排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法
【課題】内燃機関の排ガス中のパティキュレートをより低温で酸化し浄化することができる排ガス浄化用酸化触媒装置の安価な製造方法を提供する。
【解決手段】排ガス浄化用酸化触媒装置1の製造方法は、複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を得る工程と、得られた触媒前駆体と水とバインダーとを混合粉砕してスラリーを調製する工程と、スラリーを多孔質フィルタ基材2に塗布する工程と、スラリーが塗布された多孔質フィルタ基材2を焼成して、多孔質フィルタ基材2に担持された複合金属酸化物からなる多孔質触媒層3を形成する工程とを備える方法において、スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下の粘度を有することを特徴とする。
【解決手段】排ガス浄化用酸化触媒装置1の製造方法は、複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を得る工程と、得られた触媒前駆体と水とバインダーとを混合粉砕してスラリーを調製する工程と、スラリーを多孔質フィルタ基材2に塗布する工程と、スラリーが塗布された多孔質フィルタ基材2を焼成して、多孔質フィルタ基材2に担持された複合金属酸化物からなる多孔質触媒層3を形成する工程とを備える方法において、スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下の粘度を有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化し浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排ガスに含まれるパティキュレートや炭化水素を酸化して浄化するために、軸方向に貫通して形成された貫通孔からなる複数のセルを有し、各セルの境界部をセル隔壁とする多孔質フィルタ基材に、ペロブスカイト型複合金属酸化物からなる触媒が担持された排ガス浄化用酸化触媒装置が知られている。
【0003】
前記排ガス浄化用酸化触媒装置は、例えば次のようにして製造することが検討されている。まず、前記複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を調製する。次に、得られた前記触媒前駆体と溶媒とを混合粉砕してスラリーを調製する。次に、前記スラリーを多孔質フィルタ基材に塗布する。前記スラリーの塗布は、例えば多孔質フィルタ基材として軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された直方体形状のものを用いる場合には、多孔質フィルタ基材の前記貫通孔の開口部から該貫通孔の内部に前記スラリーを流し込むことにより行うことができる。次に、前記スラリーが塗布された前記多孔質フィルタ基材を焼成する。以上により、多孔質フィルタ基材の表面に複合金属酸化物からなる触媒層を備える排ガス浄化用酸化触媒装置が製造されるものと考えられる。
【0004】
前記方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置によれば、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを燃焼させる温度を低下させることができると考えられるものの、該燃焼温度はさらに低下させることが望まれる。
【0005】
一方、前記多孔質フィルタ基材の表面のみならず、該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも触媒層を形成することにより、前記パティキュレートの燃焼温度を低下させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面に触媒層を形成するにおいては、前記スラリーを前記貫通孔の開口部から該貫通孔の内部に吸引することにより、該スラリーを気孔の内部に侵入させ付着させている。前記スラリーを吸引して気孔の内部に付着させる方法によれば、多孔質フィルタ基材の表面のみならず、該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも触媒層を形成することができ、前記パティキュレートの燃焼温度を低下させることができるとされている。
【0006】
しかしながら、前記スラリーを吸引して気孔の内部に付着させる方法によれば、スラリーを吸引するための特別な装置又は設備が必要であり、製造コストが増大するという不都合がある。
【特許文献1】特開2007−237012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、内燃機関の排ガス中のパティキュレートをより低温で酸化し浄化することができる排ガス浄化用酸化触媒装置の安価な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化し浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法であって、該複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を得る工程と、得られた該触媒前駆体と水とバインダーとを混合粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを多孔質フィルタ基材に塗布する工程と、該スラリーが塗布された該多孔質フィルタ基材を焼成して、該多孔質フィルタ基材に担持された該複合金属酸化物からなる多孔質触媒層を形成する工程とを備える方法において、該スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する該触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下の粘度を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法によれば、前記スラリーが前記範囲の粘度を有するように調製されているので、該スラリーを吸引することなく、前記多孔質フィルタ基材に塗布するだけで、該スラリーが該多孔質フィルタ基材の気孔の開口部を塞ぐことなく、該スラリーを気孔の内部に侵入させ付着させることができる。したがって、前記スラリーが塗布された前記多孔質フィルタ基材を焼成することにより、前記多孔質フィルタ基材の表面に加えて該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも前記多孔質触媒層が形成された排ガス浄化用酸化触媒装置を安価に製造することができる。
【0010】
本発明の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置において、前記多孔質フィルタ基材へ導入された前記内燃機関の排ガスは、前記多孔質触媒層の細孔を通過して該多孔質触媒層に接触する。このとき、前記多孔質触媒層は、前記多孔質フィルタ基材の表面のみならず、該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも形成されているので、前記排ガス中の前記パティキュレートの該多孔質触媒層への接触確率が高まることとなる。したがって、本発明の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置によれば、内燃機関の排ガス中のパティキュレートをより低温で酸化し浄化することができる。
【0011】
このとき、前記スラリーに含有された前記触媒前駆体の粒子径分布が0.5μm未満の場合には、該触媒前駆体粒子径が小さいために該スラリーを前記多孔質フィルタ基材の気孔の内部に留まらせることができず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を均一に担持させることができない。一方、前記触媒前駆体の粒子径分布が10μmを超える場合には、該触媒前駆体粒子径が大きいために前記スラリーを前記多孔質フィルタ基材の気孔の内部に侵入させることができず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を担持させることができない。また、前記スラリーの粘度が2.0mPa・sを超える場合には、該スラリーを前記多孔質フィルタ基材に塗布した際に、該スラリーが該多孔質フィルタ基材の気孔の内部に侵入せず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を形成することができなくなり、これにより、前記パティキュレートの燃焼温度を十分に低下させることができない。前記スラリーは、例えば、前記水の量を増大することにより、前記範囲の粘度に調製することができる。
【0012】
また、前記スラリーは、1.3〜2.0mPa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。前記スラリーの粘度が1.3mPa・s未満の場合には、該スラリーを前記多孔質フィルタ基材の気孔の内部に留まらせることができず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を均一に担持させることができない。一方、前記スラリーの粘度が2.0mPa・sを超える場合には、該スラリーを前記多孔質フィルタ基材に塗布した際に、該スラリーが該多孔質フィルタ基材の気孔の内部に侵入せず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を担持させることができなくなり、これにより、前記パティキュレートの燃焼温度を十分に低下させることができない。
【0013】
また、本発明において、前記多孔質触媒層は、直径が0.01〜3.5μmの範囲である細孔を備え、前記多孔質フィルタ基材及び該多孔質触媒層全体の気孔率が、45〜50体積%の範囲であることが好ましい。前記構成によれば、前記パティキュレートを燃焼させるのに十分な体積を有する前記多孔質触媒層を備えるとともに、該パティキュレートを前記細孔を介して該触媒層に十分に接触させることができる排ガス浄化用酸化触媒装置が製造されるので、該パティキュレートの燃焼温度を確実に低くすることができる。
【0014】
このとき、前記多孔質触媒層の前記細孔の直径が0.01μm未満である場合には、圧力損失が増大することがある。一方、前記各触媒層の前記細孔の直径が3.5μmを超える場合には、前記排ガス中の前記パティキュレートが該細孔の表面に十分に接触することができなくなり、該パティキュレートの燃焼温度を低下させる効果が得られないことがある。
【0015】
また、前記多孔質フィルタ基材及び前記各触媒層全体の気孔率が45%未満である場合には、前記排ガスが前記気孔を通過する際に圧力損失が増大することがある。一方、前記多孔質フィルタ基材及び前記各触媒層全体の気孔率が50%を超える場合には、前記排ガスと該触媒層との接触確率が低下し、該パティキュレートの燃焼温度を低下させる十分な効果が得られないことがある。
【0016】
本発明において、前記各触媒層は、例えば、一般式Y1−xAgxMn1−yRuyO3で表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなるものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置の説明図であり、図1(a)は説明的断面図であり、図1(b)は図1(a)のA部の模式的拡大図である。図2,9,13,17,21,25,29,32,35,39は、実施例1〜10及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の粒子径分布を示すグラフである。図3は、実施例1〜10及び比較例の製造方法で作成された触媒前駆体スラリーの粘度を示すグラフである。図4,10,14,18,22,26,36は、実施例1〜6,9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフである。図5は、実施例1〜6,9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置によるパティキュレート燃焼量を示すグラフである。図6,11,15,19,23,27,30,33,37,40,42は、実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像である。図6,11,15,19,23,27,30,33,37,40,42の各図において、(a)は倍率100倍の断面画像であり、(b)は倍率10000倍の断面画像であって(a)のA部の拡大図である。図7,12,16,20,24,28,31,34,38,41は、実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフである。図8は、実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材及び多孔質触媒層全体の気孔率を示すグラフである。
【0018】
本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1について説明する。図1(a)に示す排ガス浄化用酸化触媒装置1は、ウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材2と、多孔質フィルタ基材2に担持された多孔質触媒層3とを備え、内燃機関の排ガスを流通させることにより、該排ガスに含まれるパティキュレートを酸化して浄化するものである。
【0019】
多孔質フィルタ基材2は、軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された略直方体のSiC多孔質体からなり、該貫通孔からなる複数の流入セル4と複数の流出セル5とを備えている。多孔質フィルタ基材2は、直径が1〜100μmの範囲である複数の気孔7を備えていて、それ自体の気孔率が50〜60体積%の範囲となっている。流入セル4は、排ガス流入部4aが開放されるとともに排ガス流出部4bが閉塞されている。一方、流出セル5は、排ガス流入部5aが閉塞されるとともに排ガス流出部5bが開放されている。流入セル4及び流出セル5は、断面市松格子状となるように交互に配設されていて、各セル4,5の境界部をセル隔壁6とするウォールフロー構造を構成している。
【0020】
図1(a)に示すように、セル隔壁6の流入セル4側の表面には、第1の多孔質触媒層3aが担持されている。また、図1(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7すなわち多孔質フィルタ基材2の気孔7を形成する壁面の表面には、第2の多孔質触媒層3bが担持されている。各多孔質触媒層3a,3bは、複合金属酸化物Y1−xAgxMn1−yRuyO3(ただし、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2)からなり、直径が0.01〜3.5μmの範囲である細孔(図示せず)を備える。また、多孔質フィルタ基材2及び各多孔質触媒層3a,3bは、両者を合わせた全体の気孔率が45〜50体積%の範囲となっている。また、図示しないが、最外層のセル隔壁6の外周部には、排ガスの流出を規制する金属からなる規制部材が設けられている。
【0021】
排ガス浄化用酸化触媒装置1においては、第1の多孔質触媒層3aは、セル隔壁6の流入セル4側の表面のみに担持されているが、流入セル4側の表面と流出セル5側の表面との両方に担持されていてもよい。また、多孔質フィルタ基材2として、SiC多孔質体からなるものを用いているが、Si−SiC多孔質体からなるものを用いてもよい。
【0022】
以上の構成を備えた排ガス浄化用酸化触媒装置1は、次のようにして製造することができる。まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、クエン酸と、水とからなる混合物を、200〜400℃の範囲の温度で1〜10時間の範囲で一次焼成し、触媒前駆体を形成する。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとを混合し粉砕して、スラリーを調製する。前記スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下、好ましくは1.3〜2.0mPa・sの範囲の粘度を有するように調製される。
【0023】
次に、軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された多孔質フィルタ基材2(日本碍子株式会社製SiC多孔質体、商品名MSC14、仕様を表1に示す)を用意する。
【0024】
【表1】
【0025】
次に、多孔質フィルタ基材2の前記貫通孔の一端部を一つ置きに(すなわち、断面市松格子状となるように)、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流出セル5を形成する。次に、多孔質フィルタ基材2に、前記端部が閉塞されている側から前記スラリーを流し込むことにより、端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔(すなわち、流出セル5以外のセル)内に該スラリーを流通させる。このとき、スラリーが前記範囲の粘度を有するように調整されているので、該スラリーを吸引することなく、多孔質フィルタ基材2に流通させるだけで、該スラリーが該多孔質フィルタ基材2の気孔の開口部を塞ぐことなく、該スラリーを気孔の内部に侵入させ付着させることができる。続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な前記スラリーを除去する。
【0026】
次に、前記スラリーが付着された多孔質フィルタ基材2を、800〜1000℃の範囲の温度で1〜10時間の範囲の時間で二次焼成する。これにより、流出セル5以外のセルのセル隔壁6の表面に、複合金属酸化物Y1−xAgxMn1−yRuyO3(ただし、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2)からなる第1の多孔質触媒層3aが形成されるとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bが形成される。多孔質触媒層3a,3bは、前記範囲の温度及び時間で二次焼成された結果、0.01〜3.5μmの範囲の直径を備える細孔(図示せず)が形成されている。次に、流出セル5以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セル4を形成する。以上により製造される排ガス浄化用酸化触媒装置1は、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3を合わせた全体が45〜50体積%の範囲の気孔率を備えている。
【0027】
次に、図1を参照して本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1の作動について説明する。まず、排ガス浄化用酸化触媒装置1を、流入セル4及び流出セル5の排ガス流入部4a,5aが内燃機関の排ガスの流路に対して上流側となるように設置する。前記排ガスは、図1(b)に矢示するように、流入セル4の排ガス流入部4aから流入セル4内へ導入される。
【0028】
このとき、流出セル5は排ガス流入部5aが閉塞されているので、流出セル5内へ前記排ガスが導入されることはない。また、流入セル4は排ガス流出部4bが閉塞されている。
【0029】
そこで、流入セル4内へ導入された前記排ガスは、セル隔壁6の気孔7を通過して流出セル5内へ移動する。このとき、前記排ガスは、セル隔壁6の表面に担持された第1の触媒層3aと、気孔7を形成する壁面表面に担持された第2の触媒層3bとに接触し、各触媒層3a,3bの触媒の作用により燃焼除去される。
【0030】
この結果、前記パティキュレートが燃焼除去された前記排ガスが、流出セル5内に移動し、排ガス流出部5bから排出される。以上により、排ガス浄化用酸化触媒装置1は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを酸化し浄化することができる。
【0031】
本実施形態の製造方法によれば、前記スラリーが前記範囲の粘度を有するように調製されているので、該スラリーを吸引することなく、多孔質フィルタ基材2に流通させるだけで、該スラリーを、セル隔壁6の表面のみならず、セル隔壁6の気孔7内にも付着させることができる。したがって、前記スラリーが付着された多孔質フィルタ基材2を焼成することにより、セル隔壁6の表面に第1の多孔質触媒層3aを備えるとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bを備える排ガス浄化用酸化触媒装置1を安価に製造することができる。
【0032】
本実施形態の製造方法により製造される排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、第1の多孔質触媒層3a及び第2の多孔質触媒層3bを備えるので、前記排ガスを、多孔質触媒層3a,3bの前記細孔を形成する壁面の表面を介して多孔質触媒層3a,3bに接触させることにより、該排ガスと多孔質触媒層3a,3bとの接触確率を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1は、多孔質触媒層3a,3bが、直径が0.01〜3.5μmの範囲である前記細孔を備え、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の45〜50体積%の範囲の気孔率を備えている。これにより、排ガス浄化用酸化触媒装置1は、前記パティキュレートを燃焼させるのに十分な体積を有する多孔質触媒層3a,3bを備えるとともに、該パティキュレートを前記細孔を介して該多孔質触媒層3a,3bに十分に接触させることができ、この結果、パティキュレートの燃焼温度を確実に低くすることができる。
【0034】
また、本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1においては、多孔質触媒層3は、一般式Y1−xAgxMn1−yRuyO3で表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなる。前記複合金属酸化物は、一般式YMnO3で表される複合金属酸化物において、第1の金属であるYの一部を第3の金属であるAgで置換するとともに、第2の金属であるMnの一部を第4の金属であるRuで置換したものである。したがって、排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、各多孔質触媒層3a,3bの触媒の作用により、前記排ガス中のパティキュレートを十分に燃焼除去することができる。
【0035】
次に本発明の実施例と比較例とを示す。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、次のようにして排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、クエン酸と、水とを、0.95:0.05:0.95:0.05:6:40のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を、400℃の温度に1時間維持して一次焼成を行い、触媒前駆体を形成した。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:100:5の重量比となるように秤量し、回転式ボールミルにて100回転/分で5時間混合して粉砕し、触媒前駆体スラリーを調製した。
【0037】
次に、レーザー回折/散乱粒度分布測定装置を用いて、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。
【0038】
次に、E型粘度計を用いて、前記触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図3に示す。図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0039】
次に、軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された、多孔質フィルタ基材2(日本碍子株式会社製SiC多孔質体、商品名MSC14、寸法36mm×36mm×50mm)を用意し、多孔質フィルタ基材2の該貫通孔の一端部を一つ置きに(すなわち、断面市松格子状となるように)、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞し、流出セル5を形成した。次に、多孔質フィルタ基材2に、前記端部が閉塞された側から前記触媒前駆体スラリーを流し込むことにより、端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔(すなわち、流出セル5以外のセル)内に該スラリーを流通させた。続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な前記スラリーを除去した。
【0040】
次に、前記スラリーが付着された多孔質フィルタ基材2を800℃の温度に1時間維持して二次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が100gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層3aを形成するとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合金属酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bを形成した。次に、流出セル5以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セル4を形成し、排ガス浄化用酸化触媒装置1を完成させた。
【0041】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1に対して、次のようにして触媒評価性能試験を行った。まず、排ガス浄化用酸化触媒装置1を、排気量が2.4Lであるディーゼルエンジンを搭載したエンジンベンチの排気系に搭載した。次に、パティキュレートを含む雰囲気ガス下において、該雰囲気ガスの排ガス浄化用酸化触媒装置1に対する流入温度180℃、エンジン回転数1500回転/分、トルク70N/mの条件で、前記ディーゼルエンジンを20分間運転した。以上により、排ガス浄化用酸化触媒装置1に、その見かけ体積1Lあたりパティキュレートを3g捕集させた。
【0042】
次に、パティキュレートが捕集された排ガス浄化用酸化触媒装置1を前記排気系から取り出し、流通型昇温度装置内の石英管内に固定した。次に、石英管の一端部(供給口)から、酸素と窒素との体積比が10:90である雰囲気ガスを空間速度20000/時間で供給し、石英管の他端部(排出口)から排出させながら、排ガス浄化用酸化触媒装置1を室温から700℃の温度まで3℃/分で加熱した。前記加熱には、流通型昇温度装置内の管状マッフル炉を用いた。このとき、石英管からの排出ガスのCO2濃度を質量分析計を用いて測定した。結果を図4に示す。図4において、CO2濃度のピークがパティキュレートの燃焼温度に相当する。次に、図4から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.3gであった。
【0043】
次に、本実施例の排ガス浄化用酸化触媒装置1をダイヤモンドカッターにて切削することにより、5mm角の立方体を2個製作した。
【0044】
次に、1個目の立方体の排ガス浄化用酸化触媒装置1に対して、透過型電子顕微鏡を用いて断面画像を撮影した。図6(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図6(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0045】
次に、2個目の立方体の排ガス浄化用酸化触媒装置1に対して、自動水銀ポロシメータを用いて、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図7及び図8に示す。図7に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.01〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.0体積%であった。
【実施例2】
【0046】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が30gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図9及び図3に示す。図9に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0047】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図10に示す。次に、図10から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は1.2gであった。
【0048】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図11(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図11(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0049】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図12及び図8に示す。図12に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜0.2μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.6体積%であった。
【実施例3】
【0050】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が50gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図13及び図3に示す。図13に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0051】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図14に示す。次に、図14から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.1gであった。
【0052】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図15(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図15(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0053】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図16及び図8に示す。図16に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.01〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.3体積%であった。
【実施例4】
【0054】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が80gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図17及び図3に示す。図17に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0055】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図18に示す。次に、図18から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5により、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.4gであった。
【0056】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図19(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図19(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0057】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図20及び図8に示す。図20に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.01〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.6体積%であった。
【実施例5】
【0058】
本実施例では、まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムを、0.95:0.05:0.95:0.05のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を水に溶解させ、イットリウム濃度が0.1mol/Lである触媒原料溶液を調製した。
【0059】
次に、前記触媒原料溶液を用いる点を除いて実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔内に該触媒原料溶液を流通させ、続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な該触媒原料溶液を除去した。
【0060】
次に、多孔質フィルタ基材2を800℃の温度に1時間維持して二次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が10gとなるように、セル隔壁6の流入セル4側の表面に、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層3aを形成するとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合金属酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bを形成した。
【0061】
次に、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、クエン酸と、水とを、0.95:0.05:0.95:0.05:6:40のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を、400℃の温度に1時間維持して一次焼成を行い、触媒前駆体を形成した。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:100:5の重量比となるように秤量し、回転式ボールミルにて100回転/分で5時間混合して粉砕し、触媒前駆体スラリーを調製した。
【0062】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定した。結果を図21に示す。図21に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。
【0063】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図3に示す。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0064】
次に、見かけ体積1L当たりの担持量が10gである多孔質触媒層3a,3bが形成された多孔質フィルタ基材2を用いる点を除いて実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔内に前記触媒前駆体スラリーを流通させ、続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な該触媒前駆体スラリーを除去した。
【0065】
次に、多孔質フィルタ基材2を800℃の温度に1時間維持して三次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が50gとなるように、セル隔壁6の流入セル4側の表面に、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層3aを形成するとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合金属酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bを形成した。ここで、前記担持量50gは、前記二次焼成による担持量10gを含めた値である。次に、流出セル5以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セル4を形成し、排ガス浄化用酸化触媒装置1を完成させた。
【0066】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図22に示す。次に、図22から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.5gであった。
【0067】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図23(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図23(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0068】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図24及び図8に示す。図20に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.03〜2.5μmの範囲であった。また、図8に示すように多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.0体積%であった。
【実施例6】
【0069】
本実施例では、3次焼成により見かけ体積1L当たりの担持量が80gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例5と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図25及び図3に示す。図25に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0070】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図26に示す。次に、図26から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.2gであった。
【0071】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図27(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図27(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0072】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔7の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図28及び図8に示す。図28に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.02〜3.5μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は47.3体積%であった。
【実施例7】
【0073】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:50:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図29及び図3に示す。図29に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0074】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図30(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図30(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0075】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図31及び図8に示す。図31に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.02〜1.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.0体積%であった。
【実施例8】
【0076】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:60:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図32及び図3に示す。図32に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0077】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図33(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図33(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0078】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図34及び図8に示す。図34に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜2.5μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は47.8体積%であった。
【実施例9】
【0079】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:70:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図35及び図3に示す。図35に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0080】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図36に示す。次に、図36から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は1.52gであった。
【0081】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図37(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図37(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0082】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図31及び図8に示す。図38に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.3体積%であった。
【実施例10】
【0083】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:150:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図39及び図3に示す。図39に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0084】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図40(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図40(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0085】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図41及び図8に示す。図41に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜1.5μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.9体積%であった。
〔比較例〕
本比較例では、まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、リンゴ酸と、水とを、0.95:0.05:0.95:0.05:6:40のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を、350℃の温度に1時間維持して一次焼成を行い、触媒前駆体を形成した。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:100:10の重量比となるように秤量し、回転式ボールミルにて100回転/分で5時間混合して粉砕し、触媒前駆体スラリーを調製した。
【0086】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.7〜11μmの範囲であった。
【0087】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図3に示す。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は2.1mPa・sであった。
【0088】
次に、前記リンゴ酸を含む混合物を用いて形成された前記触媒前駆体を含有し、粘度が2.1mPa・sである前記触媒前駆体スラリーを用いる点を除いて実施例1と全く同一にして、前記多孔質フィルタ基材の端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔内に該触媒前駆体スラリーを流通させ、続いて、該多孔質フィルタ基材から過剰な該触媒前駆体スラリーを除去した。
【0089】
次に、前記スラリーが付着された前記多孔質フィルタ基材を800℃の温度に1時間維持して二次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が100gとなるように、セル隔壁の流入セル側の表面に、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層を形成した。このとき、セル隔壁の気孔を形成する壁面の表面には、第2の多孔質触媒層が形成されなかった。次に、実施例1と全く同一にして、流出セル以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セルを形成し、排ガス浄化用酸化触媒装置を完成させた。
【0090】
次に、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図4に示す。次に、図4から、300℃以下の温度範囲において、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は0.4gであった。
【0091】
次に、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図42(a),(b)に本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像を示す。図42(b)に示すように、セル隔壁の気孔を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層が形成されていないことが明らかである。
【0092】
次に、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び第1の多孔質触媒層の細孔の直径と、多孔質フィルタ基材及び第1の多孔質触媒層の多孔質触媒層を合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図7及び図8に示す。図7に示すように、第1の多孔質触媒層の細孔の直径は0.02〜10μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材及び第1の多孔質触媒層を合わせた全体の気孔率は52.5体積%であった。
【0093】
図4,10,14,18,22,26,36から、実施例1〜6,9の製造方法により、1.3mPa・sの粘度を有する前記触媒前駆体スラリーを用いて形成された排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、比較例の製造方法により、2.1mPa・sの粘度を有する前記触媒前駆体スラリーを用いて形成された排ガス浄化用酸化触媒装置と比較して、パティキュレートをより低温で酸化(燃焼)できることが明らかである。
【0094】
これは、図6,11,15,19,23,27,30,33,37,40,42から明らかであるように、比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置は、セル隔壁の表面に第1の多孔質触媒層が形成されているだけであるが、実施例1〜10の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置1は、第1の多孔質触媒層3aに加えて、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることにより、前記排ガス中の前記パティキュレートの多孔質触媒層3a,3bへの接触確率が高まるためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置の説明的断面図。
【図2】実施例1及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図3】実施例1〜10及び比較例の製造方法で作成された触媒前駆体スラリーの粘度を示すグラフ。
【図4】実施例1及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図5】実施例1〜6,9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置によるパティキュレート燃焼量を示すグラフ。
【図6】実施例1の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図7】実施例1及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図8】実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材及び多孔質触媒層全体の気孔率を示すグラフ。
【図9】実施例2及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図10】実施例2及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図11】実施例2の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図12】実施例2及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図13】実施例3及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図14】実施例3及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図15】実施例3の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図16】実施例3及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図17】実施例4及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図18】実施例4及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図19】実施例4の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図20】実施例4及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図21】実施例5及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図22】実施例5及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図23】実施例5の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図24】実施例5及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図25】実施例6及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図26】実施例6及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図27】実施例6の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図28】実施例6及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図29】実施例7及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図30】実施例7の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図31】実施例7及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図32】実施例8及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図33】実施例8の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図34】実施例8及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図35】実施例9及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図36】実施例9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図37】実施例9の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図38】実施例9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図39】実施例10及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図40】実施例10の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図41】実施例10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図42】比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【符号の説明】
【0096】
1…排ガス浄化用酸化触媒装置、 2…多孔質フィルタ基材、 3…多孔質触媒層、 6…セル隔壁、 7…気孔。
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化し浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排ガスに含まれるパティキュレートや炭化水素を酸化して浄化するために、軸方向に貫通して形成された貫通孔からなる複数のセルを有し、各セルの境界部をセル隔壁とする多孔質フィルタ基材に、ペロブスカイト型複合金属酸化物からなる触媒が担持された排ガス浄化用酸化触媒装置が知られている。
【0003】
前記排ガス浄化用酸化触媒装置は、例えば次のようにして製造することが検討されている。まず、前記複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を調製する。次に、得られた前記触媒前駆体と溶媒とを混合粉砕してスラリーを調製する。次に、前記スラリーを多孔質フィルタ基材に塗布する。前記スラリーの塗布は、例えば多孔質フィルタ基材として軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された直方体形状のものを用いる場合には、多孔質フィルタ基材の前記貫通孔の開口部から該貫通孔の内部に前記スラリーを流し込むことにより行うことができる。次に、前記スラリーが塗布された前記多孔質フィルタ基材を焼成する。以上により、多孔質フィルタ基材の表面に複合金属酸化物からなる触媒層を備える排ガス浄化用酸化触媒装置が製造されるものと考えられる。
【0004】
前記方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置によれば、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを燃焼させる温度を低下させることができると考えられるものの、該燃焼温度はさらに低下させることが望まれる。
【0005】
一方、前記多孔質フィルタ基材の表面のみならず、該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも触媒層を形成することにより、前記パティキュレートの燃焼温度を低下させることが提案されている(例えば特許文献1参照)。多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面に触媒層を形成するにおいては、前記スラリーを前記貫通孔の開口部から該貫通孔の内部に吸引することにより、該スラリーを気孔の内部に侵入させ付着させている。前記スラリーを吸引して気孔の内部に付着させる方法によれば、多孔質フィルタ基材の表面のみならず、該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも触媒層を形成することができ、前記パティキュレートの燃焼温度を低下させることができるとされている。
【0006】
しかしながら、前記スラリーを吸引して気孔の内部に付着させる方法によれば、スラリーを吸引するための特別な装置又は設備が必要であり、製造コストが増大するという不都合がある。
【特許文献1】特開2007−237012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる不都合を解消して、内燃機関の排ガス中のパティキュレートをより低温で酸化し浄化することができる排ガス浄化用酸化触媒装置の安価な製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる目的を達成するために、本発明は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化し浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法であって、該複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を得る工程と、得られた該触媒前駆体と水とバインダーとを混合粉砕してスラリーを調製する工程と、該スラリーを多孔質フィルタ基材に塗布する工程と、該スラリーが塗布された該多孔質フィルタ基材を焼成して、該多孔質フィルタ基材に担持された該複合金属酸化物からなる多孔質触媒層を形成する工程とを備える方法において、該スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する該触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下の粘度を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の製造方法によれば、前記スラリーが前記範囲の粘度を有するように調製されているので、該スラリーを吸引することなく、前記多孔質フィルタ基材に塗布するだけで、該スラリーが該多孔質フィルタ基材の気孔の開口部を塞ぐことなく、該スラリーを気孔の内部に侵入させ付着させることができる。したがって、前記スラリーが塗布された前記多孔質フィルタ基材を焼成することにより、前記多孔質フィルタ基材の表面に加えて該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも前記多孔質触媒層が形成された排ガス浄化用酸化触媒装置を安価に製造することができる。
【0010】
本発明の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置において、前記多孔質フィルタ基材へ導入された前記内燃機関の排ガスは、前記多孔質触媒層の細孔を通過して該多孔質触媒層に接触する。このとき、前記多孔質触媒層は、前記多孔質フィルタ基材の表面のみならず、該多孔質フィルタ基材の気孔を形成する壁面表面にも形成されているので、前記排ガス中の前記パティキュレートの該多孔質触媒層への接触確率が高まることとなる。したがって、本発明の製造方法により製造された排ガス浄化用酸化触媒装置によれば、内燃機関の排ガス中のパティキュレートをより低温で酸化し浄化することができる。
【0011】
このとき、前記スラリーに含有された前記触媒前駆体の粒子径分布が0.5μm未満の場合には、該触媒前駆体粒子径が小さいために該スラリーを前記多孔質フィルタ基材の気孔の内部に留まらせることができず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を均一に担持させることができない。一方、前記触媒前駆体の粒子径分布が10μmを超える場合には、該触媒前駆体粒子径が大きいために前記スラリーを前記多孔質フィルタ基材の気孔の内部に侵入させることができず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を担持させることができない。また、前記スラリーの粘度が2.0mPa・sを超える場合には、該スラリーを前記多孔質フィルタ基材に塗布した際に、該スラリーが該多孔質フィルタ基材の気孔の内部に侵入せず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を形成することができなくなり、これにより、前記パティキュレートの燃焼温度を十分に低下させることができない。前記スラリーは、例えば、前記水の量を増大することにより、前記範囲の粘度に調製することができる。
【0012】
また、前記スラリーは、1.3〜2.0mPa・sの範囲の粘度を有することが好ましい。前記スラリーの粘度が1.3mPa・s未満の場合には、該スラリーを前記多孔質フィルタ基材の気孔の内部に留まらせることができず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を均一に担持させることができない。一方、前記スラリーの粘度が2.0mPa・sを超える場合には、該スラリーを前記多孔質フィルタ基材に塗布した際に、該スラリーが該多孔質フィルタ基材の気孔の内部に侵入せず、該気孔を形成する壁面表面に前記多孔質触媒層を担持させることができなくなり、これにより、前記パティキュレートの燃焼温度を十分に低下させることができない。
【0013】
また、本発明において、前記多孔質触媒層は、直径が0.01〜3.5μmの範囲である細孔を備え、前記多孔質フィルタ基材及び該多孔質触媒層全体の気孔率が、45〜50体積%の範囲であることが好ましい。前記構成によれば、前記パティキュレートを燃焼させるのに十分な体積を有する前記多孔質触媒層を備えるとともに、該パティキュレートを前記細孔を介して該触媒層に十分に接触させることができる排ガス浄化用酸化触媒装置が製造されるので、該パティキュレートの燃焼温度を確実に低くすることができる。
【0014】
このとき、前記多孔質触媒層の前記細孔の直径が0.01μm未満である場合には、圧力損失が増大することがある。一方、前記各触媒層の前記細孔の直径が3.5μmを超える場合には、前記排ガス中の前記パティキュレートが該細孔の表面に十分に接触することができなくなり、該パティキュレートの燃焼温度を低下させる効果が得られないことがある。
【0015】
また、前記多孔質フィルタ基材及び前記各触媒層全体の気孔率が45%未満である場合には、前記排ガスが前記気孔を通過する際に圧力損失が増大することがある。一方、前記多孔質フィルタ基材及び前記各触媒層全体の気孔率が50%を超える場合には、前記排ガスと該触媒層との接触確率が低下し、該パティキュレートの燃焼温度を低下させる十分な効果が得られないことがある。
【0016】
本発明において、前記各触媒層は、例えば、一般式Y1−xAgxMn1−yRuyO3で表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなるものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。図1は本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置の説明図であり、図1(a)は説明的断面図であり、図1(b)は図1(a)のA部の模式的拡大図である。図2,9,13,17,21,25,29,32,35,39は、実施例1〜10及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の粒子径分布を示すグラフである。図3は、実施例1〜10及び比較例の製造方法で作成された触媒前駆体スラリーの粘度を示すグラフである。図4,10,14,18,22,26,36は、実施例1〜6,9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフである。図5は、実施例1〜6,9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置によるパティキュレート燃焼量を示すグラフである。図6,11,15,19,23,27,30,33,37,40,42は、実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像である。図6,11,15,19,23,27,30,33,37,40,42の各図において、(a)は倍率100倍の断面画像であり、(b)は倍率10000倍の断面画像であって(a)のA部の拡大図である。図7,12,16,20,24,28,31,34,38,41は、実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフである。図8は、実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材及び多孔質触媒層全体の気孔率を示すグラフである。
【0018】
本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1について説明する。図1(a)に示す排ガス浄化用酸化触媒装置1は、ウォールフロー構造を有する多孔質フィルタ基材2と、多孔質フィルタ基材2に担持された多孔質触媒層3とを備え、内燃機関の排ガスを流通させることにより、該排ガスに含まれるパティキュレートを酸化して浄化するものである。
【0019】
多孔質フィルタ基材2は、軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された略直方体のSiC多孔質体からなり、該貫通孔からなる複数の流入セル4と複数の流出セル5とを備えている。多孔質フィルタ基材2は、直径が1〜100μmの範囲である複数の気孔7を備えていて、それ自体の気孔率が50〜60体積%の範囲となっている。流入セル4は、排ガス流入部4aが開放されるとともに排ガス流出部4bが閉塞されている。一方、流出セル5は、排ガス流入部5aが閉塞されるとともに排ガス流出部5bが開放されている。流入セル4及び流出セル5は、断面市松格子状となるように交互に配設されていて、各セル4,5の境界部をセル隔壁6とするウォールフロー構造を構成している。
【0020】
図1(a)に示すように、セル隔壁6の流入セル4側の表面には、第1の多孔質触媒層3aが担持されている。また、図1(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7すなわち多孔質フィルタ基材2の気孔7を形成する壁面の表面には、第2の多孔質触媒層3bが担持されている。各多孔質触媒層3a,3bは、複合金属酸化物Y1−xAgxMn1−yRuyO3(ただし、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2)からなり、直径が0.01〜3.5μmの範囲である細孔(図示せず)を備える。また、多孔質フィルタ基材2及び各多孔質触媒層3a,3bは、両者を合わせた全体の気孔率が45〜50体積%の範囲となっている。また、図示しないが、最外層のセル隔壁6の外周部には、排ガスの流出を規制する金属からなる規制部材が設けられている。
【0021】
排ガス浄化用酸化触媒装置1においては、第1の多孔質触媒層3aは、セル隔壁6の流入セル4側の表面のみに担持されているが、流入セル4側の表面と流出セル5側の表面との両方に担持されていてもよい。また、多孔質フィルタ基材2として、SiC多孔質体からなるものを用いているが、Si−SiC多孔質体からなるものを用いてもよい。
【0022】
以上の構成を備えた排ガス浄化用酸化触媒装置1は、次のようにして製造することができる。まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、クエン酸と、水とからなる混合物を、200〜400℃の範囲の温度で1〜10時間の範囲で一次焼成し、触媒前駆体を形成する。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとを混合し粉砕して、スラリーを調製する。前記スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下、好ましくは1.3〜2.0mPa・sの範囲の粘度を有するように調製される。
【0023】
次に、軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された多孔質フィルタ基材2(日本碍子株式会社製SiC多孔質体、商品名MSC14、仕様を表1に示す)を用意する。
【0024】
【表1】
【0025】
次に、多孔質フィルタ基材2の前記貫通孔の一端部を一つ置きに(すなわち、断面市松格子状となるように)、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流出セル5を形成する。次に、多孔質フィルタ基材2に、前記端部が閉塞されている側から前記スラリーを流し込むことにより、端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔(すなわち、流出セル5以外のセル)内に該スラリーを流通させる。このとき、スラリーが前記範囲の粘度を有するように調整されているので、該スラリーを吸引することなく、多孔質フィルタ基材2に流通させるだけで、該スラリーが該多孔質フィルタ基材2の気孔の開口部を塞ぐことなく、該スラリーを気孔の内部に侵入させ付着させることができる。続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な前記スラリーを除去する。
【0026】
次に、前記スラリーが付着された多孔質フィルタ基材2を、800〜1000℃の範囲の温度で1〜10時間の範囲の時間で二次焼成する。これにより、流出セル5以外のセルのセル隔壁6の表面に、複合金属酸化物Y1−xAgxMn1−yRuyO3(ただし、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2)からなる第1の多孔質触媒層3aが形成されるとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bが形成される。多孔質触媒層3a,3bは、前記範囲の温度及び時間で二次焼成された結果、0.01〜3.5μmの範囲の直径を備える細孔(図示せず)が形成されている。次に、流出セル5以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セル4を形成する。以上により製造される排ガス浄化用酸化触媒装置1は、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3を合わせた全体が45〜50体積%の範囲の気孔率を備えている。
【0027】
次に、図1を参照して本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1の作動について説明する。まず、排ガス浄化用酸化触媒装置1を、流入セル4及び流出セル5の排ガス流入部4a,5aが内燃機関の排ガスの流路に対して上流側となるように設置する。前記排ガスは、図1(b)に矢示するように、流入セル4の排ガス流入部4aから流入セル4内へ導入される。
【0028】
このとき、流出セル5は排ガス流入部5aが閉塞されているので、流出セル5内へ前記排ガスが導入されることはない。また、流入セル4は排ガス流出部4bが閉塞されている。
【0029】
そこで、流入セル4内へ導入された前記排ガスは、セル隔壁6の気孔7を通過して流出セル5内へ移動する。このとき、前記排ガスは、セル隔壁6の表面に担持された第1の触媒層3aと、気孔7を形成する壁面表面に担持された第2の触媒層3bとに接触し、各触媒層3a,3bの触媒の作用により燃焼除去される。
【0030】
この結果、前記パティキュレートが燃焼除去された前記排ガスが、流出セル5内に移動し、排ガス流出部5bから排出される。以上により、排ガス浄化用酸化触媒装置1は、内燃機関の排ガス中のパティキュレートを酸化し浄化することができる。
【0031】
本実施形態の製造方法によれば、前記スラリーが前記範囲の粘度を有するように調製されているので、該スラリーを吸引することなく、多孔質フィルタ基材2に流通させるだけで、該スラリーを、セル隔壁6の表面のみならず、セル隔壁6の気孔7内にも付着させることができる。したがって、前記スラリーが付着された多孔質フィルタ基材2を焼成することにより、セル隔壁6の表面に第1の多孔質触媒層3aを備えるとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bを備える排ガス浄化用酸化触媒装置1を安価に製造することができる。
【0032】
本実施形態の製造方法により製造される排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、第1の多孔質触媒層3a及び第2の多孔質触媒層3bを備えるので、前記排ガスを、多孔質触媒層3a,3bの前記細孔を形成する壁面の表面を介して多孔質触媒層3a,3bに接触させることにより、該排ガスと多孔質触媒層3a,3bとの接触確率を高めることができる。
【0033】
また、本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1は、多孔質触媒層3a,3bが、直径が0.01〜3.5μmの範囲である前記細孔を備え、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の45〜50体積%の範囲の気孔率を備えている。これにより、排ガス浄化用酸化触媒装置1は、前記パティキュレートを燃焼させるのに十分な体積を有する多孔質触媒層3a,3bを備えるとともに、該パティキュレートを前記細孔を介して該多孔質触媒層3a,3bに十分に接触させることができ、この結果、パティキュレートの燃焼温度を確実に低くすることができる。
【0034】
また、本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置1においては、多孔質触媒層3は、一般式Y1−xAgxMn1−yRuyO3で表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなる。前記複合金属酸化物は、一般式YMnO3で表される複合金属酸化物において、第1の金属であるYの一部を第3の金属であるAgで置換するとともに、第2の金属であるMnの一部を第4の金属であるRuで置換したものである。したがって、排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、各多孔質触媒層3a,3bの触媒の作用により、前記排ガス中のパティキュレートを十分に燃焼除去することができる。
【0035】
次に本発明の実施例と比較例とを示す。
【実施例1】
【0036】
本実施例では、次のようにして排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、クエン酸と、水とを、0.95:0.05:0.95:0.05:6:40のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を、400℃の温度に1時間維持して一次焼成を行い、触媒前駆体を形成した。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:100:5の重量比となるように秤量し、回転式ボールミルにて100回転/分で5時間混合して粉砕し、触媒前駆体スラリーを調製した。
【0037】
次に、レーザー回折/散乱粒度分布測定装置を用いて、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。
【0038】
次に、E型粘度計を用いて、前記触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図3に示す。図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0039】
次に、軸方向に貫通する複数の貫通孔が断面格子状に配設された、多孔質フィルタ基材2(日本碍子株式会社製SiC多孔質体、商品名MSC14、寸法36mm×36mm×50mm)を用意し、多孔質フィルタ基材2の該貫通孔の一端部を一つ置きに(すなわち、断面市松格子状となるように)、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞し、流出セル5を形成した。次に、多孔質フィルタ基材2に、前記端部が閉塞された側から前記触媒前駆体スラリーを流し込むことにより、端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔(すなわち、流出セル5以外のセル)内に該スラリーを流通させた。続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な前記スラリーを除去した。
【0040】
次に、前記スラリーが付着された多孔質フィルタ基材2を800℃の温度に1時間維持して二次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が100gとなるように、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層3aを形成するとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合金属酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bを形成した。次に、流出セル5以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セル4を形成し、排ガス浄化用酸化触媒装置1を完成させた。
【0041】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1に対して、次のようにして触媒評価性能試験を行った。まず、排ガス浄化用酸化触媒装置1を、排気量が2.4Lであるディーゼルエンジンを搭載したエンジンベンチの排気系に搭載した。次に、パティキュレートを含む雰囲気ガス下において、該雰囲気ガスの排ガス浄化用酸化触媒装置1に対する流入温度180℃、エンジン回転数1500回転/分、トルク70N/mの条件で、前記ディーゼルエンジンを20分間運転した。以上により、排ガス浄化用酸化触媒装置1に、その見かけ体積1Lあたりパティキュレートを3g捕集させた。
【0042】
次に、パティキュレートが捕集された排ガス浄化用酸化触媒装置1を前記排気系から取り出し、流通型昇温度装置内の石英管内に固定した。次に、石英管の一端部(供給口)から、酸素と窒素との体積比が10:90である雰囲気ガスを空間速度20000/時間で供給し、石英管の他端部(排出口)から排出させながら、排ガス浄化用酸化触媒装置1を室温から700℃の温度まで3℃/分で加熱した。前記加熱には、流通型昇温度装置内の管状マッフル炉を用いた。このとき、石英管からの排出ガスのCO2濃度を質量分析計を用いて測定した。結果を図4に示す。図4において、CO2濃度のピークがパティキュレートの燃焼温度に相当する。次に、図4から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.3gであった。
【0043】
次に、本実施例の排ガス浄化用酸化触媒装置1をダイヤモンドカッターにて切削することにより、5mm角の立方体を2個製作した。
【0044】
次に、1個目の立方体の排ガス浄化用酸化触媒装置1に対して、透過型電子顕微鏡を用いて断面画像を撮影した。図6(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図6(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0045】
次に、2個目の立方体の排ガス浄化用酸化触媒装置1に対して、自動水銀ポロシメータを用いて、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図7及び図8に示す。図7に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.01〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.0体積%であった。
【実施例2】
【0046】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が30gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図9及び図3に示す。図9に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0047】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図10に示す。次に、図10から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は1.2gであった。
【0048】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図11(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図11(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0049】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図12及び図8に示す。図12に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜0.2μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.6体積%であった。
【実施例3】
【0050】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が50gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図13及び図3に示す。図13に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0051】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図14に示す。次に、図14から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.1gであった。
【0052】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図15(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図15(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0053】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図16及び図8に示す。図16に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.01〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.3体積%であった。
【実施例4】
【0054】
本実施例では、見かけ体積1L当たりの担持量が80gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図17及び図3に示す。図17に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0055】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図18に示す。次に、図18から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5により、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.4gであった。
【0056】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図19(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図19(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0057】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図20及び図8に示す。図20に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.01〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.6体積%であった。
【実施例5】
【0058】
本実施例では、まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムを、0.95:0.05:0.95:0.05のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を水に溶解させ、イットリウム濃度が0.1mol/Lである触媒原料溶液を調製した。
【0059】
次に、前記触媒原料溶液を用いる点を除いて実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔内に該触媒原料溶液を流通させ、続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な該触媒原料溶液を除去した。
【0060】
次に、多孔質フィルタ基材2を800℃の温度に1時間維持して二次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が10gとなるように、セル隔壁6の流入セル4側の表面に、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層3aを形成するとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合金属酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bを形成した。
【0061】
次に、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、クエン酸と、水とを、0.95:0.05:0.95:0.05:6:40のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を、400℃の温度に1時間維持して一次焼成を行い、触媒前駆体を形成した。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:100:5の重量比となるように秤量し、回転式ボールミルにて100回転/分で5時間混合して粉砕し、触媒前駆体スラリーを調製した。
【0062】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定した。結果を図21に示す。図21に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。
【0063】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図3に示す。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0064】
次に、見かけ体積1L当たりの担持量が10gである多孔質触媒層3a,3bが形成された多孔質フィルタ基材2を用いる点を除いて実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔内に前記触媒前駆体スラリーを流通させ、続いて、多孔質フィルタ基材2から過剰な該触媒前駆体スラリーを除去した。
【0065】
次に、多孔質フィルタ基材2を800℃の温度に1時間維持して三次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が50gとなるように、セル隔壁6の流入セル4側の表面に、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層3aを形成するとともに、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に、該複合金属酸化物からなる第2の多孔質触媒層3bを形成した。ここで、前記担持量50gは、前記二次焼成による担持量10gを含めた値である。次に、流出セル5以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セル4を形成し、排ガス浄化用酸化触媒装置1を完成させた。
【0066】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図22に示す。次に、図22から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.5gであった。
【0067】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図23(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図23(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0068】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図24及び図8に示す。図20に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.03〜2.5μmの範囲であった。また、図8に示すように多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.0体積%であった。
【実施例6】
【0069】
本実施例では、3次焼成により見かけ体積1L当たりの担持量が80gとなるように多孔質触媒層3a,3bを形成した点を除いて実施例5と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図25及び図3に示す。図25に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0070】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図26に示す。次に、図26から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は2.2gであった。
【0071】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図27(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図27(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0072】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔7の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図28及び図8に示す。図28に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.02〜3.5μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は47.3体積%であった。
【実施例7】
【0073】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:50:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図29及び図3に示す。図29に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0074】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図30(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図30(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0075】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図31及び図8に示す。図31に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.02〜1.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は48.0体積%であった。
【実施例8】
【0076】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:60:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図32及び図3に示す。図32に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0077】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図33(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図33(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0078】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図34及び図8に示す。図34に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜2.5μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は47.8体積%であった。
【実施例9】
【0079】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:70:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図35及び図3に示す。図35に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0080】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図36に示す。次に、図36から、300℃以下の温度範囲において、排ガス浄化用酸化触媒装置1により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は1.52gであった。
【0081】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図37(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図37(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0082】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図31及び図8に示す。図38に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜2.0μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.3体積%であった。
【実施例10】
【0083】
本実施例では、得られた前記触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:150:5の重量比となるように秤量した点を除いて実施例1と全く同一にして、排ガス浄化用酸化触媒装置1を製造した。製造途中に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定するとともに、該触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図39及び図3に示す。図39に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.5〜10μmの範囲であった。図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は1.3mPa・sであった。
【0084】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図40(a),(b)に排ガス浄化用酸化触媒装置1の断面画像を示す。図40(b)に示すように、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることが明らかである。
【0085】
次に、本実施例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置1について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材2の気孔の直径及び多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径と、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図41及び図8に示す。図41に示すように、多孔質触媒層3a,3bの細孔の直径は0.05〜1.5μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材2及び多孔質触媒層3a,3bを合わせた全体の気孔率は49.9体積%であった。
〔比較例〕
本比較例では、まず、硝酸イットリウムと、硝酸銀と、硝酸マンガンと、硝酸ルテニウムと、リンゴ酸と、水とを、0.95:0.05:0.95:0.05:6:40のモル比となるように混合した。前記混合は、乳鉢を用いて25℃の温度で15分間行った。得られた混合物を、350℃の温度に1時間維持して一次焼成を行い、触媒前駆体を形成した。次に、得られた触媒前駆体と、水と、バインダーとしての市販の水分散ジルコニアゾルとを10:100:10の重量比となるように秤量し、回転式ボールミルにて100回転/分で5時間混合して粉砕し、触媒前駆体スラリーを調製した。
【0086】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーに含有される前記触媒前駆体の粒子径分布を測定した。結果を図2に示す。図2に示すように、前記触媒前駆体の粒子径分布は0.7〜11μmの範囲であった。
【0087】
次に、実施例1と全く同一にして、前記触媒前駆体スラリーの粘度を測定した。結果を図3に示す。また、図3に示すように、前記触媒前駆体スラリーの粘度は2.1mPa・sであった。
【0088】
次に、前記リンゴ酸を含む混合物を用いて形成された前記触媒前駆体を含有し、粘度が2.1mPa・sである前記触媒前駆体スラリーを用いる点を除いて実施例1と全く同一にして、前記多孔質フィルタ基材の端部が閉塞されていない前記複数の貫通孔内に該触媒前駆体スラリーを流通させ、続いて、該多孔質フィルタ基材から過剰な該触媒前駆体スラリーを除去した。
【0089】
次に、前記スラリーが付着された前記多孔質フィルタ基材を800℃の温度に1時間維持して二次焼成を行い、前記端部が閉塞されていない前記貫通孔の表面に、見かけ体積1L当たりの担持量が100gとなるように、セル隔壁の流入セル側の表面に、複合金属酸化物Y0.95Ag0.05Mn0.95Ru0.05O3からなる第1の多孔質触媒層を形成した。このとき、セル隔壁の気孔を形成する壁面の表面には、第2の多孔質触媒層が形成されなかった。次に、実施例1と全く同一にして、流出セル以外のセルの前記端部が閉塞された側とは反対側の端部を、シリカを主成分とするセラミックス接着剤にて閉塞することにより、流入セルを形成し、排ガス浄化用酸化触媒装置を完成させた。
【0090】
次に、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、触媒評価性能試験を行い排出ガスのCO2濃度を測定した。結果を図4に示す。次に、図4から、300℃以下の温度範囲において、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置により燃焼されたパティキュレートの質量を算出した。結果を図5に示す。図5に示すように、排ガス浄化用酸化触媒装置1の見かけ体積1Lあたりに捕集されたパティキュレート3gのうち、燃焼された量は0.4gであった。
【0091】
次に、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、断面画像を撮影した。図42(a),(b)に本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像を示す。図42(b)に示すように、セル隔壁の気孔を形成する壁面の表面に第2の多孔質触媒層が形成されていないことが明らかである。
【0092】
次に、本比較例で得られた排ガス浄化用酸化触媒装置について、実施例1と全く同一にして、多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び第1の多孔質触媒層の細孔の直径と、多孔質フィルタ基材及び第1の多孔質触媒層の多孔質触媒層を合わせた全体の気孔率とを測定した。結果を図7及び図8に示す。図7に示すように、第1の多孔質触媒層の細孔の直径は0.02〜10μmの範囲であった。また、図8に示すように、多孔質フィルタ基材及び第1の多孔質触媒層を合わせた全体の気孔率は52.5体積%であった。
【0093】
図4,10,14,18,22,26,36から、実施例1〜6,9の製造方法により、1.3mPa・sの粘度を有する前記触媒前駆体スラリーを用いて形成された排ガス浄化用酸化触媒装置1によれば、比較例の製造方法により、2.1mPa・sの粘度を有する前記触媒前駆体スラリーを用いて形成された排ガス浄化用酸化触媒装置と比較して、パティキュレートをより低温で酸化(燃焼)できることが明らかである。
【0094】
これは、図6,11,15,19,23,27,30,33,37,40,42から明らかであるように、比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置は、セル隔壁の表面に第1の多孔質触媒層が形成されているだけであるが、実施例1〜10の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置1は、第1の多孔質触媒層3aに加えて、セル隔壁6の気孔7を形成する壁面表面に第2の多孔質触媒層3bが形成されていることにより、前記排ガス中の前記パティキュレートの多孔質触媒層3a,3bへの接触確率が高まるためであると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態の製造方法により形成される排ガス浄化用酸化触媒装置の説明的断面図。
【図2】実施例1及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図3】実施例1〜10及び比較例の製造方法で作成された触媒前駆体スラリーの粘度を示すグラフ。
【図4】実施例1及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図5】実施例1〜6,9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置によるパティキュレート燃焼量を示すグラフ。
【図6】実施例1の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図7】実施例1及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図8】実施例1〜10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材及び多孔質触媒層全体の気孔率を示すグラフ。
【図9】実施例2及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図10】実施例2及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図11】実施例2の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図12】実施例2及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図13】実施例3及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図14】実施例3及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図15】実施例3の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図16】実施例3及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図17】実施例4及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図18】実施例4及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図19】実施例4の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図20】実施例4及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図21】実施例5及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図22】実施例5及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図23】実施例5の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図24】実施例5及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図25】実施例6及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図26】実施例6及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図27】実施例6の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図28】実施例6及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図29】実施例7及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図30】実施例7の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図31】実施例7及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図32】実施例8及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図33】実施例8の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図34】実施例8及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図35】実施例9及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図36】実施例9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置による排出ガスのCO2濃度を示すグラフ。
【図37】実施例9の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図38】実施例9及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図39】実施例10及び比較例の製造方法で作製された触媒前駆体スラリーに含有された触媒前駆体の直径を示すグラフ。
【図40】実施例10の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【図41】実施例10及び比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置に係る多孔質フィルタ基材の気孔の直径及び多孔質触媒層の細孔の直径を示すグラフ。
【図42】比較例の製造方法により形成された排ガス浄化用酸化触媒装置の断面画像。
【符号の説明】
【0096】
1…排ガス浄化用酸化触媒装置、 2…多孔質フィルタ基材、 3…多孔質触媒層、 6…セル隔壁、 7…気孔。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排ガス中のパティキュレートを複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化し浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法であって、
該複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を得る工程と、
得られた該触媒前駆体と水とバインダーとを混合粉砕してスラリーを調製する工程と、
該スラリーを多孔質フィルタ基材に塗布する工程と、
該スラリーが塗布された該多孔質フィルタ基材を焼成して、該多孔質フィルタ基材に担持された該複合金属酸化物からなる多孔質触媒層を形成する工程とを備える方法において、
該スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する該触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下の粘度を有することを特徴とする排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーは、1.3〜2.0mPa・sの範囲の粘度を有することを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質触媒層は、直径が0.01〜3.5μmの範囲である細孔を備え、前記多孔質フィルタ基材及び該多孔質触媒層全体の気孔率が、45〜50体積%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質触媒層は、一般式Y1−xAgxMn1−yRuyO3で表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項1】
内燃機関の排ガス中のパティキュレートを複合金属酸化物からなる触媒を用いて酸化し浄化する排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法であって、
該複合金属酸化物を構成する複数の金属の化合物と有機酸と水とを焼成して触媒前駆体を得る工程と、
得られた該触媒前駆体と水とバインダーとを混合粉砕してスラリーを調製する工程と、
該スラリーを多孔質フィルタ基材に塗布する工程と、
該スラリーが塗布された該多孔質フィルタ基材を焼成して、該多孔質フィルタ基材に担持された該複合金属酸化物からなる多孔質触媒層を形成する工程とを備える方法において、
該スラリーは、0.5〜10μmの範囲の粒子径分布を有する該触媒前駆体を含有するとともに、2.0mPa・s以下の粘度を有することを特徴とする排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項2】
前記スラリーは、1.3〜2.0mPa・sの範囲の粘度を有することを特徴とする請求項1記載の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項3】
前記多孔質触媒層は、直径が0.01〜3.5μmの範囲である細孔を備え、前記多孔質フィルタ基材及び該多孔質触媒層全体の気孔率が、45〜50体積%の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【請求項4】
前記多孔質触媒層は、一般式Y1−xAgxMn1−yRuyO3で表され、0.01≦x≦0.15かつ0.005≦y≦0.2である複合金属酸化物からなることを特徴とする請求項1乃至請求項3のうちのいずれか1項に記載の排ガス浄化用酸化触媒装置の製造方法。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図28】
【図29】
【図31】
【図32】
【図34】
【図35】
【図36】
【図38】
【図39】
【図41】
【図1】
【図6】
【図11】
【図15】
【図19】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図30】
【図33】
【図37】
【図40】
【図42】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図14】
【図16】
【図17】
【図18】
【図20】
【図21】
【図22】
【図28】
【図29】
【図31】
【図32】
【図34】
【図35】
【図36】
【図38】
【図39】
【図41】
【図1】
【図6】
【図11】
【図15】
【図19】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図30】
【図33】
【図37】
【図40】
【図42】
【公開番号】特開2009−262101(P2009−262101A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−117148(P2008−117148)
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月28日(2008.4.28)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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