説明

排ガス処理装置

【課題】塩化アンモニウムを液体状で噴霧する場合に、液滴が煙道等に衝突するのを防止しつつ、水銀の除去性能、窒素酸化物の還元性能を維持することが可能な排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】ボイラ11の下流の煙道13内に、塩化アンモニウム(NH4Cl)を含む塩化アンモニウム溶液14を複数の噴霧ノズル15により噴霧する塩化アンモニウム溶液供給手段16と、排ガス中のNOxを還元性ガスとしてアンモニアガスで還元すると共に、酸化性ガスとして塩化水素ガス共存下でHgを酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置18と、脱硝された排ガス12を熱交換する熱交換器19と、排ガス12中の煤塵を除去する集塵器20と、還元脱硝装置18において酸化されたHgをアルカリ吸収液として石灰石膏スラリー21を用いて除去する湿式脱硫装置22と、噴霧ノズル15よりも上流側に設けられ、排ガス12のガス流れに乱れを与える混合器60とを有する

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラなどから排出される排ガス中に含まれる水銀の酸化処理を行う排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
石炭焚き排ガスや重質油を燃焼した際に生じる排ガス中には、煤塵、硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)のほか、金属水銀(Hg0)が含まれることがある。近年、NOxを還元する脱硝装置、および、アルカリ吸収液をSOx吸収剤とする湿式脱硫装置と組み合わせて、この金属水銀を処理する方法や装置について様々な考案がなされてきた。
【0003】
排ガス中の金属水銀を処理する方法として、煙道中、高温の脱硝装置の前流側でアンモニウム(NH3)溶液を噴霧して還元脱硝すると共に、塩酸(HCl)溶液等の酸化助剤を噴霧し、脱硝触媒上で水銀を酸化(塩素化)させ、水溶性の塩化水銀にした後、後流側に設置した湿式の脱硫装置で水銀を除去するシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、HClを供給する方法として、塩化水素(HCl)気化器を用いて塩酸(HCl)溶液を気化させ塩化水素(HCl)ガスとし、所定濃度のHClを含む混合ガスに調整した後、混合ガスを煙道内に分散させ、水銀を含有する排ガス中に均一に噴霧する方法がある(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
また、他のHClを供給する方法として、脱硝装置の前流側の煙道内に塩化アンモニウム(NH4Cl)を粉体状として添加し、排ガスの高温雰囲気温度によりNH4Clを昇華させ、HCl、アンモニア(NH3)をそれぞれ気化させ、気化されたHClガス、NH3ガスを排ガスに混合する方法がある(例えば、特許文献3参照。)。
【0006】
上記のような排ガス中の金属水銀を処理する方法では、塩酸溶液を用いる場合、塩酸は危険物であるため、輸送、取り扱いなど手間及びコストを要するという問題がある。また、HCl気化器を用いた場合では、熱源としてスチーム等が必要となり、HCl気化器など設備、運転、メンテナンスなどの費用を要するという問題がある。更に、NH4Cl粉末を用いた場合では、粒径を細かくして分散させる必要があるため、ハンドリングが困難であり、噴霧量の制御が容易ではないという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−230137号公報
【特許文献2】特開2007−167743号公報
【特許文献3】特開2008−221087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、近年、Hg0を脱硝触媒にて酸化させるために、脱硝装置の前流側で塩化アンモニウム(NH4Cl)粉体状として供給する代わりに、塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液を液体状で噴霧する方法が検討されている。従来のように、塩酸溶液を用いる方法に比べ、NH4Cl溶液は危険性が少ないため輸送、取り扱いが容易であり、なおかつ、液体を噴霧するため気化器などの設備が不要であり、コストが低減できる。
【0009】
しかしながら、塩化アンモニウムを液体状で噴霧する場合には、この液滴がその噴霧直後に、煙道内壁または煙道内構造物に衝突し、瞬間的な熱収縮に起因する熱衝撃が発生し、ダクト壁が損傷するような場合がある。
【0010】
本発明は、前記問題に鑑み、塩化アンモニウム(NH4Cl)を液体状で噴霧する場合に、液滴が煙道等に衝突するのを防止しつつ、水銀の除去性能、窒素酸化物の還元性能を維持することが可能な排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決する本発明の第1の発明は、ボイラからの排ガス中に含まれる窒素酸化物、水銀を除去する排ガス処理装置であって、前記ボイラの下流の煙道内に、気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成する液体状の還元酸化助剤を噴霧ノズルにより液体状で噴霧する還元酸化助剤供給手段と、前記排ガス中の窒素酸化物を前記還元性ガスで還元すると共に、前記酸化性ガス共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝手段と、該還元脱硝手段において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫手段と、前記噴霧ノズルよりも上流側に設けられ、排ガスのガス流れに乱れを与える混合器とを有することを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0012】
第2の発明は、第1の発明において、前記還元酸化助剤が、塩化アンモニウム溶液であることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0013】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記噴霧ノズルのノズル孔が、前記煙道の壁面から0.5m以上離した位置に設けられることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0014】
第4の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記混合器が、格子状であることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0015】
第5の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記混合器が、煙道内に設置され、前記ガス流れの下流側に頂点を持った4角錐の対向2面を形成するよう配置された2枚の3角板と、前記頂点と頂点を接し、前記ガス流れの下流側に底面が位置する4角錐の対向2面で、前記上流側の対向2面と90度向きが捩られた対向2面を形成する3角板とによって構成された格子要素を、流体流路内に配置された全ての格子要素において隣接する格子要素の向きを90度ずつ変えて流体流れに直角方向に並設し、前記4角錐の底面が格子を形成するよう接続すると共に、当該格子要素の流体流れに直角方向の幅(B)と流体流れに平行方向の長さ(L)の比(L/B)が1.5〜2.0の範囲にあることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0016】
第6の発明は、第1乃至3のいずれか一つの発明において、前記混合器が、前記排ガスの入口側に対向面を有する一対の第1の旋回流誘起板と、前記排ガスの排出側に対向面を有する一対の第2の旋回流誘起板とを有してなり、第1の旋回流誘起板と第2の旋回流誘起板とを連結する連結部において前記第1の旋回流誘起板の対向面と第2の旋回流誘起板の対向面とが異なるように各々連結されている旋回流誘起部材であることを特徴とする排ガス処理装置にある。
【0017】
第7の発明は、第1乃至6のいずれか一つの発明において、前記噴霧ノズルの近傍に前記煙道の内壁に沿って保護壁を設けたことを特徴とする排ガス処理装置にある。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボイラの下流の煙道内に、気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成する還元酸化助剤を噴霧ノズルより液体状で噴霧する際に、この噴霧ノズルよりも上流側に混合器を設け、ガス流れに乱れを与え、軸流以外の速度を噴霧ノズルから噴霧された液滴に与えることにより、熱伝達率の向上を図り、蒸発を促進することができる。
この塩化アンモニア液滴の蒸発の促進により、煙道内壁や煙道内部構造物への衝突を防ぐこととなり、前記煙道の腐食等に起因して発生する前記煙道の破損を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本発明の実施例1に係る排ガス処理装置の構成を示す概略図である。
【図2】図2は、混合器と噴霧ノズルとの配置の模式図である。
【図3】図3は、格子状混合器の概略図である。
【図4】図4は、本発明に係る混合器の要部構成図である。
【図5】図5は、混合器の全体構成に係る正面図である。
【図6】図6は、図5のA−A線矢視図である。
【図7】図7は、実施例2の格子要素と混合性能と圧力損失特性の実験データを示すものである。
【図8】図8は、実施例3に係る混合器の一例を示す平面図である。
【図9】図9は、混合器を構成する旋回流誘起部材の平面図である。
【図10】図10は、旋回流誘起部材の正面図である。
【図11】図11は、旋回流誘起部材の斜視図である。
【図12】図12は、混合器を煙道内に設置した時の排ガスのガス流れを模式的に示す図である。
【図13】図13は、図12の部分拡大図である。
【図14】図14は、混合器の圧損と混合器の寸法の関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例1】
【0021】
本発明による実施例1に係る排ガス処理装置について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明の実施例1に係る排ガス処理装置の構成を示す概略図である。図2は混合器と噴霧ノズルとの配置の模式図である。
図1に示すように、本実施例に係る排ガス処理装置100は、ボイラ11からの排ガス12中に含まれる窒素酸化物(NOx)、水銀(Hg)を除去する排ガス処理装置であって、ボイラ11の下流の煙道13内に、液体状の還元酸化助剤として塩化アンモニウム(NH4Cl)を含む塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液14を複数の噴霧ノズル15により液体状で噴霧する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給手段(還元酸化助剤供給手段)16と、排ガス12中のNOxを還元性ガスとしてアンモニア(NH3)ガスで還元すると共に、酸化性ガスとして塩化水素(HCl)ガス共存下でHgを酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝装置(還元脱硝手段)18と、脱硝された排ガス12を熱交換する熱交換器(エアヒータ)19と、脱硝された排ガス12中の煤塵を除去する集塵器20と、還元脱硝装置18において酸化されたHgをアルカリ吸収液として石灰石膏スラリー21を用いて除去する湿式脱硫装置22と、前記噴霧ノズル15よりも上流側に設けられ、排ガス12のガス流れに乱れを与える混合器60とを有するものである。
【0022】
なお、本実施例に係る排ガス処理装置100においては、還元酸化助剤としてNH4Clを用いているが、本発明はこれに限定されるものではなく、還元酸化助剤は気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成するものであれば用いることができる。
また、本発明においては、還元酸化助剤とは、酸化性ガス共存下で水銀(Hg)を酸化して塩素化するのに用いられる酸化助剤と、還元性ガスによりNOxを還元する還元剤として機能するものをいう。
本実施例では、酸化性ガスとしてHClガスが用いられ、還元性ガスとしてNH3ガスが用いられている。
【0023】
ボイラ11から排出される排ガス12には、NH4Cl溶液供給手段16よりNH4Cl溶液14が供給される。NH4Cl溶液供給手段16は、NH4Cl溶液14を液体状で煙道13内に供給する塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管25と、煙道13内にNH4Cl溶液14を圧縮して噴霧させる空気26を煙道13内に供給する空気供給管27と、塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管25及び空気供給管27の先端部に取り付けられ、NH4Cl溶液14及び空気26を噴射する噴霧ノズル15とを有している。
【0024】
NH4Cl溶液14は塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液タンク28内で所定濃度に調整される。また、NH4Cl溶液供給管25から供給されるNH4Cl溶液14の流量はバルブV1により調整される。NH4Cl溶液14は、NH4Cl溶液タンク28からNH4Cl溶液供給管25内を通過して噴霧ノズル15より煙道13内に噴霧される。
【0025】
本実施例では、図1及び図2に示すように、混合器60を噴霧ノズル15よりも上流側に設けられ、排ガス12のガス流れに乱れ(例えばカルマン渦)を与え、軸流以外の速度を噴霧ノズル15から噴霧された噴霧液滴に与えるようにしている。
【0026】
排ガス12は、先ず、混合器60により、攪拌される。その後、攪拌された排ガス12は、非定常性の乱れとなり、煙道13の噴霧ゾーンに供給される。
【0027】
ここで、混合器60の形状は特に限定されるものではないが、一例として図面を参照して説明する。
図3は格子状混合器の概略図である。
図3に示すように、本実施例に係る混合器60Aは、円柱61、62を格子状に組み付けたものである。
また、この格子状の混合器60Aを設置することにより、図2に示すように、円柱61、62からなる混合器60Aの排ガス12のガス流れの後流に発生する渦により乱れを生成することとなる。
【0028】
そして、NH4Cl溶液供給手段16より噴霧されたNH4Cl溶液14に対して、ガス流れに乱れを与える結果、軸流以外の速度を噴霧液滴に与えることとなり、熱伝達率の向上を図り、蒸発を促進する。
【0029】
煙道13内でガスの軸流成分しかないようなガス流れでは、噴霧された液滴がそのまま流れに乗り、ガスとの相対層度が小さくなると考えられる。すなわち、液滴の蒸発がしにくくなる。
これに対して、混合器60Aを設けて、排ガス12を混合させることによりガス流れに乱れを与え、軸流以外の速度を液滴に与えることとなり、熱伝達率の向上を図り、蒸発を促進させることとなる。すわなち、液滴に対して、様々な方向からガスが衝突され、干渉されるので、液滴の蒸発がし易くなる。
【0030】
よって、混合器60Aで排ガス12を予め攪拌することで、排ガス12にHClガス、NH3ガスの蒸発・混合を促進することができ、排ガス12におけるHClガス、NH3ガスの濃度分布を均一にすることができる。
この塩化アンモニア液滴の蒸発の促進により、ダクト壁や内部構造物への衝突を防ぐこととなり、前記煙道の腐食等に起因して発生する前記煙道の破損を防止することができる。
【0031】
また、混合器60Aと噴霧ノズル15の設置距離を適宜調整することにより、液滴に与える乱れ場の強さをある程度調整できる。
【0032】
一般的なプラント運転条件においては、混合器60Aは、NH4Cl溶液14を供給する供給位置よりも1m以上上流側に設けるのが好ましい。
また、混合器60Aは現実的機器配置の観点からNH4Cl溶液14の供給位置より10m程度までとするのが望ましい。
【0033】
一般に、NH4Cl溶液14の液滴径が40μm程度の時、この液滴が噴霧から蒸発するまでの時間tは0.032s程度であり、NH4Cl溶液14の液滴が蒸発するまでの移動距離Lは、噴霧ノズル15から排ガス12の流れと平行の向きに0.76m程度であるとされている。
また、NH4Cl溶液14の液滴径が60μm程度の時、この液滴が噴霧から蒸発するまでの時間tは0.068s程度であり、NH4Cl溶液14の液滴が蒸発するまでの移動距離Lは、噴霧ノズル15から排ガス12の流れと平行の向きに1.6m程度であるとされている。
また、NH4Cl溶液14の液滴径が80μm程度の時、この液滴が噴霧から蒸発するまでの時間tは0.119s程度であり、NH4Cl溶液14の液滴が蒸発するまでの移動距離Lは、噴霧ノズル15から噴霧方向に2.7m程度であるとされている。
【0034】
また、NH4Cl溶液14の噴出し位置周辺の煙道13の壁面を熱衝撃から護るため、煙道の壁面を例えばカーボンスチール等により二重化するような場合においても、上流に混合器60を設置することで、その二重化領域を小さくすることが可能となる。
【0035】
さらに、本実施例におけるNH4Cl溶液供給手段16では、噴霧ノズル15がNH4Cl溶液14を排ガス12の流通する煙道13の内壁に付着しないように供給するように配置している。
NH4Cl溶液14を排ガス12が流通する煙道13の内壁に付着しないように供給する配置としては、噴霧ノズル15が煙道13内において、煙道13の内壁から一定以上の距離を置いて配置される構造であることが好ましい。一定以上の距離とは、噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴が噴霧ノズル15から煙道13の内壁に到達する前に気化するのに十分な距離である。
実際の煙道寸法、実際の処理条件を考慮すると、噴霧ノズル15のノズル孔は、例えば煙道13の壁面から0.5m以上離した位置に設けるのが好ましい。
【0036】
噴霧ノズル15のノズル孔の位置が、煙道13の壁面から0.5m以上離した位置とするのは、排ガス12のガス流速、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴初速、液滴径、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の煙道13に対する噴射角度、排ガス12の排ガス温度、NH4Cl溶液14の液滴温度などを考慮する必要があるためである。
【0037】
また、噴霧ノズル15は、NH4Cl溶液14と圧縮用の空気26とを同時に噴射する二流体ノズルで構成されている。空気26は、空気供給部31から空気供給管27を介して噴霧ノズル15に送給され、噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を噴霧する際の圧縮用の空気として用いられる。これにより、噴霧ノズル15から噴射されるNH4Cl溶液14を空気26により煙道13内に微細な液滴として噴霧することができる。
【0038】
また、空気供給管27から供給される空気26の流量はバルブV2により調整される。空気供給管27から供給される空気26の流量により、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴の大きさを調整することができる。
【0039】
また、噴霧ノズル15から噴射される空気26の流量は、例えば気水比100以上10000以下(体積比)とするのが好ましい。これは、噴霧ノズル15から噴射されるNH4Cl溶液14を微細な液滴として煙道13内に噴霧させるようにするためである。
【0040】
また、噴霧ノズル15より煙道13内に噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴は、排ガス12の高温雰囲気温度により蒸発することで微細なNH4Clの固体粒子を生成し、下記式(1)のように、HClとNH3とに分解し、昇華する。よって、NH4Cl溶液14を噴霧ノズル15から噴霧することにより、噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴から、HCl、NH3を生じ、NH3ガス、HClガスを煙道13内に供給することができる。
NH4Cl → NH3+HCl・・・(1)
【0041】
また、煙道13内の排ガス12の温度は、例えば320℃以上420℃以下であり、高温である。NH4Cl溶液供給管25の周囲を二重管とし、空気供給部36から空気供給管34を介して冷却用の空気が噴霧ノズル15に送給され、NH4Cl溶液14の冷却を図っている。このため、噴霧ノズル15より噴射される直前までNH4Cl溶液14は液体状態を維持し、噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を液滴状で噴霧することで、排ガス12の高温雰囲気温度により噴霧したNH4Cl溶液14の液滴を気化させることができる。
【0042】
また、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴径は、平均して1nm以上100μm以下の微細な液滴とするのが好ましい。平均して1nm以上100μm以下の微細な液滴を生成することで、噴霧されたNH4Cl溶液14の液滴から生じるNH4Clの固体粒子を排ガス12中に短い滞留時間でNH3、HClに分解し、昇華させることができる。これにより、NH4Cl溶液14を予め加熱しておく必要がないため、煙道13、噴霧ノズル15の低級化、腐食を防止することができる。
【0043】
NH4Cl溶液14は、塩化アンモニウム(NH4Cl)粉末を水に溶解させて生成することができる。NH4Cl粉末、水の各々の供給量を調整することで所定濃度のNH4Cl溶液14を調整することができる。NH4Cl溶液14は、HCl溶液とNH3溶液とを所定濃度の割合で混合させて生成するようにしてもよい。
【0044】
また、煙道13内の排ガス12の温度は、ボイラ11の燃焼条件にもよるが、例えば320℃以上420℃以下が好ましく、320℃以上380℃以下がより好ましく、350℃以上380℃以下が更に好ましい。これはこれらの温度帯において脱硝触媒上でNOxの脱硝反応と、Hgの酸化反応を同時に効率的に生じさせることができるためである。
【0045】
よって、噴霧ノズル15より液体状態のNH4Cl溶液14を煙道13の内壁に付着しないように煙道13内に供給することで、NH4Cl溶液14を排ガス12の高温雰囲気温度により分解したHClガス、NH3ガスを濃度ムラ無く均一に煙道13内に供給することができるため、排ガス12中のHClガス、NH3ガスの濃度分布を均一にすることができる。
また、NH4Cl溶液14が気化する前に煙道13の壁面に付着するのを防止することができるため、煙道13の腐食等に起因して発生する煙道13の破損を防止することができる。
【0046】
また、NH4Cl溶液14の液滴から生じたHClガス、NH3ガスは、図1に示すように、排ガス12に同伴して還元脱硝装置18に送給される。また、排ガス12は還元脱硝装置18を通過する前に図示しない整流板等でガス流れを均一にする。NH4Clが分解して生じたNH3ガスは、還元脱硝装置18でNOxの還元脱硝用に用い、HClガスはHgの酸化用に用いてNOx及びHgを排ガス12から除去する。
【0047】
即ち、還元脱硝装置18に充填されている脱硝触媒層の脱硝触媒上でNH3は下記式(2)のようにNOxを還元脱硝し、HClは下記式(3)のようにHgを水銀酸化する。
4NO+4NH3+O2 → 4N2+6H2O・・・(2)
Hg+1/2O2+2HCl → HgCl2+H2O・・・(3)
【0048】
また、還元脱硝装置18は、3つの脱硝触媒層は複数の層から形成されるのが好ましく、脱硝性能に応じて脱硝触媒層の数を適宜変更することができる。
【0049】
また、図1に示すように、排ガス12は、還元脱硝装置18において排ガス12中のNOxの還元とHgの酸化がされた後、エアヒータ19、集塵器20を通過して湿式脱硫装置22に送給される。また、エアヒータ19と集塵器20との間には熱回収器を設けるようにしてもよい。
【0050】
湿式脱硫装置22では、排ガス12を装置本体41内の底部の壁面側から送給し、アルカリ吸収液として用いられる石灰石膏スラリー21を吸収液送給ライン42により装置本体41内に供給し、ノズル43より塔頂部側に向かって噴流させる。装置本体41内の底部側から上昇してくる排ガス12と、ノズル43から噴流して流下する石灰石膏スラリー21とを対向して気液接触させ、排ガス12中のHgCl、硫黄酸化物(SOx)は石灰石膏スラリー21中に吸収され、排ガス12から分離、除去され、排ガス12は浄化される。石灰石膏スラリー21により浄化された排ガス12は、浄化ガス44として塔頂部側より排出され、煙突45から系外に排出される。
【0051】
排ガス12の脱硫に用いられる石灰石膏スラリー21は、水に石灰石粉末を溶解させた石灰スラリーCaCO3と、石灰と排ガス12中のSOxが反応し更に酸化させた石膏スラリーCaSO4と、水とを混合させて生成される。石灰石膏スラリー21は、例えば湿式脱硫装置22の装置本体41の塔底部55に貯留した液を揚水したものが用いられる。装置本体41内で排ガス12中のSOxは石灰石膏スラリー21と下記式(4)のような反応を生じる。
CaCO3 + SO2 + 0.5H2O → CaSO3・0.5H2O + CO2 ・・・(4)
【0052】
一方、排ガス12中のSOxを吸収した石灰石膏スラリー21は、装置本体41内に供給される水46と混合され、装置本体41の塔底部55に供給される空気47により酸化処理される。このとき、装置本体41内を流下した石灰石膏スラリー21は、水46、空気47と下記式(5)のような反応を生じる。
CaSO3・0.5H2O + 0.5O2 + 1.5H2O → CaSO4・2H2O ・・・(5)
【0053】
また、湿式脱硫装置22の塔底部55に貯留される脱硫に用いた石灰石膏スラリー21は酸化処理された後、塔底部55より抜き出され、脱水器48に送給された後、塩化水銀(HgCl)を含んだ脱水ケーキ(石膏)49として系外に排出される。脱水器48として、例えばベルトフィルターなどが用いられる。また、脱水したろ液(脱水ろ液)は、例えば脱水ろ液中の懸濁物、重金属の除去、脱水ろ液のpH調整などの排水処理が行われる。この排水処理された脱水ろ液の一部は湿式脱硫装置22に返送され、脱水ろ液の他の一部は排水として処理される。
【0054】
また、アルカリ吸収液として石灰石膏スラリー21を用いているが、排ガス12中のHgClを吸収できるものであれば他の溶液をアルカリ吸収液として用いることができる。
【0055】
石灰石膏スラリー21はノズル43より塔頂部側に向かって噴流させる方法に限定されるものではなく、例えばノズル43から排ガス12と対向するように流下させてもよい。
【0056】
<NH4Cl溶液の噴霧量の制御>
噴霧ノズル15の上流側には、排ガス12の流量を計測する流量計51が設けられている。流量計51により、排ガス12の流量が測定される。流量計51により測定された排ガス12の流量の値は制御装置52に送られ、排ガス12の流量の値に基づいて噴霧ノズル15から噴射するNH4Cl溶液14の流量、角度、初速度などを調整することができる。
【0057】
また、湿式脱硫装置22の出口側には、NOx濃度計53が設けられている。NOx濃度計53で測定された浄化ガス44中のNOx濃度の値は、制御装置52に伝達される。制御装置52はNOx濃度計53で測定された浄化ガス44中のNOx濃度の値から還元脱硝装置18におけるNOxの還元割合を確認することができる。よって、NOx濃度計53で測定された浄化ガス44中のNOx濃度の値からNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量などを制御することで、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度を所定の脱硝性能を満足するようにすることができる。
【0058】
また、煙道13にはボイラ11から排出される排ガス12中のHg含有量を測定する水銀(Hg)濃度計54−1、54−2が設けられている。Hg濃度計54−1は、ボイラ11と噴霧ノズル15との間の煙道13に設けられ、Hg濃度計54−2は、還元脱硝装置18と熱交換器19との間に設けられる。Hg濃度計54−1、54−2で測定された排ガス12中のHCl濃度の値は、制御装置52に伝達される。制御装置52は、Hg濃度計54−1、54−2で測定された排ガス12中のHCl濃度の値から排ガス12中に含まれるHgの含有量を確認することができる。Hg濃度計54−1、54−2で測定された排ガス12中のHg濃度の値からNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量を制御することで、噴霧ノズル15から噴霧されるNH4Cl溶液14のNH4Cl濃度、供給流量を所定の脱硝性能を満足すると共に、Hgの酸化性能を維持するようにすることができる。
【0059】
また、湿式脱硫装置22の塔底部55には、石灰石膏スラリー21の酸化還元電位を測定する酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)56が設けられている。このORPコントローラ56により石灰石膏スラリー21の酸化還元電位の値を測定する。測定された酸化還元電位の値に基づいて湿式脱硫装置22の塔底部55に供給される空気47の供給量を調整する。塔底部55に供給される空気47の供給量を調整することで、湿式脱硫装置22の塔底部55に貯留する石灰石膏スラリー21内に捕集されている酸化されたHgが還元されるのを防止し、煙突45より放散されるのを防止することができる。
【0060】
湿式脱硫装置22内の石灰石膏スラリー21の酸化還元電位は、石灰石膏スラリー21からのHgの再飛散を防止するためには、例えば150mV以上600mV以下の範囲内にあることが好ましい。これは酸化還元電位が上記範囲内であれば石灰石膏スラリー21中にHgCl2として捕集されたHgが安定な領域であり、大気中への再飛散を防ぐことができるためである。
【0061】
また、本実施例に係る排ガス処理装置100においては、還元酸化助剤として、NH4Clを用いているが、NH4Cl以外の臭化アンモニウム(NH4Br)、ヨウ化アンモニウム(NH4I)などのハロゲン化アンモニウムを還元酸化助剤として用い、水に溶解した溶液を用いてもよい。
【0062】
このように、本実施例に係る排ガス処理装置100によれば、NH4Cl溶液供給手段16の上流側において混合器60(60A)を設けているので、排ガス12のガス流れに乱れを与え、軸流以外の速度を噴霧ノズル15から噴霧された液滴に与えることにより、熱伝達率の向上を図り、蒸発を促進することができる。
この塩化アンモニア液滴の蒸発の促進により、煙道内壁や煙道内部構造物への衝突を防ぐこととなり、前記煙道の腐食等に起因して発生する前記煙道の破損を防止することができる。さらに、噴霧ノズル15からNH4Cl溶液14を排ガス12の流通する煙道13の内壁に付着しないように供給しているため、煙道13内に噴霧されるNH4Cl溶液14の液滴が気化して生成されるHCl、NH3を排ガス12と混合させることができる。このため、HCl、NH3を濃度ムラ無く均一に煙道13内に安定して供給することができるので、還元脱硝装置18におけるHgの酸化性能を向上させることができると共に、NOxの還元性能を向上することができる。また、NH4Cl溶液14が気化する前に煙道13の壁面に付着するのを防止することができるため、煙道13の腐食等に起因して発生する煙道13の破損なども防止することができる。
【実施例2】
【0063】
本発明による実施例2に係る排ガス処理装置の混合器の構成を図4〜図7に示す。図4は本発明に係る混合器の要部構成図である。図5は、混合器の全体構成に係る正面図である。図6は、図5のA−A線矢視図である。
図7は、実施例2の格子要素と混合性能と圧力損失特性の実験データを示すものであり、(a)は3角板の(4角錐)格子要素の寸法比率図、(b)は混合性能(均一効果指標)と圧力損失係数の実験データを示す図である。
図4に示すように、本実施例の混合器60Bは、3角板(4角錐)格子の整流器の構成要素を示すもので、上流側に2枚の3角板63で4角錐の2対向面を形成し、さらに下流側には上流の4角錐と頂点を接し、かつ90度方向をずらして2枚の3角板64で4角錐の2対向面を形成しており、格子の幅と長さの比(L/B)は1.5〜2.0の範囲とされている(図7参照)。
【0064】
図5は図4の格子構成要素を、隣接する格子構成要素の向きを90度ずつ変えて並設して、16個組み合わせた混合器の1例であり、このように構成要素を組み合わせてゆくことにより、任意の断面積を有した混合器を形成することができる。
【0065】
3角板を組み合わせた混合器の場合、上流からの流れは整流器内部を通過する際に、4角錐の開口面方向に斜めに曲げられ、かつ開口面が90度ずつ方向が異なっていることから流れと直角方向の旋回成分が与えられ、斜めに配置された3角板の後流側に渦が発生し、結果として大きな乱れを得ることができる。
【0066】
このような、流れを旋回させることによって発生する渦流は、3角板が構成する4角錐の流れ方向への高さが低い場合には強い乱れとなって混合効果は大きいが、4角錐の高さが高い場合には渦流は弱く混合効果も小さい。
【0067】
但し、圧力損失も発生する渦の強さに比例するため、低い圧力損失で大きな混合効果を得ようとするには、格子構成要素の流れに直角方向の幅(B)と3角板格子の場合には構成する2個の4角錐の流れ方向の長さ(L)の比(L/B)をある特定の範囲内に設定する必要がある。
【0068】
ここで、流速の整流効果及び温度や濃度の混合効果を式(6)のように定義する。
K=Lmax−Lmin/Gmax−Gmin ・・・(6)
ここで、K :流速・温度・濃度の均一効果の指標
Gmax :整流器が無い場合の流路内の流速・温度・濃度の最大値
Gmin :整流器が無い場合の流路内の流速・温度・濃度の最小値
Lmax :整流器設置後の流路内の流速・温度・濃度の最大値
Lmin :整流器設置後の流路内の流速・温度・濃度の最小値
【0069】
3角板(4角錐)格子について、L/Bを種々変化させ、均一効果指標Kを実験により求めた結果を図7に示す。図7に示すように、3角板(4角錐)格子のL/Bが1.5以下では圧力損失係数CDが大きく、またL/Bが2.0以上では混合性能(均一効果の指標の逆数1/K)が急激に低下するため、低い圧力損失と高い混合性能を満足する範囲はL/B=1.5〜2.0の範囲である。この範囲での圧力損失係数は、3角板(4角錐)格子では1.1と、従来の多孔板などに比べて極めて小さい値であり、低圧力損失と高い混合性能の両者が同時に満足されることがわかる。
【0070】
よって、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が噴霧する領域よりも上流側に混合器60Bを設け、ガス流れに乱れを与え、軸流以外の速度を噴霧ノズル15から噴霧された液滴に与えることにより、熱伝達率の向上を図り、蒸発を促進することができる。
この塩化アンモニア液滴の蒸発の促進により、煙道13の内壁や煙道13の内部構造物への衝突を防ぐこととなり、前記煙道の腐食等に起因して発生する前記煙道の破損を防止することができる。
【実施例3】
【0071】
本発明による実施例3に係る排ガス処理装置の混合器の構成を図8〜図11に示す。図8は、本実施例に係る混合器の一例を示す平面図であり、図9は、混合器を構成する旋回流誘起部材の平面図であり、図10は、旋回流誘起部材の正面図であり、図11は、旋回流誘起部材の斜視図である。
尚、図8〜図11に示す符号73については符号74の部材との違いを明確にするためハッチングを加えて示している。
図8に示すように、本実施例の混合器60Cは、排ガス12に旋回流を生じさせる旋回流誘起部材72を排ガス12の流れ方向と直交するように六個配置されたユニットで形成されるものである。図8〜図11に示すように、旋回流誘起部材72は、排ガス12の入口側に対向面73aを有する一対の第1の旋回流誘起板73と、排ガス12の排出側に対向面74aを有する一対の第2の旋回流誘起板74と、を有し、第1の旋回流誘起板73と第2の旋回流誘起板74とを連結する連結部として平板状の中間部材75において第1の旋回流誘起板73の対向面73aと第2の旋回流誘起板74の対向面74aとが異なるように各々連結されている。本実施例においては、第1の旋回流誘起板73の対向面73aと第2の旋回流誘起板74の対向面74aとが約90°異なるようにして配置されている。
【0072】
第1の旋回流誘起板73と第2の旋回流誘起板74とは、各々、略三角形状に形成されている。また、第1の旋回流誘起板73は排ガス12の入口側に設けられ、第2の旋回流誘起板74は排ガス12の排出側に設けられるため、旋回流誘起部材72を正面から見たとき、第1の旋回流誘起板73は第2の旋回流誘起板74より下側に位置している。また、中間部材75は平板であり、第1の旋回流誘起板73と第2の旋回流誘起板74とを連結するかなめとして機能している。また、第1の旋回流誘起板73には下部支持板76が設けられ、第2の旋回流誘起板74には上部支持板77が設けられている。下部支持板76、上部支持板77により隣接する旋回流誘起部材72同士を連結するようにしている。
【0073】
図11に示すように、排ガス12が旋回流誘起部材72に流入すると、排ガス12は第1の旋回流誘起板73の対向面73aの裏面側に衝突してガス流れが変化し、第2の旋回流誘起板74の方向に流れる。その後、排ガス12は第2の旋回流誘起板74の対向面74aの裏面側に衝突して更にガス流れが変化する。このため、排ガス12は、第1の旋回流誘起板73、第2の旋回流誘起板74によりガス流れが変化し、第1の旋回流誘起板73、第2の旋回流誘起板74を迂回するようにして流れ、旋回流誘起部材72の排ガス12の流入方向から排ガス12の排出方向に向かって旋回しながら流れる。
【0074】
また、本実施例においては、第1の旋回流誘起板73の対向面73aと第2の旋回流誘起板74の対向面74aとを約90°異なる向きとなるように配置しているが、本発明はこれに限定されるものではない。第1の旋回流誘起板73の対向面73aと第2の旋回流誘起板74の対向面74aとの向きは、旋回流誘起部材72に流入した排ガス12を旋回流誘起部材72の排ガス12の流入方向から排ガス12の排出方向に向かって旋回させながら流すことができる角度であればよい。
【0075】
また、本実施例においては、混合器60Cは、図8に示すように、旋回流誘起部材72を排ガス12の流れ方向と直交するように六個配置されたユニットとしているが、本発明はこれに限定されるものではなく、煙道13の面積等に応じて旋回流誘起部材72を設置する数は適宜変更する。
【0076】
また、本実施例においては、混合器60Cは排ガス12の流れ方向に旋回流誘起部材72が六個配置されたユニットを1段として構成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、排ガス12の流れ方向に旋回流誘起部材72が複数配置されたユニットを複数段設置するようにしてもよい。また、本実施例の混合器60Cは、排ガス12の流れ方向と直交する方向に旋回流誘起部材72が複数配置されたユニットを設けると共に、排ガス12の流れ方向に旋回流誘起部材72が複数配置されたユニットを複数設けるようにしてもよい。
【0077】
図12は、混合器を煙道内に設置した時の排ガスのガス流れを模式的に示す図であり、図13は、図12の部分拡大図である。
なお、図12、13中には、図8に示すのと同様に、旋回流誘起部材72を煙道13の幅方向に6個設けている。
図12、13に示すように、排ガス12は、旋回流誘起部材72を通過する際、第1旋回流誘起板73及び第2旋回流誘起板74に衝突してガス流れが変化し、旋回しながら煙道13の下側から上側に向かって流れるため、第1の旋回流誘起板73、第2の旋回流誘起板74を迂回するようにして流れることで、排ガス12を旋回しながら煙道13の下側から上側に向かって流すことができるため、噴霧ノズル15によってNH4Cl溶液14が噴霧される際において、排ガス12とHClガス、NH3ガスとの混合を促進することができる。
【0078】
また、混合器60Cは、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が気化する領域よりも上流側に設けられているため、NH4Cl溶液14の液滴の蒸発が促進され、気化する前に混合器60Cと接触するのを防止できるため、ヒートショックによる煙道13の破損、煙道13の腐食、排ガス12中の灰の堆積などを防止することができる。
【0079】
よって、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が噴霧する領域よりも上流側に混合器60Cを設けて、排ガス12のガス流れに乱れを与え、軸流以外の速度を噴霧ノズル15から噴霧された液滴に与えることにより、熱伝達率の向上を図り、蒸発を促進することができる。
この塩化アンモニア液滴の蒸発の促進により、煙道内壁や煙道内部構造物への衝突を防ぐこととなり、前記煙道の腐食等に起因して発生する前記煙道の破損を防止することができる。
【0080】
煙道13内における排ガス12にNH3ガスの混合を促進させることができるため、排ガス12中のNH3ガスの濃度分布のばらつきは抑えられ、NH3ガスの濃度分布のばらつきは例えば5%程度の範囲内とし、ほぼ均一とすることができる。このため、還元脱硝装置18において脱硝触媒でのNOxの還元効率を向上させることができる。
【0081】
また、噴霧ノズル15から噴霧されたNH4Cl溶液14が気化する領域よりも上流側に混合器60を設けることで、煙道13内における排ガス12にNH3ガスの他にHClガスの混合も促進することができる。このため、排ガス12中のHClガスの濃度分布のばらつきは抑えられ、HClガスの濃度分布のばらつきについても例えば5%程度の範囲内とし、ほぼ均一とすることができる。このため、還元脱硝装置18において脱硝触媒でのHgの酸化性能を向上させることができる。
【0082】
また、図8〜図11に示すように、旋回流誘起部材72の幅L、高さDが、下記式(7)、(8)の範囲内であることが好ましい。
MIN(B、H)/10≦L≦MIN(B、H)・・・(7)
MIN(B、H)/10≦D≦5×MIN(B、H) ・・・(8)
但し、Bは設置位置における煙道の断面の長辺であり、Hは煙道の断面の短辺であり、MIN(B、H)は煙道の断面の長辺B、煙道の断面の短辺Hのうちの何れか短い方の辺である。煙道の断面の長辺B、短辺Hが同じ長さである場合にはどちらでもよい。
【0083】
旋回流誘起部材72を上記式(7)、(8)の範囲内とするのは、以下に示すように、混合器の圧損の条件、排ガス12中のNH3の濃度のバラツキ、製造する際の加工性の観点、現実の運転条件の観点、メンテナンス性の観点などを考慮して定める必要があるためである。
図14は、混合器の圧損と混合器の寸法の関係を示す図である。図14に示すように、混合器の圧損が25mmAq以下であるためには、下記式(9)を満たす必要がある。また、排ガス12中のNH3の濃度の濃度バラツキを5%以下とするためには、下記式(10)を満たす必要がある。
MIN(B、H)×D/L2≧2・・・(9)
MIN(B、H)×D/L2≦5・・・(10)
【0084】
即ち、圧損の条件として、混合器の圧損が25mmAq以下であるためには、上記式(9)を満たす必要がある。また、混合器の効果として排ガス12中のNH3の濃度の濃度バラツキを5%以下とするためには、上記式(10)を満たす必要がある。
【0085】
また、混合器は製造する際の加工性の観点、現実の運転条件の観点、メンテナンス性の観点から上記式(7)、下記式(11)を満たす必要がある。
MIN(B、H)/10≦L≦MIN(B、H)・・・(7)
MIN(B、H)/10≦D・・・(11)
【0086】
上記式(9)、(10)より、Dは下記式(12)のように表せる。
2L2/MIN(B、H)≦D≦5L2/MIN(B、H)・・・(12)
【0087】
上記式(12)に上記式(7)を代入すると、Dは下記式(13)のように表せる。
MIN(B、H)/50≦D≦5×MIN(B、H)・・・(13)
【0088】
そして、上記式(13)に上記式(11)を考慮すると、Dは上記式(8)のように表される。
MIN(B、H)/10≦D≦5×MIN(B、H) ・・・(8)
【0089】
このように、旋回流誘起部材72の幅L、高さDが、上記式(7)、(8)の範囲内にあることで、複数の旋回流誘起部材72を煙道13内に設置することができるため、排ガス12に対して、HCl、NH3の混合を促進させることができる。
【0090】
また、第1旋回流誘起板73および第2旋回流誘起板74の形状は、上部支持板77及び下部支持板76から中間部材75にかけて形成される三角形状に限定されるものではなく、排ガス12に旋回流を発生させ、排ガス12のHCl、NHとの混合を促進させることができる形状であればよい。例えば第1旋回流誘起板73および第2旋回流誘起板74の形状は、第2旋回流誘起板74及び第1旋回流誘起板73の一端側から他端側にかけて曲線型、波型などとしてもよい。
【0091】
従って、本実施例に係る排ガス処理装置100によれば、混合器60(60A〜60C)を設けることで、排ガス12中にHCl、NH3の混合を促進させることができるため、噴霧ノズル15より噴霧されたNH4Cl溶液14が気化して生じるNH3及びHClの濃度の分布の均一化を図ることができる。
これにより、還元脱硝装置18において脱硝触媒によりHgの酸化性能およびNOxの還元性能を向上させることができると共に、ヒートショックによる煙道13の破損、煙道13の腐食、排ガス11中の灰の堆積などを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
以上のように、本発明に係る排ガス処理装置は、煙道内に噴霧したNH4Cl溶液を煙道の内壁に付着しないように供給し、NH4Cl溶液の液滴から生じるHClガス、NH3ガスと排ガスとの混合の促進を図ることができるので、排ガス中のHg、NOxを除去する排ガス処理装置に用いるのに適している。
【符号の説明】
【0093】
100 排ガス処理装置
11 ボイラ
12 排ガス
13 煙道
14 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液
15、61 噴霧ノズル
16 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給手段(還元酸化助剤供給手段)
18 還元脱硝装置(還元脱硝手段)
19 熱交換器(エアヒータ)
20 集塵器
21 石灰石膏スラリー
22 湿式脱硫装置
25 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液供給管
26、33、47 空気
27、34 空気供給管
28 塩化アンモニウム(NH4Cl)溶液タンク
41 装置本体
42 吸収液送給ライン
43 ノズル
44 浄化ガス
45 煙突
46 水
48 脱水器
49 石膏
51 流量計
52 制御装置
53 NOx濃度計
54−1、54−2 水銀(Hg)濃度計
55 塔底部
56 酸化還元電位測定制御装置(ORPコントローラ)
60(60A〜60C) 混合器(混合手段)
72 旋回流誘起部材
73 第1旋回流誘起板
74 第2旋回流誘起板
75 中間部材(連結部)
76 下部支持板
77 上部支持板
V1〜V3 バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボイラからの排ガス中に含まれる窒素酸化物、水銀を除去する排ガス処理装置であって、
前記ボイラの下流の煙道内に、気化した際に酸化性ガスと還元性ガスとを生成する液体状の還元酸化助剤を噴霧ノズルにより液体状で噴霧する還元酸化助剤供給手段と、
前記排ガス中の窒素酸化物を前記還元性ガスで還元すると共に、前記酸化性ガス共存下で水銀を酸化する脱硝触媒を有する還元脱硝手段と、
該還元脱硝手段において酸化された水銀をアルカリ吸収液を用いて除去する湿式脱硫手段と、
前記噴霧ノズルよりも上流側に設けられ、排ガスのガス流れに乱れを与える混合器とを有することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記還元酸化助剤が、塩化アンモニウム溶液であることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記噴霧ノズルのノズル孔が、前記煙道の壁面から0.5m以上離した位置に設けられることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記混合器が、格子状であることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記混合器が、
煙道内に設置され、前記ガス流れの下流側に頂点を持った4角錐の対向2面を形成するよう配置された2枚の3角板と、前記頂点と頂点を接し、前記ガス流れの下流側に底面が位置する4角錐の対向2面で、前記上流側の対向2面と90度向きが捩られた対向2面を形成する3角板とによって構成された格子要素を、流体流路内に配置された全ての格子要素において隣接する格子要素の向きを90度ずつ変えて流体流れに直角方向に並設し、前記4角錐の底面が格子を形成するよう接続すると共に、当該格子要素の流体流れに直角方向の幅(B)と流体流れに平行方向の長さ(L)の比(L/B)が1.5〜2.0の範囲にあることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれか一つにおいて、
前記混合器が、
前記排ガスの入口側に対向面を有する一対の第1の旋回流誘起板と、
前記排ガスの排出側に対向面を有する一対の第2の旋回流誘起板とを有してなり、
第1の旋回流誘起板と第2の旋回流誘起板とを連結する連結部において前記第1の旋回流誘起板の対向面と第2の旋回流誘起板の対向面とが異なるように各々連結されている旋回流誘起部材であることを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか一つにおいて、
前記噴霧ノズルの近傍に前記煙道の内壁に沿って保護壁を設けたことを特徴とする排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−11316(P2012−11316A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−150512(P2010−150512)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】