説明

捕獲殺虫用泡状組成物、及びそれを用いた捕獲殺虫具

【課題】害虫を確実に捕獲でき、且つ、窒息させることにより殺虫でき、安全性の高い捕獲殺虫用泡状組成物を提供する。
【解決手段】噴射後一時的に初期粘着性を有する泡状を呈し、その後非粘着性となる捕獲殺虫用泡状組成物において、上記捕獲殺虫用泡状組成物は、水及び界面活性剤からなる原液と、噴射剤を含有する組成物とし、初期粘着性から非粘着性への移行により粘度が低下し、非粘着性の状態で液状又は液と泡の混在状態を呈することを特徴とする捕獲殺虫用泡状組成物を、解決手段とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害虫(例えば、蟻、ゴキブリ、ヤスデ、ムカデ、カメムシ、蜘蛛、毛虫、蛾、アブラムシ等、虫類及びその他の節足動物)に対して散布や噴射を行い、害虫を捕獲し、殺虫する、泡状の組成物、特には、殺虫に際し窒息死による殺虫を行う泡状の組成物と、該泡状の組成物を用いた捕獲殺虫具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水、界面活性剤からなる原液を虫に散布することにより、虫が窒息死することは知られていた。しかし、粘性の低い液体を虫に散布してもすぐに効果は表れず、暫く周辺を徘徊する不都合があると共に、上記原液の散布する液量が少量であれば虫は窒息死せず、散布量の調整が必要になる不都合があった。また、殺虫成分を含む殺虫剤は、薬剤で周囲を汚染するとともに、散布後すぐに効果を表さず、害虫が周囲を徘徊する不都合があった。
【0003】
粘着性を有する虫の捕獲剤としては、例えば、エアゾール容器から噴射された被膜形成物により害虫を包囲して捕獲する虫類捕獲用エアゾール剤であって、前記被覆形成物が剥離性を備えることを特徴とする虫類捕獲用エアゾール剤(例えば、特許文献1参照。)が公知である。
【0004】
更に、少なくとも樹脂を含む組成物を内容物として容器に充填し、前記組成物を害虫に噴射することにより該害虫を前記樹脂により被覆して捕獲する虫類捕獲用組成物において、前記組成物に難燃剤を配合したことを特徴とする虫類捕獲用組成物(例えば、特許文献2参照。)が公知である。
【0005】
また、害虫に対して捕獲用組成物を噴射して害虫を捕獲する害虫の捕獲用組成物を封入し、エアゾール容器の噴射ボタンから噴射するようにしたエアゾール製品において、この捕獲用組成物は、害虫を覆うことによって害虫を捕獲することができると共に、他所に付着した捕獲用組成物を剥がすことができるものであり、バルブのコア穴の総開口面積が、0.56mm以上であり、25℃におけるエアゾール容器の内圧が0.3MPa以上0.8MPa未満であり、噴射距離が少なくとも1.0mであることを特徴とする虫類の捕獲用エアゾール製品(例えば、特許文献3参照。)が公知である。
【0006】
また、害虫に対して捕獲用組成物を噴射して害虫を捕獲する虫類の捕獲用組成物において、この捕獲用組成物が、噴射後一時的に初期粘着性を有すると共にその後非粘着性となる樹脂組成物であり、この捕獲用組成物を害虫に噴射して粘着させることにより害虫を捕獲すると共に、該捕獲用組成物の粘度が上昇して固化し、非粘着性となり、非粘着性となった段階で他所に粘着した場合でも捕獲用組成物を容易に拭き取ることができるようにしたことを特徴とする虫類の捕獲用組成物(例えば、特許文献4参照。)が公知である。
【0007】
【特許文献1】特開2004−248670号公報
【特許文献2】特開2004−196764号公報
【特許文献3】特開2003−245034号公報
【特許文献4】特開平11−255603号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特許文献1乃至特許文献3に係る発明はいずれも、粘着性樹脂で虫を被覆して捕獲するものを開示する。これらいずれの捕獲用組成物においても、樹脂が目的物以外にも付着する弊害がある。また、虫を被覆した状態であっても、虫の呼吸腔を樹脂で完全に塞ぐことができず、捕獲した樹脂の中で虫がいつまでも生きている不都合があった。更に、可燃性の樹脂を使用しているため、火気の周辺で捕獲用組成物を噴射した場合、当該捕獲用組成物が燃焼する危険性もあった。
【0009】
また、特許文献4に係る発明は、噴射後一時的に初期粘着性を有し、その後非粘着性となる捕獲用の樹脂組成物を害虫に噴射して粘着させることにより害虫を捕獲するとともに、この捕獲用組成物の粘度が上昇して固化して非粘着性となり、非粘着性となった段階で他所に粘着した場合でも、捕獲用組成物を容易に拭取ることができるもので、水溶性樹脂と非粘着性樹脂とを含むものとしたり、水溶性樹脂と高級脂肪酸とを含むものとすることで、時間差を有して粘着性から非粘着性に変化するものを開示する。
【0010】
しかし、最終的な非粘着性樹脂が捕獲を主目的として固化することから、上記の特許文献1乃至特許文献3に開示される発明と同様に、固化した樹脂の中で虫が窒息せずに、いつまでも生きている不都合があった。
【0011】
ところで、昆虫等の節足動物の呼吸の方法は、体の両側面にある気門から、腹部の筋肉を動かして直接空気を体内へ取り入れる。従って、気門からの空気の出入りを遮断すると害虫を窒息させることができるが、害虫の気門には、水をはじくワックス状のフィルタ等の異物侵入防止機構を有しており、害虫の上方からの噴射や、床面への付着では、窒息させることができない。
このため多くの捕獲殺虫用泡状組成物が、害虫の神経細胞に作用して筋肉の動きを止め、窒息死させる殺虫剤を採用している。このような殺虫剤は人体に対しても微弱ながら毒性を有するものもある。
【0012】
特許文献1乃至4においては、いずれも害虫の捕獲は可能であるものの、泡状の捕虫剤若しくは殺虫剤は、気門を確実に塞ぐことができないため、上記したように、捕獲した害虫がそのままの状態で生きていることがある。従って、十分な殺虫性能を発揮させるためには、上記した害虫の神経細胞に作用して筋肉の動きを止め、窒息死させる殺虫剤を使用せざるを得ない。
【0013】
そのような成分を添加しても、捕獲した状態で殺虫成分が害虫に常に有効に作用するとも限らず、現実的には確実に殺虫を行うためには、上記一般的な神経細胞に作用する成分を添加する必要が生ずる。
【0014】
本発明は、上記従来技術に見られるこれらの不都合点を改善した害虫を確実に捕獲でき、且つ、窒息させることにより殺虫でき、毒性を有する薬剤を、家庭内や厨房等に散布することもなく人体に対して安全性の高い、捕獲殺虫用泡状組成物を提供することを、課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、噴射後一時的に初期粘着性を有する泡状を呈し、その後非粘着性となる捕獲殺虫用泡状組成物において、上記捕獲殺虫用泡状組成物は、水及び界面活性剤からなる原液と、噴射剤を含有する組成物とし、初期粘着性から非粘着性への移行により粘度が低下し、非粘着性の状態で液状又は液と泡の混在状態を呈することを特徴とする捕獲殺虫用泡状組成物を、課題を解決するための手段とする。
【0016】
また、本発明は、上記発明を前提として、初期粘着性を有する状態で、20℃において1000mPa・s以上10000mPa・s以下の粘度を有し、非粘着性の状態で、20℃において1mPa・s以上1000mPa・s未満の粘度を有する捕獲殺虫用泡状組成物を、課題を解決するための手段とする。
【0017】
また、本発明は、上記発明を前提として、噴射剤は、液化石油ガスとジメチルエーテルからなり、該噴射剤の液化石油ガスとジメチルエーテルの重量比率が、100:0乃至10:90である捕獲殺虫用泡状組成物を、課題を解決するための手段とする。
【0018】
更に、本発明は、上記発明を前提として、原液と噴射剤との容積比率が、96:4乃至70:30であり、原液中の界面活性剤の配合比率が、0.4乃至40重量%とした捕獲殺虫用泡状組成物を、課題を解決するための手段とする。
【0019】
また、本発明は、上記本発明に係る捕獲殺虫用泡状組成物を、噴射バルブ装置を備えた耐圧容器に収容してなる捕獲殺虫具を、課題を解決するための手段とする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1に係る発明によれば、噴射後一時的に初期粘着性を有する泡状を呈し、その後非粘着性となる捕獲殺虫用泡状組成物において、上記捕獲殺虫用泡状組成物は、水及び界面活性剤からなる原液と、噴射剤を含有する組成物とし、初期粘着性から非粘着性への移行により粘度が低下し、非粘着性の状態で液状又は液と泡の混在状態を呈することを特徴とする捕獲殺虫用泡状組成物としたから、害虫を泡状組成物で包むだけでなく、害虫が床面や壁面等に付着した泡に乗り上げることで、害虫の下面及び側面に泡を付着させ、徐々に噴射剤が揮散して泡状となった原液の液化が進んで粘度が低下し、害虫の呼吸腔である気門に界面活性剤を含有した原液が進入し、呼吸腔を閉塞して窒息死させることができる。
【0021】
また請求項1に係る発明によれば、水と界面活性剤からなる原液が泡状組成物であるため、噴射面に付着しても、安全且つ容易に拭き取ることができる。更に、壁面等に噴射しても、短時間であれば泡状が保たれているため、液だれも抑制することができる。
【0022】
また、請求項1に係る発明によれば、原液に界面活性剤を使用するので、界面活性剤として食器用洗浄剤と同じ成分を利用できる。界面活性剤として食器用洗浄剤と同じ成分を使用することで、人体に対する安全性を確保することができる。
【0023】
また、請求項1に係る発明によれば、殺虫後の処理も、塵取り等を用いて泡ごとすくって捨てるだけでよく、殺虫後の処理における不快感を大幅に緩和できる。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、上記請求項1に係る発明の構成において、捕獲殺虫用泡状組成物が、噴射後、初期粘着性を有する状態で、20℃において1000mPa・s以上10000mPa・s以下の粘度を有する泡状とすることで、害虫を泡状組成物で包むだけでなく、害虫が泡に乗り上げる状態をより良好に実現でき、非粘着性の状態で、20℃において1mPa・s以上1000mPa・s未満の粘度を有する液状若しくは液と泡の混在状態とすることで、害虫の気門への捕獲殺虫用泡状組成物の進入を非常に良好とすることができる。
【0025】
請求項3に係る発明によれば、上記請求項1及び請求項2に係る発明の構成を前提として、噴射剤は、液化石油ガスとジメチルエーテルからなり、該噴射剤の液化石油ガスとジメチルエーテルの重量比率が、100:0乃至10:90としたことで、捕獲殺虫用泡状組成物の噴射に際しては、虫の動きよりも速く、粘性の高い泡状組成物を噴射でき、且つ、特定量のジメチルエーテルによって、適度の消泡性を確保でき、原液の気門への進入による殺虫を容易とすることができる。
【0026】
請求項4に係る発明によれば、上記請求項1乃至請求項3に係る発明の構成を前提として、原液と噴射剤との容積比率を96:4乃至70:30とし、且つ、原液中の界面活性剤の配合比率を、0.4乃至40重量%としたことで、上記請求項1乃至請求項3の作用効果を奏する上に、泡状組成物中の原液成分が、水及び界面活性剤であり燃焼しないため、噴射剤の可燃性が僅かに働くのみで、引火しても、連続した燃焼状態とならず、すぐに自ずと消火されるため、安全性を確保することができる。
【0027】
請求項5に係る発明によれば、上記請求項1乃至請求項4に係る捕獲殺虫用泡状組成物を噴射バルブ装置を備えた耐圧容器に収容してなることで、噴射剤による連続した噴射を可能とし、内容物である液状の捕獲殺虫用泡状組成物中に乳化(分散)した噴射剤が、噴射後に当該捕獲殺虫用泡状組成物の表面から気化するときに一定厚さの泡を形成するため、害虫の気門への泡の付着を容易とすることができ、上記請求項1乃至請求項4に係る捕獲殺虫用泡状組成物の捕獲殺虫効果を、十分に発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
水及び界面活性剤からなる原液と、噴射剤として液化石油ガスとジメチルエーテルを用いた組成物とし、原液と噴射剤との容積比率が、96:4乃至70:30であり、原液中の界面活性剤の配合比率が、0.4乃至40重量%とし、初期粘着性を有する状態で1000mPa・s以上10000mPa・s以下の粘度(20℃条件下)の泡状を呈し、非粘着性の状態で1mPa・s以上1000mPa・s未満の粘度(20℃条件下)の液状を呈する捕獲殺虫用泡状組成物と、該捕獲殺虫用泡状組成物を圧縮状態で噴射バルブ装置を備えた耐圧容器に収容してなる捕獲殺虫具としたことで、噴射された捕獲殺虫用泡状組成物が、大気中ですぐに1000mPa・s以上10000mPa・s以下の粘度(20℃条件下)の泡状となり、害虫を泡状組成物で包むだけでなく、害虫が泡に乗り上げる状態となることで害虫の動きを止めて捕獲を可能とし、更に、害虫の下面及び側面に泡を付着させ、徐々に噴射剤が揮散して、泡状となった原液の液化が進み、1mPa・s以上1000mPa・s未満に粘度が低下し、害虫の呼吸腔である気門に界面活性剤を含有した原液が進入し、呼吸腔を閉塞して窒息死させることができ、原液が界面活性剤を含有した水であるので、使用後の拭取りが非常に容易で、防燃性にも優れ、殺虫薬剤を使用しないので人体に無害で環境にも優しい、捕獲殺虫用泡状組成物とそれを用いた捕獲殺虫具を実現した。
【実施例】
【0029】
以下、本発明の捕獲殺虫用泡状組成物の実施例について詳細を説明する。
本発明の捕獲殺虫用泡状組成物は、原液と噴射剤とにより構成されて、噴射バルブ装置を備えた耐圧容器によりなるエアゾール容器に充填されて、捕獲殺虫用泡状組成物のエアゾール製品とされる。エアゾール容器は、特に限定するものではないが、例えば、正立噴射、倒立噴射及び横向き噴射を可能とする噴射バルブを有する容積250ml程度のアルミ製容器等を利用できる。
【0030】
エアゾール容器内では、噴射剤は界面活性剤の親油基と結合した状態で水層内に分散したエマルジョンとなっている。
【0031】
原液は、水、界面活性成分を必須成分として含有する。この原液を構成する成分の種類及びその各々の原液に対する含有割合は以下のとおりである。尚、原液は下記要件を満たすものであれば、新規に調製したものは勿論、市販の液体洗剤(例えば、食器用洗剤等)を使用することができる。
【0032】
水は、原液の基材であり、通常、精製水或いはイオン交換水を用いることが好ましい。原液中の水の含有割合は、60乃至99.6重量%の範囲である。
【0033】
界面活性剤は、害虫を捕獲する泡状組成物を構成する主成分である。
また、気門への進入を容易とし窒息死させるための主成分である。
原液中の界面活性剤の配合比率は、その有効成分量として、0.4乃至40重量%が好ましく、特に2.4乃至12重量%が好ましい。
尚、界面活性剤の配合量が40重量%を超える場合には、原液の粘度が上がり、消泡性が悪くなって害虫に付着しても害虫の気門に進入し難くなる。また、界面活性剤の配合量が0.4重量%未満の場合には、捕獲殺虫用泡状組成物の泡粘度が低くなり、害虫を捕獲し難くなる。
【0034】
また、捕獲殺虫用泡状組成物における泡粘度は、1000mPa・s以上10000mPa・s以下の範囲が好ましく、特に、1100mPa・s以上5000mPa・s以下の範囲が好ましい。泡の粘度が1000mPa・s未満であれば、害虫の捕獲が困難となり、10000mPa・sを超えると、害虫を包み込み難くなる。
【0035】
界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤があるが、特に陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0036】
陰イオン界面活性剤としては、N−アシルアミノ酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、脂肪酸石鹸、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、N−アシルタウリン塩、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、等を挙げることができる。
【0037】
また特に人体に対する安全性が高く食器洗浄用洗剤として広く使用されている、アルカンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩が、適している。
【0038】
陰イオン性界面活性剤の具体例としては、ラウロイルサルコシン、ラウロイルサルコシンナトリウム、POE(4,5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、POE(6)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム、ミリスチン酸カリウム、ラウリルリン酸ナトリウム、POE(1)ラウリルエーテルリン酸ナトリウム、N−ココイルメチルタウリンナトリウム、ラウリル硫酸カリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム、POE(2)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム、POE(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、テトラデセンスルホン酸ナトリウム、等を挙げることができる。
【0039】
非イオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、脂肪酸アルカノールアマイド、グリセリン脂肪酸エステル、等を挙げることができる。
【0040】
非イオン界面活性剤の具体例としては、モノミリスチン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、モノオレイン酸グリセリル等のグリセリン脂肪酸エステル類、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸ジグリセリル、モノオレイン酸ジグリセリル、モノオレイン酸テトラグリセリル、モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、イソステアリン酸デカグリセリル、ペンタオレイン酸デカグリセリル等のポリグリセリン脂肪酸エステル類、モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノイソステアリン酸ソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノヤシ油脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン等のポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等のポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、大豆燐脂質、卵黄燐脂質等のレシチン誘導体類、やし油脂肪酸ジエタノールアミド、パーム核油脂肪酸ジエタノールアミド、やし油脂肪酸モノエタノールアミド、等を挙げることができる。
【0041】
陽イオン性界面活性剤としては、アルキルアンモニウム塩、アミドアミン等を挙げることができる。
【0042】
陽イオン性界面活性剤の具体例としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステラリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、エチル硫酸ラノリン脂肪酸アミノプロピルエチルジメチルアンモニウム、等を挙げることができる。
【0043】
噴射剤としては、液化石油ガス、ジメチルエーテルが挙げられ、これらは単独で若しくは二種を組み合わせて用いることができる。二種類を組み合わせて用いる場合の組み合わせ比率は、液化石油ガス:ジメチルエーテル=100:0乃至10:90重量%の範囲が好ましい。尚、ジメチルエーテルの含有比率が90重量%を超えると、噴射時の泡が潰れ易くなるため、好ましくない。
【0044】
噴射剤の捕獲殺虫用泡状組成物における含有比率は、捕獲殺虫用泡状組成物全体100容積%中、4乃至30容積%とされる。これにより良好な噴射状態を得ることができる。尚、噴射剤が4容積%未満となる場合には、捕獲殺虫に十分な発泡状態を維持できない。また、噴射時の勢いが弱いため、良好な噴射状態を得ることができない。一方、噴射剤が30容積%を超える場合には、泡が軽くなって噴射に適さない状態となる。また、噴射剤の含有率が大きくなることで、引火時に燃焼状態が連続する虞がある。
【0045】
本発明の捕獲殺虫用泡状組成物を構成する原液中には、種々の添加成分を含有することができる。その具体例としては、例えば有効成分、粉末、香料、染料、増粘剤、防腐剤、その他を挙げることができる。これらの添加成分は、その種類によっても異なるが、通常、原液における含有比率の合計が、0.01乃至10.0重量%、好ましくは、0.1乃至5.0重量%となる量で添加することができる。
【0046】
添加剤の具体例としては、例えば、増粘剤、防腐剤等が挙げられ、単独で若しくは二種以上を組み合わせて用いることができる。例えば、本発明においては、粘度を低下させることによって、害虫の気門への進入を容易とするため、増粘剤は通常不要であるところ、粘度の微調整を行うために添加することにより、特定の種の害虫に対する処方を容易に決定できる利点がある。
【0047】
増粘剤の具体例としては、例えば、ヒドロキシアルキルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、キサンタンガム、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0048】
防腐剤の具体例としては、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸ブチル、フェノキシエタノール、ベンジルアルコール、ソルビン酸カリウム、等が挙げられる。
【0049】
また、原液に対してアルコールを添加することもできる。アルコールの添加によって、アルコール自体が有する殺虫力を利用し、より殺虫力を高めることができる。また、アルコールを粘度調整剤として用いることもできる。アルコールの種類は特に限定しないが、環境への影響等を考慮すると、エチルアルコールが好適である。
【0050】
(実施例及び比較例)
以上に基づき、以下に本発明の複数の実施例を示す。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
噴射剤として、液化石油ガス(LPG0.32)、及び、液化石油ガス(LPG0.32)/ジメチルエーテル=50:50重量%混合物を用い、原液中の界面活性剤濃度(重量%)と噴射剤中の界面活性剤含有率(重量%)を変化させ、以下表1に示す処方の各実施例(実施例1乃至実施例42)を作成し、回転粘度計(リオン株式会社製VT−04F及びVT−03F)を用いて20℃環境下における粘度を測定した。同様に、比較例として、以下表2に示す各比較例(比較例1乃至比較例18)を作成し、回転粘度計を用いて20℃環境下における粘度を測定した。
【表1】

【表2】

【0052】
以上の表1及び表2に示した各実施例及び各比較例につき、害虫に対する捕獲殺虫性能及び噴射性能を、下記手順により行った。
【0053】
(捕獲殺虫性能試験)
噴射バルブと、口径1.6mmのノズルを有する容積250mlのエアゾール容器に、捕獲殺虫用泡状組成物を封入して捕獲殺虫具とした上で、検体である害虫に対して使用し、捕獲状態の観察と、殺虫に要する時間の測定を行う。捕獲の可否と、殺虫に要する時間から、殺虫捕獲性能について評価を行う。
捕獲殺虫性能の評価としては、以下(a)乃至(c)の通りとする。
(a)◎:泡で害虫を包み込んで捕獲でき、30秒乃至60秒までの間に死亡する。
(b)○:泡で害虫を包み込んで捕獲でき、60秒を超えて120秒までの間に死亡する。
(c)×:害虫を捕獲できず、害虫が周囲を徘徊した後、死亡するか、又は死亡しない。
【0054】
本試験における検体である害虫は、小型害虫、中型害虫、大型害虫の三種類に区分した。小型害虫は約0.1mm以上10mm以内の大きさ、中型害虫は10mmを超えて50mm以内の大きさ、大型害虫は50mmを超える大きさのものとした。以下、各区分ごとに試験の手順及び結果を示す。
【0055】
尚、このような区分としたのは、本発明に係る捕獲殺虫用泡状組成物が害虫の気門に進入して窒息死させるという性質上、ある程度幅広い種の害虫に対して効果を得られることが期待でき、その一方で、害虫の大きさによって、要求される粘度等の条件が異なるためである。この害虫の大きさによって要求される粘度等条件が異なる点は、本発明者が繰り返し試験を行った結果、その傾向が判明したものである。
【0056】
(試験1:小型害虫に対する捕獲殺虫試験)
(試験方法)
小型害虫においては、直径10cmのシャーレ内に放した小型害虫(クロアリ)から30cm離れた位置から、当該検体に対して捕獲殺虫用泡状組成物を噴射し、泡で検体を包み込む状態で放置し、捕獲状態を観察する。捕獲を確認した後、捕獲殺虫用泡状組成物の噴射終了時から致死までの時間(以下、「致死時間」という。)を計測し、30秒毎に、泡内から検体を取出して検体の状態を確認する。検体が生存していれば、引き続き泡内へ検体を入れて致死時間の計測を継続する。以上の操作を、以下に示す実施例につき、検体数各3匹に対して行う。
捕獲殺虫具に封入した捕獲殺虫用泡状組成物は、実施例1乃至6、実施例7乃至16、実施例21乃至24、比較例1乃至4及び比較例7、8に係る処方とした。
捕獲状態の観察から得られた捕獲の可否の結果と、殺虫に要した時間の平均値から、上記した殺虫捕獲性能について評価を行う。
【0057】
(試験結果)
以下、表3に本試験1の試験結果を示す。
【表3】

【0058】
以上から、上記実施例(実施例1乃至実施例6、実施例9乃至実施例16、実施例21乃至実施例24)の処方で、小型害虫に対する十分な捕獲殺虫性能を有することが確認できた。
尚、実施例1、2では致死まで1、2分程度を要しているが、実施例9、10のように同一条件で噴射剤の含有量のみを増加させることで殺虫性能が向上している。この殺虫性能の向上の理由としては、噴射剤の増加により十分な泡が気門近傍へ付着した結果であると考えられる。
【0059】
(試験2:中型害虫に対する捕獲殺虫試験)
(試験方法)
中型害虫においては、室内床面にビニルシートを敷き、検体を放し、50cm程度の距離から、検体に対して捕獲殺虫用泡状組成物を噴射し、泡で検体を包み込む状態で放置し、捕獲状態を観察する。捕獲確認後、致死時間を計測し、30秒毎に、泡内から検体を取出して検体の状態を確認する。検体が生存していれば、引き続き泡内へ検体を入れて致死時間の計測を継続する。
本試験2における検体としては、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ハサミムシを使用した。以上の操作を、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ハサミムシの夫々について、以下に示す実施例につき、検体数各3匹に対して行う。
捕獲殺虫具に封入した捕獲殺虫用泡状組成物は、実施例11、12、及び実施例23乃至28、実施例31乃至40及び比較例7、8、及び比較例11乃至16に係る処方とした。
捕獲状態の観察から得られた捕獲の可否の結果と、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ハサミムシの各検体の殺虫に要した時間の平均値から、上記した殺虫捕獲性能について評価を行う。
【0060】
(試験結果)
以下、表4に本試験2の試験結果を示す。
【表4】

【0061】
以上から、上記実施例(実施例11、12、実施例23乃至実施例28、実施例31乃至実施例40)の処方の範囲で、中型害虫に対する十分な捕獲殺虫性能を有することが確認できた。
尚、実施例35乃至実施例40においては、界面活性剤の含有比率に関わらず、噴射剤量の増加に伴い、殺虫性能がやや低下している。この理由としては、噴射剤の増加により泡の状態が長時間保持され、気門内への進入がやや遅延したためであると考えられる。
【0062】
(試験3:大型害虫に対する捕獲殺虫試験)
(試験方法)
大型害虫においては、室内床面にビニルシートを敷き、検体を放し、50cm程度の距離から、検体(ムカデ)に対して捕獲殺虫用泡状組成物を噴射し、泡で検体を包み込む状態で放置し、捕獲状態を観察する。捕獲確認後、致死時間を計測し、30秒毎に、泡内から検体を取出して検体の状態を確認する。検体が生存していれば、引き続き泡内へ検体を入れて致死時間の計測を継続する。
捕獲殺虫具に封入した捕獲殺虫用泡状組成物は、実施例7、8、実施例17乃至実施例20、実施例27乃至実施例30、実施例41、42、比較例5、6、9、10、比較例15乃至比較例18に係る処方とした。
捕獲状態の観察から得られた捕獲の可否の結果と、殺虫に要した時間の平均値から、上記した殺虫捕獲性能について評価を行う。
【0063】
(試験結果)
以下、表5に本試験3の試験結果を示す。
【表5】

【0064】
以上から、上記実施例(実施例7、8、実施例17乃至実施例20、実施例27乃至実施例30、実施例41、42)の処方の範囲で、大型害虫に対する捕獲殺虫性能を有することが確認できた。
【0065】
(試験4:噴射性能試験)
噴射性能は、上記捕獲殺虫性能とは異なり、噴射対象である害虫からのある程度の距離を確保した上で良好な噴射が実現するかどうかを確認するものである。従って、本噴射性能試験において十分な評価が得られない場合であっても、上記した捕獲殺虫性能を否定するものではない。
しかしながら、良好な噴射性能を有することで、より使い勝手に優れた捕獲殺虫用泡状組成物及び捕獲殺虫具を提供できる。
【0066】
噴射バルブとノズルを有する容積250mlのエアゾール容器に、実施例に係る捕獲殺虫用泡状組成物を封入し、捕獲殺虫具とした上で、捕獲殺虫用泡状組成物を噴射し、噴射性能につき評価を行う。尚、ノズル口径は基本的に1.6mmとしたが、噴射剤の含有比率が4容積%以下となるものについては、ノズル口径1.2mmとした。
【0067】
噴射性能の評価としては、以下(a)乃至(c)の通りとする。
(a)○:捕獲殺虫用泡状組成物が30cm以上真っ直ぐに噴射でき、且つ30cmの距離から垂直なガラス板面に噴射したときに、捕獲殺虫用泡状組成物の跳ね返りが少なく、液垂れがないこと。
(b)△:捕獲殺虫用泡状組成物が30cm以上真っ直ぐに噴射でき、且つ30cmの距離から垂直なガラス板面に噴射したときに、捕獲殺虫用泡状組成物の跳ね返りがあり、液垂れが少ないこと。
(c)×:捕獲殺虫用泡状組成物が30cm噴射されないか、又は30cmの距離から垂直なガラス板面に噴射したときに、捕獲殺虫用泡状組成物の跳ね返りが大きい或いは液垂れが速いこと。
・液だれ評価
(ア)垂れなし:30cmの距離から垂直なガラス板面に対して1秒間噴射したときに、捕獲殺虫用泡状組成物の外周面の最下部が、噴射10秒後に10cm以上垂れないこと。
(イ)垂れが少ない:30cmの距離から垂直なガラス板面に対して1秒間噴射したときに、捕獲殺虫用泡状組成物の外周面の最下部が、噴射10秒後に10cmを超えて20cmまでの液だれを生じること。
(ウ)垂れが速い:30cmの距離から垂直なガラス板面に対して1秒間噴射したときに、捕獲殺虫用泡状組成物の外周面の最下部が、噴射10秒後に20cmを超える液だれを生じること。
【0068】
以下の表6に、実施例1乃至42及び比較例1乃至18を含む、界面活性剤の配合比率と噴射剤の容積比率、ガス種類に対応した、20℃における泡粘度と噴射性能を示す。尚、泡粘度の単位はmPa・sである。
【表6】

【0069】
以上の表6の中央部において太線で区分される三つの区分のうち、実施例9乃至実施例16及び実施例21、22を含む、左側の区分(以下、第一区分)は、小型害虫について特に好適である範囲を示す。
【0070】
また、上記三つの区分のうち、実施例23乃至実施例28、実施例31乃至実施例34を含む、中央下側寄りの区分(以下、第二区分)は、中型害虫について特に好適である範囲を示す。
【0071】
また、上記三つの区分のうち、実施例17乃至実施例20及び実施例29、30を含む右側の区分(以下、第三区分)は、大型害虫について、特に好適である範囲を示す。
以上の第一区分、第二区分、第三区分の範囲は夫々の大きさの害虫に好適であるが、この範囲外であっても、噴射剤含有比率が4容積%乃至30容積%、界面活性剤の含有比率が0.4重量%乃至40重量%の範囲においても、一部噴射性能の劣る部分もあるものの、概ね良好である。
【0072】
更に、上記噴射性能試験の結果、以下の傾向が顕著となった。
(イ)噴射剤が少ない状態では、噴射の勢いが弱く、泡になりにくい(発泡が遅い)。
(ロ)噴射剤が多い状態では、泡が軽くなり、粘着性が劣る。
(ハ)界面活性剤が少ない状態では、泡になりにくく、噴射剤が多くてもすぐに泡が消える。
(ニ)界面活性剤が多い状態では、粘度が高く、発泡し難い傾向がある。泡消えが遅く、拭取りに手間がかかる。
【0073】
また、本発明においては、下記表7乃至表10に示すように、原液として市販の洗剤を使用することができる。下記表7乃至表10において、各活性剤濃度に対応する、原液比重及び原液粘度はいずれも20℃環境下、泡比重及び泡粘度はいずれも20℃環境下での数値である。また、前記泡比重及び泡粘度は、原液:噴射剤=90:10(容積%)とした状態での数値である。
【表7】

【表8】

【表9】

【表10】

【0074】
表7に示す原液は、中性であり、アルカンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルカノールアミド、安定化剤を含有する。
表8に示す原液は、中性であり、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム、アルキルアミンオキシド、安定化剤、金属封鎖剤を含有する。
表9に示す原液は、弱アルカリ性であり、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルアミンオキシド、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、安定化剤、粘度調整剤、酵素を含有する。
表10に示す原液は、中性であり、アルキルエーテル硫酸エステルナトリウム、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミンオキシド、アルキルグリコキシド、アルキルグリセリルエーテル、安定化剤、除菌剤を含有する。
【0075】
以上に示した市販の食器用洗剤等を原液として用いる際には、害虫の捕獲殺虫に関係のない成分が混在することもあるが、本願発明では特に問題とせず、特に、原液が、水及び界面活性剤を含有し、噴射剤を更に含有する組成物としたことで、初期粘着性から非粘着性への移行により粘度が低下し、非粘着性の状態で液状又は液と泡の混在状態を呈するものであればよい。また、上記市販の食器用洗剤等に対して、先述例示した添加剤を適宜加えることもできるし、不要な成分を適宜取り除くこともできる。
【0076】
次に、上記に示した捕獲殺虫用泡状組成物を用いた捕獲殺虫具の一例を示す。
本実施例においては、原液として前記表7に示した、市販の洗剤である株式会社ニイタカ製の食器用液体洗剤(商品名「マイルドサラセン業務用」)を使用した。該原液は、アルカンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸アルカノールアミド、安定化剤を含有する。
【0077】
正立噴射、倒立噴射及び横向き噴射を可能とする噴射バルブと、口径1.6mmのノズルを有する容積250mlのエアゾール容器に、前記原液と噴射剤であるLPG0.32を90:10(容積%)として封入し、内圧0.5MPa程度とした。噴射量は、20g/5秒程度で、一回当たりの使用時間は2乃至3秒程度とした。
以上の構成によって、捕獲殺虫用泡状組成物の噴射距離は、概ね50cm乃至70cm程度となり、噴射直後から噴射剤の気化に伴って泡状となり、泡が直線的に噴射される。以上の構成によって、本実施例における捕獲殺虫具は、上記本発明の捕獲殺虫用泡状組成物の作用効果を有効に発揮する噴射能力を有する。
【0078】
尚、本発明における捕獲殺虫具は、上記実施例に限るものではなく、容器内に封入される捕獲殺虫用泡状組成物は、本発明の開示した捕獲殺虫用泡状組成物、即ち、水及び界面活性剤からなる原液と、噴射剤を含有する組成物とし、初期粘着性から非粘着性への移行により粘度が低下し、非粘着性の状態で液状又は液と泡の混在状態を呈する捕獲殺虫用泡状組成物であればよい。
【0079】
また、容器は正立噴射が可能なものに限らず、倒立噴射が可能なものでもよい。ノズルの口径のサイズは1.6mmに限らず、特に限定するものではないが、例えば、ノズルの口径を0.8mm乃至1.6mm程度の範囲に設定することで、捕獲殺虫用泡状組成物の組成比に応じた良好な噴射性能を得ることができる。例えば、ノズルの口径を0.8mm乃至1mm程度に変更することで噴射距離を高めることができる。更に、ノズルの口径の変更のみならず、噴射口の形状を変更することによって、噴射される泡全体の広がり加減を調節して、捕獲殺虫用泡状組成物の跳ね返りや垂れを低減できる。
【0080】
また、本発明においては、害虫として、上記実施例で、蟻、ハサミムシ、クロゴキブリ、チャバネゴキブリ、ムカデについて、捕獲殺虫用泡状組成物を使用したが、これに限らず、例えば、ワラジムシ、ブヨ、ゲジ、ゴミムシ、カメムシ、クモにおいても捕獲殺虫を行うことができる。更に、節足動物ではないものの、ナメクジについても有効性を確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴射後一時的に初期粘着性を有する泡状を呈し、その後非粘着性となる捕獲殺虫用泡状組成物において、
上記捕獲殺虫用泡状組成物は、水及び界面活性剤からなる原液と、噴射剤を含有する組成物とし、初期粘着性から非粘着性への移行により粘度が低下し、非粘着性の状態で液状又は液と泡の混在状態を呈することを特徴とする捕獲殺虫用泡状組成物。
【請求項2】
初期粘着性を有する状態で、20℃において1000mPa・s以上10000mPa・s以下の粘度を有し、非粘着性の状態で、20℃において1mPa・s以上1000mPa・s未満の粘度を有することを特徴とする請求項1記載の捕獲殺虫用泡状組成物。
【請求項3】
噴射剤は、液化石油ガスとジメチルエーテルからなり、該噴射剤中の液化石油ガスとジメチルエーテルの重量比率が、100:0乃至10:90である請求項1又は2記載の捕獲殺虫用泡状組成物。
【請求項4】
原液と噴射剤との容積比率が、96:4乃至70:30であり、
原液中の界面活性剤の配合比率が、0.4乃至40重量%としたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の捕獲殺虫用泡状組成物。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4記載の捕獲殺虫用泡状組成物を、噴射バルブ装置を備えた耐圧容器に収容してなる捕獲殺虫具。

【公開番号】特開2009−235023(P2009−235023A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−85560(P2008−85560)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(308010413)有限会社リベンヂ (1)
【出願人】(503174947)新日本エアゾル工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】