逆転方向側(図7では中央部よりも左側)において対称的に示される。
【0038】
即ち、図7(a)に示すように、篩枠14の水平振動、つまり、篩枠14内の分離対象物を主として水平方向に移動させる振動の大きさ(実線H参照)は、回転軸22の正転方向側および逆転方向側の双方において、回転軸22の回転速度が小さいほど大きくなる。一方、篩枠14の垂直振動の大きさ、つまり、篩枠14内の分離対象物を主として垂直方向に移動させる振動の大きさ(破線V参照)は、回転軸22の正転方向側および逆転方向側の双方において、回転軸22の回転速度が大きいほど大きくなる。そして、篩枠14には、回転軸22の正転方向側および逆転方向側の双方において、回転軸22の回転速度に応じた水平振動と垂直振動とを合成した振動が付与される。
【0039】
従って、図7(b)および図7(c)に示すように、回転軸22の正転方向側および逆転方向側の双方において、回転軸22の回転速度が小さい状態、つまり、垂直振動よりも水平振動の方が大きい状態では、篩枠14内の分離対象物は、主として水平方向に沿って概ね直線状に、あるいは、主として水平方向に沿って矢印A方向、あるいは、矢印A方向とは反対方向に若干渦巻きながら、篩枠14の周縁部側に移動する。また、回転軸22の正転方向側および逆転方向側の双方において、回転軸22の回転速度が大きい状態、つまり、水平振動よりも垂直振動の方が大きい状態では、篩枠14内の分離対象物は、主として垂直方向に沿って矢印A方向、あるいは、矢印A方向とは反対方向に渦巻きながら、篩枠14の中心部側に移動する。なお、分離対象物が篩枠14内において篩網20上を渦巻く領域は、回転軸22の正転方向側および逆転方向側の双方において、回転軸22の回転速度が大きくなるほど、篩枠14の中心部に向かって狭くなっていく。
【0040】
次に、回転速度変化部53の回転速度変化処理による振動モードの変更態様について本発明者が行った試験運転の結果について説明する。
(試験運転1)
試験運転1では、分離対象物として刻み海苔を用いた。この場合、篩網20のメッシュサイズは、製品対象となる大きさ(この場合、概ね2mm×7mm)の刻み海苔、製品対象とならない大きさ(この場合、概ね2mm×30mm)の刻み海苔、および異物を含む製品原料から、製品対象となる大きさの刻み海苔(2mm×7mm)を分離可能なサイズとした。即ち、この試験運転1は、長さの異なるものを分離する場合の試験運転である。また、篩枠14に投入した刻み海苔の総量は3kgとした。そして、分級動作中(モータ28の駆動中)に、回転軸22の回転速度を、1200rpm(40Hz)と1800rpm(60Hz)とを交互に繰り返すように変化させた。なお、回転軸22の回転速度を1200rpmとする期間は10秒、1800rpmとする期間は5秒とした。即ち、回転軸22の回転速度を、10秒ごとに1200rpmから1800rpmに変化させ、5秒ごとに1800rpmから1200rpmに変化させた。
この試験運転1によれば、投入した3kgの刻み海苔を完全に分級するまでの所要時間は4分30秒であった。即ち、試験運転1の処理量(仕事率)は、40kg/Hrであった。
【0041】
これに対して、この試験運転1の比較例として比較運転1を実施した。この比較運転1では、分級動作中における回転軸22の回転速度を1800rpm(60Hz)で固定した。この比較運転1によれば、投入した3kgの刻み海苔を完全に分級するまでの所要時間は7分であった。即ち、比較運転1の処理量(仕事率)は、25kg/Hrであった。
即ち、分級動作中に回転軸22の回転速度を変化させた試験運転1の処理能力(処理量)は、分級動作中に回転軸22の回転速度を変化させない比較運転1の処理能力(処理量)の1.6倍である。
【0042】
(試験運転2)
試験運転2では、分離対象物として生芋(澱粉)を用いた。即ち、この試験運転2は、湿り気を含むものを分離する場合の試験運転である。また、篩枠14に投入した生芋の総量は600ccとした。そして、分級動作中(モータ28の駆動中)に、回転軸22の回転速度を、1350rpm(45Hz)と1800rpm(60Hz)とを交互に繰り返すように変化させた。なお、回転軸22の回転速度を1350rpmとする期間は10秒、1800rpmとする期間は5秒とした。即ち、回転軸22の回転速度を、10秒ごとに1350rpmから1800rpmに変化させ、5秒ごとに1800rpmから1350rpmに変化させた。
この試験運転2によれば、投入した600ccの生芋を完全に分級するまでの所要時間は4分であった。即ち、試験運転2の処理量(仕事率)は、9000cc/Hrであった。
【0043】
これに対して、この試験運転2の比較例として比較運転2を実施した。この比較運転2では、篩枠14に投入した生芋の総量は試験運転2よりも少ない200ccとした。また、分級動作中における回転軸22の回転速度を1800rpm(60Hz)で固定した。この比較運転2によれば、投入した200ccの生芋を完全に分級するまでの所要時間は4分であった。即ち、比較運転2の処理量(仕事率)は、3000cc/Hrであった。
即ち、分級動作中に回転軸22の回転速度を変化させた試験運転2の処理能力(処理量)は、分級動作中に回転軸22の回転速度を変化させない比較運転2の処理能力(処理量)の3倍である。
【0044】
以上に説明したように本実施形態によれば、振動篩装置10は、回転速度変化部53によって、モータ28の駆動中、つまり、篩枠14内に投入された分離対象物の分級動作中に回転軸22の回転速度を変化させる。これにより、上下の両アンバランスウェイト23,24間の角度を調節しなくとも、篩枠14の振動モードを変えることができる。
また、振動篩装置10は、タイマー52によって設定された1つ、あるいは、複数の実行タイミングに応じて、回転軸22の回転速度を変化させる。これにより、回転軸22の回転速度を精度良く、且つ、きめ細かく変化させることができる。
【0045】
また、振動篩装置10は、回転軸22の回転速度を増加させることにより、篩枠14内の篩網20上に投入された分離対象物が当該篩枠14の中心部に移動するように振動を発生させ、回転軸22の回転速度を減少させることにより、篩枠14内の篩網20上に投入された分離対象物が当該篩枠14の周縁部に移動するように振動を発生させる。これにより、篩枠14内の篩網20上に投入された分離対象物を、分級動作中に、篩枠14の中心部に寄せたり篩枠14の周縁部に寄せたりすることができ、分離対象物の分級を効率良く行うことができる。
【0046】
また、振動篩装置10は、振動を発生させるための駆動源となるモータ28と振動の発生源となる回転軸22とを別体に備えた。これにより、回転軸22の回転速度を変化させる制御を行った場合に、モータ28に負荷が直接かかることがなく、当該モータ28の発熱や故障を回避することができる。
また、振動篩装置10は、モータ28をインバータモータで構成したので、回転軸22の回転速度を変化させる制御において当該モータ28の負荷を軽減することができる。また、モータ28を低トルクで駆動することが可能である。
【0047】
なお、振動篩装置10をR型の構成とした場合には、回転軸22を一方向に回転させることで篩枠14内の分離対象物を分離し、その後、回転軸22を他方向に回転させることで篩枠14内に残った分離対象物を篩枠14から排出することが可能である。つまり、篩枠14内の分離対象物を分離する分級モードと、分級後に篩枠14内に残った分離対象物を排出する排出モードとを、回転軸22の回転方向を切り替えることによって明確に区別して実行することができる。従って、R型の振動篩装置10は、篩枠14内に投入した分離対象物を完全に分級(分離)した後に次の分離対象物を篩枠14内に投入するバッチ投入運転に適している。なお、本発明は、このようなR型の振動篩装置10にも適用可能である。
【0048】
一方、振動篩装置10を標準型とした場合には、回転軸22の回転方向を変更することができない。しかしながら、回転速度変化部53の回転速度変化処理によって振動モードを適宜変更することで、分級動作中に、篩枠14内の分離対象物を篩枠14の中心部に寄せたり篩枠14の周縁部に寄せたりすることを繰り返すことができる。そのため、篩枠14内に投入した分離対象物が完全に分級される前に次の分離対象物を篩枠14内に投入したとしても、篩枠14内の分離対象物をまとめて分級することが可能である。従って、標準型の振動篩装置10は、回転速度変化部53を備えることで、篩枠14内に投入した分離対象物が完全に分級する前に次の分離対象物を篩枠14に投入可能な連続投入運転に適したものとなる。
【0049】
(その他の実施形態)
本発明は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、例えば次にように変形または拡張することができる。
回転軸22の回転速度の変更可能範囲は適宜設定可能であるが、好ましくは、900rpmから2100rpmの範囲、より好ましくは、上述の試験運転1,2に示したように1200rpmから1800rpmの範囲で設定するとよい。
モータ28は、インバータモータではなく、一般的な汎用モータで構成してもよい。
篩枠14に投入する分離対象物は、上述した刻み海苔や生芋に限られるものではなく、例えばチップコンデンサなど種々の対象物を投入することができる。
本発明は、その要旨を逸脱しない範囲で適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0050】
図面中、10は振動篩装置、14は篩枠、20は篩網、22は回転軸、23は上部アンバランスウェイト、24は下部アンバランスウェイト、28はモータ(回転駆動部)、31は振動付与部、32は制御装置、52はタイマー(タイミング設定部)、53は回転速度変化部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に篩網を備え、当該篩網上に投入された分離対象物を分離する篩枠と、
回転軸と、当該回転軸に上下に離して取り付けられた上部アンバランスウェイトおよび下部アンバランスウェイトと、前記回転軸を回転させる回転駆動部とからなり、前記上部アンバランスウェイトおよび前記下部アンバランスウェイトを備えた前記回転軸を前記回転駆動部によって回転させることにより前記篩枠に振動を付与する振動付与部と、
前記回転駆動部の駆動を制御する制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
前記回転駆動部の駆動中に前記回転軸の回転速度を変化させる回転速度変化部を備えることを特徴とする振動篩装置。
【請求項2】
タイミング設定部を備え、
前記回転速度変化部は、前記タイミング設定部によって設定されたタイミングに応じて、前記回転軸の回転速度を変化させることを特徴とする請求項1記載の振動篩装置。
【請求項3】
前記タイミング設定部は、複数のタイミングを設定可能であることを特徴とする請求項2記載の振動篩装置。
【請求項4】
前記回転速度変化部は、
前記回転軸の回転速度を増加させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の中心部に移動するように振動を発生させ、
前記回転軸の回転速度を減少させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の周縁部に移動するように振動を発生させることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の振動篩装置。
【請求項5】
前記振動付与部は、前記回転駆動部を、前記上部アンバランスウェイトおよび前記下部アンバランスウェイトを備えた前記回転軸とは別体に備えていることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の振動篩装置。
【請求項6】
前記回転駆動部は、インバータモータで構成されていることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載の振動篩装置。
【請求項7】
内部に篩網を備え、当該篩網上に投入された分離対象物を分離する篩枠と、
回転軸と、当該回転軸に上下に離して取り付けられた上部アンバランスウェイトおよび下部アンバランスウェイトと、前記回転軸を回転させる回転駆動部とからなり、前記上部アンバランスウェイトおよび前記下部アンバランスウェイトを備えた前記回転軸を前記回転駆動部によって回転させることにより前記篩枠に振動を付与する振動付与部と、
前記振動付与部の前記回転駆動部の駆動を制御する制御装置と、
を備える振動篩装置の前記制御装置に組み込まれるプログラムであって、
前記回転駆動部の駆動中に前記回転軸の回転速度を変化させる回転速度変化処理を前記制御装置に実行させることを特徴とする制御プログラム。
【請求項8】
前記振動篩装置が備えるタイミング設定部によって設定されたタイミングに応じて、前記回転速度変化処理を前記制御装置に実行させることを特徴とする請求項7記載の制御プログラム。
【請求項9】
前記タイミング設定部によって設定された複数のタイミングに応じて、前記回転速度変化処理を前記制御装置に実行させることを特徴とする請求項8記載の制御プログラム。
【請求項10】
前記回転速度変化処理は、
前記回転軸の回転速度を増加させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の中心部に移動するように振動を発生させ、
前記回転軸の回転速度を減少させることにより、前記篩枠内の前記篩網上に投入された分離対象物が当該篩枠の周縁部に移動するように振動を発生させる処理であることを特徴とする請求項7から9の何れか1項に記載の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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