説明

排ガス浄化用触媒の製造方法

【課題】交差ハニカムの製造中に起る触媒溶液浸漬中の気泡の残留、乾燥時の触媒溶液の詰まり等による、触媒担持の不均一や製造上のトラブルを防止した排ガス浄化用触媒の製造方法を提供する。
【解決手段】交差ハニカムに触媒成分を担持する製造方法において、交差ハニカムを45°傾けた状態で触媒溶液を供給、及び熱風通風乾燥することにより、均一に触媒成分を担持させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒の製造方法に係り、特にディーゼル排ガスなどの内燃機関から発生する微粒子除去フィルタ用触媒の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の代表的な排ガス浄化用触媒は、多孔質のコージェライトハニカム担体や、ダンボール状のセラミックペーパーを1層ごとに直交させて積層した交差ハニカム担体に、捕獲した粒子を燃焼させるための触媒成分を担持したものが使用されている。コージェライトハニカムは、隣り合うセルの出入り口が交互に封じられており、入口が封じられていないセルは出口を封じ、入口を封じたセルは出口が封じられていない構造となっている。このため処理ガスは入口側が封じられていないセルから内部へと導入され、多孔質なセル壁を通り、出口側が封じられていないセルから排気されるが、このときにセル壁で微粒子を捕獲し、フィルターとして機能するものである。また、交差ハニカムの場合は、ガス入口側の反対側を全て封じ、入口から導入された処理ガスを隣合う直交したセルに流して排気する。この際、処理ガスがセラミックペーパーの壁を通過することで微粒子を捕獲しフィルターとして機能するものである。
【0003】
これらコージェライトハニカムや交差ハニカムに触媒成分を担持させれる方法としては、担体を触媒溶液に浸漬させ、触媒溶液中から取出した担体を充分に液切りし、乾燥炉で乾燥させた後に焼成炉で焼成するという方法が採用されている。但し交差ハニカムは水分を吸収すると脆くなり、直接ハンドリングするとセルを損傷する可能性が高いため、触媒溶液への担持から乾燥完了までは担持用ケースにセットしたままハンドリングする方法がとられている。
【特許文献1】特開平10−156191号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図3に交差ハニカム1の略図を示す。交差ハニカム1は平板と波板の対からなる積層体の波板の稜線が互いに直交するように積層させたもので、平板と波板との間に形成されるセル2a、2bが交互に積層された構造となっている。従って図4に示すように、交差ハニカム1を触媒溶液3中へ浸漬させる場合、水平方向となるセル2aはセル2a内部に気泡4が残り、触媒成分が担持できない部分ができてしまうという問題がある。乾燥時においては溶液が低い部分へ流れ、その位置で固まる可能性があるため、一定時間ごとに担体を反転させる作業が必要であるが、それだけでは不十分であり、結果としてセル2a、2bの目詰まりを起こすという問題がある。また浸漬中に吸水した交差ハニカム1は非常に脆く、少しの衝撃でもセル2a、2bを損傷する可能性が高いという問題がある。
【0005】
本発明の課題は、上記問題点を解決し、上記交差ハニカムの製造中に起る触媒溶液浸漬中の気泡の残留、乾燥時の触媒溶液の詰まり等による、触媒担持の不均一や製造上のトラブルを防止した排ガス浄化用触媒の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願で特許請求する発明は下記のとおりである。
(1)平板と波板の対からなる積層体を前記波板の稜線が一層ごとに直交するように積層させて形成した交差ハニカムを触媒溶液に浸漬し、液切り、乾燥後、焼成する排ガス浄化用触媒の製造方法であって、前記触媒溶液中への浸漬を交差ハニカムの直交する稜線が互いに略45°傾いた状態で、交差ハニカムを触媒溶液に浸漬することを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
(2)前記交差ハニカムの触媒溶液担持後の乾燥を、交差ハニカムを前記と同様に略45°傾いた状態で下方から上方へ熱風を通して行うことを特徴とする(1)記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交差ハニカムを用いた排ガス浄化用触媒を、触媒担持の不均一を防止し、交差ハニカムの損傷や製造上のトラブルを伴うことなく、簡単な設備で製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面により詳細に説明する。図1は、本発明の排ガス浄化用触媒の製造方法を工程順に示した説明図である。
【0009】
交差ハニカム1は、交差ハニカム1を前述のように45°傾けてセットできる担持用ケース5に収納され、触媒溶液3中に浸漬される。担持用ケース5の側面には、図2(b)に示すように交差ハニカム1を45°傾けてセットするためのL字形のストッパー6が取り付けられている。図2(b)は、図2(a)のb−b線に沿った矢視方向断面図である。交差ハニカム1をセットする場合の角度45°は、本発明の目的を達成する範囲内で若干の誤差があってもよい。また、ストッパー6の形状は、L字形に限定されず、交差ハニカムを45°傾斜させて固定できるものであればどのような形状でもよい。
【0010】
交差ハニカム1の触媒化(触媒付着)は、図1に示すように、交差ハニカム1の触媒溶液3中の浸漬、エアブロー装置8による余剰液の液切り、熱風発生器9による通風乾燥、焼成炉10での焼成という手順で行われる。なお、図1中、ケース5の側面に取り付けられたストッパーは図示省略されている。上記の作業中、余剰液の液切り及び熱風による通風乾燥が不十分であると、焼成炉10での焼成時に余剰液が交差ハニカム1の下部に集中してセル2a、2bの目詰まりを発生させてしまうため、余剰液の液切り及び熱風による通風乾燥の完了時期を触媒溶液の付着量、すなわち担持前に測定した交差ハニカム1の質量と、各作業の途中で測定した質量との差で判断する必要がある。しかしながら交差ハニカム1は水分を含むと脆くなるので、作業中は交差ハニカム1を担持用ケース5にセットした状態で質量の管理を行う。
【0011】
本発明に用いる装置は、図2に示すように内面に45°の角度でL字型のストッパー6を取付けた担持用ケース5、担時用ケース5を完全に浸漬させることができる触媒溶液3を満たした浸漬用タンク7、余剰液の液切りを行うためのエアブロー装置8、エアブロー後の乾燥を行う熱風発生装置9、及び焼成炉10で構成される。
【0012】
本発明による作業手順は、交差ハニカム1を担持用ケース5に取付けられたストッパーに合わせて、直交したセル2a、2bが共に上面、下面を向くようにセットし、質量を測定する。次に担持用タンク7に満たした触媒溶液3中に交差ハニカム1を担持用ケース5ごと浸漬させ、気泡が出なくなるまで十分に担持を行う。その後、触媒溶液3から交差ハニカム1と担持用ケース5を取出して、上方から下方に向かってあらかじめ実験で確認した余剰液の液切り完了質量以下になるまで、エアブロー装置8によりエアブローを行う。
【0013】
液切りが完了した後、担持用ケース5ごと熱風発生装置9にセットして、あらかじめ実験で確認した乾燥完了質量以下になるまで、下方から上方に向かって熱風による通風乾燥を行う。その後焼成炉10で焼成を行い、交差ハニカムの触媒化が完了する。
【0014】
[作用]
交差ハニカム1を担持用ケース5に45°傾けてセットすることで、担持時にセル2a、2b内部に気泡が残ることがなく、触媒成分を交差ハニカム1に均一に担持することができる。また、熱風の通風乾燥を交差ハニカム1を45°傾けた担持用ケース5にセットした状態で下方から上方に向けて通風乾燥することで、余剰な触媒溶液が下部に集中してセル2a、2bの目詰まりを起こすことなく乾燥させることができ、その結果乾燥時の反転作業が不要となり、交差ハニカム1を損傷することなく効率よく交差ハニカム1を用いた排ガス浄化用触媒を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明方法における交差ハニカム触媒化の手順の概略を示す説明図。
【図2】本発明に用いる交差ハニカムの担持用ケースの概略図。
【図3】交差ハニカムの概略図。
【図4】従来の交差ハニカムを触媒溶液中に浸漬させた状態を示す説明図。
【符号の説明】
【0016】
1:交差ハニカム、2a、2b:交差ハニカムのセル、3:触媒溶液、4:気泡、5:担持用ケース、6:ストッパー、7:担持用タンク、8:エアブロー装置、9:熱風発生装置、10:焼成炉。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板と波板の対からなる積層体を前記波板の稜線が一層ごとに直交するように積層させて形成した交差ハニカムを触媒溶液に浸漬し、液切り、乾燥後、焼成する排ガス浄化用触媒の製造方法であって、前記触媒溶液中への浸漬を交差ハニカムの直交する稜線が互いに略45°傾いた状態で、交差ハニカムを触媒溶液に浸漬することを特徴とする排ガス浄化用触媒の製造方法。
【請求項2】
前記交差ハニカムの触媒溶液担持後の乾燥を、交差ハニカムを前記と同様に略45°傾いた状態で下方から上方へ熱風を通して行うことを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用触媒の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−81965(P2006−81965A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−266670(P2004−266670)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【出願人】(000005441)バブコック日立株式会社 (683)
【Fターム(参考)】