説明

排気ガス浄化装置の取付構造

【課題】簡易な構造で重量の重い排気ガス浄化装置を確実に固定することができる排気ガス浄化装置の取付構造を提供する。
【解決手段】排気ガス浄化装置1と、該排気ガス浄化装置1の上面に設けられ車体フレーム2に固定される上面支持パイプ3とを有する排気ガス浄化装置1の取付構造であって、車体フレーム2と、排気ガス浄化装置1の排気管部4とに跨って取り付けられる横振れ防止ブラケット5を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクター等の車両に搭載される排気ガス浄化装置の取付構造に関する。特に、簡易な構造で重量の重い排気ガス浄化装置を確実に固定することができる排気ガス浄化装置の取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トラクター等に搭載される箱型の排気ガス浄化装置の取付構造として図10に示すものが知られている。この排気ガス浄化装置100には、フィルタ及び酸化触媒等が封入されている。そのため、重量が重くなり、図10に示す排気ガス浄化装置100では100kg前後程度の重量がある。そのため、排気ガス浄化装置上面の両端部に、排気ガス浄化装置取付け用のパイプ101を配置してこのパイプ101をブラケット102で固定することが行われている(例えば、特許文献1参照)。パイプ101の排気ガス浄化装置上面から飛び出した部分は、ブラケット103を介して車体フレームに取り付けられる。
【0003】
しかし、近年の排気ガス規制によって排気ガス浄化装置100の大型化が進み、2本のパイプ101のみで排気ガス浄化装置100を保持しても走行時に排気ガス浄化装置100に横振れが発生するため、排気ガス浄化装置下部には横振れ防止用のパイプ104A及びブラケット104Bが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−232070号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述した従来の排気ガス浄化装置の取付構造では、排気ガス浄化装置100の上部のパイプ101及びブラケット102のみならず、下部にも振れ防止用のパイプ104A及びブラケット104Bが設けられており、このパイプ104Aは車体フレームに固定されるため、排気ガス浄化装置100の取付構造が複雑化するという問題があった。
より具体的には、排気ガス浄化装置100の下部に断面略L字状のブラケット104Bを設け、このブラケット104Bに緩やかな折れ曲がり形状のパイプ104Aを連結し、このパイプ104Aを車体フレームに固定するため、構造が複数になり、かつ固定用のボルトの本数が多くなり、部品点数が増え、重量が増大するという問題があった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構造で重量の重い排気ガス浄化装置を確実に固定することができる排気ガス浄化装置の取付構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような課題に対して、本発明者は、車体フレームと、排気ガス浄化装置の給気管又は排気管と、に跨って横振れ防止ブラケットを取り付けることにより、簡易な構造で重量の重い排気ガス浄化装置を確実に固定することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の排気ガス浄化装置の取付構造は、排気ガス浄化装置と、該排気ガス浄化装置の上面に設けられ車体フレームに固定される上面支持部材とを有する排気ガス浄化装置の取付構造であって、前記車体フレームと、前記排気ガス浄化装置の給気管部と排気管部との少なくとも一方と、に跨って取り付けられる横振れ防止ブラケットを備えていることを特徴とする。
【0009】
かかる発明では、車体フレームと、排気ガス浄化装置の給気管部と排気管部との少なくとも一方と、に跨って横振れ防止ブラケットが取り付けられているので、排ガス浄化装置に接続される給気管部や排気管部を利用することで、横振れ防止ブラケットの機械的強度を十分に確保することが可能になり、確実に横振れが防止される。また、横振れ防止ブラケットに高剛性の材質を用いたり、板厚を十分に厚くしたり、表面にリブを設けたりすることで機械的強度をさらに確保できる。
【0010】
また、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造は、前記横振れ防止ブラケットは、前記給気管部の入口フランジ部又は前記排気管部の出口フランジ部に連結されていることを特徴とする。
かかる発明では、比較的取付け強度の高い既存の部品を利用して横振れ防止ブラケットを取り付けるので、構造が簡素であり、増設する部品点数が少なく、また重量増加をさほど招かない利点がある。
【0011】
また、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造は、前記横振れ防止ブラケットと前記入口フランジ部又は前記出口フランジ部とが一体物の金属ブラケットであることを特徴とする。
かかる発明では、1部品で排気ガス浄化装置の横振れ防止が可能であり、かつ、既存の入口フランジ部又は出口フランジ部の形状を変更するだけなのでボルト等の締結部品を除けば部品点数の増加が抑えられる。
【0012】
また、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造は、前記横振れ防止ブラケットと、前記給気管部の管部材又は前記排気管部の管部材とに跨って設けられる補強部材を有していることを特徴とする。
かかる発明では、補強部材が設けられることにより横振れ防止ブラケットによる排気ガス浄化装置の固定がさらに強固になり、排気ガス浄化装置を長期的に使用しても排気ガス浄化装置の横振れが確実に防止される。
【0013】
また、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造は、前記給気管部又は前記排気管部の継ぎ手部では管部材同士を圧接するために、バネが圧縮状態で取り付けられるバネ機構が設けられたルーズフランジによって締結されていることを特徴とする。
かかる発明では、バネが圧縮状態で取り付けられるバネ機構により常時、給気管部又は排気管部の継ぎ手部では隣接する管部材同士が圧接状態になる。
このように、いわゆるルーズフランジ構造となっているため、両管部材間の管中心軸のずれが吸収され、横揺れ防止ブラケットの設置によって車体側と排気管部または給気管部との変位差が大きく生じても、管部材同士の接合部に大きな荷重が作用せず耐久性が確保される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の排気ガス浄化装置の取付構造では、排気ガス浄化装置の上面の上面支持部材に加え、車体フレームと、排気ガス浄化装置の給気管部と排気管部との少なくとも一方と、に跨って取り付けられる横振れ防止ブラケットを備えているので、簡易な構造で重量の重い排気ガス浄化装置を確実に固定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造の第1実施形態を模式的に示す説明図である。
【図2】図2は、排気ガス浄化装置及びその周囲の構造を示す説明図である。
【図3】図3は、図2の排気ガス浄化装置の取付構造の要部を示す説明図である。
【図4】図4は、図3の排気ガス浄化装置の取付構造を側方から見た図である。
【図5】図5は、横振れ防止ブラケットを拡大して示す説明図である。
【図6】図6は、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造の第2実施形態を示す説明図である。
【図7】図7は、図6の排気ガス浄化装置の取付構造の出口フランジ部付近を詳細に示す説明図である。
【図8】図8は、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造の変形例を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造の変形例を示す説明図である。
【図10】図10は、従来の排気ガス浄化装置の取付構造を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造の第1実施形態を模式的に示している。本実施形態の排気ガス浄化装置の取付構造は、排気ガス浄化装置1と、該排気ガス浄化装置1の上面に設けられ鋳造ブラケット8を介して車体フレーム2に固定される上面支持パイプ3とを有している。また、本実施形態の排気ガス浄化装置の取付構造は、車体フレーム2と、排気ガス浄化装置1の排気管部4の出口フランジ部41とに跨って取り付けられる横振れ防止ブラケット5を有している。この横振れ防止ブラケット5を給気管部6でなく排気管部4に取り付けているのは、車体フレーム2からの距離が給気管部6よりも排気管部4の方が短いからである。勿論、排気管部4でなく給気管部6に取り付けてもよい。
【0017】
図2は、排気ガス浄化装置1及びその周囲の構造を示している。図1に示した模式図と同様に構成されている。より詳細には、排気ガス浄化装置1は箱型形状をしており、その上面の幅方向両端部に上面支持パイプ3が設けられている。車体フレーム2は断面コ字形状をしており、車体前後方向に沿って2本平行に配置されている。この内の1本の車体フレーム2に排気ガス浄化装置1が取り付けられている。排気管部4及び給気管部6は他の部材との接触を避けるために適宜緩やかに折り曲げられている。
【0018】
図3及び図4に示すように、横振れ防止ブラケット5は排気管部4の出口フランジ部41に取り付けられている。出口フランジ部41は、比較的取付け強度の高い既存の部品であり、この部品を利用して横振れ防止ブラケット5を取り付けるので、構造が簡素であり、増設する部品点数が少なく、また重量増加をさほど招かない利点がある。
この出口フランジ部41は円形形状ではなく上方に突出した膨出部41aが形成された形状を有しており、その膨出部41aを利用して前記横揺れ防止ブラケット5と接続される。
出口フランジ部41より下流側には、継ぎ手部42が設けられ、バネ機構43により継ぎ手部42で隣接する管部材同士が圧接状態にされている。この構造の詳細については、第2実施形態で説明する。
なお、横振れ防止ブラケット5を給気管部6に取り付ける場合には、入口フランジ部に取り付けるとよい。
【0019】
図5は、横振れ防止ブラケット5を拡大して示している。図に示すように、横振れ防止ブラケット5は階段状に折り曲げられており、その表面に2本の板状のリブ5aが形成されている。リブ5aは横振れ防止ブラケット5の強度アップのために形成されている。横振れ防止ブラケット5に高剛性の材質を用いたり、板厚を十分に厚くしたり、表面にリブ5aを設けることで機械的強度がさらに確保される。また、横振れ防止ブラケット5の上端側と下端側には2箇所ずつボルト挿通穴5bが形成されている。
【0020】
上述した第1実施形態の排気ガス浄化装置の取付構造では、車体フレーム2と、排気ガス浄化装置1の排気管部4の出口フランジ部41とに跨って横振れ防止ブラケット5が取り付けられているので、この横振れ防止ブラケット5の機械的強度を十分に確保すること、および変形の出口フランジ41を用いることにより、確実に横振れが防止される。
【0021】
〔第2実施形態〕
図6は、本発明の排気ガス浄化装置の取付構造の第2実施形態を示している。なお、第1実施形態と同一の部材には同一の符号を付し、その説明を省略する。
この第2実施形態の排気ガス浄化装置の取付構造は、第1実施形態の排気ガス浄化装置の取付構造と比べて、補強部材7が設けられている点でのみ異なる。補強部材7は、長方形板状の金属板の上端側と下端側を折り曲げ加工して形成されている。そして、この上端側は横振れ防止ブラケット5と出口フランジ41とにボルトによって共締めされ、下端側は排気管部4の管部材にスポット溶接されている。このように、補強部材7は、横振れ防止ブラケット5及び出口フランジ41と、排気管部4の管部材とに跨って設けられている。補強部材7が設けられることにより横振れ防止ブラケット5による排気ガス浄化装置1の固定がさらに強固になり、排気ガス浄化装置1を長期的に使用しても排気ガス浄化装置1の横振れが確実に防止される。そして、簡易かつ低廉な構造で重量の重い排気ガス浄化装置1を確実に固定することができる。
【0022】
図7は、図6の排気ガス浄化装置の取付構造の出口フランジ部付近を詳細に示している。図に示すように、補強部材7の上端部側は、出口フランジ部41に当接され、ボルトBとナットNを用いて締結されている。より具体的には、補強部材7、出口フランジ部41及び横振れ防止ブラケット5にボルトBが挿通され、ボルト先端側からナットNが螺合され締結されている。
【0023】
排気管部4の両管部材44,45の端部は、バネ機構43を用いて相互に圧接されている。バネ機構43は、ボルト部材431と圧縮状態のスプリング432を有している。スプリング432は、管部材44に固定された板状のスプリング支持部433と、ボルト部材431のフランジ部431aとの間に圧縮した状態で介在している。また、管部材45には、板状のボルト部材保持部434が形成され、該ボルト部材保持部434には、ボルト部材431の一端側に螺合するナット部431bが取り付けられている。
この構造では、管部材にフランジ部を形成してフランジ部同士をボルト締めするのではなく、スプリングの押し付け力によって、両管部材44、45の端面同士またはフランジ部同士が押し付けて接合されるため、いわゆるルーズフランジ化を図ることによって、両管部材44、45間の管中心軸がずれてもスプリングの押し付け力によって接合状態が維持されることで、両部材の軸方向のずれが吸収され、横揺れ防止ブラケット5により管部材45が車体側に取り付けられて、管部材44との変位差が大きく生じても、管部材44、45間に大きな変形荷重が作用せず耐久性が確保される。
【0024】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、種々の変形が可能であることは言うまでもない。
【0025】
例えば、上述した第1及び第2実施形態では、横振れ防止ブラケット5と排気管部4の出口フランジ部41とを別部品とした例について説明したが、一体物の金属ブラケットとしてもよい。このようにすれば、1部品で排気ガス浄化装置の横振れ防止が可能であり、かつ、既存の出口フランジ部の形状を変更するだけなので、ボルト等の締結部品を除けば部品点数が増加しない。また、横振れ防止ブラケットを給気管側に取り付ける場合も、該ブラケットと入口フランジ部とを一体物の金属ブラケットとしてもよい。
【0026】
また、例えば、上述した第1及び第2実施形態では、出口フランジ部41の板厚を一定にした例について説明したが、図8に示すように、出口フランジ部41の膨出部41aを先端側に行くに連れて板厚が薄くなり、かつ幅が狭くなる形状にしてもよい。この形状では、変形やクラックに対する強度が必要とされる部分の板厚が厚く、そうでない部分の板厚が薄くなっているので、材料の節約や軽量化を図ることができる。
【0027】
また、例えば、上述した第1及び第2実施形態の管部材45の端部と継ぎ手部材421との連結方法として、管部材45を二重管構造にし、内側の管部材を拡管してスポット溶接をし、継ぎ手部材421に強固に連結するようにしてもよい。この方法は、いわゆる密着挿入と言われる。管部材45の継ぎ手部421付近には大きな応力が加わるため、管部材45の肉厚を厚くすれば応力緩和することができるが、管部材45が重くなるので、それを避けるために、二重管を密着挿入して内側の管を拡管している。
【0028】
また、例えば、上述した第1及び第2実施形態では、上面支持部材として上面支持パイプ3を用いた例について説明したが、中空部材でなく中実部材であってもよい。要するに、排気ガス浄化装置1を支持する部材であればよい。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、トラクター等の車両に設けられる排気ガス浄化装置の取付構造に適用することができる。特に、排気ガス浄化装置の大型化に伴う排気ガス浄化装置の横振れ防止対策に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 排気ガス浄化装置
2 車体フレーム
3 上面支持パイプ
4 排気管部
41 出口フランジ部
42 継ぎ手部
421 継ぎ手部材
43 バネ機構
431 ピン部材
431a フランジ部
431b 係部
432 スプリング
433 スプリング支持部
434 ピン部材保持部
44,45 管部材
5 横振れ防止ブラケット
5a リブ
5b ボルト挿通穴
6 給気管部
7 補強部材
8 鋳造ブラケット
100 排気ガス浄化装置
101 パイプ
102,103,104A ブラケット
104A パイプ
104B ブラケット
B ボルト
N ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気ガス浄化装置と、該排気ガス浄化装置の上面に設けられ車体フレームに固定される上面支持部材とを有する排気ガス浄化装置の取付構造であって、
前記車体フレームと、前記排気ガス浄化装置の給気管部と排気管部との少なくとも一方と、に跨って取り付けられる横振れ防止ブラケットを備えていることを特徴とする排気ガス浄化装置の取付構造。
【請求項2】
前記横振れ防止ブラケットは、前記給気管部の入口フランジ部又は前記排気管部の出口フランジ部に連結されていることを特徴とする請求項1に記載の排気ガス浄化装置の取付構造。
【請求項3】
前記横振れ防止ブラケットと前記入口フランジ部又は前記出口フランジ部とが一体物の金属ブラケットであることを特徴とする請求項2に記載の排気ガス浄化装置の取付構造。
【請求項4】
前記横振れ防止ブラケットと、前記給気管部の管部材又は前記排気管部の管部材とに跨って設けられる補強部材を有していることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の排気ガス浄化装置の取付構造。
【請求項5】
前記給気管部又は前記排気管部の継ぎ手部では管部材同士を圧接するために、バネが圧縮状態で取り付けられるバネ機構が設けられたルーズフランジによって締結されていることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の排気ガス浄化装置の取付構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−131659(P2011−131659A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−291512(P2009−291512)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(303002158)三菱ふそうトラック・バス株式会社 (1,037)
【Fターム(参考)】