説明

排ガス浄化用触媒

【課題】高い排ガス浄化効率を達成する。
【解決手段】本発明の排ガス浄化用触媒1は、基材2と、前記基材2を被覆すると共に酸素貯蔵材料を含んだ酸素貯蔵層3と、前記酸素貯蔵層を被覆すると共にパラジウム及びロジウムとこれらを担持した担体とを含み且つ前記酸素貯蔵層3と比較して貴金属密度がより高い触媒層4とを具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排ガス浄化用触媒に係り、特には酸素貯蔵材料を含んだ排ガス浄化用触媒に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車等の排ガスを処理する排ガス浄化用触媒としては、アルミナなどの無機酸化物からなる耐熱性担体に貴金属を担持させた三元触媒が広く使用されている。この三元触媒では、貴金属は、窒素酸化物(NOx)の還元反応並びに一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)の酸化反応を促進する役割を担っている。また、耐熱性担体は、貴金属の比表面積を増大させると共に、反応による発熱を消散させて貴金属のシンタリングを抑制する役割を担っている。
【0003】
特許文献1乃至3には、酸化セリウム又はセリウムと他の金属元素とを含有した酸化物を使用した排ガス浄化用触媒が記載されている。これら酸化物は、酸素貯蔵能を有している酸素貯蔵材料である。酸素貯蔵材料を三元触媒で使用すると、先の還元反応及び酸化反応を最適化し得る。しかしながら、以下に説明するように、酸素貯蔵材料を使用した三元触媒であっても、エンジンを始動した直後の状態とエンジンを継続的に稼動した状態との双方において、良好な性能を達成することは難しい。
【0004】
エンジンを始動した直後の状態では、触媒の温度は低い。低温条件のもとで貴金属が排ガスを浄化する能力は、高温条件のもとで貴金属が排ガスを浄化する能力と比較してより低い。それゆえ、エンジンを始動した直後における性能を考慮した場合、排ガス浄化用触媒の熱容量を小さくすること,例えば、貴金属や酸素貯蔵材料の使用量を少なくすること,が有利である。
【0005】
他方、エンジンを継続的に稼動した状態では、触媒の温度は十分に高い。この場合、貴金属が排ガスを浄化する能力は高いため、排ガス浄化用触媒は、排ガス組成の変動に対応すべく、より多くの酸素貯蔵材料を含んでいることが有利である。
【0006】
このように、エンジンを始動した直後における性能とエンジンを継続的に稼動した状態における性能とは、二律背反の関係にある。そのため、エンジンを始動した直後の状態とエンジンを継続的に稼動した状態との双方において良好な性能を達成することは難しく、それゆえ、常に高い排ガス浄化効率を達成することは難しい。
【特許文献1】特開平1−281144号公報
【特許文献2】特開平9−155192号公報
【特許文献3】特開平9−221304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、高い排ガス浄化効率を達成することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一側面によると、基材と、前記基材を被覆すると共に酸素貯蔵材料を含んだ酸素貯蔵層と、前記酸素貯蔵層を被覆すると共にパラジウム及びロジウムとこれらを担持した担体とを含み且つ前記酸素貯蔵層と比較して貴金属密度がより高い触媒層とを具備したことを特徴とする排ガス浄化用触媒が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、高い排ガス浄化効率を達成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の態様について説明する。
図1は、本発明の一態様に係る排ガス浄化用触媒を概略的に示す斜視図である。図2は、図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図である。
【0011】
図1及び図2に示す排ガス浄化用触媒1は、モノリス触媒である。この排ガス浄化用触媒1は、モノリスハニカム基材などの基材2を含んでいる。基材2は、典型的には、コージェライトなどのセラミックス製である。
【0012】
基材2の隔壁上には、酸素貯蔵層3が形成されている。酸素貯蔵層3は、耐熱性担体と酸素貯蔵材料とを含んでいる。
【0013】
耐熱性担体は、酸素貯蔵材料と比較して熱安定に優れている。耐熱性担体の材料としては、例えば、アルミナ、ジルコニア、又はチタニアを使用することができる。
【0014】
酸素貯蔵材料は、例えば、セリア、セリアと他の金属酸化物との複合酸化物及び/又は固溶体、或いはそれらの混合物である。複合酸化物及び/又は固溶体としては、例えば、セリアとジルコニアとの複合酸化物及び/又は固溶体を使用することができる。
【0015】
酸素貯蔵層3は、白金、ロジウム、及びパラジウムなどの貴金属をさらに含んでいてもよい。通常、酸素貯蔵層3の酸素貯蔵能は、酸素貯蔵層3が少量の貴金属を含んでいる場合、酸素貯蔵層3が貴金属を含んでいない場合と比較してより高い。
【0016】
酸素貯蔵層3は、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムなどの希土類元素の酸化物、又はそれらの混合物をさらに含むことができる。これら酸化物は、セリアなどの他の酸化物と複合酸化物及び/又は固溶体を形成していてもよい。
【0017】
酸素貯蔵層3上には、触媒層4が形成されている。触媒層4は、耐熱性担体と酸素貯蔵材料とパラジウムとロジウムとを含んでいる。図2の例では、触媒層4は、第1触媒層4aと第2触媒層4bとの積層体である。
【0018】
第1触媒層4aは、酸素貯蔵層3と第2触媒層4bとの間に介在している。第1触媒層4aは、耐熱性担体と酸素貯蔵材料とパラジウムとを含んでいる。
【0019】
第2触媒層4bは、第1触媒層4aを被覆している。第2触媒層4bは、耐熱性担体と酸素貯蔵材料とロジウムとを含んでいる。
【0020】
耐熱性担体は、酸素貯蔵材料と比較して熱安定に優れている。触媒層4が含む耐熱性担体の材料としては、例えば、酸素貯蔵層3について例示したものを使用することができる。第1触媒層4aが含む耐熱性担体と第2触媒層4bが含む耐熱性担体とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0021】
触媒層4が含む酸素貯蔵材料の材料としては、例えば、酸素貯蔵層3について例示したものを使用することができる。第1触媒層4aが含む酸素貯蔵材料と第2触媒層4bが含む酸素貯蔵材料とは、同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0022】
触媒層4において、耐熱性担体及び/又は酸素貯蔵材料は、パラジウム及びロジウムを担持している担体である。
【0023】
酸素貯蔵層3が含む酸素貯蔵材料は、触媒層4が含む酸素貯蔵材料の例えば75質量%以上とする。この質量比を上記範囲内とした場合、少ない酸素貯蔵材料の使用量で特に高い酸素貯蔵能を達成することができる。
【0024】
触媒層4は、パラジウム及びロジウム以外の貴金属をさらに含んでいてもよい。例えば、触媒層4は、白金等のパラジウム及びロジウム以外の白金族元素をさらに含んでいてもよい。この場合、第1触媒層4a及び第2触媒層4bの一方のみがパラジウム及びロジウム以外の貴金属をさらに含んでいてもよく、それらの双方がパラジウム及びロジウム以外の貴金属をさらに含んでいてもよい。
【0025】
触媒層4は、酸素貯蔵層3と比較して貴金属密度がより高い。図2の例では、第1触媒層4a及び第2触媒層4bの各々は、酸素貯蔵層3と比較して貴金属密度がより高い。
【0026】
通常、触媒層4は、酸素貯蔵層3と比較してより多量の貴金属を含んでいる。排ガス浄化用触媒1が含んでいる全貴金属に対する触媒層4が含んでいる貴金属の割合は、例えば80質量%以上である。
【0027】
触媒層4は、バリウムなどのアルカリ土類金属の酸化物、ランタン、ネオジム、プラセオジム、及びイットリウムなどの希土類元素の酸化物、又はそれらの混合物をさらに含むことができる。これら酸化物は、セリアなどの他の酸化物と複合酸化物及び/又は固溶体を形成していてもよい。また、これら酸化物は、第1触媒層4a及び第2触媒層4bの一方のみが含んでいてもよく、双方が含んでいてもよい。
【0028】
この排ガス浄化用触媒1から酸素貯蔵層3を省略した場合、触媒層4に、NOxの還元反応並びにCO及びHCの酸化反応を促進させる役割と、酸素を貯蔵する役割との双方を担わせなければならない。しかしながら、この場合、排ガス浄化用触媒1の熱容量を小さくすべく触媒層4のコート量を小さくし、且つ、NOxの還元反応並びにCO及びHCの酸化反応の効率を最大化すべく貴金属の密度を高めると、酸素貯蔵材料の量が減少するのに加え、酸素貯蔵材料の酸素貯蔵能が低下する。その結果、触媒層4の酸素貯蔵能が著しく低下し、排ガス浄化用触媒1の排ガス浄化効率は排ガスの組成に大きく依存することとなる。
【0029】
これに対し、触媒層4と基材2との間に酸素貯蔵層3を介在させた場合、NOxの還元反応並びにCO及びHCの酸化反応を促進させる役割を主に触媒層4に担わせ、酸素を貯蔵する役割の少なくとも一部を酸素貯蔵層3に担わせることができる。そのため、酸素貯蔵層3に、酸素貯蔵材料の酸素貯蔵能を最大化する設計を採用することができる。それゆえ、酸素貯蔵層3のコート量を小さくした場合であっても、十分に大きな酸素貯蔵能を達成することができる。したがって、触媒層4のコート量を小さくし且つ触媒層4におけるパラジウム及びロジウムの密度を高めた場合であっても、この排ガス浄化用触媒1の酸素貯蔵能が不十分となることはない。しかも、酸素貯蔵層3は触媒層4と基材2との間に介在しているので、酸素貯蔵層3が触媒層4と排ガスとの接触を妨げない。それゆえ、この構造を採用すると、エンジンを始動した直後の状態とエンジンを継続的に稼動した状態との双方において、高い排ガス浄化効率を達成することが可能となる。
【0030】
この排ガス浄化用触媒1には、様々な変形が可能である。
図3乃至図6は、図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な他の構造を概略的に示す断面図である。
【0031】
図3に示す排ガス浄化用触媒1は、第2触媒層4bが酸素貯蔵層3と第1触媒層4aとの間に介在していること以外は、図2に示す排ガス浄化用触媒1と同様の構造を有している。このように、第1触媒層4aと第2触媒層4bとの積層順は任意である。
【0032】
図4に示す排ガス浄化用触媒1は、触媒層4が単層構造を有していること以外は、図2に示す排ガス浄化用触媒1と同様の構造を有している。すなわち、触媒層4において、パラジウムとロジウムとは略均一に混合されている。このように、触媒層4は、単層構造を有していてもよく、多層構造を有していてもよい。
【0033】
図5に示す排ガス浄化用触媒1は、基材2と酸素貯蔵層3との間に介在した炭化水素吸着層5をさらに含んでいること以外は、図2に示す排ガス浄化用触媒1と同様の構造を有している。炭化水素吸着層5は、ゼオライトなどの炭化水素吸着材料を含んでいる。この構造を採用すると、図2に示す構造を採用した場合と比較して、HCエミッションを低減することができる。
【0034】
図6に示す排ガス浄化用触媒1は、酸素貯蔵層3がゼオライトなどの炭化水素吸着材料をさらに含んでいること以外は、図2に示す排ガス浄化用触媒1と同様の構造を有している。この構造を採用すると、図2に示す構造を採用した場合と比較して、HCエミッションを低減することができる。また、図6に示す構造を採用した場合、図5に示す構造を採用した場合と比較して、排ガス浄化用触媒1の製造を簡略化することができる。
【0035】
なお、図5及び図6に示す排ガス浄化用触媒1では、触媒層4に、図3又は図4に示す構造を採用してもよい。すなわち、図5及び図6に示す排ガス浄化用触媒1では、第1触媒層4aと第2触媒層4bとの積層順を逆にしてもよく、触媒層4に単層構造を採用してもよい。
【実施例】
【0036】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0037】
<触媒Aの製造>
本例では、図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
まず、20gのアルミナ粉末と20gのセリウムジルコニウム酸化物粉末と脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS1と呼ぶ。
【0038】
次に、このスラリーS1の全量を、コージェライトからなるモノリスハニカム基材2にコートした。ここでは、長さが100mmであり、容積が1.0Lであり、1平方インチ当たり900個のセルが設けられたモノリスハニカム基材を使用した。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、酸素貯蔵層3を形成した。
【0039】
次いで、12.5gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS2と呼ぶ。
【0040】
次に、このスラリーS2の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、酸素貯蔵層3上に、第1触媒層4aを形成した。
【0041】
その後、12.5gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS3と呼ぶ。
【0042】
次に、このスラリーS3の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、第1触媒層4a上に、第2触媒層4bを形成した。
【0043】
以上のようにして、図2に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Aと呼ぶ。
【0044】
<触媒Bの製造>
本例では、図3に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
すなわち、本例では、スラリーS2の代わりにスラリーS3を使用し、スラリーS3の代わりにスラリーS2を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図3に示す排ガス浄化用触媒1を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Bと呼ぶ。
【0045】
<触媒Cの製造>
本例では、図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
27gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS4と呼ぶ。
【0046】
また、27gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS5と呼ぶ。
【0047】
本例では、スラリーS2の代わりにスラリーS4を使用し、スラリーS3の代わりにスラリーS5を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図2に示す排ガス浄化用触媒1を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Cと呼ぶ。
【0048】
<触媒Dの製造>
本例では、図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
2gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS6と呼ぶ。
【0049】
また、2gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS7と呼ぶ。
【0050】
本例では、スラリーS2の代わりにスラリーS6を使用し、スラリーS3の代わりにスラリーS7を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図2に示す排ガス浄化用触媒1を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Dと呼ぶ。
【0051】
<触媒Eの製造>
本例では、図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
21.2gのアルミナ粉末と18.8gのセリウムジルコニウム酸化物粉末と脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS8と呼ぶ。
【0052】
本例では、スラリーS1の代わりにスラリーS8を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図2に示す排ガス浄化用触媒1を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Eと呼ぶ。
【0053】
<触媒Fの製造>
本例では、図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
20gのアルミナ粉末と20gのセリウムジルコニウム酸化物粉末と0.05gのパラジウムを含有した硝酸パラジウム水溶液と0.05gのロジウムを含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS9と呼ぶ。
【0054】
また、12.5gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とパラジウムを1.45g含有した硝酸パラジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS10と呼ぶ。
【0055】
さらに、12.5gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とロジウムを0.45g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS11と呼ぶ。
【0056】
本例では、スラリーS1の代わりにスラリーS9を使用し、スラリーS2の代わりにスラリーS10を使用し、スラリーS3の代わりにスラリーS11を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図2に示す排ガス浄化用触媒1を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Fと呼ぶ。
【0057】
<触媒Gの製造>
本例では、図2に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
20gのアルミナ粉末と20gのセリウムジルコニウム酸化物粉末と4gの硫酸バリウム粉末と2gの炭酸ランタン粉末と脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS12と呼ぶ。
【0058】
また、12.5gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液と2.5gの硫酸バリウム粉末と1.3gの炭酸ランタン粉末とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS13と呼ぶ。
【0059】
さらに、12.5gのアルミナ粉末と12.5gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液と2.5gの硫酸バリウム粉末と1.3gの炭酸ランタン粉末とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS14と呼ぶ。
【0060】
本例では、スラリーS1の代わりにスラリーS12を使用し、スラリーS2の代わりにスラリーS13を使用し、スラリーS3の代わりにスラリーS14を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図2に示す排ガス浄化用触媒1を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Gと呼ぶ。
【0061】
<触媒Hの製造>
本例では、図4に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
まず、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、モノリスハニカム担体2上に酸素貯蔵層3を形成した。
【0062】
次いで、25gのアルミナ粉末と25gのセリウムジルコニウム酸化物粉末とパラジウムを1.5g含有した硝酸パラジウム水溶液とロジウムを0.5g含有した硝酸ロジウム水溶液とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS15と呼ぶ。
【0063】
次に、このスラリーS15の全量を、先のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、酸素貯蔵層3上に、触媒層4を形成した。
【0064】
以上のようにして、図4に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Hと呼ぶ。
【0065】
<触媒Iの製造>
本例では、図5に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
まず、100gのゼオライト粉末と脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS16と呼ぶ。
【0066】
次に、このスラリーS16の全量を、触媒Aの製造で使用したのと同様のモノリスハニカム基材2にコートした。このモノリスハニカム基材2は、250℃で1時間乾燥させ、続いて、500℃で1時間焼成した。これにより、モノリスハニカム基材2上に、炭化水素吸着層5を形成した。
【0067】
その後、炭化水素吸着層5上に、触媒Aについて説明したのと同様の方法により、酸素貯蔵層3、第1触媒層4a及び第2触媒層4bを順次形成した。
【0068】
以上のようにして、図5に示す排ガス浄化用触媒1を完成した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Iと呼ぶ。
【0069】
<触媒Jの製造>
本例では、図6に示す排ガス浄化用触媒1を、以下の方法で製造した。
20gのアルミナ粉末と20gのセリウムジルコニウム酸化物粉末と100gのゼオライト粉末と脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS17と呼ぶ。
【0070】
本例では、スラリーS1の代わりにスラリーS17を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、図6に示す排ガス浄化用触媒1を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒1を触媒Jと呼ぶ。
【0071】
<触媒Kの製造>
本例では、排ガス浄化用触媒を、以下の方法で製造した。
40gのアルミナ粉末と脱イオン水とを混合して、スラリーを調製した。以下、このスラリーを、スラリーS18と呼ぶ。
【0072】
本例では、スラリーS1の代わりにスラリーS18を使用したこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、排ガス浄化用触媒を製造した。以下、この排ガス浄化用触媒を触媒Kと呼ぶ。
【0073】
<触媒Lの製造>
本例では、スラリーS1をモノリスハニカム基材にコートしなかったこと以外は触媒Aについて説明したのと同様の方法により、排ガス浄化用触媒を製造した。すなわち、本例では、酸素貯蔵層を省略した。以下、この排ガス浄化用触媒を触媒Lと呼ぶ。
【0074】
<試験>
触媒A乃至Hの各々を、排気量が0.7Lのエンジンを有する自動車に搭載した。次いで、各自動車に、60000kmの耐久走行距離を走行させた。その後、10・15モード法及び11モード法により、非メタン炭化水素(NMHC)、CO及びNOxの各々について走行距離1km当たりの排出量を測定した。なお、NMHCの排出量は、炭素数等量による容量比で表した値をグラムに換算した値である。また、10・15モード法で得られた測定値には88/100を乗じ、11モード法で得られた測定値には12/100を乗じ、それらの合算値を求めた。その結果を、以下の表に纏める。
【0075】
【表1】

【0076】
上記表に示すように、触媒A乃至Jを使用した場合、触媒K及びLを使用した場合と比較してNMHC及びNOx排出量の各々が少なく、CO排出量は触媒K及びLを使用した場合と同等又はそれ以下であった。特に、触媒A乃至Jを使用した場合、触媒K及びLを使用した場合と比較して、NMHC及びNOx排出量の各々を大幅に低減することができた。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の一態様に係る排ガス浄化用触媒を概略的に示す斜視図。
【図2】図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な構造の一例を概略的に示す断面図。
【図3】図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な他の構造を概略的に示す断面図。
【図4】図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な他の構造を概略的に示す断面図。
【図5】図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な他の構造を概略的に示す断面図。
【図6】図1に示す排ガス浄化用触媒に採用可能な他の構造を概略的に示す断面図。
【符号の説明】
【0078】
1…排ガス浄化用触媒、2…基材、3…酸素貯蔵層、4…触媒層、4a…第1触媒層、4b…第2触媒層、5…炭化水素吸着層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材を被覆すると共に酸素貯蔵材料を含んだ酸素貯蔵層と、前記酸素貯蔵層を被覆すると共にパラジウム及びロジウムとこれらを担持した担体とを含み且つ前記酸素貯蔵層と比較して貴金属密度がより高い触媒層とを具備したことを特徴とする排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−100152(P2008−100152A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−284153(P2006−284153)
【出願日】平成18年10月18日(2006.10.18)
【出願人】(000104607)株式会社キャタラー (161)
【Fターム(参考)】