説明

振込システム

【課題】 振込人が振込情報を入力しながらも、振込情報に基づく振込取引を成立させる前に、振込人に考える時間を与えることが可能な技術を提供する。
【解決手段】 ATM100は、振込人が入力した振込情報をホストコンピュータ200に送信する。ホストコンピュータ200のサポート対象判定部260は、振込情報が予め定められた条件に該当する場合は、ATM100に振込取引を成立させないで保留状態とするよう指示する。指示を受けたATM100は、振込取引を保留とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金銭の振込取引を可能とする振込システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、いわゆる「オレオレ詐欺(振り込め詐欺)」や「架空請求」などの犯罪目的の振込請求に起因した振込みを行なって、金銭を騙し取られる被害者が出ていることが社会問題となっている。被害者には年配者が多く、一度に多額の金銭を振込むことも多い。このような問題に対処するために、金融機関の振込装置(一般には自動取引装置、またはATM:Automated Teller Machineと呼ばれる)の周囲に、オレオレ詐欺等に気をつけるよう注意喚起する張り紙を張ったり、振込装置のタッチパネルに注意喚起のための画面を表示したりしている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−215911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、金銭を振り込もうとしている振込人は、精神的に不安定な状態に陥っていることが多く、張り紙などの注意喚起を見て、考え直す可能性は低い。また、張り紙だけでは、振込人が誰か他人に相談したいと考えても相談しにくい場合も多いものと推測される。
【0005】
本発明は、上記した問題点を解決するためになされたものであり、振込人が振込装置に振込情報を入力しながらも、振込情報に基づく振込取引を成立させる前に、振込人に考える時間を与えることを可能とする技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の少なくとも一部を解決するため、本発明による振込システムは、金銭の振込取引を可能とする振込システムであって、金銭の振込先に関する振込先情報と、振込人に関する振込人情報と、振込金額とを含む振込情報を取得する振込情報取得部と、前記振込情報に基づいて振込取引を成立させる振込取引部と、前記振込情報の少なくとも一部に基づいて、前記振込情報が、予め定められた条件に該当するか否かを判定する判定部とを備え、前記振込取引部は、前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込情報が振込取引可能な情報であるにも関わらず、前記振込情報に基づく振込取引を成立させないで保留状態とすることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、振込情報が予め定められた条件に該当する場合、振込取引を成立させないで保留状態とするので、振込取引を成立させる前に、振込人に考える時間を与えることが可能となる。
【0008】
更に、前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込システムを管理する金融機関の係員と連絡をとることを振込人に促すメッセージを出力するメッセージ部を備えるものとしても良い。
【0009】
これによれば、振込人に係員と連絡をとることを促すので、振込人が係員に相談する可能性が高くなる。
【0010】
更に、現在時刻と、前記振込情報取得部の設置場所に関する設置場所情報を管理する管理部を備え、前記現在時刻が前記振込システムを管理する金融機関の営業店の窓口の運営時間内であり、かつ前記設置場所情報が、前記設置場所が前記営業店内であることを示す場合は、前記振込取引部は、前記保留状態の振込取引を、取引を成立させないまま終了させ、前記メッセージ部は、前記振込人を前記窓口に誘導するメッセージを出力するものとしても良い。
【0011】
これによれば、振込人を窓口に誘導するメッセージを出力するので、振込人が窓口の係員に相談する可能性が高くなる。振込人はそのまま窓口で振込みを行なうことも可能である。
【0012】
更に、現在時刻と、前記振込情報取得部の設置場所に関する設置場所情報を管理する管理部を備え、前記メッセージ部は、前記現在時刻が前記振込システムを管理する金融機関の営業店の窓口の運営時間外であり、かつ前記設置場所情報が、前記設置場所が前記営業店内であることを示す場合は、前記係員が来るまで待機することを促すメッセージを出力するものとしても良い。
【0013】
これによれば、振込人に係員が来るまで待機することを促すメッセージを出力するので、振込人は待機して、来た係員に相談する可能性が高くなる。
【0014】
更に、前記振込情報取得部の設置場所に関する設置場所情報を管理する管理部を備え、前記メッセージ部は、前記設置場所情報が、前記設置場所が前記振込システムを管理する金融機関の営業店外であることを示す場合は、前記係員と遠隔的に通信することを促すメッセージを出力するものとしても良い。
【0015】
これによれば、係員と遠隔的に通信することを促すメッセージを出力するので、振込人が係員に相談する可能性が高くなる。
【0016】
更に、前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込システムの係員に通報する通報部を備えるものとしても良い。
【0017】
これによれば、係員に通報するので、通報を受けた係員が振込人に連絡をとることも可能となる。
【0018】
更に、前記条件に該当すると判定されて保留された振込情報に基づく振込取引を成立させるか否かを示す取引成立可否情報を入力するための取引成立可否情報入力部を備え、前記振込取引部は、前記取引成立可否情報が成立させることを示す場合には、前記保留状態の振込取引を成立させ、前記取引成立可否情報が成立させないことを示す場合には、前記保留状態の振込取引を成立させないまま終了させるものとしても良い。
【0019】
これによれば、振込人は、保留となっていた振込取引を成立させることも、成立させないまま終了させることも可能となる。
【0020】
前記振込人情報は、振込人の年齢を示す情報である年齢情報を含み、前記判定部は、前記年齢情報に基づいて判定を行なうものとしても良い。
【0021】
更に、前記振込情報の少なくとも一部を含む振込履歴を管理する振込履歴管理部を備え、前記判定部は、前記振込履歴に基づいて判定を行なうものとしても良い。
【0022】
なお本発明は種々の形態で実現可能であり、例えば、振込方法または振込装置や、方法または装置の機能を実現するためのコンピュータプログラム、そのプログラムを記録した記録媒体等の形態で実現可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、振込システム1000を構成するATM100とホストコンピュータ200の機能ブロック図である。ATM100は、本発明の振込装置に相当する。振込システム1000は、いわゆる「オレオレ詐欺」や「架空請求」などの犯罪目的の振込請求に起因した振込みを未然防止する手段として、予めサポート対象として定められた条件に該当した振込情報の振込取引を成立させないで、一旦保留にする機能を有するシステムである。振込情報は、振込人に関する振込人情報と、振込内容を含む情報である。振込人情報と、振込内容に関しては後述する。振込システム1000は、ここでは1つの金融機関で管理しているが、複数の金融機関で管理するシステムであっても良い。
【0024】
ATM100とホストコンピュータ200は接続されており、通信可能である。ATM100とホストコンピュータ200は、金融機関の営業店内に設置された監視装置300とも接続されている。監視装置300は、金融機関の係員が監視する装置であって、ATM100に異常が発生した際に、所定のランプを点灯させ、異常が発生したことを知らせる機能を有する。
【0025】
ATM100は、操作部110と、通帳機構部120と、回線接続部130と、制御部140と、カード機構部150と、明細票機構部160と、紙幣入出金機構部165と、硬貨入出金機構部170と、サポート処理部175と、情報管理部180と、取引成立可否情報入力部185とを備える。
【0026】
操作部110はタッチパネルであり、振込取引に関する操作案内やアナウンス情報を表示し、振込人から振込情報の入力を受け付け、振込情報を取得する。操作部110は、本発明の振込情報取得部と年齢取得部に相当する。通帳機構部120は、振込人から挿入された通帳に付加されている情報を読み取ったり、通帳に印字したりする機能を有する。回線接続部130は、ホストコンピュータ200や監視装置300との通信を実行する。回線接続部130は、本発明の通報部に相当する。カード機構部150は、振込人から挿入されたキャッシュカードに付加されている情報を読み取る。明細票機構部160は、取引結果を印字し、明細票として排出する。紙幣入出金機構部165は、紙幣の入出金と、鑑別と、搬送と、収納を行なう。硬貨入出金機構部170は、硬貨の入出金と、鑑別と、搬送と、収納を行なう。
【0027】
サポート処理部175は、振込情報がサポート対象に該当する場合には、振込人をサポートするための処理を実行する。詳しくは後述する。サポート処理部175は、本発明のメッセージ部に相当する。情報管理部180は、ATM100の設置場所と現在時刻を管理する。情報管理部180は、本発明の管理部に相当する。ATM100の設置場所は、ATM100の製造時や設置時に登録されている。取引成立可否情報入力部185は、サポート対象として一旦保留にされていた振込取引を成立させるか否かを示す取引成立可否情報を入力する。制御部140は、各部を統括制御する。
【0028】
ホストコンピュータ200は、回線接続部210と、ファイル部220と、制御部230と、顧客情報ファイル制御部240と、振込履歴ファイル制御部250と、サポート対象判定部260と、振込処理部270を備える。回線接続部210は、ATM100や監視装置300との通信を実行する。ファイル部220は、顧客情報ファイル221と、振込履歴ファイル222を備える。
【0029】
図2は、顧客情報ファイル221を示す説明図である。顧客情報ファイル221は、金融機関の顧客情報を管理するファイルである。顧客情報は、顧客毎に記録され、顧客基本情報と口座情報を含んでいる。顧客基本情報は、店番と、顧客番号と、氏名と、住所と、生年月日を含む。店番は、顧客が口座を開設した店舗の番号である。顧客が複数の店舗に口座を開設する場合は、店番は口座情報に含まれるものとしても良い。顧客番号は、金融機関において顧客に割り当てた顧客固有の番号である。住所は、顧客の居所の住所であり、生年月日は顧客の生年月日である。口座情報は、口座番号と、預金残高と、暗証番号を含む。口座番号は、口座開設時に割り振られる口座固有の番号である。預金残高は、口座の預金残高である。暗証番号は、口座振込みを行なう際入力しなければならないユーザ指定の番号である。口座情報は、図2に示すように、顧客の金融機関での口座数分登録される。
【0030】
図3は、振込履歴ファイル222を示す説明図である。振込履歴ファイル222は、振込履歴を管理するファイルである。振込履歴は、顧客毎に記録され、顧客番号と、振込内容を含んでいる。振込内容は、振込先金融機関名と、振込先支店名と、振込先口座番号と、受取人名と、振込金額を含む。振込先金融機関名と、振込先支店名は、各々金融機関や支店に固有の振込先金融機関番号や振込先支店番号であっても良い。振込履歴ファイル222は、本発明の振込履歴管理部に相当する。
【0031】
図1の顧客情報ファイル制御部240は、顧客情報ファイル221を制御し、ファイルの検索や更新処理を実行する。振込履歴ファイル制御部250は、振込履歴ファイル222を制御し、ファイルの検索や更新処理を実行する。ここでは、顧客情報ファイル制御部240と、振込履歴ファイル制御部250は、別個に備えているが、ファイル制御部として1つの制御部であっても良い。サポート対象判定部260は、振込人から取得した振込情報に基づいて、振込情報が予めサポート対象として定められた条件に該当するか否かを判定する。サポート対象判定部260は、本発明の判定部に相当する。振込処理部270は、振込情報に基づいて振込処理を実行する。制御部230は、各部を統括制御する。制御部140と、制御部230は、本発明の振込取引部に相当する。
【0032】
図4は、振込取引を示すフローチャートである。左側がATM100のフローチャートであり、右側がホストコンピュータ200のフローチャートである。利用者は、操作部110において、現金振込みを行なうか通帳やカードを用いて口座振込みを行なうかを選択する。現金振込の場合(ステップS10:YES)、操作部110は、更に、現金振込みの場合の振込人情報として、振込人の生年月日と、氏名も取得する(ステップS20)。但し、振込人の生年月日は、入力を必須とせずに、任意の入力項目としても良い。口座振込みの場合(ステップS10:NO)、利用者は、キャッシュカードや通帳をカード機構部150または通帳機構部120に挿入する。カード機構部150または通帳機構部120は、カードまたは通帳から口座番号を読み取り、ホストコンピュータ200に送信する(ステップS30)。
【0033】
ホストコンピュータ200の顧客情報ファイル制御部240は、受信した口座番号で顧客情報ファイル221を検索し、該当したレコードの上位の情報である顧客基本情報の顧客番号と、氏名と、生年月日と、口座番号を、口座振込みの場合の振込人情報としてATM100に送信する(ステップS40)。なお、ここでは、口座番号で顧客情報ファイル221を検索するものとして説明したが、口座番号から判別可能な店番と顧客番号で顧客情報ファイル221を検索するものとしても良い。
【0034】
ATM100は、更に、操作部110により振込人から振込内容を取得する(ステップS50)。ATM100は、次に、ホストコンピュータ200と通信しつつ、暗証番号の取得および照合と(口座振込みの場合のみ)、預金残高が振込金額を上回っているかの確認と(口座振込みの場合のみ)、紙幣の挿入受付と鑑別(現金振込みの場合のみ)と、振込先口座が存在するか否かの確認を行なう。これらの事項に問題がないと判定した場合、つまり、振込情報が振込取引可能な情報である場合(ステップS60:YES)、振込人情報と振込内容を併せた振込情報を、サポート対象判定要求としてホストコンピュータ200に送信する(ステップS70)。振込情報が振込取引可能な情報である場合は(ステップS60:NO)、処理を終了する。
【0035】
振込情報を受信したホストコンピュータ200は、サポート対象判定処理を実行する(ステップS80)。図5は、サポート対象判定処理を示すフローチャートである。
【0036】
ホストコンピュータ200のサポート対象判定部260は、振込内容の一部である振込金額が、100万円以上であるか否かを判定する(ステップS81)。100万円以上である場合(ステップS81:YES)、サポート対象となる可能性があり、更に振込人の年齢による判定を実行する。振込人情報の一部である生年月日から導出した振込人の年齢が、60歳以上である場合(ステップS82:YES)、サポート対象となる可能性があり、更に振込履歴による判定を実行する。そのために、サポート対象判定部260は、振込人情報に顧客番号が含まれている場合は、つまり口座振込みの場合は(ステップS83:YES)、顧客番号で振込履歴ファイル222を検索する(ステップS84)。検索された振込履歴ファイル222の振込内容(振込金額を除く)の中に、ATM100から受信した振込内容(振込金額を除く)と一致するものがない場合は(ステップS85:YES)、振込内容が示す振込先に始めて振込みを行なうということなので、サポート対象であるものと判定する(ステップS86)。現金振込みの場合は(ステップS83:NO)、振込内容が示す振込先に始めて振込みを行なうものとして取り扱う。なお、現金振込みの場合にも、その振込みが始めてではないものとして取り扱っても良い。この場合に、例えば、振込人の生年月日と氏名により顧客情報ファイル221を検索し、該当する顧客番号があれば、ステップS83でYESとして、その後の処理を行なうものとしても良い。
【0037】
ホストコンピュータ200のサポート対象判定部260は、振込金額と、年齢と、振込履歴の少なくとも1つの判定で、サポート対象に該当しないという結果になった場合は、振込処理部270が振込処理を実行し、振込取引を成立させる(ステップS87)。つまり、振込情報に基づいて、振込人の口座や振込先の口座の預金残高を更新する。そして、明細票の印字や、キャッシュカードや通帳や残金の返却をATM100に指示する。指示を受けたATM100の明細票機構部160は明細票を印字し、カード機構部150や通帳機構部120は、キャッシュカードや通帳を返却し、紙幣入出金機構部165や硬貨入出金機構部170は残金を返却する。一方、ホストコンピュータ200は、口座振込みの場合は、更に、振込人の振込履歴ファイル222に振込内容を登録する。ホストコンピュータ200は、次に、図4のように、サポート対象であるか否かを示す判定結果をATM100に送信する(ステップS90)。
【0038】
ATM100は、サポート対象であると判定された場合は(ステップS100:YES)、振込取引を保留とし(ステップS110)、サポート処理を実行する(ステップS120)。
【0039】
図6は、サポート処理を示すフローチャートである。ATM100は、まず、監視装置300に異常を知らせる信号を送信する(ステップS121)。監視装置300は、信号を受信するとランプを点灯し、係員に知らせる。係員は、ATM100が金融機関の営業店内に設置され、営業店の窓口の運営時間(以下、単に営業時間と呼ぶ)外である場合は、ATM100の設置場所に向かう。ATM100が金融機関の営業店外に設置されている場合は、振込人からのインタフォン通話に備え、待機する。
【0040】
そして、ATM100のサポート処理部175は、情報管理部180が管理するATM100の設置場所と現在時刻に基づいてATM100の運転状況を判断し(ステップS122)、運転状況に応じた処理を行なう。
【0041】
つまり、設置場所がATM100は金融機関の営業店内に設置されていることを示し、かつ現在時刻が所定の営業時間内である場合は、図7の窓口誘導メッセージを表示し(ステップS123)、保留となっている振込取引による取引を成立させないまま、振込処理を実行せずに終了させる。このとき、挿入された通帳やキャッシュカードや現金を返却する。図7のメッセージにより窓口に誘導された利用者は、窓口係員との対話により、振込みの目的などを改めて判断し、振込みを行なう場合はそのまま窓口で振込手続きを行なう。
【0042】
設置場所がATM100は金融機関の営業店内に設置されていることを示し、かつ現在時刻が所定の営業時間外である場合は、図8の係員待ちメッセージを表示する(ステップS124)。この場合は、上述したように、監視装置300を監視している係員がATM100の設置場所に来るので、その係員との対話により、振込みの目的などを改めて判断することができる。判断により、振込取引を成立させる場合は、係員は成立を示す鍵を取引成立可否情報としてATM100の取引成立可否情報入力部185の成立鍵穴に差し込む。振込取引を成立させない場合は、係員は不成立を示す鍵を取引成立可否情報として取引成立可否情報入力部185の中止鍵穴に差し込む。なお、ここでは鍵を差し込むことにより取引成立可否情報を入力するものとしたが、カードを差し込むことにより取引成立可否情報を入力するものとしても良いし、所定の番号を入力することにより取引成立可否情報を入力するものとしても良いし、所定のボタンを押下することにより取引成立可否情報を入力するものとしても良い。また、ここでは係員が取引成立可否情報を入力したが、振込人が入力するものとしても良い。
【0043】
また、設置場所がATM100は金融機関の営業店外に設置されていることを示す場合は、図9のインタフォン通話メッセージを表示する(ステップS125)。この場合は、上述したように、監視装置300を監視している係員は、振込人からのインタフォン通話に備え、待機している。振込人は、インタフォンによりその係員と通話する。振込人は、インタフォンでの対話により、振込みの目的などを改めて判断することができる。そして、振込取引を成立させる場合は、係員は成立を示す取引成立可否情報を監視装置300に入力し、ATM100に送信する。取引成立可否情報は、先述したように、所定の番号であっても良い。振込取引を成立させない場合は、係員は不成立を示す取引成立可否情報を監視装置300に入力し、ATM100に送信する。
【0044】
ATM100は、不成立を示す取引成立可否情報が入力されると(ステップS126)、取引を成立させないまま、振込取引を終了させる。一方、成立を示す取引成立可否情報が入力されると(ステップS126)、ATM100は、ホストコンピュータ200に、振込処理実行要求を振込情報と共に送信する(ステップS127)。
【0045】
ホストコンピュータ200は、振込処理実行要求を受け、振込処理を実行して振込取引を成立させ、口座振込みの場合は、振込内容を振込人の振込履歴ファイル222に登録する。
【0046】
本実施例の振込システム1000によれば、振込情報の一部が、予め定められた条件に該当する場合、振込情報が振込取引可能な情報であるにも関わらず、振込取引を成立させないで保留状態とするので、振込人に考える時間を与えることが可能であり、「オレオレ詐欺」や「架空請求」の被害を未然に防止することも可能となる。また、振込システム1000では、振込人に応じた肌理細かい対応を実現している。なお、振込情報が振込取引可能な情報であるとは、例えば、キャッシュカードや通帳に異常がなく、入力された暗証番号が口座情報として登録されている暗証番号と一致し、預金残高も振込金額以上であり、振込先口座が存在するという、振込取引を実行するための条件を満たす場合という意味である。本実施例の振込システム1000では、上述したように、振込情報が振込取引可能な情報であるにも関わらず、振込取引を保留状態とすることがある。
【0047】
更に、ATM100は、振込人に、ATM100の設置場所や現在時刻に応じて異なるメッセージを表示し、適した場所にいる係員のサポートを受けることを促すので、振込人は、設置場所や現在時刻に応じて適したサービスを受けることができる。
【0048】
更に、振込システム1000では、サポート対象判定部260がサポート対象に該当すると判定した場合は、監視装置300に通報するので、通報を受けた係員の方から振込人に連絡をとることも可能となる。
【0049】
また、係員の取引成立可否情報の入力により、振込人は、保留となっていた振込取引を成立させることも、成立させないまま終了させることも可能である。
【0050】
その他の実施例:
(1)上記実施例では、振込金額が100万円以上であり、振込人の年齢が60歳以上であり、振込人から振込先口座への振込実績が過去に一度もない場合に、振込取引を保留とするものとしたが、条件はこれに限らず、様々に設定可能である。例えば、条件を、振込金額が200万円以上としても良いし、振込人の年齢が65歳以上としても良いし、振込実績が3回以下としても良い。また、上記実施例では、2つあるいは3つの条件すべてを満たす場合に、振込取引を保留とするものとしたが、少なくとも1つの条件を満たせば、振込取引を保留とするものとしても良い。
【0051】
更に、条件はこれら3つの条件に限らず、他の条件を用いるものとしても良い。例えば、条件に振込人が個人名義であるか否かを加えるものとしても良い。この場合、個人名義の場合はサポート対象と判定するものとしても良い。更に他の条件として、振込先に関する条件を用いるものとしても良い。例えば、詐欺容疑がかかった振込先の口座を要注意口座リストに登録しておき、振込情報の振込先が要注意口座リストに載っている場合は、振込取引を保留とするものとしても良い。要注意口座リストには、頻繁に口座の解約と開設を繰り返す者の口座を登録するものとしても良い。また、要注意口座リストには、振込システム1000において、一旦保留とし、更に振込取引を成立させずに終了させた振込取引の振込先口座を含めるものとしても良い。
【0052】
更に、取引時刻によって条件を変更するものとしても良い。例えば、振込取引可能な時間が限定されている場合、振込取引可能な時間の終了間際には、条件を振込金額50万円以上かつ振込実績が過去に一度もないことに変更するものとしても良い。振込人は、振込取引可能時間が迫った時刻には特に冷静に判断できない場合が多いと考えられるからである。
【0053】
(2)本実施例では、年齢情報として振込人の生年月日を取得していたが、直接年齢を取得するものとしても良い。本実施例では、口座振込みの場合は生年月日を取得していないが、口座振込みの場合も生年月日を取得するものとしても良い。また、サポート対象を判定する条件に年齢が含まれていない場合は、年齢情報を取得する必要はない。
【0054】
(3)上記実施例では、振込情報がサポート対象に該当しないと判定した場合、サポート対象判定処理中で振込処理を実行しているが(ステップS87)、サポート対象判定処理中では振込処理を実行せず、改めてATM100から振込処理実行要求を送信された場合に、振込処理を実行するものとしても良い。ATM100は、例えば、振込情報がサポート対象ではないと判定された場合(ステップS100:NO)、振込処理実行要求を送信する。
【0055】
(4)上記実施例では、サポート対象判定部260はホストコンピュータ200に備えられているが、ATM100に備えるものとしても良い。例えば、ATM100で、振込金額と年齢でサポート対象か否か判定し、サポート対象であれば、ホストコンピュータ200に振込情報を送信しないで振込取引を保留とし、サポート処理部175による処理を実行するものとしても良い。あるいは、ATM100は、振込情報がサポート対象であれば、ホストコンピュータ200に振込情報を送信する際、振込取引を保留とするよう要求し、ホストコンピュータ200が振込取引を保留とするものとしても良い。なお、ホストコンピュータ200に問い合わせることにより、振込実績の有無による判定も可能である。
【0056】
(5)上記実施例では、監視装置300に通報することにより、監視装置300を監視する係員に、サポート対象の振込取引が行われていることを通報しているが、通報先は監視装置300に限らず、様々に設定可能である。例えば、係員の携帯電話に通報するものとしても良い。また、金融機関内に設定されたATM100の場合は、アラームを鳴動させることにより通報するものとしても良いし、ランプを点灯させることにより通報するものとしても良い。更に、本実施例では、ステップS121の監視装置300への通報はATM100が行なうものとしたが、ホストコンピュータ200で行なうものとしても良い。なお、係員への通報は必ずしも行なわなくても良い。
【0057】
(6)上記実施例では、情報管理部180はATM100に備えられているが、ホストコンピュータ200に備え、ホストコンピュータ200でATM100の設置場所や現在時刻を管理し、ステップS122の判定もホストコンピュータ200で実行するものとしても良い。また、本実施例では、設置場所情報は設置場所であるものとして説明したが、設置場所情報は、単に営業店内・営業店外を示す情報であっても良い。
【0058】
(7)振込情報がサポート対象の場合、現在時刻が窓口の運営時間内であり、ATM100の設置場所が金融機関の営業店内である場合は、取引を成立させないまま終了させ、窓口で取引するよう誘導するものとしたが、現在時刻が窓口の運営時間外である場合と同様に、振込取引は終了させず保留とし、振込人には係員が駆けつけるまでその場で待機してもらうものとしても良い。また、本実施例では、設置場所や現在時刻に応じて異なるサポート処理を行なっているが、設置場所や現在時刻に関わらず、同一のサポート処理を行なうものとしても良い。例えば、振込人には、常時インタフォンで係員と連絡をとるよう促すものとしても良い。この場合、設置場所や現在時刻を管理する必要はない。
【0059】
(8)上記実施例では、振込情報がサポート対象である場合は、図7,図8,図9で示したメッセージを操作部110に表示するものとしたが、これに限らず、例えば、アナウンスを音声で流すなど、様々な通知手段を用いることが可能である。メッセージの内容も、図7,図8,図9で示した内容に限らず、様々に設定可能である。
【0060】
(9)上記実施例では、図7,図8,図9で示したメッセージを操作部110に表示するものとしたが、必ずしも表示する必要はない。異常を感じて振込人が係員に呼びかけたり、係員から声を掛けたりすることもあるからである。
【0061】
(10)上記実施例では、振込システム1000では振込取引のみ実行しているが、入出金取引も可能な自動取引システムとして構成することも可能である。
【0062】
以上、実施例に基づき本発明に係る振込システム1000を説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】振込システム1000を構成するATM100とホストコンピュータ200の機能ブロック図。
【図2】顧客情報ファイル221を示す説明図。
【図3】振込履歴ファイル222を示す説明図。
【図4】振込取引を示すフローチャート。
【図5】サポート対象判定処理を示すフローチャート。
【図6】サポート処理を示すフローチャート。
【図7】窓口誘導メッセージを示す説明図。
【図8】係員待ちメッセージを示す説明図。
【図9】インタフォン通話メッセージを示す説明図。
【符号の説明】
【0064】
110...操作部
120...通帳機構部
130...回線接続部
140...制御部
150...カード機構部
160...明細票機構部
165...紙幣入出金機構部
170...硬貨入出金機構部
175...サポート処理部
180...情報管理部
185...取引成立可否情報入力部
200...ホストコンピュータ
210...回線接続部
220...ファイル部
221...顧客情報ファイル
222...振込履歴ファイル
230...制御部
240...顧客情報ファイル制御部
250...振込履歴ファイル制御部
260...サポート対象判定部
270...振込処理部
300...監視装置
1000...振込システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金銭の振込取引を可能とする振込システムであって、
金銭の振込先に関する振込先情報と、振込人に関する振込人情報と、振込金額とを含む振込情報を取得する振込情報取得部と、
前記振込情報に基づいて振込取引を成立させる振込取引部と、
前記振込情報の少なくとも一部に基づいて、前記振込情報が、予め定められた条件に該当するか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記振込取引部は、前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込情報が振込取引可能な情報であるにも関わらず、前記振込情報に基づく振込取引を成立させないで保留状態とする、
振込システム。
【請求項2】
請求項1記載の振込システムであって、更に、
前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込システムを管理する金融機関の係員と連絡をとることを振込人に促すメッセージを出力するメッセージ部
を備えた振込システム。
【請求項3】
請求項2記載の振込システムであって、更に、
現在時刻と、前記振込情報取得部の設置場所に関する設置場所情報を管理する管理部を備え、
前記現在時刻が前記振込システムを管理する金融機関の営業店の窓口の運営時間内であり、かつ前記設置場所情報が、前記設置場所が前記営業店内であることを示す場合は、
前記振込取引部は、前記保留状態の振込取引を、取引を成立させないまま終了させ、
前記メッセージ部は、前記振込人を前記窓口に誘導するメッセージを出力する、
振込システム。
【請求項4】
請求項2記載の振込システムであって、更に、
現在時刻と、前記振込情報取得部の設置場所に関する設置場所情報を管理する管理部を備え、
前記メッセージ部は、前記現在時刻が前記振込システムを管理する金融機関の営業店の窓口の運営時間外であり、かつ前記設置場所情報が、前記設置場所が前記営業店内であることを示す場合は、前記係員が来るまで待機することを促すメッセージを出力する、
振込システム。
【請求項5】
請求項2記載の振込システムであって、更に、
前記振込情報取得部の設置場所に関する設置場所情報を管理する管理部を備え、
前記メッセージ部は、前記設置場所情報が、前記設置場所が前記振込システムを管理する金融機関の営業店外であることを示す場合は、前記係員と遠隔的に通信することを促すメッセージを出力する、
振込システム。
【請求項6】
請求項1記載の振込システムであって、更に、
前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込システムの係員に通報する通報部
を備えた振込システム。
【請求項7】
請求項1記載の振込システムであって、更に、
前記条件に該当すると判定されて保留された振込情報に基づく振込取引を成立させるか否かを示す取引成立可否情報を入力するための取引成立可否情報入力部を備え、
前記振込取引部は、前記取引成立可否情報が成立させることを示す場合には、前記保留状態の振込取引を成立させ、前記取引成立可否情報が成立させないことを示す場合には、前記保留状態の振込取引を成立させないまま終了させる、
振込システム。
【請求項8】
請求項1記載の振込システムであって、
前記振込人情報は、振込人の年齢を示す情報である年齢情報を含み、
前記判定部は、前記年齢情報に基づいて判定を行なう、
振込システム。
【請求項9】
請求項1記載の振込システムであって、更に、
前記振込情報の少なくとも一部を含む振込履歴を管理する振込履歴管理部を備え、
前記判定部は、前記振込履歴に基づいて判定を行なう、
振込システム。
【請求項10】
金銭の振込取引を行なうための振込情報を取得する振込装置であって、
金銭の振込先に関する振込先情報と、振込人に関する振込人情報と、振込金額とを含む前記振込情報を取得する振込情報取得部と、
前記振込情報に基づく振込処理を実行するホストコンピュータに、前記振込情報を送信する振込情報送信部と、
前記振込情報の少なくとも一部に基づいて、前記振込情報が、予め定められた条件に該当するか否かを判定する判定部と、
を備え、
前記振込情報送信部は、前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込情報が振込取引可能な情報であるにも関わらず、保留状態とする、
振込装置。
【請求項11】
金銭の振込方法であって、
金銭の振込先に関する振込先情報と、振込人に関する振込人情報と、振込金額とを含む振込情報を取得する工程と、
前記振込情報に基づいて振込取引を成立させる工程と、
前記振込情報の少なくとも一部に基づいて、前記振込情報が、予め定められた条件に該当するか否かを判定する工程と、
を備え、
前記振込取引を成立させる工程では、前記振込情報が前記条件に該当する場合は、前記振込情報が振込取引可能な情報であるにも関わらず、前記振込情報に基づく振込取引を成立させないで保留状態とする、
振込方法

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−323619(P2006−323619A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−146135(P2005−146135)
【出願日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(504373093)日立オムロンターミナルソリューションズ株式会社 (1,225)
【Fターム(参考)】