説明

捺染用インクジェット記録方法、インクおよびプリント物

【課題】本発明の目的は、印画中に目詰まりすることなく、目詰まり発生を抑えることで安定出射でき、なおかつ発色後の色むらの少ない捺染物を得ることが出来、歩留まり、生産効率の向上にもつながる、捺染用インクジェット記録方法、それに用いられるインクおよび得られたプリント物を提供することにある。
【解決手段】記録媒体表面処理剤で処理された記録媒体に、少なくとも色材と水とキレート剤を含むインクを用いて記録するインクジェット記録方法であり、1m2当りの記録媒体表面処理剤中の多価金属イオン量(A)mol/m2と打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2とがA>Bであり、かつ記録媒体に記録後発色し洗浄する工程を含むことを特徴とする捺染用インクジェット記録方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、捺染用インクジェット記録方法、それに用いられるインクおよび得られたプリント物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、捺染の分野において、納期短縮、少量多品種生産対応として、製版工程が必要ないインクジェット捺染方式が望まれている。
【0003】
インクジェット捺染では、通常捺染時、細いノズルからインクを出射するため、染料の析出等が起因の目詰まりに細心の注意を払っている。目詰まりを予防するため、染料析出の引き金となる多価金属イオンをマスキングする方法が提案されており、インク中にキレート剤を添加することが提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。しかしながらこの技術は、多価金属イオンのマスキング効果はあるものの、染料析出には効果が無く、また染色ムラの改良はなされていない。
【0004】
また印画紙表面に多価金属イオンを含有させる技術が提案されているが(例えば、特許文献3参照)、高湿下でのにじみを防止するためのものであって、染料の発色ムラに効果はない。
【特許文献1】特開昭60−93218号公報
【特許文献2】欧州特許第0834538号明細書
【特許文献3】特開2005−255898号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、本発明の目的は、印画中に目詰まりすることなく、目詰まり発生を抑えることで安定出射でき、なおかつ発色後の色むらの少ない捺染物を得ることが出来、歩留まり、生産効率の向上にもつながる、捺染用インクジェット記録方法、それに用いられるインクおよび得られたプリント物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
【0007】
1.記録媒体表面処理剤で処理された記録媒体に、少なくとも色材と水とキレート剤を含むインクを用いて記録するインクジェット記録方法であり、1m2当りの記録媒体表面処理剤中の多価金属イオン量(A)mol/m2と打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2とがA>Bであり、かつ記録媒体に記録後発色し洗浄する工程を含むことを特徴とする捺染用インクジェット記録方法。
【0008】
2.前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-7〜1×10-3mol/gであることを特徴とする1に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【0009】
3.前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-6〜1×10-4mol/gであることを特徴とする1に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【0010】
4.前記色材が水溶性染料であることを特徴とする1〜3のいずれか1項に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【0011】
5.前記色材が反応性染料であることを特徴とする4に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【0012】
6.記録媒体表面処理剤で処理された記録媒体に、インクを用いて記録するインクジェット記録方法であり、1m2当りの記録媒体表面処理剤中の多価金属イオン量(A)mol/m2と打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2とがA>Bであり、かつ記録媒体に記録後発色し洗浄する工程を含む捺染用インクジェット記録方法に用いられる少なくとも色材と水とキレート剤を含むことを特徴とするインク。
【0013】
7.前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-7〜1×10-3mol/gであることを特徴とする6に記載のインク。
【0014】
8.前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-6〜1×10-4mol/gであることを特徴とする6に記載のインク。
【0015】
9.前記色材が水溶性染料であることを特徴とする6〜8のいずれか1項に記載のインク。
【0016】
10.前記色材が反応性染料であることを特徴とする9に記載のインク。
【0017】
11.記録媒体表面処理剤で処理された記録媒体に、少なくとも色材と水とキレート剤を含むインクを用いて記録するインクジェット記録方法で得られたプリント物であり、1m2当りの記録媒体表面処理剤中の多価金属イオン量(A)mol/m2と打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2とがA>Bであり、かつ記録媒体に記録後発色し洗浄する工程を含む捺染用インクジェット記録方法で得られたことを特徴とするプリント物。
【0018】
12.前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-7〜1×10-3mol/gであることを特徴とする11に記載のプリント物。
【0019】
13.前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-6〜1×10-4mol/gであることを特徴とする11に記載のプリント物。
【0020】
14.前記色材が水溶性染料であることを特徴とする11〜13のいずれか1項に記載のプリント物。
【0021】
15.前記色材が反応性染料であることを特徴とする14に記載のプリント物。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、印画中に目詰まりすることなく、目詰まり発生を抑えることで安定出射でき、なおかつ発色後の色むらの少ない捺染物を得ることが出来、歩留まり、生産効率の向上にもつながる、捺染用インクジェット記録方法、それに用いられるインクおよび得られたプリント物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0025】
本発明は、インク中に含まれるキレート剤の量と、布帛前処理剤中にある多価金属イオン量とを制御することで、即ち、多価金属イオンを全てマスキングせずに残留させることで、発色時の染料の染め足を揃えることである。染め足とは染料が布帛に固着するまでの時間である。「足の速い」染料とは、繊維との結合力が強く、結合すると離れにくいという性質をいい、一度むらづきすると直りにくく,染めむらの発生しやすい染料でもある。
【0026】
一方、足の「遅い」染料は、足の「速い」染料とは逆に、繊維との結合力が弱いため移動しやすく、むらづきしても染めむらになりにくい。
【0027】
染着の際に無機イオンが存在すると染着速度が遅くなる傾向がある。その性質を利用し本発明に至った。
【0028】
布帛上に打ち込まれたインク中の多価金属イオン量(mol/m2)は、インク中の多価金属イオン濃度(mol/g)と出力解像度(dpi(dpiとは、2.54cm当たりのドット数を表す。))で決まる。たとえば高精細な出力を行なう場合は高画質モードの900dpi×540dpiに、スピードを重視する場合は画質を落としてたとえば540dpi×360dpiに設定したりという具合に調整を行なう。
【0029】
本発明においては、インク中のキレート剤の含有量が1×10-7〜1×10-3mol/gであることが好ましく、1×10-6〜1×10-4mol/gであることがより好ましい。
【0030】
インク中のキレート剤の含有量が1×10-7mol/gより少ないと、布帛側の多価金属イオンを全てマスキングすることは無いが、インク中に混入する多価金属イオンを十分にマスキングすることが出来ないため、ヘッド内で析出が起こり不安定出射となってしまう懸念がある。一方、1×10-3mol/gよりも多いと布帛側の多価金属イオンを全てマスキングしてしまい、染めむらが生じやすい状態となる懸念がある。本発明において、インク中のキレート剤の含有量は、好ましくは1×10-6〜1×10-4mol/gであればキレート剤添加による染料の溶解度を妨げることなく析出を抑えられてより好ましい。
【0031】
酸性インクと反応性インクを比べると、酸性インクのほうが染め足が遅い。そのため、染め足の速い反応性インクに対してのほうが本発明の効果がより高くなる。
【0032】
多価金属イオンは、多価金属塩の形で添加されるのが好ましい。アニオンとしては特に限定されないが、例えば、塩化物、硫化物、水酸化物などが用いられる。有機物との塩を用いても良く、また、添加後に分解し、溶解するような酸化物でもかまわない。
【0033】
本発明で好ましく用いられる多価金属塩の具体的な化合物例を以下に示すが、特にこれらの塩に限定されるものではない。
【0034】
例えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化マグネシウム、酢酸マグネシウム、臭化マグネシウム、ギ酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化チタン、ヨウ化チタン、塩化アルミニウム、酸化アルミニウム、臭化アルミニウム、ヨウ化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化亜鉛、臭化亜鉛、塩化鉄、塩化コバルト、塩化ニッケル、塩化銅等が挙げられる。中でも、好ましくは各多価金属の塩化物である。
【0035】
本発明においてキレート剤としては、具体例としては、二つの酸性基をもった配位子として、例えば、マロン酸、シュウ酸、フタル酸、グリコール酸、サリチル酸がある。一つの酸性基と一つの非酸性配位基をもった配位子として、例えば、8−キノリノール、アセチルアセトン、トリフルオロアセトン、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、サリチルアルデヒドがある。二つの非酸性配位基をもった配位子として、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン、1,10−フェナントロリンがある。アミノポリカルボン酸としてエチレンジアミン四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、ブチレンジアミン四酢酸、ペンチレンジアミン四酢酸及びこれらのナトリウム塩又はアンモニウム塩等が挙げられる。
【0036】
そして、本発明で好ましく用いられるキレート剤としては、市販のよく知られているキレート剤でよく、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、エチレンジアミンジオルトヒドロキシフェニル酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、ニトリロ三酢酸、ヒドロキシエチレンジアミン三酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミン二プロピオン酸、イミノ二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、トランスシクロヘキサンジアミン四酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、エチレンジアミンテトラキスメチレンホスホン酸、ニトリロトリメチレンホスホン酸、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、1,1−ジホスホノエタン−2−カルボン酸、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸、1−ヒドロキシ−1−ホスホノプロパン−1,2,3−トリカルボン酸、カテコール−3,5−ジホスホン酸、ピロリン酸、テトラポリリン酸、ヘキサメタリン酸及びこれらの金属塩、有機塩基塩等が挙げられ、特に好ましくはエチレンジアミンテトラ酢酸四ナトリウム、エチレンジアミンテトラ酢酸二ナトリウム、ジエチレントリアミンペンタ酢酸、ニトリロ三酢酸等である。
【0037】
本発明に用いられる色材について述べる。
【0038】
本発明に好ましい分散染料として、
C.I.Disperse Yellow 3,4,5,7,9,13,23,24,30,33,34,42,44,49,50,51,54,56,58,60,63,64,66,68,71,74,76,79,82,83,85,86,88,90,91,93,98,99,100,104,108,114,116,118,119,122,124,126,135,140,141,149,160,162,163,164,165,179,180,182,183,184,186,192,198,199,202,204,210,211,215,216,218,224,227,231,232;
C.I.Disperse Orange 1,3,5,7,11,13,17,20,21,25,29,30,31,32,33,37,38,42,43,44,45,47,48,49,50,53,54,55,56,57,58,59,61,66,71,73,76,78,80,89,90,91,93,96,97,119,127,130,139,142;
C.I.Disperse Red 1,4,5,7,11,12,13,15,17,27,43,44,50,52,53,54,55,56,58,59,60,65,72,73,74,75,76,78,81,82,86,88,90,91,92,93,96,103,105,106,107,108,110,111,113,117,118,121,122,126,127,128,131,132,134,135,137,143,145,146,151,152,153,154,157,159,164,167,169,177,179,181,183,184,185,188,189,190,191,192,200,201,202,203,205,206,207,210,221,224,225,227,229,239,240,257,258,277,278,279,281,288,298,302,303,310,311,312,320,324,328;
C.I.Disperse Violet 1,4,8,23,26,27,28,31,33,35,36,38,40,43,46,48,50,51,52,56,57,59,61,63,69,77;
C.I.Disperse Green 9;
C.I.Disperse Brown 1,2,4,9,13,19;、
C.I.Disperse Blue 3,7,9,14,16,19,20,26,27,35,43,44,54,55,56,58,60,62,64,710,72,73,75,79,81,82,83,87,91,93,94,95,96,102,106,108,112,113,115,118,120,122,125,128,130,139,141,142,143,146,148,149,153,154,158,165,167,171,173,174,176,181,183,185,186,187,189,197,198,200,201,205,207,211,214,224,225,257,259,267,268,270,284,285,287,288,291,293,295,297,301,315,330,333;
C.I.Disperse Black 1,3,10,24;等が挙げられる。
【0039】
本発明に好ましい反応性染料として、
C.I.Reactive Yellow 2,3,7,15,17,18,22,23,24,25,27,37,39,42,57,69,76,81,84,85,86,87,92,95,102,105,111,125,135,136,137,142,143,145,151,160,161,165,167,168,175,176;
C.I.Reactive Orange 1,4,5,7,11,12,13,15,16,20,30,35,56,64,67,69,70,72,74,82,84,86,87,91,92,93,95,107;
C.I.Reactive Red 2,3,3:1,5,8,11,21,22,23,24,28,29,31,33,35,43,45,49,55,56,58,65,66,78,83,84,106,111,112,113,114,116,120,123,124,128,130,136,141,147,158,159,171,174,180,183,184,187,190,193,194,195,198,218,220,222,223,228,235;
C.I.Reactive Violet 1,2,4,5,6,22,23,33,36,38;
C.I.Reactive Blue 2,3,4,7,13,14,15,19,21,25,27,28,29,38,39,41,49,50,52,63,69,71,72,77,79,89,104,109,112,113,114,116,119,120,122,137,140,143,147,160,161,162,163,168,171,176,182,184,191,194,195,198,203,204,207,209,211,214,220,221,222,231,235,236;
C.I.Reactive Green 8,12,15,19,21;、
C.I.Reactive Brown 2,7,9,10,11,17,18,19,21,23,31,37,43,46;
C.I.Reactive Black 5,8,13,14,31,34,39;、等が挙げられる。
【0040】
本発明に好ましい酸性染料として、
C.I.Acid Yellow 1,3,11,17,18,19,23,25,36,38,40,40:1,42,44,49,59,59:1,61,65,67,72,73,79,99,104,159,169,176,184,193,200,204,207,215,219219:1,220,230,232,235,241,242,246;
C.I.Acid Orange 3,7,8,10,19,24,51,51S,56,67,74,80,86,87,88,89,94,95,107,108,116,122,127,140,142,144,149,152,156,162,166,168;
C.I.Acid Red 1,6,8,9,13,18,27,35,37,52,54,57,73,82,88,97,97:1,106,111,114,118,119,127,131,138,143,145,151,183,195,198,211,215,217,225,226,249,251,254,256,257,260,261,265,266,274,276,277,289,296,299,315,318,336,337,357,359,361,362,364,366,399,407,415;
C.I.Acid Vioret 17,19,21,42,43,47,48,49,54,66,78,90,97,102,109,126;、
C.I.Acid Blue 1,7,9,15,23,25,40,61:1,62,72,74,80,83,90,92,103,104,112,113,114,120,127,127:1,128,129,138,140,142,156,158,171,182,185,193,199,201,203,204,205,207,209,220,221,224,225,229,230,239,258,260,264,277:1,278,279,280,284,290,296,298,300,317,324,333,335,338,342,350;
C.I.Acid Green 9,12,16,19,20,25,27,28,40,43,56,73,81,84,104,108,109;
C.I.Acid Brown 2,4,13,14,19,28,44,123,224,226,227,248,282,283,289,294,297,298,301,355,357,413;
C.I.Acid Black 1,2,3,24,24:1,26,31,50,52,52:1,58,60,63,63S,107,109,112,119,132,140,155,172,187,188,194,207,222;等が挙げられる。
【0041】
本発明の好ましい直接染料として、
C.I.Direct Yellow 8,9,10,11,12,22,27,28,39,44,50,58,86,87,98,105,106,130,137,142,147,153;
C.I.Direct Orange 6,26,27,34,39,40,46,102,105,107,118、
C.I.Direct Red 2,4,9,23,24,31,54,62,69,79,80,81,83,84,89,95,212,224,225,226,227,239,242,243,254;
C.I.Direct Violet 9,35,51,66,94,95;、
C.I.Direct Blue 1,15,71,76,77,78,80,86,87,90,98,106,108,160,168,189,192,193,199,200,201,202,203,218,225,229,237,244,248,251,270,273,274,290,291;
C.I.Direct Green 26,28,59,80,85;
C.I.Direct Brown 44,44:1,106,115,195,209,210,212:1,222,223;
C.I.Direct Black 17,19,22,32,51,62,108,112,113,117,118,132,146,154,159,169;等が挙げられる。
【0042】
本発明のインクに用いられる溶媒としては、水性液媒体が好ましく用いられ、前記水性液媒体としては、水及び水溶性有機溶剤等の混合溶媒が更に好ましく用いられる。好ましく用いられる水溶性有機溶剤の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0043】
添加物としては公知の、無機塩、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤、ヒドロトロープ剤、分散剤、均染剤、濃染剤等を必要に応じて添加すればよい。
【0044】
インクの粘度や染料を安定に保つため発色をよくするために、インク中に無機塩を添加してもかまわない。
【0045】
無機塩としてはたとえば塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、塩化マグネシウム、硫化マグネシウム等が挙げられる。本発明を実施する場合、これらに限定されるものではない。
【0046】
界面活性剤として、陽イオン性、陰イオン性、両性、非イオン性のいずれも用いることが出来る。
【0047】
陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0048】
陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N−アシル−N−メチルグリシン塩、N−アシル−N−メチル−β−アラニン塩、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、N−アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0049】
両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
【0050】
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(たとえばエマルゲン911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(たとえばニューポールPE−62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0051】
これらの界面活性剤を使用する場合、単独又は2種類以上を混合して用いることが出来、インク全量に対して、0.001〜1.0質量%の範囲で添加することにより、インクの表面張力を任意に調整することができ好ましい。
【0052】
インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加してもかまわない。
【0053】
防腐剤・防黴剤としては、芳香族ハロゲン化合物(たとえばPreventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(たとえばPROXEL GXL)などが挙げられる。本発明はこれらに限定されるものではない。
【0054】
本発明で使用するインクは、水不溶性の染料の場合は染料、分散剤、湿潤剤、媒体および任意の添加剤を混合し分散機を用いることによって分散することができる。分散機としては従来公知のボールミル、サンドミル、ラインミル、高圧ホモジナイザー等が使用できる。
【0055】
本発明に好ましく用いられる分散剤は、例えば、クレオソート油スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物(たとえばデモールC)、クレゾールスルホン酸ナトリウムと2−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、クレゾールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、フェノールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、β−ナフタリンスルホン酸ナトリウム(たとえばデモールN)とβ−ナフトールスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、リグニンスルホン酸塩(たとえばバニレックスRN)等が挙げられる。
【0056】
分散剤の使用量は、分散染料に対して、20〜200質量%が好ましい。分散剤が少ないと微粒子化や分散安定性が劣り、分散剤が多いと、微粒子化や分散安定性が劣り、粘度が高くなり好ましくない。
【0057】
これらの分散剤は単独で使用してもよいが、併用しても良い。
【0058】
本発明の分散に好ましい湿潤剤とは、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、2−エチルへキシルスルホ琥珀酸ソーダ、アルキルナフタレンスルホン酸ソーダ、フェノールの酸化エチレン付加物、アセチレンジオールの酸化エチレン付加物等である。
【0059】
使用する分散する染料の構造により、分散中に、発泡したり、ゲル化したり、流動性が悪くなる事が有るので、分散剤や湿潤剤は、湿潤能力や微粒子化能力や分散安定性の他、分散時の発泡、分散液のゲル化、分散液の流動性等を考慮して選定する必要がある。
【0060】
上記の要求を全て満たす分散剤は無いので、分散する染料に合わせて、最適な分散剤を選定して、必要に応じて、消泡剤等を添加する必要がある。
【0061】
(布帛)
反応性染料インクの場合、適用される布帛としては、木綿、麻、ビスコース、羊毛、絹、及び、ナイロン等のように反応性染料で染色可能な繊維からなる織布、又は不織布、あるいは、これらの繊維とポリエステル繊維、アセテート繊維、ポリプロピレン繊維、ビニロン繊維等の合成繊維からなる混紡織布、又は、混紡不織布などが挙げられる。これらの織布または不織布は従来公知のものはいずれも使用することができるが、それに加えて、これらの織布または不織布をインクジエツト記録捺染用に予備処理したものでもよい。このような予備処理は、織布を構成する繊維の表面にアルカリ性物質を付与しておくことで発色時に必要なアルカリが供給される。この予備処理は従来の前処理に比べ簡便である。反応性インクを布帛上にしっかり固着させるためには、適度なアルカリ性物質の存在が必要である。
【0062】
酸性染料インクや直接染料インクの場合、適用される布帛は、植物性繊維、動物性繊維、アミド系繊維から主になる布帛である。このような布帛の好ましい例としては、絹または羊毛のような動物性タンパク質繊維、ナイロンなどのポリアミド繊維、またはこれら繊維の少なくとも一つを含んでなる混紡繊維が挙げられる。
【0063】
これら布帛は、インクの適用前に以下のような前処理剤による処理に付されることが好ましい。前処理剤は糊剤を含むものが好ましく、好ましくはグアー、ローカストビーン等の天然ガム類、澱粉類、アルギン酸ソーダ、ふのり等の海草類、ペクチン酸等の植物皮類、メチル繊維素、エチル繊維素、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の繊維素誘導体、焙焼澱粉、アルファ澱粉、カルボキシメチル澱粉、カルボキシエチル澱粉、ヒドロキシエチル澱粉等の加工澱粉、シラツガム系、ローストビーンガム系等の加工天然ガム、アルギン誘導体又、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸エステル等の合成糊、エマルジョン等を含むものが挙げられる。特に、使用する酸性染料との染着性に乏しい糊剤が好適に用いられる。
【0064】
さらに、本発明によるインクが適用される布帛の前処理剤には、ヒドロトロピー剤が添加されることが好ましい。ヒドロトロピー剤としては、尿素、ジメチル尿素、チオ尿素、モノメチルチオ尿素、ジメチルチオ尿素等のアルキル尿素が挙げられる。ヒドロトロピー剤の添加により、印捺濃度を向上できるとの利点が得られる。また、尿素、アルキル尿素、およびチオ尿素とを組み合わせて添加することにより、その添加量を減らすことができる。ヒドロトロピー剤の添加によって、前処理剤の安定性の向上が図れ、さらにパッディングされた布帛におけるクラックの発生を有効に防止することが出来る。ヒドロトロピー剤としてチオ尿素の利用が、均染性向上の観点から特に好ましい。また、インクとしてヒドロトロピー剤が添加されたものを用いることにより、前処理剤へのヒドロトロピー剤の添加する量を減らすことができ、場合によっては添加しないことを可能にする。環境に影響を与える尿素の添加量を減らすことが出来ることは好ましいことであると言える。前処理剤へのヒドロトロピー剤の添加量は適宜決定されてよいが、15質量%以下が好ましく、より好ましくは10質量%以下である。
【0065】
また本発明の好ましい態様によれば、前処理剤はpH調整剤を含んでなることが好ましい。pH調整剤の好ましい例としては、酸アンモニウム塩、例えば硫酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、または第二リン酸ソーダが挙げられる。これらのpH調整剤を添加することで、色相の安定化と染着性とを向上させることが出来るとの利点が得られる。これらの添加量は染料種等を考慮して適宜決定されてよいが、0.2〜5質量%程度が好ましく、より好ましくは0.5〜3質量%程度である。
【0066】
分散染料インクの場合、適用される布帛としては、分散染料で染色可能な繊維を含有するものであれば、特に制限はないが、中でも、ポリエステル、アセテート、トリアセテート等の繊維を含有するものが好ましい。その中でも、少なくともポリエステル繊維が含有されている布帛が特に好ましい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。又、本発明で使用し得る布帛としては、分散染料で染色可能な繊維が100%であることが好適であるが、レーヨン、綿、ポリウレタン、アクリル、ナイロン、羊毛及び絹等との混紡織布又は混紡不織布等も捺染用布帛として使用することができる。又、上記の様な布帛を構成する糸の太さとしては、10〜100dの範囲が好ましい。
【0067】
本発明のインクジェット捺染方法において分散染料インクの場合、インクを布帛上でにじませずに鮮明な画像を得ることが重要な技術である。にじみ防止の技術としては、水溶性高分子類を布帛に前処理するなどの公知の方法から繊維素材やインクに適した方法を適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0068】
本発明の分散染料インクでは、水溶性金属塩、ポリカチオン化合物、水溶性高分子、界面活性剤及び撥水剤からなる群から選ばれる少なくとも1つの物質が0.2〜50質量%付与された布帛に対して使用すれば、高度なにじみ防止が可能であり、高精細な画像を布帛にプリントすることができ好ましい。
【0069】
水溶性金属塩としては、KCl、CaCl2などのアルカリ金属またはアルカリ土類金属の無機塩、有機酸塩などを用いることができる。ポリカチオンとしては、各種の4級アンモニウム塩のポリマまたはオリゴマー、ポリアミン塩などを用いることができる。
【0070】
水溶性高分子のひとつである天然水溶性高分子としては、トウモロコシ、小麦等のデンプン類、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチセルロースなどのセルロース誘導体、アルギン酸ナトリウム、グアーガム、タマリンドガム、ローカストビーンガム、アラビアゴムなどの多糖類、ゼラチン、カゼイン、ケラチン等の蛋白質物質、合成水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アクリル酸系ポリマなどを用いることができる。界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系のものが使用され、代表的には、アニオン系の界面活性剤としては、高級アルコール硫酸エステル塩、ナフタレン誘導体のスルホン酸塩等;カチオン系の界面活性剤としては、第4級アンモニウム塩等;両性界面活性剤としては、イミダゾリン誘導体等;ノニオン系の界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、アセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物等;が挙げられる。又、撥水剤としては、例えば、シリコン、フッ素系及びワックス系のものが挙げられる。
【0071】
(塗工方法)
本発明の捺染用インクジェット記録方法においては、にじみ防止効果のため、前記の前処理剤をインク、素材、布帛構造に対応して適宜選択し、布帛中に0.2〜50質量%含有するようにパッド法、コーティング法、スプレー法などで付与せしめるのが好ましい。
【0072】
本発明の捺染用インクジェット記録方法では、上記した染料で染色することが可能な繊維が含有されている布帛上に、先に述べた本発明の構成のインクを用いてインクジェット記録方式で画像を形成した後(インク付与工程)、インクが付与されている布帛を熱処理し(熱処理工程)、更に熱処理された布帛を洗浄すること(洗浄工程)によって布帛への捺染が完了し、捺染物が得られる本発明の捺染、記録方法において、染料を繊維に定着させるには、インクが付与されている布帛を熱処理する方法等により行うが、特に、熱処理に、高温蒸熱法であるHTスチーミング法を用いた場合や、サーモゾル法等を用いた場合に、染料が繊維に良好に染着して本発明の顕著な効果が得られる。又、本発明の捺染、記録方法において、未定着の染料を布帛上から除去する方法に関しては、従来公知の洗浄方法を用いることが出来るが、特に還元洗浄を行うことが好ましい
(発色)
発色工程とは、プリント後布帛表面に付着したのみで、十分布帛に吸着・固着されていないインク中の染料を布帛に吸着・固着させることによりそのインク本来の色相を発現させる工程である。その方法としては、従来公知の方法でよく、例えば、スチーミング法、HTスチーミング法、サーモフイクツス法、アルカリパツドスチーム法、アルカリブロツチスチーム法、アルカリシヨツク法、アルカリコールドフイツクス法等が利用される。それらはプリントする素材、インクなどにより適宜選択される。また、印字された布帛は直ちに加熱処理しても、しばらくおいてから加熱処理しても用途に合わせて乾燥・発色処理すればよく、本発明においてはいずれの方法を用いてもよい。
【0073】
(<洗浄>)
加熱処理後は染着に関与しなかった染料を除去する目的で洗浄を行っても良い。その方法は、プリントする素材、インクにより選択される。例えばセルロース繊維の場合一般的には、水洗、湯洗のあとに非イオン系洗浄剤を含むソーピング浴で処理後、湯洗、水洗を行なう。洗浄後には乾燥を行っても良い。洗浄した布帛を絞ったり脱水した後、干したりあるいは乾燥機、ヒートロール、アイロン等を使用して乾燥させる。
【実施例】
【0074】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。尚、特に断りない限り、実施例中の「部」は「質量部」を示す。また、実施例中で「%」は、特に断りのない限り質量%を表す。
【0075】
実施例1
《分散染料分散液の作製》
(イエロー分散染料分散液の調製)
以下の各添加剤を混合し、0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、イエロー分散染料の含有量が20%の分散染料分散液を調製した。この分散染料分散液に含まれる染料粒子の平均粒径は100nmであった。なお、粒径測定はマルバーン社製ゼータサイザ1000HSにより行った。
【0076】
C.I.ディスパースイエロー149 20部
ジョンクリル61(アクリルスチレン系樹脂分散剤、ジョンソン社製) 10部
グリセリン 15部
イオン交換水 残部
(マゼンタ分散染料分散液、シアン分散染料分散液、の調製)
イエロー分散染料分散液の調製において、イエロー分散染料の代わりにC.I.ディスパースレッド302を用いて、同様にマゼンタ分散染料分散液を作製した。また、イエロー分散染料分散液の調製において、イエロー分散染料の代わりにC.I.ディスパースブルー60を用いて、同様にシアン分散染料分散液を作製した。
【0077】
《分散染料インクのインクセットD1の作製》
以下によりイエローインク、マゼンタインク及びシアンインクを作製した。
【0078】
(イエローインクD1の作製)
イエロー分散染料分散液 30部
グリセリン 7部
ジエチレングリコール 15部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
キレスト−E20(キレスト社製、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸二ナトリウム塩20%水溶液)
(6.3×10-6mol/g)0.7部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、イエローインクD1を得た。
【0079】
(マゼンタインクD1、シアンインクD1の作製)
イエローインクD1の作製において、イエロー分散染料分散液の代わりにマゼンタ分散染料分散液を用い同様にしてマゼンタインクD1を得た。また、イエローインクD1の作製において、イエロー分散染料分散液の代わりにシアン分散染料分散液を用い同様にしてシアンインクD1を得た。これらインクセットをインクセットD1とした。
【0080】
《分散染料インクのインクセットD2の作製》
インクセットD1について、各インクのキレストE−20の0.7部を7部に変えたほかは、同様にして、インクセットD2を作製した。
【0081】
《分散染料インクのインクセットD3の作製》
インクセットD1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.07部に変えたほかは、同様にして、インクセットD3を作製した。
【0082】
《分散染料インクのインクセットD4の作製》
インクセットD1について、各インクのキレストE−20の0.7部をエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物10%(2.2×10-4mol/g)に変えたほかは、同様にして、インクセットD4を作製した。
【0083】
《分散染料インクのインクセットD5の作製》
インクセットD1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.007部に変えたほかは、同様にして、インクセットD5を作製した。
【0084】
《分散染料インクのインクセットD6の作製》
インクセットD1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.0007部に変えたほかは、同様にして、インクセットD6を作製した。
【0085】
《分散染料インクのインクセットD7の作製(比較例)》
インクセットD1について、各インクのキレストE−20の0.7部をエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物26%に変えたほかは、同様にして、インクセットD7を作製した。
【0086】
《評価方法》
(前処理布の作製)
クレープ・デシン(ポリエステル、(株)色染社製)に対して、下記の前処理剤中に塩化カルシウムと硫酸マグネシウム添加し、浸漬付着後、マングルを用いて絞り(絞り率:70%)、40℃24時間乾燥させて前処理布とした。このとき(Ca+Mg)=(3.5×10-3mol/m2)であった。
【0087】
糊剤(CMC、ファインガムSA−M、第一工業製薬社製) 48部
尿素 5部
重炭酸ナトリウム 4部
塩化カルシウム 0.8部
硫酸マグネシウム 0.2部
水 残部
(印字)
上記で作製した各インクセットについて、Nassenger−V(液滴量20ng/drop)にパックにつめたインクを装着し、イエローインクとマゼンタインクの混色(レッド)、マゼンタインクとシアンインクの混色(ブルー)、イエローインクとシアンインクの混色(グリーン)を出力解像度を変えて、上記前処理布に、ベタ印字した。
【0088】
出力解像度は(a)540dpi×360dpi、(b)540dpi×720dpi、(c)900dpi×540dpiである。各解像度のインク打ち込み量を表1に示す。
【0089】
(発色・洗浄)
後、ヒートローラーを用い、195℃1分間にて加熱発色処理を行なった。
【0090】
その後、水道水に東海製油製ハイクリーナCA−10Yを2g/リットルの割合で溶解した洗浄液を用いて、市販の家庭用洗濯機で洗浄を行った。
【0091】
(評価)
〈染めむら〉
下記基準に則り、染めむらを目視観察し、評価した。
◎三色ともむらが無く均一
○1色にわずかにむらがある
△2色にわずかにむらがある
×3色ともむらがある
〈目詰まり(連続出射性)〉
Nassenger−Vを用い、インクを8時間連続出射させ、その出射性を下記基準に則り、目視観察し、目詰まりを評価した。
○:かすれ、濃度低下共になし
△:かすれが若干見られる
×:かすれ発生し、出射不能になる
尚、インクセットD1〜インクセットD7の、「インク中に含有されるキレート剤の量」と「記録媒体に打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/(1)m2」とについて、表2に示す。
【0092】
そして、以上の評価の結果を表3、表4に示す。
【0093】
【表1】

【0094】
【表2】

【0095】
【表3】

【0096】
【表4】

【0097】
表3、表4から、本発明のインクおよびインクセットは、目詰まりを防ぎなおかつ染めむらを起こすことの無い安定した品質の捺染プリントを提供することができることがわかる。
【0098】
《反応性染料インクのインクセットR1の作製》
以下によりインク、及びインクセットを作製した。
【0099】
(マゼンタインクR1の作製)
C.I.リアクティブレッド24 5部
グリセリン 12部
ジエチレングリコール 15部
ジエチレングリコールモノブチルエーテル 2部
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.2部
キレスト−E20 0.7部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンタインクR1を得た。
【0100】
(シアンインクR1、イエローインクR1、の作製)
マゼンタインクR1の作製において、C.I.リアクティブレッド24の代わりにC.I.リアクティブブルー72を用いた他は同様にしてシアンインクR1を得た。またマゼンタインクの作製において、C.I.リアクティブレッド24の代わりにC.I.リアクティブイエロー95を用いた他は同様にしてイエローインクR1を得た。
【0101】
これらインクセットをインクセットR1とした。
【0102】
《反応性染料インクのインクセットR2の作製》
インクセットR1について、各インクのキレストE−20の0.7部を7部に変えたほかは、同様にして、インクセットR2を作製した。
【0103】
《反応性染料インクのインクセットR3の作製》
インクセットR1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.07部に変えたほかは、同様にして、インクセットR3を作製した。
【0104】
《反応性染料インクのインクセットR4の作製》
インクセットR1について、各インクのキレストE−20の0.7部をエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物10%に変えたほかは、同様にして、インクセットR4を作製した。
【0105】
《反応性染料インクのインクセットR5の作製》
インクセットR1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.007部に変えたほかは、同様にして、インクセットR5を作製した。
【0106】
《反応性染料インクのインクセットR6の作製》
インクセットR1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.0007部に変えたほかは、同様にして、インクセットR6を作製した。
【0107】
《反応性染料インクのインクセットR7の作製(比較例)》
インクセットR1について、各インクのキレストE−20の0.7部をエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物26%に変えたほかは、同様にして、インクセットR7を作製した。
【0108】
《評価方法》
(前処理布の作製)
シルケット加工したブロード木綿布に20g/lのアルギン酸ナトリウム、30g/lの炭酸ナトリウム、2g/lの塩化カルシウムと8g/lの硫酸マグネシウム及び100g/lの尿素を含む液体でパッド塗布し(絞り率:70%)、乾燥した。このとき(Ca+Mg)=(3.5×10-3mol/m2)であった。
【0109】
(印字)
インクセットD1〜インクセットD7を、インクセットR1〜インクセットR7に代えた他は、前記インクセットD1〜インクセットD7(分散染料インクセット)の場合と同様にして行った。
【0110】
各解像度のインク打ち込み量を表1に示す。
【0111】
(発色・洗浄)
後、完全に乾燥し、飽和蒸気中、103℃で12分間固着させ、冷水で5分、65℃で5分すすいだ後、3%のソーピング剤を溶解したソーピング液を用いて85℃で煮沸して洗い上げ、再度65℃で5分、そして冷水で5分すすいだ後、乾燥した。
【0112】
(評価)
インクセットD1〜インクセットD7を、インクセットR1〜インクセットR7に代えた他は、前記インクセットD1〜インクセットD7(分散染料インクセット)の場合と同様にして行った。
【0113】
尚、インクセットR1〜インクセットR7の、「インク中のキレート剤の添加量」と「記録媒体に打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2」とについて、表5に示す。
【0114】
そして、以上の評価の結果を表6、表7に示す。
【0115】
【表5】

【0116】
【表6】

【0117】
【表7】

【0118】
表6、表7から、本発明のインクおよびインクセットは、目詰まりを防ぎなおかつ染めむらを起こすことの無い安定した品質の捺染プリントを提供することができることがわかる。
【0119】
《酸性染料インクのインクセットA1の作製》
以下によりインク、及びインクセットを作製した。
【0120】
(マゼンタインクA1の作製)
C.I.アシッドレッド274 5%
グリセリン 15%
ジエチレングリコール 15%
オルフィンe1010(日信化学社製) 0.3%
キレスト−E20 0.7部
以上にイオン交換水を加え全量を100部とし、マゼンタインクA1を得た。
【0121】
(シアンインクA1、イエローインクA1、の作製)
マゼンタインクA1の作製において、C.I.アシッドレッド274の代わりにC.I.ダイレクトブルー86を用いた他は同様にしてシアンインクA1を得た。またマゼンタインクA1の作製において、C.I.アシッドレッド274の代わりにC.I.アシッドイエロー79を用いた他は同様にしてイエローインクA1を得た。これらインクセットをインクセットA1とした。
【0122】
《酸性染料インクのインクセットA2の作製》
インクセットA1について、各インクのキレストE−20の0.7部を7部に変えたほかは、同様にして、インクセットA2を作製した。
【0123】
《酸性染料インクのインクセットA3の作製》
インクセットA1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.07部に変えたほかは、同様にして、インクセットA3を作製した。
【0124】
《酸性染料インクのインクセットA4の作製》
インクセットA1について、各インクのキレストE−20の0.7部をエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物10%に変えたほかは、同様にして、インクセットA4を作製した。
【0125】
《酸性染料インクのインクセットA5の作製》
インクセットA1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.007部に変えたほかは、同様にして、インクセットA5を作製した。
【0126】
《酸性染料インクのインクセットA6の作製》
インクセットA1について、各インクのキレストE−20の0.7部を0.0007部に変えたほかは、同様にして、インクセットA6を作製した。
【0127】
《酸性染料インクのインクセットA7の作製》
インクセットA1について、各インクのキレストE−20の0.7部をエチレンジアミン四酢酸四ナトリウム四水和物26%に変えたほかは、同様にしてた。
【0128】
《評価方法》
(前処理布の作製)
絹100%からなる平織り12匁の絹布帛に30g/lの硫酸アンモニウムと9g/lの塩化カルシウムと3g/lの硫酸マグネシウムを含む液体でパッド塗布し(絞り率:80%)、40℃で30分乾燥した。このとき(Ca+Mg)=(3.5×10-3mol/m2)であった。
【0129】
(印字)
インクセットD1〜インクセットD7を、インクセットA1〜インクセットA7に代えた他は、前記インクセットD1〜インクセットD7(分散染料インクセット)の場合と同様にして行った。
【0130】
各解像度のインク打ち込み量を表1に示す。
【0131】
(発色・洗浄)
完全に乾燥し、飽和蒸気中、103℃で30分間固着させ、冷水で10分、40℃で5分すすいだ後、3%のソーピング剤を溶解したソーピング液を用いて40℃で洗い上げ、再度40℃で5分、そして冷水で10分すすいだ後、乾燥した。
【0132】
(評価)
インクセットD1〜インクセットD7を、インクセットA1〜インクセットA7に代えた他は、前記インクセットD1〜インクセットD7(分散染料インクセット)の場合と同様にして行った。
【0133】
尚、インクセットA1〜インクセットA7の、「インク中のキレート剤の添加量」と「記録媒体に打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2」とについて、表8に示す。
【0134】
そして、以上の評価の結果を表9、表10に示す。
【0135】
【表8】

【0136】
【表9】

【0137】
【表10】

【0138】
表9、表10から、本発明のインクおよびインクセットは、目詰まりを防ぎなおかつ染めむらを起こすことの無い安定した品質の捺染プリントを提供することができることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体表面処理剤で処理された記録媒体に、少なくとも色材と水とキレート剤を含むインクを用いて記録するインクジェット記録方法であり、1m2当りの記録媒体表面処理剤中の多価金属イオン量(A)mol/m2と打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2とがA>Bであり、かつ記録媒体に記録後発色し洗浄する工程を含むことを特徴とする捺染用インクジェット記録方法。
【請求項2】
前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-7〜1×10-3mol/gであることを特徴とする請求項1に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【請求項3】
前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-6〜1×10-4mol/gであることを特徴とする請求項1に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【請求項4】
前記色材が水溶性染料であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【請求項5】
前記色材が反応性染料であることを特徴とする請求項4に記載の捺染用インクジェット記録方法。
【請求項6】
記録媒体表面処理剤で処理された記録媒体に、インクを用いて記録するインクジェット記録方法であり、1m2当りの記録媒体表面処理剤中の多価金属イオン量(A)mol/m2と打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2とがA>Bであり、かつ記録媒体に記録後発色し洗浄する工程を含む捺染用インクジェット記録方法に用いられる少なくとも色材と水とキレート剤を含むことを特徴とするインク。
【請求項7】
前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-7〜1×10-3mol/gであることを特徴とする請求項6に記載のインク。
【請求項8】
前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-6〜1×10-4mol/gであることを特徴とする請求項6に記載のインク。
【請求項9】
前記色材が水溶性染料であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載のインク。
【請求項10】
前記色材が反応性染料であることを特徴とする請求項9に記載のインク。
【請求項11】
記録媒体表面処理剤で処理された記録媒体に、少なくとも色材と水とキレート剤を含むインクを用いて記録するインクジェット記録方法で得られたプリント物であり、1m2当りの記録媒体表面処理剤中の多価金属イオン量(A)mol/m2と打ち込まれたインク中のキレート剤の量(B)mol/m2とがA>Bであり、かつ記録媒体に記録後発色し洗浄する工程を含む捺染用インクジェット記録方法で得られたことを特徴とするプリント物。
【請求項12】
前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-7〜1×10-3mol/gであることを特徴とする請求項11に記載のプリント物。
【請求項13】
前記インク中のキレート剤の含有量が1×10-6〜1×10-4mol/gであることを特徴とする請求項11に記載のプリント物。
【請求項14】
前記色材が水溶性染料であることを特徴とする請求項11〜13のいずれか1項に記載のプリント物。
【請求項15】
前記色材が反応性染料であることを特徴とする請求項14に記載のプリント物。

【公開番号】特開2007−230080(P2007−230080A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−54672(P2006−54672)
【出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】