説明

振動締固め機及びこの振動締固め機を用いる締固め方法

【課題】容易に移動が可能で、かつ、側部に壁又は塀が設けられている締固め対象箇所でも壁等に損傷を与えることなく、強固に締固めることが可能な振動締固め機及びこの振動締固め機を用いた締固め方法を提供する。
【解決手段】振動締固め機1は、振動を発生させるための起振装置4と、起振装置4を吊り下げて支持する支持手段5と、起振装置4による振動を土質材料3に伝達するプレート6と、起振装置4の振動を吸収するための緩衝手段7とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベントナイト、ベントナイト混合土、土、砕石等の土質材料を締固めるための振動締固め機及びその振動締固め機を用いた締固め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
締固め対象箇所に敷設されたベントナイト等の土質材料を強固に締固める方法として、例えば、特許文献1には、自走可能な前走車及び後走車と、両車間に接続された支持枠と、この支持枠に支持された錘及び型枠とを備えた転圧機を用いて、錘で土質材料を締固める方法が開示されている。この方法では、前走車及び後走車の間に、締固め対象箇所を囲うように型枠を設置し、その中に敷設された土質材料に錘を複数回落下させることにより締固めて、十分に締固めがなされたら、前走車及び後走車を所定の距離だけ移動させて、再び、前述した方法で路盤を締固める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−12356号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の締固め方法では、側部に壁が設けられている締固め対象箇所の隅部を締固める際には、壁側に型枠を設置することができないので、錘を落下させる向きがずれると、錘の下端部が壁に接触し、壁面に傷を付けてしまう。そして、壁面を傷つけた場合には、補修を行わなければならないため、工期の遅れが生じてしまうという問題点があった。一方、壁に接触することを避けようとすると、締固め対象箇所の隅部を締固めることができないという問題点があった。
【0005】
また、転圧機が大がかりなため、転圧機を所定の位置に設置する設置作業及び締固め後、次の場所に移動するための撤去作業等に手間と時間がかかるという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、容易に移動が可能で、かつ、側部に壁又は塀が設けられている締固め対象箇所でも壁等に損傷を与えることなく、強固に締固めることが可能な振動締固め機及びこの型振動締固め機を用いた締固め方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、側部に壁又は塀が立設された締固め対象箇所を、前記壁又は塀に沿って移動させながら締固めるための振動締固め機であって、
振動を発生させる起振装置と、
前記起振装置に取り付けられ、前記起振装置による振動を前記締固め対象箇所に敷設された土質材料に伝達するプレートと、
前記起振装置の側部に設けられ、前記起振装置の振動を吸収する緩衝手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、起振装置の側部に緩衝手段を備えているので、側部に壁又は塀が設けられている締固め対象箇所の隅部を締固める際に、起振装置が直接、壁等に接触することを防止できる。また、起振装置の振動を緩衝手段が吸収するので、緩衝手段が壁等に接していても壁等を傷つけることがない。
【0009】
また、緩衝手段を壁等に接した状態で隅部を締固めた後、壁等に沿って次の場所へ移動する際は、まず、緩衝手段を縮ませて移動し、次に、緩衝手段を伸ばすことにより緩衝手段を壁等に接した状態とし、再び、締固めることが可能となる。このとき、緩衝手段の伸縮は容易なので、短時間で次の場所へ移動するができる。
【0010】
本発明において、前記起振装置を吊り下げて支持する支持手段を更に備え、前記起振装置が前記支持手段に吊り下げられた状態で前記締固め対象箇所を締固めることとすれば、起振装置の上下左右方向への移動が容易となる。したがって、締固め後、次の場所へ短時間で移動するができる。
【0011】
本発明において、前記プレートは、移動方向前方側の端部に、下向きに突出した流動防止材を備えることとすれば、土質材料を締固める際に、土質材料がプレートの下から外方へ移動することを防止できる。したがって、土質材料を効率良く締固めることができる。
【0012】
本発明において、前記流動防止材は、平板状の鋼材であることとすれば、入手性に優れているので、摩耗や破損してもすぐに交換することができる。
【0013】
また、本発明において、前記流動防止材は、櫛形の形状を有することとすれば、土質材料を締固める際に、櫛状の切り込み部に入り込んだ土質材料を周囲に流出することを防止できる。さらに、櫛形の形状を有することにより、新たに締固める部分の土質材料と、既に締固めた部分の土質材料とが分断されないので、それらを容易に一体化することができる。したがって、土質材料を効率良く締固めることができる。
【0014】
本発明において、前記緩衝手段は、気体圧により膨縮可能な膨張体であることとすれば、側部に壁等が設けられている締固め対象箇所の隅部を締固める際には、膨張体が壁等の形状に沿って変形して壁等に面的に接するので、壁等を傷つけることがない。
【0015】
また、例えば、両側に壁が近接する狭隘な締固め対象箇所を締固める場合には、膨張体を膨張させてこの膨張体を両側の壁に接した状態で締固め作業を実施することができる。このとき、締固め後、次の場所へ移動する際に気体圧を低下させて膨張体を少し収縮させることにより、壁と膨張体との間に隙間が生じるので、上下左右方向へ容易に移動が可能となる。そして、次の場所で再び締固め作業を実施する前に気体圧を上昇させて膨張体を膨張させることにより、締固め装置が壁に接触することを防止できる。この気体圧の調整は、短時間で行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0016】
本発明において、前記緩衝手段は、一端が前記起振装置に接続され、伸縮可能な伸縮材と、前記伸縮材の他端に接続された板状部材と、前記伸縮材の伸縮を制御する制御装置とを備えることとすれば、簡便な装置なので、安価に構築することができる。
【0017】
また、側部に壁等が設けられている締固め対象箇所の隅部を締固める際には、起振装置の振動を伸縮材が吸収することにより、板状部材は壁等に対して固定されるので、壁等を傷つけることがない。
【0018】
さらに、例えば、両側に壁が近接する狭隘な締固め対象箇所を締固める場合には、伸縮材を伸張させて板状部材が両側の壁に接した状態で締固め作業を実施することができる。このとき、締固め後、次の場所へ移動する際に制御装置により伸縮材を少し収縮させることにより、壁と板状部材との間に隙間が生じるので、上下左右方向へ容易に移動が可能となる。そして、次の場所で再び締固め作業を実施する前に伸縮材を伸張させることにより、締固め装置が壁に接触することを防止できる。伸縮材の伸縮は、短時間で行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0019】
本発明において、一部が前記板状部材の表面から突出するように前記板状部材内に、回転可能に埋め込まれた球体を更に備えることとすれば、側部に壁等が設けられている締固め対象箇所の隅部を締固める際に、壁等に接した球体が回転するので、壁等を傷つけることがない。
【0020】
さらに、締固め対象箇所を締固め後、次の場所へ移動する際は、球体を壁等に接したまま移動させても球体が回転することにより、摩擦を生じないので、そのまま移動することができる。
【0021】
また、本発明において、前記プレートは、その側面に緩衝材を備えることとすれば、プレートが直接、既設の壁等に接触することを防止できる。そして、起振装置から伝達される振動を緩衝材が吸収するので、緩衝材が壁等に接していても、壁等を傷つけることがない。
【0022】
また、本発明において、前記緩衝材は、気体圧により膨縮可能な膨張体であることとすれば、側部に壁等が設けられている締固め対象箇所の隅部を締固める際には、膨張体が壁等に面的に接するので、壁等を傷つけることがない。
【0023】
さらに、膨張体は、所定の圧力を有するので、土質材料を締固めることができる。したがって、側部に壁等が設けられている締固め対象箇所の隅部を膨張体で締固めることができる。
【0024】
本発明は、振動を発生させる起振装置と、前記起振装置に取り付けられ、前記起振装置による振動を締固め対象箇所に敷設された土質材料に伝達するプレートと、前記起振装置の側部に設けられ、前記起振装置の振動を吸収する緩衝手段とを備えた振動締固め機を、前記締固め対象箇所の側部に立設された壁又は塀に沿って移動させながら前記締固め対象箇所を締固める締固め方法において、
前記壁又は塀の側面に前記緩衝手段を接触させながら、前記締固め対象箇所を締固めることを特徴とする。
【0025】
本発明において、前記起振装置を吊り下げて支持する支持手段を更に備え、前記起振装置が前記支持手段に吊り下げられた状態で前記締固め対象箇所を締固めることとしてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、移動が容易に可能で、かつ、側部に壁又は塀が設けられていてもその壁等に損傷を与えることなく、締固め対象箇所を強固に締固めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第一実施形態に係る振動締固め機を締固め対象箇所に載置した状態を示す側面図である。
【図2】本発明の第一実施形態に係る振動締固め機を締固め対象箇所に載置した状態を示す正面図である。
【図3】振動締固め機の緩衝材及び緩衝手段を膨張させた状態を示す図である。
【図4】振動締固め機の緩衝材及び緩衝手段を少し収縮させた状態を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態に係る振動締固め機を示す側面図である。
【図6】本発明の第二実施形態に係る振動締固め機を示し、図5のA−A矢視図である
【図7】本発明の第二実施形態に係る振動締固め機を示す平面図である
【図8】振動締固め機の伸縮材を伸張させて、板状部材を壁に接した状態を示す図である。
【図9】本発明の第三実施形態に係る振動締固め機を示す側面図である。
【図10】本発明の第三実施形態に係る振動締固め機を示す平面図である。
【図11】振動締固め機の伸縮材を伸張させて、球体を壁に接した状態を示す図である。
【図12】側方流動防止材の他の実施例を示す図である。
【図13】側方流動防止材の他の実施例を示す図である。
【図14】側方流動防止材の他の実施例を示す図である。
【図15】側方流動防止材の他の実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を用いて詳細に説明する。本実施形態においては、両側に壁が近接する狭隘で細長い締固め対象箇所を締固める場合について説明するが、この箇所に限定されるものではなく、側部に壁が立設されている箇所であれば適用可能である。
【0029】
図1及び図2は、それぞれ本発明の第一実施形態に係る振動締固め機1を締固め対象箇所2に載置した状態を示す側面図及び正面図である。
【0030】
図1及び図2に示すように、締固め対象箇所2に敷設された土質材料3であるベントナイトやベントナイト混合土等を締固めるための振動締固め機1は、振動を発生させるための起振装置4と、起振装置4を吊り下げて支持する支持手段5と、起振装置4による振動を土質材料3に伝達するプレート6と、起振装置4の振動を吸収するための緩衝手段7とを備える。
【0031】
振動締固め機1は、プレート6の下の土質材料3を締固めた後、壁19に沿って締固め対象箇所2の長手方向(以下、移動方向という)へ所定の距離だけ移動し、再び、土質材料3を締固めるという一連の作業を繰り返すことにより、締固め対象箇所2を締固める。
【0032】
起振装置4としては、上下振動のみを発生させることが可能なバイブロハンマーを用いた。起振装置4を駆動するための駆動手段8は、発電機9と、発電機9で発電された電力を起振装置4に送給するためのキャプタイヤ10とから構成される。
【0033】
発電機9を稼動させると、起振装置4が起振して、起振装置4の下端部に接続されたプレート6が上下振動する。
【0034】
発電機9は締固め対象箇所2に隣接する又は離れた広い敷地に大型のものが設置される。大型の発電機9を用いることにより、起振力の大きな起振装置4を用いることができる。これにより、締固め対象箇所2を短時間で、かつ強固に締固めることができるので、作業効率が向上する。
【0035】
なお、本実施形態においては、起振装置4として、バイブロハンマーを用いたが、これに限定されるものではなく、振動コンパクター、ランマー、空圧・油圧ハンマー、振動ローラー等を用いてもよい。
【0036】
支持手段5としては、締固め対象箇所2の長手方向に沿って移動可能なフック11を有する門形クレーン12を用いた。門形クレーン12には、図示しないが、締固め対象箇所2全体を撮影可能なカメラが取り付けられていて、撮影された映像はカメラに接続されているケーブルを介して監視室に送信される。そして、監視室からの遠隔操作により、門形クレーン12を操作し、フック11を上下左右に移動させることができる。したがって、締固め対象箇所2に人がいなくても締固め作業を実施することが可能である。なお、人が直接、締固め対象箇所2全体を目視しながら門形クレーン12を操作してもよい。
【0037】
なお、本実施形態においては、支持手段5として、門形クレーン12を用いたが、これに限定されるものではなく、ラフタークレーン等を用いてもよい。
【0038】
プレート6は、起振装置4の下端部に着脱可能であり、締固め対象箇所2の広さに応じた平板状の鋼材を用いる。
【0039】
プレート6の移動方向前方側の端部には、締固め時に、土質材料3がプレート6の下方から移動方向に移動することを防止するための側方流動防止材16が設けられている。側方流動防止材16は、平板状の鋼材であり、下方に突出するように設けられている。
【0040】
また、プレート6の移動方向の左右の側面には、緩衝材17が設けられている。緩衝材17は、気体圧により膨縮可能なチューブ状の膨張体であり、本実施形態においては、膨張体として、ゴム状弾性体を用いた。プレート6の左右の側面に設けた緩衝材17を膨張させて、プレート6が直接、壁19に接触することを防止する。
【0041】
コンプレッサー18を稼動させ、チューブ20aを介して圧縮空気を緩衝材17に供給すると、圧縮空気の供給圧により緩衝材17が膨張する。圧力計で緩衝材17の膨張圧力を測定し、所定の圧力になったら圧縮空気の供給を停止する。
【0042】
なお、コンプレッサー18は、上記発電機9と同様に、広い敷地に大型のものが設置される。大型のコンプレッサー18を用いることにより、短時間で大量の圧縮空気を供給することができる。これにより、短時間で緩衝材17を膨張させることができるので、作業効率が向上する。
【0043】
緩衝材17を収縮させる際は、チューブ20aの途中に設けられたバルブ(図示しない)を開放することにより、緩衝材17内の圧力を低下させる。
【0044】
また、起振装置4の外周側面を囲うように、緩衝手段7が設けられている。緩衝手段7は、気体圧により膨縮可能なリング状の膨張体で、本実施形態においては、膨張体として、ゴム状弾性体を用いた。起振装置4の外周側面に設けた緩衝手段7を膨張させて、起振装置4が直接、壁19に接触することを防止する。
【0045】
緩衝手段7を膨張させるための気体は、上記コンプレッサー18から供給される。コンプレッサー18を稼動させてチューブ20bを介して圧縮空気を緩衝手段7に供給すると、緩衝手段7が膨張する。圧力計で緩衝手段7の膨張圧力を測定し、所定の圧力になったら圧縮空気の供給を停止する。
緩衝手段7を収縮させる際は、チューブ20bの途中に設けられたバルブ(図示しない)を開放することにより、緩衝手段7内の圧力を低下させる。
【0046】
なお、本実施形態においては、緩衝材17及び緩衝手段7を膨張させる手段として、コンプレッサー18を用いたがこれに限定されるものではなく、圧縮空気の充填されたボンベを用いてもよい。
【0047】
また、本実施形態においては、緩衝材17及び緩衝手段7へ供給する気体として空気を供給する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、窒素ガス等の無害の不燃性ガスであればよい。
【0048】
次に、上述した構成からなる振動締固め機1を用いて、両側に壁19が近接する細長い締固め対象箇所2を締固める締固め方法について施工手順に従って説明する。
【0049】
図1及び図2に示すように、土質材料3を締固め対象箇所2に敷設した後、クレーン12のフック11に吊り下げられた振動締固め機1をその土質材料3が敷設された箇所に載置する。
【0050】
次に、図3に示すように、コンプレッサー18を稼動させて、緩衝材17及び緩衝手段7に圧縮空気を供給し、緩衝材17及び緩衝手段7を膨張させる。膨張した緩衝手段7が両側の壁19に密着し、緩衝手段7内の圧力が所定の圧力に達したら緩衝手段7への圧縮空気の供給を停止する。また、緩衝手段7と同様に、緩衝材17が壁19に密着し、緩衝材17内の圧力が所定の圧力に達したら緩衝材17への圧縮空気の供給を停止する。
【0051】
次に、振動締固め機1を振動させて土質材料3の締固めを開始する。
【0052】
振動締固め機1の起振装置4やプレート6が振動しても緩衝手段7や緩衝材17が壁19との間に介在しているので、起振装置4やプレート6は壁19に接触しない。このとき、緩衝手段7及び緩衝材17は柔軟性を有し、また、壁19に面的に接触するので、緩衝手段7及び緩衝材17が壁19を傷つけることはない。
【0053】
プレート6の真下の土質材料3は、プレート6の上下振動により締固められる。一方、壁19際の隅部の土質材料3は、プレート6の上下振動にともなう緩衝材17の上下振動により締固められる。
【0054】
締固め作業中に、プレート6の下に位置する土質材料3は、プレート6の上下振動により移動方向へ移動しようとするが、プレート6の移動方向前方側の端部に側方流動防止材16が設けられているのでその移動が阻止され、土質材料3の移動を防止できる。なお、振動締固め機1の後方には、締固められた土質材料3が存在するため、プレート6の下に位置する土質材料3は、後方へ移動することはできない。また、振動締固め機1の左右には壁19が存在するため、プレート6の下に位置する土質材料3は、左右へ移動することはない。
【0055】
締固め後、次の場所へ移動する際は、図4に示すように、緩衝手段7及び緩衝材17を少し収縮させることにより、壁19と緩衝手段7との間及び壁19と緩衝材17との間にそれぞれ隙間が形成され、振動締固め機1は移動が可能となる。緩衝手段7及び緩衝材17の収縮は、短時間で行うことができるので、作業効率を向上させることができる。振動締固め機1の移動は、クレーン12のフック11を移動させることにより行う。
【0056】
上述したように、土質材料3を締固め対象箇所2に敷設し、振動締固め機1で締固め、その後、振動締固め機1を移動させるという一連の作業を複数回繰り返して、所望の厚さの土質材料3からなる遮水層を構築する。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、振動締固め機1はクレーン12に吊り下げられているので、上下左右方向への移動が容易である。したがって、締固め後、振動締固め機1を次の締固め対象箇所2に短時間で移動させることができる。
【0058】
また、起振装置4の側部に緩衝手段7を、プレート6の側面に緩衝材17をそれぞれ備えているので、振動締固め機1が直接、壁19に接触することを防止できる。そして、起振装置4の振動を緩衝手段7が吸収し、プレート6の振動を緩衝材17が吸収するので、緩衝手段7及び緩衝材17が壁19に接していても壁19を傷つけることがない。さらに、緩衝手段7及び緩衝材17は、気体圧により膨縮可能な膨張体なので変形容易で柔軟性を有し、かつ、壁19に面的に接するので、壁19を傷つけることがない。
【0059】
また、締固め対象箇所2を締固め後、次の場所へ移動する際に、バルブを開放し、気体圧を低下させて緩衝手段7及び緩衝材17を少し収縮させることにより、壁19と緩衝手段7との間及び壁19と緩衝材17との間にそれぞれ隙間が生じるので、上下左右方向へ移動が可能となる。そして、次の場所で再び締固め作業を実施する前に気体圧を上昇させて緩衝手段7及び緩衝材17を膨張させることにより、起振装置4及びプレート6が直接、壁19に接触することを防止できる。この緩衝手段7及び緩衝材17の膨縮は、短時間で行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0060】
また、プレート6は、側方流動防止材16を備えているので、締固め作業時に土質材料3が移動方向に移動することを防止できる。
【0061】
さらに、緩衝材17は、気体の圧入により膨張しているので、プレート6と一緒に振動することにより、土質材料3を締固めることができる。したがって、側部に壁19が設けられている締固め対象箇所2の隅部を締固めることができる。
【0062】
次に、本発明の第二実施形態について説明する。以下の説明において、第一実施形態に対応する部分には同一の符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。第二実施形態は、緩衝手段27として、バネからなる伸縮材22を用いたものである。
【0063】
図5〜図7は、それぞれ本発明の第二実施形態に係る振動締固め機21を示し、側面図、図5のA−A矢視図及び平面図である。
【0064】
図5〜図7に示すように、振動締固め機21は、起振装置4と、支持手段5と、プレート6と、起振装置4の振動を吸収するための緩衝手段27とを備える。
【0065】
緩衝手段27は、一端が起振装置4に接続され、伸縮可能な伸縮材22と、伸縮材22の他端に接続された板状部材23と、伸縮材22の伸縮を制御する制御装置24とを備え、起振装置4の外周側部に外方に突出するように設けられている。
【0066】
本実施形態においては、伸縮材22として、複数のバネを用いた。複数のバネは、同じ長さで、かつ、同じ弾性力を有し、これらの他端は板状部材23に接続されている。
【0067】
制御装置24は、一端が板状部材23に接続されたワイヤーロープ25と、このワイヤーロープ25を巻取るためのプーリー26を有するモーター28とを備える。ワイヤーロープ25の他端は、モーター28の回転軸に取り付けられたプーリー26に巻付けられており、モーター28を所定の向き(図7の矢印方向)に回転させると、ワイヤーロープ25が巻取られるため、伸縮材22が縮んで板状部材23はそれぞれ起振装置4に近づく向きに移動して両板状部材23間の距離が短くなる。一方、モーター28を所定の向きと反対に回転させると、ワイヤーロープ25が繰り出されるため、伸縮材22が伸張して板状部材23はそれぞれ起振装置4から離れる向きに移動して両板状部材23間の距離が長くなる。
【0068】
なお、本実施形態においては、制御装置24として、モーター28を回転させてワイヤーロープ25を巻取る又は繰り出すことにより、両板状部材23間の距離を調整する方法について説明したが、この機構に限定されるものではなく、両板状部材23間の距離を調整可能な機能を有するものであれば他の機構を用いてもよい。
【0069】
図8に示すように、狭隘な締固め対象箇所2を締固める場合には、伸縮材22を伸張させて、板状部材23が壁19に接した状態で締固め作業を実施する。このとき、起振装置4の振動を伸縮材22が吸収することにより、板状部材23が壁19に対して固定されるので、壁19を傷つけることがない。
【0070】
そして、締固め対象箇所2を締固め後、次の場所へ移動する際は、制御装置24で両板状部材23を起振装置4側にそれぞれ移動させて、両板状部材23間を短くすることにより、壁19と各板状部材23との間に隙間が生じるので、上下左右方向へ容易に移動が可能となる。そして、次の場所で再び締固め作業を実施する前に、両板状部材23を壁19に接するように伸縮材22を伸張させることにより、振動締固め機21が壁19に接触することを防止できる。この伸縮材22の伸縮は、短時間で行うことができるので、作業効率を向上させることができる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態における振動締固め機21によれば、緩衝手段27は、伸縮材22と、板状部材23と、制御装置24とから構成され、簡便な装置なので、安価に構築することができる。また、締固め対象箇所2を締固める際には、板状部材23が壁19に面的に接するので、壁19を傷つけることがない。
【0072】
次に、本発明の第三実施形態について説明する。第三実施形態は、板状部材23に球体32を埋め込んだものである。
【0073】
図9及び図10は、それぞれ本発明の第三実施形態に係る振動締固め機31を示し、側面図及び平面図である。
【0074】
図9及び図10に示すように、振動締固め機31の緩衝手段27は、伸縮材22と、板状部材23と、制御装置24と、回転可能な球体32とを備える。球体32は、その一部が板状部材23の壁19側の表面から突出するように板状部材23に埋め込まれている。本実施形態においては、球体32として、複数のコロを用いた。
【0075】
狭隘な締固め対象箇所2を締固める場合には、図11に示すように、伸縮材22を伸張させて、球体32が壁19に接した状態で締固め作業を実施する。このとき、壁19に接した複数の球体32が回転するので、壁19を傷つけない。
【0076】
そして、締固め対象箇所2を締固め後、次の場所へ移動する際は、球体32を壁19面に接触させた状態のままクレーン12を移動方向に移動させることにより、球体32が回転するので、移動が可能となる。したがって、制御装置24により両板状部材23をそれぞれ起振装置4側に移動させて両板状部材23間を短くする必要がなく、連続的に締固め作業を実施することができる。
【0077】
なお、本実施形態においては、球体32を回転させることにより、振動締固め機31を移動させる場合について説明したが、この方法に限定されるものではなく、壁19に接する側の板状部材23の面を摩擦抵抗の少ない滑らかな面にして、板状部材23を壁19に接した状態のまま移動させてもよい。具体的には、板状部材23の壁19側の表面にフッ素樹脂からなるテフロン(登録商標、イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー)を貼り付けたり、板状部材23そのものをテフロンとしてもよい。このテフロンと壁19との間には摩擦がほとんど生じないので、板状部材23を壁19面に接した状態で振動締固め機31を移動させることができる。
【0078】
以上説明したように、本実施形態における振動締固め機31によれば、緩衝手段27は、伸縮材22と、板状部材23と、制御装置24と、球体32とから構成され、簡便な装置なので、安価に構築することができる。また、締固め対象箇所2を締固める際には、壁19に接した球体32が回転するので、壁19を傷つけることがない。
【0079】
さらに、締固め後、次の場所へ移動する際は、球体32やテフロンを有する板状部材23を壁19に接触させたまま移動させても摩擦を生じないので、そのまま移動することができる。
【0080】
なお、上述した各実施形態においては、側方流動防止材16として、平板状の鋼材を用いたが、この形状に限定されるものではなく、例えば、図12及び図13に示すような、櫛形の側方流動防止材36を用いてもよい。この櫛形の側方流動防止材36においては、突起部37が、図14及び図15に示すような略三角形状や略丸状のものを用いてもよい。そして、櫛形の側方流動防止材36を用いることにより、土質材料3を締固める際に、突起部37間の切り込み部に入り込んだ土質材料3が周囲に移動することを防止できる。さらに、新たに締固める部分の土質材料3と、既に締固めた部分の土質材料3とが分断されないので、それらを容易に一体化することができる。したがって、土質材料3を効率良く締固めることができる。
【0081】
また、上述した各実施形態においては、緩衝材17として、チューブ状の膨張体を用いたが、これに限定されるものではなく、例えば、平板状のゴム状弾性体を用いてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 振動締固め機
2 締固め対象箇所
3 土質材料
4 起振装置
5 支持手段
6 プレート
7 緩衝手段
8 駆動手段
9 発電機
10 キャプタイヤ
11 フック
12 クレーン
16 側方流動防止材
17 緩衝材
18 コンプレッサー
19 壁
20a チューブ
20b チューブ
21 振動締固め機
22 伸縮材
23 板状部材
24 制御装置
25 ワイヤーロープ
26 プーリー
27 緩衝手段
28 モーター
31 振動締固め機
32 球体
36 側方流動防止材
37 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側部に壁又は塀が立設された締固め対象箇所を、前記壁又は塀に沿って移動させながら締固めるための振動締固め機であって、
振動を発生させる起振装置と、
前記起振装置に取り付けられ、前記起振装置による振動を前記締固め対象箇所に敷設された土質材料に伝達するプレートと、
前記起振装置の側部に設けられ、前記起振装置の振動を吸収する緩衝手段とを備えることを特徴とする振動締固め機。
【請求項2】
前記起振装置を吊り下げて支持する支持手段を更に備え、前記起振装置が前記支持手段に吊り下げられた状態で前記締固め対象箇所を締固めることを特徴とする請求項1に記載の振動締固め機。
【請求項3】
前記プレートは、移動方向前方側の端部に、下向きに突出した流動防止材を備えることを特徴とする請求項1に記載の振動締固め機。
【請求項4】
前記流動防止材は、平板状の鋼材であることを特徴とする請求項3に記載の振動締固め機。
【請求項5】
前記流動防止材は、櫛形の形状を有することを特徴とする請求項3に記載の振動締固め機。
【請求項6】
前記緩衝手段は、気体圧により膨縮可能な膨張体であることを特徴とする請求項1に記載の振動締固め機。
【請求項7】
前記緩衝手段は、
一端が前記起振装置に接続され、伸縮可能な伸縮材と、前記伸縮材の他端に接続された板状部材と、前記伸縮材の伸縮を制御する制御装置とを備えることを特徴とする請求項1に記載の振動締固め機。
【請求項8】
一部が前記板状部材の表面から突出するように前記板状部材内に、回転可能に埋め込まれた球体を更に備えることを特徴とする請求項7に記載の振動締固め機。
【請求項9】
前記プレートは、その側面に緩衝材を備えることを特徴とする請求項1、3〜5のうち何れか一項に記載の振動締固め機。
【請求項10】
前記緩衝材は、気体圧により膨縮可能な膨張体であることを特徴とする請求項9に記載の振動締固め機。
【請求項11】
振動を発生させる起振装置と、前記起振装置に取り付けられ、前記起振装置による振動を締固め対象箇所に敷設された土質材料に伝達するプレートと、前記起振装置の側部に設けられ、前記起振装置の振動を吸収する緩衝手段とを備えた振動締固め機を、前記締固め対象箇所の側部に立設された壁又は塀に沿って移動させながら前記締固め対象箇所を締固める締固め方法において、
前記壁又は塀の側面に前記緩衝手段を接触させながら、前記締固め対象箇所を締固めることを特徴とする締固め方法。
【請求項12】
前記起振装置を吊り下げて支持する支持手段を更に備え、
前記起振装置が前記支持手段に吊り下げられた状態で前記締固め対象箇所を締固めることを特徴とする請求項11に記載の締固め方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate