説明

排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用ハニカム触媒構造体

【課題】本発明は、シリカメゾ多孔体を使用した排ガス浄化用触媒について、触媒性能を向上させて効率よく排ガス浄化できる排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化用ハニカム触媒構造体を提供することである。
【解決手段】シリカメゾ多孔体の細孔内壁に、Al、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上の金属イオンを含み、前記シリカメゾ多孔体の細孔外壁に白金が担持されている排ガス浄化用触媒である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼機関の排ガス浄化用触媒及び排ガス浄化用ハニカム触媒構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所、各種ボイラー、加熱炉等の工場における燃焼機関、及びガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃エンジンによる燃焼機関から排出されるガスに関し、近年の地球環境問題の深刻化に伴い、更なる排ガス浄化技術の向上が望まれている。
【0003】
例えば、自動車等の内燃エンジンの排ガス浄化では、その排出されるガス中には一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NOx)、炭化水素(HC)が含まれており、それらを二酸化炭素(CO2)、窒素(N2)、水(H2O)に変換して、CO、NOx、及びHCの排出量を低減させる触媒技術が一般に知られている。
【0004】
自動車等のエンジンから排出されるガス中のCO、NOx、HCを全て浄化する触媒として三元触媒があり、前記触媒には、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)等の貴金属を組み合わせた金属触媒が広く使用されている。
【0005】
また、NOxを選択的に還元浄化する触媒としては、吸蔵還元型NOx浄化用触媒やNOx選択還元触媒があり、リーンバーンエンジンやディーゼルエンジンの排ガス浄化で使用されている。吸蔵還元型NOx浄化用触媒では、NOxを一旦吸蔵し、リーンからリッチ状態に切り替えることで、吸蔵されたNOxが還元される。NOx選択還元触媒では、NOx還元剤として、尿素、アンモニア、炭化水素(HC)等が利用される。特に、ディーゼルエンジンの排ガスでは酸素濃度が高いので、排ガス中のNOx還元反応を酸化雰囲気で行わねばならず、その反応の進行が難しくなる。尿素を還元剤としたNOx選択還元触媒が実用化されつつあるが、前記触媒では、還元剤である尿素を定期的に補給しなければならないという問題がある。一方、炭化水素を還元剤とする場合は、燃料を還元剤として使用できるので、還元剤を定期的に補給する必要がいらない。しかしながら、炭化水素を還元剤とするNOx選択還元触媒(HC-SCR)は、ディーゼルエンジンの排ガスのような高酸素濃度(例えば、6〜16%)で低排気温度(例えば、160〜400℃)の条件では、NOxを十分還元浄化できないという問題がある。
【0006】
一般に、排ガス浄化用触媒は、比表面積の高い酸化物担体に貴金属を担持した状態で使用される。前記担体となる酸化物としては、γ−アルミナが使用されている。γ−アルミナの比表面積は、通常、100〜200m2/gである。貴金属を担持する担体の比表面積が大きければ、貴金属を高分散できるので、触媒活性向上や耐久性向上が期待できる。
【0007】
γ−アルミナ以上に比表面積の高い酸化物としては、ゼオライト(アルミノ珪酸塩)やシリカメゾ多孔体が知られている。ここで、多孔体の細孔は、IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry) によると、細孔直径が2nm以下のミクロ細孔、2〜50nmのメゾ細孔(「メソ細孔」ともいう)、及び50nm以上のマクロ細孔に分類されている。特に、シリカメゾ多孔体は、数nmの位置に細孔ピークをもち、比表面積が例えば500〜1200m2/gという非常に大きな値を有する。
【0008】
したがって、ゼオライトやシリカメゾ多孔体を触媒担体として使用する試みが行われている。例えば、特許文献1〜13の中では、排ガス浄化触媒において、ゼオライトやシリカメゾ多孔体が使用されている。特に、特許文献2〜8、10〜11、13では、ディーゼルエンジン排ガス等のNOx浄化用触媒に、シリカメゾ多孔体(メソポーラスシリカ)が利用されている。NOx浄化用触媒等の排ガス浄化触媒でシリカメゾ多孔体を使用する場合、通常、シリカメゾ多孔体に、Pt、Pd、Rh等の貴金属が担持されて使用されることが多い。
【0009】
また、貴金属に着目すると、Ptを使用したNOx浄化触媒の研究例としては、非特許文献1〜4が挙げられる。非特許文献1では、Ptの担体にゼオライト(ZSM-5)を使用したものであり、非特許文献2は、通常のシリカが担体として使用されている。Ptの担体にシリカメゾ多孔体を使用した研究例は、非特許文献3及び4である。
【0010】
シリカメゾ多孔体に関しては、特許文献7では、ランタノイド族金属シリケートをメゾ多孔体にして、シリカメゾ多孔体の構成材料自体を改良することも行われている。特許文献9では、シリカメゾ多孔体(メソポーラスシリカ)の細孔の入口や内部に、シリカ、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等を含む修飾物質を配置して、メソポーラスシリカの修飾も行われている。更に、シリカメゾ多孔体の細孔内に、金(Au)とイリジウム(Ir)とを配置したり(特許文献11)、触媒活性物質を担持したり(特許文献12)されている例もある。
【0011】
また、非特許文献4では、Pt/V/MCM-41として、MCM-41のシリカメゾ多孔体に、バナジウム(V)を担持し、更にその上にPtを担持して、NOx浄化用触媒としての特性が研究されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平10-2022107号公報
【特許文献2】特開平8-257407号公報
【特許文献3】特開2008-161812号公報
【特許文献4】特開2008-161811号公報
【特許文献5】特開2007-244934号公報
【特許文献6】特開2007-209866号公報
【特許文献7】特開2006-297348号公報
【特許文献8】特開2006-081957号公報
【特許文献9】特開2003-320245号公報
【特許文献10】特開2008-279352号公報
【特許文献11】特開2002-210369号公報
【特許文献12】特開2002-320850号公報
【特許文献13】特開2007-069095号公報
【特許文献14】特開2000-002111号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】H. Hirabayashi, H. Yahiro, N. Mizuno, M. Iwamoto, Chem. Lett., 2235-2236(1992).
【非特許文献2】R. Burch, P. K. Loader, F. J. Urbano, Catal. Today, 37, 37-42(1996).
【非特許文献3】S. -C. Shen, S. Kawi, Appl. Catal. B, 45, 63-76(2003).
【非特許文献4】J. Y. Jeon, H. Y. Kim, S. I. Woo, Appl. Catal. B, 44, 301-310(2003).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
シリカメゾ多孔体を排ガス浄化用触媒に利用した例は、上述のように数多くあり、NOx浄化用触媒にも、シリカメゾ多孔体が利用されている。
【0015】
また、シリカメゾ多孔体を構成するシリカ骨格にランタノイド族金属(例えば、ランタン、セリウム、サマリウム、ガドリニウム)を導入したランタノイド族金属珪酸塩とし、ディーゼルエンジン排ガスのNOx浄化用触媒に使用されている(特許文献7)。また、シリカメゾ多孔体の細孔入口や内部に、アルミニウム、チタン、ジルコニウム等を酸化物形態で含ませることで、排気ガス中のHC吸着材として使用することが開示されている(特許文献9)。このように、シリカメゾ多孔体をシリカ以外の酸化物で修飾することが行われている。
【0016】
一方、シリカメゾ多孔体に担持する貴金属等の触媒活物質を、細孔内部に配置することも行われている(特許文献11、12)。
【0017】
更には、非特許文献4では、NOx浄化触媒として、シリカメゾ多孔体にVを担持して修飾し、更に、Ptを担持した研究も行われている。
【0018】
以上のように、シリカメゾ多孔体及び貴金属の担持に関し、種々の工夫が行われているが、排ガス浄化用触媒では環境規制の強化等に伴い、更なる触媒性能向上が求められているが、現行技術では十分な性能を有する触媒が開発されていないという問題がある。
【0019】
また、現在の排ガス規制の対象にはないが、NOx浄化用触媒でNOxを還元浄化する際に中間生成物として発生する一酸化二窒素(N2O)も低減できる排ガス浄化用触媒の開発が課題となっており、その課題解決策として、特許文献14では、NOx浄化用触媒とN2O分解触媒とを組み合わせた排ガス浄化触媒が開示されている。しかしながら、NOx浄化用触媒のみでN2Oの発生割合も低減した高性能の排ガス浄化用触媒が開発されていないという問題がある。すなわち、NOx浄化用触媒では、N2収率の高い排ガス浄化用触媒が望まれる。
【0020】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、シリカメゾ多孔体を使用した排ガス浄化用触媒について、触媒性能を向上させて効率よく排ガス浄化できる排ガス浄化用触媒、及び排ガス浄化用ハニカム触媒構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明者らは、シリカメゾ多孔体の細孔内壁に、特定の金属イオンを含み、かつ該細孔の外壁に白金が担持されたものとすることで、高酸素雰囲気でもN2収率が高いNOx浄化能を有するという優れた排ガス浄化ができることを見出し、本発明を完成した。
【0022】
すなわち、本発明は、以下の要旨とするものである。
(1)シリカメゾ多孔体の細孔内壁に、Al、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上の金属イオンを含み、前記シリカメゾ多孔体の細孔外壁に白金が担持されていることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
(2)前記金属イオンが、Al、V、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上であることを特徴とする上記(1)記載の排ガス浄化用触媒。
(3)前記金属イオンが、Al、V、Zr、Nb、Mo、Ce、又はMgの中から選らばれる1種以上であることを特徴とする上記(1)記載の排ガス浄化用触媒。
(4)前記金属イオンが、Al、V、Nb、Ce、又はMgの中から選らばれる1種以上であることを特徴とする上記(1)記載の排ガス浄化用触媒。
(5)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の排ガス浄化触媒を、金属又はセラミックスハニカム内壁に被覆したことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム触媒構造体。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明によれば、排ガス浄化触媒として、優れた触媒性能を有し、効率よく排ガスを浄化できるという顕著な作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】シリカメゾ多孔体の細孔断面の模式図。
【図2】本発明に係る構成のシリカメゾ多孔体の細孔断面の模式図。
【図3】テンプレートイオン交換法の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の排ガス浄化用触媒は、シリカメゾ多孔体の細孔内壁に、Al、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上の金属イオンを含み、細孔外壁に白金が担持されたものである。このような構成とすることで、高酸素濃度におけるNOx浄化に関し、高いN2収率が得られるものである。ここで、N2収率とは、排ガス中のNOxはほぼNO(一酸化窒素)であるとして反応式[1]に基づいて、
2NO → N2 + O2 ・・・・[1]
処理前の排ガス中のNO濃度(NO導入量)に対する処理後の排ガス中のN2増加濃度(N2生成量)の2倍とする。即ち、次式{1}で表されるものである。
【0026】
【化1】

【0027】
よって、単にNOxを浄化(分解)してどの程度NOxを減らすことができるかというこれまでの規制の視点で触媒の能力を判断するのではなく、NOxをN2にまで完全に反応を進行させることができるかという視点で触媒の能力を判断するものである。
【0028】
本発明者らは、シリカメゾ多孔体に単に白金や上記金属イオンを担持した従来と同様の触媒に比べて、上記金属イオンをシリカメゾ多孔体の細孔内壁に配置し、白金を同細孔外壁に担持された構成にすることで、高いN2収率が得られることを見出した。
【0029】
また、上記金属イオンの中で、Al、V、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上である金属イオンが、シリカメゾ多孔体の細孔内壁に含まれ、同細孔外壁に白金が担持されたものにすることで、優れたN2選択率を得ることことができる。ここで、N2選択率とは、N2収率とN2O収率の合計に対するN2収率とする。即ち、次式{2}で表されるものである。
【0030】
【化2】

【0031】
式{2}中のN2O収率とは、排ガス中のNOxはほぼNO(一酸化窒素)であるとして反応式[2]に基づいて、
2NO → N2O + 1/2O2・・・[2]
処理前の排ガス中のNO濃度(NO導入量)に対する処理後の排ガス中のN2O生成量(N2O濃度)の2倍とする。即ち、次式{3}で表されるものである。
【0032】
【化3】

【0033】
したがって、N2選択率に優れているということは、処理過程で減少したNOxの内、N2まで還元される割合が高いことを意味するものである。
【0034】
また、上記金属イオンの中で、Al、V、Zr、Nb、Mo、Ce、又はMgの中からから選らばれる1種以上である金属イオンが、シリカメゾ多孔体の細孔内壁に含まれ、同細孔外壁に白金が担持されたものにすることで、高いNO転化率(NOx転化率)を得ることことができる。ここで、NO転化率とは、N2収率とN2O収率の和であり、NO導入量に対する処理後のNO減少量の割合に相当するものである。即ち、次式{4}で表されるものである。
【0035】
【化4】

【0036】
したがって、NO転化率が高いことは、多量のNOxを処理できることを意味するものである。
【0037】
上述のように、上記金属イオンの中からから選らばれる1種以上である金属イオンが、シリカメゾ多孔体の細孔内壁に含まれ、同細孔外壁に白金が担持されたものにすることで、優れた排ガス浄化性能が得られる理由は、明確ではないが、例えば、以下のような理由が考えられる。
【0038】
シリカメゾ多孔体の細孔は、細孔径が数nm〜数十nmと非常に小さくなるので、細孔壁を形成しているシリカは、通常のシリカのシロキサン結合角や結合距離とは異なってくる。図1で模式的に示したように、細孔外側では、シロキサン結合角と結合距離が大きくなる傾向にあり、その結果、電子密度が低くなるとともにSiとOの分極δが大きくなる。一方、細孔内側では、シロキサン結合角と結合距離は小さくなる傾向にあり、電子密度が高くなる。シリカメゾ多孔体を利用した触媒設計に関し、これまでは、通常のシリカ表面より電子密度の高くなった(塩基性側にシフトした表面性状)細孔内壁の性質とナノ空間という特殊反応空間を利用するというものであった。NOx浄化触媒では、酸性ガスであるNOxを吸着するという観点から塩基性の固体表面が好ましい。通常のシリカ表面は酸性であるが、前記のようにシリカメゾ多孔体の細孔内壁は塩基性側にシフトしている(酸性が弱まる)ので、高比表面積であるという理由とともに、シリカメゾ多孔体がNOx浄化触媒に利用されている。よって、特許文献3や4では、シリカメゾ多孔体にアニオンを加えてさらに塩基性を高める例が示されている。
【0039】
しかしながら、本発明の触媒では、主に、シリカメゾ多孔体の細孔外壁で担持した白金とともにNOx浄化反応が起こっているものと考える。すなわち、メゾ細孔の外側は、上述のように、シロキサン結合角と結合距離が大きくなって電子密度が低くなっているが、SiとOのそれぞれの分極が大きくなり、Siでは正の分極(δ+)が大きくなり、Oでは負の分極(δ-)が大きくなっている。更に、図2に示したように、本発明に係る上記金属イオン(Mn+)が細孔内壁に存在すると、細孔内壁のシロキサン結合の電子が金属イオン側に引き寄せられる(金属イオンによる電子吸引)。シリカメゾ多孔体では細孔壁厚が薄いので、細孔内壁のシロキサン結合の電子が金属イオンによって引き寄せられると、細孔壁のシロキサン結合を経由して細孔外側のシロキサン結合の分極まで影響される。つまり、SiとOの分極δがより大きくなり、Oでは負の分極が更に大きくなって塩基点として作用し、酸性ガスであるNOxが吸着しやすくなる。吸着したNOxは、細孔外壁に担持されている白金のもとでN-O結合が解離し、還元分解される。また、シロキサン結合の分極がより大きくなると、Siでは正の分極が更に大きくなって酸点として作用する。酸点では、還元剤である炭化水素が活性化されるので、N-O結合が解離して生成するOを効率よく除去できることになる。以上のように、本発明の構成によって、NOx浄化が効率よく起こっているものと推測される。本発明に係る金属イオンの中でも、価数が4以上の大きな金属イオンで前記作用が顕著になり、高いNO転化率を有する触媒とすることができると考える。
【0040】
したがって、上記金属イオンの中で、Al、V、Nb、Ce、又はMgの中から選らばれる1種以上である金属イオンが、シリカメゾ多孔体の細孔内壁に含まれ、同細孔外壁に白金が担持されたものにすることで、N2収率がより高くなり、より優れた排ガス浄化性能が得られるものである。
【0041】
本発明の触媒で、白金が使用されるのは、パラジウムやロジウム等の他の貴金属に比べて、NOxが分解して生ずる酸素を解離して金属表面を再生しやすいからである。白金のシンタリング抑制等の目的で、本発明の効果を損なわせない範囲で、パラジウム等を添加してもよい。シリカメゾ多孔体に担持される白金の担持量は、特に限定されないが、処理ガス量や触媒コンバータ体積等の触媒の使用される条件に合わせて、適宜決ればよい。例えば、白金担持量が少なければ、触媒量を多く使用すれば十分なNOx浄化ができるし、白金担持量を多くすれば、触媒量を少なくでき触媒コンバータの体積を小さくできる。通常、白金担持量は、0.2mass%〜20mass%とされる場合が多い。白金担持量が0.2mass%未満では、白金量が少なすぎて大量の触媒を必要とする場合があるからである。白金担持量が20mass%を超えると、白金担持量を増やしても処理効率が大きく上がらず経済的でない場合がある。白金担持量の特に好ましい範囲は、効率と経済性の観点から、0.5mass%〜5mass%である。また、前記条件を満たせば、本発明の効果を損なわない範囲で、白金がシリカメゾ多孔体の細孔内部に存在していても構わない。
【0042】
本発明に係る上記金属イオンMの量は、本発明の上記作用が得られるものであればよいが、好ましくは、Si/Mモル比で5〜500である。Si/Mモル比が5未満では、メゾ多孔体を構成するシリカの量に対して金属イオンが多くなり過ぎて、細孔中から溢れる金属イオンが出てくる場合がある。Si/Mモル比が500を超えると、シリカメゾ多孔体の細孔内壁の金属イオンが少な過ぎて、上述の作用が十分起こらない場合がある。Si/Mモル比のより好ましい範囲は、効率的に金属イオンによる触媒性能向上効果を得るという観点から、10〜50である。
【0043】
本発明のシリカメゾ多孔体(メソポーラスシリカ)とは、IUPACによるメゾ細孔を有するシリカ(SiO2)の多孔体である。即ち、細孔直径が2〜50nmの細孔を有するシリカ多孔体である。
【0044】
シリカメゾ多孔体の合成法は特に限定しないが、例えば、界面活性剤とシリカ前駆体を原料として合成する公知の方法を使用することができる。前記界面活性剤は、従来のシリカメゾ多孔体の作製に使用されているミセル形成の界面活性剤、例えば、長鎖の4級アンモニウム塩、長鎖のアルキルアミンN-オキシド、長鎖のスルフホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等のいずれであってもよい。具体的な例としては、CH3(CH2)nN(CH3)3・X (nは7〜21の整数、Xはハロゲンイオン)で表されるハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウム系陽イオン界面活性剤である、n-オクチルトリメチルアンモニウムブロミド、n-デシルトリメチルアンモニウムブロミド、n-ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n-テトラデシルトリメチルアンモニウムブロミド、n-オクタデシルトリメチルアンモニウムブロミド等が挙げられる。
【0045】
シリカ前駆体の種類としては、コロイダルシリカ、シリカゲル、ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム等のケイ酸アルカリ、テトラメチルオルソシリケートやテトラエチルオルソシリケート等のシリコンのアルコキシド、前記シリコンのアルコキシドのオリゴマーを、単独または混合して使用することができる。
【0046】
シリカメゾ多孔体の比表面積は特別な事情がない限り高ければ高いほどよい。本発明に好適に用いることのできるシリカメゾ多孔体の比表面積は100〜1400m2/gであり、好ましくは200〜1200m2/g、さらに好ましくは400〜1200m2/gである。比表面積が100m2/g未満では、白金の担持分散性が小さくなり、十分な触媒性能が得られない場合がある。比表面積が1400m2/gを越えると多孔体材料強度が不十分になる場合がある。本発明における比表面積とは、アルゴンや窒素のガスの物理吸着を利用してBET式から求められる物質1g当たりの表面積のことである。
【0047】
本発明のシリカメゾ多孔体として、前記細孔が六方晶構造や立方晶構造に規則的配列している(規則性)シリカメゾ多孔体が好適に使用できる。例えば、「MCM(Mobil Catalytic Material−41)」と呼ばれるタイプの六方構造に規則配列した貫通型細孔を有するシリカメゾ多孔体である。MCM-41シリカメゾ多孔体では、通常、細孔直径(開口径)が2〜10nmである。
【0048】
本発明の排ガス浄化用触媒では、上述のように、前記シリカメゾ多孔体の細孔内壁に、Al、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上の金属イオンを含むものである。前記金属イオンをシリカメゾ多孔体の細孔内壁に含ませるには、図3に模式的に示したように、シリカメゾ多孔体の製造過程にテンプレートイオン交換法で行う。具体的には、次のようにする。シリカ前駆体、界面活性剤、及び溶媒が含まれる溶液中で、界面活性剤がミセルを形成させ、界面活性剤のミセル構造をテンプレートとしてシリカ前駆体がメゾ多孔体構造をとる。通常のシリカメゾ多孔体は、前記界面活性剤を含むメゾ多孔体構造を焼成して界面活性剤を除くことにより得られるのであるが、本発明では、前記界面活性剤を含むメゾ多孔体構造に上記金属イオンを添加して界面活性剤(テンプレート)とイオン交換させる。イオン交換させた後に焼成することで、細孔内壁に上記金属イオンを含むシリカメゾ多孔体を得ることができる。
【0049】
上記金属イオンとして添加する原料には、金属イオンの無機酸塩、有機酸塩、金属オキソ酸塩、又は金属錯体が使用できる。例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、臭化物、硫酸塩、水酸化物、シュウ酸塩、アンモニウム塩等が挙げられる。これらの原料を単独または2以上を混合して使用することができる。
【0050】
前記溶媒として、通常、水、アルコール類、ジオールの1種以上が用いられるが、水系溶媒が好ましい。
【0051】
細孔内壁に上記金属イオンを含むシリカメゾ多孔体の作製手順は、例えば、以下のようにする。
【0052】
まず、界面活性剤と溶媒を含む溶液を調製する。一方、シリカ前駆体と溶媒を含む溶液を調製し、前記溶液に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機アルカリを溶解したアルカリ溶液を加える。なお、このアルカリ溶液の代わりに、塩酸、硫酸、硝酸などの無機酸、クエン酸などの有機酸を用い、pHを1〜4に調整した酸溶液を用いることもできる。また、溶液中のシリカ源の濃度は、特に限定されるものではないが、通常0.1〜3モル/Lが好ましく、0.4〜1.5モル/Lがより好ましい。
【0053】
更に、前記両溶液の混合して、常温(20℃)〜60℃で1時間〜50時間攪拌する。ここで、界面活性剤は、シリカ(SiO2)1モルに対して、通常2.0〜6.0モル、好ましくは2.5〜4.0モルである。
【0054】
攪拌した後、加熱処理して構造の規則性を向上させる。具体的な加熱条件としては、前記混合液を80〜160℃、好ましくは100〜150℃で、30〜60時間、好ましくは40〜50時間、水熱処理を行う。この水熱処理で、メゾ多孔体構造の沈殿核が形成される。
【0055】
次いで、沈殿生成物を濾別し、水洗後、常温から150℃の範囲にて乾燥する。
【0056】
該乾燥物を溶媒に分散して懸濁液とし、前記懸濁液に、上記金属イオンの原料を溶媒に溶解した溶液に加え、0.5〜5時間攪拌した後、常温〜95℃の間で1〜48時間静置する。これにより、メゾ多孔体構造の細孔内にある界面活性剤と金属イオンがイオン交換する。イオン交換させる量は、溶液中の金属イオン量、濃度、放置する温度と時間を調整することで可変できる。イオン交換量が飽和に達するまでは、金属イオン量が多いほど、金属イオン濃度が高いほど金属イオン交換量が多くなる。また、放置する温度が高いほど、放置する時間が長いほど、金属イオン交換量が多くなる。金属イオン交換量は、溶液中に残存する金属イオンを分析することで算出できる。
【0057】
さらに、前記処理後の固形物を濾別して洗浄した後、残存している界面活性剤を除去する。界面活性剤の除去は、高温で熱分解(燃焼)することによって行うことができる。残存する界面活性剤の燃焼によって除去する場合には、酸素が存在する雰囲気下で加熱処理を施すことが好ましい。
【0058】
加熱処理温度は、界面活性剤が除去できる限り、特に限定されるものではないが、好ましくは200〜800℃で、より好ましくは300〜600℃で行われる。加熱処理温度が200℃以上であると、界面活性剤の燃焼が促進されて除去しやすくなる。加熱処理温度が300℃以上であると、この効果がより顕著になる。加熱処理温度が800℃以下であると、細孔壁を構成しているシリカの崩壊を防ぐことができる。加熱処理温度が600℃以下であると、この効果がより顕著になる。
【0059】
加熱処理時間は、界面活性剤が除去できる限り、特に限定されるものではないが、通常、4〜20時間程度、好ましくは4〜10時間程度である。酸素が存在する雰囲気であればよいが、空気中(21%酸素)〜酸素中(純度95%以上)の間で行うのが好ましい。
【0060】
上述のようにして得られたシリカメゾ多孔体は、化学分析法、ICP(Inductively Coupled Plasma)発光分析法等で金属イオンを分析して含有量を決定できる。また、シリカメゾ多孔体の孔は、TEM(透過型電子顕微鏡)で観察でき、TEM像とXRD(X線回折法)により、細孔の規則性を判断できる。また、細孔内壁に存在する金属イオンは、STEM(走査透過電子顕微鏡)によって確認できる。後述の実施例における金属イオンの存在は、STEMによって確認している。
【0061】
金属イオンを細孔内壁に含むシリカメゾ多孔体に白金の前駆体を用いて含浸処理することで、白金を細孔外壁に担持した本発明の排ガス浄化用触媒を作製できる。白金の前駆体としては、例えば、H2PtCl4、(NH4)2PtCl4、H2PtCl6、(NH4)2PtCl6、Pt(NH3)4(NO3)2、Pt(NH3)4(OH)2、PtCl4、白金のアセチルアセトナート、Ptコロイド等を用いることができる。前記含浸処理は、前記シリカメゾ多孔体を溶媒に分散して懸濁液を調製する。一方、白金の前駆体を溶媒に溶解した溶液を調製する。前記懸濁液に、白金前駆体の溶液を加え、常温〜95℃で攪拌する。その後、溶媒を蒸発除去する。残った固形分を300〜800℃で熱処理することで白金を担持することができ、本発明の排ガス浄化用触媒とすることができる。前記熱処理は、空気中、不活性雰囲気中、又は還元雰囲気中で行う。
【0062】
前記溶媒として、通常、水、アルコール類、ジオールの1種以上が用いられるが、水又はアルコール系溶媒が好ましい。
【0063】
本発明の排ガス浄化用触媒は、金属又はセラミックスハニカム内壁に被覆して排ガス浄化用ハニカム触媒構造体にすることができる。前記ハニカム内壁に被覆する方法としては、例えば、ウォッシュコートで行うことができる。本発明で使用できるセラミックスハニカムは、特に限定されないが、例えば、コージエライトハニカム、炭化珪素ハニカム等が挙げられる。また、本発明で使用できる金属ハニカムも、特に限定されないが、例えば、ステンレスハニカムやAl富化ステンレスハニカム等が挙げられる。
【0064】
本発明の排ガス浄化用触媒をハニカムにウォッシュコートする場合には、まず、触媒及び結合材等が分散するスラリーを調製し、その中にハニカムを浸漬する。結合剤としては、例えば、硝酸アルミニウム、コロイダルアルミナ、有機バインダー等が挙げられる。次いで、ハニカム表面の余剰スラリーを吹き飛ばす等の方法で取り除き、乾燥した後、500〜800℃の温度で大気中数時間熱処理する。尚、前記スラリーがハニカム内壁にのみ塗布されるよう、ハニカムを装着する治具を工夫して、前記スラリーを吸い上げることも可能である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
225.00gのn-ドデシルトリメチルアンモニウムブロミドC12H25N(CH3)Br(界面活性剤)と644.94gのイオン交換水を40℃で均一な溶液となるまで攪拌した。前記溶液に、11.6gの水酸化ナトリウムを126.30gのイオン交換水に溶解した溶液と、306.32gのコロイダルシリカ(日産化学社製、スノーテックス20、SiO2:20mass%、粒子径10〜20nm)とを加え、混合溶液を2時間攪拌した。前記混合溶液をオートクレーブで、140℃で48時間水熱処理した。水熱処理後、内容物の固形分をろ過し、更に、イオン交換水で洗浄及び80℃で乾燥した。乾燥後に得られた固形部分は、87.15gであった。
【0066】
このようにして得られた固形分(粉末)を、CuKαのX線源の粉末X線回折装置で測定したところ、回折パターンの2θ=2.54度(100)、4.40度(110)、及び5.05度(200)に、メゾ細孔構造による回折ピークが認められ、シリカメゾ多孔体が形成されていることが確認された。
【0067】
前記固形分粉末は、乾燥した状態であるので、テンプレートである界面活性剤が細孔内に残っている。前記固形分粉末20gを30倍質量のイオン交換水に分散させ、攪拌しながら2N塩酸を加え、懸濁液のpHを6.5±0.5に調整した。常温で1時間攪拌後、80℃の水浴中で20時間放置した。その後、ろ過及びイオン交換水にて洗浄した(pHスイング)。前記固形分粉末を、空気中、600℃で6時間焼成した。焼成後の粉末を、窒素吸着法によって細孔径を求めたところ、平均2.24nm(BET比表面積:979m2/g)であった。
【0068】
前記未焼成の粉末(乾燥粉末)1gに対し10mLのイオン交換水を加え攪拌し、懸濁させた。所定量の金属塩を10mLのイオン交換水に溶解して金属イオンの水溶液を調製した。前記懸濁液を攪拌しながら、前記金属イオンの水溶液を加え、常温で1時間攪拌した。攪拌後の該容器を、80℃に設定した水浴中に浸し、20時間保持した。その後、溶液を吸引ろ過して固体粉末を分離し、イオン交換水で洗浄及び80℃で乾燥した。乾燥後の固体粉末を、空気中、1℃/minで昇温し、600℃で6時間焼成した。このようにして、各種金属イオンを細孔内壁に含まれるシリカメゾ多孔体をそれぞれ調製した。
ここで、各金属塩は、硝酸塩(Al(NO3)2・6H2O、ZrO(NO3)2・2H2O、Ce(NO2)3・6H2O、Mg(NO3)2・6H2O、Fe(NO3)2・9H2O、Ni(NO3)2・6H2O、Cu(NO3)2・3H2O、Co(NO3)2・6H2O、La(NO3)3・6H2O、Cr(NO3)3・9H2O)、硫酸塩(VOSO4・nH2O)、シュウ酸塩((NH4)2TiO(C2O4)2・2H2O)、酢酸塩(Mn(CH3COO)2・4H2O)使用した。
【0069】
NH4NbO(C2O4)2・xH2Oシュウ酸塩、(NH4)6Mo7O24・4H2Oアンモニウム塩、WCl6塩化物の各金属塩については、溶液中でアニオンであるので、上記600℃で6時間焼成して得られたシリカメゾ多孔体を使用して金属イオンを細孔内に含ませた。前記シリカメゾ多孔体1.5gに対し30mLのイオン交換水を加え攪拌し、懸濁させた。所定量の金属塩を15mLのイオン交換水に溶解して金属イオンの水溶液を調製した。前記懸濁液を攪拌しながら、室温で前記金属イオンの水溶液を加えた。その後、80℃で2時間攪拌後、同温度で攪拌しながら蒸発乾固させた。その後、80℃で12時間乾燥し、空気中、1℃/minで昇温し、600℃で6時間焼成した。前記WCl6の場合については、WCl6が水に不溶であるため、イオン交換水の代わりに溶媒としてエタノールを使用した。溶液中でアニオンとなる金属種については、このようにして金属イオンを細孔内壁に含まれるシリカメゾ多孔体を調製した。
【0070】
また、比較例として、Ce(NO2)3・6H2Oを使用して、上記600℃で6時間焼成して得られたシリカメゾ多孔体を使用して、前記と同様に処理した。この場合、セリウムは、水溶液中ではカチオンであって、置換できる界面活性剤がシリカメゾ多孔体の細孔内に無いので、細孔外にセリウムが存在したシリカメゾ多孔体が調製できる。
【0071】
シリカメゾ多孔体に含まれる金属イオンは、ICPで分析し、Si/Mモル比を算出した。
【0072】
前記金属イオンを含む焼成後のシリカメゾ多孔体、及び、上記金属イオンを含まない焼成後のシリカメゾ多孔体に、Ptを含浸法で担持した。含浸法に用いたPt原料は、塩化白金酸H2PtCl6・6H2Oである。塩化白金酸1gをイオン交換水100gに溶解した。一方、上記各シリカメゾ多孔体粉末1.5gをイオン交換水30mLに加えて攪拌し、懸濁させた。該懸濁液を攪拌しながら、前記塩化白金酸水溶液を室温で添加し、更に、80℃で2時間攪拌した。ここで、塩化白金酸とシリカメゾ多孔体粉末との割合は、Pt担持量で2mass%となるようにした。その後、前記溶液を、同温で攪拌しなら蒸発乾固させた。得られた粉末を、空気中、1℃/minで昇温し、600℃で6時間焼成し、触媒粉末を作製した。
【0073】
上述のようにして作製した触媒粉末を、常圧固定床流通式反応装置の反応管に充填し、Heガス流通下(ガス単位時間空間速度(GHSV、Gas Hourly Space Velocity):5,000h-1)で、500℃、4時間の前処理を行った後、触媒活性の評価を行った。反応ガスは、NO:0.1%、C2H4:0.3%、O2:14%、Heバランスである。この時のGHSVは、10,000h-1とした。測定温度は、100℃〜600℃である。ガスの分析には、TCD(Thermal Conductivity Detector, 熱伝導度型検出器)−FID(Flame Ionization Detector, 水素炎イオン化型検出器)付ガスクロマトグラフを使用した。前記分析結果より、上記式{1}に基づいてN2収率を求め、上記式{2}に基づいてN2選択率を求め、上記式{3}に基づいてNO転化率を求めた。
【0074】
各触媒の評価結果を表1に示す。表1では、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.1−18)のN2収率、N2選択率、NO転換率を基準して、No.1−1〜17までの各サンプルの触媒性能評価結果を示している。N2収率に関しては、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.1−18)のN2収率に対して、1.0倍以下を「×」、1.0倍超1.1倍未満を「△」、1.1倍以上1.2倍未満を「○」、1.2倍以上を「◎」で示した。N2選択率に関しては、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.1−18)のN2選択率に対して、1.0倍以下を「×」、1.0倍超1.3倍未満を「△」、1.3倍以上1.5倍未満を「○」、1.5倍以上を「◎」で示した。NO転化率に関しては、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.1−18)のNO転化率に対して、0.8倍以下を「×」、0.8倍超1.0倍未満を「△」、1.0倍以上1.05倍未満を「○」、1.05倍以上を「◎」で示した。
【0075】
表1に示したように、No.1−1〜1−10の実施例である、Al、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの金属イオンの場合に、優れたN2収率を示し、Al、V、Nb、Ce、又はMgの金属イオンの場合に、より優れたN2収率を示した。更に、No.1−1、1−3、1−5〜1−10の実施例である、Al、V、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの金属イオンの場合には、優れたN2選択率を示し、Mg、Fe、又はLaの金属イオンの場合には、より優れたN2選択率を示した。No.1−1、1−3〜1−8の実施例である、Al、V、Zr、Nb、Mo、Ce、又はMgの金属イオンの場合に、優れたNO転化率を示し、Al、V、Zr、Nb、又はCeの金属イオンの場合には、より優れたNO転化率を示した。
【0076】
また、実施例1−7と比較例1−17は、金属イオンとして同じセリウムではあるが、実施例1−7ではシリカメゾ多孔体の細孔内壁に金属イオンが有し、比較例1−17ではシリカメゾ多孔体の細孔内壁に金属イオンが無く、細孔外にのみ金属イオンが有する場合である。表1より、実施例1−7の方が、N2収率に優れていることが分かる。
【0077】
以上の評価結果は、本発明の排ガス浄化触媒が、ディーゼルエンジンやリーンバーンガソリンエンジン等の高酸素濃度の排ガスにおいて優れたNOx浄化を可能にすることを示しているだけではなく、各種燃焼機関の排ガス浄化に適用できることを示すものである。
【0078】
【表1】

【0079】
(実施例2)
実施例1で調製したシリカメゾ多孔体の未焼成粉末又は焼成粉末を用いて、実施例1と同様の方法で表2に示した各種金属イオンを細孔内壁に含まれるシリカメゾ多孔体をそれぞれ調製した。但し、ここでは、金属イオンの量を表2のように変えて調製した。更に、白金を、実施例1と同様の方法で、Pt担持量が2mass%になるように含浸させて、担持した。
【0080】
触媒性能評価については、実施例1と同様に行い、その評価結果は、No.1−18の金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプルを基準にして、実施例1(表1)と同様に表した。その結果を、表2に示す。
【0081】
金属イオンの量に関し、表2の全て実施例で、本発明の効果が得られた。特に、Si/Mモル比が、5〜500の範囲では表1と差異はなく顕著な効果が得られた。
【0082】
【表2】

【0083】
(実施例3)
実施例1で調製したシリカメゾ多孔体の未焼成粉末又は焼成粉末を用いて、実施例1と同様の方法で表3に示した各種金属イオンを細孔内壁に含まれるシリカメゾ多孔体をそれぞれ調製した。前記シリカメゾ多孔体、及び、実施例で調製した金属イオンを含まない焼成後のシリカメゾ多孔体を用いて、実施例1と同様にして白金を担持して触媒サンプルを作製した。但し、ここでは、Pt担持量を10mass%となるように含浸させて担持した。
【0084】
得られた各触媒サンプルは、実施例1と同様の方法で触媒性能を評価した。各触媒サンプルの評価結果を表3に示す。表3では、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.3−17)のN2収率、N2選択率、NO転換率を基準して、No.3−1〜16までの各サンプルの触媒性能評価結果を示している。N2収率に関しては、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.3−17)のN2収率に対して、1.0倍以下を「×」、1.0倍超1.2倍未満を「○」、1.2倍以上を「◎」で示した。N2選択率に関しては、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.1−17)のN2選択率に対して、1.0倍以下を「×」、1.0倍超1.1倍未満を「△」、1.1倍以上1.2倍未満を「○」、1.2倍以上を「◎」で示した。NO転化率に関しては、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に白金を担持したサンプル(No.3−18)のNO転化率に対して、0.8倍以下を「×」、0.8倍超1.0倍未満を「△」、1.0倍以上1.05倍未満を「○」、1.05倍以上を「◎」で示した。
【0085】
表3に示しているように、Pt担持量を10mass%としても、実施例1(表1)の結果と同様であり、本発明の効果が認められた。更に、Pt担持量に関しては、白金を担持しない場合は十分な触媒性能が得られなかったが、少なくとも0.2mass%〜20mass%の範囲で、同じPt担持量であれば金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に比べて優れているという同様の効果が認められた。
【0086】
また、上記各触媒粉末をスラリーにして、ハニカムにウォッシュコートしてハニカム触媒構造体を作製して、その触媒性能を評価した。ここで、使用したハニカムは、所定形状直径が25mm、高さが60mm、ハニカムのセル密度として1インチ(25.4mm)平方当たり300セルである円筒型のステンレス鋼製ハニカムを用いた。触媒性能結果は、表3の粉末状での評価結果と同様に、金属イオンを含まないシリカメゾ多孔体に比べて優れていた。
【0087】
【表3】

【符号の説明】
【0088】
1 シリカメゾ多孔体のシリカ壁
2 界面活性剤(テンプレート)イオン
3 プロトン
4 金属イオン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリカメゾ多孔体の細孔内壁に、Al、Ti、V、Zr、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上の金属イオンを含み、前記シリカメゾ多孔体の細孔外壁に白金が担持されていることを特徴とする排ガス浄化用触媒。
【請求項2】
前記金属イオンが、Al、V、Nb、Mo、Ce、Mg、Fe、又はLaの中から選らばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項3】
前記金属イオンが、Al、V、Zr、Nb、Mo、Ce、又はMgの中から選らばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項4】
前記金属イオンが、Al、V、Nb、Ce、又はMgの中から選らばれる1種以上であることを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用触媒。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の排ガス浄化触媒を、金属又はセラミックスハニカム内壁に被覆したことを特徴とする排ガス浄化用ハニカム触媒構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−221119(P2010−221119A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70832(P2009−70832)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 第102回触媒討論会 討論会A予稿集(発行所:触媒学会発行日:平成20年9月23日)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)
【Fターム(参考)】