説明

排気浄化装置

【課題】液体還元剤又はその前駆体を貯蔵する還元剤タンクに異種水溶液が補給されることを抑制する。
【解決手段】液体還元剤又はその前駆体を貯蔵する還元剤タンク24の内部を、補給口24A付近に取り付けられた隔壁24Bにより、補給口24Aと連通する副タンク24D、及び、これと液密に区画される主タンク24Cと、に2分割する。また、副タンク24Dに、補給口24Aを介して補給された補給液体が液体還元剤又はその前駆体であるか否かを識別する液体識別センサ34を取り付ける。そして、還元剤添加ECU30は、液体識別センサ34により補給液体が液体還元剤又はその前駆体であると識別されると、隔壁24Eの底板に取り付けられた開閉部24Eを開通させ、副タンク24Dと主タンク24Cとを連通させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、還元剤を使用して排気中の窒素酸化物(NOx)を還元浄化する排気浄化装置において、液体還元剤又はその前駆体を貯蔵する還元剤タンクに異種水溶液が補給されることを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン排気中のNOxを除去する触媒浄化システムとして、特開2000−27627号公報(特許文献1)に記載された排気浄化装置が提案されている。かかる排気浄化装置は、エンジン排気管に配設されたNOx還元触媒の排気上流に、エンジン運転状態に応じた液体還元剤又はその前駆体を噴射供給することで、排気中のNOxと還元剤とを触媒還元反応させて、NOxを無害成分に浄化処理するものである。
【特許文献1】特開2000−27627号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来提案の排気浄化装置では、NOx還元浄化に伴い液体還元剤又はその前駆体が消費されるため、還元剤タンクに液体還元剤又はその前駆体を適宜補給しなければならない。このとき、還元剤タンクに、軽油やガソリンなどの燃料を誤って補給してしまうことが想定される。即ち、エンジンなどの内燃機関では、軽油やガソリンなどの燃料が燃料タンクに貯蔵されているため、燃料タンクと還元剤タンクとを間違えて、燃料を還元剤タンクに補給してしまう可能性がある。還元剤タンクに燃料が補給されると、NOx還元触媒の排気上流に燃料が噴射供給されることから、排気浄化装置としての機能を発揮できなくなるばかりか、排気熱で燃料が着火して排気温度が過度に上昇し、NOx還元触媒に熱影響を及ぼしてしまうおそれがある。なお、このような不具合は、内燃機関に限らず、ボイラ,タービンなどの外燃機関でも同様に発生するおそれがある。
【0004】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、還元剤タンクの補給口付近を液密に区画した副タンクに補給された補給液体を識別し、これが正規の液体還元剤又はその前駆体であれば、これを還元剤タンクに供給することで、異種水溶液が補給されることを抑制した排気浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このため、請求項1記載の発明では、補給口と連通する副タンク、及び、該副タンクと液密に区画される主タンクが内部に形成された還元剤タンクと、前記主タンクに貯蔵された液体還元剤又はその前駆体を使用して、排気中の窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、前記補給口を介して副タンクに補給された補給液体が液体還元剤又はその前駆体であるか否かを識別する液体識別手段と、前記液体識別手段により補給液体が液体還元剤又はその前駆体であると識別されたときに、前記副タンクと主タンクとを連通させる連通手段と、を含んで排気浄化装置を構成したことを特徴とする。
【0006】
請求項2記載の発明では、前記液体識別手段により補給液体が液体還元剤又はその前駆体でないと識別されたときに、その旨を報知する報知手段が備えられたことを特徴とする。
請求項3記載の発明では、前記液体識別手段は、補給液体が液体還元剤又はその前駆体であるか否かの識別に加え、その濃度を検出可能に構成される一方、前記連通手段は、前記液体識別手段により補給液体が液体還元剤又はその前駆体であると識別され、かつ、その濃度が所定範囲内にあるときに、前記副タンクと主タンクとを連通させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の発明によれば、還元剤タンクに液体を補給すると、その補給液体は主タンクに直接流入せず、補給口と連通しかつ主タンクと液密に区画される副タンクに一旦流入する。そして、副タンクに補給された補給液体が液体還元剤又はその前駆体であるか否かが識別され、これが液体還元剤又はその前駆体であると識別されると、副タンクと主タンクとが連通される。一方、副タンクに補給された補給液体が液体還元剤又はその前駆体でない、例えば、誤って燃料などの異種水溶液を補給してしまったときには、副タンクと主タンクとが連通されない。
【0008】
このため、還元剤タンクに異種水溶液が補給されたときには、これが主タンクへと補給されないことから、排気浄化装置としての機能を確保しつつ、還元触媒を保護することができる。このとき、副タンクが異種水溶液で満杯になると、補給ノズルの先端に取り付けられたセンサがその状態を検知して異種水溶液の補給が停止されるので、これが還元剤タンクから溢れることがない。
【0009】
請求項2記載の発明によれば、還元剤タンクに異種水溶液が補給されたときには、その旨が報知されるので、還元剤タンクに誤って異種水溶液を補給してしまったことを容易に認識することが可能となり、これを排出するなどの対応を迅速にとることができる。
請求項3記載の発明によれば、主タンクに規定濃度を逸脱する液体還元剤又はその前駆体、例えば、過度に希釈された液体還元剤が補給されることがないため、主タンクにおける液体還元剤又はその前駆体の濃度を検出する濃度センサが不要となり、コスト低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
図1は、還元剤の前駆体たる尿素水溶液を使用し、エンジン排気に含まれるNOxを触媒還元反応により還元浄化する排気浄化装置の全体構成を示す。
エンジン10の排気マニフォールド12に接続される排気管14には、排気流通方向に沿って、一酸化窒素(NO)を二酸化窒素(NO2)へと酸化させる窒素酸化触媒16と、尿素水溶液を噴射供給する噴射ノズル18と、尿素水溶液を加水分解して得られるアンモニアを使用してNOxを還元浄化するNOx還元触媒20と、NOx還元触媒20を通過したアンモニアを酸化させるアンモニア酸化触媒22と、が夫々配設される。また、還元剤タンク24に貯蔵される尿素水溶液は、その底部で吸込口が開口する配管26を通って還元剤添加装置28に供給される。そして、還元剤添加装置28は、コンピュータを内蔵した還元剤添加コントロールユニット(以下「還元剤添加ECU」という)30により電子制御され、エンジン運転状態に応じた流量の尿素水溶液を、圧縮空気と混合した噴霧状態で噴射ノズル18に供給する。
【0011】
かかる排気浄化装置において、噴射ノズル18から噴射供給された尿素水溶液は、排気熱及び排気中の水蒸気により加水分解され、アンモニアへと転化される。転化されたアンモニアは、NOx還元触媒20において排気中のNOxと還元反応し、水(H2O)及び窒素(N2)へと転化されることは知られたことである。このとき、NOx還元触媒20によるNOx浄化効率を向上させるべく、窒素酸化触媒16によりNOがNO2へと酸化され、排気中のNOとNO2との割合が触媒還元反応に適したものに改善される。一方、NOx還元触媒20を通過したアンモニアは、その排気下流に配設されたアンモニア酸化触媒22により酸化されるので、アンモニアがそのまま大気中に排出されることがない。
【0012】
本発明の特徴として、還元剤タンク24は、その補給口24A付近の内壁に取り付けられた隔壁24Bにより、主タンク24Cと副タンク24Dとに液密に区画される。主タンク24Cには、尿素水溶液の濃度を検出する濃度センサ32が配設される一方、副タンク24Dには、少なくとも、補給口24Aから補給された液体が尿素水溶液であるか否かを識別する液体識別センサ34(液体識別手段)が配設される。また、隔壁24Bの底板には、主タンク24Cと副タンク24Dを必要に応じて連通させるべく、遠隔操作により開閉される常閉式の開閉部24Eが形成される。開閉部24Eの具体的構成としては、例えば、回動自由に固定された隔壁24Bの底板をアクチュエータにより回動させたり、隔壁24Bの底板に電磁式開閉弁を取り付けることで容易に実現できる。そして、濃度センサ32及び液体識別センサ34からの各出力信号は、還元剤添加ECU30へと入力され、還元剤添加装置28の制御などに用いられると共に、そのROM(Read Only Memory)に記憶された制御プログラムによって、開閉部24E並びにブザー,警告灯などの警報装置36が制御される。
【0013】
ここで、還元剤添加ECU30及び開閉部24Eの協働により連通手段が実現されると共に、還元剤添加ECU30及び警報装置36の協働により報知手段が実現される。
図2は、還元剤添加ECU30において、例えば、還元剤タンク24の補給口24Aが開けられたことを契機として、所定時間ごとに繰り返し実行される制御プログラムの内容を示す。
【0014】
ステップ1(図では「S1」と略記する。以下同様)では、液体識別センサ34の出力信号を読み込む。
ステップ2では、液体識別センサ34の出力信号に基づいて、副タンク24Dに補給された液体(以下「補給液体」という)が尿素水溶液であるか否かを判定する。そして、補給液体が尿素水溶液であればステップ3へと進み(Yes)、尿素水溶液が主タンク24Cに供給されるべく開閉部24Eを開通させる。一方、補給液体が尿素水溶液でなければステップ4へと進み(No)、異種水溶液が主タンク24Cに供給されることを防止すべく開閉部24Eを閉鎖させる。その後、ステップ5において、警報装置36を所定時間作動させる。
【0015】
かかる構成によれば、還元剤タンク24に液体を補給すると、その補給液体は主タンク24Cに直接流入せず、副タンク24Dに一旦流入する。そして、副タンク24Dに流入した補給液体が尿素水溶液であるか否かが識別され、補給液体が尿素水溶液であれば開閉部24Eが開通して、補給液体が主タンク24Cへと流入する。一方、補給液体が尿素水溶液でない、例えば、誤って燃料などの異種水溶液を補給してしまったときには、開閉部24Eが閉鎖して異種水溶液が主タンク24Cへ流入することが防止される。
【0016】
従って、還元剤タンク24の主タンク24Cには、異種水溶液が補給されることがなく、排気浄化装置としての機能を確保しつつ、そのNOx還元触媒20を保護することができる。
このとき、副タンク24Dが異種水溶液で満杯になると、補給ノズルの先端に取り付けられたセンサがその状態を検知して異種水溶液の補給が停止されるので、これが還元剤タンク24から溢れることがない。また、異種水溶液が補給されたときには、警報装置36が作動するので、還元剤タンク24に誤って異種水溶液を補給してしまったことを容易に認識することが可能となり、これを排出するなどの対応を迅速にとることができる。
【0017】
なお、液体識別センサ34として、尿素水溶液であるか否かの識別機能に加え、尿素水溶液の濃度を検出可能なものを使用し、補給液体が尿素水溶液かつその濃度が所定範囲内にあるときに、開閉部24Eを開通させるようにしてもよい。このようにすれば、主タンク24Cに規定濃度を逸脱する尿素水溶液、例えば、過度に希釈された尿素水溶液が補給されることがないため、主タンク24Cに配設した濃度センサ32が不要となり、コスト低減を図ることができる。
【0018】
また、還元剤としては、その前駆体たる尿素水溶液に限らず、アンモニア水溶液を使用したり、NOx還元触媒20におけるNOx還元メカニズムに応じて、炭化水素を主成分とするアルコール,軽油などを使用することができる。
さらに、本発明は、エンジン10のような内燃機関に限らず、ボイラ,タービンなどのような外燃機関に適用可能であることはいうまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明を具現化した排気浄化装置の一例を示す構成図
【図2】同上の制御内容を示すフローチャート
【符号の説明】
【0020】
20 NOx還元触媒
24 還元剤タンク
24A 補給口
24B 隔壁
24C 主タンク
24D 副タンク
24E 開閉部
30 還元剤添加ECU
34 液体識別センサ
36 警報装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補給口と連通する副タンク、及び、該副タンクと液密に区画される主タンクが内部に形成された還元剤タンクと、
前記主タンクに貯蔵された液体還元剤又はその前駆体を使用して、排気中の窒素酸化物を還元浄化する還元触媒と、
前記補給口を介して副タンクに補給された補給液体が液体還元剤又はその前駆体であるか否かを識別する液体識別手段と、
前記液体識別手段により補給液体が液体還元剤又はその前駆体であると識別されたときに、前記副タンクと主タンクとを連通させる連通手段と、
を含んで構成されたことを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
前記液体識別手段により補給液体が液体還元剤又はその前駆体でないと識別されたときに、その旨を報知する報知手段が備えられたことを特徴とする請求項1記載の排気浄化装置。
【請求項3】
前記液体識別手段は、補給液体が液体還元剤又はその前駆体であるか否かの識別に加え、その濃度を検出可能に構成される一方、
前記連通手段は、前記液体識別手段により補給液体が液体還元剤又はその前駆体であると識別され、かつ、その濃度が所定範囲内にあるときに、前記副タンクと主タンクとを連通させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排気浄化装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−255286(P2007−255286A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80175(P2006−80175)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000003908)日産ディーゼル工業株式会社 (1,028)
【Fターム(参考)】