説明

捲縮糸およびその製造方法、ならびにそれを用いたカーペット

【課題】非石油系ポリマであるポリ乳酸ポリマを含む捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性を改善し、かつ色斑感も改善した、カ−ペットとして好適な捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを提供することにある。また、糸切れや毛羽等の発生が抑制されたポリ乳酸ポリマを含む捲縮糸の製造方法を提供することにある。
【解決手段】
ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンド比率(A)/(B)が、重量比で50/50〜10/90であるブレンドポリマ100重量部に対して無機粒子(C)を0.2〜3.0重量部含有しており、かつ異形度が2.5以上であることを特徴とする捲縮糸、およびそれを用いたカーペット。
またポリ乳酸ポリマ(A)、ポリアミドポリマ(B)および無機粒子(C)を混合し溶融混練して紡糸パックに導いた後、スリット比7以上の異形口金から紡出することを特徴とする捲縮糸の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非石油系ポリマであるポリ乳酸ポリマを含む捲縮糸およびその製造方法、ならびにそれを用いたカ−ペットに関する。特に、耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が著しく改善され、色斑感も改善された、カ−ペットとして好適な捲縮糸およびその製造方法、ならびにそれを用いたカ−ペットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、化石燃料資源の枯渇対策や地球温暖化防止のために、植物資源を原料とする脂肪族ポリエステルポリマによって従来の石油系ポリマからなる合成繊維を代替しようとして、開発が活発に行われている。
【0003】
なかでもポリ乳酸繊維は、力学的特性、熱的特性が実用製品として利用できる可能性があり、また最近はポリマコストも現実的な価格になりつつあることから、開発が盛んに行われている。しかしながら、大きな期待にもかかわらずポリ乳酸繊維の特性をそのまま活かせる用途は少なく、また、ポリ乳酸の欠点特性を改良する技術開発も行われているものの、その成果は十分ではない。そのため、ポリ乳酸繊維の生産・販売量は未だに少なく、早期拡大が切望されている。
【0004】
そこで、従来のポリ乳酸繊維の特性を活かせる用途、その特性で満足できる用途、および最近の改善技術を利用できる用途開発とは別に、従来の合成繊維に混合して用いることによって合成繊維の一部をポリ乳酸繊維で代替しようという試みがなされている。ポリ乳酸繊維を混合して用いる方法としては、混織、混繊、複合繊維、ブレンド繊維等がある。本発明はポリ乳酸ポリマとポリアミドポリマのブレンドポリマからなる捲縮糸を提案するものであるが、これまでに開示されている技術として、例えば特許文献1、特許文献2が挙げられる。
【0005】
特許文献1には脂肪族ポリエステルにポリアミドがブレンドされて海島構造を形成した樹脂組成物が開示されている。しかし特許文献1に記載の樹脂組成物はポリ乳酸を主成分としているため均一ブレンドが不十分であり、ポリ乳酸成分が一部繊維表面に露出してしまうため、耐摩耗性、耐ヘタリ性、踏み心地性、風合いが不十分であった。
【0006】
一方、特許文献2にはポリアミド中にポリエステルが微分散したポリマーアロイ繊維が開示されおり、種々の添加剤として酸化チタンなどの着色剤を含んでも良いと開示されている。しかし特許文献2に記載の繊維は丸断面のため、耐摩耗性、耐ヘタリ性、踏み心地性、風合いが不十分であり、カーペットとしては好適ではなかった。
【特許文献1】特開2003−238775号公報(特許請求の範囲)
【特許文献2】特開2005−206961号公報(特許請求の範囲)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、非石油系ポリマであるポリ乳酸ポリマを含む捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が改善され、かつ色斑感も改善された、カ−ペットとして好適な捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを提供することにある。また、糸切れや毛羽等の発生が抑制されたポリ乳酸ポリマを含む捲縮糸の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが前述の課題について鋭意検討した結果、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンド比率(A)/(B)が、重量比で50/50〜10/90であるブレンドポリマ100重量部に対して無機粒子(C)を0.2〜3.0重量部含有しており、かつ異形度が2.5以上であることを特徴とする捲縮糸により前述の課題を解決することを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下の構成からなる。
1.ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンド比率(A)/(B)が、重量比で50/50〜10/90であるブレンドポリマ100重量部に対して無機粒子(C)を0.2〜3.0重量部含有しており、かつ異形度が2.5以上であることを特徴とする捲縮糸。
2.ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマ100重量部に対し、さらに着色剤(D)を0.01〜3.0重量部含有していることを特徴とする上記1記載の捲縮糸。
3.総繊度500〜3000dtex、単糸繊度が5〜50dtexであることを特徴とする上記1または2記載の捲縮糸。
4.ポリ乳酸ポリマ(A)、ポリアミドポリマ(B)および無機粒子(C)を混合し溶融混練して紡糸パックに導いた後、スリット比7以上の異形口金から紡出することを特徴とする上記1または3記載の捲縮糸の製造方法。
5.ポリ乳酸ポリマ(A)、ポリアミドポリマ(B)、無機粒子(C)および着色剤(D)を混合し溶融混練して紡糸パックに導いた後、スリット比7以上の異形口金から紡出することを特徴とする上記2または3記載の捲縮糸の製造方法。
6.紡糸パック内で濾過精度が5〜30μmのフィルターを通過させることを特徴とする上記4または5記載の捲縮糸の製造方法。
7.紡糸ドラフトが30〜250であることを特徴とする上記4〜6のいずれか記載の捲縮糸の製造方法。
8.上記1〜3のいずれか記載の捲縮糸を用いたカ−ペット。
【発明の効果】
【0010】
非石油系ポリマであるポリ乳酸ポリマを含む捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットの耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が著しく改善され、かつ色斑感も改善されたカ−ペットとして好適な捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを提供することができる。また、糸切れや毛羽等の発生が抑制され安定製糸性可能なポリ乳酸ポリマを含む捲縮糸の製造方法を提供することができる。
【0011】
また、植物資源からなる本発明捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを用いて従来の合成繊維捲縮糸およびそれを用いたカ−ペットを代替することにより資源が節約され、また二酸化炭素の循環による地球温暖化の抑制への貢献が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0013】
本発明はポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンド比率(A)/(B)が、重量比で50/50〜10/90であるブレンドポリマ100重量部に対して無機粒子(C)を0.2〜3.0重量部含有しており、かつ異形度が2.5以上であることを特徴とする捲縮糸である。
【0014】
本発明のポリ乳酸ポリマ(A)は、乳酸やラクチド等の乳酸のオリゴマーを重合したものをいう。乳酸にはD−乳酸とL−乳酸の2種類の光学異性体が存在するため、その重合体もD体のみからなるポリ(D−乳酸)とL体のみからなるポリ(L−乳酸)および両者からなるポリ乳酸がある。ポリ乳酸中のD−乳酸、あるいはL−乳酸の光学純度は、それらが低くなるとともに結晶性が低下し、融点降下が大きくなる。融点は繊維の耐熱性を維持するために150℃以上であることが好ましいため、光学純度は90%以上であることが好ましい。
【0015】
また、ポリ乳酸ポリマ(A)中には低分子量残留物として残存ラクチドが存在するが、これら低分子量残留物は、延伸や捲縮加工工程での加熱ヒーター汚れや染色加工工程での染め斑等の染色異常を誘発する原因となる。また、繊維や繊維成型品の加水分解を促進し、耐久性を低下させる。そのため、ポリ乳酸中の残存ラクチド量は好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.03重量%以下である。残留ラクチドの測定法としては、試料(ポリ乳酸ポリマ)1gをジクロロメタン20mlに溶解し、この溶液にアセトン5mlを添加し、さらにシクロヘキサンで定容して析出させ、島津社製GC17Aを用いて液体クロマトグラフにより分析し、絶対検量線にてラクチド量を求める方法が挙げられる。
【0016】
また、ポリ乳酸ポリマ(A)の分子量は、耐摩耗性を高めるためには高い方が好ましいが、分子量が高すぎると、製糸工程で糸切れや毛羽が多発するなど延伸性が低下する傾向にある。重量平均分子量は耐摩耗性を保持するために8万以上であることが好ましく、10万以上がより好ましい。さらに好ましくは12万以上である。また、分子量が35万を越えると、前記したように延伸性が低下するため、結果として分子配向し難くなり繊維強度が低下する。そのため、重量平均分子量は35万以下が好ましく、30万以下がより好ましい。さらに好ましくは25万以下である。上記重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、ポリスチレン換算で求めた値である。
【0017】
本発明の捲縮糸に用いられるポリアミドポリマ(B)は、融点が180〜230℃のポリアミドポリマ(B)であることが好ましい。融点が180℃未満、特に、160〜180℃のポリアミドポリマ(B)ではポリ乳酸の融点に近く、均一ブレンドし易いが、かかるポリアミドポリマ(B)を用いると、力学的および熱的に劣る繊維物性しか得られず、ブレンドすることによる改良効果が得られない。一方、融点が230℃を越えるポリアミドポリマ(B)は、ポリ乳酸ポリマ(A)との均一なブレンドを達成できず、本発明効果を得ることができない。
【0018】
本発明の捲縮糸に用いられるポリアミドポリマ(B)は、ポリカプラミドまたはカブロラクタムを主成分とする他のポリアミド成分との共重合ポリマであってもよい。好ましい共重合ポリマの例としては、カプロラクタム:99〜80重量部とヘキサメチレンアジパミド、トリメチレンアジパミド、ヘキサメチレンセバカミド等を1〜20重量部共重合したポリアミドである。ポリカプラミドは従来からカ−ペット用捲縮糸として好適な素材であり、そのポリカブラミド成分をベースとした共重合ポリアミドは、ポリカプラミドよりは若干結晶性が低下するものの、融点がポリ乳酸ポリマ(A)に近づくためブレンド性が良好となり、均一なブレンドポリマが得られる。即ち、ポリカブラミドの有する耐摩耗性や耐ヘタリ性等、また踏み心地性や風合い等の官能特性等が、従来のポリ乳酸捲縮糸特性が大幅に改善され、これまで達成できなかったレベルの高品質のポリ乳酸ポリマ(A)を含む捲縮糸が得られるようになるのである。
【0019】
本発明は、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマを含有する捲縮糸であるが、そのブレンド比率(A)/(B)が重量比で50/50〜10/90である。好ましくは、40/60〜20/80である。ポリ乳酸ポリマ(A)単独またはポリ乳酸ポリマ(A)比率が高い方が、化石燃料資源の枯渇対策や地球温暖化防止のために有効であるとして、従来技術ではそのような取り組みがなされてきた。しかしながら、捲縮糸需要量全体の中でポリ乳酸ポリマ(A)がどれだけ使用されるかが重要である。ポリ乳酸ポリマ(A)単独又はポリ乳酸ポリマ(A)比率は高いが、捲縮糸特性に劣り、あまり使用されない捲縮糸よりも、ポリ乳酸比率は低いものの、捲縮糸特性が良好なため多量に使用される捲縮糸の方が、本来の目的を達するものであると言える。すなわち本発明においては、ポリアミドポリマ(B)の比率が多ければ多いほど、捲縮糸特性は良好である。これは、ポリアミド捲縮糸の特性である耐摩耗性や耐ヘタリ性等の耐久性が改善され、かつ踏み心地性や風合いの優れた官能特性等も寄与するからである。更に、後述するが、本発明捲縮糸の微細構造を観察すると、ブレンドポリマは海島構造形成しており、ポリアミド成分が海、ポリ乳酸成分が筋状の島を形成している。島成分の筋は均一にブレンドされるほど細くなるが、海成分が多いほど、即ち、ポリアミドポリマ(B)成分が多いほど均一ブレンドが達成され易く、筋が細くなるのである。
【0020】
ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)は相溶性が良好ではなく、分子レベルでの相溶は容易ではない。しかし、両ポリマの融点および溶融粘度をできるだけ近づけ、かつ、紡糸パック中で混練してブレンドの均一性を高め、紡出糸の冷却パタ−ンを最適化させて均一ブレンド状態を保持して冷却固化させることによって、本発明の分子レベルでポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)が相溶した捲縮糸が得られる。その結果、本発明捲縮糸におけるポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンド状態は、海島構造を形成し、ポリアミドポリマ(B)の海にポリ乳酸ポリマ(A)が筋状に島を形成したものとなる。ポリ乳酸ポリマ(A)の筋は、通常のポリ乳酸ポリマ繊維の微細構造単位であるミクロフィブリルまたはマクロフィブリルの直径、即ち、0.01μm〜0.5μm、好ましくは0.03μm〜0.1μmである。前記した通り、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドにおいては、ポリアミド比率が高いほど、均一ブレンドを達成するのに有利であり、ポリ乳酸ポリマ(A)の細い筋の形成も容易である。
【0021】
本発明の捲縮糸は、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマ100重量部に対して無機粒子(C)を0.2〜3.0重量部含有しており、かつ異形度が2.5以上であり、無機粒子含有量が0.5〜2.0重量部で、かつ異形度が3以上であることが好ましい。
【0022】
ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマを含有する捲縮糸では、ポリアミドポリマ(B)単独の場合に比べて、ブレンド斑による光沢斑や染色斑が発生しやすい。特に、カットパイルカーペットでの糸断面と糸側面の斑差が大きいため、斑感が認識され易かった。
【0023】
また、製品となるカーペットにおいて、カーペット表面の繊維が使用を重ねていくうちにヘタリが発生してくるが、繊維表面の光沢感が強い場合には、ヘタリが発生している部分と発生していない部分が視覚的に認識され易かった。
【0024】
そこで、本発明の捲縮糸では、斑感を抑制するためにポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマ100重量部に対して無機粒子(C)を0.2〜3.0重量部含有させている。従来の技術において、同様に光沢感を抑制するために無機粒子を含有させている例もあるが、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマを含有する捲縮糸において、0.2〜3.0重量部という高濃度の無機粒子を含有するものは現状存在しない。
【0025】
ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマに対する無機粒子(C)の割合が、0.2重量部未満では斑感の抑制効果が得られにくくなり、一方、3.0重量部を超えると光沢感抑制効果が飽和するとともに、捲縮糸の製造工程において糸条が接触するローラやガイド、熱板等が摩耗して、この摩耗した部分に糸条が接触することにより糸切れや毛羽が発生することとなり好ましくない。
【0026】
光沢感抑制のための無機粒子(C)としては、酸化チタン、シリカ粒子、酸化ジリコニウム、酸化アルミナ等があり、コスト、安定性、光沢感抑制効果の点で酸化チタンが好ましい。
【0027】
無機粒子(C)の添加方法としては、ポリ乳酸ポリマ(A)とブレンドするポリアミドポリマ(B)を重合する際に添加しても良いし、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)を溶融ブレンドする際に添加しても良いが、取扱いの容易性から溶融ブレンド段階で添加することが好ましい。その際の添加方法としては、マスターバッチ方式やリキッドカラー方式等が挙げられるが、生産性、ブレンド安定性等からマスターバッチ方式が好ましい。
【0028】
マスターバッチ方式を用いる場合には、溶融したベースポリマに無機粒子(C)を練り込んだマスターチップを作成し、これをポリ乳酸ポリマ(A)およびポリアミドポリマ(B)と計量混合して溶融紡糸することができる。
【0029】
また、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマに高濃度の無機粒子(C)を含有させた場合、糸条の収束性が悪化するため、捲縮糸製造工程で用いるローラ上で糸条割れや糸揺れが発生したり、ローラと糸条のすべりが発生するため、均一かつ十分な熱処理がされずに捲縮斑が発生し易かった。
【0030】
そこで、製造工程における熱処理時の熱量をより多く均一に受けるため、捲縮糸の異形度を2.5以上にすることが好ましい。
【0031】
異形度は、紡糸口金の吐出孔形状や、紡糸温度、冷却風速等で変更することができる。
【0032】
また、ポリ乳酸繊維は一般に染色工程において加水分解が起こり、ポリマの分子量が低下するため、強度低下や捲縮特性が低下し、カーペットでの色斑感が起きやすいので、染色工程を適用しない原着糸とすることが好ましく行われる。本発明の捲縮糸も原着糸とすることで、かかる効果を奏するものである。
【0033】
本発明の捲縮糸に用いる着色剤(D)は、ポリ乳酸捲縮糸に適切な特定の無機、有機顔料および染料である。具体的には、鉛、クロムおよびカドミウムを除く酸化物系無機顔料、フェロシアン化物無機顔料、珪酸塩無機顔料、炭酸塩無機顔料、燐酸塩無機顔料、カ−ボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉およびチタン粉末被覆雲母等の無機顔料、フタロシアニン系有機顔料、ペリレン系有機顔料、イソイントセリノン系有機顔料等の有機顔料、および複素環系染料、ヘリノン系染料、ペリレン系染料およびチオインジオ系染料等から選ばれた2種以上を組み合わせたものである。例えば、無機顔料としては、酸化チタン、亜鉛華、チタンイエロー、亜鉛−鉄系ブラウン、チタン・コバルト系グリーン、コバルトグリーン、コバルトブルー、銅−鉄系ブラック等の酸化物、紺青のようなフェロシアン化物、群青のような珪酸塩、炭酸カルシウムのような炭酸塩、マンガンバイオレットのような燐酸塩、カーボンブラック、アルミニウム粉やブロンズ粉、およびチタン粉末被覆雲母等が用いられ、鉛、クロムおよびカドミウム等の重金属を含む無機顔料は用いない。有機顔料としては、銅フタロシアニンブルー、銅フタロシアニングリーンおよび臭素化銅フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系、ペリレンスカーレット、ペリレンレァ、ペリレンマルーン等のペリレン系、イソインドリノン系等が用いられる。また、染料としては、アンスラキノン系、複素環系、ヘリノン系、ペリレン系、およびチオインジオ系が用いられる。
【0034】
本発明の捲縮糸に用いられる着色剤(D)は、上記無機顔料、有機顔料および染料から選ばれた2種以上を組み合わせて用いる。特に、上記着色剤(D)は2種以上用いて調整することが好ましく、たとえば1種類の着色剤(D)のみで着色すると従来の染色タイプのポリ乳酸捲縮糸に対抗することができる程の微妙な色調を発現することができず、カーペットとした時の意匠性、審美性を満足させることができない。
【0035】
該着色剤(D)の添加濃度は、染料の種類によって変化するが、ポリマ重量当たり、着色剤(D)の全量として、好ましくは0.01〜3.0重量部、より好ましくは0.5〜1.0重量部使用するものである。また、着色剤(D)は通常用いられる分散剤を併用して用いることもできる。
【0036】
着色剤(D)の添加方法としては、ポリ乳酸ポリマ(A)およびポリアミドポリマ(B)を重合する際から、これらポリマを溶融紡糸するまでの過程で添加すればよいが、取扱いの容易性から溶融紡糸段階で添加することが好ましい。その際の添加方法としては、マスターバッチ方式やリキッドカラー方式等が挙げられるが、生産性、色調安定性等からマスターバッチ方式が好ましい。
【0037】
マスターバッチ方式を用いる場合には、溶融したベースポリマに着色剤(D)を練り込んだマスターチップを作成し、これをポリ乳酸ポリマ(A)およびポリアミドポリマ(B)と計量混合して溶融紡糸することができる。
【0038】
本発明捲縮糸の総繊度は好ましくは500〜3000dtex、より好ましくは1000〜2000dtexである。500dtex未満ではそのままでカーペット用パイルとしてタフトした場合、実用の目付とするためにステッチを上げる必要が生じ、タフトが困難になる。撚糸を施し諸撚り糸のカットパイルとして使用しても繊度が低すぎて必要以上にゲージやステッチを上げる必要があるため好ましくない。3000dtexを越えると、製糸工程において、均一な冷却・固化が困難となったり、熱の伝達が十分に行われず、延伸性が著しく低下し、安定な製糸ができなくなるため好ましくない。
【0039】
本発明捲縮糸の単糸繊度は好ましくは5〜50dtexである。5dtex未満ではカ−ペット用としては耐摩耗性、耐ヘタリ性や踏み応え性に欠けるため好ましくない。50dtexを越えると、風合いが粗硬となり、カ−ペット用としては好まれない。
【0040】
本発明捲縮糸の強度は、好ましくは、1.5〜4.0cN/dtexである。1.5cN/dtex未満では強度が低すぎ、耐摩耗性も低く、実用耐久性が不足する。一方、4.0cN/dtexを越える強度は現行技術では達成できない。
【0041】
本発明の捲縮糸は、捲縮伸長率が5〜25%が好ましい。捲縮伸長率が5〜25%であれば、従来のポリ乳酸捲縮糸に比べて著しく捲縮特性に優れ、高捲縮率でボリュ−ム感があり、また、カ−ペットにした時に耐ヘタリ性や耐摩耗性も良好である。ナイロン捲縮糸ほどではないものの、その捲縮特性は従来のポリ乳酸捲縮糸やポリエチレンテレフタレ−ト捲縮糸より格段に優れ、十分実用できるレベルである。捲縮伸長率が5%未満では、従来のポリ乳酸捲縮糸と大差なく、不十分である。一方、25%を越える捲縮伸長率は現在の技術では達成できない。
【0042】
なお、本発明の捲縮糸の断面形状は中空断面、多孔中空断面、三葉断面等の多葉断面、扁平断面、W断面、X断面その他の異形断面についても自由に選択することが可能である。
【0043】
本発明の捲縮糸は、他の繊維を含んでカーペットを形成してもよい。例えば、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維との引き揃え、撚糸、混繊であってもよい。他の繊維としては、木綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維や、レーヨン、キュプラなどの再生繊維、アセテートなどの半合成繊維、ナイロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等)、ポリアクリロニトルおよびポリ塩化ビニルなどの合成繊維などが適用できる。
【0044】
また、本発明の捲縮糸の用途としては、家庭用やオフィス向けのカーペットはもちろんのこと、自動車用の内装資材にも好適である。その中でも、高い耐摩耗性と耐ヘタリ性が要求される自動車用のラインマットやオプションマット用として好適である。
【0045】
次に、本発明の捲縮糸の製造方法について説明する。
【0046】
本発明の捲縮糸の製造方法は、ポリ乳酸ポリマ(A)、ポリアミドポリマ(B)および無機粒子(C)を混合し溶融混練して紡糸パックに導いた後、スリット比7以上の異形口金から紡出することを特徴とする。溶融混練する際にさらに着色剤(D)を混合することが好ましい。
【0047】
スリット比とは、異形口金におけるスリット長とスリット幅から、(スリット長/スリット幅)で表されるが、スリット比を7以上、好ましくは10以上にすることによって、本発明の異形度2.5以上の捲縮糸を得ることができる。
【0048】
本発明では、紡糸パック内で濾過精度が5〜30μmのフィルターを通過させることが好ましく、濾過精度が5〜20μmのフィルターを通過させることがより好ましい。なおフィルターの濾過精度は、JIS規格B8356−1976によりフィルターメディアを透過した最大ガラスビーズ粒径より測定されるものである。これによって、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)の混練状態が高まり、さらに無機粒子(C)の凝集を抑制するため、糸切れや毛羽等を抑制することができる。さらに得られる捲縮糸におけるポリ乳酸ポリマ(A)の島のドメインサイズを0.01〜0.5μmとすることができる。合成繊維中の島成分のドメインサイズの測定方法としては例えば、合成繊維から繊維軸と垂直の方向に超薄切片を切り出し、該切片のポリアミド成分をリンタングステン酸にて金属染色し、透過型電子顕微鏡(TEM)(日立社製H−7100FA型)にて4万倍でブレンド状態を観察・撮影し、この画像を三谷商事(株)の画像解析ソフト「WinROOF」を用い、島ドメイン(非染色部)を円と仮定し、その面積から直径(直径概算)を算出する方法が挙げられる。測定数は1試料あたり100個とし、その分布を島成分のドメインサイズとする方法が挙げられる。
【0049】
フィルターが5μm未満であれば、無機粒子(C)やポリマ中の異物によって、フィルターが目詰まりを起こし、またフィルターが30μmを超えるとポリマーの混練状態が悪化してしまう。
【0050】
一方で、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のような非相溶系のポリマーブレンドにおいては、ポリマの分散性が高く、口金の異形度が高いほど紡出直後にポリマが孔の大きさよりも膨らむ現象(バラス)が起こりやすいため、紡糸ドラフトを30〜250とすることが好ましく、30〜170とすることがより好ましい。
【0051】
ここで、紡糸ドラフトとは、口金面でのポリマ速度(V0)と紡出後の最初のローラ(第1ローラ)の速度(V1)から、(V1/V0)で表されるが、紡糸ドラフトが30未満では生産性が不十分であり、また、紡糸ドラフトが250を超えると吐出ポリマの細化スピードが速すぎるため、吐出直後にポリマが切断される現象(ドリップ)が生じ、安定吐出が困難となる。
【0052】
本発明の捲縮糸の具体的な製造方法としては、特に限定されるものではないが、例えば以下の様な方法を採用することができる。
【0053】
すなわち、ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)および着色するためのマスターチップを別々に計量したあと混合し、エクストルーダー型紡糸機を用いて230〜240℃で溶融混練しながら紡糸する。溶融したポリマをエクストルーダーと紡糸パック間のポリマ配管、およびあるいは紡糸パック中に組み込んだ静的混練装置(”スタティクミキサ−”や”ハイミキサ−”)を通して更に混練する。特に好ましいのは、紡糸直前に混練することであり、そのためには紡糸パック内に静的混練装置を組み込むことである。静的混練装置の混合器は2以上、好ましくは3〜10ユニット有するものが好ましい。更に、紡糸直前の混練として、濾過精度が5〜30μmの金属不織布フィルターを通すことが好ましく、濾過精度が5〜20μmの金属不織布フィルターを通すことがより好ましい。
【0054】
紡糸温度はポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)との融点を考慮して決めるが、ポリアミドポリマ(B)の融点が180〜230℃であれば、ポリ乳酸ポリマ(A)に比較的近似しているため、有利である。紡糸温度は、ポリアミドポリマ(B)の融点+5〜40℃に設定することが好ましい。
【0055】
溶融紡糸され、冷却固化された糸条は、延伸、熱処理される。延伸は、1段または2段の多段熱延伸法が採用される。補助的に延伸点を固定したり、熱処理を目的として、スチーム処理装置などを併用することも可能である。捲縮加工を効果的に行うため、分子鎖は適度な配向と結晶化をさせておくことが必要である。延伸倍率は、紡糸速度、冷却条件等、未延伸糸の配向・結晶化度の程度によって変更するが、通常は2〜4倍の範囲で延伸する。熱延伸の温度は、150〜190℃が好ましい。
【0056】
次に、上記熱延伸糸は連続して、あるいは一旦巻き取った後捲縮加工を行う。捲縮加工は、捲縮付与装置を通して加熱流体加工処理することによって行われる。本発明のポリ乳酸とポリアミドのブレンドポリマ捲縮糸は、通常、該捲縮加工ノズルを有するジェットノズル方式で捲縮加工され、ニ−ドル内を通過する糸条に周囲から加熱蒸気等の高圧の高温流体を接触させ、大気中に放出し冷却することで捲縮を付与する。該加熱蒸気の温度は150〜280℃、好ましくは、180〜250℃であり、飽和蒸気、過熱蒸気、又は加熱空気が用いられる。
【0057】
更に、捲縮を固定する目的で、捲縮ノズルを通過した捲縮糸に冷風を吹きつけたり、内部に吸引するロータリーフィルタの表面に捲縮糸を堆積させて冷却する方法等も採用される。
【0058】
捲縮加工された捲縮糸は適度なストレッチを与えて、捲縮を一部潜在化させた後、巻き取り機で巻き取る。捲縮糸は巻き取り前に集束性を付与するため交絡処理を与えることもある。
【0059】
本発明の捲縮糸を用いたカーペットの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば次のような方法が採用できる。
【0060】
本発明の捲縮糸をフェースヤーンとし、通常のタフト装置を用いてカーペットを製造する。一般には、目付を300〜2000g/m、パイル高さを3.0〜8.0mmの範囲とした場合に、タフトが容易で、かつ風合い、ボリューム感にもすぐれたカーペットとなる。
【0061】
タフトされたカ−ペットは、公知の方法により染色およびバッキングが行われる。染色は連続染色、ウィンス染色、あるいはロ−プ染色等、いずれも可能である。勿論、原着捲縮糸を用いたカ−ペットは染色することなく、バッキングすることができる。
【実施例】
【0062】
以下、本発明について実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何等限定されるものではない。なお、実施例中の各測定値の測定方法は以下の通りである。
【0063】
(1)ポリ乳酸の重量平均分子量
試料のクロロホルム溶液にテトラヒドロフランを混合し測定溶液とした。これをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(ウォーターズ社製 GPC−150C)で測定し、ポリスチレン換算で重量平均分子量Mwおよび数平均分子量Mn、さらに分散度Mw/Mnを求めた。
【0064】
(2)ポリアミドの相対粘度
試料0.25gを98%硫酸25mlに溶解し、オストワルド粘度計を用いていて25℃で測定した。相対粘度はポリマ溶液と硫酸の落下秒数の比から求めた。
【0065】
(3)融点(Tm)
Perkin−Elmer社製DSC−7型の示差走査型熱量計を用いて測定した。サンプル量20mg、昇温速度10℃/分で測定し、融解吸熱曲線のピ−ク温度を融点とした。
【0066】
(4)スリット比
異形口金において、次式により算出した。
スリット比=スリット長/スリット幅
【0067】
(5)単孔吐出量
1分間辺りの総吐出量Q(g/分)、孔数n、ポリマー密度ρ(g/cm)から、次式により算出した。
【0068】
なお、ポリマー密度は、ポリ乳酸ポリマを1.1g/cm、ポリアミドポリマを1.0g/cmとして、その比率により算出した。
単孔吐出量q(cm/分)=Q/nρ
【0069】
(6)単孔面積
Y型孔において、スリット長A(mm)とスリット幅B(mm)から、次式により算出した。
単孔面積S(mm)=3AB+(31/2/4)
【0070】
(7)ポリマ速度
口金面でのポリマ速度V0(m/分)について、単孔吐出量q(cm/分)と単孔面積S(mm)から次式により算出した。
ポリマ速度V0(m/分)=(q/S)
【0071】
(8)紡糸ドラフト
ポリマ速度V0(m/分)と紡出後の最初のローラ(第1ローラ)の速度V1(m/分)から次式により算出した。
紡糸ドラフト=V1/V0
【0072】
(9)総繊度
JIS L 1013(1999) 8.3.1正量繊度 b)B法に従って、初荷重として0.882mN/dtex、公定水分率をポリ乳酸は0.5%、ポリアミドは4.5%を用いて、JIS L 0105 3.1(1)絶乾混用率から算出する場合を使用して測定した。
【0073】
(10)単糸繊度
総繊度をフィラメント数で除して求めた。
【0074】
(11)異形度
フィラメントを繊維軸に垂直な方向に切断し、その断面を光学顕微鏡(キーエンス社製VH−6300型)を用い200倍で撮影した。写真から20点の断面を選び、外接円の直径D、内接円の直径dをそれぞれ測定し次式により算出した、その平均値を変形度とした。
異形度=D/d
【0075】
(12)強度、伸度
試料をオリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013 8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。この時の掴み間隔は25cm、引張り速度は30cm/分、試験回数10回であった。なお、破断伸度はS−S曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
【0076】
(13)捲縮伸長率
捲縮糸を巻き取り後、チーズ形状で20℃、相対湿度65%の雰囲気中に、20時間以上放置した後、かせ取りで24時間放置後、沸騰水中で浸漬処理したときの捲縮伸長率を示し、具体的には以下の方法で測定した値をいう。
【0077】
すなわち、測定しようとする捲縮糸を、無荷重状態で沸騰水に20分間浸漬処理した後乾燥して平衡水分率となし、この試料に1.8mg/dtexの初荷重をかけて30秒経過の後に測定した試料長50cm(L3)にマーキングを施し、次いで同試料に91mg/dtexの定荷重をかけ、30秒経過後の伸び(L4)を測定して、前記(L3)および(L4)の値から、式[(L4−L3)/L3]×100として計算することにより得た値をいう。
【0078】
(14)製糸性
第4ローラ上に、毛羽を検知するためのショックセンサーを設け、1分間あたりの毛羽検知回数を測定した。また、製造工程において1日あたりの糸切れ回数も製糸性の指標とし、次の通り判定した。
◎:毛羽0〜2回/分、糸切れ0回/日
○:毛羽0〜2回/分、糸切れ1〜2回/日
△:毛羽3〜4回/分、糸切れ1〜2回/日
×:毛羽5回以上/分、糸切れ3回以上/日
【0079】
(15)目付
JIS L1021(1999)7.3.1に規定の方法で測定した。
【0080】
(16)カーペットの耐摩耗性
カーペットから直径120mmの試験片を切り出し、ASTM D1175に規定されるテーバー摩耗試験機に取り付け、摩耗輪CS#10、荷重500gとして、500回転摩耗を行った。その後、この試験片の表面摩耗状態を観察し、次の指標で耐摩耗性を評価した。
◎:全く摩耗していない。
○:殆ど摩耗していない。
×:全体的に摩耗している。
【0081】
(17)カーペットの光沢斑、色斑
光沢や色調の均一性の観点から、次の指標で官能評価を実施した。試験者は10名で、その平均値から光沢斑および色調を評価した。
◎:特に良い
○:良い
×:悪い
【0082】
(18)カーペットの踏み応え、風合い
カーペットを踏んだときのボリューム感やキシミ感の観点から、次の指標で官能評価を実施した。試験者は10名で、その平均値から踏み応えおよび風合いを評価した。
◎:特に良い
○:良い
×:悪い
【0083】
(19)染色
カーペットを作製した際の染色の有無を示す。溶融紡糸時に着色剤(D)を添加した捲縮糸を用いて作製したカーペットについては、染色をする必要が無いため強度低下や捲縮特性の低下が無く、耐摩耗性が有利である。
【0084】
[実施例1]
重量平均分子量20万のポリ乳酸ポリマ(A)(ネイチャーワークス社製6400D)30.1重量部と、相対粘度2.15、融点225℃のポリアミドポリマ(B)(当社製低粘度ポリアミドポリマT−100L)69.9重量部、および無機粒子(C)(酸化チタン(当社製低粘度ポリアミドポリマT−100Lをベースポリマとして、これに酸化チタンを練り込んだマスターチップ(大日本インキ化学工業(株)社製NylonWhite9774))を使用、酸化チタンとして0.3重量部)0.3重量部を計量器で連続的に計量しながら、240℃の2軸エクストルーダー式押出機に連続的に供給し連続的に溶融した。溶融ポリマを230℃の配管を通じて8段のスタティックミキサーで混練し、ギヤポンプにて総繊度が1450dtexとなるように計量した後、230℃の紡糸パックに導き、パック内では濾過精度が15μmのフィルターを通過させ、スリット長1.2mm、スリット幅0.16mmのY型孔が96個開けられた口金より押し出した(1分間辺りの総吐出量260g/分、単糸繊度15.1dtex)。
【0085】
紡出糸条を、ユニフロー型チムニーにて冷却固化させた後、油剤ローラにて油剤を付与した。油剤を付与した糸条を674m/分の表面速度を有する第1ローラ(非加熱)で巻き取った後、連続して延伸工程に供した。第1ローラを通過した糸条を速度684m/分の第2ローラ(65℃)、速度1847m/分の第3ローラ(110℃)、速度2158m/分の第4ローラ(160℃)に連続して供することで延伸を行い、引き続いて、捲縮ノズル(ノズル温度220℃、ノズル圧力0.9MPa)にて蒸気による流体捲縮加工を行った。その後63m/分のロータリーフィルタで冷却し、1792m/分で巻き取ることにより捲縮糸を得た。製糸性は良好であり、製糸試験後の延伸ローラにポリマの融着はなかった。
【0086】
得られた捲縮糸を目付400g/m、パイル高さ4.0mmでタフト加工し、カットパイルからなるカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0087】
[実施例2]
ポリ乳酸ポリマ(A)30.3重量部、ポリアミドポリマ(B)を69.7重量部、無機粒子(C)(酸化チタン)1重量部とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0088】
[実施例3]
スリット長1.4mm、スリット幅0.13mmのY型孔が96個開けられた口金を用いて異形度を3.4とした以外は実施例2と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例2と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0089】
[実施例4]
原着捲縮糸とするために、ポリ乳酸ポリマ(A)30.5重量部、ポリアミドポリマ(B)を69.5重量部、無機粒子(C)(酸化チタン)1重量部、着色剤(D)(当社製低粘度ポリアミドポリマT−100Lをベースポリマとして、これに着色剤(D)を練り込んだマスターチップ(大日本インキ化学工業(株)社製NylonIvoly3836)を使用、着色剤(D)として0.5重量部)0.5重量部とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0090】
[実施例5]
スリット長1.4mm、スリット幅0.13mmのY型孔が96個開けられた口金を用いて異形度を3.4とした以外は実施例4と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例4と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0091】
[実施例6]
Y型孔が136個開けられた口金を用いた以外は実施例4と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例4と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0092】
[実施例7]
Y型孔が54個開けられた口金を用いた以外は実施例4と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例4と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0093】
[実施例8]
濾過精度が25μmのフィルターを用いた以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0094】
[実施例9]
濾過精度が40μmのフィルターを用いた以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0095】
[実施例10]
第1ローラ速度を1250m/分、第2ローラ速度を1269m/分に変更したこと以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0096】
[実施例11]
Y型孔が136個開けられた口金を用いた以外は実施例10と同様にして捲縮糸を得た。捲縮糸の製糸性を表1に示す。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例10と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表1に示す。
【0097】
【表1】

【0098】
[比較例1]
スリット長0.8mm、スリット幅0.16mmのY型孔が96個開けられた口金を用いて異形度を2.1とし、また、無機粒子(C)(酸化チタン)を添加せず、ポリ乳酸ポリマ(A)70重量部、ポリアミドポリマ(B)を30重量部とした以外は実施例1と同様にした。製糸性は実施例1対比劣位であり、第4ローラ160℃では、ローラにポリマが融着して、糸切れが頻発したため、安定製糸可能な温度(140℃)まで下げざるを得なかった。ローラの融着物は、DSCの結果、ポリ乳酸であることがわかった。このことから、ポリ乳酸ポリマとポリアミドポリマの重量比が70:30では、均一ブレンドが不十分で、ポリ乳酸成分が一部繊維表面に露出していることが推定される。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表2に示す。
【0099】
[比較例2]
スリット長1.0mm、スリット幅0.16mmのY型孔が96個開けられた口金を用いて異形度を2.3とし、無機粒子(C)(酸化チタン)を添加せず、ポリ乳酸ポリマ(A)30重量部、ポリアミドポリマ(B)を70重量部とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表2に示す。
【0100】
[比較例3]
スリット長1.0mm、スリット幅0.16mmのY型孔が96個開けられた口金を用いて異形度を2.3とした以外は実施例2と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例2と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表2に示す。
【0101】
[比較例4]
ポリ乳酸ポリマ(A)70重量部、ポリアミドポリマ(B)を30重量部、無機粒子(C)(酸化チタン)1重量部とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表2に示す。
【0102】
[比較例5]
無機粒子(C)(酸化チタン)を添加せず、ポリ乳酸ポリマ(A)30重量部、ポリアミドポリマ(B)を70重量部とした以外は実施例1と同様にして捲縮糸を得た。さらに得られた捲縮糸を用いて実施例1と同様にしてカーペットを作製した。捲縮糸およびそれを用いたカーペットの特性を表2に示す。
【0103】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンド比率(A)/(B)が、重量比で50/50〜10/90であるブレンドポリマ100重量部に対して無機粒子(C)を0.2〜3.0重量部含有しており、かつ異形度が2.5以上であることを特徴とする捲縮糸。
【請求項2】
ポリ乳酸ポリマ(A)とポリアミドポリマ(B)のブレンドポリマ100重量部に対し、さらに着色剤(D)を0.01〜3.0重量部含有していることを特徴とする請求項1記載の捲縮糸。
【請求項3】
総繊度が500〜3000dtex、単糸繊度が5〜50dtexであることを特徴とする請求項1または2記載の捲縮糸。
【請求項4】
ポリ乳酸ポリマ(A)、ポリアミドポリマ(B)および無機粒子(C)を混合し溶融混練して紡糸パックに導いた後、スリット比7以上の異形口金から紡出することを特徴とする請求項1または3記載の捲縮糸の製造方法。
【請求項5】
ポリ乳酸ポリマ(A)、ポリアミドポリマ(B)、無機粒子(C)および着色剤(D)を混合し溶融混練して紡糸パックに導いた後、スリット比7以上の異形口金から紡出することを特徴とする請求項2または3記載の捲縮糸の製造方法。
【請求項6】
紡糸パック内で濾過精度が5〜30μmのフィルターを通過させることを特徴とする請求項4または5記載の捲縮糸の製造方法。
【請求項7】
紡糸ドラフトが30〜250であることを特徴とする請求項4〜6のいずれか記載の捲縮糸の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜3のいずれか記載の捲縮糸を用いたカ−ペット。

【公開番号】特開2008−81911(P2008−81911A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−33451(P2007−33451)
【出願日】平成19年2月14日(2007.2.14)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】