説明

挿管支援具、挿管支援装置および挿管支援システム

【課題】洗浄を容易に行なうことができ、かつ、摩耗し易い部位のみを適切に破棄、交換することができる挿管支援具、挿管支援装置および挿管支援システムを提供すること。
【解決手段】挿管支援具3は、患者の口腔または鼻腔から、患者の目的部位に挿入される長尺の支援具本体4と、支援具本体4に対し着脱自在に装着され、挿管チューブを患者の目的部位へ挿管する際、挿管チューブが挿入され、挿管チューブを目的部位へ案内する案内部82を有するガイド部材8と、ガイド部材8を支援具本体4に対し着脱自在に装着するロック機構9とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、挿管支援具、挿管支援装置および挿管支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、事故等の事情により意識障害を呈した患者に対する一次救命処置として、人工呼吸を行わなければならない場合がある。この人工呼吸は、器具を用いずに行われることもあるが、人工呼吸器を用いて行われることもある。
【0003】
人工呼吸器を用いて人工呼吸を行う場合、その基端が人工呼吸器に接続される挿管チューブを患者の気管に挿入し、この挿管チューブを介して人工呼吸器から気管に空気を送り込む。
【0004】
ところで、患者が意識を失うと、咽頭および喉頭の筋肉の弛緩や、下顎の重力による落ち込みが生じるため、舌根沈下が生じ、これにより気道が閉塞する。
【0005】
したがって、上述したような挿管チューブの気管(目的部位)ヘの挿入(以下、「挿管作業」という)を行う場合には、まず、舌を押し上げて閉塞した気道をこじ開け、気道を確保することが必要になる。
【0006】
この気道を確保する際に用いられる挿管支援装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
特許文献1に記載の挿管支援装置は、装置本体と、装置本体に着脱自在に装着される挿管支援具と、挿管支援具に対して挿抜自在に構成される、咽頭ないし喉頭を観察するためのスコープとを有している。
【0008】
挿管支援具は、途中が湾曲した長尺の部材であり、例えば、意識障害を呈した患者の口から挿入されて、先端側の所定の部分が患者の舌根部分に当接することにより舌根部分を持上げる等して気道を確保するよう構成されている。また、挿管支援具には、挿管チューブを挿入可能な溝が、挿管支援具の長手方向に沿って形成されている。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載の挿管支援装置では、例えば当該挿管支援装置の使用後、挿管支援具を取り外して洗浄する場合があり、この場合、挿管支援具が大きい、その形状が複雑である等の理由により、洗浄が不十分となるおそれがあった。また、この特許文献1に記載の挿管支援装置では、溝に対し挿管チューブの挿入/抜去を繰り返すため、当該溝が特に摩耗する部分となる。溝が摩耗した挿管支援具は、たとえ溝以外の他の部分が正常(損傷等が生じていない)であっても、挿管作業にとっては不適合であるため、破棄しなければならない。このように挿管支援具を破棄すると、正常な部分までも破棄されるため、無駄が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−117115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、洗浄を容易に行なうことができ、かつ、摩耗し易い部位のみを適切に破棄、交換することができる挿管支援具、挿管支援装置および挿管支援システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような目的は、下記(1)〜(13)の本発明により達成される。
(1) 患者の口腔または鼻腔から、該患者の目的部位に挿入される長尺の支援具本体と、
前記支援具本体に対し着脱自在に装着され、挿管チューブを前記患者の目的部位へ挿管する際、前記挿管チューブが挿入され、該挿管チューブを前記目的部位へ案内する案内部を有するガイド部材と、
前記ガイド部材を前記支援具本体に対し着脱自在に装着するロック機構とを備えることを特徴とする挿管支援具。
【0013】
これにより、洗浄を容易に行なうことができ、かつ、摩耗し易い部位のみを適切に破棄、交換することができる。
【0014】
(2) 前記ロック機構は、互いに対向して接近、離間可能に配置され、前記ガイド部材に係合する一対の係合部と、該一対の係合部を互いに接近する方向に付勢する付勢部と、該付勢部の付勢力に抗して、前記各係合部と前記ガイド部材との係合を解除する操作を行なう操作部とを有する上記(1)に記載の挿管支援具。
これにより、支援具本体に対しガイド部材をより容易に着脱することができる。
【0015】
(3) 前記各係合部は、それぞれ、前記支援具本体に対し回動可能に支持されている上記(2)に記載の挿管支援具。
これにより、支援具本体に対しガイド部材をより容易に着脱することができる。
【0016】
(4) 前記各係合部は、それぞれ、前記ガイド部材の装着方向に対して傾斜した傾斜部を有する上記(2)または(3)に記載の挿管支援具。
これにより、ガイド部材の支援具本体への装着操作を容易に行なうことができる。
【0017】
(5) 前記ガイド部材は、前記支援具本体の長手方向に沿って移動することにより着脱されるものであり、
前記ガイド部材の移動方向を規制する規制手段を備える上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の挿管支援具。
【0018】
これにより、支援具本体が装置本体に装着されていても、当該装置本体が配置されている側と反対側からガイド部材の着脱作業を行なうことができる。よって、着脱作業時に装置本体が邪魔になるのが防止され、よって、その着脱作業を容易に行なうことができる。
【0019】
(6) 前記規制手段は、前記支援具本体および前記ガイド部材のうちの一方に設けられた溝と、他方に突出して設けられ、前記溝に挿入される突部とで構成されている上記(5)に記載の挿管支援具。
【0020】
これにより、支援具本体が装置本体に装着されていても、当該装置本体が配置されている側と反対側からガイド部材の着脱作業を行なうことができる。よって、着脱作業時に装置本体が邪魔になるのが防止され、よって、その着脱作業を容易に行なうことができる。
【0021】
(7) 前記ガイド部材は、その形状が長尺状をなすものであり、
前記案内部は、前記ガイド部材の長手方向に沿って形成された凹部で構成されている上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の挿管支援具。
【0022】
これにより、挿管チューブを例えば気管に挿入する挿管作業を容易に行なうことができる。
【0023】
(8) 前記支援具本体は、前記案内部に挿入された前記挿管チューブが当該案内部から離脱するのを防止するチューブ規制部を有する上記(7)に記載の挿管支援具。
【0024】
これにより、挿管チューブを例えば気管に挿入する挿管作業の際、案内部に挿入された挿管チューブが案内部から離脱するのを確実に防止することができる。
【0025】
(9) 前記支援具本体は、その先端部に設けられ、先端方向に向かって突出した板状の突出部を有する上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の挿管支援具。
【0026】
これにより、挿管チューブを例えば気管に挿入する挿管作業の際は、この突出部で患者の喉頭蓋を持ち上げることができ、これにより、患者の気道を容易かつ確実に確保することができる。
【0027】
(10) 前記支援具本体は、その途中で湾曲した湾曲部を有し、
前記突出部は、前記支援具本体の先端部の前記湾曲部の内側面の延長上から立設している上記(9)に記載の挿管支援具。
【0028】
これにより、挿管チューブを例えば気管に挿入する挿管作業の際は、この突出部で患者の喉頭蓋を持ち上げることができ、これにより、患者の気道をより容易かつ確実に確保することができる。
【0029】
(11) 上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の挿管支援具と、
前記挿管支援具の前記支援具本体が装着される装置本体と、
前記挿管支援具の先端が位置する観察部位の像光を取得する像光取得手段とを備えることを特徴とする挿管支援装置。
【0030】
これにより、洗浄を容易に行なうことができ、かつ、摩耗し易い部位のみを適切に破棄、交換することができる。
【0031】
(12) 前記装置本体に前記支援具本体を装着した状態で、該支援具本体に対する前記ガイド部材の着脱が可能である上記(11)に記載の挿管支援装置。
【0032】
これにより、ガイド部材の着脱作業時に装置本体が邪魔になるのが防止され、よって、その着脱作業を容易かつ迅速に行なうことができる。
【0033】
(13) 上記(11)または(12)に記載の挿管支援装置と、
前記挿管支援具の前記各ガイド部材にそれぞれ対応する複数の挿管チューブとを備えることを特徴とする挿管支援システム。
【0034】
これにより、洗浄を容易に行なうことができ、かつ、摩耗し易い部位のみを適切に破棄、交換することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、ロック機構を作動させるという簡単な構成で、支援具本体に対しガイド部材を容易に着脱することができる。これにより、例えば、離脱したガイド部材と、そのガイド部材が離脱した支援具本体とを別々に洗浄することができ、よって、その洗浄が十分なものとなる。
【0036】
また、ガイド部材は、挿管チューブの挿入/抜去が繰り返されて、摩耗するものである。例えば、ガイド部材が摩耗した場合、その摩耗したガイド部材を、新たなガイド部材に交換して、支援具本体に装着することができる。このように、本発明によれば、支援具本体を共通のものとし、ガイド部材を消耗品とすることができる。これにより、消耗品(ガイド部材)を交換しさえすれば、支援具本体を長期間使用することができ、よって、無駄を省略することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の挿管支援具(挿管支援システム)の実施形態を示す斜視図である。
【図2】図1に示す挿管支援具の実施形態を示す分解斜視図である。
【図3】図2中のガイド部材を矢印C側から見た図である。
【図4】図1に示す挿管支援具が有するロック機構をその蓋体の裏面側からみた背面図(ガイド部材が装着された状態を示す図)である。
【図5】図1に示す挿管支援具が有するロック機構をその蓋体の裏面側からみた背面図(ガイド部材が離脱した状態を示す図)である。
【図6】図1中のA−A線断面図である。
【図7】図1中の挿管支援具を矢印B側から見た図である。
【図8】本発明の挿管支援装置が有する装置本体の斜視図である。
【図9】本発明の挿管支援装置の装置本体と挿管支援具との接続部(結合部)の断面図である。
【図10】本発明の挿管支援装置が有するスコープの正面図および側面図((a)は正面図、(b)は側面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の挿管支援具、挿管支援装置および挿管支援システムを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0039】
図1は、本発明の挿管支援具(挿管支援システム)の実施形態を示す斜視図、図2は、図1に示す挿管支援具の実施形態を示す分解斜視図、図3は、図2中のガイド部材を矢印C側から見た図、図4および図5は、それぞれ、図1に示す挿管支援具が有するロック機構をその蓋体の裏面側からみた背面図(図4はガイド部材が装着された状態を示す図、図5はガイド部材が離脱した状態を示す図)、図6は、図1中のA−A線断面図、図7は、図1中の挿管支援具を矢印B側から見た図、図8は、本発明の挿管支援装置が有する装置本体の斜視図、図9は、本発明の挿管支援装置の装置本体と挿管支援具との接続部(結合部)の断面図、図10は、本発明の挿管支援装置が有するスコープの正面図および側面図((a)は正面図、(b)は側面図)である。なお、以下では、説明の都合上、原則的に、図1〜図5、図7および図8中の下側を「先端」、上側を「基端」とする。但し、挿管支援具は、途中で湾曲しているので、それに伴って、先端方向が変化している。また、図9および図10の左側を「先端」、右側を「基端」とする。
【0040】
これらの図に示す挿管支援装置1は、装置本体2と、この装置本体2に着脱自在に装着された挿管支援具3と、挿管支援具3に挿入されるスコープ5とを有している。また、この挿管支援装置1は、後述するように、患者の口(口腔)を介して該患者の気管へ挿入される挿管チューブ200と組み合わせて用いられる(図1参照)。そして、挿管支援装置1と挿管チューブ200とを組み合わせたものが挿管支援システム10となる(図1参照)。
【0041】
図1に示すように、挿管チューブ200は、その横断面がほぼ円形をなし、かつ、エラストマーやゴム等の柔軟な材料で構成されている。
【0042】
図8に示すように、装置本体2は、ケーシング21を備え、防水構造を有している。なお、装置本体2の防水構造については、例えば、従来公知の種々の構造(構成)を採用することができる。
【0043】
図9に示すように、ケーシング21は、ケース本体22と、ケース本体22の先端側に設けられた環状の取付部23とを有している。ケース本体22と取付部23とは、ボルト(雄螺子)27により、固定されている。この場合、ケース本体22と取付部23との間は、例えば、図示しないパッキン等のシール部材(シール手段)により、液密(気密)にシールされている。なお、ケース本体22と取付部23とが一体的に形成されていてもよい。
【0044】
また、取付部23の外周側には、環状の操作環24が正逆両方向に回転可能(回動可能)に設置されている。また、操作環24は、押え部材25により、取付部23からの離脱が阻止されている。この操作環24の先端部の内周面には、螺子241が形成されている。
【0045】
一方、挿管支援具3(支援具本体4)の基端部31の外周面には、前記操作環24の螺子241と螺合する螺子311が形成されている。
【0046】
また、取付部23の外周面には、溝231が形成されており、この溝231の内部には、パッキン等のシール部材(シール手段)26が設置されている。
【0047】
挿管支援具3を装置本体2に装着(固定)する際は、装置本体2のケーシング21の取付部23と操作環24との間に、挿管支援具3の基端部31を挿入し、操作環24を所定方向に回転させる(回転操作する)。これにより、挿管支援具3は、装置本体2に対して基端方向に移動し、挿管支援具3が装置本体2に装着される。
【0048】
この装置本体2に挿管支援具3が装着された装着状態では、装置本体2の取付部23と、挿管支援具3の基端部31との間が、シール部材26により液密(気密)にシールされる。これにより、挿管支援具3の支援具本体4の後述するスコープガイド孔44の基端側が液密(気密)に封止される。これによって、スコープガイド孔44の全体が液密(気密)に密閉され、スコープガイド孔44の内部に収納されているスコープ5の汚染を確実に防止することができる。
【0049】
また、挿管支援具3を装置本体2から取り外す際は、操作環24を上記所定の方向とは逆方向に回転させる。これにより、挿管支援具3は、装置本体2に対して先端方向に移動し、螺子241と螺子311との螺合が外れ、挿管支援具3が装置本体2から離脱する。
【0050】
なお、挿管支援具3を装置本体2に装着(固定)する方法、すなわち、挿管支援具3と装置本体2との接続(結合)方法は、前述した構成(スクリューマウント式)に限定されず、この他、例えば、ラチェット機構による方式(方法)、バヨネットマウント式、カム方式、係止爪による方式、磁力(磁気)式等の各種の方法を採用することができる。
【0051】
図8に示すように、装置本体2の基端部には、画像表示用のディスプレイ(画像表示手段)71が、軸72を中心に、回動可能(変位可能)に設けられている。ディスプレイ71は、使用者が手動で回動させるように構成されていてもよく、また、モータ等の駆動源の駆動力により自動的に回動するように構成されていてもよい。
【0052】
ディスプレイ71は、例えば、液晶表示素子、有機EL表示素子等で構成され、このディスプレイ71には、像光取得手段により取得された像光に基づく画像、すなわち、CCD53で撮像された観察部位の画像(電子画像)が表示される。
【0053】
また、ディスプレイ71には、例えば、挿管チューブ200の先端部を声門裂から気管内に挿入し易くするために、声門裂の位置を特定するためのターゲットマーク、後述する電源部の電池(バッテリ)の残量を示すインジケータ表示、電池消耗時に電池の交換を警告する電池警告マーク、挿管作業に手間取り患者の無呼吸状態が長くならないように、挿管作業開始時からの経過時間(挿管時間)等が表示される。
【0054】
ディスプレイ71が装置本体2に対して回動可能になっていることにより、挿管支援具3が向く方向に関わらず、ディスプレイ71を所望の方向に向けることができる。したがって、患者の体位や使用者の立ち位置に関わらず、ディスプレイ71に表示された画像を容易に見ることができ、挿管作業を容易かつ確実に行うことができる。
【0055】
なお、ディスプレイ71が、装置本体2に着脱自在に装着されるように構成されていてもよい。
【0056】
また、装置本体2に対するディスプレイ71の回転角度(回転量)を検出する検出手段を設け、その検出結果に基づいて、ディスプレイ71に表示される画像を天地反転させるように構成されていてもよい。
【0057】
また、ディスプレイ71は、前記1軸方向に限らず、例えば、2軸方向、3軸方向に回動可能になっていてもよい。
【0058】
また、図9に示すように、装置本体2の内部の取付部23に対応する位置には、後述するスコープ5のコネクタ部52と接続するコネクタ部61が設けられている。そして、装置本体2の内部には、さらに、コネクタ部61およびディスプレイ71に接続された回路部と、回路部に接続された電源部および入力・出力部(いずれも図示せず)とが設けられている。
【0059】
回路部は、白色LED55を駆動するLED駆動回路(照明駆動回路)と、CCD53を駆動するCCD駆動回路(撮像素子駆動回路)と、CCD53から出力された画像データに対して画像処理を行う画像処理回路と、画像処理回路から出力された画像データをディスプレイ71に応じた画像データに変換してディスプレイ71に画像を表示させる画像表示回路と、画像データを記憶(格納)する記憶部(記憶手段)と、中央演算処理回路等を有している。
【0060】
電源部には、電池が着脱自在に設置されるようになっており、この電源部から回路部等の各部に、電力が供給される。
【0061】
入力・出力部は、外部から電力(電源)を入力(供給)するための外部電源入力端子と、外部モニターに画像データを出力するための外部モニター出力端子と、例えば、SDカード、CFカード等のメモリーカード(着脱自在のメモリー装置)に接続される画像記憶用のメモリー端子とを有している。
【0062】
また、図8に示すように、装置本体2のケーシング21の図8中の左方側面には、蓋73が設置されており、前記外部電源入力端子、外部モニター出力端子および画像記憶用のメモリー端子への接続は、それぞれ、この蓋73を開けて行うようになっている。また、蓋73を不用意に開閉できないように、専用器具でしか蓋73を開閉できないように構成されている。また、蓋73とケーシング21との間は、例えば、図示しないパッキン等のシール部材(シール手段)により、液密(気密)にシールされる。
【0063】
図9に示すように、装置本体2には、スコープ5が接続されている。このスコープ5は、その少なくとも一部(本実施形態では、全体)が設置される設置部としてのスコープガイド孔(内腔)44に着脱自在に設けられる。なお、スコープガイド孔44は、支援具本体4に、その基端部から先端壁41に亘って、すなわち、支援具本体4の長手方向に沿って形成されている。スコープ5がスコープガイド孔44に設置されると、当該スコープ5の先端部は、スコープガイド孔44の先端部に配置される(図8参照)。このスコープ5は、支援具本体4の先端壁41から観察部位の像光(被写体像)を取得(撮像)する像光取得手段(撮像手段)と、観察部位を照明する照明手段とを兼ねる装置(手段)である。
【0064】
図9および図10に示すように、スコープ5は、可撓性を有し、長尺状をなす本体部51と、本体部51の基端部に設けられたコネクタ部52とを備えている。このスコープ5は、コネクタ部52により、装置本体2のコネクタ部61と、着脱自在に、機械的に接続される。この接続の結果、スコープ5と装置本体2とは、電気的な接続もなされる。
【0065】
図10に示すように、本体部51の先端部の内部には、CCD(撮像素子)53と、光源として白色LED(発光ダイオード)55とが設置されている。また、本体部51のCCD53の先端側には、対物レンズ54を有する1つ以上の撮像用のレンズ(レンズ群)が設置され、白色LED55の先端側には、照明用レンズ56が設置されている。なお、以下では、対物レンズ54を有する1つ以上の撮像用のレンズ(レンズ群)を、単に「対物レンズ54」と言う。
【0066】
具体的には、本体部51の先端部には、その先端において開口(開放)している図示しない2つの孔が形成されている。CCD53および対物レンズ54は、一方の孔に設置され、その孔の先端部は、光透過性を有する窓部57で液密に封止されている。また、白色LED55および照明用レンズ56は、他方の孔に設置され、その孔の先端部は、光透過性を有する窓部58で液密に封止されている。なお、照明用レンズ56は省き、窓部58が照明用レンズの役割も兼ねるようにしても良い。CCD53および対物レンズ54と白色LED55および照明用レンズ56とを別々の孔に設置し、別々の窓部57、58を設けることにより、CCD53および対物レンズ54と、白色LED55および照明用レンズ56とが、互いに遮光され、白色LED55から発せられた光の一部成分が迷光となりCCD53へ悪影響を及ぼすおそれを防止できる。なお、本体部51は、CCD53と対物レンズ54との位置関係、白色LED55と照明用レンズ56との位置関係、CCD53および対物レンズ54と白色LED55および照明用レンズ56との位置関係をそれぞれ固定する機能を有している。
【0067】
前記CCD53の制御線および信号線と白色LED55の信号線は、それぞれ、本体部51の内部を通り、コネクタ部52の所定の端子に接続されている。なお、CCD53および対物レンズ54により像光取得手段が構成され、白色LED55および照明用レンズ56(窓部58)により照明手段が構成される。
【0068】
このスコープ5では、支援具本体4の先端壁41が位置する部位やその近傍の部位である観察部位からの反射光(像光)が、対物レンズ54によりCCD53の受光面(撮像面)上に結像し、その被写体像(像光)をCCD53で撮像する。すなわち、CCD53により観察部位が撮像される。具体的には、例えば、CCD53は、支援具本体4の後述する舌片42で患者の喉頭蓋を持ち上げる際、少なくとも患者の喉頭蓋およびその近傍の被写体像を撮像(取得)し、また、支援具本体4により気道が確保された場合、少なくとも患者の声門裂およびその近傍(喉頭ないし声門裂)の被写体像を撮像することができる。
【0069】
また、白色LED55が発光すると、その白色LED55から発せられた光は、照明用レンズ56を介して、支援具本体4の先端壁41から観察部位に照射され、その観察部位が照明される。これにより、観察部位を十分な明るさに照明することができる。
【0070】
なお、白色LED55の数は、図示例では、1つであるが、これに限らず、対物レンズ54のFナンバーおよびCCD53の感度特性により、2つ以上であってもよい。
【0071】
なお、像光取得手段の構成は、前記のものには限定されない。像光取得手段の他の構成としては、像光取得手段は、例えば、イメージガイドと、イメージガイドの基端側に設けられたCCD(撮像素子)とで構成されていてもよい。イメージガイドは、例えば、ファイバ束と、このファイバ束の先端側に設けられた対物レンズとで構成される。また、ファイバ束は、例えば、石英、多成分ガラス、プラスチック等により構成される光ファイバが複数本束ねられて構成されている。この構成の像光取得手段では、イメージガイドは、観察部位からの反射光(像光)を対物レンズで捉え、捉えられた像光(被写体像)をファイバ束を介してCCDへ伝達し、CCDは、その被写体像を撮像する。そして、この構成例では、イメージガイドは、観察部位の像光(被写体像)を撮像素子に導くための手段を構成する。なお、撮像素子は、装置本体2に設けられてもよく、また、挿管支援具3に設けられてもよい。また、CCDに代えて、接眼レンズを設けることにより、観察部位を肉眼で観察するような構成としてもよい。
【0072】
また、照明手段の構成は、前記のものには限定されない。照明手段の他の構成としては、照明手段は、例えば、ライトガイドと、ライトガイドの基端側に設けられた白色LED(光源)とで構成されていてもよい。ライトガイドは、例えば、ファイバ束と、このファイバ束の先端側に設けられた照明用レンズとで構成される。また、ファイバ束は、前記イメージガイドのファイバ束と同様の材質とすればよい。この構成の照明手段では、ライトガイドは、白色LEDから発せられた光を導光し、支援具本体4の先端壁41から観察部位に照射して照明する。そして、この構成例では、ライトガイドは、光源からの光を支援具本体4の先端壁41に導く手段(導光手段)を構成する。なお、光源は、装置本体2に設けられてもよく、また、挿管支援具3に設けられてもよい。
【0073】
装置本体2には、挿管支援具3が装着される。この挿管支援具3は、一般的な経口エアウェイが備えるのと同様の機能を有する支援具本体4と、支援具本体4に対し着脱自在に装着されるガイド部材8と、支援具本体4に設置され、ガイド部材8を支援具本体4に対し着脱自在に装着するロック機構9とを備えている。挿管支援具3は、支援具本体4の側部にロック機構9を介してガイド部材8を装着した状態で用いられる。以下、この状態を「ガイド部材装着状態」と言う。
【0074】
この支援具本体4は、長尺(長尺状)の部材で構成され、装置本体2に装着された状態で患者の口(口腔)から、患者の目的部位である気管またはその近傍に挿入される。例えば、支援具本体4は、意識障害を呈した患者、あるいは全身麻酔患者の口から挿入して用いられ、支援具本体4の先端側の後述する舌片(突出部)42で患者の喉頭蓋を持ち上げつつ、支援具本体4の先端側の所定の部分を患者の舌根部分に当接させることにより、患者の気道を確保する。
【0075】
図1および図2に示すように、支援具本体4は、先端側が図1中の横方向を向くように、長手方向の途中で湾曲した湾曲部40を有しており、基端側と先端側とのなす角度が略90°となっている。また、支援具本体4(挿管支援具3)は、本実施形態では、全体が光透過性を有するものであってもよいし、必要な部分(部位)のみが光透過性を有するものであってもよい。
【0076】
また、支援具本体4の先端壁41には、先端方向に向って突出し、光透過性を有する板状の舌片42が設けられている。この舌片42は、先端壁41の湾曲部40の内側面401の延長上から立設している。挿管作業の際は、この舌片42で患者の喉頭蓋を持ち上げることができ、これにより、患者の気道を容易かつ確実に確保することができる。なお、この舌片42に対して、支援具本体4の先端壁41は、傾斜している。
【0077】
図7に示すように、前記舌片42の平面視での形状は、略四角形をなしている。また、舌片42の各角部は、丸みを帯びており、これにより挿入時の安全性が向上する。なお、舌片42の平面視での形状は、四角形に限らず、この他、例えば、半楕円状、半円状等が挙げられる。
【0078】
また、図1、図2に示すように、支援具本体4には、先端壁41と舌片42とに一体的に連結された(形成された)側壁48が形成されている。
【0079】
図6に示すように、支援具本体4(挿管支援具3)は、ガイド部材装着状態での先端壁41付近の横断面における外形形状は、略四角形をなしている。また、支援具本体4の先端壁41の横断面における寸法は、幅wが15〜40mm程度であるのが好ましく、25〜30mm程度であるのがより好ましく、厚さtが10〜30mm程度であるのが好ましく、15〜20mm程度であるのがより好ましい。このような数値範囲により、挿管作業の際、挿管支援具3を患者に容易かつ迅速に挿入することができ、患者に対する負担を軽減することができる。また、舌片42が板状であるので、挿管作業において、支援具本体4の先端壁41を患者の舌根部分に当接させた(押し付けた)際、患者の舌が支援具本体4の先端壁41の側方に垂れるのを防止することができ、よって、その舌でCCD53の視野が狭くなるのを防止することができる。なお、この外形形状は、四角形に限らず、この他、例えば、楕円状、半楕円状、円形状、半円状等が挙げられる。
【0080】
前述したように、支援具本体4には、スコープ5の少なくとも一部(本実施形態では、全体)が設置される設置部として、基端部から先端壁41に亘って、すなわち、支援具本体4の長手方向に沿ってスコープガイド孔44が形成されている。この場合、スコープガイド孔44の先端部(本実施形態では、スコープガイド孔44全体)は、舌片42の幅方向に偏在している。
【0081】
また、スコープガイド孔44は、その横断面が略円形をなし、支援具本体4の基端部において開口(開放)している。このスコープガイド孔44の基端側は、装置本体2に挿管支援具3が装着された状態で、液密(気密)に封止されるようになっている。
また、スコープガイド孔44は、その先端が先端壁41で閉塞している。
【0082】
ここで、図7に示すように、スコープガイド孔44の先端部は、ガイド部材8に挿入された挿管チューブ200(ガイド部材8)側に傾斜している。すなわち、スコープガイド孔44は、このスコープガイド孔44に収納されるスコープ5のCCD53(像光取得手段)の視野の中心線59が、挿管チューブ200(ガイド部材8)側に向くように、支援具本体4の先端壁41における中心軸47に対して傾斜するように形成されている。これにより、挿管作業において、支援具本体4の先端壁41から挿管チューブ200が繰り出されたとき、ディスプレイ71により表示された画像上で、その画像の略中心部に向って挿管チューブ200が進むよう構成されている。これにより、挿管作業では、ディスプレイ71に表示された画像を見て、気管の入口である声門裂と挿管チューブ200の先端部の位置関係を極めて容易に把握することができる。
【0083】
図7に示すように、支援具本体4には、基端部から先端壁41に亘って、すなわち、支援具本体4の長手方向に沿って貫通孔46が形成されている。この場合、貫通孔46の先端は、ガイド部材8と前記スコープガイド孔44との間で、かつ舌片42側に位置している。また、貫通孔46の先端は、支援具本体4の先端壁41に開口している。
【0084】
この貫通孔46の内部には、例えば、図示しない吸引用のチューブまたは鉗子等が設けられる。この吸引用のチューブや鉗子は、貫通孔46の内部に、着脱自在に設けられるようになっていてもよく、また、固定されていてもよい。前記吸引用のチューブにより、例えば、唾液、痰等の流動性を有する異物を吸引し、除去することができる。また、前記鉗子により、例えば、固体(固形)の異物を除去することができる。
【0085】
なお、貫通孔46の数は、図示例では、1つであるが、これに限らず、2つ以上であってもよい。
【0086】
前述したように、支援具本体4には、その側部に、ガイド部材8が着脱自在に装着される。このガイド部材8は、形状が支援具本体4と同様に長尺状をなし、その途中が湾曲した湾曲部81を有するものである。図1に示すガイド部材装着状態では、ガイド部材8の湾曲部81の湾曲状態と支援具本体4の湾曲部40の湾曲状態とが一致する。
【0087】
図1、図2、図3に示すように、ガイド部材8は、板状をなす本体部80と、挿管チューブ200が挿入される案内部(ガイド部材側チューブ規制部)82と、ロック機構9に装着される装着部83と、支援具本体4に係合するリブ(突部)84とを有している。
【0088】
本体部80の一方の面、すなわち、ガイド部材装着状態で支援具本体4と反対側となる面には、案内部82が設けられている。案内部82は、挿管作業をする際、ガイド部材装着状態で、挿入された挿管チューブ200を患者の目的部位へ案内する部位である。
【0089】
図1、図3、図6に示すように、案内部82は、横断面形状が円弧状(U字状)をなす部分である。これにより、案内部82には、その内側に、ガイド部材8の長手方向に沿った凹部(溝)821が形成される。また、凹部821は、湾曲部81の内側に向かって開口している。ガイド部材8では、この凹部821に挿管チューブ200を挿入することができる(図1参照)。また、凹部821の幅(最大幅)は、挿管チューブ200の外径よりも若干大きい程度に設定されている。これにより、凹部821への挿管チューブ200の挿入(挿管)を容易に行なうことができる。
【0090】
また、挿管支援装置1の一般的な使用方法は、使用者が、まず、横たわる患者の頭上側に位置し、かつ、図8に示す状態のディスプレイ71が使用者側に対向するように挿管支援装置1を構える。使用者と患者と挿管支援装置1がこの位置関係(使用時の位置関係)にある場合、案内部82(凹部821)は、支援具本体4の使用者にとって右側(右手側)に設けられていることになる。
【0091】
この案内部82は、支援具本体4により気道が確保された場合、前述したように、患者の口から挿入される挿管チューブ200を当該患者の気管へ案内する機能を有するものである。また、支援具本体4を患者に挿入した状態で、案内部82に挿入された挿管チューブ200を容易に離脱することもできる。
【0092】
挿管チューブ200は、支援具本体4により気道が確保された場合、案内部82の基端部から当該案内部82に導入(挿入)され、先端方向へ向かって繰り出される。このとき、挿管チューブ200は、案内部82の内周面822により案内されつつ、案内部82内を摺動して前進する。そして、挿管チューブ200の先端は、案内部82の先端から、喉頭の奥の声門裂に向かって繰り出される。この場合、案内部82は、支援具本体4の使用者にとって右側に設けられているので、使用者は、ビデオ喉頭鏡と同じ手技方法である右手で、挿管チューブ200を操作することができる。
【0093】
なお、案内部82の内周面822には、挿管チューブ200を挿入した際に生じる当該挿管チューブ200との摩擦を低減するための処理が施されているのが好ましい。これにより、挿管作業を容易に行なうことができる。このような処理方法としては、特に限定されず、例えば、フッ素加工を施す、表面を緩やかな凹凸が連続する形状にする等が挙げられる。
【0094】
図1、図6に示すように、ガイド部材装着状態では、案内部82に挿入された挿管チューブ200が当該案内部82の凹部821の開口側から離脱するのが、支援具本体4のチューブ規制部(本体側チューブ規制部)49によって、防止される。すなわち、ガイド部材装着状態では、案内部82に挿入された挿管チューブ200は、案内部82と支援具本体4のチューブ規制部49との間で保持されて、その径方向の移動が規制される。これにより、挿管作業中に、挿管チューブ200が案内部82から不本意に離脱して、当該挿管チューブ200が患者の目的部位に到達不可能となるのを確実に防止することができる。
【0095】
なお、チューブ規制部49は、支援具本体4の湾曲部40の内側面401の幅方向の延長上で、当該支援具本体4から突出したリブ(壁部)で構成されている。これにより、ガイド部材装着状態で、案内部82をその凹部821の開口側から覆うことができ、よって、挿管チューブ200の案内部82からの離脱を確実に防止することができる。支援具本体4のチューブ規制部49とガイド部材8の案内部82との離間距離hは、挿管チューブ200の外径に対応しており、その外径とほぼ同じかまたは若干大きく設定される。
【0096】
図3、図6に示すように、本体部80の他方の面、すなわち、案内部82が配置された面と反対側の面には、リブ84が突出して設けられている。リブ84は、ガイド部材装着状態で、支援具本体4と係合する部位である。このリブ84は、本体部80(ガイド部材8)の長手方向に沿って延在する第1のリブ841と、本体部80の幅方向に沿って延在する第2のリブ842とで構成されている。
【0097】
第1のリブ841は、本体部80の縁部に配置されている。第1のリブ841は、その横断面形状が「L」字状をなす部位である。第2のリブ842は、第1のリブ841の先端部に、第1のリブ841と連続的に(一体的に)形成されている。第2のリブ842は、その横断面形状が「T」字状をなす部位である。
【0098】
そして、図2に示すように、支援具本体4には、ガイド部材装着状態でリブ84と対応する位置に、リブ84が挿入される溝43が形成されている。溝43は、第1のリブ841が挿入される第1の溝431と、第2のリブ842が挿入される第2の溝432とで構成されている。
【0099】
第1の溝431は、その横断面形状が第1のリブ841と同様に「L」字状をなし、当該第1のリブ841を挿入可能となっている。また、第2の溝432は、その横断面形状が第2のリブ842と同様に「T」字状をなし、当該第2のリブ842を挿入可能となっている。
【0100】
図2に示すように、挿管支援具3では、ガイド部材8を支援具本体4に装着する際、ガイド部材8の第1のリブ841を支援具本体4の第1の溝431に沿って滑らせつつ(挿入しつつ)、第2のリブ842を第2の溝432に挿入する。これにより、ガイド部材8の装着方向は、支援具本体4に対しその先端側から基端側に向かった方向となる。また、支援具本体4に装着されたガイド部材8を離脱する際には、その離脱方向が前記とは反対方向となる。
【0101】
このように、挿管支援具3では、ガイド部材8の支援具本体4に対する着脱方向(移動方向)が規制されている。これにより、支援具本体4が装置本体2に装着されていても、当該装置本体2が配置されている側と反対側からガイド部材8の着脱操作を行なうことができる。これにより、着脱操作時に装置本体2が邪魔になるのが防止され、よって、その着脱操作を容易に行なうことができる。従って、挿管支援具3では、ガイド部材8のリブ84と支援具本体4の溝43とが、ガイド部材8の着脱方向を規制する規制手段32として機能するものであるということができる。
【0102】
図2〜図5に示すように、本体部80の基端部には、装着部83が設けられている。この装着部83は、ガイド部材8のロック機構9に着脱自在に装着される部位である。
【0103】
装着部83は、本体部80の両縁部がそれぞれ一部欠損した欠損部831で構成されている。また、装着部83では、本体部80の基端部の両側の角部に、それぞれ、面取りが施された面取り部832が形成されている。
なお、装着部83のロック機構9に対する着脱状態については、後述する。
【0104】
このような構成のガイド部材8では、本体部80、案内部82、装着部83およびリブ84が一体的に形成されたものであってもよいし、それぞれ別体で構成され、別体同士を連結したものであってもよい。
【0105】
また、ガイド部材8の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のような各種熱可塑性樹脂や、ステンレス鋼等のような各種金属材料が挙げられる。
ガイド部材8は、ロック機構9を介して、支援具本体4に装着される。
【0106】
図1、図2に示すように、ロック機構9は、支援具本体4の基端部付近に配置されている。図4、図5に示すように、ロック機構9は、互いに対向配置された一対の係合部材91と、一対の係合部材91を互いに接近する方向に付勢するコイルバネ(付勢部)92と各係合部材91やコイルバネ92を覆う蓋体93とを有している。
【0107】
一対の係合部材91は、互いに同じ構成であるため、以下、一方の係合部材91について代表的に説明する。
【0108】
係合部材91は、長尺な板状をなす部材で構成されている。係合部材91は、その途中が支援具本体4に対し回動可能に支持された回動支持部913となっている。これにより、係合部材91は、回動支持部913を支点(中心)として回動することができる(図4、図5参照)。なお、回動支持部913としては、特に限定されず、例えば、係合部材91をその厚さ方向に貫通する軸受け(貫通孔)で構成し、当該軸受けに、支援具本体4から突出形成された軸が嵌合するよう構成されたものとすることができる。
【0109】
また、係合部材91は、その先端部に設けられた係合部911と、基端部に設けられた操作部912とを有している。
【0110】
係合部911は、対向する他方の係合部材91に向かって突出して形成されている。係合部材91は、回動支持部913を介して回動可能であるため、その係合部911は、対向する他方の係合部材91の係合部911に対し接近/離間することができる。そして、図4に示すように、接近した状態で、係合部911は、ガイド部材8の装着部83の欠損部831に係合することができる。また、係合部911には、その先端側の部分に、ガイド部材8の装着方向(着脱方向)に対して傾斜した傾斜部914が形成されている。
【0111】
ロック機構9では、ガイド部材8を装着する際、ガイド部材8をその装着部83側からロック機構9に向けて接近させる。このとき、ガイド部材8の装着部83の各面取り部832がそれぞれ係合部911の傾斜部914を摺動しつつ、当該係合部911をコイルバネ92の付勢力に抗して外方に向かって押し広げる。そして、各面取り部832がそれぞれ係合部911を超えると、当該係合部911がガイド部材8の装着部83の欠損部831に係合する。このように、挿管支援具3では、支援具本体4にガイド部材8を単に差し込むという簡単な操作で、ガイド部材8の装着操作を行なうことができ、操作性に優れている。また、装着されたガイド部材8は、ロック機構9の作動と前記規制手段32とにより、その長手方向に沿って全体が支持、固定されている。これにより、挿管支援装置1の操作中にガイド部材8に位置ズレが生じるのを確実に防止することができる。
【0112】
操作部912は、係合部911の突出方向と反対方向に突出して形成されている。図5に示すように、この操作部912を図5中の矢印方向に押圧することにより、係合部911がガイド部材8の装着部83の欠損部831から離間し、よって、操作部912とガイド部材8との係合を解除する操作を行なうことができる。
【0113】
また、この解除操作は、各係合部材91の操作部912を一括して押圧操作しなければならない。このため、挿管支援装置1の使用中(手技中)に、たとえ一方の操作部912を誤って押圧したとしても、他方の操作部912が押されていない限り、ロック機構9とガイド部材8との係合状態が維持され、ガイド部材8が離脱するのが防止される。
【0114】
コイルバネ92は、その両端921がそれぞれ各係合部材91の回動支持部913よりも先端側の部分に連結されている。これにより、係合部材91の係合部911同士を接近する方向に付勢することができ、よって、各係合部911がそれぞれガイド部材8の装着部83の欠損部831に係合した際、その係合状態が不本意に解除されるのを確実に防止することができる(図4参照)。これにより、ガイド部材8を支援具本体4に対し確実に固定することができる。
【0115】
また、係合状態の解除は、コイルバネ92の付勢力に抗して、前述したように各係合部材91の操作部912をそれぞれ押圧操作することにより行われる。そして、ガイド部材8を基端方向に引張ることにより、当該ガイド部材8をロック機構9から離脱させる(取り外す)ことができる。
【0116】
このように、ロック機構9では、ガイド部材8の確実な固定とガイド部材8の容易な離脱との相反する性質を両立することができるよう構成されている。また、ガイド部材8の着脱は、ロック機構9を介して装置本体2と反対側で行われるため、装置本体2に支援具本体4を装着した状態で、その着脱操作を行なうことができる。これにより、後述するガイド部材8を着脱する際、装置本体2が邪魔にならずに、その着脱作業を容易に行なうことができる。
【0117】
図1、図2に示すように、蓋体93は、平面視で四角形状をなす板部材で構成されている。この蓋体93の裏面には、スペーサ931が複数突出形成されている。これにより、蓋体93の裏面と支援具本体4との間に間隙932を形成することができる(図1参照)。この間隙932内に、各係合部材91、コイルバネ92が配置される。これにより、各係合部材91やコイルバネ92に指等が不本意に挟まれるのを確実に防止することができ、ロック機構9の操作時の安全性が確保される。なお、蓋体93は、本実施形態では、支援具本体4に対し3本のボルト94を介して固定されている。
【0118】
なお、各係合部材91、コイルバネ92、蓋体93の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ステンレス鋼等のような各種金属材料を挙げることができる。
【0119】
以上のような構成の挿管支援具3は、患者や手技に応じて、支援具本体4にガイド部材8を装着した状態で使用するか、または、支援具本体4にガイド部材8を装着せずに使用するか、すなわち、支援具本体4単体で使用するかを選択することができる。
【0120】
例えば、挿管支援具3を比較的口の大きさが小さい乳幼児に使用する場合や、挿管支援具3を経鼻挿管で使用する場合等では、挿管支援具3をガイド部材8が省略されたものとすることができる。また、挿管支援具3を比較的口の大きさが小さい成人に使用するには、挿管支援具3をガイド部材8が装着されたものとすることができる。
【0121】
次に、挿管支援装置1の使用方法(作用)の一例について説明する。なお、ここでは、ガイド部材装着状態の挿管支援具3を使用する場合について説明する。
【0122】
挿管支援装置1は、例えば、患者が意識を失って気管に挿管チューブ200を挿入することが必要になった場合に使用される。
【0123】
[1] まず、挿管チューブ200の挿入を行うにあたって、挿管支援装置1を組み立てる。
【0124】
この場合、まず、装置本体2のコネクタ部61に、スコープ5のコネクタ部52を接続する。また、必要に応じて、挿管支援具3の支援具本体4の貫通孔46に、例えば、吸引用のチューブ等を挿入し、設置する。
【0125】
次に、挿管支援具3の支援具本体4のスコープガイド孔44に、スコープ5を挿入するとともに、装置本体2のケーシング21の取付部23と操作環24との間に、挿管支援具3の基端部31を挿入し、操作環24を所定方向に回転操作し、挿管支援具3を装置本体2に装着する。
【0126】
そして、支援具本体4にガイド部材8を前述したように装着し、ガイド部材装着状態とする。この装着作業は、前記規制手段32と前記ロック機構9とにより、容易に行なうことができる。
【0127】
[2] 次に、図示しないスイッチを操作して挿管支援装置1の各部(白色LED55、CCD53、ディスプレイ71等)を駆動させ、挿管支援具3の支援具本体4を患者の口から、患者の気管に向かって挿入する。
【0128】
具体的には、支援具本体4の湾曲している部分の内側を舌根に沿わせるようにしながら、支援具本体4を患者の口に挿入する。そして、ディスプレイ71に表示された画像を見て確認しつつ、支援具本体4の舌片42で患者の喉頭蓋を舌根側に持ち上げ、支援具本体4の先端側の所定の部分を患者の舌根部分に当接させる。これにより、気道が確保される。
【0129】
この場合、舌片42(支援具本体4)は、光透過性を有している。これにより、舌片42で患者の喉頭蓋を舌根側に持ち上げる際、その舌片42を介して喉頭蓋をCCD53で撮像することができ、ディスプレイ71にその画像を表示することができる。また、舌片42は、板状をなしている。これにより、容易、迅速かつ確実に、舌片42で喉頭蓋を持ち上げることができ、よって、容易、迅速かつ確実に、気道を確保することができる。
【0130】
[3] 次に、支援具本体4の先端が気道を確保したら、挿管チューブ200を支援具本体4の基端部から溝43に挿入し、挿管チューブ200を押し進める。これにより、挿管チューブ200は、溝43により案内され、その溝43に沿って前進していく。
【0131】
そして、ディスプレイ71に表示されている画像(挿管チューブ200の先端部の画像も含む)を見ながら、溝43から突出した挿管チューブ200の先端部を声門裂に挿入し、気管に到達させる。
【0132】
ここで、溝43は、挿管チューブ200の先端部が自然に声門裂に向かって進むように形成されており、これにより、挿管チューブ200は、声門裂へと自然に導かれるようになっている。
【0133】
このように、ディスプレイ71に表示された画像を見ながら、挿管チューブ200を声門裂から気管内へ挿入することができ、また、溝43により挿管チューブ200は、声門裂へと自然に導かれるようになっているので、挿管チューブ200を気管へ容易、迅速かつ確実に挿入することができる。
【0134】
[4] 次に、挿管チューブ200を気管へ挿入した状態で、挿管チューブ200を変形させて、その挿管チューブ200を溝43から離脱させる。
【0135】
[5] 次に、この状態を維持しつつ、支援具本体4を患者の口から除去する(抜き取る)。そして、挿管チューブ200は、その基端部が人工呼吸装置に接続され、声門裂から気管に挿入された挿管チューブ200を介して、気管に人工呼吸装置から空気が送り込まれる。
以上のようにして、患者の気管へ挿管チューブ200を挿管することができる。
【0136】
以上説明したように、この挿管支援装置1によれば、ロック機構を作動させるという簡単な構成で、支援具本体に対しガイド部材を容易に着脱することができる。これにより、挿管支援具3が支援具本体4とガイド部材8とに分解可能である。さらに、挿管支援具3は、装置本体2に対して着脱自在となっている。
【0137】
このような構成により、支援具本体4とガイド部材8とを別々に洗浄、消毒、滅菌等を行なうことができる。また、支援具本体4の溝43、ガイド部材8の案内部82等の細部も確実に洗浄、消毒、滅菌等を行なうことができる。これにより、支援具本体4、ガイド部材8を再度使用した場合でも、患者の細菌等による感染(二次感染)を防止することができ、安全性が高い。
【0138】
また、ガイド部材8は、その案内部82を挿管チューブ200が摺動するものであるため、挿管支援装置1を構成する部材の中でも特に摩耗する部材の1つとなっている、すなわち、消耗品となっている。挿管支援装置1では、この消耗する部材が着脱自在であるため、消耗したガイド部材8を、別の新しいガイド部材8に交換することもできる。
【0139】
以上、本発明の挿管支援具、挿管支援装置および挿管支援システムを図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、挿管支援具、挿管支援装置および挿管支援システムを構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0140】
また、挿管支援具(支援具本体)は、患者の口腔から当該患者の目的部位に挿入可能なものであるが、これに限定されず、患者の鼻腔からも挿入可能である。
【0141】
例えば、装置本体が、画像データを無線通信網を経由して患者の搬送先である病院に送信する電子データ送信装置を備えていてもよい。これにより、患者を救急車等によって搬送している間に病院において該患者の治療の準備を行うことができる。
【0142】
また、前記実施形態では、挿管支援具の支援具本体は、装置本体に対して着脱自在に装着されるようになっているが、本発明では、挿管支援具の支援具本体は、装置本体に対して固定(固着)されていてもよい。
【0143】
また、ガイド部材の案内部の横断面形状は、円状状に限らず、この他、例えば、コの字等が挙げられる。また、案内部は、凹部で構成されたものの他、例えば、孔で構成されたものであってもよい。
【0144】
また、ガイド部材の着脱方向を規制する規制手段は、それを構成するリブがガイド部材に設けられ、溝が支援具本体に設けられた構造のものに限定されず、例えば、リブが支援具本体に設けられ、溝がガイド部材に設けられた構造のものであってもよい。
【0145】
また、ロック機構は、図示の構成のものの他、磁石を用いた構成のもの、ボルトを用いた構成(ネジ止めによる構成)のもの等でもよい。
【符号の説明】
【0146】
10 挿管支援システム
1 挿管支援装置
2 装置本体
21 ケーシング
22 ケース本体
23 取付部
231 溝
24 操作環
241 螺子
25 押え部材
26 シール部材
27 ボルト
3 挿管支援具
31 基端部
311 螺子
32 規制手段
4 支援具本体
40 湾曲部
401 内側面
41 先端壁
42 舌片
43 溝
431 第1の溝
432 第2の溝
44 スコープガイド孔
46 貫通孔
47 中心軸
48 側壁
49 チューブ規制部(本体側チューブ規制部)
5 スコープ
51 本体部
52 コネクタ部
53 CCD
54 対物レンズ
55 白色LED
56 照明用レンズ
57、58 窓部
59 中心線
61 コネクタ部
71 ディスプレイ
72 軸
73 蓋
8 ガイド部材
80 本体部
81 湾曲部
82 案内部(ガイド部材側チューブ規制部)
821 凹部
822 内周面
83 装着部
831 欠損部
832 面取り部
84 リブ
841 第1のリブ
842 第2のリブ
9 ロック機構
91 係合部材
911 係合部
912 操作部
913 回動支持部
914 傾斜部
92 コイルバネ(付勢部)
921 両端
93 蓋体
931 スペーサ
932 間隙
94 ボルト
200 挿管チューブ
h 離間距離
t 厚さ
w 幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の口腔または鼻腔から、該患者の目的部位に挿入される長尺の支援具本体と、
前記支援具本体に対し着脱自在に装着され、挿管チューブを前記患者の目的部位へ挿管する際、前記挿管チューブが挿入され、該挿管チューブを前記目的部位へ案内する案内部を有するガイド部材と、
前記ガイド部材を前記支援具本体に対し着脱自在に装着するロック機構とを備えることを特徴とする挿管支援具。
【請求項2】
前記ロック機構は、互いに対向して接近、離間可能に配置され、前記ガイド部材に係合する一対の係合部と、該一対の係合部を互いに接近する方向に付勢する付勢部と、該付勢部の付勢力に抗して、前記各係合部と前記ガイド部材との係合を解除する操作を行なう操作部とを有する請求項1に記載の挿管支援具。
【請求項3】
前記各係合部は、それぞれ、前記支援具本体に対し回動可能に支持されている請求項2に記載の挿管支援具。
【請求項4】
前記各係合部は、それぞれ、前記ガイド部材の装着方向に対して傾斜した傾斜部を有する請求項2または3に記載の挿管支援具。
【請求項5】
前記ガイド部材は、前記支援具本体の長手方向に沿って移動することにより着脱されるものであり、
前記ガイド部材の移動方向を規制する規制手段を備える請求項1ないし4のいずれかに記載の挿管支援具。
【請求項6】
前記規制手段は、前記支援具本体および前記ガイド部材のうちの一方に設けられた溝と、他方に突出して設けられ、前記溝に挿入される突部とで構成されている請求項5に記載の挿管支援具。
【請求項7】
前記ガイド部材は、その形状が長尺状をなすものであり、
前記案内部は、前記ガイド部材の長手方向に沿って形成された凹部で構成されている請求項1ないし6のいずれかに記載の挿管支援具。
【請求項8】
前記支援具本体は、前記案内部に挿入された前記挿管チューブが当該案内部から離脱するのを防止するチューブ規制部を有する請求項7に記載の挿管支援具。
【請求項9】
前記支援具本体は、その先端部に設けられ、先端方向に向かって突出した板状の突出部を有する請求項1ないし8のいずれかに記載の挿管支援具。
【請求項10】
前記支援具本体は、その途中で湾曲した湾曲部を有し、
前記突出部は、前記支援具本体の先端部の前記湾曲部の内側面の延長上から立設している請求項9に記載の挿管支援具。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の挿管支援具と、
前記挿管支援具の前記支援具本体が装着される装置本体と、
前記挿管支援具の先端が位置する観察部位の像光を取得する像光取得手段とを備えることを特徴とする挿管支援装置。
【請求項12】
前記装置本体に前記支援具本体を装着した状態で、該支援具本体に対する前記ガイド部材の着脱が可能である請求項11に記載の挿管支援装置。
【請求項13】
請求項11または12に記載の挿管支援装置と、
前記挿管支援具の前記各ガイド部材にそれぞれ対応する複数の挿管チューブとを備えることを特徴とする挿管支援システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−264191(P2010−264191A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120254(P2009−120254)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】