説明

排気制御弁のシャフト構造

【課題】シャフトの加工が不要で、排気ガスの洩れを効果的に防止する排気制御弁のシャフト構造を提供する。
【解決手段】シャフト支持部12における軸孔13の大径部15に、椀型のシール部材70を配置する。シール部材70は、その開口部が排気ガス流入側へ向くようにして、中央のシャフト挿通部においてシャフト30に溶接されている。そして、シール部材70の開口部の径は大径部15の径よりも大きくなっており、配置された状態のシール部材70は底部周辺を中心としてシャフト30側へ弾性変形しており、その反発力によって開口部の周縁が大径部15に圧接している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気管路に設けられる内燃機関用排気制御弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内燃機関の排気管路には、排気ガスの流路を切り換える等の目的で、排気制御弁が設けられたものがある。このような排気制御弁の弁体は、回動可能に支持されたシャフトによって開口部を開閉する構成となっている。例えば、シャフトに軸方向に垂直なアームを溶接し、このアームの端部にピンなどで弁体を取り付け、シャフトの回動に連動してアーム端部の弁体が排気管路内部の開口部を開閉するという具合である。
【0003】
ところで、このような排気管路には、例えば700〜900℃といった非常に高温の排気ガスが流れる。そのため、熱膨張によって弁体の開閉動作に支障が生じないよう、シャフトなどの周囲には、僅かな隙間が設けられている。そのため、内燃機関の運転によって生じる振動や排気ガスの脈動により、このような隙間から、排気ガスが漏洩し易いといった問題があった。
【0004】
これを解決する手法として、外周方向に拡開する金属製のシールリングをシャフトに嵌めてなる構成が考案されている。ここでは、シャフトを支持する軸孔に円錐曲面を有する傾斜部を設け、シャフトに嵌められたシールリングが当該傾斜部に弾性接触するようにして、シャフト部分からの排気ガスの漏洩を防止している(例えば、特許文献1等)。
【特許文献1】特開平5−171961号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したシールリングを採用する構成では、シャフトにシールリングを外嵌するための環状凸部、あるいは、シールリングを嵌挿するための環状溝を設ける必要があり、シャフトの加工が複雑になる。また、シールリングはC形リングとなっているため、シールリングの切り欠き部より、依然として、排気ガスが洩れてしまうおそれがあった。
【0006】
本発明は、上述した問題を解決するためになされたものであり、シャフトの加工が不要で、排気ガスの洩れを効果的に防止することのできる排気制御弁のシャフト構造を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、内燃機関の排気管路に設けられて排気ガスの流路を制御する排気制御弁の開閉動作を行うためのシャフト構造であって、前記排気管路の外部から回動させられるシャフトと、前記排気管路に設けられ、前記シャフトが挿通される軸孔を有するシャフト支持部と、前記シャフトに外嵌される椀型のシール部材とを備え、前記シール部材は、開口部を排気ガス流入側へ向けて、中央のシャフト挿通部において前記シャフトに固定されており、さらに、前記開口部の径を前記軸孔の径よりも大きくすることによって前記開口部の周縁が前記軸孔に弾性接触するよう構成されていることをその要旨としている。
【0008】
請求項1に記載の発明においてシャフト構造は、内燃機関の排気管路に設けられて排気ガスの流路を制御する排気制御弁の開閉動作を行うためのものである。
【0009】
シャフトは、排気管路に設けられたシャフト支持部の軸孔を挿通し、排気管路の外部から回動させられる。そして、シャフトに外嵌されて固定されたシール部材が、シャフト周囲の隙間からの排気ガスの漏れを防止する。
【0010】
特に本発明におけるシール部材は、椀型となっており、その開口部が排気ガス流入側へ向けられて、中央のシャフト挿通部においてシャフトに固定されている。例えば、溶接固定されているという具合である。そして、シール部材の開口部の径が軸孔の径よりも大きくなっており、シャフトに固定されて軸孔に配置された状態においてシール部材は弾性変形を生じ、その反発力によって開口部の周縁が、軸孔に圧接する。
【0011】
請求項1によれば、シール部材自体の形状を工夫しているため、従来と異なり、シャフトに環状凸部や環状溝を設ける必要がなく、シャフトを加工する必要がない。また、椀型のシール部材を使用し、開口部の周縁が軸孔に圧接する構成であり、従来のC形リングと異なり切り欠き部が存在しないため、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。
【0012】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載のシャフト構造において、前記シャフト支持部の軸孔は、前記排気管路の外部に突出するシャフト端部側の相対的に径の小さな小径部と、当該小径部よりも排気ガス流入側の相対的に径の大きな大径部とを有し、前記シール部材は、前記小径部と前記大径部との段差部に、底部を当接させるようにして前記大径部に配置されていることをその要旨としている。
【0013】
請求項2によれば、シャフト支持部の軸孔が、排気管路の外部に突出するシャフト端部側の相対的に径の小さな小径部と、当該小径部よりも排気ガス流入側の相対的に径の大きな大径部とを有している。そして、小径部と大径部との段差部にシール部材の底部を当接させるように、シール部材が大径部に配置されている。このように段差部にシール部材の底部を当接させれば、シール部材のシャフト方向の変形が規制されるため、弾性変形したシール部材の反発力は、軸孔の内壁面に対し、より大きく作用する。その結果、排気ガスの洩れをより効果的に防止できる。また、シャフト自体の軸方向の移動が規制され、シャフトの移動による異音の発生を防止できる。
【0014】
なお、このようにシャフト支持部の軸孔に段差部を設ける構成では、シール部材をこの段差部に固定するようにしてもよい。すなわち「前記シール部材は、中央のシャフト挿通部における前記シャフトに対する固定に代えて、前記段差部に対して前記底部を固定されていること」としてもよい。この場合、例えば、底部を段差部に溶接して固定することが考えられる。ただし、シャフト自体の軸方向の移動を規制するためには、シール部材をシャフトに対して固定することが望ましい。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のシャフト構造の発明において、前記排気ガス流入側からの排気ガスの圧力によって、前記開口部の周縁が前記軸孔に圧接するよう構成されていることを要旨としている。
【0016】
冷間時にはシール部材の弾性変形による反発力によって開口部の周縁が軸孔に弾性接触するが、熱間時は、特にシール部材を薄板状部材で形成した場合には、シール部材が熱変形する可能性も否定できない。この点、請求項3によれば、排気ガス流入側からの排気ガスの圧力によって開口部の周縁が軸孔に圧接するため、熱間時においても、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。
【0017】
請求項4に記載の発明においては、内燃機関の排気管路に設けられて排気ガスの流路を制御する排気制御弁の開閉動作を行うためのシャフト構造であって、前記排気管路の外部から回動させられるシャフトと、前記排気管路に設けられ、前記シャフトが挿通される軸孔を有するシャフト支持部と、前記シャフトに外嵌される椀型のシール部材とを備え、前記シャフト支持部の軸孔は、前記排気管路の外部に突出するシャフト端部側の相対的に径の小さな小径部と、当該小径部よりも排気ガス流入側の相対的に径の大きな大径部とを有し、前記シール部材は、開口部が排気ガス流入側へ向くようにして、中央のシャフト挿通部において前記シャフトに支持されており、前記小径部と前記大径部との段差部に底部を当接させるようにして前記大径部に配設され、さらに、前記開口部の径を前記大径部の径よりも大きくすることによって前記開口部の周縁が前記大径部に弾性接触すると共に、前記シャフト挿通部を前記排気ガス流入側へ折り返し前記シャフト挿通部の径を前記シャフトの径よりも小さくすることによって前記シャフト挿通部の周縁が前記シャフトに弾性接触するよう構成されていることをその要旨としている。
【0018】
請求項4に記載の発明においてシャフト構造は、内燃機関の排気管路に設けられて排気ガスの流路を制御する排気制御弁の開閉動作を行うためのものである。
【0019】
シャフトは、排気管路に設けられたシャフト支持部の軸孔を挿通し、排気管路の外部から回動させられる。そして、シャフトに外嵌されて支持されたシール部材が、シャフト周囲の隙間からの排気ガスの漏れを防止する。
【0020】
そして、シャフト支持部の軸孔が、排気管路の外部に突出するシャフト端部側の相対的に径の小さな小径部と、当該小径部よりも排気ガス流入側の相対的に径の大きな大径部とを有しており、小径部と大径部との段差部にシール部材の底部を当接させるように、シール部材が大径部に配設されている。
【0021】
このように軸孔に段差部を設ける構成を前提とし、本発明では、シール部材の開口部の径が大径部の径よりも大きくなっており開口部の周縁が大径部に弾性接触することに加え、シール部材のシャフト挿通部が排気ガス流入側へ折り返され、シャフト挿通部の径がシャフトの径よりも小さくなっており、シャフト挿通部の周縁が、シャフトに弾性接触する。
【0022】
このような構成を採用しても、シール部材自体の形状を工夫しているため、従来と異なり、シャフトに環状凸部や環状溝を設ける必要がなく、シャフトを加工する必要がない。また、椀型のシール部材を使用し、開口部の周縁が大径部に弾性接触する構成であり、従来のC形リングと異なり切り欠き部が存在しないため、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。
【0023】
なお、このようにシャフト支持部の軸孔に段差部を設ける構成では、シール部材をこの段差部に固定するようにしてもよい。すなわち「前記シール部材は、前記段差部に対して前記底部を固定されていること」としてもよい。この場合、例えば、底部を段差部に溶接して固定することが考えられる。
【0024】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のシャフト構造において、前記排気ガス流入側からの排気ガスの圧力によって、前記開口部の周縁が前記大径部に圧接すると共に、前記シャフト挿通部の周縁が前記シャフトに圧接するよう構成されていることを要旨としている。
【0025】
冷間時にはシール部材の弾性変形による反発力によって開口部の周縁が大径部に弾性接触するが、熱間時は、特にシール部材を薄板状部材で形成した場合には、シール部材が熱変形する可能性も否定できない。この点、請求項5によれば、排気ガス流入側からの排気ガスの圧力によって開口部の周縁が大径部に圧接すると共に、シャフト挿通部の周縁がシャフトに圧接するため、熱間時においても、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。
【0026】
請求項6に記載の発明では、請求項1乃至5のいずれかに記載のシャフト構造において、前記シール部材よりも排気ガス流入側に軸受部を設けたことをその要旨としている。
【0027】
請求項6によれば、軸受部が設けられているため、シャフトとシャフト支持部の芯合わせが行われ、シャフトの移動による異音の発生を防止できる。しかも、軸受部がシール部材よりも排気ガス流入側に設けられているため、シール部材への排気ガスの流入をも抑制でき、シール部材に煤などの排気ガス成分が付着して生じるバルブスティックを防止することができる。
【発明の効果】
【0028】
以上詳述したように、本発明によれば、シャフトの加工が不要となり、排気ガスの洩れを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0030】
図1は、内燃機関の排気管路に介在する排気制御弁を示すものである。排気制御弁は、円環状のフランジ10と、円盤状の弁体20と、円柱状のシャフト30と、アーム40とを備えている。
【0031】
フランジ10は、排気管路の内側に略垂直に介在するインナーフランジであり、フランジ10の中央部分には円形状の中心孔18が形成されると共に、該中心孔18の周りには中心孔18よりも小径の計6つのフランジ孔11が等間隔で形成されている。そして、フランジ10の中心孔18が弁体20にて開閉される。このフランジ10の一側部には、シャフト支持部12が形成されている。
【0032】
弁体20は、アーム40の一端にピン50にて支持されている。アーム40の他端は、シャフト30に溶接されて固定されている。シャフト30は、フランジ10のシャフト支持部12の有する軸孔13に挿通されて、一方の端部を外部に露出させるように配置され、当該端部を介して外部より回動可能となっている。
【0033】
図2は、図1のJ−J線断面図に加えて、排気制御弁の配置される排気管路の断面を示した説明図である。なお、図2では、排気制御弁を排気浄化装置であるフロント触媒コンバータに用いた態様を示している。ここでシャフト30が時計回りに回動させられると、シャフト30に溶接されたアーム40がシャフト30に連動して二点鎖線で示すように移動する。したがって、アーム40にピン50にて支持された弁体20も連動して移動し、これによって、フランジ10の中心孔18が開放されることになる。一方、この状態からシャフト30が反時計回りに回動させられると、アーム40は排気管路に略垂直な位置まで移動し、これに伴って弁体20がフランジ10の中心孔18を閉塞する。
【0034】
冷間時にあっては、熱間時よりも排気ガスを浄化する必要があるため、排気管路の上流側に設けられるフロント触媒60を通過させる。そのため、フランジ10の中心孔18を閉塞する。すると、記号Rで示すように、排気ガスは、フロント触媒60が配設された排気管路の外周に近い部分を通過し、フランジ10のフランジ孔11(図1参照)から下流側へ流れる。一方、熱間時にあっては、排気管路の上流側に設けられるフロント触媒60を通過させる必要はない。そのため、フランジ10の中心孔18を開放する。すると、記号Nで示すように、排気ガスは、排気管路の中心孔18を通過し、フランジ10の中心孔18から下流側へ流れる。
【0035】
ところで、上述した熱間時には、700〜900℃といった非常に高温の排気ガスが通過し、シャフト30などに熱膨張を生じるため、シャフト30とシャフト支持部12の軸孔13との間には隙間を設けて形成し、弁体20の開閉動作に支障を生じないように工夫している。そして、シャフト30は図1中に示すように排気管路の外部に突出しているため、このシャフト30と軸孔13の隙間を通って排気ガスが外部に洩れるおそれがある。
【0036】
そこで、本実施形態では、図3に示すように、シャフト30及びシャフト支持部12の構造を工夫している。これについて説明する。
【0037】
図3に示すように、シャフト支持部12の軸孔13は、排気管路の外部に突出するシャフト端部側の相対的に径の小さな小径部14と、当該小径部14よりも排気ガス流入側の相対的に径の大きな大径部15とを有している。これによって、小径部14と大径部15とで段差部16が形成されている。
【0038】
そして、二点鎖線で示すように、大径部15に、インコネル製のシール部材70が配置されている。シール部材70は椀型をしている。図4は、シール部材70の断面端面を示す説明図である。
【0039】
図4に示すように、シール部材70は、開口部71が排気ガス流入側へ向くようにして、底部72中央のシャフト挿通部73においてシャフト30に溶接固定されている。そして、小径部14と大径部15との段差部16に底部72を当接させるようにして配置されている。ここで、シール部材70の開口部71の径は大径部15の径よりも大きくなっており、図に示すように大径部15に配置された状態では、シール部材70は底部72周辺を中心としてシャフト30側へ弾性変形しており、その反発力によって開口部71の周縁が大径部15に圧接している。
【0040】
一方、熱間時にはシール部材70が熱に起因するヤング率の低下(熱変形)を生じて弾性変形による反発力が小さくなるおそれがあるが、本実施形態では、シール部材70を椀型としたことにより、記号Aで示すような排気ガスの圧力がかかると、開口部71の周縁が当該排気ガスの圧力によって大径部15に圧接するようになっている。
【0041】
図3の説明に戻り、シャフト30の突出側とは反対側の軸孔13は、キャップ17によって塞がれている。そして、シャフト30のアーム溶接部分の両側には、ベアリング80が設けられている。
【0042】
以上詳述したように、本実施形態においては、シール部材70を椀型とし、その開口部71が排気ガス流入側へ向くようにして、底部72中央のシャフト挿通部73においてシャフト30に溶接されている。そして、シール部材70の開口部71の径は大径部15の径よりも大きくなっており、シール部材70は底部72周辺を中心としてシャフト30側へ弾性変形しており、その反発力によって、開口部71の周縁が大径部15に圧接している。
【0043】
したがって、従来と異なり、シャフト30に環状凸部や環状溝を設ける必要がなく、シャフトを加工する必要がない。また、椀型のシール部材70の開口部71の周縁が軸孔13に圧接する構成であり、従来のC形リングのシール部材と異なり切り欠き部が存在しないため、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。
【0044】
また、本実施形態では、シール部材70は、軸孔13の小径部14と大径部15との段差部16に底部72を当接させるようにして配置されている。これによって、シール部材70の軸方向の変形が規制されるため、弾性変形したシール部材70の反発力は、段差部16を設けていない構成と比較して、軸孔13の内壁面に対して、より大きく作用し、排気ガスの洩れをより効果的に防止できる。また、シール部材70のシャフト挿通部73にシャフト30が固定されているため、シャフト30自体が軸方向へ移動することが規制され、シャフト30の移動による異音の発生を防止できる。
【0045】
さらにまた、本実施形態では、図4に示すように、シール部材70を椀型としたことにより、記号Aで示すような排気ガスの圧力がかかると、開口部71の周縁が当該排気ガスの圧力によって大径部15に圧接する。そのため、シール部材70が熱変形を生じるような熱間時においても、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。
【0046】
また、本実施形態では、シャフト30のアーム溶接部分の両側には、ベアリング80が設けられている。これによって、シャフト30とシャフト支持部12との芯合わせが行われ、シャフト30の移動による異音の発生を防止できる。しかも、ベアリング80が排気ガスの流入側に設けられているため、シール部材70への排気ガスの流入をも抑制でき、シール部材70に煤などの排気ガス成分が付着して生じるバルブスティックを防止することができる。
【0047】
以上、本発明は、上記実施の形態には何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の形態で実施できることは言うまでもない。
【0048】
(a)上記実施形態では、シール部材70のシャフト挿通部73をシャフト30に溶接して、シール部材70をシャフト30に対して固定していた。これに対し、図4に示すような段差部16を設ける構成では、シール部材70の底部72をシャフト支持部12の段差部16に溶接し、シール部材70をシャフト支持部12に対して固定する構成としてもよい。ただし、シャフト30の軸方向の移動を規制できるという意味では、シール部材70をシャフト30に対して固定することが望ましい。
【0049】
(b)上記実施形態ではシール部材70のシャフト挿通部73を排気ガス流入側へ若干折り返した箇所に設けたが、底部72と同じ高さにシャフト挿通部73を設けるようにしてもよい。
【0050】
(c)別実施形態のシール部材90として、図5に示すような構成を採用することも考えられる。この場合、シャフト支持部12に設けられた段差部16を利用してシール部材90を配置し、シール部材90の溶接作業を省略している。
【0051】
すなわち、シール部材90の開口部91の径を大径部15の径よりも大きくして、開口部91の周縁が大径部15に弾性接触するようにすると共に、シール部材90の中央部分94を排気ガス流入側へ折り返し、シャフト挿通部93の径をシャフト30の径よりも小さくして、シャフト挿通部93の周縁が、シャフト30に弾性接触するようにする。ここでは、熱間時に記号Bで示すような排気ガスの圧力がかかると、当該排気ガスの圧力によって、開口部91の周縁が大径部15に圧接すると共に、シャフト挿通部93の周縁がシャフト30に圧接するようになっている。
【0052】
したがって、このような構成を採用しても、上記と同様の効果が得られる。すなわち、シャフト30に環状凸部や環状溝を設ける必要がなく、シャフト30を加工する必要がない。また、従来のC形リングと異なり切り欠き部が存在しないため、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。また、シール部材90が熱変形を生じるような熱間時においても、排気ガスの洩れを効果的に防止できる。
【0053】
なお、この場合もベアリング80を設ける構成とすれば、シール部材90への排気ガスの流入をも抑制でき、シール部材90に煤などの排気ガス成分が付着して生じるバルブスティックを防止することができる。また、この構成において、シール部材90の底部92を段差部16に溶接するようにしてもよい。
【0054】
(d)上記実施形態のような排気制御弁に限らず、例えばバタフライ型の弁体を有する排気制御弁にも採用できる。
【0055】
(e)上記実施形態では排気制御弁を排気浄化装置であるフロント触媒コンバータに用いたが、排気管路中に設けられる触媒コンバータ以外の装置に用いてもよい。
【0056】
(f)上記実施形態では排気制御弁を用いて排気ガスの2つの流路を切り替えるようにしたが、排気ガスの1つの流路を単に開閉するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】実施形態の排気制御弁の構成を示す正面図である。
【図2】図1のJ−J線断面図に加え排気制御弁の配置される排気管路の断面を示す説明図である。
【図3】シャフト支持部の構成を示す説明図である。
【図4】シール部材の断面端面を示す説明図である。
【図5】別実施形態のシール部材の断面端面を示す説明図である。
【符号の説明】
【0058】
10…フランジ、11…フランジ孔、12…シャフト支持部、13…軸孔、14…小径部、15…大径部、16…段差部、18…中心孔、20…弁体、30…シャフト、40…アーム、50…ピン、60…フロント触媒、70,90…シール部材、71,91…開口部、72,92…底部、73,93…シャフト挿通部、94…中央部、80…ベアリング。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気管路に設けられて排気ガスの流路を制御する排気制御弁の開閉動作を行うためのシャフト構造であって、
前記排気管路の外部から回動させられるシャフトと、
前記排気管路に設けられ、前記シャフトが挿通される軸孔を有するシャフト支持部と、
前記シャフトに外嵌される椀型のシール部材とを備え、
前記シール部材は、開口部を排気ガス流入側へ向けて、中央のシャフト挿通部において前記シャフトに固定されており、さらに、前記開口部の径を前記軸孔の径よりも大きくすることによって前記開口部の周縁が前記軸孔に弾性接触するよう構成されていることを特徴とする排気制御弁のシャフト構造。
【請求項2】
請求項1に記載のシャフト構造において、
前記シャフト支持部の軸孔は、前記排気管路の外部に突出するシャフト端部側の相対的に径の小さな小径部と、当該小径部よりも排気ガス流入側の相対的に径の大きな大径部とを有し、
前記シール部材は、前記小径部と前記大径部との段差部に、底部を当接させるようにして前記大径部に配置されていることを特徴とする排気制御弁のシャフト構造。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のシャフト構造において、
前記排気ガス流入側からの排気ガスの圧力によって、前記開口部の周縁が前記軸孔に圧接するよう構成されていることを特徴とする排気制御弁のシャフト構造。
【請求項4】
内燃機関の排気管路に設けられて排気ガスの流路を制御する排気制御弁の開閉動作を行うためのシャフト構造であって、
前記排気管路の外部から回動させられるシャフトと、
前記排気管路に設けられ、前記シャフトが挿通される軸孔を有するシャフト支持部と、
前記シャフトに外嵌される椀型のシール部材とを備え、
前記シャフト支持部の軸孔は、前記排気管路の外部に突出するシャフト端部側の相対的に径の小さな小径部と、当該小径部よりも排気ガス流入側の相対的に径の大きな大径部とを有し、
前記シール部材は、開口部が排気ガス流入側へ向くようにして、中央のシャフト挿通部において前記シャフトに支持されており、前記小径部と前記大径部との段差部に底部を当接させるようにして前記大径部に配設され、さらに、前記開口部の径を前記大径部の径よりも大きくすることによって前記開口部の周縁が前記大径部に弾性接触すると共に、前記シャフト挿通部を前記排気ガス流入側へ折り返し前記シャフト挿通部の径を前記シャフトの径よりも小さくすることによって前記シャフト挿通部の周縁が前記シャフトに弾性接触するよう構成されていることを特徴とする排気制御弁のシャフト構造。
【請求項5】
請求項4に記載のシャフト構造において、
前記排気ガス流入側からの排気ガスの圧力によって、前記開口部の周縁が前記大径部に圧接すると共に、前記シャフト挿通部の周縁が前記シャフトに圧接するよう構成されていることを特徴とする排気制御弁のシャフト構造。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載のシャフト構造において、
前記シール部材よりも排気ガス流入側に軸受部を設けたことを特徴とする排気制御弁のシャフト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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