排ガス処理装置
【課題】還元剤供給量を増加することなく、より高い脱硝率を安定的に得ることができる排ガス処理装置を提供する。
【解決手段】燃焼機器から排出された排ガスに水を噴霧して冷却する減温手段3と、減温手段で冷却された排ガスの除塵を行う除塵手段5と、除塵手段より上流側に設けられ排ガスに還元剤を供給する還元剤供給手段4とを有し、除塵手段5は触媒存在下で還元剤により排ガス中の窒素酸化物を還元する排ガス処理装置において、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と除塵手段5の脱硝率との関係に基づいて、減温手段3の水供給量を制御して排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段5の脱硝率を変化させる制御手段10を有し、制御手段10は、除塵手段出口側の出口NOx濃度が予め設定されたNOx濃度上限値以下となるように減温手段3の水供給量を制御する構成となっている。
【解決手段】燃焼機器から排出された排ガスに水を噴霧して冷却する減温手段3と、減温手段で冷却された排ガスの除塵を行う除塵手段5と、除塵手段より上流側に設けられ排ガスに還元剤を供給する還元剤供給手段4とを有し、除塵手段5は触媒存在下で還元剤により排ガス中の窒素酸化物を還元する排ガス処理装置において、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と除塵手段5の脱硝率との関係に基づいて、減温手段3の水供給量を制御して排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段5の脱硝率を変化させる制御手段10を有し、制御手段10は、除塵手段出口側の出口NOx濃度が予め設定されたNOx濃度上限値以下となるように減温手段3の水供給量を制御する構成となっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機器から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を触媒存在下で還元する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉や石炭焚きボイラ等の燃焼機器から排出される排ガス中には窒素酸化物(NOx)が含まれている。そのため、燃焼機器が具備する排ガス処理装置にはNOxを低減する手段が設けられている。ここで一例として、図13を参照して従来の排ガス処理装置を備えたゴミ焼却プラントの構成例を説明する。ゴミ焼却プラントでは、焼却炉1で発生した排ガスはボイラ2で熱回収された後、減温塔3で水噴霧により冷却される。次いで除塵手段5で排ガスの除塵が行なわれるとともに、必要に応じてこの上流側で排ガス中に供給された消石灰によりHCl除去、SOx除去が行われる。さらに除塵手段5の下流側で内部に触媒を有する脱硝手段7によりNOx除去が行われた後、煙突6より外部に排出される。
【0003】
このような排ガス処理装置に用いられる乾式の脱硝手段は、例えば、特許文献1(特開2010−172855号公報)等に開示されるように、除塵手段5の下流側に触媒を担持した脱硝手段7を設け、その上流側で排ガス中に供給した還元剤7aにより脱硝手段7でNOxを還元させる構成、又は特許文献2(特開2006−26525号公報)に開示されるように、除塵手段5に触媒を担持させ、その上流側で排ガス中に供給した還元剤5aにより除塵手段5でNOxを還元させる構成等が挙げられる。排ガス処理装置には、これらの脱硝手段が一又は複数組み合わせて用いられている。
【0004】
上記したような触媒脱硝手段では、還元剤とNOxの反応効率を高く維持するために、触媒反応の温度を適切に制御する方法が提案されている。例えば特許文献2には、脱硝触媒を担持した除塵手段に供給する排ガス温度を250℃〜300℃の範囲に制御する構成が開示されている。この温度範囲は触媒活性温度に対応している。また、特許文献3(特開2003−80027号公報)には、冷却塔、バグフィルタの後段にアンモニアを用いて触媒脱硝する脱硝塔が設けられた排ガス処理において、脱硝塔への排ガス温度を190℃〜220℃に維持させるように冷却塔の冷却水流量を制御する構成が開示されている。この温度範囲は、消石灰等によるHCl及びSOx除去性能、バグフィルタの耐熱性や脱硝塔での脱硝率を考慮して設定されたものである。
【0005】
一方、従来の脱硝手段では、脱硝率を高く維持するために排ガス中のNOx濃度に対して過剰の還元剤を供給しており、このため還元剤のランニングコストが高く不経済であり、また未反応の還元剤が外部へ流出してしまうという問題があった。
そこで、特許文献1には、還元剤噴射手段と、その下流側に配置されたアンモニアSCR触媒手段と、この触媒手段の下流側に配置されたアンモニア濃度計測手段と、アンモニア濃度に基づいて還元剤の噴射量を制御する制御手段とを備えた構成が開示されている。この構成によりアンモニアが流出しにくく、かつ排ガス中の脱硝率を高く維持することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−172855号公報
【特許文献2】特開2006−26525号公報
【特許文献3】特開2003−80027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1は、アンモニアSCR触媒手段出口のアンモニア濃度に基づいてアンモニア供給量を制御する構成としており、この構成によれば還元剤の流出は防止できるが、従来は過剰に供給していた還元剤量に対して、アンモニアが流出しないように少なめに還元剤量が設定されるため、脱硝率を安定的に高く維持することは困難であった。
また、特許文献2又は特許文献3では、排ガスの脱硝率を向上させるために脱硝手段へ導入される排ガス温度を制御する構成としているが、脱硝率は排ガス温度を一定に保っても変動することがある。これは、排ガスの水分濃度が変動するためである。例えばゴミ焼却炉の排ガスはゴミ性状や燃焼状態によって水分濃度が大きく変動するが、そのため脱硝率も変動するため、一定の脱硝率を安定的に得ることができなかった。
【0008】
したがって、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、還元剤供給量を増加することなく、より高い脱硝率を安定的に得ることができる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の排ガス処理装置は、燃焼機器から排出された排ガスに水を噴霧して冷却する減温手段と、前記減温手段で冷却された前記排ガスの除塵を行う除塵手段と、前記除塵手段より上流側に設けられ前記排ガスに還元剤を供給する還元剤供給手段とを有し、前記除塵手段は触媒存在下で前記還元剤により排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元する排ガス処理装置において、前記除塵手段に導入される排ガスの水分濃度と前記除塵手段の脱硝率との関係に基づいて、前記減温手段の水供給量を制御して排ガスの水分濃度を調整することにより前記除塵手段の脱硝率を変化させる制御手段を有し、前記制御手段は、前記除塵手段出口側の出口NOx濃度が予め設定されたNOx濃度上限値以下となるように前記減温手段の水供給量を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段における脱硝率を変化させる構成としたため、還元剤供給量を増加させることなく、より高い脱硝率を得ることが可能となる。したがって、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
【0011】
ここで、除塵手段における排ガスの脱硝率と、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度との関係を説明する。図3は排ガスの水分濃度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。同グラフに示されるように、排ガスの水分濃度が増大するほど脱硝率は略反比例的に低下する。この関係を利用して、排ガスの水分濃度を調整することによって脱硝率を変化させることができる。さらに本発明では、除塵手段上流側の減温手段での水供給量制御により排ガスの水分濃度を調整する構成としているため、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。なお、前記予め設定されたNOx濃度上限値とは、NOx排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【0012】
また、前記除塵手段入口側の排ガスの水分濃度を検出する水分濃度検出手段と、前記除塵手段入口側の排ガスの温度を検出する温度検出手段と、前記除塵手段入口側の排ガスの流量を検出する流量検出手段と、前記除塵手段入口側の排ガスの入口NOx濃度を検出する入口NOx濃度検出手段とをさらに有し、前記制御手段は、各検出手段で検出された前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給手段で供給した還元剤供給量とを用いて前記除塵手段の推定脱硝率を求め、該推定脱硝率と前記NOx濃度上限値とから算出される前記除塵手段入口側の目標NOx濃度と、前記入口NOx濃度検出手段で検出される前記入口NOx濃度とを比較し、前記入口NOx濃度が前記目標NOx濃度を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることが好ましい。
【0013】
本構成は、除塵手段入口側で検出された排ガスの入口NOx濃度が除塵手段入口側の目標NOx濃度を超える場合に、減温手段の水供給量を減少させる構成となっている。すなわち、各検出時点において除塵手段が保有する脱硝性能では排ガスをNOx濃度上限値以下まで脱硝できない場合に、減温手段の水供給量を減少させて排ガスの水分濃度を低下させるようにしている。これにより図3のグラフに示した関係から除塵手段の脱硝率を高くすることができ、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。また本構成では、除塵手段入口側の排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに基づいて推定脱硝率を求め、これに基づいて減温手段の水供給量を制御する構成としているため、制御の時間遅れを最小限に抑えることができる。
【0014】
なお、前記目標NOx濃度とは、除塵手段出口側のNOx濃度がNOx濃度上限値となるときの除塵手段入口側のNOx濃度であり、検出された入口NOx濃度がこの目標NOx濃度以下であれば除塵手段出口側のNOx濃度がNOx濃度上限値以下となる。
また、前記推定脱硝率とは、除塵手段の脱硝率に影響を与える因子(ここでは、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度、温度、流量、及び還元剤供給手段で供給した還元剤供給量)を用いて、所定の演算式又はこれらの関係性を示すマップ等により除塵手段が保有する脱硝率を推定した値である。
また本構成において各検出手段は、除塵手段の入口側に計測器を配置して排ガスの水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を直接計測する手段であってもよいし、燃焼機器の燃焼状態により水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を推定する手段であってもよい。さらにまた、前記還元剤供給量は、排ガス中に供給する還元剤供給量であり、具体的には、還元剤供給ライン上に設けられる還元剤供給量調整手段で調整される還元剤供給量である。
【0015】
さらに、前記制御手段は、前記推定脱硝率を求める際に、前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給量とに加えて、前記触媒の使用時間、前記除塵手段入口側のSOx濃度、前記除塵手段入口側の入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値に基づいて前記推定脱硝率を求めるようにしてもよい。
除塵手段の脱硝率に影響を与える因子は、水分濃度、温度、流量、及び還元剤供給量に比べてその依存性は小さいが、触媒の使用時間、SOx濃度、入口還元剤濃度がある。具体的には、触媒は使用時間が長くなるほど活性が低下し、またSOx濃度が高いほど触媒が被毒し活性が低下するため脱硝率が低下する。さらに触媒還元反応において還元剤濃度が高いほど反応が促進されるため脱硝率が向上する。したがって、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに加えて、触媒使用時間とSOx濃度と入口還元剤濃度とのうち少なくとも1の検出値を推定脱硝率の算出に用いることによって、より正確な推定脱硝率を得ることができ、精度の高い制御が可能となる。なお、前記入口還元剤濃度は、除塵手段入口側の排ガス中の還元剤濃度であり、具体的には、除塵手段入口側の排ガスライン上に設けられる還元剤濃度検出手段により検出される還元剤濃度である。
【0016】
また、前記除塵手段出口側の排ガスの出口NOx濃度を検出する出口NOx濃度検出手段をさらに有し、前記制御手段は、前記出口NOx濃度検出手段で検出された前記出口NOx濃度と前記NOx濃度上限値とを比較し、前記出口NOx濃度が前記NOx濃度上限値を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることが好ましい。
本構成は、除塵手段出口側で検出された排ガスの出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温手段の水供給量を減少させる構成としている。これにより図3のグラフに示した関係から除塵手段の脱硝率を高くすることができ、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。また本構成は、排ガスの出口NOx濃度を直接検出し、この出口NOx濃度とNOx濃度上限値とを比較する構成としているため、演算処理の簡単化が図れる。
【0017】
さらに、前記制御手段は、前記除塵手段入口側の排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように前記減温手段の水供給量を制御することが好ましい。
ここで前記所定の温度範囲とは、除塵手段の耐熱性、触媒活性の温度依存性、消石灰等によるHCl及びSOx除去性能、又はダイオキシンの再合成温度等に基づいて適宜設定されるものであり、例えば、温度上限値は除塵手段の耐熱性に基づいて設定され、温度下限値は触媒活性温度に基づいて設定される。
本構成によれば、除塵手段入口側の排ガス温度を所定の温度範囲内に維持することによって、除塵手段を耐熱範囲内で稼働し耐久性の低下を防止するとともに脱硝性能を高く保持し、その円滑な稼働を維持することが可能となる。
【0018】
さらにまた、前記除塵手段出口側の排ガスの出口還元剤濃度を検出する出口還元剤濃度検出手段をさらに有し、前記制御手段は、前記減温手段の水供給量制御の前又は後に、前記出口還元剤濃度検出手段で検出された前記出口還元剤濃度が予め設定された還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で前記還元剤供給手段の還元剤供給量を制御することが好ましい。
このように、減温手段の水供給量制御とともに還元剤の供給量制御を行うことによって、排ガス中のNOx濃度が高い場合であっても除塵手段から排出される排ガス中の還元剤濃度を低減しつつ高い脱硝率を得ることが可能となる。なお、還元剤濃度上限値は、還元剤の排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のように本発明によれば、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段における脱硝率を変化させる構成としたため、還元剤供給量を増加させることなく、より高い脱硝率を得ることが可能となる。したがって、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
さらに本発明では、除塵手段上流側の減温手段での水供給量制御により排ガスの水分濃度を調整する構成としているため、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態が適用されるゴミ焼却プラントの全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図3】排ガスの水分濃度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。
【図4】排ガスの温度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。
【図5】排ガスの流量と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態における制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態の応用例に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図8】異なるSO2濃度の排ガスにおける触媒使用時間と脱硝率の関係をそれぞれ概念的に示したグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図10】本発明の第2実施形態における制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図12】本発明の第3実施形態における制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図13】従来のゴミ焼却プラントの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。なお、本実施形態では、一例として排ガス処理装置をゴミ焼却プラントに取り付けた場合につき説明するが、排ガス処理装置を取り付ける燃焼機器はこれに限定されるものではなく、熱分解炉、溶融炉、ボイラ、内燃機関、外燃機関等種々の燃焼機器に適用することができる。より好ましくは、本発明は焼却炉、熱分解炉、溶融炉、ボイラに取り付けられる排ガス処理装置に適している。
【0022】
まず最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る排ガス処理装置が適用されるゴミ焼却プラントの全体構成を説明する。
ゴミ焼却プラントは、主に、焼却炉1と、ボイラ2と、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、煙突6とを有する。
【0023】
焼却炉1は、ゴミを燃焼させる燃焼機器であり、ストーカ式焼却炉、流動床式焼却炉、バーナ式焼却炉等の各種の焼却炉を用いることができる。例えばストーカ式焼却炉を用いる場合、投入ホッパ11から投入されたゴミは、火炉12内で火格子上を移送されながら火炉底部から導入される一次空気により燃焼する。この燃焼により発生した排ガス中の未燃分は、火炉上方に導入される二次空気により再燃焼する。焼却炉1でゴミを燃焼させることにより発生した燃焼灰は灰処理部13に送られ、排ガスは配管によりボイラ2に送られる。
ボイラ2は、焼却炉1から排出される高温の排ガスから熱を回収する。ボイラ2で熱を回収された排ガスは減温塔3に送られる。
【0024】
減温塔3は、水が貯留された水タンク31と接続されており、ボイラ2から送られた排ガスに水タンク31からの水を噴霧し、排ガスを冷却する。水タンク31から減温塔3に供給される水は、ポンプ32やバルブ(不図示)等の水供給量調整手段により調整される。具体的には、水タンク31からポンプ32にて配管へ液送されて、減温塔3内のノズルから排ガス中に水が噴霧される構成としてもよい。なお水供給量調整手段は、後述する制御手段10からの制御信号により制御される。減温塔3で冷却された排ガスは除塵手段5に送られる。
【0025】
減温塔3と除塵手段5とを接続する配管には、還元剤供給手段4が設けられている。還元剤供給手段4は、排ガス中に還元剤を供給する手段である。還元剤の状態は液体、気体、粉末固体のいずれであってもよく、具体的に還元剤としては、尿素水、アンモニア水、アンモニアガス等が用いられる。還元剤供給手段4は、還元剤を貯留する還元剤タンク41と、還元剤の供給量を調整するポンプ42やバルブ(不図示)等の還元剤供給量調整手段とを有している。この還元剤供給量調整手段は、後述する制御手段10からの制御信号により制御される。なお、還元剤供給手段4は、除塵手段5より上流側の配管であればどの位置に接続されてもよいが、最も好ましい接続位置は、減温塔3と除塵手段5との間の配管である。
【0026】
また、除塵手段5の上流側の配管に、添加剤供給手段8を接続してもよい。添加剤供給手段8は、還元剤以外の添加剤を供給する手段である。添加剤としては、例えば排ガス中に含まれるHClやSOx等の酸性ガスを中和する消石灰、排ガス中のダイオキシン類を吸着除去する活性炭、除塵手段5の濾布の目詰まりを抑制する特反剤(珪藻土)等が挙げられる。
【0027】
除塵手段5は、配管を介して減温塔3と接続されており、減温塔3から該配管を通過した排ガスが導入される。除塵手段5は内部にNOx還元用触媒を有している。好適には、除塵手段5として、濾布に触媒を担持した触媒担持式バグフィルタが用いられる。触媒には、担体として、酸化チタン、アルミナ、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、セリア−ジルコニア、マグネシア、ニオブ、タンタル等の金属酸化物や複合酸化物等が用いられ、これに加えて活性金属成分としてバナジウム、モリブデン、タングステン、クロム、マンガン、銅、コバルトのうち少なくとも1種類以上が用いられる。その中でも好適にはバナジウム、モリブデン、タングステンのうち少なくともいずれかを活性金属成分とする酸化チタン系触媒が用いられる。
【0028】
除塵手段5は、主に、排ガス中に含まれる煤塵を除去するとともに、排ガス中のNOxと還元剤とを触媒存在下で反応させ、NOxを還元する。さらに除塵手段5では、その上流側で上記した各種添加剤が添加された場合には、排ガス中の酸性ガスと消石灰との中和反応で得られた塩類やダイオキシン類等を吸着した活性炭を含む煤塵を除去する。除塵手段5で除塵、NOx還元が行われて浄化された排ガスは煙突6から排出される。
【0029】
次に、以下の第1実施形態乃至第3実施形態により本発明の排ガス処理装置におけるNOx低減手段の具体的な構成を説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図2は本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
排ガス処理装置は、主に、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、制御手段10と、水分濃度検出手段51と、温度検出手段52と、流量検出手段53と、入口NOx濃度検出手段54とを有している。
【0031】
水分濃度検出手段51は、除塵手段5の入口側の排ガスの水分濃度を検出する手段である。
温度検出手段52は、除塵手段5の入口側の排ガスの温度を検出する手段である。
流量検出手段53は、除塵手段5の入口側の排ガスの流量を検出する手段である。
入口NOx濃度検出手段54は、除塵手段5の入口側の排ガスに含まれる入口NOx濃度を検出する手段である。
【0032】
上記した各検出手段は、除塵手段5の入口側に計測器を配置して水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を直接計測する手段であってもよいし、燃焼機器の燃焼状態により水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を推定する手段であってもよい。前者の場合は、直接計測することにより精度の高い制御が可能となり、後者の場合は各計測器を設置する必要がないため装置を簡素化できる。
なお、除塵手段5の入口側とは、減温塔3と除塵手段5の間の配管上又は除塵手段5の入口部のことである。
【0033】
制御手段10は、各検出手段で検出された検出信号と還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量とが入力され、これらの検出信号及び還元剤供給量を用いて演算を行い、その演算結果をもとに生成した制御信号を減温塔3の水供給量調整手段へ出力することにより減温塔3の水供給量を制御する機能を有している。なお、還元剤供給量は、排ガス中に供給する還元剤供給量であり、具体的には、還元剤供給ライン上に設けられる還元剤供給手段4の還元剤供給量調整手段で調整される還元剤供給量である。
この制御手段10の主たる制御は、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と除塵手段5の脱硝率との関係に基づいて減温塔3の水供給量を制御するものであり、ひいては排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段5の脱硝率を変化させる。
【0034】
第1実施形態において、制御手段10に入力される検出(入力)信号は、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とであり、制御手段10から出力する制御(出力)信号は、減温塔3の水供給量である。また制御手段10には、予め除塵手段出口側のNOx濃度上限値が設定されている。このNOx濃度上限値は、NOx排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【0035】
具体的に制御手段10では、水分濃度検出手段51から入力された水分濃度と、温度検出手段52から入力された温度と、流量検出手段53から入力された流量と、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量とを用いて除塵手段5の推定脱硝率を求める。
さらに、この推定脱硝率とNOx濃度上限値とから除塵手段入口側の目標NOx濃度を算出する。前記目標NOx濃度とは、除塵手段出口側のNOx濃度がNOx濃度上限値となるときの除塵手段入口側のNOx濃度であり、検出された入口NOx濃度がこの目標NOx濃度以下であれば出口NOx濃度がNOx濃度上限値以下となる。
そして、この目標NOx濃度と、入口NOx濃度検出手段54で検出された入口NOx濃度とを比較し、入口NOx濃度が目標NOx濃度を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行う。
なお、制御手段10では、入口NOx濃度と推定脱硝率とから出口NOx濃度を算出し、この出口NOx濃度とNOx濃度上限値とを比較して、出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行うようにしてもよい。
【0036】
ここで、図3乃至図5を用いて、除塵手段5の脱硝率に影響を与える因子と、除塵手段5の脱硝率との関係について説明する。図3は排ガスの水分濃度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフで、図4は排ガスの温度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフで、図5は排ガスの流量と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。なお、還元剤供給量が脱硝率に影響を与えることは周知であるため、この関係についてはここでは言及しない。
【0037】
図3に示すように、排ガスの水分濃度と脱硝率の関係は、排ガスの水分濃度が高くなるほど略反比例的に脱硝率が低下する。この排ガスの水分濃度と脱硝率の関係は、除塵手段5の推定脱硝率を算出する際に用いられるとともに、減温塔3の水供給量制御にも用いられる。すなわち、減温塔3の水供給量制御においては、所望の脱硝率が得られるように排ガスの水分濃度を調整するようになっており、除塵手段5に導入される排ガス中のNOx濃度が高いほど水分濃度を低下させるような減温塔3の水供給量制御を行う。例えば、図3に示されるように水分濃度を15%以下に調整することで脱硝率を大幅に向上させることが可能である。
【0038】
図4に示すように、排ガスの温度と脱硝率の関係は、排ガス温度が高くなるほど触媒還元反応が促進されるため排ガスの脱硝率が高くなる。この関係を示す曲線は、高温側の脱硝率が、触媒の脱硝性能に基づく所定の脱硝率に収束するような曲線で表される。排ガス温度と脱硝率の関係は、除塵手段5の推定脱硝率を算出する際に用いられる。
また図5に示すように、排ガスの流量と脱硝率の関係は、排ガス流量が大きくなるほど触媒単位体積当たりの排ガス処理量が増大するため排ガスの脱硝率が低くなる。この関係を示す曲線は、排ガス流量が大きくなるほど脱硝率が大幅に低下するような曲線で表される。排ガス流量と脱硝率の関係は、除塵手段5の推定脱硝率を算出する際に用いられる。
【0039】
推定脱硝率は、脱硝率に影響を与える因子(ここでは排ガスの水分濃度、温度、流量、還元剤供給量)を用いて、所定の演算式又はこれらの関係性を示すマップ等により除塵手段5が保有する脱硝率を推定した値である。
マップを用いる場合は、除塵手段5の脱硝率に影響を与える因子と脱硝率との関係性を示すマップを予め用意しておき、これを用いて推定脱硝率を求める。
演算式を用いる場合は、排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とをパラメータとした式により推定脱硝率を求める。
【0040】
また、制御手段10は、温度検出手段52で検出される排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように減温塔3の水供給量を制御する構成とすることが好ましい。前記所定の温度範囲とは、除塵手段5の耐熱性、触媒活性の温度依存性、消石灰等によるHCl及びSOx除去性能、又はダイオキシンの再合成温度等に基づいて適宜設定されるものであり、例えば、温度上限値は除塵手段5の耐熱性に基づいて設定され、温度下限値は触媒活性温度に基づいて設定される。
【0041】
次に、図6のフローチャートを用いて、第1実施形態における制御手段10のNOx低減処理の一例を説明する。なお、以下の説明で記載する符号は図1及び図2の符号と同一である。
まず、水分濃度検出手段51で検出された水分濃度(CH2Oin)、温度検出手段52で検出された温度(Tin)、流量検出手段53で検出された流量(Qin)、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量(S)が制御手段10に入力されたら、制御手段10は、ステップS1として、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とから除塵手段5の推定脱硝率(ηA)を算出する。推定脱硝率の算出方法は上述した通りである。
さらに、制御手段10は、推定脱硝率(ηA)とNOx濃度上限値(CA2)とに基づいて、以下の式(2)により除塵手段入口側の目標NOx濃度(CA1)を算出する。
CA1=CA2/(1−ηA) …(2)
【0042】
次いで、制御手段10は、ステップS2として、入口NOx濃度検出手段54で検出された入口NOx濃度(CNOxin)と、上記で算出した目標NOx濃度(CA1)とを比較する。ここで、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)以下の場合、除塵手段5により排ガス中のNOx濃度をNOx濃度上限値以下とすることができると判断し、減温塔3の水供給量を制御することなくステップS1に戻る。一方、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)を超える場合、ステップS3で減温塔3の水供給量を減少する。つまり、減温塔3で排ガスに噴霧する水の量を減少する。このとき、水供給量の減少幅は一定であってもよいし、予め設定された制御方法に従って水供給量の減少幅を調整してもよい。水供給量の減少幅を調整する場合、例えば、入口NOx濃度と目標NOx濃度との差分に応じて水供給量の減少幅を変化させるようにしてもよい。
【0043】
減温塔3の水供給量を減少した後又は減少している間に、制御手段10は、ステップS4として、温度検出手段52で検出した温度(Tin)と温度しきい値(TA1)とを比較する。これは、除塵手段入口側の排ガスの温度(Tin)が所定の温度範囲内に維持されているか否かを判断するもので、ここでは温度(Tin)が、所定の温度範囲の上限値である温度しきい値(TA1)を超えるか否かを判断している。
排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)を超える場合、制御手段10は、ステップS5で減温塔3の水供給量を増量する。このとき、水供給量の増量幅は一定であってもよいし、予め設定された方法に従って水供給量の増量幅を調整してもよい。例えば、排ガス温度と温度しきい値との差分に応じて水供給量の増量幅を変化させるようにしてもよい。一方、排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)以下の場合、水供給量を増量することなくステップS1に戻る。
【0044】
本実施形態によれば、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段5における脱硝率を変化させる構成としたため、還元剤供給量を増加させることなく、より高い脱硝率を得ることが可能となる。したがって、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
また本実施形態では、除塵手段上流側の減温塔3での水供給量制御により排ガスの水分濃度を調整する構成としているため、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
【0045】
また、本第1実施形態によれば、除塵手段入口側で検出された排ガスの入口NOx濃度が除塵手段入口側の目標NOx濃度を超える場合に、減温塔3の水供給量を減少させて除塵手段5の脱硝率を高くしているため、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。さらに本第1実施形態では、除塵手段入口側の排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに基づいて推定脱硝率を求め、これに基づいて減温塔3の水供給量を制御する構成としているため、制御の時間遅れを最小限に抑えることができる。
さらにまた、除塵手段入口側の排ガス温度を所定の温度範囲内に維持することにより、除塵手段5を耐熱範囲内で稼働し耐久性の低下を防止するとともに脱硝性能を高く保持し、その円滑な稼働を維持することが可能となる。
【0046】
また、上記した第1実施形態において、以下の構成を備えていてもよい。
減温塔3の水供給系統を、ポンプ32aを有する高流量系統と、ポンプ32bを有する低流量系統との2系統からなる構成とすることが好ましい。高流量系統は大まかな水供給量制御を行い、低流量系統は微細な水供給量制御を行う。これらの2つの水供給系統をそれぞれ適宜組み合わせて減温塔3の水供給量を制御することによって、より緻密な排ガスの水分濃度調整が可能となる。
【0047】
さらにまた図7に示すように、制御手段10で推定脱硝率を求める際に、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに加えて、触媒の使用時間、除塵手段入口側のSOx濃度、除塵手段入口側の入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値に基づいて推定脱硝率を求めるようにしてもよい。なお図7は本発明の第1実施形態の応用例に係る排ガス処理装置の構成図である。
この応用例に係る排ガス処理装置は、図2に示した構成に加えて、除塵手段入口側の入口還元剤濃度を検出する入口還元剤濃度検出手段55、除塵手段入口側のSOx濃度を検出するSOx濃度検出手段56、触媒の使用時間を検出するタイマ57のうち少なくとも1を有する。ここで、前記入口還元剤濃度は、除塵手段入口側の排ガス中の還元剤濃度であり、具体的には、除塵手段入口側の排ガスライン上に設けられる還元剤濃度検出手段55により検出される還元剤濃度である。
【0048】
図8は、異なるSO2濃度の排ガスにおける触媒使用時間と脱硝率の関係をそれぞれ概念的に示したグラフである。ここでSO2濃度は、A1ppm<A2ppm<A3ppmの関係を有している。同グラフに示すように、触媒は使用時間が長くなるほど活性が低下し、また排ガス中のSOx濃度が高いほど触媒が被毒し活性が低下するため脱硝率が低くなる。
さらに、触媒還元反応において反応場で還元剤濃度が高いほど反応が促進されるため脱硝率が向上する。この関係性を示すグラフは省略する。
このように、除塵手段5における脱硝率は、水分濃度、温度、流量、還元剤供給量に比べてその依存性は小さいが、触媒の使用時間、SOx濃度、入口還元剤濃度の影響も受けている。したがって制御手段10では、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに加えて、タイマ57で検出された触媒使用時間、SOx濃度検出手段56で検出されたSOx濃度、入口還元剤濃度検出手段55で検出された入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値を推定脱硝率の算出に用いることによって、より正確な推定脱硝率を得ることができ、精度の高い制御が可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
図9は本発明の第2実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
排ガス処理装置は、主に、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、制御手段10と、温度検出手段52と、出口NOx濃度検出手段58と、出口還元剤濃度検出手段59とを有している。
【0050】
温度検出手段52は、除塵手段5の入口側の排ガスの温度を検出する手段である。
出口NOx濃度検出手段58は、除塵手段5の出口側の排ガスに含まれる出口NOx濃度を検出する手段である。
出口還元剤濃度検出手段59は、除塵手段5の出口側の排ガスに含まれる出口還元剤濃度を検出する手段である。
出口NOx濃度検出手段58又は出口還元剤濃度検出手段59は、除塵手段5の出口側に計測器を設置し各検出値をオンサイト計測する構成としてもよいし、除塵手段出口側の配管から排ガスを抜き出し外部で分析して各検出値を取得する構成としてもよいが、特に、検出値に対して迅速な制御が可能であるオンサイト計測を用いることが好ましい。
なお、除塵手段5の入口側とは、減温塔3と除塵手段5の間の配管上又は除塵手段5の入口部のことであり、除塵手段5の出口側とは、除塵手段5と煙突6との間の配管上又は除塵手段5の出口部のことである。
【0051】
第2実施形態において、制御手段10に入力される検出(入力)信号は、除塵手段5から排出された排ガスの出口NOx濃度と出口還元剤濃度とであり、制御手段10から出力する制御(出力)信号は、減温塔3の水供給量と還元剤供給手段4の還元剤供給量とである。また制御手段10には、予め除塵手段出口側のNOx濃度上限値が設定されている。このNOx濃度上限値は、NOx排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【0052】
具体的に制御手段10では、出口NOx濃度検出手段58から入力された出口NOx濃度と、NOx濃度上限値とを比較し、出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行う。
また制御手段10では、減温塔3の水供給量制御の前又は後に、出口還元剤濃度検出手段59で検出された出口還元剤濃度が、予め設定された還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で、還元剤供給手段4の還元剤供給量を制御してもよい。なお、還元剤濃度上限値は、還元剤の排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
さらに制御手段10は、第1実施形態と同様に、温度検出手段52で検出される排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように減温塔3の水供給量を制御する構成とすることが好ましい。
【0053】
次に、図10のフローチャートを用いて、第2実施形態における制御手段10のNOx低減処理の一例を説明する。なお、以下の説明で記載する符号は図9の符号と同一である。
まず、出口NOx濃度検出手段58で検出された出口NOx濃度(CNOxout)が制御手段10に入力されたら、制御手段10は、ステップS11として、出口NOx濃度(CNOxout)と、NOx濃度上限値(CA2)とを比較する。ここで、出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)を超える場合、さらに制御手段10は、ステップS12として、出口還元剤濃度検出手段59で検出された出口還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。なお、ここでは一例として還元剤にアンモニア水を用いた場合を想定している。出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、ステップS13で還元剤供給量を増量する。このとき、還元剤供給量の増量幅は一定であってもよいし、予め設定された方法に従って還元剤供給量の増量幅を調整してもよい。例えば、出口NOx濃度とNOx濃度上限値との差分に応じて還元剤供給量の増量幅を変化させるようにしてもよい。
【0054】
一方、出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)以下の場合には、さらにステップS14として、還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。ここで、還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、一連の処理を終了してスタートに戻る。他方、ステップS12又はステップS14で、還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)を超える場合、ステップS15で減温塔3の水供給量を減少する。このとき、水供給量の減少幅は一定であってもよいし、予め設定された制御方法に従って水供給量の減少幅を調整してもよい。水供給量の減少幅を調整する場合、例えば、出口NOx濃度とNOx濃度上限値との差分に応じて水供給量の減少幅を変化させるようにしてもよい。
【0055】
そして、減温塔3の水供給量を減少した後又は減少している間に、制御手段10は、ステップS16として、温度検出手段52で検出された温度(Tin)と温度しきい値(TA1)とを比較する。排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)を超える場合、制御手段10は、ステップS17で減温塔3の水供給量を増量する。このとき、水供給量の増量幅は減少させるときと同様に一定でもよいし増量幅を調整してもよい。他方、排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)以下の場合、ステップS18で還元剤供給量を減少する。いずれの場合も制御が終了したらスタートに戻る。
【0056】
本実施形態によれば、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
また本実施形態では、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
さらに本第2実施形態によれば、除塵手段出口側で検出された排ガスの出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる構成としている。これにより除塵手段5の脱硝率を高くすることができ、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。さらにまた本第2実施形態は、排ガスの出口NOx濃度を直接検出し、この出口NOx濃度とNOx濃度上限値とを比較する構成としているため、演算処理の簡単化が図れる。
【0057】
(第3実施形態)
図11は本発明の第3実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
排ガス処理装置は、主に、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、制御手段10と、水分濃度検出手段51と、温度検出手段52と、流量検出手段53と、入口NOx濃度検出手段54と、出口NOx濃度検出手段58と、出口還元剤濃度検出手段59とを有している。各検出手段の構成は第1実施形態、第2実施形態と同一である。
【0058】
第3実施形態において、制御手段10に入力される検出(入力)信号は、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量と、さらに除塵手段5から排出された排ガスの出口NOx濃度と出口還元剤濃度とであり、制御手段10から出力する制御(出力)信号は、減温塔3の水供給量と還元剤供給手段4の還元剤供給量とである。また制御手段10には、除塵手段出口側のNOx濃度上限値と、除塵手段出口側の還元剤濃度上限値とが予め設定されている。
【0059】
具体的に制御手段10では、水分濃度検出手段51から入力された水分濃度と、温度検出手段52から入力された温度と、流量検出手段53から入力された流量と、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量とを用いて除塵手段5の推定脱硝率を求める。次いで、この推定脱硝率とNOx濃度上限値とから除塵手段入口側の目標NOx濃度を算出する。そして、この目標NOx濃度と、入口NOx濃度検出手段54で検出された入口NOx濃度とを比較し、入口NOx濃度が目標NOx濃度を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行う。
【0060】
また制御手段10では、出口NOx濃度検出手段58から入力された出口NOx濃度と、NOx濃度上限値とを比較し、出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に、還元剤供給手段4の還元剤供給量を増量させる制御を行う。このとき、出口還元剤濃度検出手段59で検出された出口還元剤濃度が還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で還元剤供給量を制御する。
さらにまた制御手段10は、第1実施形態と同様に、温度検出手段52で検出される排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように減温塔3の水供給量を制御する構成とすることが好ましい。
【0061】
次に、図12のフローチャートを用いて、第3実施形態における制御手段10のNOx低減処理の一例を説明する。なお、以下の説明で記載する符号は図11の符号と同一である。
まず、水分濃度検出手段51で検出された水分濃度(CH2Oin)、温度検出手段52で検出された温度(Tin)、流量検出手段53で検出された流量(Qin)、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量(S)が制御手段10に入力されたら、制御手段10は、ステップS21として、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とから除塵手段5の推定脱硝率(ηA)を算出する。
【0062】
さらに、制御手段10は、推定脱硝率(ηA)とNOx濃度上限値(CA2)とに基づいて、第1実施形態で示した式(2)により除塵手段入口側の目標NOx濃度(CA1)を算出する。次いで、制御手段10は、ステップS22として、入口NOx濃度検出手段54で検出した入口NOx濃度(CNOxin)と、目標NOx濃度(CA1)とを比較する。ここで、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)以下の場合、除塵手段5にて排ガス中のNOx濃度をNOx濃度上限値以下に抑えることができると判断し、減温塔3の水供給量を制御することなくステップS21に戻る。一方、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)を超える場合、ステップS23で減温塔3の水供給量を減少する。
【0063】
減温塔3の水供給量を減少した後又は減少している間に、制御手段10は、ステップS24として、温度検出手段52で検出した排ガス温度(Tin)と温度しきい値(TA1)とを比較する。排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)を超える場合、制御手段10は、ステップS25で減温塔3の水供給量を増量する。他方、排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)以下の場合、次いでステップS26として、出口NOx濃度検出手段58で検出された出口NOx濃度(CNOxout)と、NOx濃度上限値(CA2)とを比較する。出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)を超える場合、さらに制御手段10は、ステップS27として、出口還元剤検出手段59で検出された出口還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。ここで、出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、ステップS28で還元剤供給量を増量する。他方、還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)を超える場合、ステップS29で触媒の回復処理を行う。このとき、同時に還元剤供給量を減少させてもよい。触媒の回復処理は、例えば、加熱空気を除塵手段5に流通させて触媒の活性を回復させる。また回復処理では、触媒を新規な触媒に交換してもよい。
【0064】
一方、ステップS26で、出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)以下の場合、さらにステップS30として、出口還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。ここで、出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、一連の処理を終了してスタートに戻る。他方、出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)を超える場合、ステップ31で還元剤供給量を減少する。
【0065】
本実施形態によれば、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
また本実施形態では、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
さらに本第3実施形態によれば、上記した第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた構成とすることにより、制御の時間遅れを最小限に抑えることができるとともに、より精度の高い制御が可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 焼却炉
2 ボイラ
3 減温塔
4 還元剤供給手段
5 除塵手段
10 制御手段
31 水貯留タンク
32、32a、32b、42 ポンプ
41 還元剤タンク
51 水分濃度検出手段
52 温度検出手段
53 流量検出手段
54 入口NOx濃度検出手段
55 入口還元剤濃度検出手段
56 SOx濃度検出手段
57 タイマ
58 出口NOx濃度検出手段
59 出口還元剤濃度検出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機器から排出される排ガス中に含まれる窒素酸化物を触媒存在下で還元する排ガス処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴミ焼却炉や石炭焚きボイラ等の燃焼機器から排出される排ガス中には窒素酸化物(NOx)が含まれている。そのため、燃焼機器が具備する排ガス処理装置にはNOxを低減する手段が設けられている。ここで一例として、図13を参照して従来の排ガス処理装置を備えたゴミ焼却プラントの構成例を説明する。ゴミ焼却プラントでは、焼却炉1で発生した排ガスはボイラ2で熱回収された後、減温塔3で水噴霧により冷却される。次いで除塵手段5で排ガスの除塵が行なわれるとともに、必要に応じてこの上流側で排ガス中に供給された消石灰によりHCl除去、SOx除去が行われる。さらに除塵手段5の下流側で内部に触媒を有する脱硝手段7によりNOx除去が行われた後、煙突6より外部に排出される。
【0003】
このような排ガス処理装置に用いられる乾式の脱硝手段は、例えば、特許文献1(特開2010−172855号公報)等に開示されるように、除塵手段5の下流側に触媒を担持した脱硝手段7を設け、その上流側で排ガス中に供給した還元剤7aにより脱硝手段7でNOxを還元させる構成、又は特許文献2(特開2006−26525号公報)に開示されるように、除塵手段5に触媒を担持させ、その上流側で排ガス中に供給した還元剤5aにより除塵手段5でNOxを還元させる構成等が挙げられる。排ガス処理装置には、これらの脱硝手段が一又は複数組み合わせて用いられている。
【0004】
上記したような触媒脱硝手段では、還元剤とNOxの反応効率を高く維持するために、触媒反応の温度を適切に制御する方法が提案されている。例えば特許文献2には、脱硝触媒を担持した除塵手段に供給する排ガス温度を250℃〜300℃の範囲に制御する構成が開示されている。この温度範囲は触媒活性温度に対応している。また、特許文献3(特開2003−80027号公報)には、冷却塔、バグフィルタの後段にアンモニアを用いて触媒脱硝する脱硝塔が設けられた排ガス処理において、脱硝塔への排ガス温度を190℃〜220℃に維持させるように冷却塔の冷却水流量を制御する構成が開示されている。この温度範囲は、消石灰等によるHCl及びSOx除去性能、バグフィルタの耐熱性や脱硝塔での脱硝率を考慮して設定されたものである。
【0005】
一方、従来の脱硝手段では、脱硝率を高く維持するために排ガス中のNOx濃度に対して過剰の還元剤を供給しており、このため還元剤のランニングコストが高く不経済であり、また未反応の還元剤が外部へ流出してしまうという問題があった。
そこで、特許文献1には、還元剤噴射手段と、その下流側に配置されたアンモニアSCR触媒手段と、この触媒手段の下流側に配置されたアンモニア濃度計測手段と、アンモニア濃度に基づいて還元剤の噴射量を制御する制御手段とを備えた構成が開示されている。この構成によりアンモニアが流出しにくく、かつ排ガス中の脱硝率を高く維持することを可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−172855号公報
【特許文献2】特開2006−26525号公報
【特許文献3】特開2003−80027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記した特許文献1は、アンモニアSCR触媒手段出口のアンモニア濃度に基づいてアンモニア供給量を制御する構成としており、この構成によれば還元剤の流出は防止できるが、従来は過剰に供給していた還元剤量に対して、アンモニアが流出しないように少なめに還元剤量が設定されるため、脱硝率を安定的に高く維持することは困難であった。
また、特許文献2又は特許文献3では、排ガスの脱硝率を向上させるために脱硝手段へ導入される排ガス温度を制御する構成としているが、脱硝率は排ガス温度を一定に保っても変動することがある。これは、排ガスの水分濃度が変動するためである。例えばゴミ焼却炉の排ガスはゴミ性状や燃焼状態によって水分濃度が大きく変動するが、そのため脱硝率も変動するため、一定の脱硝率を安定的に得ることができなかった。
【0008】
したがって、本発明はかかる従来技術の問題に鑑み、還元剤供給量を増加することなく、より高い脱硝率を安定的に得ることができる排ガス処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の排ガス処理装置は、燃焼機器から排出された排ガスに水を噴霧して冷却する減温手段と、前記減温手段で冷却された前記排ガスの除塵を行う除塵手段と、前記除塵手段より上流側に設けられ前記排ガスに還元剤を供給する還元剤供給手段とを有し、前記除塵手段は触媒存在下で前記還元剤により排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元する排ガス処理装置において、前記除塵手段に導入される排ガスの水分濃度と前記除塵手段の脱硝率との関係に基づいて、前記減温手段の水供給量を制御して排ガスの水分濃度を調整することにより前記除塵手段の脱硝率を変化させる制御手段を有し、前記制御手段は、前記除塵手段出口側の出口NOx濃度が予め設定されたNOx濃度上限値以下となるように前記減温手段の水供給量を制御することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段における脱硝率を変化させる構成としたため、還元剤供給量を増加させることなく、より高い脱硝率を得ることが可能となる。したがって、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
【0011】
ここで、除塵手段における排ガスの脱硝率と、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度との関係を説明する。図3は排ガスの水分濃度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。同グラフに示されるように、排ガスの水分濃度が増大するほど脱硝率は略反比例的に低下する。この関係を利用して、排ガスの水分濃度を調整することによって脱硝率を変化させることができる。さらに本発明では、除塵手段上流側の減温手段での水供給量制御により排ガスの水分濃度を調整する構成としているため、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。なお、前記予め設定されたNOx濃度上限値とは、NOx排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【0012】
また、前記除塵手段入口側の排ガスの水分濃度を検出する水分濃度検出手段と、前記除塵手段入口側の排ガスの温度を検出する温度検出手段と、前記除塵手段入口側の排ガスの流量を検出する流量検出手段と、前記除塵手段入口側の排ガスの入口NOx濃度を検出する入口NOx濃度検出手段とをさらに有し、前記制御手段は、各検出手段で検出された前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給手段で供給した還元剤供給量とを用いて前記除塵手段の推定脱硝率を求め、該推定脱硝率と前記NOx濃度上限値とから算出される前記除塵手段入口側の目標NOx濃度と、前記入口NOx濃度検出手段で検出される前記入口NOx濃度とを比較し、前記入口NOx濃度が前記目標NOx濃度を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることが好ましい。
【0013】
本構成は、除塵手段入口側で検出された排ガスの入口NOx濃度が除塵手段入口側の目標NOx濃度を超える場合に、減温手段の水供給量を減少させる構成となっている。すなわち、各検出時点において除塵手段が保有する脱硝性能では排ガスをNOx濃度上限値以下まで脱硝できない場合に、減温手段の水供給量を減少させて排ガスの水分濃度を低下させるようにしている。これにより図3のグラフに示した関係から除塵手段の脱硝率を高くすることができ、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。また本構成では、除塵手段入口側の排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに基づいて推定脱硝率を求め、これに基づいて減温手段の水供給量を制御する構成としているため、制御の時間遅れを最小限に抑えることができる。
【0014】
なお、前記目標NOx濃度とは、除塵手段出口側のNOx濃度がNOx濃度上限値となるときの除塵手段入口側のNOx濃度であり、検出された入口NOx濃度がこの目標NOx濃度以下であれば除塵手段出口側のNOx濃度がNOx濃度上限値以下となる。
また、前記推定脱硝率とは、除塵手段の脱硝率に影響を与える因子(ここでは、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度、温度、流量、及び還元剤供給手段で供給した還元剤供給量)を用いて、所定の演算式又はこれらの関係性を示すマップ等により除塵手段が保有する脱硝率を推定した値である。
また本構成において各検出手段は、除塵手段の入口側に計測器を配置して排ガスの水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を直接計測する手段であってもよいし、燃焼機器の燃焼状態により水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を推定する手段であってもよい。さらにまた、前記還元剤供給量は、排ガス中に供給する還元剤供給量であり、具体的には、還元剤供給ライン上に設けられる還元剤供給量調整手段で調整される還元剤供給量である。
【0015】
さらに、前記制御手段は、前記推定脱硝率を求める際に、前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給量とに加えて、前記触媒の使用時間、前記除塵手段入口側のSOx濃度、前記除塵手段入口側の入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値に基づいて前記推定脱硝率を求めるようにしてもよい。
除塵手段の脱硝率に影響を与える因子は、水分濃度、温度、流量、及び還元剤供給量に比べてその依存性は小さいが、触媒の使用時間、SOx濃度、入口還元剤濃度がある。具体的には、触媒は使用時間が長くなるほど活性が低下し、またSOx濃度が高いほど触媒が被毒し活性が低下するため脱硝率が低下する。さらに触媒還元反応において還元剤濃度が高いほど反応が促進されるため脱硝率が向上する。したがって、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに加えて、触媒使用時間とSOx濃度と入口還元剤濃度とのうち少なくとも1の検出値を推定脱硝率の算出に用いることによって、より正確な推定脱硝率を得ることができ、精度の高い制御が可能となる。なお、前記入口還元剤濃度は、除塵手段入口側の排ガス中の還元剤濃度であり、具体的には、除塵手段入口側の排ガスライン上に設けられる還元剤濃度検出手段により検出される還元剤濃度である。
【0016】
また、前記除塵手段出口側の排ガスの出口NOx濃度を検出する出口NOx濃度検出手段をさらに有し、前記制御手段は、前記出口NOx濃度検出手段で検出された前記出口NOx濃度と前記NOx濃度上限値とを比較し、前記出口NOx濃度が前記NOx濃度上限値を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることが好ましい。
本構成は、除塵手段出口側で検出された排ガスの出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温手段の水供給量を減少させる構成としている。これにより図3のグラフに示した関係から除塵手段の脱硝率を高くすることができ、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。また本構成は、排ガスの出口NOx濃度を直接検出し、この出口NOx濃度とNOx濃度上限値とを比較する構成としているため、演算処理の簡単化が図れる。
【0017】
さらに、前記制御手段は、前記除塵手段入口側の排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように前記減温手段の水供給量を制御することが好ましい。
ここで前記所定の温度範囲とは、除塵手段の耐熱性、触媒活性の温度依存性、消石灰等によるHCl及びSOx除去性能、又はダイオキシンの再合成温度等に基づいて適宜設定されるものであり、例えば、温度上限値は除塵手段の耐熱性に基づいて設定され、温度下限値は触媒活性温度に基づいて設定される。
本構成によれば、除塵手段入口側の排ガス温度を所定の温度範囲内に維持することによって、除塵手段を耐熱範囲内で稼働し耐久性の低下を防止するとともに脱硝性能を高く保持し、その円滑な稼働を維持することが可能となる。
【0018】
さらにまた、前記除塵手段出口側の排ガスの出口還元剤濃度を検出する出口還元剤濃度検出手段をさらに有し、前記制御手段は、前記減温手段の水供給量制御の前又は後に、前記出口還元剤濃度検出手段で検出された前記出口還元剤濃度が予め設定された還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で前記還元剤供給手段の還元剤供給量を制御することが好ましい。
このように、減温手段の水供給量制御とともに還元剤の供給量制御を行うことによって、排ガス中のNOx濃度が高い場合であっても除塵手段から排出される排ガス中の還元剤濃度を低減しつつ高い脱硝率を得ることが可能となる。なお、還元剤濃度上限値は、還元剤の排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
以上記載のように本発明によれば、除塵手段に導入される排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段における脱硝率を変化させる構成としたため、還元剤供給量を増加させることなく、より高い脱硝率を得ることが可能となる。したがって、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
さらに本発明では、除塵手段上流側の減温手段での水供給量制御により排ガスの水分濃度を調整する構成としているため、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態が適用されるゴミ焼却プラントの全体構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図3】排ガスの水分濃度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。
【図4】排ガスの温度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。
【図5】排ガスの流量と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。
【図6】本発明の第1実施形態における制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図7】本発明の第1実施形態の応用例に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図8】異なるSO2濃度の排ガスにおける触媒使用時間と脱硝率の関係をそれぞれ概念的に示したグラフである。
【図9】本発明の第2実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図10】本発明の第2実施形態における制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
【図12】本発明の第3実施形態における制御手段の処理を示すフローチャートである。
【図13】従来のゴミ焼却プラントの全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。なお、本実施形態では、一例として排ガス処理装置をゴミ焼却プラントに取り付けた場合につき説明するが、排ガス処理装置を取り付ける燃焼機器はこれに限定されるものではなく、熱分解炉、溶融炉、ボイラ、内燃機関、外燃機関等種々の燃焼機器に適用することができる。より好ましくは、本発明は焼却炉、熱分解炉、溶融炉、ボイラに取り付けられる排ガス処理装置に適している。
【0022】
まず最初に、図1を参照して、本発明の実施形態に係る排ガス処理装置が適用されるゴミ焼却プラントの全体構成を説明する。
ゴミ焼却プラントは、主に、焼却炉1と、ボイラ2と、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、煙突6とを有する。
【0023】
焼却炉1は、ゴミを燃焼させる燃焼機器であり、ストーカ式焼却炉、流動床式焼却炉、バーナ式焼却炉等の各種の焼却炉を用いることができる。例えばストーカ式焼却炉を用いる場合、投入ホッパ11から投入されたゴミは、火炉12内で火格子上を移送されながら火炉底部から導入される一次空気により燃焼する。この燃焼により発生した排ガス中の未燃分は、火炉上方に導入される二次空気により再燃焼する。焼却炉1でゴミを燃焼させることにより発生した燃焼灰は灰処理部13に送られ、排ガスは配管によりボイラ2に送られる。
ボイラ2は、焼却炉1から排出される高温の排ガスから熱を回収する。ボイラ2で熱を回収された排ガスは減温塔3に送られる。
【0024】
減温塔3は、水が貯留された水タンク31と接続されており、ボイラ2から送られた排ガスに水タンク31からの水を噴霧し、排ガスを冷却する。水タンク31から減温塔3に供給される水は、ポンプ32やバルブ(不図示)等の水供給量調整手段により調整される。具体的には、水タンク31からポンプ32にて配管へ液送されて、減温塔3内のノズルから排ガス中に水が噴霧される構成としてもよい。なお水供給量調整手段は、後述する制御手段10からの制御信号により制御される。減温塔3で冷却された排ガスは除塵手段5に送られる。
【0025】
減温塔3と除塵手段5とを接続する配管には、還元剤供給手段4が設けられている。還元剤供給手段4は、排ガス中に還元剤を供給する手段である。還元剤の状態は液体、気体、粉末固体のいずれであってもよく、具体的に還元剤としては、尿素水、アンモニア水、アンモニアガス等が用いられる。還元剤供給手段4は、還元剤を貯留する還元剤タンク41と、還元剤の供給量を調整するポンプ42やバルブ(不図示)等の還元剤供給量調整手段とを有している。この還元剤供給量調整手段は、後述する制御手段10からの制御信号により制御される。なお、還元剤供給手段4は、除塵手段5より上流側の配管であればどの位置に接続されてもよいが、最も好ましい接続位置は、減温塔3と除塵手段5との間の配管である。
【0026】
また、除塵手段5の上流側の配管に、添加剤供給手段8を接続してもよい。添加剤供給手段8は、還元剤以外の添加剤を供給する手段である。添加剤としては、例えば排ガス中に含まれるHClやSOx等の酸性ガスを中和する消石灰、排ガス中のダイオキシン類を吸着除去する活性炭、除塵手段5の濾布の目詰まりを抑制する特反剤(珪藻土)等が挙げられる。
【0027】
除塵手段5は、配管を介して減温塔3と接続されており、減温塔3から該配管を通過した排ガスが導入される。除塵手段5は内部にNOx還元用触媒を有している。好適には、除塵手段5として、濾布に触媒を担持した触媒担持式バグフィルタが用いられる。触媒には、担体として、酸化チタン、アルミナ、ゼオライト、シリカ、シリカ−アルミナ、ジルコニア、セリア−ジルコニア、マグネシア、ニオブ、タンタル等の金属酸化物や複合酸化物等が用いられ、これに加えて活性金属成分としてバナジウム、モリブデン、タングステン、クロム、マンガン、銅、コバルトのうち少なくとも1種類以上が用いられる。その中でも好適にはバナジウム、モリブデン、タングステンのうち少なくともいずれかを活性金属成分とする酸化チタン系触媒が用いられる。
【0028】
除塵手段5は、主に、排ガス中に含まれる煤塵を除去するとともに、排ガス中のNOxと還元剤とを触媒存在下で反応させ、NOxを還元する。さらに除塵手段5では、その上流側で上記した各種添加剤が添加された場合には、排ガス中の酸性ガスと消石灰との中和反応で得られた塩類やダイオキシン類等を吸着した活性炭を含む煤塵を除去する。除塵手段5で除塵、NOx還元が行われて浄化された排ガスは煙突6から排出される。
【0029】
次に、以下の第1実施形態乃至第3実施形態により本発明の排ガス処理装置におけるNOx低減手段の具体的な構成を説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図2は本発明の第1実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
排ガス処理装置は、主に、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、制御手段10と、水分濃度検出手段51と、温度検出手段52と、流量検出手段53と、入口NOx濃度検出手段54とを有している。
【0031】
水分濃度検出手段51は、除塵手段5の入口側の排ガスの水分濃度を検出する手段である。
温度検出手段52は、除塵手段5の入口側の排ガスの温度を検出する手段である。
流量検出手段53は、除塵手段5の入口側の排ガスの流量を検出する手段である。
入口NOx濃度検出手段54は、除塵手段5の入口側の排ガスに含まれる入口NOx濃度を検出する手段である。
【0032】
上記した各検出手段は、除塵手段5の入口側に計測器を配置して水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を直接計測する手段であってもよいし、燃焼機器の燃焼状態により水分濃度、温度、流量又は入口NOx濃度を推定する手段であってもよい。前者の場合は、直接計測することにより精度の高い制御が可能となり、後者の場合は各計測器を設置する必要がないため装置を簡素化できる。
なお、除塵手段5の入口側とは、減温塔3と除塵手段5の間の配管上又は除塵手段5の入口部のことである。
【0033】
制御手段10は、各検出手段で検出された検出信号と還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量とが入力され、これらの検出信号及び還元剤供給量を用いて演算を行い、その演算結果をもとに生成した制御信号を減温塔3の水供給量調整手段へ出力することにより減温塔3の水供給量を制御する機能を有している。なお、還元剤供給量は、排ガス中に供給する還元剤供給量であり、具体的には、還元剤供給ライン上に設けられる還元剤供給手段4の還元剤供給量調整手段で調整される還元剤供給量である。
この制御手段10の主たる制御は、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と除塵手段5の脱硝率との関係に基づいて減温塔3の水供給量を制御するものであり、ひいては排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段5の脱硝率を変化させる。
【0034】
第1実施形態において、制御手段10に入力される検出(入力)信号は、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とであり、制御手段10から出力する制御(出力)信号は、減温塔3の水供給量である。また制御手段10には、予め除塵手段出口側のNOx濃度上限値が設定されている。このNOx濃度上限値は、NOx排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【0035】
具体的に制御手段10では、水分濃度検出手段51から入力された水分濃度と、温度検出手段52から入力された温度と、流量検出手段53から入力された流量と、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量とを用いて除塵手段5の推定脱硝率を求める。
さらに、この推定脱硝率とNOx濃度上限値とから除塵手段入口側の目標NOx濃度を算出する。前記目標NOx濃度とは、除塵手段出口側のNOx濃度がNOx濃度上限値となるときの除塵手段入口側のNOx濃度であり、検出された入口NOx濃度がこの目標NOx濃度以下であれば出口NOx濃度がNOx濃度上限値以下となる。
そして、この目標NOx濃度と、入口NOx濃度検出手段54で検出された入口NOx濃度とを比較し、入口NOx濃度が目標NOx濃度を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行う。
なお、制御手段10では、入口NOx濃度と推定脱硝率とから出口NOx濃度を算出し、この出口NOx濃度とNOx濃度上限値とを比較して、出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行うようにしてもよい。
【0036】
ここで、図3乃至図5を用いて、除塵手段5の脱硝率に影響を与える因子と、除塵手段5の脱硝率との関係について説明する。図3は排ガスの水分濃度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフで、図4は排ガスの温度と脱硝率の関係を概念的に示したグラフで、図5は排ガスの流量と脱硝率の関係を概念的に示したグラフである。なお、還元剤供給量が脱硝率に影響を与えることは周知であるため、この関係についてはここでは言及しない。
【0037】
図3に示すように、排ガスの水分濃度と脱硝率の関係は、排ガスの水分濃度が高くなるほど略反比例的に脱硝率が低下する。この排ガスの水分濃度と脱硝率の関係は、除塵手段5の推定脱硝率を算出する際に用いられるとともに、減温塔3の水供給量制御にも用いられる。すなわち、減温塔3の水供給量制御においては、所望の脱硝率が得られるように排ガスの水分濃度を調整するようになっており、除塵手段5に導入される排ガス中のNOx濃度が高いほど水分濃度を低下させるような減温塔3の水供給量制御を行う。例えば、図3に示されるように水分濃度を15%以下に調整することで脱硝率を大幅に向上させることが可能である。
【0038】
図4に示すように、排ガスの温度と脱硝率の関係は、排ガス温度が高くなるほど触媒還元反応が促進されるため排ガスの脱硝率が高くなる。この関係を示す曲線は、高温側の脱硝率が、触媒の脱硝性能に基づく所定の脱硝率に収束するような曲線で表される。排ガス温度と脱硝率の関係は、除塵手段5の推定脱硝率を算出する際に用いられる。
また図5に示すように、排ガスの流量と脱硝率の関係は、排ガス流量が大きくなるほど触媒単位体積当たりの排ガス処理量が増大するため排ガスの脱硝率が低くなる。この関係を示す曲線は、排ガス流量が大きくなるほど脱硝率が大幅に低下するような曲線で表される。排ガス流量と脱硝率の関係は、除塵手段5の推定脱硝率を算出する際に用いられる。
【0039】
推定脱硝率は、脱硝率に影響を与える因子(ここでは排ガスの水分濃度、温度、流量、還元剤供給量)を用いて、所定の演算式又はこれらの関係性を示すマップ等により除塵手段5が保有する脱硝率を推定した値である。
マップを用いる場合は、除塵手段5の脱硝率に影響を与える因子と脱硝率との関係性を示すマップを予め用意しておき、これを用いて推定脱硝率を求める。
演算式を用いる場合は、排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とをパラメータとした式により推定脱硝率を求める。
【0040】
また、制御手段10は、温度検出手段52で検出される排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように減温塔3の水供給量を制御する構成とすることが好ましい。前記所定の温度範囲とは、除塵手段5の耐熱性、触媒活性の温度依存性、消石灰等によるHCl及びSOx除去性能、又はダイオキシンの再合成温度等に基づいて適宜設定されるものであり、例えば、温度上限値は除塵手段5の耐熱性に基づいて設定され、温度下限値は触媒活性温度に基づいて設定される。
【0041】
次に、図6のフローチャートを用いて、第1実施形態における制御手段10のNOx低減処理の一例を説明する。なお、以下の説明で記載する符号は図1及び図2の符号と同一である。
まず、水分濃度検出手段51で検出された水分濃度(CH2Oin)、温度検出手段52で検出された温度(Tin)、流量検出手段53で検出された流量(Qin)、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量(S)が制御手段10に入力されたら、制御手段10は、ステップS1として、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とから除塵手段5の推定脱硝率(ηA)を算出する。推定脱硝率の算出方法は上述した通りである。
さらに、制御手段10は、推定脱硝率(ηA)とNOx濃度上限値(CA2)とに基づいて、以下の式(2)により除塵手段入口側の目標NOx濃度(CA1)を算出する。
CA1=CA2/(1−ηA) …(2)
【0042】
次いで、制御手段10は、ステップS2として、入口NOx濃度検出手段54で検出された入口NOx濃度(CNOxin)と、上記で算出した目標NOx濃度(CA1)とを比較する。ここで、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)以下の場合、除塵手段5により排ガス中のNOx濃度をNOx濃度上限値以下とすることができると判断し、減温塔3の水供給量を制御することなくステップS1に戻る。一方、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)を超える場合、ステップS3で減温塔3の水供給量を減少する。つまり、減温塔3で排ガスに噴霧する水の量を減少する。このとき、水供給量の減少幅は一定であってもよいし、予め設定された制御方法に従って水供給量の減少幅を調整してもよい。水供給量の減少幅を調整する場合、例えば、入口NOx濃度と目標NOx濃度との差分に応じて水供給量の減少幅を変化させるようにしてもよい。
【0043】
減温塔3の水供給量を減少した後又は減少している間に、制御手段10は、ステップS4として、温度検出手段52で検出した温度(Tin)と温度しきい値(TA1)とを比較する。これは、除塵手段入口側の排ガスの温度(Tin)が所定の温度範囲内に維持されているか否かを判断するもので、ここでは温度(Tin)が、所定の温度範囲の上限値である温度しきい値(TA1)を超えるか否かを判断している。
排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)を超える場合、制御手段10は、ステップS5で減温塔3の水供給量を増量する。このとき、水供給量の増量幅は一定であってもよいし、予め設定された方法に従って水供給量の増量幅を調整してもよい。例えば、排ガス温度と温度しきい値との差分に応じて水供給量の増量幅を変化させるようにしてもよい。一方、排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)以下の場合、水供給量を増量することなくステップS1に戻る。
【0044】
本実施形態によれば、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度を調整することにより除塵手段5における脱硝率を変化させる構成としたため、還元剤供給量を増加させることなく、より高い脱硝率を得ることが可能となる。したがって、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
また本実施形態では、除塵手段上流側の減温塔3での水供給量制御により排ガスの水分濃度を調整する構成としているため、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
【0045】
また、本第1実施形態によれば、除塵手段入口側で検出された排ガスの入口NOx濃度が除塵手段入口側の目標NOx濃度を超える場合に、減温塔3の水供給量を減少させて除塵手段5の脱硝率を高くしているため、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。さらに本第1実施形態では、除塵手段入口側の排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに基づいて推定脱硝率を求め、これに基づいて減温塔3の水供給量を制御する構成としているため、制御の時間遅れを最小限に抑えることができる。
さらにまた、除塵手段入口側の排ガス温度を所定の温度範囲内に維持することにより、除塵手段5を耐熱範囲内で稼働し耐久性の低下を防止するとともに脱硝性能を高く保持し、その円滑な稼働を維持することが可能となる。
【0046】
また、上記した第1実施形態において、以下の構成を備えていてもよい。
減温塔3の水供給系統を、ポンプ32aを有する高流量系統と、ポンプ32bを有する低流量系統との2系統からなる構成とすることが好ましい。高流量系統は大まかな水供給量制御を行い、低流量系統は微細な水供給量制御を行う。これらの2つの水供給系統をそれぞれ適宜組み合わせて減温塔3の水供給量を制御することによって、より緻密な排ガスの水分濃度調整が可能となる。
【0047】
さらにまた図7に示すように、制御手段10で推定脱硝率を求める際に、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに加えて、触媒の使用時間、除塵手段入口側のSOx濃度、除塵手段入口側の入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値に基づいて推定脱硝率を求めるようにしてもよい。なお図7は本発明の第1実施形態の応用例に係る排ガス処理装置の構成図である。
この応用例に係る排ガス処理装置は、図2に示した構成に加えて、除塵手段入口側の入口還元剤濃度を検出する入口還元剤濃度検出手段55、除塵手段入口側のSOx濃度を検出するSOx濃度検出手段56、触媒の使用時間を検出するタイマ57のうち少なくとも1を有する。ここで、前記入口還元剤濃度は、除塵手段入口側の排ガス中の還元剤濃度であり、具体的には、除塵手段入口側の排ガスライン上に設けられる還元剤濃度検出手段55により検出される還元剤濃度である。
【0048】
図8は、異なるSO2濃度の排ガスにおける触媒使用時間と脱硝率の関係をそれぞれ概念的に示したグラフである。ここでSO2濃度は、A1ppm<A2ppm<A3ppmの関係を有している。同グラフに示すように、触媒は使用時間が長くなるほど活性が低下し、また排ガス中のSOx濃度が高いほど触媒が被毒し活性が低下するため脱硝率が低くなる。
さらに、触媒還元反応において反応場で還元剤濃度が高いほど反応が促進されるため脱硝率が向上する。この関係性を示すグラフは省略する。
このように、除塵手段5における脱硝率は、水分濃度、温度、流量、還元剤供給量に比べてその依存性は小さいが、触媒の使用時間、SOx濃度、入口還元剤濃度の影響も受けている。したがって制御手段10では、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とに加えて、タイマ57で検出された触媒使用時間、SOx濃度検出手段56で検出されたSOx濃度、入口還元剤濃度検出手段55で検出された入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値を推定脱硝率の算出に用いることによって、より正確な推定脱硝率を得ることができ、精度の高い制御が可能となる。
【0049】
(第2実施形態)
図9は本発明の第2実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
排ガス処理装置は、主に、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、制御手段10と、温度検出手段52と、出口NOx濃度検出手段58と、出口還元剤濃度検出手段59とを有している。
【0050】
温度検出手段52は、除塵手段5の入口側の排ガスの温度を検出する手段である。
出口NOx濃度検出手段58は、除塵手段5の出口側の排ガスに含まれる出口NOx濃度を検出する手段である。
出口還元剤濃度検出手段59は、除塵手段5の出口側の排ガスに含まれる出口還元剤濃度を検出する手段である。
出口NOx濃度検出手段58又は出口還元剤濃度検出手段59は、除塵手段5の出口側に計測器を設置し各検出値をオンサイト計測する構成としてもよいし、除塵手段出口側の配管から排ガスを抜き出し外部で分析して各検出値を取得する構成としてもよいが、特に、検出値に対して迅速な制御が可能であるオンサイト計測を用いることが好ましい。
なお、除塵手段5の入口側とは、減温塔3と除塵手段5の間の配管上又は除塵手段5の入口部のことであり、除塵手段5の出口側とは、除塵手段5と煙突6との間の配管上又は除塵手段5の出口部のことである。
【0051】
第2実施形態において、制御手段10に入力される検出(入力)信号は、除塵手段5から排出された排ガスの出口NOx濃度と出口還元剤濃度とであり、制御手段10から出力する制御(出力)信号は、減温塔3の水供給量と還元剤供給手段4の還元剤供給量とである。また制御手段10には、予め除塵手段出口側のNOx濃度上限値が設定されている。このNOx濃度上限値は、NOx排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
【0052】
具体的に制御手段10では、出口NOx濃度検出手段58から入力された出口NOx濃度と、NOx濃度上限値とを比較し、出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行う。
また制御手段10では、減温塔3の水供給量制御の前又は後に、出口還元剤濃度検出手段59で検出された出口還元剤濃度が、予め設定された還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で、還元剤供給手段4の還元剤供給量を制御してもよい。なお、還元剤濃度上限値は、還元剤の排出規制に基づいて設定されることが好ましい。
さらに制御手段10は、第1実施形態と同様に、温度検出手段52で検出される排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように減温塔3の水供給量を制御する構成とすることが好ましい。
【0053】
次に、図10のフローチャートを用いて、第2実施形態における制御手段10のNOx低減処理の一例を説明する。なお、以下の説明で記載する符号は図9の符号と同一である。
まず、出口NOx濃度検出手段58で検出された出口NOx濃度(CNOxout)が制御手段10に入力されたら、制御手段10は、ステップS11として、出口NOx濃度(CNOxout)と、NOx濃度上限値(CA2)とを比較する。ここで、出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)を超える場合、さらに制御手段10は、ステップS12として、出口還元剤濃度検出手段59で検出された出口還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。なお、ここでは一例として還元剤にアンモニア水を用いた場合を想定している。出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、ステップS13で還元剤供給量を増量する。このとき、還元剤供給量の増量幅は一定であってもよいし、予め設定された方法に従って還元剤供給量の増量幅を調整してもよい。例えば、出口NOx濃度とNOx濃度上限値との差分に応じて還元剤供給量の増量幅を変化させるようにしてもよい。
【0054】
一方、出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)以下の場合には、さらにステップS14として、還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。ここで、還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、一連の処理を終了してスタートに戻る。他方、ステップS12又はステップS14で、還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)を超える場合、ステップS15で減温塔3の水供給量を減少する。このとき、水供給量の減少幅は一定であってもよいし、予め設定された制御方法に従って水供給量の減少幅を調整してもよい。水供給量の減少幅を調整する場合、例えば、出口NOx濃度とNOx濃度上限値との差分に応じて水供給量の減少幅を変化させるようにしてもよい。
【0055】
そして、減温塔3の水供給量を減少した後又は減少している間に、制御手段10は、ステップS16として、温度検出手段52で検出された温度(Tin)と温度しきい値(TA1)とを比較する。排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)を超える場合、制御手段10は、ステップS17で減温塔3の水供給量を増量する。このとき、水供給量の増量幅は減少させるときと同様に一定でもよいし増量幅を調整してもよい。他方、排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)以下の場合、ステップS18で還元剤供給量を減少する。いずれの場合も制御が終了したらスタートに戻る。
【0056】
本実施形態によれば、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
また本実施形態では、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
さらに本第2実施形態によれば、除塵手段出口側で検出された排ガスの出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる構成としている。これにより除塵手段5の脱硝率を高くすることができ、NOx濃度をより一層低減させることが可能となる。さらにまた本第2実施形態は、排ガスの出口NOx濃度を直接検出し、この出口NOx濃度とNOx濃度上限値とを比較する構成としているため、演算処理の簡単化が図れる。
【0057】
(第3実施形態)
図11は本発明の第3実施形態に係る排ガス処理装置の構成図である。
排ガス処理装置は、主に、減温塔3と、還元剤供給手段4と、除塵手段5と、制御手段10と、水分濃度検出手段51と、温度検出手段52と、流量検出手段53と、入口NOx濃度検出手段54と、出口NOx濃度検出手段58と、出口還元剤濃度検出手段59とを有している。各検出手段の構成は第1実施形態、第2実施形態と同一である。
【0058】
第3実施形態において、制御手段10に入力される検出(入力)信号は、除塵手段5に導入される排ガスの水分濃度と温度と流量と還元剤供給量と、さらに除塵手段5から排出された排ガスの出口NOx濃度と出口還元剤濃度とであり、制御手段10から出力する制御(出力)信号は、減温塔3の水供給量と還元剤供給手段4の還元剤供給量とである。また制御手段10には、除塵手段出口側のNOx濃度上限値と、除塵手段出口側の還元剤濃度上限値とが予め設定されている。
【0059】
具体的に制御手段10では、水分濃度検出手段51から入力された水分濃度と、温度検出手段52から入力された温度と、流量検出手段53から入力された流量と、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量とを用いて除塵手段5の推定脱硝率を求める。次いで、この推定脱硝率とNOx濃度上限値とから除塵手段入口側の目標NOx濃度を算出する。そして、この目標NOx濃度と、入口NOx濃度検出手段54で検出された入口NOx濃度とを比較し、入口NOx濃度が目標NOx濃度を超える場合に減温塔3の水供給量を減少させる制御を行う。
【0060】
また制御手段10では、出口NOx濃度検出手段58から入力された出口NOx濃度と、NOx濃度上限値とを比較し、出口NOx濃度がNOx濃度上限値を超える場合に、還元剤供給手段4の還元剤供給量を増量させる制御を行う。このとき、出口還元剤濃度検出手段59で検出された出口還元剤濃度が還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で還元剤供給量を制御する。
さらにまた制御手段10は、第1実施形態と同様に、温度検出手段52で検出される排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように減温塔3の水供給量を制御する構成とすることが好ましい。
【0061】
次に、図12のフローチャートを用いて、第3実施形態における制御手段10のNOx低減処理の一例を説明する。なお、以下の説明で記載する符号は図11の符号と同一である。
まず、水分濃度検出手段51で検出された水分濃度(CH2Oin)、温度検出手段52で検出された温度(Tin)、流量検出手段53で検出された流量(Qin)、還元剤供給手段4で供給した還元剤供給量(S)が制御手段10に入力されたら、制御手段10は、ステップS21として、水分濃度と温度と流量と還元剤供給量とから除塵手段5の推定脱硝率(ηA)を算出する。
【0062】
さらに、制御手段10は、推定脱硝率(ηA)とNOx濃度上限値(CA2)とに基づいて、第1実施形態で示した式(2)により除塵手段入口側の目標NOx濃度(CA1)を算出する。次いで、制御手段10は、ステップS22として、入口NOx濃度検出手段54で検出した入口NOx濃度(CNOxin)と、目標NOx濃度(CA1)とを比較する。ここで、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)以下の場合、除塵手段5にて排ガス中のNOx濃度をNOx濃度上限値以下に抑えることができると判断し、減温塔3の水供給量を制御することなくステップS21に戻る。一方、入口NOx濃度(CNOxin)が目標NOx濃度(CA1)を超える場合、ステップS23で減温塔3の水供給量を減少する。
【0063】
減温塔3の水供給量を減少した後又は減少している間に、制御手段10は、ステップS24として、温度検出手段52で検出した排ガス温度(Tin)と温度しきい値(TA1)とを比較する。排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)を超える場合、制御手段10は、ステップS25で減温塔3の水供給量を増量する。他方、排ガス温度(Tin)が温度しきい値(TA1)以下の場合、次いでステップS26として、出口NOx濃度検出手段58で検出された出口NOx濃度(CNOxout)と、NOx濃度上限値(CA2)とを比較する。出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)を超える場合、さらに制御手段10は、ステップS27として、出口還元剤検出手段59で検出された出口還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。ここで、出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、ステップS28で還元剤供給量を増量する。他方、還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)を超える場合、ステップS29で触媒の回復処理を行う。このとき、同時に還元剤供給量を減少させてもよい。触媒の回復処理は、例えば、加熱空気を除塵手段5に流通させて触媒の活性を回復させる。また回復処理では、触媒を新規な触媒に交換してもよい。
【0064】
一方、ステップS26で、出口NOx濃度(CNOxout)がNOx濃度上限値(CA2)以下の場合、さらにステップS30として、出口還元剤濃度(CNH3out)と、還元剤濃度上限値(CB2)とを比較する。ここで、出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)以下である場合、一連の処理を終了してスタートに戻る。他方、出口還元剤濃度(CNH3out)が還元剤濃度上限値(CB2)を超える場合、ステップ31で還元剤供給量を減少する。
【0065】
本実施形態によれば、過剰な還元剤を供給する必要がなくなりランニングコストを低減できるとともに、還元剤の外部への流出を抑制することができる。
また本実施形態では、新たに水分濃度調整手段を設ける必要がなく簡単な装置構成とすることができ、既存の設備にも容易に導入することが可能であり、且つ簡単な制御で水分濃度調整を行うことが可能となる。
さらに本第3実施形態によれば、上記した第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせた構成とすることにより、制御の時間遅れを最小限に抑えることができるとともに、より精度の高い制御が可能となる。
【符号の説明】
【0066】
1 焼却炉
2 ボイラ
3 減温塔
4 還元剤供給手段
5 除塵手段
10 制御手段
31 水貯留タンク
32、32a、32b、42 ポンプ
41 還元剤タンク
51 水分濃度検出手段
52 温度検出手段
53 流量検出手段
54 入口NOx濃度検出手段
55 入口還元剤濃度検出手段
56 SOx濃度検出手段
57 タイマ
58 出口NOx濃度検出手段
59 出口還元剤濃度検出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼機器から排出された排ガスに水を噴霧して冷却する減温手段と、前記減温手段で冷却された前記排ガスの除塵を行う除塵手段と、前記除塵手段より上流側に設けられ前記排ガスに還元剤を供給する還元剤供給手段とを有し、前記除塵手段は触媒存在下で前記還元剤により排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元する排ガス処理装置において、
前記除塵手段に導入される排ガスの水分濃度と前記除塵手段の脱硝率との関係に基づいて、前記減温手段の水供給量を制御して排ガスの水分濃度を調整することにより前記除塵手段の脱硝率を変化させる制御手段を有し、
前記制御手段は、前記除塵手段出口側の出口NOx濃度が予め設定されたNOx濃度上限値以下となるように前記減温手段の水供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記除塵手段入口側の排ガスの水分濃度を検出する水分濃度検出手段と、
前記除塵手段入口側の排ガスの温度を検出する温度検出手段と、
前記除塵手段入口側の排ガスの流量を検出する流量検出手段と、
前記除塵手段入口側の排ガスの入口NOx濃度を検出する入口NOx濃度検出手段とをさらに有し、
前記制御手段は、各検出手段で検出された前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給手段で供給した還元剤供給量とを用いて前記除塵手段の推定脱硝率を求め、該推定脱硝率と前記NOx濃度上限値とから算出される前記除塵手段入口側の目標NOx濃度と、前記入口NOx濃度検出手段で検出される前記入口NOx濃度とを比較し、前記入口NOx濃度が前記目標NOx濃度を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記推定脱硝率を求める際に、前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給量とに加えて、前記触媒の使用時間、前記除塵手段入口側のSOx濃度、前記除塵手段入口側の入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値に基づいて前記推定脱硝率を求めることを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記除塵手段出口側の排ガスの出口NOx濃度を検出する出口NOx濃度検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記出口NOx濃度検出手段で検出された前記出口NOx濃度と前記NOx濃度上限値とを比較し、前記出口NOx濃度が前記NOx濃度上限値を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記除塵手段入口側の排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように前記減温手段の水供給量を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記除塵手段出口側の排ガスの出口還元剤濃度を検出する出口還元剤濃度検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記減温手段の水供給量制御の前又は後に、前記出口還元剤濃度検出手段で検出された前記出口還元剤濃度が予め設定された還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で前記還元剤供給手段の還元剤供給量を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項1】
燃焼機器から排出された排ガスに水を噴霧して冷却する減温手段と、前記減温手段で冷却された前記排ガスの除塵を行う除塵手段と、前記除塵手段より上流側に設けられ前記排ガスに還元剤を供給する還元剤供給手段とを有し、前記除塵手段は触媒存在下で前記還元剤により排ガス中の窒素酸化物(NOx)を還元する排ガス処理装置において、
前記除塵手段に導入される排ガスの水分濃度と前記除塵手段の脱硝率との関係に基づいて、前記減温手段の水供給量を制御して排ガスの水分濃度を調整することにより前記除塵手段の脱硝率を変化させる制御手段を有し、
前記制御手段は、前記除塵手段出口側の出口NOx濃度が予め設定されたNOx濃度上限値以下となるように前記減温手段の水供給量を制御することを特徴とする排ガス処理装置。
【請求項2】
前記除塵手段入口側の排ガスの水分濃度を検出する水分濃度検出手段と、
前記除塵手段入口側の排ガスの温度を検出する温度検出手段と、
前記除塵手段入口側の排ガスの流量を検出する流量検出手段と、
前記除塵手段入口側の排ガスの入口NOx濃度を検出する入口NOx濃度検出手段とをさらに有し、
前記制御手段は、各検出手段で検出された前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給手段で供給した還元剤供給量とを用いて前記除塵手段の推定脱硝率を求め、該推定脱硝率と前記NOx濃度上限値とから算出される前記除塵手段入口側の目標NOx濃度と、前記入口NOx濃度検出手段で検出される前記入口NOx濃度とを比較し、前記入口NOx濃度が前記目標NOx濃度を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記推定脱硝率を求める際に、前記水分濃度と前記温度と前記流量と前記還元剤供給量とに加えて、前記触媒の使用時間、前記除塵手段入口側のSOx濃度、前記除塵手段入口側の入口還元剤濃度のうち少なくとも1の検出値に基づいて前記推定脱硝率を求めることを特徴とする請求項2に記載の排ガス処理装置。
【請求項4】
前記除塵手段出口側の排ガスの出口NOx濃度を検出する出口NOx濃度検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記出口NOx濃度検出手段で検出された前記出口NOx濃度と前記NOx濃度上限値とを比較し、前記出口NOx濃度が前記NOx濃度上限値を超える場合に前記減温手段の水供給量を減少させることを特徴とする請求項1に記載の排ガス処理装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記除塵手段入口側の排ガス温度が所定の温度範囲内に維持されるように前記減温手段の水供給量を制御することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【請求項6】
前記除塵手段出口側の排ガスの出口還元剤濃度を検出する出口還元剤濃度検出手段をさらに有し、
前記制御手段は、前記減温手段の水供給量制御の前又は後に、前記出口還元剤濃度検出手段で検出された前記出口還元剤濃度が予め設定された還元剤濃度上限値以下に維持される範囲内で前記還元剤供給手段の還元剤供給量を制御することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載の排ガス処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−130854(P2012−130854A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−284411(P2010−284411)
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月21日(2010.12.21)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】
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