説明

排ガス中における酸性ガスの除去方法および除去剤

【課題】コストが安価な排ガス中における酸性ガスの除去方法を提供する。
【解決手段】畜糞を炭化炉1に供給して酸素欠乏雰囲気下で300〜600℃の温度にて加熱することによりアルカリ性の炭化物を得るとともに、この炭化物を冷却器2にて冷却し、この冷却された炭化物をバグフィルタ4に導き粉塵を除去する際に、当該バグフィルタ4に炭化物も供給して排ガスに接触させることにより排ガス中における酸性ガスを除去する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス中における酸性ガスの除去方法および除去剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物焼却炉等の酸性ガスの発生施設においては、大気に一定濃度以上の酸性ガスを排出しないよう酸性ガス処理設備が備えられている。
現在、酸性ガスの処理方法としては、スクラバなどのガス洗浄装置により液体でガスを洗浄する湿式法またはバグフィルタなどのろ過式集塵機に消石灰などのアルカリ剤を吹き込み、アルカリ剤と酸性ガスとの中和反応により酸性ガスを固体化して排出する乾式法がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−161583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記いずれの排ガスの処理方法においても、酸性ガスを中和するためのアルカリ剤を必要とし、これを生産するためのコストが高くつくという問題がある。
そこで、本発明は、コストが安価な排ガス中における酸性ガスの除去方法および除去剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法は、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査と、酸性ガスを含む排ガスとを接触させることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去する方法である。
【0006】
また、請求項2に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法は、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査を含む洗浄用液体と、酸性ガスを含む排ガスとを接触させることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去する方法である。
【0007】
また、請求項3に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法は、請求項1または2における除去方法において、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物を、酸素欠乏雰囲気下で300〜600℃の温度にて加熱することにより加熱残査を得る方法である。
【0008】
また、請求項4に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法は、請求項1または2における除去方法において、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物を、空気雰囲気下で高温燃焼させることにより焼却残渣を得る方法である。
【0009】
さらに、請求項5に係る排ガス中における酸性ガスの除去剤は、酸性ガスを含む排ガスに接触されることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去するためのもので、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査により構成したものである。
【0010】
また、請求項6に係る排ガス中における酸性ガスの除去剤は、請求項5に記載の除去剤をガス洗浄装置の洗浄用液体に混合させたものである。
【発明の効果】
【0011】
上記酸性ガスの除去方法および除去剤によると、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査を酸性ガスの除去剤として用いるようにしたので、別途、製造されたアルカリ剤に比べて、コストの点で非常に安価であり、また化石燃料を用いて生産される化学薬品を用いる必要もないため、言い換えれば、二酸化炭素の排出がないため、地球温暖化防止にも貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施の形態1に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法を用いた廃棄物の処理設備の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法を用いた廃棄物の処理設備の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[実施の形態1]
以下、本発明の実施の形態1に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法および除去剤について説明する。
【0014】
まず、本発明の排ガス中における酸性ガスの除去方法を実施するための廃棄物の処理設備について説明する。
この処理設備は、図1に示すように、畜糞などの廃棄物を燃焼させる炭化炉1と、この炭化炉1で炭化された加熱残渣である炭化物を導き冷却させる冷却器2と、上記炭化炉1から排出された排ガス(乾留ガスである)を燃焼させる二次燃焼炉3と、この二次燃焼炉3で燃焼された排ガスを導き灰などの粉塵を回収するとともに上記冷却器2で冷却された炭化物を導き排ガスに接触させ得る集塵機、例えばバグフィルタ(ろ過式集塵機である)4と、このバグフィルタ4で粉塵が除去された排ガスを吸引し大気に放出するための誘引送風機5および煙突6とから構成されている。
【0015】
上記炭化炉1では、畜糞を酸素欠乏雰囲気下(例えば、酸素濃度が0〜5%の範囲内)つまり低酸素濃度雰囲気下で300〜600℃の温度(温度範囲内)にて加熱することにより炭化が行われ、また冷却器2では窒素流通雰囲気下(窒素雰囲気下)で冷却が行われる。
【0016】
そして、上記冷却器2で冷却された炭化物は、炭化物移送管7を介してバグフィルタ4の入口部に供給される(バグフィルタに接続された排ガス導出管側に供給してもよい)。
ここで、本発明に至った経緯について簡単に説明しておく。
【0017】
本発明者等は、コストを抑える手段としてバイオマス資源の加熱処理から発生する焼却灰や炭化物がアルカリ性であることに注目し、詳細に実験を行ったところ、畜糞を焼却した後の灰あるいは低酸素濃度雰囲気下で加熱処理した炭化物は酸性ガスを吸収するためのアルカリ成分を特に多く含有しており、それが乾式酸性ガス処理法における消石灰等のアルカリ剤および湿式酸性ガス処理における洗浄用スクラバにおける洗浄液(洗浄水)の中和またはアルカリ化に使用できることを見い出したことによる。特に、これらの焼却灰および炭化物はバイオマスエネルギーを利用して生産されるため持続可能性のある技術であり、さらに従来の化石燃料を使用して生産されているアルカリ剤に比べ、二酸化炭素の排出が無いことから地球温暖化防止に資する技術でもある。
【0018】
次に、排ガス中における酸性ガス(酸性成分)の除去方法について説明する。
まず、畜糞が炭化炉1に供給され、ここで、酸素欠乏雰囲気下で300〜600℃の温度でもって所定時間維持されて、加熱残渣であり且つ除去剤としてのアリカル性の炭化物が得られる。
【0019】
次に、炭化炉1から排出された炭化物は冷却器2に導かれて冷却される。なお、炭化炉1から排出される炭化物は可燃分を含んでおり発火の危険性があるため、冷却は窒素流通雰囲気下(窒素雰囲気下)で行うのが好ましい。
【0020】
一方、炭化炉1から排出された乾留ガスは二次燃焼炉3に入り燃焼され、この二次燃焼炉3から排出されて酸性ガスを含んだ排ガスはバグフィルタ4にて粉塵が除去される。
このバグフィルタ4においては、冷却器2で冷却された炭化物が炭化物移送管7を介して導かれ、アルカリ成分を多く含んでいる当該炭化物がバグフィルタ4内の捕集用空間内で排ガスに接触することにより、またはバグフィルタ4内面に堆積した炭化物表面に散在されてやはり排ガスと接触することにより、酸性ガスが中和される。つまり、排ガス中から酸性ガスが除去される。
【0021】
上記除去剤を簡単に説明すると、酸性ガスを含む排ガスに接触されることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去するためのもので、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査により構成したものである。
【0022】
これら酸性ガスの除去方法および除去剤によると、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣を酸性ガスの除去剤として用いるようにしたので、別途、製造されたアルカリ剤に比べて、コストの点で非常に安価であり、また化石燃料を用いて生産される化学薬品を用いる必要もないため、言い換えれば、二酸化炭素の排出がないため、地球温暖化防止に資する技術でもある。
[実施の形態2]
以下、本発明の実施の形態2に係る排ガス中における酸性ガスの除去方法および除去剤について説明する。
【0023】
本実施の形態2においては、実施の形態1の処理設備における集塵機の下流側に排ガス洗浄装置を配置し、この排ガス洗浄装置に加熱残渣を導くとともに加熱残渣を排ガスの洗浄用液体に混入させてつまり接触させて当該洗浄用液体を除去剤とすることにより、酸性ガスの中和を図るようにしたものである。
【0024】
以下、この酸性ガスの除去方法を実施するための廃棄物の処理設備を簡単に説明しておく。なお、実施の形態1と異なる箇所は、新たに追加した排ガス洗浄装置であるため、この排ガス洗浄装置に着目して説明するものとし、追加した排ガス洗浄装置以外の構成部材については実施の形態1と同じ番号を付して説明する。
【0025】
この廃棄物の処理設備は、実施の形態1に係る処理設備におけるバグフィルタ4の下流側に、排ガス洗浄装置としての洗浄式スクラバ11を配置したものである。
このスクラバ11は、排ガスに洗浄用液体を散布する散布用ヘッダ12が設けられたスクラバ本体13と、このスクラバ本体13に洗浄用液体を循環させるための液供給機14とが具備されている。この液供給機14は、洗浄用液体を貯溜する貯溜用容器15と、この貯溜用容器15内に貯溜された洗浄用液体を攪拌するための攪拌機16と、途中に液ポンプ(図示せず)が設けられて上記貯溜用容器15内の洗浄用液体をスクラバ本体13の散布用ヘッダ12に供給するための液供給管17と、スクラバ本体13の底部に溜まった洗浄用液体を貯溜用容器15に戻すための液戻し管18とから構成されている。
【0026】
上記貯溜用容器15には、冷却器2で得られた除去剤としての炭化物が炭化物移送管19を介して移送されるとともに、当該貯溜用容器15内では、攪拌機16により洗浄用液体と炭化物とが攪拌されてアリカリ性の洗浄用液体、つまり除去剤(例えば、水に炭化物が混入されたもの)が得られる。
【0027】
そして、この液供給機14で得られた除去剤である洗浄用液体は、液供給管17を介してスクラバ本体13の散布用ヘッダ12に導かれて当該スクラバ本体13の洗浄用空間内に上方から散布され、バグフィルタ4を通過した排ガスと接触することにより、排ガスを洗浄するとともに、酸性ガスを中和する。なお、スクラバ本体13内の下部に溜まった洗浄用液体は液戻し管18を介して、貯溜用容器15内に戻されて循環使用される。また、貯溜用容器15内に溜まった粉塵すなわち沈殿物は外部に排出される。
【0028】
上記除去剤を簡単に説明すると、酸性ガスを含む排ガスに接触されることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去するためのもので、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査を洗浄用液体に混合させたものである。
【0029】
このように、排ガス中における酸性ガスを除去するのに、畜糞の炭化物を除去剤(中和剤である)として用いるようにしたので、実施の形態1と同様に、別途、製造されたアルカリ剤に比べて、コストの点で非常に安価であり、また化石燃料を用いて生産される化学薬品を用いる必要もないため、言い換えれば、二酸化炭素の排出がないため、地球温暖化防止に資する技術でもある。すなわち、この実施の形態2においても、実施の形態1と同様の効果が得られる。
【0030】
上記実施の形態2においては、ろ過式集塵機に加えて排ガス洗浄装置をさらに配置したが、ろ過式集塵機の代わりに排ガス洗浄装置を設けるようにしてもよい。
ところで、上記各実施の形態においては、畜糞を炭化炉にて炭化させて得られる加熱残渣である炭化物にて、排ガス中の酸性ガスの除去を行うものとして説明したが、例えば炭化炉の替わりに、焼却炉にて畜糞を焼却させて(つまり、空気雰囲気下で燃焼させて)得られる焼却残渣である焼却物を用いて排ガス中の酸性ガスの除去を行うこともできる。
【0031】
また、上記各実施の形態においては、畜糞を炭化(または焼却)するものとして説明したが、畜糞堆肥、または畜糞と畜糞堆肥との混合物を炭化(または焼却)させるようにしても、上記実施の形態と同様の効果が得られる。
【0032】
例えば、豚糞堆肥を焼却(燃焼)させた残渣でもよい。豚糞堆肥を800℃で焼却した残渣を調べると、その焼却残渣に含まれるアルカリ分は約50%であり、また同じ試料を低濃度酸素雰囲気下で500℃の温度にて炭化し冷却した後の炭化物に含まれるアルカリ分は約25%であった。なお、このアルカリ分とは、アルカリ性の強さを純粋な酸化カルシウムを100%とした場合の比較値を示す。
【0033】
上述した前者(焼却残渣である)のアルカリ分は消石灰のアルカリ分75%に近い値を示しているが、実際に使用する場合、比表面積が広く物理的吸着性能の高い炭化物の方が、酸性ガスの吸収速度が大きく有利である。
【符号の説明】
【0034】
1 炭化炉
2 冷却器
3 二次燃焼炉
4 バグフィルタ
7 炭化物移送管
11 スクラバ
12 散布用ヘッダ
13 スクラバ本体
14 液供給機
15 貯溜用容器
16 攪拌機
17 液供給管
18 液戻し管
19 炭化物移送管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査と、酸性ガスを含む排ガスとを接触させることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去することを特徴とする排ガス中における酸性ガスの除去方法。
【請求項2】
畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査を含む洗浄用液体と、酸性ガスを含む排ガスとを接触させることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去することを特徴とする排ガス中における酸性ガスの除去方法。
【請求項3】
畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物を、酸素欠乏雰囲気下で300〜600℃の温度にて加熱することにより加熱残査を得ることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス中における酸性ガスの除去方法。
【請求項4】
畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物を、空気雰囲気下で高温燃焼させることにより焼却残渣を得ることを特徴とする請求項1または2に記載の排ガス中における酸性ガスの除去方法。
【請求項5】
酸性ガスを含む排ガスに接触されることにより当該排ガス中における酸性ガスを除去するためのもので、畜糞若しくは畜糞堆肥またはこれらの混合物の加熱残渣または焼却残査より成ることを特徴とする排ガス中における酸性ガスの除去剤。
【請求項6】
請求項5に記載の除去剤をガス洗浄装置の洗浄用液体に混合させたことを特徴とする排ガス中における酸性ガスの除去剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−194501(P2010−194501A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44945(P2009−44945)
【出願日】平成21年2月27日(2009.2.27)
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【Fターム(参考)】