説明

挿入ヘッド、特に輸液セットのための挿入器具

【課題】相応する短い痛みの間隔を有する極めて短い挿入段階を有し、挿入ヘッドを挿入器具から解放するときの穿刺部位における刺激を排除し、使用が遙かに容易である挿入ヘッドのための挿入器具を提供する。
【解決手段】当該挿入器具は、輸液セット12を一時的に当該器具上に保持できる保持手段6と、輸液セット12の挿入動作のための駆動力を持つばね8を備えた駆動手段9とを備えている。当該挿入器具は、保持手段が係合位置にあるときに保持輸液セットが圧締めによって保持手段6上に固定できる。これと同時にばね8の予張力によって、挿入動作の開始点を形成している位置まで保持手段6によって動かすことができる。当該挿入器具は、挿入動作の開始時に輸液セット12は既に保持手段から分離され、挿入動作の大部分を保持手段から自由な状態で行える。従って、装置から挿入ヘッドを解放するときに、穿刺部位の刺激を防止できる。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、特許請求の範囲の前段に記載されている挿入ヘッドのための挿入器具、挿入器具と当該挿入器具内に収納されるか又は収納することができる挿入ヘッドとを含む構造、前記挿入器具及び前記構造の使用方法並びに挿入ヘッドを適用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば痛みのあるある種の患者群又はタイプI及びタイプIIの糖尿病を有する患者のような、体組織内又は血液内への直接的な供給によって投与することができる医薬を定期的に必要とする患者にとっては、必要とされる量の液体状の医薬を、体内の適当な位置に導入され且つ全く長期間に亘ってそこに留まるカニューレを介して体に供給することは有用であり得る。この目的のために、その設計に依存して輸液セット又はポートとして示されているカニューレ構造が、皮膚を介して体内へ入るように患者の皮膚上に固定される。
【0003】
患者のある種の医療パラメータ例えば血糖値を、全く長時間に亘って連続的に監視するために益々大きな努力が払われている。この目的のために、例えば、センサー構造が、適切なセンサーの穿刺先端が皮膚を貫通して患者の体内へ入るように患者の体の表面に配置される。
【0004】
感染を防止するためには、輸液セットポート又はセンサー構造は、規則的な間隔で例えば3日毎に交換しなければならない。外来患者の治療例えば糖尿病患者の場合においては、この交換は患者自身によって行われることが多く、皮膚内への注入カニューレ又は穿刺先端の差し込みによるある程度の痛みを伴う。従って、このような輸液セット、ポート又はセンサー構造が容易に且つ安全に適用することができることが重要である。そして、このことが、多くの製造者がその製品である挿入ヘッドを患者の体に対して適用できる助けとなる特別な挿入器具のための挿入ヘッドとして設計を始めた理由である。このようにして適用がより容易になされ、迅速且つ狙いを定めた穿刺過程により、適用によって惹き起こされる痛みが最小限にまで減じられる。
【0005】
従って、例えば、US 6,607,509 B2は、輸液セットのための注入器具を開示しており、当該注入器具においては、予張力をかけられたばねの力によって輸液セットが、適用部位に突然に配置され、カニューレが患者の組織内へと貫入される。輸液セットの適用の後に、挿入器具は輸液セットから解放され且つ取り外されなければならず、このことは、挿入されたカニューレにかけられる力によって穿刺部位に刺激を与えるかも知れないという不利な点を有する。
【0006】
WO 2004/110527 A1は、上記した挿入器具に加えて、輸液セットのための類似した挿入器具をも開示している。しかしながら、当該挿入器具においては、挿入動作の開始時に既に挿入器具から自動的に分離され、次いで患者の体内に自由に貫入する。既に記載した挿入器具と比較すると、この構造は、実際の穿刺動作中に装入器具内に摩擦損失が発生せず、その結果、極めて速い速度で且つ相応の短い痛みの期間によって適用することができるという利点を提供する。更に、その後に行われる挿入ヘッドからの挿入器具の取り外しによって惹き起こされる装入部位の刺激を排除することもできる。しかしながら、前記挿入器具は、使用が比較的複雑であり且つ多くの作動ステップを必要とするという不利な点を有する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明は、全てが従来技術の欠点を有しておらず又は少なくとも部分的に排除している、挿入器具、関連する挿入ヘッドを備えた挿入器具を含む構造及び挿入ヘッドを適用する方法を利用可能とすることを目的とする。
【0008】
当該目的は、請求項1に記載の挿入器具、請求項22に記載の構造及び請求項25による方法によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第一の特徴は、少なくとも1つの注入カニューレ及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えた挿入ヘッドのための挿入器具に関する。挿入器具によって適用される挿入ヘッドは、例えば、単一の注入カニューレ若しくは単一の穿刺先端、幾つかのカニューレ若しくは幾つかの穿刺先端又は1以上のカニューレ及び1以上の穿刺先端を含むことができ、例えば、血糖値を測定するための輸液セット、ポート及び/又はセンサー構造として設計することができる。挿入器具は、例えばハウジングによって形成された1以上の接触面を有し、当該挿入器具は、挿入ヘッドを適用するために前記1以上の接触面によって患者の皮膚上に配置される。当該挿入器具はまた、保持手段例えば2つの相互に対向する板ばね部材をも備え、これらによって、適用されるべき挿入ヘッドは挿入器具上に一時的に保持することができ、その結果として、挿入ヘッドの実際の適用中に、ユーザーによって挿入器具のみが適用部位に保持されなければならない。当該挿入器具はまた駆動手段をも備えている。当該駆動手段は、駆動力を提供するために、少なくとも1つの予張力をかけることができるエネルギ蓄積部材、例えば、渦巻ばねを備えており、適用されるべき挿入ヘッドは、当該駆動手段によって、挿入カニューレ又は穿刺先端のうちの1つの長手方向において、前記接触面に対して、第一の位置(当該第一の位置においては、不注意によるユーザーとの接触を避けるために、挿入ヘッドは、注入カニューレ及び穿刺先端の全てが接触面から後退せしめられた形態で保持手段によって保持される)から、第二の位置(当該第二の位置においては、前記挿入器具が接触面が患者の皮膚上に配置された状態で配置されたときに注入カニューレ及び穿刺先端が前記接触面をほぼ完全に越えて突出し、これらの注入カニューレ及び穿刺先端が患者の体内へ差し込むことができるようにされている)まで移動することができる。エネルギ蓄積部材によって駆動され且つエネルギ蓄積部材の弛緩が増大するにつれて生じ且つ挿入ヘッドを実際に体に適用するこの挿入動作は、特許請求の範囲では挿入動作として示されている。当該挿入器具の保持手段は、接触面に対して、係合位置及び準備位置に配置することができる。保持手段は、係合位置においては、適用される挿入ヘッドが保持手段上に配置され且つ保持されることができ、挿入ヘッドが保持されている係合位置から始まり、次いで、準備位置へと移動させることができるように設計されている。保持手段は、準備位置に達すると、挿入ヘッドを、適用準備がされた第一の位置すなわち皮膚内へ差し込む準備がされた状態に保持する。更に、当該挿入器具は、挿入ヘッドが挿入動作の開始時に保持手段から分離され、その結果、挿入動作の大部分を保持手段によって拘束されずに、好ましくは“自由動作状態”で又はいずれにしても横方向ガイドによってガイドされて行うことができ、適用後には、挿入ヘッドと挿入器具との間にはもはや結合が存在しないように設計されている。その結果、挿入器具は、適用部位を刺激する危険性が無い状態で、身体に適用された挿入ヘッドから取り外すことができる。挿入器具はまた、挿入ヘッドが保持された状態で、保持手段の係合位置から準備位置への動作中に予張力をかけることができるエネルギ蓄積部材が自動的に予張力がかけられるように設計されている。
【0010】
本発明は、相応する短い痛みの間隔を有する極めて短い挿入段階を有し、挿入ヘッドを挿入器具から解放するときの穿刺部位における刺激を排除し、これと同時に、今日知られているこのタイプの挿入器具よりも使用が遙かに容易である挿入ヘッドのための挿入器具の提供を可能にしている。
【0011】
好ましい実施形態においては、挿入器具は、純粋な圧力嵌めにより、又は純粋な嵌め合いにより、又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせにより、第一の位置に挿入ヘッドが保持手段によって保持することができるように設計されている。特に、純粋な嵌め合いの場合には、挿入動作の開始時に、挿入ヘッドが駆動手段のスラスト部材によって保持手段から容易に押し出すことができ且つこのようにして前記保持手段から解放されるという利点がある。
【0012】
挿入器具は、挿入ヘッドが純粋な嵌め合いによって又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせによって係合位置に保持することができるように設計されるのが更に好ましく、挿入器具は、保持手段が、挿入ヘッドを内部に保持した状態で係合位置から準備位置へ移動する際に嵌め合いが解除されるように設計されるのが好ましい。
【0013】
別の方法として、挿入器具は、挿入ヘッドが前記保持手段によって純粋な圧力嵌めによって係合位置に保持することができるように設計されることが更に好ましく、挿入器具は、第二のハウジング部分が係合位置から準備位置へ移動する際に圧力嵌めが緩められるように設計されることが好ましい。このことは、例えば、係合位置から準備位置への移動中にその自由な弾性的な長さが増加するばね吊り手による圧力嵌めによって保持されている挿入ヘッドによって形成することができる。しかしながら、係合位置及び準備位置の両方において等しい強度の純粋な圧力嵌めが存在する別の実施形態も可能である。
【0014】
保持手段が、内部に挿入ヘッドを保持した状態で係合位置から準備位置へ移動する際に、嵌め合いが解除されるか又は圧力嵌めが緩められる代替的な実施形態においては、特に、固定された注入カニューレ又は穿刺先端を備えた挿入ヘッドを使用する場合に、挿入ヘッドが、準備位置よりも係合位置において更に堅固に保持されることが特に有利であり、その結果、針ガード又はカニューレガードは、挿入ヘッドが前記保持手段から再び解放されるという危険性が無い状態で取り外すことができる。
【0015】
別の実施形態においては、挿入器具は、少なくとも挿入動作の大部分に亘って又は挿入ヘッドの挿入動作全体に亘って、保持手段が接触面に対して不動状態のままであるように設計されている。このようにして、簡単な構造の本発明による挿入器具を利用可能とすることができる。
【0016】
別の好ましい実施形態においては、当該挿入器具は、手動によって作動させることができる作動手段、例えば、スライド部材、回転ノブ又は押しボタンを備えている。当該作動手段によって、前記保持手段は、挿入ヘッドが保持された状態で、筋力によって手動で、すなわちエネルギ蓄積部材に予張力をかけると同時に保持手段を片手又は両手によって操作することにより、係合位置から準備位置まで移動させることができる。
【0017】
ここでは、挿入器具は、ハウジングを含む場合が好ましく、保持手段は、スライド部材の形態の作動手段に堅固に結合されるのが好ましい。前記スライド部材は、手で把持し且つ動かすことができ、特に、エネルギ蓄積部材に予張力をかけると同時に保持手段を係合位置から準備位置へと動かすようにハウジングに対して動かすことができる。
【0018】
このことにより、外部動力がない状態でいつでも使用できる用意ができている低廉で且つ機械的な挿入器具の提供が可能になる。このことは、例えば電気モーターのような電気部品によって予張力が得られる本発明による挿入器具の同様に好ましい実施形態とは対照的である。このような実施形態においては、作動手段は、エネルギ蓄積部材に予張力をかけるための電気部品を制御するスイッチ及び/又はセンサーを含むことができる。
【0019】
更に別の好ましい実施形態においては、本発明の挿入器具は、保持手段の係合位置から準備状態への移動中に全体寸法が不変のままであるように設計されている。このような器具は、特にコンパクトで且つ頑丈にすることができるという利点を有し、エネルギ蓄積部材が弛緩され且つ適用準備のための予張力がかけられているべきでない在庫状態においては、これらの寸法は、適用準備がされた予張力がかけられた状態における寸法よりも小さい。この点により、例えば、ハンドバッグ内に適用器具を入れて持ち運ぶことが更に容易になる。
【0020】
当該挿入器具は、挿入ヘッドの適用のために数回使用できるようにするために、ユーザーがエネルギ蓄積部材に繰り返し予張力をかけることができるように設計されることも有利である。
【0021】
挿入器具が以下のように、すなわち、挿入ヘッドが第一の位置に配置されている状態で、エネルギ蓄積部材は予張力をかけられた準備状態とすることができ、次いで、挿入動作が、エネルギ蓄積部材の弛緩を増大させることによって、一つの起動部材の起動又は幾つかの起動部材の同時の又は連続する作動によって起動させることができるように設計されることも好ましい。適切な起動部材は、例えば、起動ラッチ部材又は起動スライド部材のような純粋に機械的な構造とすることができ、又は、評価電子部品を備えたスイッチ及び/又はセンサーによって起動させることができる例えば電気起動ラッチ部材のような電気若しくは電子部品を備えることもできる。このことは、挿入ヘッドの制御された適用に有利である。
【0022】
駆動機構が、駆動力を適用されるべき挿入ヘッドに伝達するためのスラスト部材備えることも有利であり、当該スラスト部材は、当該スラスト部材を挿入動作方向と反対方向へ移動させ、続いて、係止手段(起動部材によって解除される)によって係止することによって、前記エネルギ蓄積部材は、予張力をかけることができ且つ予張力がかけられた状態で準備状態とされる。このような構造は、低廉に形成することができ、信頼性高い方法で機能することができ、更に高い初期の加速及び結果的には迅速な挿入動作を可能とし、それによって、体内への注入カニューレ及び穿刺先端の差し込みの際に適用によって惹き起こされる痛みを最少化することができる。
【0023】
挿入ヘッドが第一の位置に配置されている予張力状態でエネルギ蓄積部材は準備状態とすることができ、次いで、作動部材の作動によって挿入動作を起動させることができる本発明による挿入器具においては、挿入器具は、挿入動作を起動させるために同時に作動させなければならない2つの起動部材を備えていることもまた好ましい。当該起動部材のうちの第一のものは、以下のような形態、すなわち、患者の体の表面に押し付けられる挿入器具の接触面によって起動せしめられるように設計されるのが好ましく、これは、挿入が体表面に対してほぼ90°の角度で行われる場合に特に有利である。挿入器具のこの実施形態は、適用準備状態にあるときに当該挿入器具の不用意な起動の恐れを著しく減じ、従って、ユーザーが創傷を受ける機会をも著しく少なくする。
【0024】
第一の起動部材は、スライド形状又はボタン形状の部材として設計されるのが好ましく、当該部材は、同時に接触面全体を形成する場合又は幾つかの接触面が設けられている場合には挿入器具の接触面の全てを形成する場合が更に好ましい。この利点は、第一の起動部材が患者の体表面上の適用部位の表面形状とは独立して安全に作動させることができる点である。
【0025】
第一の起動部材の純粋に機械的な実施形態に対する代替例として、電気的な第一の起動部材を設けることもまた好ましい。このことは、例えば、接触面上に配置された1以上の皮膚接触センサー(例えば、電導率センサー)及び関連する制御電子部品によって制御される電気的ラッチ部材の形態によって可能である。当該ラッチ部材は、挿入器具が適用部位上に正しく配置されたときに作動せしめられるように制御される。
【0026】
更に、少なくとも2つの起動部材を備えた挿入器具の実施形態においては、特許請求の範囲において第二の起動部材として規定されている少なくとも2つの起動部材は、ユーザーが指の先で押したときに起動させることができる押しボタン形状の部材として設計されている場合に好ましい。起動方向は、挿入器具が患者の体表面に対して押し付けられる方向を横切る方向特に直角方向であるのが好ましい。この方向は、請求された挿入動作の方向、従って、最終的には皮膚への挿入カニューレ又は穿刺先端の差し込み方向と同じであるのが好ましい。この第二の起動部材は、例えば起動ラッチ部材又は起動スライド部材として純粋に機械的な構造とすることができ又は電気若しくは電子部品例えば評価電子部品を備えたスイッチ及び/又はセンサーを介して起動させることができる電気的に起動せしめられるラッチ部材を含むことができる。
【0027】
この実施形態によって、この起動部材が第一の起動部材と一緒に不意に起動される恐れを更に減じることができ、挿入器具の不注意による起動の危険性が更に減少せしめられる。
【0028】
ある種の実施形態においては、起動方向が押込方向と平行又はほぼ平行である場合にもまた有利であるかも知れない。
【0029】
少なくとも2つの起動部材を備えている本発明による挿入器具の更に別の実施形態においては、挿入動作を作動させるために起動されるべき起動部材は、これらの起動部材のうちの一つを起動させることによって、別の起動部材又はこれらの起動部材のうちの他の幾つかの部材の遮断が解除できるような状態で相互に結合されている。このように、単一の起動機構が必要とされるだけであるので、構造を簡素化することができる。特に、電気部品を備えた起動部材が設けられている場合には、例えば、2つのスイッチ又はセンサーが同時に作動せしめられるときにのみ起動させることができる電気的ラッチ部材又は少なくとも1つのスイッチと少なくとも1つのセンサーとの組み合わせによって、特に簡素且つ低廉な構造を形成することができる。
【0030】
一つの又は少なくとも2つの起動部材を備えている挿入器具の更に別の好ましい実施形態においては、挿入動作を起動させるために同時に起動させなければならない起動部材の全てがユーザーによって片手で起動させることができるような形態で設計されている。従って、挿入器具の片手操作が可能であり、その結果として、挿入ヘッドは、両手でのアクセスが不可能であるか又は両手でのアクセスが困難である体の部分例えば臀部においてさえ患者が適用することができる。
【0031】
1以上の起動部材を備えた挿入器具の好ましい実施形態においては、挿入動作を起動させるために同時に起動されなければならない起動部材は、起動力が停止されると自動的に不作動状態となるような形態に設計されている。このことは更に、挿入器具の不注意による起動に対する安全性の度合いを増す。
【0032】
挿入器具の起動手段が挿入動作のための駆動力を提供するための1以上のエネルギ蓄積部材、例えば、渦巻ばね、金属若しくはプラスチックによって作られた脚状ばね若しくは板ばね、空気圧圧縮ばね又はゴムばね部材(この場合には、これが好ましい)を備えている場合には、挿入器具は、いつでも且つどこでも外部駆動力とは無関係に使用することができ且つ特に低廉に作ることもできる。
【0033】
もう一つ別の好ましい実施形態においては、挿入器具は、保持手段内に保持されるべき挿入ヘッドの移動可能な起動部材の移動、特に横方向の移動をもたらすための手段を備えている。1又は幾つかの配備可能な注入カニューレ及び/又は1又は幾つかの配備可能な穿刺先端は、係合位置から準備位置への移動中に挿入ヘッドの配備可能な注入カニューレの全て及び配備可能な穿刺先端の全ての自動的な配備を可能にするために、前記挿入ヘッドと共に保持手段内に保持されている。このようにして、挿入器具に適合された挿入ヘッドが、配備可能な注入カニューレ又は穿刺先端と共に、すなわち、カニューレ又は穿刺先端が係合位置に配置されている挿入器具の保持手段内へと内側へ折り畳まれた状態で保護状態に適合されるのが可能となり、次いで、挿入ヘッドは、保持手段と共に第一の位置へ動かすことによって自動的に適用準備状態とされ、それと同時にエネルギ蓄積部材が予張力をかけられ、カニューレ及び穿刺先端を配備することができる。このようにして、特に、挿入ヘッドの適用の準備がされているときに、ユーザーがカニューレ又は穿刺先端によって創傷を受ける恐れを排除することができる。
【0034】
上記した実施形態においては、移動可能な起動部材の移動をもたらすための手段が、傾斜面を含んでいるか、又は挿入ヘッドが内部に正しく保持された状態で保持手段が係合位置から準備位置へと移動する際に相応して設計された挿入ヘッドの横方向に移動可能な作動部材が移動する(このように移動する際に、当該作動部材は、挿入ヘッドの配備可能な注入カニューレ及び穿刺先端の配備を可能にするために、保持手段及び挿入ヘッドの移動方向を横切る方向に移動させることができる)ことができる傾斜面として設計されている場合が好ましい。移動可能な起動部材の移動をもたらすためのこのような手段は、簡単且つ低廉な方法での利用を容易にすることができる。
【0035】
上記した2つの実施形態においては、移動可能な起動部材の移動を起こさせるための手段が、レバー機構を備えている場合が好ましい。このレバー機構によって、対応して設計された挿入ヘッドの移動可能特に横方向に移動可能な作動部材は、保持手段が挿入ヘッドが内部に正しく保持された状態で係合位置から準備位置へと移動する際に保持手段及び挿入ヘッドの移動方向を横切る方向に移動して、挿入ヘッドの配備可能な注入カニューレ及び穿刺先端の配備を可能にすることができる。これによって、挿入器具とそれに関連する挿入ヘッドとの両方の構造的形状の著しい自由度が許容される。
【0036】
本発明の第二の特徴は、本発明の第一の特徴による挿入器具と、当該挿入器具内に収納されるか又は収納されることができ且つ輸液セット、ポート及び/又はセンサー構造として設計されるのが好ましく且つ少なくとも1つの注入カニューレ及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えている挿入ヘッドとを備えている構造体に関する。従って、挿入ヘッドは、例えば、単一の注入カニューレ若しくは穿刺先端か、幾つかのカニューレ若しくは穿刺先端か、1以上のカニューレ若しくは1以上の穿刺先端を備えることができる。適切なかみ合い挿入ヘッドを本発明の第一の特徴による挿入器具内に結合させることにより、本発明の構造体は必然的に形成される。本発明の第一の特徴による再使用可能な挿入器具及び本発明による構造体を形成するために使用直前にユーザーによって相互に結合される関連する輸液セット、ポート又はセンサー構造のような関連する挿入ヘッドの市販化に加えて、本発明による予め組み立てられた構造体が使い捨て可能な物品(挿入ヘッドが適用された後に廃棄される挿入器具を備えている)として提供される。
【0037】
本発明による構造体の好ましい実施形態においては、挿入ヘッドは、少なくとも1つの配備可能な注入カニューレ及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えた挿入ヘッド(当該挿入ヘッドの配備可能な注入カニューレ及び穿刺先端の全てが不作動状態で内方へ折り畳まれており、この不作動状態では、挿入ヘッドは係合位置に配置された保持手段内に係合されるように意図されているか、又は既に係合位置に配置されている保持手段内に保持されている)であり、前記挿入器具及び挿入ヘッドは、前記保持手段が内部に挿入ヘッドが正しく保持された状態で係合位置から準備位置へ移動する際に当該挿入ヘッドの配備可能な注入カニューレ及び穿刺先端の全てが配備されるように設計されている。本発明の第一の特徴の説明において既に述べたように、このことは、実際には、挿入ヘッドを適用する準備中に、カニューレ又は穿刺先端によってユーザーが傷付く恐れを排除することができる。
【0038】
本発明の第三の特徴は、患者の体に挿入ヘッドを適用するために本発明の前記の特徴のうちの1つによる挿入器具又は構造体の使用方法に関する。前記挿入ヘッドは、輸液セット、ポート又はセンサー構造として設計されるのが好ましく且つ少なくとも1つの注入カニューレ及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えているのが好ましい。このような使用方法は、本発明によるものであり且つ本発明の利点を明確にもたらす。
【0039】
本発明の第四の特徴は、患者の体に挿入ヘッドを適用するための方法に関する。当該挿入ヘッドは、本発明の第一の特徴による挿入器具を使用している輸液セット、ポート及び/又はセンサー構造として設計されるのが好ましい。
【0040】
当該方法の第一のステップにおいては、当該挿入器具は、係合位置に配置されている保持手段によって準備状態とされる。
【0041】
次いで、第二のステップにおいて、挿入器具に適用された少なくとも1つの注入カニューレ及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えた挿入ヘッドは、保持手段によって保持されるように保持手段内に係合せしめられる。挿入ヘッドが、単一の注入カニューレ若しくは穿刺先端、幾つかのカニューレ若しくは穿刺先端、又は1以上のカニューレ及び1以上の穿刺先端を備えることができる本発明の第二の特徴による構造が、このようにして提供される。
【0042】
次いで、第三のステップにおいては、保持手段が、係合位置(挿入ヘッドが正しく保持され、予張力をかけることができる挿入器具のエネルギ蓄積部材が予張力をかけられた状態)から準備位置(挿入ヘッドが、当該準備位置に到達後、第一の位置において前記保持手段によって適用準備状態に保持される状態)まで移動せしめられる。挿入器具は、この状態で実際の適用過程の準備状態となる。
【0043】
この目的のために、挿入器具は、本発明の方法の第四のステップにおいて、その接触面が体表面の所望の適用部位に、挿入ヘッドの挿入カニューレ及び穿刺先端が後続の挿入動作中に体内へ正しく貫入できるような形態で配置される。
【0044】
次いで、第五のステップにおいては、挿入ヘッドの挿入動作が起動され、それによって、挿入ヘッドは、挿入動作の開始時に保持手段から分離され、保持手段から自由な挿入動作の少なくとも大部分を行うことができるようになされている。
【0045】
挿入器具を使用して患者の体に挿入ヘッドを適用するこの方法は、相応する短い痛みの期間を伴う短い挿入段階を可能にし、挿入器具から挿入ヘッドを解除する際の穿刺部位の刺激を信頼性高く避けることができ、同時に、当該方法は、今日知られているこのタイプの方法と比較して実施がより容易である。
【0046】
この方法の好ましい実施形態においては、挿入ヘッドは、圧力嵌めによって、又は純粋な嵌め合いによって、又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせによって、第一の位置に保持される。特に、純粋な圧力嵌めの場合には、これは、挿入動作の開始時に、挿入ヘッドが駆動手段のスラスト部材によって容易に保持手段から押し出されることができ且つこのようにして前記保持手段から取り外されるという利点を提供する。
【0047】
この結合においては、挿入ヘッドは、保持手段内に係合した後に、純粋な嵌め合い、又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせによって係合位置に保持される場合が好ましい。嵌め合いは、挿入ヘッドが内部に正しく保持された状態での保持手段の係合位置から準備位置への移動中に解除されるのが好ましい。
【0048】
別の方法として、挿入ヘッドが保持手段内へ係合した後に、純粋な圧力嵌めによって保持手段によって係合位置に保持される場合が好ましく、この圧力嵌めは、挿入ヘッドが内部に正しく保持された状態での保持手段の係合位置から準備位置への移動中に緩められることが好ましい。しかしながら、挿入ヘッドが同じ強度の圧力嵌めによる各場合に、係合位置及び準備位置の両方において純粋な圧力嵌めによって保持手段によって保持される実施形態も提供されている。
【0049】
保持手段が内部に挿入ヘッドを正しく保持した状態で係合位置から準備位置へ移動する際に嵌め合いが解除され又は圧力嵌めが緩められる当該方法の各変形例において、特に固定された注入カニューレ又は穿刺先端を備えた挿入ヘッドを使用している場合の特別な利点は、挿入ヘッドが準備位置におけるよりも係合位置において、より確実に保持されることであり、その結果、針ガード又はカニューレガードは、挿入ヘッドが保持手段から再び解放されるという危険性がない状態で取り外すことができる。
【0050】
本発明の別の好ましい実施形態においては、保持手段は、少なくとも挿入動作の大部分又は挿入動作全体に亘って接触面に対して不動状態に保持される。このことは、当該方法を実施するために、低廉で且つ構造が簡単な本発明による挿入器具を使用することができるという利点を有する。
【0051】
当該方法の別の好ましい実施形態においては、挿入ヘッドが保持されている保持手段は、筋力によって手動により、手動好ましくはスライド部材を移動させ、回転ノブを回転させ又は押しボタンを押し込むことによって、係合位置から準備位置へ移動させることができる。このような操作は、エネルギ蓄積部材に予張力をかけ且つ保持手段を移動させるのに必要な力を挿入器具に付与するのに特に適している。
【0052】
当該方法の更に別の好ましい実施形態においては、エネルギ蓄積部材は、予張力がかけられた準備状態とされ、次いで、作動部材の作動又は幾つかの作動部材の同時若しくは連続的な作動によって起動される。これは、制御された適用過程にとって有利である。
【0053】
当該挿入器具を患者の体表面への配置及び挿入動作の起動は、手が届くことが困難であるか又は片手でのみ手が届くことができる領域にも適用するためにアクセス可能であるように片手でなされることも好ましい。
【0054】
本発明による方法のもう一つ別の好ましい実施形態においては、少なくとも1つの配備可能な注入カニューレ及び/又は少なくとも1つの配備可能な穿刺先端を備えた挿入ヘッドであって且つ配備可能な注入カニューレ及び穿刺可能な先端の全てが内方へ折り畳まれた状態で保持手段内に係合されている。当該挿入ヘッドの注入カニューレ及び穿刺先端の全ては、次いで、内部に挿入ヘッドが正しく保持された状態での保持手段の係合位置から準備位置への動作中に配備される。当該挿入ヘッドは、次いで、適用準備状態となる。このようにして、適用準備状態のときに、ユーザーが傷を負う危険性は実際にはゼロまで低減させることができる。
【好ましい実施形態の説明】
【0055】
図1には、配備可能な注入カニューレを備えた挿入ヘッドのための本発明による挿入器具の第一の実施形態が、予張力がかけられていない状態で且つ挿入ヘッドを備えていない状態で垂直断面で示されている。ここで見ることができるように、挿入器具は、門のようなハウジング1を備えている。当該ハウジングは接触面2を備えており、当該挿入器具は、接触面2によって、当該挿入器具を使用する輸液セットの適用のために体表面上に配置され且つ押し付けられる。接触面2のうちの1つは、固定ボタン3によって形成されている。固定ボタン3は、ハウジング1の下面から下方へ突出しており、挿入器具が患者の体表面上に配置され且つ押し付けられることによって適用準備状態とされたときに、挿入器具を解放するために解除位置へと移動させることができる。当該解除位置においては、固定ボタン3の接触面2は、固定ボタン3に隣接しているハウジング1の接触面2の表面と本質的に同面となる。
【0056】
当該挿入器具はまた起動ノブ4をも備えており、挿入ヘッドを患者の体表面に適用するための挿入動作は、挿入器具が適用準備状態にあり且つ固定ボタン3が解除位置に配置されているときに当該起動ノブ4によって起動させることができる。固定ボタン3及び起動ノブ4は、特許請求の範囲に規定されている2つの起動部材3,4を指しており、これらは、挿入動作を起動されるためには同時に起動させなければならない。
【0057】
ここでわかるように、挿入器具は、図1に示されている状態で、下面に収容穴5を備えている。収容穴5は、スライド部材6によって形成されており且つ突出部7が取り付けられている。突出部7は、スライド部材6の作用によって弾性を付与され、適用される輸液セットは、この場合には、突出部7によってもっぱら圧力締めによって収容穴5内に保持することができる。
【0058】
同じく図からわかるように、当該挿入器具は、駆動手段として、ハンマー部材9に作用する渦巻きばね8を備えている。渦巻きばね8はハンマー部材9に作用する。ハンマー部材9は、図示されている状態においては、スライド部材6の留め用突出部10に当接している。
【0059】
既に述べたように同じ状態の挿入器具を示している図2,3及び4(挿入ヘッド12は収容穴内に係合されており(図2)、予張力を付与する間は挿入ヘッド12が内部に保持されており(図3)、予張力がかけられ且つ図示された状態においては適用準備状態とされている(図4))からわかるように、予張力をかけるために及びこれと同時に輸液セット12の注入カニューレ11を配備するために、ハウジング1が片手で把持され、スライド部材6が輸液セット12を保持した状態で他方の手で把持され、ハウジング1に対して上方へ動かされ、それによってハンマー部材9が引きずられ、渦巻ばね8の高い予張力がもたらされる。スライド部材6は、上方へ移動中に、ハウジング1の門状の穴を開放し、その最も上方の位置においてハウジング1の頂端縁の上方へ突出しておらず、挿入器具の全体寸法は不変のままである。
【0060】
これと同時に、挿入ヘッド12のカニューレ11が作動レバー23によって配備される。作動レバー23は、ハウジング1内で制御斜面39上に延びているスライド部材6上に枢動可能に取り付けられており、挿入ヘッド12の方へ枢動されることによって挿入ヘッド12の左側のハウジング部分13(挿入ヘッド12の移動可能な作動部材を形成している)を右側のハウジング部分14内へ押し込み、このようにして、挿入ヘッドの内側に配置されている機構(図示せず)を介してカニューレ11が配備される。この例示的な実施形態及び以下の実施形態に示されている挿入ヘッド12は、もっぱらインスリンのための輸液セットであり、これは、ここに示されている適用前の状態においては、適用に続いて取り外されるべき穿刺針によって支持されている可撓性のカニューレ(軟らかいカニューレ)を備えている。しかしながら、本発明を説明する目的のためには、穿刺針と可撓性の針との区別はなされなくても良い。なぜならば、両者は一緒に“カニューレ”として示されているからである。
【0061】
挿入ヘッド12がスライド部材6と一緒に、図2に示されている収容装置から、図4に示されている準備位置(挿入ヘッド12が特許請求の範囲に規定されている第一の位置に配置されている)へと同時に移動する状態で、起動レバー15(二重レバーとして示されており且つ第一の端部がガイドブロックのような筒状ガイド部材(図示せず)によってハンマー部材9の後面上の水平の長穴16内でガイドされる)は、ハウジング1内の支持点を中心に枢動せしめられ、それによって、その第二の端部に形成されている上昇斜面17が、ラッチ部材18を、係止ばね19の力に抗して斜面17がラッチ部材18を通過するまで下方へ動かし、次いで、ラッチ部材18によって図4に示された状態に係止される。ラッチ部材18は、ばねの力によって跳ね戻る。このようにして、この状態において、ハンマー部材9は、図4に示されている上方位置において、予張力がかけられたばね8の力に抗して起動レバー15によって保持される。
【0062】
起動レバー15がラッチ部材18によって係止されるとすぐに、ハンマー部材9を引きずっている留め用突出部10がハンマー部材9から分離される。なぜならば、留め用突出部10を担持しているスライド部材6のばね掛け金20がハウジング1内の斜面21上をその自由端部によって延びており、その結果、掛け金20がハンマー部材9から離れる方向へ曲げられるからである。この状態(スライド部材6が最大限まで上方へ押されている状態)においては、スライド部材6は、留め用手段(図示せず)を介してハウジング1上に可逆的に係止され、このようにして、スライド部材6は、逆方向に動かすことができ且つ高い初期抵抗に打ち勝った後においてのみ係合位置へと戻ることができる。適切な留め手段は、当業者に知られており且つ例えば舌状ばね上に保持され且つアンダーカット部内の継続斜面と係合している出っ張りによって形成することができる。係止結合は、アンダーカット部の端縁上に延びている継続斜面による高い力による舌状ばねの偏倚によって再び解放することができるようになされている。
【0063】
図4と図5(一方では適用準備状態が固定された状態で示されており(図4)、他方では適用準備状態が解放状態で示されている(図5))を比較することによってわかるように、係止ばね19がラッチ部材18から遠い方向の端部によって担持している固定ボタン3は、第一のハウジング1内の固定スライド部材22を形成している。固定スライド部材22は、図4に示された状態においては、嵌め合い部を有して起動ノブ4の起動を阻止している。例えば、挿入器具を患者の体表面上の適用部位に押し付けることによって係止ばね19の力の方向と反対方向に押圧力がかけられたときにのみ、圧力嵌め部は、接触面2を担持している下面がハウジング1の接触面2と本質的に同面となる深さまでハウジング1内へ押し込まれて互いに隣接する。図5に示されているこの状態において、固定スライド部材22は起動ノブ4を解放する。
【0064】
起動ノブ4が起動された直後の挿入器具を示している図6からわかるように、起動ノブ4は、ハウジング1の内方に向いた面上に起動斜面24を備えている。起動斜面24は、ラッチ部材18の制御端縁に沿って動かされ、このようにして、ラッチ部材18が係止ばね19の力に抗して下方へ引き出され、その結果、起動ラッチ部材15の係止された第二の端部が解放され、その第一の端部に保持されているハンマー部材9が、予張力がかけられた渦巻きばね8の力によって起動されて下方へ跳ね出る。ハンマー部材9は、スライド部材6内の特許請求の範囲で規定している第一の位置に圧力嵌めによって保持されている挿入ヘッド12の頂面にぶつかり、挿入ヘッド12が留め用突出部7から解放され、挿入ヘッド12が適用のために患者の体に向けて下方へ駆動され、カニューレ11はその前方が完全に体内へ挿入され、挿入ヘッド12はその下面が体表面上に位置するまで体内に貫入される。留め用突出部7を備えたスライド部材6は、ハウジング1に対して動かない状態のままである。更に別の挿入ヘッド12を適用するためには、最初に、スライド部材6が、初期の高い抵抗に打ち勝った後にハウジング1に対して下方へ動かされることにより、係合位置へと戻されなければならない。
【0065】
適用後においては、適用された挿入ヘッド12は挿入器具から完全に分離され、その結果、挿入器具は、適用部位に刺激を生じさせることなく取り外すことができる。
【0066】
同様に配備可能な注入カニューレを備えた輸液セットのための本発明による挿入器具の第二の実施形態が、図7及び8に垂直断面によって示されており、特に、これらの図面は、一方においては、挿入ヘッドが既に内部に係合されている予張力がかけられていない状態が示されており(図7)、他方においては、特許請求の範囲に規定されている第一の位置において輸液セットが適用準備状態に配置されている予張力がかけられ且つ解放された状態で示されている(図8)。
【0067】
図からわかるように、この挿入器具もまた門形状のハウジング1を備えており、当該ハウジングは、下面に接触面2を備えており、当該接触面2を介して、挿入器具は、当該挿入器具を使用して輸液セットの適用のために患者の体表面上に配置され且つ押し付けられる。接触面2の一部分は、固定ボタン3によって形成されている。固定ボタン3は、ハウジング1の下面から下方へ突出しており、挿入器具を解放するために、挿入器具が患者の体表面に配置され且つ押し付けられることによって適用準備状態にあるときに、解放位置へ移動させることができ、当該解放位置においては、固定ボタン3の接触面2は当該固定ボタンに隣接しているハウジング1の接触面2と本質的に同面となる(図8参照)。
【0068】
当該挿入器具はまた起動ノブ4を備えており、当該挿入器具が図8による状態にあるときに、起動ノブ4によって、挿入ヘッドを患者の体に適用する挿入動作を起動させることができる。従って、固定ボタン3と起動ノブ4とは、この場合には、挿入動作を起動させるために同時に起動させなければならない特許請求の範囲に規定されている起動部材3,4を示している。
【0069】
この挿入器具はまた、挿入ヘッドを備えていない解放状態(図7に示されているような状態であるが、係合される輸液セットが配置されていない)において、その下面に収容穴を備えている。当該収容穴は、ハウジング1内に垂直方向に移動可能に取り付けられている収容部材26によって形成されており、当該収容穴内には、収容部材26の作用によって弾性である突出部(図示せず)が取り付けられており、当該収容穴によって、輸液セット12が、図示された状態の両方においては主に圧力嵌めによって当該収容穴内に保持される。
【0070】
同じく図からわかるように、挿入器具は、駆動手段として、起動レバー15を介してハンマー部材9に作用する捻りばね8を含んでいる。起動部材15は、ハウジング内で捻りばね8の回転中心を中心として回転できるように取り付けられており且つ回転中心から遠い方の端部に筒状ガイド部材30を備えており、当該筒状ガイド部材30は、摺動ブロックのように、ハンマー部材9内の水平の長穴16内でガイドされる。
【0071】
予張力をもたらし且つこれと同時に収容部材26内に保持されている輸液セット12の注入カニューレ11を配備させるために、ハウジング1は片手で把持され、ハウジング1の外径輪郭に沿って移動可能なスライド部材6は片手によって把持され、次いで、スライド部材6が、図7に示されている位置から図8に示されている位置まで移動させることができる。ハウジング1を保持している手と同じ手を使用してスライド部材6を作動させることも同様に可能である。
【0072】
これらの図面は断面図であるので、図面には、スライド部材6の移動中に当該スライド部材6によって形成されているガイド(図示せず)がテンションレバー29の筒状ガイド28に沿ってガイドされてテンションレバー29が上方へガイドされる形態は示されていない。テンションレバー29は、ハンマー部材9内に取り付けられている戻り止め10の下方で係合している更に別の筒状部材(見えていない)を後面上に筒状ガイド部材28に対向して備えている。テンションレバー29は、上方へ移動する際に筒状部材を介してハンマー部材9及び戻り止め10を上方へ運び、次いで、ハンマー部材9が図7に示されている位置から図8に示されている位置へと、予張力をかけられたばね8の力に抗して起動レバー15を上方へ引きずり、ばね8の予張力を増大させる。このようにする際に、テンションレバー29の筒状部材は、予張力をかける動作の終了時に、戻り止め10に隣接して配置されるまで、すなわち戻り止め10から分離されるまで、戻り止め10の下面に沿って水平方向に摺動する。
【0073】
図7からわかるように、起動レバー15は、回転中心を形成している端部に係止部材27を備えている。係止部材27は、その枢動動作中に、ラッチ部材18を通り過ぎて延び、次いで、ラッチ部材18によって、図8に示されている予張力をかけられた状態に係止されるまで、係止ばね19の力によって作用を受けるラッチ部材18に沿ってガイドされて摺動する。この係止は、テンションレバー29の筒状部材が戻り止め10から分離する直前に起こる。当該筒状部材が戻り止め10から分離した後に、ハンマー部材9は、図8に示されている上方位置に起動レバー15によって保持される。
【0074】
ハンマー部材9はまた、その上方への動作中に、スライド部材26を一緒にひきずり、スライド部材26は、次いで、当該スライド部材26によって形成されている搬送用出っ張り31によって、補助ばねの力に抗して起動レバー15上に回転可能に取り付けられている作動レバー23を一緒に持ち去る。作動レバー23は、挿入レバー12の方へ枢動せしめられ、このようにして、挿入ヘッド12の移動可能な作動部材を形成している挿入ヘッド12の左側のハウジング部分13を、右側のハウジング部分14内へ押し込み、このようにして、挿入ヘッドの内側に配置されている機構(図示せず)を介してカニューレ11を配備させる。
【0075】
テンションレバー29の筒状部材が戻り止め10から分離する直前に、スライド部材26は、係留手段(図示せず)によって、図8に示されている位置において、ハウジング上に可逆的に係止し、高い初期抵抗に打ち勝った後においてのみ、逆方向に動かすことができ且つ係合位置に戻すことができるようなになされている。好適な係留手段は、当業者に公知であり且つここでは例えば舌状ばね部材上に保持され且つアンダーカット部の継続斜面と係合している出っ張りによって形成され、アンダーカット部の端縁上に延びている継続斜面によって、高い圧力によって、舌状ばね部材の偏倚によって係止結合が再び解除できるようにすることができる。
【0076】
図7及び8を比較することによってわかるように、ラッチ部材18から離れる方向を向いた端部によって係止ばね19が当接している固定ボタン3は、この場合には、ハウジング1内に固定スライド部材22をも形成しており、図7に示されている状態においては、固定スライド部材22は、嵌め合いを有し且つ起動ノブ4の作動を阻止している。例えば、挿入器具を患者の体表面上の適用部位に押し付けることによって、係止ばね19の力の方向と反対の方向に固定ボタン3に加圧力がかけられたときにのみ、固定ボタンは、接触面2を担持している下面が隣接するハウジング1の接触面2と本質的に同面となる深さまでハウジング1内へ押し込むことができる。この状態(図8に示されている)において、固定スライド部材22は起動ノブ4を解放する。
【0077】
この実施形態においてもまた、起動ノブ4は、ハウジング1の内方を向いた面上に起動斜面(見えていない)を備えている。当該起動斜面は、起動ノブ4を作動させたときにラッチ部材18の制御端縁に沿って移動せしめられ、係止ばね19の力に抗してラッチ部材18を下方へ引き出す。その結果、起動レバー15の係止部材27は解放され、起動レバー15の第一の端部に保持されているハンマー部材が予張力がかけられた捻りばね8の力によって駆動されて下方へ跳ね出す。ハンマー部材9は、圧力嵌めによって、スライド部材6内の特許請求の範囲に規定されている第一の位置に保持されている挿入ヘッド12の頂面にぶつかり、挿入ヘッド12を留め用突出部から解放し、挿入ヘッド12を患者の体表面に適用するために下方へ駆動し、カニューレ11は、体内へ完全に挿入され且つ挿入ヘッド12の下面(接着パッド32によって形成されている)が体表面上に位置するまで、その先端が体内へ貫入する。収容部材26は、ハウジング1に対して不動状態のままとされ、更に別の挿入ヘッド12を適用するためには、最初に、係合位置へと戻されなければならない。この目的のために、スライド部材6は図7に示されている位置へと戻される。図7においては、スライド部材6はテンションレバー29を一緒に下方へ引っ張る。テンションレバー29は、次いで、初期の高い抵抗に打ち勝つことによって収容部材26をハウジング1から解放し、次いで、収容部材26を図7に示されている位置へと搬送する。テンションレバー29の下方への移動中に、当該テンションレバーの裏面に配置された筒状部材(見えていない)は戻り止め10を横切って延び、戻り止めばね(図示せず)の力に抗して戻り止め10を一時的に戻し、次いで、戻り止め10を再度係止する。この状態において、別の輸液セットを収容部材26の凹部内へ係合させることができる。
【0078】
同様に配備可能な注入カニューレを備えた輸液セットのための本発明の挿入器具の第三の実施形態が、図9及び10に垂直断面によって示されている。特に、これらの図面においては、一方では、挿入ヘッドが既に係合せしめられた非予張力状態で示されており(図9)、他方では、輸液セットが特許請求の範囲に規定されている第一の位置において適用準備状態に配置されている予張力がかけられ且つ解放された状態で示されている(図10)。
【0079】
図からわかるように、この第三の挿入器具もまた、下面に接触面2を備えた門状のハウジング1を備えている。接触面2によって、挿入器具は、当該挿入器具を使用する輸液セットの適用のために、患者の体表面に配置され且つ押圧される。接触面2のうちの一つは、同じく、固定ボタン3によって形成されており、固定ボタン3は、既に上記した2つの挿入器具における場合と同様に、ハウジング1の下面から下方へ突出しており且つ挿入器具が患者の体表面上に配置され且つ押圧されることによって適用準備状態にあるときに、挿入器具を解放するために、解放位置へ移動させることができる。解放位置においては、固定ボタン3の接触面2は、当該固定ボタンに隣接しているハウジング1の接触面2と本質的に同面となる(図10参照)。
【0080】
この場合の挿入器具は起動ボタン4を備えており、挿入器具が図10の状態にあるときに、起動ボタン4によって、患者の体表面に挿入ヘッドを適用するための挿入動作が起動される。この場合にも同じく、固定ボタン3及び起動ノブ4は特許請求の範囲に規定されている2つの起動部材3,4を示している。起動部材3,4は、挿入動作を起動させるためには、同時に作動されなければならない。
【0081】
この挿入器具はまた、挿入ヘッドを備えていない予張力がかけられていない(しかしながら、図9におけるように、係合された輸液セットを備えていない)状態においては、その下面に収容穴を備えている。収容穴は、ハウジング1内に垂直方向へ移動可能に取り付けられている収容部材26によって形成されており、内部には、収容部材26によって形成されている保持手段(図示せず)が配置されており、輸液セット12が圧力嵌めによって収容穴内に保持される。
【0082】
同じく図からわかるように、挿入器具は、既に説明した第一の実施形態と同様に、駆動手段として渦巻ばね8を備えている。渦巻ばね8はハンマー部材9に直接作用し、ハンマー部材9は、図示された状態においては、留め用突出部10によって収容部材26に当接している。渦巻ばね8は、ハンマー部材9及び収容部材26のほぼ筒状部分によって同心状に包囲されている。収容部材26の筒状部分は、その外周にガイド部33を備えている。ガイド部33には、収容部材26のこの筒状部分を包囲している回転スリーブ34の摺動ブロック(見ることが出来ない)が係合している。回転スリーブ34は、ハウジング1内に回転可能であるがばね8の力の方向に対して軸線方向に不動に取り付けられており且つ回転ノブ25を担持しており、渦巻ばね8は回転ノブ25の内面に当接している。
【0083】
予張力をもたらし且つこれと同時に収容部材26内に保持されている輸液セット12の注入カニューレ11を配備するために、図9による状態に配置されている挿入器具のハウジング1は片手で把持され、回転ノブ25は、他方の手で約120°回転される。これはハウジング1に対する回転スリーブ34の対応する回転につながる。このようにして、摺動ブロックは、収容部材26のガイド部材33の内側を移動せしめられ、その結果、収容部材26は、輸液セット12が内部に保持された状態で図9に示されている位置から図10に示されている位置まで引きずるハンマー部材9によって、渦巻ばね8の対応する増大せしめられた予張力によって持ち上げられる。図10に示されている挿入器具の最大限まで予張力がかけられた状態に対応する回転位置に達すると、この回転位置において、回転ノブ25は、係留手段(図示せず)を介してハウジング1に可逆的に係止して、高い初期抵抗に打ち勝ったときにのみ更に又は逆方向へ回転できるようになされている。適切な係留手段は、当業者に知られており且つ例えば舌状ばね部材上に保持され且つアンダーカット部内の継続斜面と係合している出っ張りによって形成することもでき、その結果、アンダーカット部の端縁上に延びている継続斜面によって、高い力による舌状ばね部材の偏倚により係止結合が再び解除できるようになされている。
【0084】
保持部材26は、上方へ移動したときにハウジング1の門状の穴を解放するだけであり且つハウジング1の内部に留まったまであるので、挿入器具の全体の寸法はこの場合にも本発明による挿入器具の第一の実施形態と同じように不変のままである。
【0085】
回転ノブ25が回転せしめられ且つ内側部材8,9,26,34が移動せしめられると同時に、挿入ヘッド12のカニューレ11は、ハウジング1に取り付けられた作動レバー23の2つのアームのうちの一方によって配備される。作動レバー23は、ハウジング1内に取り付けられており且つ収容部材26(断面図であるために見ることができない)によって引きずられる二重レバーとして設計されており、従って、当該二重レバーの第二のレバーが挿入ヘッド12の方へ枢動せしめられ、挿入ヘッド12の左側のハウジング部分13(挿入ヘッド12の移動可能な作動部材を形成している)が右側のハウジング部分14内へ押し込まれ、このようにして、挿入ヘッドの内側に配置された機構(図示せず)を介してカニューレ11が配備される。
【0086】
図9及び10を比較するとわかるように、固定ボタン3は、ばね19の力によって押し出され且つハウジング1内に固定スライド部材22を形成する。固定スライド部材22は、図9に示された状態では起動ノブ4の作動を阻止している。例えば、患者の体上の適用部位に挿入器具を押し付けることによって固定ボタン3にばね19の力の方向と反対方向に加圧力がかけられるときにのみ、挿入器具は、接触面2を担持している下面が隣接しているハウジング1内の接触面2と本質的に同面となる深さまでハウジング1内へ押し込むことができる。図10に示されているこの位置において、固定のためのスライド部材22は起動ノブ4を解放している。
【0087】
起動ノブ4は、ハウジング1内で作動レバー23の回転軸線を中心に枢動可能に取り付けられており且つハウジング1の内側に起動レバー35を形成している。起動レバー35は、ハウジング1内で、駆動ばね8の力方向に対して水平方向に移動可能に且つ軸線方向に移動不可能状態で取り付けられている起動スライド部材36の制御端縁上に延びていて、起動ボタン4の作動によって、起動スライド部材36が復元ばね37の力に抗して左へ移動せしめられるようになされている。
【0088】
このようにして、挿入器具が予張力がかけられた状態(図10)で、留め用突出部10(当該留め用突出部10によって、渦巻ばね8の力によって作用を受けたハンマー部材9は収容部材26上に当接している)は左方向へ押され、このようにして、収容部材26から分離し、その結果、ハンマー部材9は、ばね8の力によって駆動され且つ保持部材26の筒状部分内でガイドされて下方へ跳ね出す。ハンマー部材9は、スライド部材26内で特許請求の範囲に規定されている第一の位置に圧力嵌めによって保持されている挿入ヘッド12の面にぶつかり、挿入ヘッド12を保持手段から解放し、患者の体表面に適用するために下方へ駆動する。それに先立って、カニューレ11は、体内へ完全に挿入され且つ挿入ヘッド12の下面(ここでは、接着膏剤32によって形成されている)が体表面上に横たわるまで貫入される。保持手段を備えた保持部材26は、上方位置においては、ハウジング1に対して不動のままであり、更に別の挿入ヘッド12を適用するために、最初に、初期の高い抵抗に打ち勝つために回転ノブ25をハウジング1に対して回転させることによって係合位置へ戻されなければならない。保持部材26の筒状断面は、螺旋状断面のような形状とされ且つ左右に交互に回転するガイド部材33を備えているので、挿入器具を係合位置から準備位置へ移動させるために又は適用後に保持部材を再設定するために、回転ノブ25が右へ回転されるか左へ回転されるかは重要ではない。なぜならば、いずれの場合においても、どの方向の回転も所望の状態につながるからである。
【0089】
以上、本発明の挿入器具の3つの異なる具体的な実施形態を説明したけれども、更に別の本発明の挿入器具の実施形態を実施するために、種々の例示的な実施形態に示されている技術的な解決方法を相互に結合することがもちろん可能であることは注目されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、予張力がかけられていない状態にあり且つ挿入ヘッドを備えていない本発明による挿入器具の第一の実施形態の垂直断面図である。
【図2】図2は、図1と類似しているが、挿入ヘッドが配置されている状態の図1の挿入器具の図である。
【図3】図3は、予張力をかける動作中であり且つ挿入ヘッドが配置されている図1及び図2の挿入器具の垂直断面図である。
【図4】図4は、予張力がかけられた状態であり且つ挿入ヘッドが適用準備状態にある固定状態に配置されている図1乃至3の挿入器具の垂直断面図である。
【図5】図5は、図4と類似しているが、解除状態にある図4の挿入器具の図である。
【図6】図6は、図5と類似しているが、起動ボタンの起動直後の図5の挿入器具の図である。
【図7】図7は、予張力がかけられていない状態にあり且つ挿入ヘッドを備えている本発明による挿入器具の第二の実施形態の垂直断面図である。
【図8】図8は、予張力がかけられ且つ解除状態における図7の挿入器具の垂直断面図である。
【図9】図9は、予張力がかけられていない状態であり且つ挿入ヘッドが配置されている本発明による挿入器具の第三の実施形態の垂直断面図である。
【図10】図10は、予張力がかけられ且つ解除状態における図9の挿入器具の垂直断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の体内へ差し込むための少なくとも1つの注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えた挿入ヘッド(12)のための挿入器具であり、
a)挿入ヘッド(12)の適用のために患者の体表面上の適用部位に当該挿入器具を配置するための少なくとも1つの接触面(2)と、
b)適用されるべき挿入ヘッド(12)を当該挿入器具上に一時的に保持するための保持手段(6,7)と、
c)駆動手段(8,9)であり、適用準備状態にある挿入ヘッド(12)の前記注入カニューレ(11)又は穿刺先端を、その長手方向に、接触面(2)に対して、第一の位置から第二の位置へ挿入動作させるための駆動手段(8,9)とを備え、
前記第一の位置においては、挿入ヘッド(12)が前記保持手段(6,7)によって、注入カニューレ(11)及び挿入ヘッド(12)の穿刺先端の全てが接触面(2)に対して引っ込められている適用準備状態に保持され、前記第二の位置においては、挿入ヘッド(12)の前記注入カニューレ(11)及び穿刺先端の全てが、接触面(2)を実質的に完全に越えて突出して、挿入器具の接触面(2)が体の表面に配置された状態で挿入動作が行われるときに、挿入ヘッド(12)の注入カニューレ(11)及び穿刺先端が患者の体内への差し込むことができるようにされ、
前記駆動手段(8,9)は、駆動力を提供するための少なくとも1つの予張力をかけることができるエネルギ蓄積部材(8)を備えており、前記保持手段(6,7)は、係合位置及び準備位置において、前記接触面(2)に対して位置決めすることができ且つ適用されるべき挿入ヘッド(12)が保持手段(6,7)によって保持されるように前記係合位置において前記保持手段(6,7)上に配置することができるように設計されており、前記保持手段(6,7)は、係合位置から始まって、挿入ヘッド(12)が当該保持手段上に保持された状態で前記準備位置へと移動せしめられ、準備位置に達したときに、保持手段(6,7)が挿入ヘッド(12)を適用準備されている第一の位置に保持し、当該挿入器具は、挿入動作の開始時に、挿入ヘッド(12)が保持手段(6,7)から分離され、その結果、挿入動作の少なくとも大部分を保持手段(6,7)に拘束されない自由な状態で行うことができ、当該挿入器具は、更に、予張力をかけることができるエネルギ蓄積部材(8)が、保持手段(6,7)が前記係合位置から前記準備位置へと移動する際に予張力がかけられるように設計されている、挿入器具。
【請求項2】
請求項1に記載の挿入器具であり、
前記保持手段(6,7)が前記準備位置に配置されている状態で、前記挿入ヘッド(12)が、圧力嵌め、又は純粋な嵌め合い、又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせによって、保持手段(6,7)によって前記第一の位置に保持することができるようになされたことを特徴とする挿入器具。
【請求項3】
請求項2に記載の挿入器具であり、
前記保持手段(6,7)が前記係合位置に配置されている状態で、前記挿入ヘッド(12)が純粋な嵌め合い又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせによって、前記保持手段(6,7)によって保持することができ、特に、前記嵌め合いが、前記挿入ヘッド(12)が内部に保持された状態での前記保持手段(6,7)の前記係合位置から準備位置への移動中に解放されるようになされていることを特徴とする挿入器具。
【請求項4】
請求項2に記載の挿入器具であり、
前記保持手段が前記係合位置に配置されている状態で、前記挿入ヘッド(12)が、純粋な圧力嵌めによって前記保持手段(6,7)によって保持され、特に、前記圧力嵌めが、前記挿入ヘッド(12)が内部に保持された状態での前記保持手段(6,7)の前記係合位置から準備位置への移動中に緩められるようになされているように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項5】
請求項1乃至4のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
少なくとも前記挿入動作中の殆どにおいて又は前記挿入ヘッド(12)の挿入動作全体に亘って、前記保持手段(6,7)が前記接触面(2)に対して不動とされたままであるように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれか一項に記載の挿入器具であり、
前記挿入器具が手動によって作動させることができる作動手段(6)、特に、スライド部材(6)、回転ノブ(25)又は押しボタンを備えており、前記保持手段(6,7)は、挿入ヘッド(12)が当該保持手段上に保持された状態で、前記作動手段によって、筋力によって手動で係合位置から準備位置まで、エネルギ蓄積部材(8)の予張力によって移動せしめられることを特徴とする挿入器具。
【請求項7】
請求項6に記載の挿入器具であり、
前記挿入器具がハウジング(1)を備えており、前記保持手段(6,7)は、スライド部材(6)に特に堅固に結合されており、スライド部材(6)は、手によって把持することができ、特に、エネルギ蓄積部材(8)の予張力によって、係合位置から準備位置まで保持手段(6,7)を移動させるために、ハウジング(1)に対して移動させることができることを特徴とする挿入器具。
【請求項8】
請求項1乃至7のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記保持手段(6,7)の係合位置から準備位置への移動中に全体の寸法が不変のままであるように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項9】
請求項1乃至8のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記エネルギ蓄積部材(8)が、挿入ヘッド(12)の適用のために繰り返し使用できるようにするために、繰り返し予張力をかけることができるように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項10】
請求項1乃至9のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記挿入器具が、前記挿入ヘッド(12)が前記第一の位置に配置されている状態で、前記エネルギ蓄積部材(8)が予張力がかけられた準備状態とすることができ、次いで、少なくとも1つの起動部材(3,4)の作動によって前記エネルギ蓄積部材(8)の弛緩が増すことによって前記挿入動作を起動させることができることを特徴とする挿入器具。
【請求項11】
請求項10に記載の挿入器具であり、
前記駆動手段(8,9)が、適用されるべき挿入ヘッド(12)に駆動力を伝達するためのスラスト部材(9)を備え、当該駆動手段は、当該スラスト部材(9)を前記挿入動作と反対方向へ移動させ、続いて、起動部材(3,4)によって解除することができる係止部材(5,18)によって係止することによって、前記エネルギ蓄積部材(8)は、予張力がかけられ且つ当該予張力がかけられた状態で準備状態とされるように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項12】
請求項10及び11のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記挿入器具が、前記挿入動作を起動させるために同時に作動させなければならない少なくとも2つの起動部材(3,4)を備えており、当該起動部材のうちの第一の部材(3)は、特に挿入ヘッド(12)の挿入動作方向に患者の体表面に押し付けられる挿入器具の接触面(2)によって起動させることができるように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項13】
請求項12に記載の挿入器具であり、
前記第一の起動部材(3)が、特に全ての接触面(2)を形成しているスライド形状又はボタン形状の部材(3)として設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項14】
請求項12及び13のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
第二の作動部材(4)が、ユーザーが指の先端で押すと、前記挿入器具が患者の体表面に押し付けられる意図した方向を横切る方向特に直角方向に作動させることができるボタン形状の部材(4)として設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項15】
請求項12乃至14のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記少なくとも2つの起動部材(3,4)が、一方の起動部材(3)を作動させることによって他方の起動部材(4)の遮断を解除することができるように相互に作動可能に結合されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項16】
請求項10乃至15のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記起動部材(3,4)の一方又は両方が、前記挿入動作の片手起動を可能にするために片手で作動させることができるように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項17】
請求項10乃至16のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記起動部材(3,4)が、起動力を停止させたときに不作動状態へと自動的に戻るように設計されていることを特徴とする挿入器具。
【請求項18】
請求項1乃至17のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記エネルギ蓄積部材(8)が、渦巻ばね、金属若しくはプラスチックによって作られた脚状ばね若しくは板ばね、ゴムばね部材又は空気圧圧縮ばねであることを特徴とする挿入器具。
【請求項19】
請求項1乃至18のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記保持手段(6,7)が、挿入ヘッド(12)が正しく保持された状態で前記係合位置から準備位置への移動せしめられる際に、挿入ヘッド(12)の配備可能な注入カニューレ(11)及び穿刺先端の全てが自動的に配備されるのを可能にするために、当該挿入ヘッド(12)が内部に正しく保持された状態での保持手段(6,7)の前記係合位置から前記準備位置への移動の際に、少なくとも1つの配備可能な注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの配備可能な穿刺先端と一緒に、前記保持手段(6,7)内に保持されるべき挿入ヘッド(12)の移動可能な作動部材(13)の移動特に横方向の移動を生じさせるための手段(23)を備えていることを特徴とする挿入器具。
【請求項20】
請求項19に記載の挿入器具であり、
前記移動可能な作動部材(13)を移動させるための前記手段(23)が傾斜面を備えており、前記保持手段(6,7)内に保持されるべき挿入ヘッド(12)の移動可能特に横方向に移動可能な作動部材(13)が、前記保持手段(6,7)が少なくとも1つの配備可能な注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの配備可能な穿刺先端と一緒に内部に挿入ヘッド(12)が保持された状態で前記係合位置から前記準備位置へ移動する際に、当該傾斜面上を移動し、当該移動は、前記保持手段(6,7)及び前記挿入ヘッド(12)の移動方向を横切る方向になされることができることを特徴とする挿入器具。
【請求項21】
請求項19及び20のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具であり、
前記移動可能な作動部材(13)を移動させるための前記手段(23)がレバー機構(23)を備えており、前記保持手段(6,7)内に保持されるべき挿入ヘッド(12)の移動可能特に横方向に移動可能な作動部材(13)が、前記保持手段(6,7)が少なくとも1つの配備可能な注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの配備可能な穿刺先端と一緒に内部に挿入ヘッド(12)が正しく保持された状態で前記係合位置から前記準備位置へ移動する際に、前記レバー機構(23)によって、前記保持手段(6,7)及び前記挿入ヘッド(12)の移動方向を横切る方向に移動させることができることを特徴とする挿入器具。
【請求項22】
請求項1乃至21のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具と、当該挿入器具内に収納されるか又は収納することができ且つ少なくとも1つの注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えている挿入ヘッド(12)とを含む構造体。
【請求項23】
請求項22に記載の構造体であり、
前記挿入ヘッド(12)が、少なくとも1つの配備可能な注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの配備可能な穿刺先端を備えた挿入ヘッド(12)であり、これらの配備可能な注入カニューレ(11)及び穿刺先端の全てが、非作動状態では内方へ折り畳まれており、前記挿入ヘッド(12)は、係合位置に配置されている前記保持手段(6,7)内に収納されるか又は既に収納されているように意図されており、前記挿入器具及び挿入ヘッド(12)は、前記配備可能な注入カニューレ(11)及び穿刺先端の全てが、挿入ヘッド(12)が内部に保持されている状態での前記保持手段(6,7)の前記係合位置から前記準備位置への移動中に配備されるように設計されていることを特徴とする構造体。
【請求項24】
患者の体に、挿入ヘッド(12)特に輸液セット(12)、ポート及び/又はセンサー構造として設計され且つ少なくとも1つの注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えている挿入ヘッド(12)を適用するために、請求項1乃至23のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具又は構造体を使用する方法。
【請求項25】
挿入ヘッド(12)特に輸液セット、ポート及び/又はセンサー構造として設計され且つ少なくとも1つの注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの穿刺先端を備えている挿入ヘッド(12)を、請求項1乃至21のうちのいずれか一の項に記載の挿入器具を使用して適用する方法であり、
a)保持手段(6,7)が係合位置に配置された状態の挿入器具を準備するステップと、
b)挿入ヘッド(12)が前記保持手段によって保持されるように前記挿入ヘッド(12)を前記保持手段(6,7)内に係合させるステップと、
c)前記保持手段(6,7)を、係合位置から準備位置へと動かすステップであり、前記係合位置においては、挿入ヘッド(12)が保持手段(6,7)上に保持されており且つ予張力をかけることができるエネルギ蓄積部材(8)が予張力をかけられている状態であり、前記準備位置においては、挿入ヘッド(12)が前記保持手段(6,7)によって第一の位置において適用準備状態に保持されている、前記ステップと、
d)前記挿入器具を接触面(2)によって患者の体表面の所望の適用部位に配置するステップであり、挿入動作中に、前記挿入ヘッド(12)の注入カニューレ(11)と穿刺先端の全てが身体内に正しく貫入できるように配置するステップと、
e)前記挿入動作を起動させ、前記挿入動作の少なくとも大部分が前記保持手段(6,7)によって拘束されない状態で行われるように、当該挿入動作の開始時に前記挿入ヘッド(12)が保持手段(6,7)から分離されるようにするステップと、を含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項25に記載の方法であり、
挿入ヘッド(12)が、純粋な圧力嵌め、又は純粋な嵌め合い、又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせによって、前記第一の位置に保持されることを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項26に記載の方法であり、
挿入ヘッド(12)が、前記係合位置において、嵌め合い又は圧力嵌めと嵌め合いとの組み合わせによって前記保持手段によって保持され、特に、前記嵌め合いが、前記保持手段(6,7)の前記係合位置から前記準備位置への移動中に解放されることを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項26に記載の方法であり、
挿入ヘッド(12)が、前記係合位置において、圧力嵌めによって前記保持手段によって保持され、特に、前記圧力嵌めが、前記保持手段(6,7)の前記係合位置から前記準備位置への移動中に緩められることを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項25乃至28のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記保持手段(6,7)は、挿入ヘッド(12)の挿入動作の少なくとも大部分又は挿入動作全体に亘って、接触面(2)に対して不動状態に保持されることを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項25乃至29のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記保持手段(6,7)は、挿入ヘッド(12)が保持された状態で、特に、スライド部材(6)を移動させ、回転ノブを回転させ、又は押しボタンを押すことによって、手動による筋力によって、前記係合位置から前記準備位置へと移動せしめられることを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項25乃至30のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
前記エネルギ蓄積部材(8)が予張力がかけられた状態で準備状態とされ、次いで、前記挿入動作が作動部材(3,4)を作動させることによって起動されることを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項25乃至31のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
挿入器具を患者の体表面に配置するステップ及び挿入動作を起動させるステップが片手で行われることを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項25乃至32のうちのいずれか一の項に記載の方法であり、
少なくとも1つの配備可能な注入カニューレ(11)及び/又は少なくとも1つの配備可能な穿刺先端を備えた挿入器具(12)が、前記挿入ヘッド(12)の全ての配備可能な注入カニューレ(11)及び穿刺可能な先端が内側へ折り畳まれた状態で前記保持手段(6,7)内に嵌め込まれ、挿入ヘッド(12)の配備可能な注入カニューレ(11)及び穿刺先端の全てが、前記挿入ヘッド(12)が内部に正しく保持された状態での前記保持手段(6,7)の前記係合位置から前記準備位置への移動中に配備されることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−220961(P2008−220961A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−62063(P2008−62063)
【出願日】平成20年3月12日(2008.3.12)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】