説明

排気浄化装置

【課題】容易に絶縁性を回復できる排気浄化装置を提供する。
【解決手段】 排ガスが通過する排気通路の内部に配され、該排気通路の内壁との間にて高電圧電源部15からの高電圧を印加することによりコロナ放電を発生させ、コロナ放電により排ガス中の排気微粒子を帯電・凝集させる放電部12dと、放電部の放電部分を除く導電部の外周を囲み絶縁する碍子部12bと、を有する放電電極12を備える排気浄化装置であって、排ガス成分の碍子部12bへの付着による絶縁性の低下を回復するように、高電圧電源部15から放電電極12への高電圧の印加状態を制御する通電制御部16を備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排ガスに含まれる排気微粒子を浄化する排気浄化装置に関し、特に排気通路に設けられた、排気微粒子を凝集させる放電電極に付着した排気微粒子を燃焼除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等に搭載される内燃機関では、地球環境の保護のために、排ガスの浄化能力の向上が要求されており、特に軽油を燃料とする圧縮着火式のディーゼルエンジンでは、CO、HC、NOx に加え、排ガス中に含まれる煤やSOF等の排気微粒子を除去することが必要になる。このため、図4に示すように、排気通路にパティキュレートフィルタ2を配置し、ここで、排ガス中の排気微粒子を捕集している。
【0003】
パティキュレートフィルタ2は、例えば、内部に多数の通孔を有するガイド部材を設け、流入した排ガス中の排気微粒子を互いに衝突させるようにして排気微粒子の粒径を大きくして捕集するものや、流入した排ガスに多孔質の隔壁を透過させ、その際に、隔壁の表面や細孔で排ガス中の排気微粒子を捕集するものである。しかしながら、排気微粒子のなかには粒子径が小さく、このパティキュレートフィルタ2では充分に捕集することができず、排気通路から放出されるものもあった。
【0004】
このため、粒子径の小さい排気微粒子を凝集させて粒子径を大きくして、捕集しやすくする凝集器10が使用される。この凝集器10は、凝集器内の排ガス通路の略中心部に位置する放電電極と、放電電極の外周に位置する凝集器のハウジングとハウジングの出口付近に排ガス通路を横切って設置される円盤状の導電性網からなる接地電極を有し、この電極間に高電圧を印加し、コロナ放電を起こし、排気微粒子を帯電させ、凝集させたものである。この放電電極は、凝集器に取付けられるが、高電圧においても絶縁を維持するために、碍子により外周が取り囲まれている。
【0005】
しかしながら、この碍子は、凝集器の中の排気微粒子が通過する通路に装着されるため、使用中に碍子112の外周にこの排気微粒子3が付着して、絶縁性が低下する場合があった。特に、図7に示すように、碍子の先端112gに排気微粒子3が付着した場合は、碍子の先端112g中心から延設された放電部112dと碍子の先端112gとの間で絶縁性が低下する問題があった。
【0006】
このような、碍子の絶縁性の低下を防止する方法として、碍子の表面に凹凸を設けてこの凹凸部分に電界集中させ、放電を起こし、碍子に付着した排気微粒子を除去する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開昭60−190248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、碍子を内燃機関の排ガスの通路中で使用する場合、温度変化が大きく、碍子の表面が凹凸のような複雑な形状では、熱歪が凹凸部分に集中して碍子が破損する場合がある。
【0008】
本発明は、上記実情に鑑みなされたもので、碍子が破損することがなく、容易に絶縁性を回復できる排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明では、排ガスが通過する排気通路の内部に配され、該排気通路の内壁との間にて高電圧電源部からの高電圧を印加することによりコロナ放電を発生させ、該コロナ放電により排ガス中の排気微粒子を帯電・凝集させる放電部と、該放電部の放電部分を除く導電部の外周を囲み絶縁する碍子部と、を有する放電電極を備える排気浄化装置であって、排ガス成分の上記碍子部への付着による絶縁性の低下を回復するように、上記高電圧電源部から上記放電電極への高電圧の印加状態を制御する通電制御部を備える構成とする。
【0010】
電圧電源部から放電電極への高電圧の印加状態を制御する通電制御部を備えるため、排ガス成分の碍子部への付着による絶縁性の低下が生じたときは、通電制御部から高圧電流を放電電極に流すことにより、碍子部の表面に沿面電流を発生させ、碍子部に付着した排ガス成分を除去することができる。
【0011】
請求項2記載の発明では、請求項1の発明の構成において、上記碍子部における、上記放電部の外周を囲む部分が途切れる境界領域を窪ませて環状凹部を形成した構成とする。
【0012】
放電部の外周を囲む部分が途切れる境界領域を窪ませて環状凹部を形成したため、環状凹部は、排ガスの流路に対し直角に凹んでおり、環状凹部に排気微粒子が付着しにくく、放電電極の絶縁性が低下することが少ない。
【0013】
請求項3記載の発明では、請求項1または請求項2の発明の構成において、上記高電圧電源部から上記放電電極への高電圧の印加により上記放電電極に通電される電流値を検出する電流検出手段を設け、上記電流検出手段による、所定電圧値の印加と対応する電流値を上回る過電流値であることを検出したときに、上記所定電圧値よりも高電圧値に上昇させ、この電圧上昇を維持させた後に、過電流状態の電流値が降下して所定値の電流値になると、高電圧値に上昇させた印加電圧を降下させる上記通電制御部を備える構成とする。
【0014】
放電電極に排ガス成分が付着するとリーク電流が流れ、通常の電流値より大きくなる過電流が流れる現象に基づき、碍子部の先端に排ガス成分の排気微粒子が付着した場合は、高電圧電源部と放電電極に対する電流検出手段を設け、電流検出手段により放電部と碍子部の間に流れる電流の所定電圧値の印加と対応する電流値を上回る過電流値を検出して、碍子部の先端に排気微粒子の付着したことを検出することができる。
通電制御部は、一定の所定電圧の印加の下で、電流検出手段が所定以上の電流値を検出したときに、碍子部の先端付近に排気微粒子が付着して、放電部と碍子部の間の絶縁性が低下したことを検知する。そして、高電圧電源部へ印加電圧を上昇させる信号を発信する。高電圧電源部から発生した上昇した印加電圧により、碍子部の先端環状凹部表面と放電部との間に沿面放電を発生させる。この沿面放電により、碍子部表面の排気微粒子を燃焼させて除去することができる。そして、碍子部表面の排気微粒子が除去されると、放電部と碍子部の間に流れる電流は低下する。そのため、放電部と碍子部の間の電流が、所定以下の電流値になったときに印加電圧を元に戻して排気微粒子の除去を終了できる。なお、放電電極に印加される電圧は、負電圧であるため、印加電圧の上昇とは、電圧の絶対値が増加することである。
【0015】
請求項4記載の発明では、請求項1ないし3の発明の構成において、上記所定電圧値よりも高電圧値に上昇させる際の電圧値の上昇値は、上記所定電圧値に対し、5%〜25%の範囲に設定される構成である。
【0016】
上記所定電圧値よりも高電圧値に上昇させる際の電圧値の上昇値は、上記所定電圧値に対し、5%〜25%の範囲に設定されるため、確実に沿面放電を発生させることができ、放電電極に付着した排気微粒子を除去することができる。電圧値の上昇値が5%以下では、沿面放電を促進することができず、25%以上ではアーク放電に移行する可能性が高くなるためである。
【0017】
請求項5記載の発明では、請求項1ないし請求項3の発明の構成において、上記碍子部の凝集器内側は、先端方向に先細りとした構成である。
【0018】
放電電極の凝集器の内部に取付けられた部分における碍子部は、先端方向に進むにつれて先細りの形状となっているため、碍子部の先端付近の表面積は小さくなり、付着する排気微粒子も少なくなる。このため除去する時間、即ち、高電圧電源部により印加電圧を増加させる時間を短くすることができる。
【0019】
請求項6記載の発明では、請求項1ないし請求項3の発明の構成において、上記放電部の端部である先端部には、放射状に形成された導電性の突起部が形成される構成である。
【0020】
放電部の端部である先端部には、放射状に形成された導電性の突起部が形成されるため、コロナ放電により凝集器内の排気微粒子を広範囲に凝集させることができる。
【0021】
請求項7記載の発明では、請求項1ないし請求項4の発明の構成において、上記放電電極の排ガス流れの後流位置には、上記排気通路を横切って設置される導電性網からなる接地電極を有し、上記導電性網と上記放電部との距離は、上記排気通路の内壁と上記放電部との距離よりも長く設定される構成である。
【0022】
このようにすると排ガスの流速にかかわらず均等に、効率的に排気微粒子を効率よく凝集させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の実施の形態を、図1〜図6に基づき説明する。
図1は、本発明の実施の形態における排気浄化装置の凝集器11の概略構成図であり、図2は、コロナ放電をするコロナ放電電極12の構成図であり、図3は、コロナ放電電極12の先端の一部拡大図である。
図4は、上記排気浄化装置の内燃機関への配置を示す図である。図5は、実施の形態における碍子部に付着した排気微粒子を除去する場合の電流値と印加電圧の関係を示すグラフである。第6図は、コロナ放電電極の絶縁性の良否判定をするための電流値と温度の関係を示すグラフである。
【0024】
内燃機関から排出される排ガスを浄化する排気浄化装置は、排気通路に設置され、本発明の実施の形態において図4に示すように、エンジン本体1から排出された排ガスの排気微粒子3を捕集するパティキュレートフィルタ2と、パティキュレートフィルタ2を通過した排気微粒子3を凝集させる凝集器10等から構成される。パティキュレートフィルタ2は、エンジン本体1の排気マニホールドと排気管30で連結され、パティキュレートフィルタ2と凝集器10とも排気管30で連結されている。なお、パティキュレートフィルタ2と凝集器10は排気通路において前後逆に取り付けることもできる。逆にした場合は、排気微粒子3の粒径を大きくしてから、パティキュレートフィルタ2で捕集することができる。
【0025】
パティキュレートフィルタ2は、例えば、排気通路に、通孔を有するガイド部材を設け、排ガス中の排気微粒子3を衝突させ、粒径を大きくして捕集したものや、コーディエライトや炭化珪素等の多孔質セラミック製のハニカム構造体の流路を目封じしてフィルタ本体を形成したものである。入口から流入したエンジン本体1の各気筒からの排ガスが、ガイド部材の通孔を通り、あるいは多孔質の隔壁を通り、出口から下流へと流れていく。このとき、パティキュレートフィルタ2には、排ガスに含まれる排気微粒子3が捕集され、走行距離に応じて堆積していく。また、パティキュレートフィルタ2のフィルタ本体の表面には白金やパラジウム等の貴金属を主成分とする酸化触媒を担持することができる。この酸化触媒により、所定の温度条件下で排気微粒子3を酸化、燃焼させ、除去することができる。
【0026】
パティキュレートフィルタ2を通過した排ガス中には、まだ微細な排気微粒子3が含まれ、排気管30を通り凝集器10に入る。凝集器10では、この微細な排気微粒子3をコロナ放電により凝集させて、捕集しやすくする。凝集器10は図1に示すように、前後の入口と出口が狭められた円筒状のハウジング11と、コロナ放電電極12と、導電性網13から形成される。ハウジング11は、耐蝕性と熱伝導性の観点からステンレススチール(SUS)が使用される。
【0027】
コロナ放電電極12は、図2に示すように、全体形状が細長で、ハウジング11を貫通して取付けられる。コロナ放電電極12の中心に、放電電流を流す電線からなる導電部12aが貫通し、導電部12aの外周に絶縁のため碍子部12bが形成されている。コロナ放電電極12の、ハウジング11内に突出する凝集器内部分12eは、ハウジング11から直角に装着され、凝集器10内を流動する排ガスの流れに対して略直交するように配置される。コロナ放電電極12の凝集器内部分12eの導電部12aの先端には、放電部12dが設けられ、放電部12dは、棒状の電線が凝集器内部分12eの先端から排ガスの流れに直角に、流れの中心に向けて延設されている。放電部12dの電線の先端には、複数の突起を有する星型の突起部12hが設けられている。多数の突起を放射状に配置すると、放電率を高めるとともに、ハウジング11内に均等にコロナ放電を発生させる効果が得られる。
【0028】
碍子部12bの凝集器10外に位置する部分は、円筒状に形成され、円筒状の先端から導電部12aが突出し、この突出部分と、コロナ放電を発生させる高圧電流が供給されるように高電圧電源部15と電気的に接合される。この高電圧電源部15とコロナ放電電極12に対する電圧値と電流値を制御する通電制御部16が取付けられる。通電制御部16の機能、作用については後述する。
【0029】
コロナ放電電極12の略中央部分には取付け部12cが設けられ、ハウジング11の取付孔に固着されるように外周方向に張り出して形成され、ハウジング11にナット等で取付けられる。コロナ放電電極12とハウジング11は碍子部12bで絶縁される。
【0030】
碍子部12bの凝集器10内に挿入される凝集器内部分12eは、先細りに形成されている。このため、先端に行くにつれて表面積が小さくなり、排気微粒子の付着量を減少させることができる。凝集器内部分12eの先端は、図3に示すように、放電部12dの先端12gの外周を囲む部分が途切れる境界領域を窪ませて環状凹部12fが形成され、環状凹部12fの中心に、高電圧電流を流し、コロナ放電をさせる放電部12dの電線が貫通している。この環状凹部12fにより、放電部12dと碍子部12bの先端12gとの間には空間が形成され、絶縁される。放電部12dの電線の先端に、放射状に広がった突起部12hが形成されている。この突起部12hにより、コロナ放電が凝集器10内の広い範囲にわたり行なわれる。
【0031】
碍子部12bの先端の環状凹部12fは、円筒状に形成され、排ガス流に対して直交するように取付けられており、環状凹部12fの奥は袋小路になっているため、凝集器10内を排ガスが高速で流れても、排気微粒子3が流れ込みにくく、付着しにくい。また、環状凹部12fの奥は角張ったコーナーを形成しており、コーナーの隅は、一層排気微粒子3が付着しにくい。そのため、環状凹部12fの内面と放電部12dとの間で電流が流れ難い。
コロナ放電電極12の先端部12gは、図3に示すように、放電部12dの外周を囲む部分が途切れる境界領域を窪ませて環状凹部12fが形成され、排ガスの流通につれて、その環状凹部12fの外壁の先端面と外周面に排気微粒子3が付着する。
【0032】
導電性網13は、凝集器10のハウジング11の出口側に取付けられ、コロナ放電電極12の放電部12dよりも排ガス流の下流に排気通路を横切って配置される。導電性網13は排ガスが流通可能な網目を有する導電性の板状部材を円形に成形したもので、排気通路の内壁を構成するハウジング11を介して電気的に接地され、接地電極を形成している。導電性網13と放電部12dとの距離は、放電部12dとハウジング11との距離よりも長いことが、排気微粒子3を均一に帯電させるため好ましい。
【0033】
かかる排気処理装置は、本体部分がエンジンが搭載された車両の下部に配置され、高圧電源5が車両の後部のトランクルームに設置されることができる。
【0034】
上記構成の排気処理装置の作動を説明する。図1において、コロナ放電電極12に、高電圧電源部15から負の直流高電圧(例えば、−20KV)を印加すると、放電部12d近傍においてコロナ放電が発生し、電子が放射される。これにより、電子親和性の高い酸素がマイナスイオン化し、付近の排気微粒子3に付着してこれを負に帯電させる。排気微粒子3は、クーロン力と排ガス流によって移動し、導電性網13に静電捕集される。排気微粒子3を負に帯電させた上記電子は導電性網13へと放出される。放出された電子は導電性網13から移動して接地部14に回収される。
【0035】
なお、接地される排気管2のハウジング11もコロナ放電電極12と対をなす電極を構成し、一部の排気微粒子3は凝集器10の内周面で凝集する。したがって、凝集器10のハウジング11も導電性網13と実質的に同等の作用をする。このとき、好ましくは凝集器10の下流にフィルタを設置して凝集器10を通過した排気微粒子3を捕集することで、大気への放出を防止することができる。
【0036】
なお、コロナ放電電極12の凝集器内部分12eは、排ガス流に対して直交するように配置されるため、凝集器内部分12eの外周、即ち碍子部12bの表面に排気微粒子3が付着する。この排気微粒子3の付着が増加すると、排気微粒子3は炭素を含むため導電性を有し、碍子部12bによる絶縁性が低下する。
【0037】
次に、この凝集器10内の碍子部12b、特に、碍子部12bの先端に付着した排気微粒子3を除去する方法を説明する。
上述のようにエンジン本体1から排出された排ガスは、まずパティキュレートフィルタ2に送られ、排気微粒子3はそこで捕集される。そして、凝集器10内のコロナ放電電極12の表面にも排気微粒子3が付着し、走行距離に応じて堆積していく。
【0038】
本発明では、高電圧電源部15とコロナ放電電極12に対して、電流を検出し、印加電圧を制御する電流制御手段である通電制御部16が設けられている。電流を検出するために、高電圧電源部15とコロナ放電電極12の間に電流検出手段である電流計16aが設けられている。コロナ放電電極12に排気微粒子3が堆積するとコロナ放電電極12の絶縁性が低下し、コロナ放電以外の電流が流れ始める。
【0039】
図5に、通電制御部16で測定する、電流値と印加電圧の関係をグラフで示す。
通常時は、一定の印加電圧がコロナ放電電極12に印加され、コロナ放電が行われる。時間の経過とともにコロナ放電電極12の碍子部12bの表面に、図2と図3に示すように排気微粒子3が付着する。この付着の量が増加するとともに電流値が増加して、電流検出装置16aにより過電流値が検出される。電流値と排気微粒子3の付着量は相関関係があり、所定の電流値、即ち付着した排気微粒子3を除去することが必要であると判定する過電流値(回復必要判定値)に達したときに、通電制御部16は、高電圧電源部15に対して、印加電圧の増加の指令を出す。
【0040】
そして、高電圧電源部15は印加電圧を上げる。例えば、通常の所定の電流値が20KVであるときに、その5%〜25%である1KV〜5KVを昇圧する。昇圧時間は、1分間程度することで排気微粒子3を除去できるが、その付着の程度により適宜電圧値と時間は選択できる。
【0041】
なお、前述のとおり、コロナ放電電極12に印加される電圧は、負電圧であるため、印加電圧の上昇とは、電圧の絶対値が増加することであり、印加電圧の下降とは、電圧の絶対値が減少することである。印加電圧が上がると、電流値も上がるが、コロナ放電電極12の先端において、図3に示すように、放電部12dと先端部12gの排気微粒子3の間で放電5が発生し、この放電5と沿面電流により排気微粒子3が燃焼して、除去される。
【0042】
そのため、沿面電流の流れる時間の経過とともに、電流値は徐々に低下し、放電部12d付近の絶縁性が回復したと判断される電流値(回復終了判定値)まで達したときに、通電制御部16から指令を出して、印加電圧を下げる。印加電圧を下げると電流値も下がるが、その後、時間の経過とともに、再びコロナ放電電極12に排気微粒子3が付着して電流値は増加する。そして排気微粒子3を除去するため印加電圧を増加させる。これを繰り返すことにより、コロナ放電電極12の排気微粒子3の付着を除去することができる。
【0043】
なお、上記の電流値の回復必要判定値は、図6に示すように、凝集器10の運転の運転条件により異なってくる。コロナ放電電極12の排気微粒子3の付着による汚れがないときの電流値がグラフの黒丸と実線で示した値である。排気微粒子3を除去しコロナ放電電極12の清浄化が必要と判断される電流値が黒三角と破線で示した値である。通電制御部16で検出した電流値が、破線よりも増加したときに通電制御部16は、高電圧電源部15に対して、印加電圧の増加を指令するよう構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施形態になる排気浄化装置の凝集器の概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態になるコロナ放電をするコロナ放電電極の構成図である。
【図3】本発明の実施形態になるコロナ放電電極の先端の一部拡大図である。
【図4】本発明の実施形態の排気浄化装置の内燃機関への配置を示す図である。
【図5】本発明の実施形態の実施の形態における碍子部に付着した排気微粒子を除去する場合の電流値と印加電圧の関係を示すグラフである。
【図6】コロナ放電電極の絶縁性の良否判定をするための電流置と温度の関係を示すグラフである。
【図7】従来のコロナ放電電極の先端の一部拡大図である。
【符号の説明】
【0045】
1 エンジン本体
3 排気微粒子
10 凝集器
11 ハウジング
12 コロナ放電電極
12a 導電部
12b 碍子部
12d 放電部
12f 環状凹部
12h 突起部
15 高電圧電源部
16 通電制御部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
排ガスが通過する排気通路の内部に配され、該排気通路の内壁との間にて高電圧電源部からの高電圧を印加することによりコロナ放電を発生させ、該コロナ放電により排ガス中の排気微粒子を帯電・凝集させる放電部と、
該放電部の放電部分を除く導電部の外周を囲み絶縁する碍子部と、
を有する放電電極を備える排気浄化装置であって、
排ガス成分の上記碍子部への付着による絶縁性の低下を回復するように、上記高電圧電源部から上記放電電極への高電圧の印加状態を制御する通電制御部を備えることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気浄化装置において、上記碍子部における、上記放電部の外周を囲む部分が途切れる境界領域を窪ませて環状凹部を形成したことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の排気浄化装置において、上記高電圧電源部から上記放電電極への高電圧の印加により上記放電電極に通電される電流値を検出する電流検出手段を設け、
上記電流検出手段による、所定電圧値の印加と対応する電流値を上回る過電流値であることを検出したときに、上記所定電圧値よりも高電圧値に上昇させ、この電圧上昇を維持させた後に、過電流状態の電流値が降下して所定値の電流値になると、高電圧値に上昇させた印加電圧を降下させる上記通電制御部を備えることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の排気浄化装置において、上記所定電圧値よりも高電圧値に上昇させる際の電圧値の上昇値は、上記所定電圧値に対し、5%〜25%の範囲に設定されることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の排気浄化装置において、上記碍子部の凝集器内側は、先端方向に先細りとしたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の排気浄化装置において、上記放電部の端部である先端部には、放射状に形成された導電性の突起部が形成されることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の排気浄化装置において、
上記放電電極の排ガス流れの後流位置には、上記排気通路を横切って設置される導電性網からなる接地電極を有し、
上記導電性網と上記放電部との距離は、上記排気通路の内壁と上記放電部との距離よりも長く設定されることを特徴とする排気浄化装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−105081(P2006−105081A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295665(P2004−295665)
【出願日】平成16年10月8日(2004.10.8)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】