説明

排ガス浄化フィルタ及びその製造方法

【課題】排ガス浄化フィルタの上流端にパティキュレートが堆積する不具合を抑制することができる排ガス浄化フィルタを提供すること。
【解決手段】ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを含む排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタである。排ガス浄化フィルタ1は、多孔質隔壁2を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセル10を形成した基材20を有し、基材20のセル10のうち排ガスを導入する導入通路11となるセル10の下流端と、多孔質隔壁2を通過した排ガスを排出する排出通路12となるセル10の上流端には、栓材3を配してセル10を閉塞してなる。基材20の軸方向上流端から所定の領域である前端部領域21の気孔率をA(%)、前端部領域21以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係にある。A及びBは、A<0.77Bの関係にあることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンから排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なう排ガス浄化フィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内燃機関から排出される排ガス中のパティキュレートを捕集して排ガスの浄化を行なう排ガス浄化フィルタがある。
該排ガス浄化フィルタは、内燃機関から排出されるパティキュレートを含む排ガスを導入する導入通路となるセルと、上記パティキュレートを捕集する多孔質隔壁と、上記パティキュレートが除去された後の排ガスを排出する排出通路となるセルを備えたハニカム状の基材を有するものである(特許文献1参照)。
【0003】
また、上記導入通路となるセルの下流端と、排出通路となるセルの上流端とは栓部材によって閉塞されるのが一般的である。
そして、この基材を備えた排ガス浄化フィルタを用いて排ガスを浄化する際には、上記導入通路となるセルに浸入した排ガスが、上記多孔質隔壁を通過して隣のセルよりなる排出通路に移動する。このとき、上記排ガス中のパティキュレートが上記多孔質隔壁に捕集され、排ガスが浄化される。
上記排ガス浄化フィルタに捕集されたパティキュレートは、定期的に燃焼除去される。そして、これにより、上記多孔質隔壁の捕集機能は再生する。なお、燃焼除去方法としては、排ガス浄化フィルタの基材に担持させた触媒の作用を利用するもの、上流側で定期的に熱を発生させるもの、両者を併用するものなど様々な方法が提案されている。
【0004】
ところで、上記排ガス浄化フィルタの上流端側には、排ガス中のパティキュレートが燃焼することなく堆積し、導入通路の開口部を閉塞又は狭くしてしまうという不具合が生じる場合がある。この原因は、次のように考えられる。即ち、上記排ガス浄化フィルタの基材には、通常触媒が担持される。この触媒の作用により、排ガスの温度が上昇するので、排ガス浄化フィルタの下流端に近づくほど排ガスの温度は高くなり、蓄積されたパティキュレートが燃焼しやすくなる。一方、排ガス浄化フィルタの上流端近傍の排ガスの温度は、未だ昇温されていない。そのため、上流端近傍の温度が燃焼に必要な温度まで上がらない場合がある。それ故に上流端近傍にパティキュレートが燃焼しきらずに堆積することがあると考えられる。
【0005】
【特許文献1】特開2001−96113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、排ガス浄化フィルタの上流端にパティキュレートが堆積する不具合を抑制することができる排ガス浄化フィルタを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを含む排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタであって、
多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した基材を有し、該基材の上記セルのうち上記排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端には、栓材を配して上記セルを閉塞してなり、
上記基材の軸方向上流端から所定の領域である前端部領域の気孔率をA(%)、上記前端部領域以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係にあることを特徴とする排ガス浄化フィルタにある(請求項1)。
【0008】
本発明の排ガス浄化フィルタは、上記のごとく、上記前端部領域の気孔率をA(%)、上記前端部領域以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係にある。これにより、従来よりも上流端側にパティキュレートが堆積することを抑制することができる。そして、上流端開口部が閉塞又は狭くなることによる圧損上昇等の不具合の発生を抑制することができるのである。
【0009】
即ち、上記排ガス浄化フィルタの上記前端部領域の気孔率Aが、それ以外の領域、つまり、上記前端部領域よりも下流側の気孔率Bよりも低い。これにより、上記前端部領域は、他の部分よりも密度が高く、熱容量も大きくなる。そのため、下流側においてパティキュレートの燃焼が起こり、その燃焼による熱が上記前端部領域に伝わった場合に、熱容量が増大した分従来よりも蓄熱効果が高い。それ故、その蓄熱効果が従来の欠点を補ってパティキュレートの燃焼率を高めることができ、上流端近傍にパティキュレートが堆積する不具合を抑制することができる。
【0010】
第2の発明は、ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを含む排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成してなる焼成済みの基材の軸方向上流端から所定の領域である前端部領域に、上記基材の気孔を埋める原料を含有した原料液を浸透させる浸透工程と、
上記原料液を浸透させた上記基材を焼成する再焼成工程とを行うことにより、
上記基材の上記前端部領域の気孔率をA(%)、上記前端部領域以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係とすることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法にある(請求項7)。
【0011】
本発明の製造方法においては、上記焼成済みの基材に対して、少なくとも上記浸透工程と上記再焼成工程を施す。これにより、上記前端部領域の気孔率をA(%)、上記前端部領域以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係を有する排ガス浄化フィルタを得ることができる。
【0012】
即ち、上記浸透工程では、上記焼成済みの基材の前端部領域に、上記原料液を浸透させる。焼成済みの基材は、上記前端部領域も含めて多孔質となっているため、その気孔の中に上記原料液が浸透する。
次に、上記再焼成工程では、上記原料液を浸透させた基材を焼成する。これにより、基材の気孔に浸入している原料液中の原料が焼結し、気孔の少なくとも一部を埋める。
なお、これら浸透工程及び再焼成工程を行うことによる上記前端部領域の気孔率の減少の度合いは、上記原料液に含有させる原料の種類や濃度によって調整することが可能である。
【0013】
このように、本発明の製造方法では、上記浸透工程と上記再焼成工程とを含むことにより、上記A<Bの関係を有する優れた排ガス浄化フィルタを得ることができる。得られた排ガス浄化フィルタは、上述したごとく、前端部領域の熱容量の増大による蓄熱効果の向上によって、パティキュレートの燃焼率を高めることができ、上流端にパティキュレートが堆積する不具合を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
第1の発明の排ガス浄化フィルタは、上記のごとく、上記基材の軸方向上流端から所定の領域である前端部領域の気孔率をA(%)、上記前端部領域以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係にあるが、このA及びBは、A<0.77Bの関係にあることがさらに好ましい(請求項2)。これにより、前端部領域の気孔率低減効果(熱容量の増大効果)をより確実に発現させることができる。一方、A≧0.77Bの場合には、前端部領域の気孔率低減効果が顕著に現れにくいという問題がある。
【0015】
また、上記前端部領域は、上記軸方向上流端から50mm以下の領域であることが好ましい(請求項3)。即ち、上記前端部領域が軸方向上流端から50mmを超えるような長い範囲に及んだ場合には、基材全体の熱容量が増大しすぎ、基材全体における早期の昇温を望めなくなるという問題がある。
そのため、より好ましくは、上記前端部領域は、上記軸方向上流端から30mm以下の領域がよい(請求項4)。
なお、上記前端部領域は、少なくとも上記軸方向上流端から10mmの範囲を含む範囲以上に設けることが好ましい。これ以上前端部領域が狭い場合には、その存在による効果があまり得られないという問題がある。
【0016】
また、上記基材はコーディエライトよりなることが好ましい(請求項5)。上記基材としては、現在のところSiCを用いるのが主流であるが、これに比べてコーディエライトは耐熱性が低い。そのため、SiCの場合よりもパティキュレート燃焼時の温度上昇を抑制する必要があるので、上記構成を採用して、パティキュレートの堆積を抑制することが非常に有効である。また、コーディエライトを採用することによって、SiCの場合よりもコストを低くすることもできる。
【0017】
また、上記基材には、酸化触媒または/およびNOx還元触媒が担持されていることが好ましい(請求項6)。この場合には、パティキュレートを捕獲するだけでなく、担持した触媒の触媒作用によって排ガスの浄化も行うことができる。また、酸化触媒の存在によって、パティキュレートの燃焼を促進させることができる。
具体的な酸化触媒の成分としては、Pt、Pd等がある。また、NOx(窒素酸化物)還元触媒の成分としては、Pt、Rh、Ba、K等がある。好ましくは、上記酸化触媒とNOx還元触媒の両方を上記基材に担持させるのがよい。
【0018】
次に、上記第2の発明の製造方法においては、上記浸透工程として、様々な方法をとることができるが、最も好ましい方法としては、上記原料液中に上記基材の上記前端部領域を浸漬する方法(ディップ方法)がある。これにより、上記前端部領域全体を一度に上記原料液に接触させることができ、浸透状態を制御することが容易となる。また、浸透状態の管理を例えば浸漬時間で行うことができ、管理が容易である。
【0019】
また、上記基材はコーディエライトよりなることが好ましい(請求項8)。上述したごとく、コーディエライトはSiCに比べて耐熱性が低いので、本発明の製造方法を採用して上記構成の前端部領域を形成することが有効である。
【0020】
また、上記原料液は、コーディエライトとなる成分を含有してなるスラリーであることが好ましい(請求項9)。この場合には、基材とその気孔を埋める成分とが同じになるので、これらの一体化が容易となる。具体的な原料としては、様々なものを適用できるが、例えば、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ等の混合物、あるいはコーディエライトそのものの粉末等を用いることができる。
【0021】
また、上記原料液は、シリカゲルを含有する水溶液であることも好ましい(請求項10)。この場合には、基材の気孔中にシリカゲルが配設され、これにより、熱容量の増大を図ることができる。
【0022】
また、上記基材を作製するに当たっては、焼成済み又は未焼成の上記基材の上記セルのうち、上記排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端に栓材を配設する栓材配設工程と、栓材を配した上記基材を焼成する焼成工程とを行うことができる(請求項11)。即ち、予め栓材を配設した状態の基材を用いて上記浸透工程及び上記焼成工程を行うことができる。この場合、上記栓材配設工程を行う前の基材として、上記のごとく焼成済みのものを用いる方法と未焼成のものを用いる方法とがある。
【0023】
また、上記基材を作製するに当たっては、栓材を配設することなく上記基材を焼成する焼成工程を行い、上記浸透工程及び上記再焼成工程とを行った後に、上記基材の上記セルのうち、上記排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端に栓材を配設する栓材配設工程と、栓材を配した上記基材を焼成する第3の焼成工程とを行うこともできる(請求項12)。
【実施例】
【0024】
(実施例1)
本発明の実施例に係る排ガス浄化フィルタ及びその製造方法につき、図1〜図3を用いて説明する。
本例の排ガス浄化フィルタ1は、図1、図2に示すごとく、ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを含む排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタである。
【0025】
上記排ガス浄化フィルタ1は、同図に示すごとく、多孔質隔壁2を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセル10を形成した基材20を有している。
、該基材20のセル10のうち排ガス9を導入する導入通路11となるセル10の下流端と、多孔質隔壁2を通過した排ガス9を排出する排出通路12となるセル10の上流端には、栓材3を配して上記セル10を閉塞してある。
そして、基材20の軸方向上流端201から所定の領域である前端部領域21の気孔率をA(%)、前端部領域21以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係にある。
以下、これを詳説する。
【0026】
図1、図2に示すごとく、本例の排ガス浄化フィルタ1の基材20は、四角形状のセル10を多数有し、外形が円筒形状を呈するハニカム構造体であり、コーディエライトより構成されている。具体的サイズとしては、直径144mm、長さ152mm、セルサイズ#300を採用した。そして、多数のセル10のうち、隣り合うセルが交互に導入通路11および排出通路12となるように、導入通路11の下流端と排出通路12の上流端にそれぞれ栓材3を配してある。両端面から見ると、それぞれ、いわゆる市松模様状に栓材3が配された状態となる。
【0027】
また、図2に示すごとく、排ガス浄化フィルタ1は、軸方向上流端201からの距離Lが30mmの領域を上記前端部領域21として有している。本例では、前端部領域21の気孔率Aが、それ以外の領域22の気孔率Bよりも小さくなっている。なお、気孔率は、いわゆる水銀圧入式のポロシメータによって測定することができる。
また、上記基材20の多孔質隔壁2の表面には、アルミナコーティング層(図示略)を介して酸化触媒としてのPtを担持させてある。
【0028】
次に、上記排ガス浄化フィルタ1の製造方法について説明する。
まず、基材20の原料を押出成形してハニカム成形体を作製する。原料としては、化学組成が重量比にて最終的にSiO2:45〜55%、Al23:33〜42%、MgO:12〜18%よりなるコーディエライトとなるように調整したものを用いた。具体的には、タルク、溶融シリカ、水酸化アルミニウムを含むセラミック原料に、有機可燃物としての発泡剤及びカーボンと水とを加えて混練したものを用いた。
【0029】
押出成形は、四角形格子状のスリット溝を有する金型を用いて行った。そして押出成形したハニカム成形体を所望長さに切断し、乾燥・焼成することにより、栓のしていない基材20を得た。
次に、この焼成済みの基材20に対して、浸透工程と再焼成工程とを施した。
【0030】
まず、図3に示すごとく、基材20の気孔を埋める原料を含有した原料液8を準備した。原料液8としては、コーディエライトとなる成分を含有してなるスラリーを用いた。具体的には、粒子径が約5μmのコーディエライト粉末を水に混ぜたスラリーを用いた。そして、この原料液8に、基材20の軸方向上流端201から所定の領域である前端部領域21を浸漬し、この前端部領域21に、上記原料液8を浸透させた。
次に、原料液8を浸透させた基材20を焼成する再焼成工程を行った。この再焼成工程は、温度1445℃に5時間保持する条件で行った。
【0031】
上記再焼成工程の後に、本例では、上記基材20の上記セル10のうち、排ガス9を導入する導入通路11となるセル10の下流端と、多孔質隔壁2を通過した排ガス9を排出する排出通路12となるセル10の上流端に栓材3を配設する栓材配設工程と、栓材3を配した基材20を焼成する第3の焼成工程とを行った。
【0032】
なお、上記栓材配設工程は、基材20の1回目の焼成前、あるいは基材20の1回目の焼成後であって上記浸透工程の前に変更することができる。そして、栓材配設工程の位置によっては、焼成工程の回数を減らすことも可能となる。
その後、基材20に、アルミナを介して酸化触媒を担持させることにより、本例の排ガス浄化フィルタ1を得た。
【0033】
得られた排ガス浄化フィルタ1は、上記のごとく、上記前端部領域21の気孔率をA(%)、前端部領域21以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係にある。これにより、排ガス浄化フィルタ1の前端部領域21は、他の部分よりも密度が高く、熱容量も大きくなる。そのため、下流側においてパティキュレートの燃焼が起こり、その燃焼による熱が前端部領域21に伝わった場合に、熱容量が増大した分従来よりも蓄熱効果も高い。それ故、その蓄熱効果が従来の欠点を補ってパティキュレートの燃焼率を高めることができ、上流端近傍にパティキュレートが堆積する不具合を抑制することができる。
【0034】
(実施例2)
本例は、実施例1における製造方法において、上記浸透工程において用いる原料液8を、シリカゲルを20%含有する水溶液に変更した例である。
この場合にも実施例1とほぼ同様の作用効果が得られる。
【0035】
(実施例3)
本例では、実施例1における排ガス浄化フィルタ1を基礎として、長さ30mmの前端部領域21の気孔率Aを変更し、その影響を見るテストを行った。
気孔率Aの変更は、上記浸透工程における原料液8の濃度の変更、及び浸漬時間の変更等により調整した。なお、浸漬深さは30mm一定とした。
【0036】
得られた複数種類の排ガス浄化フィルタを用い、2000ccディーゼルエンジンの排ガスを一定条件下で浄化させ、このときの排ガス浄化フィルタの上流と下流の差圧を測定して圧損を求めた。エンジン回転数は1850rpm、エンジントルク50Nm、排ガス流量350m3/h、堆積させるスス(パティキュレート)は10g/Lの条件とした。なお、本例の排ガス浄化フィルタのサイズは、実施例1と同様に、直径144mm、長さ152mm、容積2.5Lである。
【0037】
圧損の測定結果を図4に示す。
同図は、横軸に、前端部領域の気孔率Aとその他の領域の気孔率の比であるA/Bを取り、縦軸に圧損(kPa)を取った。
同図から知られるごとく、A/Bが小さいほど圧損が低減されることがわかる。特に、A/Bが0.77以下となると、急激に圧損が低減されることがわかる。
【0038】
(実施例4)
本例では、実施例1における排ガス浄化フィルタ1を基礎として、前端部領域21の気孔率Aとその他の領域の気孔率Bの比A/Bを0.69一定とし、前端部領域21の長さを変更し、その影響を見るテストを行った。
前端部領域21の長さの変更は、上記浸透工程における原料液8に浸漬する深さを変更することによって行った。
得られた複数種類の排ガス浄化フィルタを用い、実施例3と同じ条件で圧損を測定した。
【0039】
圧損の測定結果を図5に示す。
同図は、横軸に、前端部領域の長さ(mm)を取り、縦軸に圧損(kPa)を取った。
同図から知られるごとく、少なくとも前端部領域の長さが30mmの範囲内では、その長さが長くなるほど圧損が低減されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施例1における、排ガス浄化フィルタを端面から見た説明図。
【図2】実施例1における、排ガス浄化フィルタの断面図(図1のX−X線矢視断面。
【図3】実施例1における、浸透工程を行っている状態((a)浸漬前、(b)浸漬中)を示す説明図。
【図4】実施例3における、A/Bと圧損との関係を示す説明図。
【図5】実施例4における、前端部領域の長さと圧損との関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0041】
1 排ガス浄化フィルタ
10 セル
11 導入通路
12 排出通路
2 多孔質隔壁
20 基材
21 前端部領域
3 栓材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを含む排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタであって、
多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成した基材を有し、該基材の上記セルのうち上記排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端には、栓材を配して上記セルを閉塞してなり、
上記基材の軸方向上流端から所定の領域である前端部領域の気孔率をA(%)、上記前端部領域以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係にあることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項2】
請求項1において、上記A及び上記Bは、A<0.77Bの関係にあることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記前端部領域は、上記軸方向上流端から50mm以下の領域であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項4】
請求項1又は2において、上記前端部領域は、上記軸方向上流端から30mm以下の領域であることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、上記基材はコーディエライトよりなることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、上記基材には、酸化触媒または/およびNOx還元触媒が担持されていることを特徴とする排ガス浄化フィルタ。
【請求項7】
ディーゼルエンジンから排出されるパティキュレートを含む排ガスを浄化する排ガス浄化フィルタを製造する方法であって、
多孔質隔壁を多角形格子状に配して軸方向に延びる多数のセルを形成してなる焼成済みの基材の軸方向上流端から所定の領域である前端部領域に、上記基材の気孔を埋める原料を含有した原料液を浸透させる浸透工程と、
上記原料液を浸透させた上記基材を焼成する再焼成工程とを行うことにより、
上記基材の上記前端部領域の気孔率をA(%)、上記前端部領域以外の気孔率をB(%)とした場合、A<Bの関係とすることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項8】
請求項7において、上記基材はコーディエライトよりなることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項9】
請求項8において、上記原料液は、コーディエライトとなる成分を含有してなるスラリーであることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項10】
請求項8において、上記原料液は、シリカゲルを含有する水溶液であることを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項11】
請求項7〜9のいずれか1項において、上記基材を作製するに当たっては、焼成済み又は未焼成の上記基材の上記セルのうち、上記排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端に栓材を配設する栓材配設工程と、栓材を配した上記基材を焼成する焼成工程とを行うことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。
【請求項12】
請求項7〜9のいずれか1項において、上記基材を作製するに当たっては、栓材を配設することなく上記基材を焼成する焼成工程を行い、上記浸透工程及び上記再焼成工程とを行った後に、上記基材の上記セルのうち、上記排ガスを導入する導入通路となるセルの下流端と、上記多孔質隔壁を通過した排ガスを排出する排出通路となるセルの上流端に栓材を配設する栓材配設工程と、栓材を配した上記基材を焼成する第3の焼成工程とを行うことを特徴とする排ガス浄化フィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−170121(P2006−170121A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−365653(P2004−365653)
【出願日】平成16年12月17日(2004.12.17)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】