説明

振動装置及びそれを用いた画像機器

【課題】防塵部材及び圧電素子の取付け構造が簡単で、当該取付け構造を簡単にしても所望の振動波形を防塵部材に発生可能な小型の振動装置を得ること。
【解決手段】ホルダ145に保持されたCCDへ入射する光が透過する多角形状をした板状の光透過部となる底面部119aと当該多角形状の光透過部の一辺から所定の角度だけ各々が接触しないように傾斜して延出した板状の側壁部119bとを有する防塵フィルタ119の上記側壁部119bに、上記光透過部の面に垂直な振動振幅を付与する圧電素子120を固定し、上記光透過部及び上記側壁部119bを、同一の部材を用いて略均一な厚みとなるように形成し、上記板状の光透過部を上記CCDの前面に位置させ、上記圧電素子120が配置された側壁部119bを、上記圧電素子120が固定されている部位以外の部位で上記ホルダ145に固定して、振動装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子を備える撮像装置や、スクリーンに投影する画像を表示する表示素子を備える画像投影装置等の、画像形成素子を備える画像機器、及び、そのような画像機器において画像形成素子の前面に配される防塵部材を振動させる振動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮像素子を用いた撮像装置や液晶等の表示素子を用いた画像投影装置のような、画像形成素子を用いた画像機器において、画質の向上は著しい。そのため、撮像素子や表示素子といった画像形成素子の表面またはその前面に位置する透明部材(光学素子)の表面に塵埃が付着することで、生成する画像に塵埃の影を画像に生じさせてしまうことが、大きな問題となっている。
【0003】
例えば、カメラ本体に対して撮影光学系を着脱自在となるように構成し、ユーザが所望するとき所望の撮影光学系を任意に着脱し交換することで、単一のカメラ本体において複数種類の撮影光学系を選択的に使用し得るように構成した所謂「レンズ交換可能な」形態のデジタルカメラが、一般に実用化されている。このようなレンズ交換可能なデジタルカメラにおいては、当該撮影光学系をカメラ本体から取り外した際にカメラが置かれた周囲環境に浮遊する塵埃がカメラ本体内に侵入し、あるいは、カメラ本体内部には例えばシャッタ・絞り機構等の機械的に動作する各種の機構が配されていることから、これら各種の機構等からその動作中にゴミ等が発生し、撮像素子の表面やその前面に位置するレンズやカバーガラス等の透明部材(光学素子)の表面に塵埃が付着してしまう場合がある。
【0004】
また、CRT、液晶等の表示素子に表示した画像を、光源と投影光学系とを用いてスクリーン上に拡大投影し、画像を観賞するといったプロジェクタも実用化されており、そのようなプロジェクタにおいても、表示素子の表面やその前面に位置するレンズやカバーガラス等の透明部材(光学素子)の表面に塵埃が付着して、塵埃の影がスクリーンに拡大投影されてしまうことが発生することもあった。
【0005】
そこで、そのような画像機器内部の画像形成素子表面やその前面に位置するレンズやカバーガラス等の透明部材(光学素子)の表面に付着した塵埃を除去する機構が各種開発されている。
【0006】
例えば、特許文献1は、第1群から第3群の光学部材(411〜413)によって構成されている光学ローパスフィルタ410、圧電素子430、撮像素子33等がユニット化された撮像ユニット400において、そのうちの第1群の光学部材411の上辺には、断面が略L字形状の振動伝達部材431が接着固定され、その対向する下辺には、断面が略L字形状の付勢力伝達部材441が接着固定されている。
【0007】
また、ローパスフィルタ410を保持するローパスフィルタ保持部材420の枠部420aの上辺には、圧電素子430を収納するための収納部421が形成され、圧電素子430は、その一端面が枠部420aに接着等により固定され、電圧の印加による伸縮方向が撮影光軸に対して直交方向(カメラ上下方向)となるように保持されている。
【0008】
そして、防塵部材としての第1群の光学部材411に、圧電素子430によって撮影光軸に対して直交方向の振動が与えられて、その表面に付着した塵埃等の異物が除去されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2008−028674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に開示の振動装置では、防塵部材としての第1群の光学部材411は、断面が略L字形状の振動伝達部材431が接着固定されているため、この第1群の光学部材411は全体としてもL字状の形状をしている。
【0011】
しかしながら、別部材同士を接着してL字状の形状としているので、圧電素子430からの振動はその部位で変換されてしまう。そのため、第1群の光学部材411に発生する振動波形を設計する際、接着剤や振動伝達部材431の形状をも考慮して振動の節を狙った保持構造や、適切な保持力量としなければならない。また、接着剤や振動伝達部材431を取り付けるため構造が複雑となり、その分、振動装置が大型化し、ひいてはそのような振動装置を用いた画像機器も大型化することとなる。
【0012】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたもので、小型の振動装置、及び、そのような振動装置を用いた画像機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の振動装置の一態様は、
光学的な画像が生成される画像面を有する画像形成素子を保持する保持部材と、
上記画像形成素子から入射する光または上記画像形成素子へ入射する光が透過する多角形状をした板状の光透過部と、当該多角形状の光透過部の少なくとも1つの一辺から所定の角度だけ各々が接触しないように傾斜して延出した板状の側壁部と、を有する防塵部材と、
上記少なくとも1つの板状の側壁部に固定されていて、上記光透過部の面に垂直な振動振幅を付与する加振部材と、
を具備し、
上記光透過部及び上記側壁部は、同一の部材を用いて略均一な厚みとなるように形成され、
上記板状の光透過部は、上記画像形成素子の前面に位置し、
上記側壁部の内、加振部材が配置された側壁部は、上記加振部材が固定されている部位以外の部位で、上記保持部材に固定されることを特徴とする。
また、本発明の画像機器の一態様は、
光学的な画像が生成される画像面を有する画像形成素子と、
上記画像形成素子を保持する保持部材と、
上記画像形成素子から入射する光または上記画像形成素子へ入射する光が透過する多角形状をした板状の光透過部と、当該多角形状の光透過部の少なくとも1つの一辺から所定の角度だけ各々が接触しないように傾斜して延出した板状の側壁部と、を有する防塵部材と、
上記少なくとも1つの板状の側壁部に固定されていて、上記光透過部の面に垂直な振動振幅を付与する加振部材と、
を具備し、
上記光透過部及び上記側壁部は、同一の部材を用いて略均一な厚みとなるように形成され、
上記板状の光透過部は、上記画像形成素子の前面に位置し、
上記側壁部の内、加振部材が配置された側壁部は、上記加振部材が固定されている部位以外の部位で、上記保持部材に固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、防塵部材の光透過部と側壁部を同一の部材を用いて強度を強くして形成し、当該側壁部に加振部材を配置するとともに当該加振部材が固定されている部位以外の部位で当該側壁部を保持部材に固定したので、防塵部材の光透過部に固定用の領域を設ける必要が無くなり、当該光透過部の面積を同じにしても、固定用の領域が減るので防塵部材自体の面積(投影面積)を小さくすることができる、小型の振動装置、及び、そのような振動装置を用いた画像機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の画像機器の第1実施形態としてのデジタルカメラの主に電気的なシステム構成例を概略的に示すブロック図である。
【図2】図2は、デジタルカメラの塵埃除去機構を含む撮像素子ユニットの縦断側面図である。
【図3】図3は、塵埃除去機構をレンズ側から見た正面図である。
【図4】図4(A)は、塵埃除去機構を構成する主要部の斜視図であり、図4(B)は、図4(A)のBB線断面図であり、図4(C)は、図4(A)のCC線断面図である。
【図5】図5(A)は、防塵フィルタに発生する振動の様子を説明するための防塵フィルタの正面図であり、図5(B)は、図5(A)のBB線断面図であり、図5(C)は、図5(A)のCC線断面図である。
【図6】図6(A)は、防塵フィルタに発生する異なる振動の様子を説明するための防塵フィルタの正面図であり、図6(B)は、図6(A)のBB線断面図であり、図6(C)は、図6(A)のCC線断面図である。
【図7】図7(A)は、塵埃フィルタの異なる形態を示す斜視図であり、図7(B)は、図7(A)のBB線断面図であり、図7(C)は、図7(A)のCC線断面図である。
【図8】図8は、防塵フィルタに発生する定在波を説明するための防塵フィルタの概念図である。
【図9】図9は、防塵フィルタ制御回路の構成を概略的に示す回路図である。
【図10】図10は、防塵フィルタ制御回路における各構成部材から出力される各信号を説明するためのタイムチャートを示す図である。
【図11】図11は、第1実施形態におけるデジタルカメラのBucomが行なうカメラシーケンス(メインルーチン)の手順を例示するフローチャートを示す図である。
【図12】図12(A)は、図11中のサブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図であり、図12(B)乃至(D)はそれぞれ、図12(A)のサブルーチン「無音加振動作」の各タイミングにて並行して実行される「表示動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。
【図13】図13は、無音加振動作において、加振部材へ連続的に供給される共振周波数の波形を表わす図である。
【図14】図14は、本発明の画像機器の第2実施形態としてのデジタルカメラにおけるサブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
以下に具体的に例示する本発明の画像機器は、光電変換によって画像信号を得る撮像素子ユニットの塵埃除去機構を有するものであり、ここでは一例として電子カメラ(以下「カメラ」と略称する)の塵埃除去機能に係わる改良技術として説明する。特に、本第1実施形態では、レンズ交換可能な電子カメラ(デジタルカメラ)に関して、図1乃至図3を参照して説明する。尚、図1は、本発明の画像機器の第1実施形態としてのデジタルカメラの主に電気的なシステム構成例を概略的に示すブロック図である。また、図2は、該デジタルカメラの塵埃除去機構を含む撮像素子ユニットの縦断側面図(図3でのAA線断面図)であり、図3は、塵埃除去機構をレンズ側から見た正面図である。
【0017】
まず、図1を参照して本実施形態におけるデジタルカメラ10のシステム構成例について説明する。
【0018】
このデジタルカメラ10は、カメラ本体としてのボディユニット100と、アクセサリ装置の一つである交換レンズとしてのレンズユニット200とによりシステム構成されている。
【0019】
レンズユニット200は、ボディユニット100の前面に設けられた図示しないレンズマウントを介して着脱自在である。レンズユニット200の制御は、自身が有するレンズ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Lucom”と称する)201が行う。ボディユニット100の制御は、ボディ制御用マイクロコンピュータ(以下、“Bucom”と称する)101が行う。これらLucom201とBucom101とは、ボディユニット100にレンズユニット200を装着した状態において通信コネクタ102を介して互いに通信可能に電気的に接続される。そして、カメラシステムとして、Lucom201がBucom101に従属的に協働しながら稼動するように構成されている。
【0020】
レンズユニット200は、撮影レンズ202と絞り203を備える。撮影レンズ202は、レンズ駆動機構204内に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動される。絞り203は、絞り駆動機構205内に設けられた図示しないステッピングモータによって駆動される。Lucom201は、Bucom101の指令に基づいてこれら各モータを制御する。
【0021】
ボディユニット100内には、以下のような構成部材が図示の如く配設されている。例えば、撮影光軸上にフォーカルプレーン式のシャッタ108が設けられている。
【0022】
また、シャッタ108の先幕と後幕を駆動するばねをチャージするシャッタチャージ機構112と、これら先幕と後幕の動きを制御するシャッタ制御回路113が設けられている。
【0023】
撮影光軸上には、上述の光学系を通過した被写体像を光電変換するための撮像ユニット116が設けられている。撮像ユニット116は、光学的な画像が生成される画像面を有する画像形成素子としての撮像素子であるCCD117とその前面に配設された光学ローパスフィルタ(LPF)118とを含む画像形成ユニットと、防塵部材である防塵フィルタ119とを、ホルダ145を介してユニットとして一体化してなるものである。ここで、光学ローパスフィルタ(LPF)118は水晶等からなる光学素子であり、防塵フィルタ119は水晶、ガラス等の光学素子や透明なプラスチックであっても良い。防塵フィルタ119は、例えば断面L字型等の詳細は後述するような形態を形成し得、振動させることができる透明な部材であれば良い。
【0024】
上記防塵フィルタ119の周縁部の一側には、圧電素子120が取り付けられている。圧電素子120は、2つの電極を有しており、圧電素子120を駆動手段である防塵フィルタ制御回路121によって、防塵フィルタ119の寸法や材質によって定まる所定の周波数で振動させることで、防塵フィルタ119に所定の振動を発生させ、フィルタ表面に付着した塵埃を除去し得るように構成されている。また、撮像ユニット116に対しては、手ブレ補正用の防振ユニットが付加されている。
【0025】
また、本実施形態におけるデジタルカメラ10は、CCD117に接続したCCDインターフェース回路122と、液晶モニタ123と、記憶領域として機能するSDRAM124やFlash ROM125などを利用して画像処理する画像処理コントローラ126とを備え、電子撮像機能とともに電子記録表示機能を提供できるように構成されている。また、電子撮像機能には、CCD117で撮影された画像を動画として液晶モニタ123に同時に表示してファインダとして用いるいわゆるスルー画表示機能、動画を記録する動画記録機能を持っている。ファインダ機能については光学式の一眼レフファインダ等を設けても良い。ここで、記録メディア127は、各種のメモリカードや外付けのHDD等の外部記録媒体であり、通信コネクタを介してボディユニット100と通信可能且つ交換可能に装着される。そして、この記録メディア127に撮影により得られた画像データが記録される。
【0026】
その他の記憶領域としては、カメラ制御に必要な所定の制御パラメータを記憶する、例えばEEPROMからなる不揮発性メモリ128がBucom101からアクセス可能に設けられている。
【0027】
Bucom101には、当該デジタルカメラ10の動作状態を表示出力によってユーザへ告知するための動作表示用LCD129及び動作表示用LED130と、カメラ操作SW131と、ストロボ132を駆動するストロボ制御回路133と、が接続されている。ここで、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130には、防塵フィルタ制御回路121が動作している期間、防塵フィルタ119の振動動作を表示する表示部が設けられている。カメラ操作SW131は、例えばレリーズSW、モード変更SW及びパワーSWなど、当該デジタルカメラ10を操作するために必要な操作釦を含むスイッチ群である。さらに、該ボディユニット100内には、電源としての電池134と、該電池134の電圧を、当該デジタルカメラ10を構成する各回路ユニットが必要とする電圧に変換して供給する電源回路135が設けられ、また、外部電源から不図示のジャックを介して電流が供給されたときの電圧変化を検知する電圧検出回路(図示せず)も設けられている。
【0028】
上述のように構成されたデジタルカメラ10の各部は、概略的には以下のように稼動する。まず、画像処理コントローラ126は、Bucom101の指令に従ってCCDインターフェース回路122を制御してCCD117から画像データを取り込む。この画像データは画像処理コントローラ126でビデオ信号に変換され、液晶モニタ123で出力表示される。ユーザは、この液晶モニタ123の表示画像から、ファインダ画像あるいは撮影画像を確認できる。
【0029】
SDRAM124は、画像データの一時的保管用メモリであり、画像データが変換される際のワークエリアなどに使用される。また、画像データは、JPEGデータに変換された後、記録メディア127に保管される。ここで、画像データが動画である場合はMPEGデータ等に変換される。
【0030】
撮影レンズ202の焦点合わせは、撮影レンズ202の位置を順次変更しながら撮像し、撮像画像の最もコントラストの高い位置をBucom101で演算し、通信コネクタ102を通してLucom201に伝達し、Lucom201が撮影レンズ202を位置制御することにより行われる。測光も撮像画像から検出された光量に基づき周知の測光処理が行われる。
【0031】
次に、図2及び図3を参照してCCD117を含む撮像ユニット116について説明する。
【0032】
撮像ユニット116は、撮影光学系を透過し自己の光電変換面上に照射された光に対応した画像信号を得る撮像素子としてのCCD117と、CCD117の光電変換面側に配設され、撮影光学系を透過して照射される被写体光束から高周波成分を取り除く光学LPF118と、この光学LPF118の前面側において所定間隔をあけて対向配置された防塵部材である断面L字型の防塵フィルタ119と、この防塵フィルタ119の側壁部に配設されて防塵フィルタ119に対して所定の振動を与えるための加振部材である圧電素子120と、を備える。
【0033】
ここで、CCD117のCCDチップ136は、固定板137上に配設されたフレキシブル基板138上に直接実装され、このフレキシブル基板138の両端から出た接続部139a,139bが、主回路基板140に設けられたコネクタ141a,141bを介して主回路基板140側と接続されている。また、CCD117が有する保護ガラス142は、スペーサ143を介してフレキシブル基板138上に固着されている。
【0034】
また、CCD117と光学LPF118との間には、弾性部材等からなるフィルタ受け部材144が配設されている。このフィルタ受け部材144は、CCD117の前面側周縁部で光電変換面の有効範囲を避ける位置に配設され、且つ、光学LPF118の背面側周縁部の近傍に当接することで、CCD117と光学LPF118との間を略気密性が保持されるように構成されている。そして、CCD117と光学LPF118とを気密的に覆うホルダ145が配設されている。このホルダ145は、撮影光軸周りの略中央部分に矩形状の開口146を有し、この開口146の防塵フィルタ119側の内周縁部には断面が略L字形状の段部147が形成され、開口146に対してその後方側から光学LPF118及びCCD117が配設されることで、CCD117を保持する保持部材となる。ここで、光学LPF118の前面側周縁部を段部147に対して略気密的に接触させるように配置することで、光学LPF118は段部147によって撮影光軸方向における位置規制がなされ、ホルダ145の内部から前面側に対する抜け止めがなされる。なお、CCD117と光学LPF118との気密状態は、塵埃の侵入によって撮影画像に塵埃が写り込み、当該画像に塵埃の影響の出ることを防止可能なレベルであれば良く、必ずしも気体の侵入を完全に防止するレベルでなくても良い。
【0035】
一方、ホルダ145の前面側には、結像光線通過エリア149となる開口部が設けられており、該開口部を囲んでホルダ145の前面側に環状に受け部材150が形成されている。この受け部材150は、防塵フィルタ119を光学LPF118の前面に所定間隔あけて保持するためのものであり、ゴムや樹脂等の振動減衰性のある弾性部材からなる。断面L字型の防塵フィルタ119は、上記CCD117へ入射する光が透過する多角形状をした板状の光透過部である底面部119aと、当該多角形状の底面部119aの1つの一辺から所定の角度(ここでは、ほぼ90°)だけ各々が接触しないように傾斜して延出した板状の側壁部119bと、を有し、底面部119aが上記受け部材150にて保持される。側壁部119bは、ネジ等の締結部材151により、ホルダ145の上記開口部の周縁部に固定されている。この場合、上記底面部119aが所定の押圧状態で上記受け部材150に支持されるように、固定される。上記側壁部119bが延出しない上記底面部119aの一辺は、自由端となっている。
【0036】
受け部材150は、ゴムや樹脂等の振動減性のある弾性部材で形成されているので、防塵フィルタ119の振動を阻害することはなく、また、防塵フィルタ119とLPF118が形成する空間は、防塵フィルタ119の振動状態に応じて受け部材150が変形するので、塵埃に対して封止されており、外部からこの空間に画像に写ってしまうような塵埃が入り込むことはない。撮像ユニット116は、このようにして、画像形成素子としてのCCD117と防塵フィルタ119とが対向して形成される領域を当該CCD117及び当該防塵フィルタ119の周縁部で封止するように構成された封止構造(本実施形態では、CCD117を搭載する所望の大きさに形成されたホルダ145と受け部材150、CCD117と光学LPFとの間を気密にするフィルタ受け部材144)によって、気密構造に構成されている。なお、防塵フィルタ119と受け部材150との気密状態は、塵埃の侵入によって撮影画像に塵埃が写り込み、当該画像に塵埃の影響の出ることを防止可能なレベルであれば良く、必ずしも気体の侵入を完全に防止するレベルでなくても良い。
【0037】
さらに、加振部材である圧電素子120には、フレキシブルプリント基板であるフレキ157が端部に電気接続され、防塵フィルタ制御回路121からの後に述べる所定の電気信号を圧電素子120に入力し、圧電素子120に所定の振動を発生させている。フレキ157は、樹脂と銅箔等で作製されて柔軟性があることから圧電素子120の振動を減衰させることが少ない。また、振動振幅の小さいところ(後に述べる振動の節位置)に設けることで、より振動の減衰を抑えることができる。一方、以下に述べるような手ブレ補正機構を持つ場合、圧電素子120はボディユニット100に対して相対的に移動するので、防塵フィルタ制御回路121がボディユニット100と一体の固定部材にある場合には手ブレ補正機構の動作に従って、フレキ157は変形し、変位する。この場合、フレキ157は柔軟性があり薄いため、有効であり、本実施形態の場合にはフレキ157は1ヶ所からの引き出しで簡単な構成であるので、手ブレ補正機構をもつカメラには最適である。
【0038】
防塵フィルタ119でその表面から離脱した塵埃は後に述べるように、その振動の慣性力と、重力の作用により、ボディユニット100の下側に落下する。そこで、本実施形態では、防塵フィルタ119の下側直近に設けた台158に、粘着材、粘着テープ等で形成された保持材159を配設し、落下した塵埃を確実に保持し、再び防塵フィルタ119の表面に戻らないようにしてある。
【0039】
次に、簡単に手ブレ補正機能について説明する。この手ブレ補正機構は、図1に示すように、X軸ジャイロ160、Y軸ジャイロ161、防振制御回路162、X軸アクチュエータ163、Y軸アクチュエータ164、X枠165、Y枠166(ホルダ145)、フレーム167、位置検出センサ168及びアクチュエータ駆動回路169から構成され、カメラのX軸回りの手ブレの角速度を検出するX軸ジャイロ160とカメラのY軸周りの手ブレの角速度を検出するY軸ジャイロ161とからの角速度信号から、防振制御回路162により手ブレ補償量を演算し、撮影光軸の方向をZ軸方向とした場合、撮影光軸に直交するXY平面内で直交する第1の方向であるX軸方向及び第2の方向であるY軸方向に、撮像素子であるCCD117を、ブレを補償するように変位移動させるものである。即ち、アクチュエータ駆動回路169から所定の駆動信号を入力するとX軸方向にCCD117を駆動するX軸アクチュエータ163と、同じく、所定の駆動信号を入力するとY軸方向にCCD117を駆動するY軸アクチュエータ164を駆動源として用い、X枠165と撮像ユニット116中のCCD117を搭載したY枠166(ホルダ145)とをフレーム167に対して移動する移動対象物として構成される。ここで、X軸アクチュエータ163及びY軸アクチュエータ164は、電磁回転モータとネジ送り機構等を組み合わせたものや、ボイスコイルモータを用いた直進電磁モータや、直進圧電モータ等が用いられている。尚、位置検出センサ168は、X枠165及びY枠166の位置を検出するものであり、防振制御回路162は該位置検出センサ168での検出結果に基づいて、変位移動可能な範囲を超えてX軸アクチュエータ163及びY軸アクチュエータ164を駆動しないように、アクチュエータ駆動回路169を制御する。
【0040】
ここで、第1実施形態の塵埃除去機構について図4乃至図8を参照してさらに詳しく説明する。図4(A)は、塵埃除去機構を構成する主要部(振動子)の斜視図であり、図4(B)は、図4(A)のBB線断面図である。図5は、防塵フィルタ119に発生する振動の様子を説明するための図で、特に図5(A)は防塵フィルタ119の正面図、図5(B)は図5(A)のBB線断面図、図5(C)は図5(A)のCC線断面図である。図6は、防塵フィルタ119に発生する図5とは異なる振動の様子を説明するための図で、特に図6(A)は防塵フィルタの正面図、図6(B)は図6(A)のBB線断面図、図6(C)は図6(A)のCC線断面図である。図7は、防塵フィルタの異なる形態を示す図である。図8は、防塵フィルタ119に発生する定在波を説明するための防塵フィルタ119の概念図である。
【0041】
防塵フィルタ119は、図4に示すように、断面L字型をなし、底面部119aは、円を含む曲線で囲まれた形状、あるいは全体として多角形の板状(本実施形態は四角形)を成し、少なくとも、最大の振動振幅が得られる位置から放射方向に所定の広がりを持つ領域が、光透過部を構成している。尚、防塵フィルタ119の底面部119aは、全体として円形を成し、その円の一部を直線状にカットして一辺を持つD形状であっても良いし、四角形の両辺を円弧状に形成し、上下二辺を持つ小判形状としたもののように曲線と直線を組み合わせた形状でも構わない。また、防塵フィルタ119は、底面部119aの少なくとも1つの一辺、図4では1つの一辺の端面部から上記CCD117の方向へ所定の角度だけ各々が接触しないように傾斜して延出する側壁部119bを有している。上記側壁部119bは、上記板状の底面部119aの一辺と当該板状の底面部119aの一辺より短い辺とからなる矩形状をしている。そして、上述した締結部材151により、上記側壁部119bが上記ホルダ145に固定されることで、この防塵フィルタ119の光透過部が光学LPF118の前面側に所定の間隔をもって対向配置されている。ここで、断面L字型の防塵フィルタ119の上記底面部119aと側壁部119bは、同一の部材を用いて略均一な厚みとなるように形成されている。
【0042】
また、防塵フィルタ119の上記側壁部119bには、当該防塵フィルタ119の光透過部となる底面部119aの面に垂直な振動振幅を付与する加振部材である圧電素子120が、例えば接着剤による貼着等の手段により固定されている。なお、上記圧電素子120は、矩形状をしており、当該圧電素子120は、上記側壁部119b内に収まるように配置される。そして、上記側壁部119bは、この圧電素子120が固定されている部位以外の部位で、上述した締結部材151により上記ホルダ145に固定される。このように防塵フィルタ119に圧電素子120を配設することで振動子170が形成され、該振動子170は、圧電素子120に所定の周波電圧を印加すると共振振動し、図5に示すような底面部119aに垂直な屈曲振動を大きな振幅で発生する。
【0043】
ここで、防塵フィルタ119を構成する側壁部119bと光透過部となる底面部119aのなす角度は、側壁部119bと底面部119aを一体成形することを考えると、90°以上が好ましく、また、その投影面積の拡大と剛性を考えると135°程度以下にするのが良い。また、底面部119aと側壁部119bをつなぐ面は、図4に示すように円筒面に近似した面で構成すると、防塵フィルタ119の剛性はより高いものになり、小型化することができる。
【0044】
即ち、側壁部119bは、光軸方向に剛性が高く変形を起こさないが、光透過部となる底面部119aは片持ちの梁として自由に屈曲できる。このことから、防塵フィルタ119及び圧電素子120の取付け構造が簡単で、当該取付け構造を簡単にしても性能を損なわず、所望の振動波形を防塵フィルタ119に発生可能な小型の振動子170を提供することができる。
【0045】
図4に示すように、圧電素子120には、信号電極171と、該信号電極171に対向した裏面に設けられ、側壁部を通して上記信号電極171のある側の面に引き回された信号電極172とが形成されている。そして、信号電極171と信号電極172に、上記導電性パターンを持つフレキ157が電気的に接続されている。夫々の電極171,172には、フレキ157を介して接続された防塵フィルタ制御回路121によって所定周期を有する駆動電圧を印加することで、防塵フィルタ119に図5に示す2次元の定在波屈曲振動を発生させることができる。防塵フィルタ119の底面部119aの寸法は、長辺の長さがLA、それに直交する短辺の長さがLBである(。図5に示す屈曲振動は定在波振動を示し、図5(A)で振動の節エリア(振動振幅の小さいエリア)173を示す黒い線状のエリアは、黒が濃いほど振動振幅が小さくなっている。尚、図5(A)中に示すメッシュは、有限要素法での分割メッシュである。
【0046】
振動速度が大きい場合、図5(A)に示すように節エリア173の間隔が小さいと、節エリア173には大きな面内振動が発生し、節エリア173にある塵埃には面内振動方向に大きな慣性力が発生する(後述する図8の質点Y2の動きを参照。節を中心にY2とY2’の間を円弧振動する)。塵埃の付着面に沿った力が作用するように防塵フィルタ119面を重力に対して平行になる方向に傾けると、慣性力と重力が作用して節エリア173に付着した塵埃も除去することができる。
【0047】
また、図5(A)での白色のエリアは、振動振幅が大きなエリアを示し、この白色エリアに付着した塵埃は、振動により与えられる慣性力により除去される。振動の節エリア173に付着した塵埃は、異なる周波数の電気信号を圧電素子120に入力し、節エリア173に振幅をもつ別の振動モード(例えば図6に示す振動モード)で加振することによっても除去することができる。
【0048】
図5に示す屈曲の振動モードは、X方向の屈曲振動と、Y方向の屈曲振動との合成で形成され、圧電素子を1つの辺に沿って配置しても、振動振幅が非常に大きくなる振動モードとなる(従来の円形の防塵フィルタと同じレベルの振動振幅が発生する)。図5の振動モードでき、防塵フィルタ119の重心119cを通る第1の仮想線VL1に対して対称な1つの辺から当該1つの辺に対向して配置されている他方の辺側へ向かって、略同心円状に連続的に位置する振動振幅の山の稜線が形成され、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く、合成して定在波が作られる。ここで、圧電素子120は、該圧電素子120の重心が上記第1の仮想線VL1にあるように、その長手方向の一辺が上記防塵フィルタ119の光透過部となる底面部119aの一辺と略平行に配置している。また、最も大きな振動速度、振動振幅を持つ中心振動領域175の重心175aと、防塵フィルタ119の重心119cとは、同様に上記第1の仮想線VL1上にある。即ち、圧電素子120の長手方向の一辺の中間点と当該結像光線通過エリア149に対応する板状の光透過部となる底面部119aの一辺の中間点(防塵フィルタ119の重心119c)とを結ぶ第1の仮想線VL1と、当該板状の光透過部となる底面部119aの振動中心(中心振動領域175の重心175a)と当該板状の底面部119aの一辺の中間点(防塵フィルタ119の重心119c)を結ぶ第2の仮想線VL2と、が一致する。但し、圧電素子120を1つのみ配置するため、この中心振動領域175の重心175aは、防塵フィルタ119の重心119cから、上記圧電素子120が配置されている辺側へずれる。
【0049】
ここで、圧電素子120の重心は駆動電圧を印加しても伸縮しないので、圧電素子120はその重心が節エリアに位置するように取り付けることが望ましい。一方、防塵フィルタ119の側壁部119bは、発生される振動の振幅方向に延びているため、底面部119aと側壁部119bの上記第1の仮想線VL1上の境界部分は振動せずに、節エリア173となる。そこで、圧電素子120は、その重心が上記第1の仮想線VL1上の上記境界部分に配置している。この場合、圧電素子120を防塵フィルタ119の底面部119aに配置すると、圧電素子120の短辺方向にはある程度の寸法があるため、上記境界部分に長辺を沿って配置したとしても、重心の位置は振動振幅のある程度大きな位置となってしまう。これに対して、圧電素子120を防塵フィルタ119の側壁部119bに配置すると、圧電素子120の厚み方向の寸法は小さいため、重心の位置はほぼ上記境界部分となるので、好ましい。
【0050】
なお、図5に示す振動子170の防塵フィルタ119は、25.0mm(X方向:LA、LF)×24.2mm(Y方向:LB)×4.2mm(Z方向:H)、底面部119a及び側壁部119bは均一な肉厚0.2mmのガラス板(光学素子)である。圧電素子120は、16.6mm(X方向)×2.4mm(Y方向)×0.6.mm(厚さ)のチタン酸ジルコン酸鉛のセラミックで作られ、防塵フィルタ119の下側の側壁部119bに沿って、X方向、Z方向は防塵フィルタ119の側壁部中心を通るX軸に平行な軸及びZ軸に平行な軸に対して軸対称となるように、エポキシ系の接着剤で接着固定されている。このとき、図5で示される振動モードの共振周波数は90kHz付近であり、防塵フィルタ119中央位置に、四角形の防塵フィルタ119が内接する大きさの円形に防塵フィルタを構成した場合にほぼ匹敵する最も大きな振動速度、振動振幅を持つ中心振動領域175が得られる。
【0051】
また、図6の振動モードは、図5の防塵フィルタ119の加振用周波数を変える(たとえば78kHz付近)ことにより発生するモードである。
【0052】
図7は、振動子170の更に別の変形例を示す図であり、防塵フィルタ119の矩形状の光透過部となる底面部119aの対向する一辺からそれぞれ側壁部119bが延出して、防塵フィルタ119を、全体として断面コの字状に形成したものである。そして、圧電素子120は、その2つの側壁部119bの内の一方に設けられている。上記側壁部119bが延出しない上記底面部119aの他の一辺はそれぞれ自由端となっている。このように、光透過部となる底面部119aは両持ちの梁として自由に屈曲できるので、防塵フィルタ119及び圧電素子120の取付け構造が簡単で、当該取付け構造を簡単にしても性能を損なわず、所望の振動波形を防塵フィルタ119に発生可能な小型の振動子170を提供することができる。また、このような構成では、ホルダ145に対して対向する箇所で締結部材151にて防塵フィルタ119を固定するので、断面L字型の防塵フィルタ119よりも略気密性が高い。
【0053】
なお、防塵フィルタ119の材質は、透明なガラスとして説明したが、メタクリル酸メチル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の樹脂でも良い。成形が可能な樹脂、ガラス材料が最適である。
【0054】
次に、図8を用いて塵埃の除去について詳しく説明する。
【0055】
図8に矢印177で示す方向に分極された圧電素子120に所定の周波電圧が印加された場合は、振動子170がある時点t0で実線に示した状態となる。振動子170表面の任意の位置yにある質点Yの任意の時刻tでのZ方向の振動zは、振動の角速度ω、Z方向の振幅A、Y=2πy/λ(λ:屈曲振動の波長)として、下記の(1)式の通りに表される。
【0056】
z=Asin(Y)・cos(ωt) …(1)
【0057】
この式は、定在波振動を表す。即ち、y=s・λ/2の時(ここで、sは整数)にY=sπとなり、sin(Y)は零になる。従って、時間に関係なくZ方向の振動振幅が零になる節178をλ/2ごとに持つことになり、これは定在波振動である。図8において破線で示した状態は、時間t0の状態に対して振動が逆相となるt=kπ/ωでの状態を示す(ここで、kは奇数)。
【0058】
次に、防塵フィルタ119上の点Y1の振動は、屈曲定在波の振動の腹179の位置になるので、振動振幅はAとなり、Z方向の点Y1の位置z(Y1)は、
z(Y1)=Acos(ωt) …(2)
となる。
【0059】
Y1の振動速度Vz(Y1)は、振動の周波数をfとすると、ω=2πfであるので、上記(2)式を時間で微分して、
Vz(Y1)=d(z(Y1))/dt
=−2πf・Asin(ωt) …(3)
となる。Y1の振動加速度αz(Y1)は、上記(3)式をさらに時間で微分して、
αz(Y1)=d(Vz(Y1))/dt
=−4π・Acos(ωt) …(4)
となり、Y1に付着している塵埃180は、上記(4)式の加速度を受けることとなる。
【0060】
この時、塵埃180の受ける慣性力Fkは、塵埃180の質量をMとして、
Fk=αz(Y1)・M
=−4π・Acos(ωt)・M …(5)
となる。
【0061】
上記(5)式から、慣性力Fkは、周波数fを上げると、fの2乗に比例して大きくなるので効果的なことが判るが、その時の振動振幅Aが小さいと、いくら周波数を上げたからと言って、慣性力を上げることは出来ない。一般的には、加振の振動エネルギーを発生させる圧電素子120の大きさを一定とすると、所定の振動エネルギーしか発生することができない。従って、同じ振動モードで周波数を上げると振動振幅Aは周波数fの2乗に逆比例し、共振周波数を上げて高次の共振モードにすると、振動振幅は低下し、振動速度が上がらず、振動加速度も上がらない(むしろ、周波数が高くなると、理想的に共振させることが難しく、振動エネルギー損失が大きくなり、振動加速度は下がる)。即ち、単に共振モードで振動を発生させることでは大きな振幅を持つモードにはならず、塵埃除去の効果が著しく悪化してしまう。
【0062】
防塵フィルタ119が矩形であるにも関わらず、図5及び図6に示す本実施形態の振動モードは、振動振幅の山の稜線が辺の中心を取り囲む曲線を構成し、X方向の辺からの反射波と、Y方向の辺からの反射波を効率良く合成して定在波を作っている。このような振動では、防塵フィルタ119が円盤状の形状の場合に発生する同心円状の振動の振幅と同等の振動振幅が発生できる。単に辺に平行な振動振幅を発生する振動モードでは、本実施形態の数分の1から10分の1程度の振動加速度しか得ることが出来ない。
【0063】
また、このような振動では、振動子170の中心が最も振動振幅が大きく、周辺の取り囲む曲線ほど振動振幅は小さくなる。これによって、画像の中心ほど塵埃除去の能力が高くなり、振動子170の中心を光軸に合わせることにより、中心の画質が高いところほど塵埃180が写り込まなくなると言った利点もある。
【0064】
さらに、結像光線通過エリア149内の振動振幅の小さいエリアである節エリア173は圧電素子120に与える駆動周波数を変えることで異なる振動モードで共振させることにより、節178位置を変化させて塵埃180を除去できることは勿論である。
【0065】
また、圧電素子120を振動させる上記所定の周波数は、振動子170を構成する防塵フィルタ119の形状寸法と圧電素子120の形状寸法、それらの材質や支持の状態によって決まるものであるが、通常、温度は振動子170の弾性係数に影響し、その固有振動数を変化させる要因の1つとなっている。そのため、運用時にその温度を計測して、その固有振動数の変化を考慮するのが好ましい。この場合、温度測定回路(不図示)に接続された温度センサ(不図示)がデジタルカメラ10内に設けられており、温度センサの計測温度から予め決められた振動子170の振動周波数の補正値を不揮発性メモリ128に記憶させ、計測温度と補正値をBucom101に読み込み、駆動周波数を演算して防塵フィルタ制御回路121の駆動周波数とすることによって、温度変化に対しても効率の良い振動を発生することができる。
【0066】
次に、本実施形態におけるデジタルカメラ10の防塵フィルタ制御回路121について、以下に説明する。
【0067】
図9は、デジタルカメラ10のボディユニット100における防塵フィルタ制御回路121の構成を概略的に示す回路図である。図10は、図9の防塵フィルタ制御回路121における各構成部材から出力される各信号形態を示すタイムチャートである。
【0068】
ここに例示した防塵フィルタ制御回路121は、図9に示す如くの回路構成を有し、その各部において、図10のタイムチャートで表わす波形の信号(Sig1〜Sig4)が生成され、それらの信号に基づいて次のように制御される。
【0069】
防塵フィルタ制御回路121は、図9に例示の如く、N進カウンタ183、1/2分周回路184、インバータ185、複数のMOSトランジスタQ00,Q01,Q02、トランス186及び抵抗R00から構成されている。
【0070】
上記トランス186の1次側に接続されたMOSトランジスタQ01及びMOSトランジスタQ02のON/OFF切替え動作によって、そのトランス186の2次側に所定周期の信号(Sig4)が発生するように構成されており、この所定周期の信号に基づき圧電素子120を駆動させ、防塵フィルタ119を固着した振動子170に共振定在波を発生させるようになっている。
【0071】
Bucom101は、制御ポートとして設けられた2つのIOポートP_PwCont及びIOポートD_NCntと、このBucom101内部に存在するクロックジェネレータ187を介して防塵フィルタ制御回路121を次のように制御する。クロックジェネレータ187は、圧電素子120へ印加する信号周波数より充分に早い周波数でパルス信号(基本クロック信号)をN進カウンタ183へ出力する。この出力信号が、図10中のタイムチャートが表わす波形の信号Sig1である。そしてこの基本クロック信号はN進カウンタ183へ入力される。
【0072】
N進カウンタ183は、当該パルス信号をカウントし所定の値“N”に達する毎にカウント終了パルス信号を出力する。即ち、基本クロック信号を1/Nに分周することになる。この出力信号が、図10中のタイムチャートが表わす波形の信号Sig2である。
【0073】
この分周されたパルス信号はHighとLowのデューティ比が1:1ではない。そこで、1/2分周回路184を通してデューティ比を1:1へ変換する。尚、この変換されたパルス信号は、図10中のタイムチャートが表わす波形の信号Sig3に対応する。
【0074】
この変換されたパルス信号のHigh状態において、この信号が入力されたMOSトランジスタQ01がONする。一方、MOSトランジスタQ02へはインバータ185を経由してこのパルス信号が印加される。従って、パルス信号のLow状態において、この信号が入力されたMOSトランジスタQ02がONする。トランス186の1次側に接続されたMOSトランジスタQ01とMOSトランジスタQ02が交互にONすると、2次側には図10中の信号Sig4の如き周期の信号が発生する。
【0075】
トランス186の巻き線比は、電源回路135のユニットの出力電圧と圧電素子120の駆動に必要な電圧とから決定される。尚、抵抗R00はトランス186に過大な電流が流れることを制限するために設けられている。
【0076】
圧電素子120を駆動するに際しては、MOSトランジスタQ00がON状態にあり、且つ、電源回路135からトランス186のセンタータップに電圧が印加されていなければならない。そして、この場合において、MOSトランジスタQ00のON/OFF制御は、Bucom101のIOポートP_PwContを介して行われるようになっている。N進カウンタ183の設定値“N”は、Bucom101のIOポートD_NCntから設定でき、よって、Bucom101は、設定値“N”を適宜に制御することで、圧電素子120の駆動周波数を任意に変更可能である。
【0077】
このとき、次の(6)式によって周波数は算出可能である。即ち、
fdrv=fpls/2N …(6)
但し、NはN進カウンタ183への設定値、fplsはクロックジェネレータ187の出力パルスの周波数、fdrvは圧電素子120に印加される信号の周波数である。
【0078】
尚、この(6)式に基づいた演算は、Bucom101のCPU(制御手段)で行われる。
【0079】
さらに、このデジタルカメラ10は、超音波域(20kHz以上の周波数)の周波数で防塵フィルタ119を振動させる場合に、デジタルカメラ10の操作者に防塵フィルタ119の動作を告知する表示部を、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130に設けている。つまり、上記CCD117の前面に配置され振動可能な透光性をもつ被振動部材(防塵フィルタ119)に対して、加振部材(圧電素子120)で振動を与えるとき、加振部材の駆動回路(防塵フィルタ制御回路121)の動作と連動してデジタルカメラ10の表示部を動作させ、防塵フィルタ119の動作を告知することも実施する(詳細は後述する)。
【0080】
上述の特徴を詳しく説明する為、Bucom101が行なう制御について、図11及び図12を参照しながら具体的な制御動作について説明する。
【0081】
図11には、本実施形態のデジタルカメラ10の動作制御をフローチャートで表わしており、このBucom101が行なうカメラシーケンス(メインルーチン)の手順を例示している。
【0082】
Bucom101で稼動可能な図11に示すフローチャートに係わる制御プログラムはカメラのボディユニット100の電源SW(不図示)がON操作されると、その稼動を開始する。
【0083】
最初に、当該デジタルカメラ10を起動するための処理が実行される(ステップS101)。即ち、電源回路135を制御して当該デジタルカメラ10を構成する各回路ユニットへ電力を供給する。また、各回路の初期設定を行なう。
【0084】
次に、後述するサブルーチン「無音加振動作」をコールすることで、無音(即ち可聴範囲外)で防塵フィルタ119を振動させる(ステップS102)。尚、ここで云う可聴範囲は、一般人の聴力を基準にして約20Hz〜20000Hzの範囲内とする。
【0085】
続くステップS103からステップS124までは、周期的に実行されるステップ群である。即ち、まず、当該デジタルカメラ10に対するアクセサリの着脱を検出する(ステップS103)。これは、例えば、アクセサリの1つであるレンズユニット200が、ボディユニット100に装着されたことを検出する。その着脱検出動作は、Lucom201と通信を行なうことでレンズユニット200の着脱状態を調べる。
【0086】
もし、所定のアクセサリがボディユニット100に装着されたことが検出されたならば(ステップS104)、サブルーチン「無音加振動作」をコールすることで、無音で防塵フィルタ119を振動させる(ステップS105)。
【0087】
このように、カメラ本体であるボディユニット100にアクセサリの特にレンズユニット200が装着されていない期間には特に、各レンズや防塵フィルタ119等に塵埃が付着する可能性が高いので、上述の如くレンズユニット200の装着を検出したタイミングで塵埃を払う動作を実行することは有効である。また、レンズ交換時にボディユニット100内部に外気が循環し塵埃が進入して付着する可能性が高いので、このレンズ交換時に塵埃除去することは有意義である。そして、撮影直前とみなし、ステップS106へ移行する。
【0088】
一方、上記ステップS104で、レンズユニット200がボディユニット100から外された状態であることを検出した場合は、そのまま次のステップS106へ移行する。
【0089】
そして、ステップS106では、当該デジタルカメラ10が有する所定の操作スイッチの状態検出が行なわれる。
【0090】
ここで、レリーズSWを成す1st.レリーズSW(不図示)が操作されたか否かを、当該SWのON/OFF状態で判定する(ステップS107)。その状態を読み出し、もし1st.レリーズSWが所定時間以上ON操作されない場合には、電源SWの状態を判別する(ステップS108)。そして、電源SWがONされていれば上記ステップS103に戻り、OFFされていれば終了処理(スリープ等)となる。
【0091】
一方、上記ステップS107にて1st.レリーズSWがON操作されたと判別した場合には、画像処理コントローラ126からの撮像画像から被写体の輝度情報を入手し、この情報から撮像ユニット116の露光時間(Tv値)とレンズユニット200の絞り設定値(Av値)を算出する(ステップS109)。
【0092】
その後、同じく撮像画像のコントラストを検出する(ステップS110)。そして、その検出されたコントラストが許可された範囲内にあるか否かを判定し(ステップS111)、否の場合は撮影レンズ202の駆動制御を行って(ステップS112)、上記ステップS103へ戻る。
【0093】
一方、許可された範囲内にコントラストが在る場合は、サブルーチン「無音加振動作」をコールして無音で防塵フィルタ119の振動を開始させる(ステップS113)。
【0094】
さらに、レリーズSWを成す2nd.レリーズSW(不図示)がON操作されたか否かを判定する(ステップS114)。この2nd.レリーズSWがON状態のときは、続くステップS115へ移行して所定の撮影動作(詳細後述)を開始するが、OFF状態のときは上記ステップS108へ移行する。
【0095】
尚、撮像動作中では、通常の如く、露出の為に予め設定された秒時(露出秒時)に対応した時間の電子撮像動作を制御する。
【0096】
上記撮影動作として、ステップS115からステップS121までは、所定の順序にて被写体の撮像が行われる。まずLucom201へAv値を送信して、絞り203の駆動を指令する(ステップS115)。そして、シャッタ108の先幕走行を開始させてOPEN制御し(ステップS117)、画像処理コントローラ126に対して「撮像動作」の実行を指令する(ステップS118)。Tv値で示された時間だけのCCD117への露光(撮像)が終了すると、シャッタ108の後幕走行を開始させてCLOSE制御する(ステップS119)。そして、シャッタ108のチャージ動作を行なう(ステップS120)。
【0097】
その後、Lucom201に対して絞り203を開放位置へ復帰させるように指令して(ステップS121)、一連の撮像動作を終了する。
【0098】
続いて、記録メディア127がボディユニット100に装着されているか否かを検出し(ステップS122)、否の場合は、警告表示をする(ステップS123)。そして再び上記ステップS103へ移行して、同様な一連の処理を繰り返す。
【0099】
一方、記録メディア127が装着されていれば、画像処理コントローラ126に対し撮影した画像データを記録メディア127へ記録するように指令する(ステップS124)。その画像データの記録動作が終了すると、再び、上記ステップS103へ移行して、同様な一連の処理を繰り返す。
【0100】
以下、詳しい振動形態と表示の関係について、上述した3つのステップ(S102,S105,S113)でコールされる「無音加振動作」サブルーチンの制御手順を図12に基づき説明する。尚、この「振動形態」とは、加振部材である圧電素子120によって引き起こされる振動の形態である。
【0101】
図12(A)は、上記サブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図であり、図12(B)乃至(D)はそれぞれ、図12(A)のサブルーチン「無音加振動作」の各タイミングにて並行して実行される「表示動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。この無音加振動作において、加振部材へ連続的に供給される共振周波数の波形を表わすグラフが図13に示されている。
【0102】
図12のサブルーチン「無音加振動作」と「表示動作」は、防塵フィルタ119の塵埃除去の為にだけの加振動作を目的とするルーチンであるので、振動周波数f0は、その防塵フィルタ119の共振周波数付近の所定の周波数に設定されている。例えば図5の振動モードの場合は、90kHzであり、少なくとも20kHz以上の振動である故に、ユーザにとっては無音である。
【0103】
まず、防塵フィルタ119を振動させるための駆動時間(Toscf0)と駆動周波数(共振周波数:Noscf0)に関するデータを、不揮発性メモリ128の所定領域に記憶されている中から読み出す(ステップS201)。このタイミングで、動作表示用LCD129あるいは動作表示用LED130に設けた表示部への加振モードの表示をONする(ステップS301)。そして、所定時間が経過したかを判定し(ステップS302)、所定時間が経過していないときは加振モードの表示を継続し、所定時間経過後は加振モード表示をOFFする(ステップS303)。
【0104】
次に、Bucom101の出力ポートD_NCntから、駆動周波数Noscf0を、防塵フィルタ制御回路121のN進カウンタ183へ出力する(ステップS202)。
【0105】
続くステップS203〜ステップS205では、次のように塵埃除去動作が行なわれる。即ち、まず塵埃除去動作を開始させ実行する。一方、この時の表示は、出力ポートP_PwContをHighのタイミングで加振動作表示を開始させ(ステップS311)、次に所定時間が経過したかを判定し(ステップS312)、所定時間が経過していないときは加振動作の表示を継続し、所定時間経過後は加振動作表示を終了する(ステップS313)。この時の加振動作表示は時間経過、あるいは塵埃除去経過に応じて変化する表示をする(不図示)。この場合の所定時間は、後に述べる加振動作の継続時間であるToscf0に略等しい。また、塵埃除去のために出力ポートP_PwContをHighに設定すると(ステップS203)、圧電素子120は所定の駆動周波数(Noscf0)で防塵フィルタ119を加振し、防塵フィルタ119面に付着した塵埃180を振り払う。この塵埃除去動作で防塵フィルタ119面に付着した塵埃180が振り払われるとき、同時に、空気振動が起こり、超音波が発生する。(但し、駆動周波数Noscf0で駆動されても、一般人の可聴範囲内の音にはならず、聞こえない)。
【0106】
所定駆動時間(Toscf0)、防塵フィルタ119を振動させた状態で待機し(ステップS204)、その所定駆動時間(Toscf0)経過後、出力ポートP_PwContをLowに設定することで、加振終了表示をONする(ステップS321)とともに、塵埃除去動作を停止させる(ステップS205)。加振終了表示は、所定時間経過後(ステップS322)に、OFFされて表示を終了する(ステップS323)。そして、コールされたステップの次のステップへリターンする。
【0107】
このサブルーチンで適用される振動周波数f0(共振周波数(Noscf0))と駆動時間(Toscf0)は、図13にグラフで表わした如くの波形を示す。即ち、一定の振動(f0=90kHz)が、塵埃除去に充分な時間(Toscf0)だけ続く連続的な波形となる。
【0108】
つまり、この振動形態が、加振部材に供給する共振周波数を調整して制御するものである。
【0109】
[第2実施形態]
図14は、本発明の画像機器の第2実施形態としてのデジタルカメラにおけるBucomが行なうカメラシーケンス(メインルーチン)においてコールされるサブルーチン「無音加振動作」の動作手順を表わすフローチャートを示す図である。
【0110】
これは、上記第1実施形態における図12に示すサブルーチン「無音加振動作」の動作を変更したものであり、本第2実施形態は、防塵フィルタ119の動作が、上記第1実施形態と異なる。即ち、上記第1実施形態では、防塵フィルタ119の駆動周波数はf0と言う固定値にして定在波が発生する形態としていたが、本第2実施形態は、駆動周波数を順次変更して加えることで、厳密に駆動周波数を制御しなくても、共振周波数を含む、振動振幅の大きな振動を発生するようにしたものである。
【0111】
また、防塵フィルタ119では、縦横比が製造バラツキで変化した場合に振動モードが大きく変化する(振動速度比が急激に減少する)縦横比が存在し、そのような縦横比の防塵フィルタ119とした場合には、製品ごとに正確に共振周波数を設定して圧電素子120を駆動する必要がある(共振周波数ではない周波数で駆動すると振動速度がさらに下がる)。本第2実施形態のような周波数制御方法を適用すれば、非常に簡単な制御回路で、正確な共振周波数での駆動が可能となり、製造バラツキによる共振周波数のバラツキがあったとしても適正な制御が可能となる。
【0112】
まず、防塵フィルタ119を振動させるための駆動時間(Toscf0)と駆動開始周波数(Noscfs)と周波数変移量(Δf)と駆動終了周波数(Noscft)に関するデータを、不揮発性メモリ128の所定領域に記憶されている中から読み出す(ステップS211)。このタイミングで、図12(B)に示したような加振モードの表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
【0113】
次に、駆動周波数(Noscf)に駆動開始周波数(Noscfs)を設定する(ステップS212)。また、Bucom101のIOポートD_NCntから、駆動周波数(Noscf)を、防塵フィルタ制御回路121のN進カウンタ183へ出力する(ステップS213)。
【0114】
続くステップS203以降では、次のように塵埃除去動作が行なわれる。即ち、まず塵埃除去動作を開始させ実行する。また、このとき、図12(C)に示したような加振動作表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
【0115】
まず、塵埃除去のために出力ポートP_PwContをHighに設定すると(ステップS214)、圧電素子120は所定の駆動周波数(Noscf)で防塵フィルタ119を加振し、防塵フィルタ119に振動振幅の小さな定在波振動を生じさせる。防塵フィルタ119面に付着した塵埃180は振動振幅が小さいと、除去することができない。駆動時間(Toscf0)の間、この振動は継続される(ステップS215)。次に、駆動周波数(Noscf)が駆動終了周波数(Noscft)であるかを比較判定し(ステップS216)、一致していなければ(NOの判定)、駆動周波数(Noscf)に周波数変移量(Δf)を加算して、再び駆動周波数(Noscf)に設定し(ステップS217)、上記ステップS212の動作から上記ステップS216までの動作を繰り返す。
【0116】
そして、上記ステップS216で駆動周波数(Noscf)が駆動終了周波数(Noscft)に一致したとき(YES)には、P_PwContをLowに設定し、圧電素子120の加振動作が終了して(ステップS218)、一連の「無音加振動作」が終了する。また、このとき、図12(D)に示したような加振終了表示を行うことは上記第1実施形態と同様である。
【0117】
このように周波数を変更していった場合に、定在波振動の振幅が増大していく。そこで、定在波の共振周波数を通過するように駆動開始周波数(Noscfs)と周波数変移量(Δf)と駆動終了周波数(Noscft)を設定すれば、防塵フィルタ119に振動振幅の小さな定在波振動がまず発生し、次第に定在波振動の振幅が増大していき、共振振動になった後、定在波振動振幅が小さくなるといった制御をすることができる。そして、所定以上の振動振幅(振動速度)があれは、塵埃180は除去することが出来るので、ある所定の周波数範囲に渡って塵埃180を除去することが可能であり、本実施形態の場合は共振時の振動振幅が大きいことからその周波数範囲も広くなる。
【0118】
また、駆動開始周波数(Noscfs)と駆動終了周波数(Noscft)の間をある程度広くとれば、振動子170の温度や製造バラツキによる共振周波数の変化を吸収することが可能で、極めて簡単な回路構成で確実に防塵フィルタ119に付着した塵埃180を振り払うことが可能となる。
【0119】
以上、実施形態に基づいて本発明を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形や応用が可能なことは勿論である。
【0120】
例えば、上記の加振部材による塵埃除去機構の他に、空気流によって防塵フィルタ119の塵埃180を除去する方式、あるいはワイパーにより防塵フィルタ119の塵埃180を除去するような機構を組み合わせて用いても良い。
【0121】
また、上述した実施形態では、ファインダは液晶モニタを利用したものとなっているが、一眼レフ式の光学ファインダをもつカメラでも勿論良い。
【0122】
さらに、上述した実施形態では、撮像素子としてCCD117を例に挙げているが、もちろん、CMOSやその他の撮像素子であっても構わない。また、上述した実施形態では、加振部材は圧電素子120としていたが、電歪材料でも、超磁歪材でも勿論良い。
【0123】
また、振動の際、加振する対象部材に付着している塵埃180をより効率よく振り落とせるよう、その表面に、例えば、透明導電膜であるITO(酸化インジウム・錫)膜、インジウム亜鉛膜、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン膜、吸湿型静電気防止膜である界面活性剤膜、シロキサン系膜、等をコーティング処理しても良い。但し、振動に係わる周波数や駆動時間などは上記膜の部材に対応した値に設定する。
【0124】
また、本願の一実施形態として記載した光学LPF118を、複屈折性を有する複数枚の光学LPFとして構成しても良い。そして、それら複数枚に構成した光学LPFのうちの最も被写体側に配置された光学LPFを、図2に記載した防塵フィルタ119の代わりに防塵部材(加振対象)として使用しても良い。
【0125】
また、本願の一実施形態として図2に記載した光学LPF118を有さないカメラとし、防塵フィルタ119を、例えば、光学LPF、赤外カットフィルタ、偏向フィルタ、ハーフミラー等の何れかの光学素子として使用するようにしても良い。
【0126】
さらに、上記光学LPF118を有さないだけでなく、防塵フィルタ119を、図2記載の保護ガラス142に代用させる構成としても良い。この場合、保護ガラス142とCCDチップ136との防塵・防湿状態を維持するようにすると共に、保護ガラス142を支持しつつ振動させる構成として、図2記載の防塵フィルタ119を支持しつつ振動させる構成を利用すれば良い。なお、保護ガラス142を、光学LPF、赤外カットフィルタ、偏向フィルタ、ハーフミラー等の何れかの光学素子として使用するようにしても良いのはいうまでもない。
【0127】
尚、本発明を適用する画像機器としては、例示した撮像装置(デジタルカメラ)に限らず、塵埃除去機能を必要とする装置であれば良く、必要に応じて変形実施することで実用化され得る。より、具体的には液晶等の表示素子を用いた画像投影装置における表示素子と光源の間、あるいは表示素子と投影レンズとの間に、本発明の塵埃除去機構を設けても良い。
【符号の説明】
【0128】
10…デジタルカメラ、 100…ボディユニット、 101…ボディ制御用マイクロコンピュータ(Bucom)、 108…シャッタ、 116…撮像ユニット、 117…CCD、 118…光学ローパスフィルタ(LPF)、 119…防塵フィルタ、 119a…底面部、 119b…側壁部、 119c…防塵フィルタの重心、 120…圧電素子、 121…防塵フィルタ制御回路、 122…CCDインターフェース回路、 128…不揮発性メモリ、 129…動作表示用LCD、 130…動作表示用LED、 131…カメラ操作SW、 134…電池、 135…電源回路、 136…CCDチップ、 137…固定板、 138…フレキシブル基板、 139a,139b…接続部、 140…主回路基板、 141a,141b…コネクタ、 142…保護ガラス、 143…スペーサ、 144…フィルタ受け部材、 145…ホルダ、 146…開口、 147…段部、 149…結像光線通過エリア、 150…受け部材、 151…締結部材、 157…フレキ、 158…台、 159…保持材、 170…振動子、 171,172…信号電極、 173…節エリア、 175…中心振動領域、 175a…中心振動領域の重心、 177…分極方向を示す矢印、 178…節、 179…振動の腹、 180…塵埃、 183…N進カウンタ、 184…1/2分周回路、 185…インバータ、 186…トランス、 187…クロックジェネレータ、 200…レンズユニット、 201…レンズ制御用マイクロコンピュータ(Lucom)、 202…撮影レンズ、 203…絞り。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学的な画像が生成される画像面を有する画像形成素子を保持する保持部材と、
上記画像形成素子から入射する光または上記画像形成素子へ入射する光が透過する多角形状をした板状の光透過部と、当該多角形状の光透過部の少なくとも1つの一辺から所定の角度だけ各々が接触しないように傾斜して延出した板状の側壁部と、を有する防塵部材と、
上記少なくとも1つの板状の側壁部に固定されていて、上記光透過部の面に垂直な振動振幅を付与する加振部材と、
を具備し、
上記光透過部及び上記側壁部は、同一の部材を用いて略均一な厚みとなるように形成され、
上記板状の光透過部は、上記画像形成素子の前面に位置し、
上記側壁部の内、加振部材が配置された側壁部は、上記加振部材が固定されている部位以外の部位で、上記保持部材に固定されることを特徴とする振動装置。
【請求項2】
上記板状の光透過部と上記保持部材との間に弾性部材が配置されており、
上記側壁部が延出しない光透過部の一辺は、自由端となっていることを特徴とする請求項1に記載の振動装置。
【請求項3】
上記側壁部は、上記板状の光透過部の一辺と当該板状の光透過部の一辺より短い辺とからなる矩形状をしていることを特徴とする請求項1または2に記載の振動装置。
【請求項4】
上記加振部材は、矩形状をしており、
当該加振部材は、上記側壁部内に収まるように配置されることを特徴とする請求項3に記載の振動装置。
【請求項5】
上記加振部材は、その長手方向の一辺が上記板状の光透過部の一辺と略平行に配置されていて、
当該加振部材の長手方向の一辺の中間点と当該板状の光透過部の一辺の中間点とを結ぶ第1の仮想線と、当該板状の光透過部の振動中心と当該板状の光透過部の一辺の中間点を結ぶ第2の仮想線と、が一致することを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載の振動装置。
【請求項6】
上記光透過部は、矩形状をしていて、
上記側壁部は、対向する一辺から延出し、
上記防塵部材は、全体としてコの字状をしていることを特徴とする請求項1乃至5の何れかに記載の振動装置。
【請求項7】
上記側壁部は、上記光透過部の延長線に対して0〜135°の範囲で傾いていることを特徴とする請求項1乃至6の何れかに記載の振動装置。
【請求項8】
光学的な画像が生成される画像面を有する画像形成素子と、
上記画像形成素子を保持する保持部材と、
上記画像形成素子から入射する光または上記画像形成素子へ入射する光が透過する多角形状をした板状の光透過部と、当該多角形状の光透過部の少なくとも1つの一辺から所定の角度だけ各々が接触しないように傾斜して延出した板状の側壁部と、を有する防塵部材と、
上記少なくとも1つの板状の側壁部に固定されていて、上記光透過部の面に垂直な振動振幅を付与する加振部材と、
を具備し、
上記光透過部及び上記側壁部は、同一の部材を用いて略均一な厚みとなるように形成され、
上記板状の光透過部は、上記画像形成素子の前面に位置し、
上記側壁部の内、加振部材が配置された側壁部は、上記加振部材が固定されている部位以外の部位で、上記保持部材に固定されることを特徴とする画像機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−134818(P2012−134818A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285926(P2010−285926)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】