説明

排気浄化装置

【課題】簡易な構成により排気温度を上昇させてパティキュレートフィルタを再生可能な排気浄化装置を提供する。
【解決手段】ディーゼルエンジン1の排気通路7に配設され、排気中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタ12と、排気通路内のパティキュレートフィルタ12の上流側に配設された酸化触媒11と、酸化触媒11に至る排気通路内の排気の空燃比をリッチ状態とする排気リッチ手段6,20と、リッチ状態の排気に対してプラズマを発生してHとCOに改質された改質ガスを生成するプラズマ発生手段4,5,20とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディーゼルエンジンの排気を浄化する排気浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンの排気中のパティキュレートを捕集して排気を浄化するパティキュレートフィルタを備えた排気浄化装置が知られている(例えば特許文献1参照)。このようなパティキュレートフィルタは、排気中のパティキュレートを捕集し続けると次第に目詰まりが生じて排気を浄化する能力が低下する。このため、目詰まりが生じた際にはパティキュレートを除去して、排気浄化能力を保つ必要がある。
【0003】
特許文献1記載の装置では、軽油をバーナで着火してHC及びCOを主成分とする気体を発生させ、さらにこの気体を改質触媒によってH及びCOを主成分とする気体に改質する。そして、この改質ガスを酸化触媒に向けて噴射し、酸化触媒で燃焼させることにより排気の温度を上昇させ、パティキュレートフィルタ内のパティキュレートを燃焼除去するようにしている。
【0004】
【特許文献1】特開2007−9701号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1記載の装置は、改質ガスを発生するために、空気供給装置やバーナ、改質触媒など多くの装置が必要となり、装置構成が複雑となって装置の大型化を伴う。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による排気浄化装置は、ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、排気中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、排気通路内のパティキュレートフィルタの上流側に配設された酸化触媒と、酸化触媒に至る排気通路内の排気の空燃比をリッチ状態とする排気リッチ手段と、リッチ状態の排気に対してプラズマを発生してHとCOに改質された改質ガスを生成するプラズマ発生手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、排気通路内のリッチ状態の排気に対してプラズマを発生してHとCOに改質された改質ガスを生成するようにしたので、簡易な構成により排気温度が上昇し、パティキュレートフィルタを再生することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図1,2を参照して本発明の排気浄化装置の一実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る排気浄化装置の全体構成を概略的に示す図である。ディーゼルエンジン1から排出された排気は、排気浄化部10で浄化される。エンジン1には発電機2が接続され、エンジン1の駆動力によって発電機2が駆動され、発電機2で発生した電力がバッテリ3に蓄電される。
【0009】
エンジン1には燃料噴射部6が設けられている。燃料噴射部6は図示しないシリンダヘッドに設けられた複数のインジェクタを有する。インジェクタには例えば高圧ポンプで高圧化された燃料がコモンレールを介して供給され、供給された燃料をインジェクタは燃焼室内に噴射する。噴射された燃料は、吸気通路を介して供給された吸気とともに燃焼室内で燃焼し、燃焼によって生じた排気が排気通路7に排出される。なお、燃料噴射部6の構成はコモンレール式に限定されない。
【0010】
燃料噴射部6における噴射は電子制御装置(以下、ECU)20により制御される。すなわちECU20は、エンジン1の回転数を検出する回転センサ16やアクセル開度を検出するアクセルセンサ等からの信号に応じて燃料噴射信号を出力し、燃料の噴射量(主噴射量)を制御する。さらに本実施の形態では、後述するようにパティキュレートフィルタ12の再生時に、燃料を主噴射させた後、ポスト噴射させ、排気通路7内の排気の空燃比を強制的にリッチ状態とする。
【0011】
排気通路7には排気浄化部10が設けられている。排気浄化部10は、プラズマ発生装置4と、酸化触媒11と、パティキュレートフィルタ(以下、DPF)12とを有する。
【0012】
プラズマ発生装置4には、電力供給装置5から電力が供給される。電力供給装置5は、バッテリ3から供給される直流電圧を交流電圧に変化するとともに、その周波数および交流電圧値を調整する。プラズマ発生装置4は、電力供給装置5からの電力により高電圧電極に高電圧を印加することによって排気中に放電し、プラズマを発生させる。このプラズマにより排気通路7内の燃料の未燃成分がHとCOに改質される。
【0013】
酸化触媒11は、白金やパラジウム等の触媒による酸化作用によって排気に含まれる微粒子からなるパティキュレート(以下、PM)を減少させる。また、酸化触媒11では、所定温度以上の燃料の未燃成分が触媒反応によって燃焼する。ここで、軽油が酸化触媒11において燃焼する温度(軽油の燃焼可能温度)はt1(例えば約220℃)であるのに対し、Hが酸化触媒11において燃焼して発熱を開始する温度(Hの燃焼可能温度)はt2(例えば約120℃)であり、COが還元して発熱を開始する温度(COの燃焼可能温度)はt3(例えば約200℃)である。
【0014】
DPF12は、例えばコージェライトのようなセラミックスからなる多孔質のハニカム構造であり、多孔質薄壁によって格子状に流路が区画される。各流路の入口と出口は、交互に目封じされ、DPF12に流入した排気に含まれるPMは、多孔質薄壁の内側表面で捕集される。これによりエンジン1からの排気が濾過され、PMが除去された排気が外部に排出される。捕集されたPMは、PMの燃焼可能温度であるt0(例えば600℃)以上の排気で燃焼し、DPF12が再生される。
【0015】
ECU20は、CPU,ROM,RAM,その他の周辺回路などを有する演算装置を含んで構成される。ECU20には、DPF12の前後の圧力を検出する圧力センサ13,14と、酸化触媒11の通過後の排気温度を検出する排気温度センサ15と、回転センサ16からの信号が入力される。また、エンジン負荷に対応するスロットル開度センサや油圧ポンプ圧力センサなどのエンジン負荷検出信号21も入力される。これらからの信号に基づきECU20は、燃料噴射信号を出力し、燃料噴射部16からの燃料噴射を制御するとともに、電力供給装置5に制御信号を出力し、プラズマ発生装置4の駆動を制御する。
【0016】
図2は、ECU20内のCPUで実行されるDPF再生処理の一例を示すフローチャートである。このフローチャートに示す処理は例えばエンジンキースイッチのオンによって開始され、所定周期毎に繰り返し実行される。DPF12の再生開始を別途指令することによって処理を開始するようにしてもよい。なお、ECU20は図示しない処理によって燃料噴射部16からの燃料の主噴射を行っている。
【0017】
ステップS1では、圧力センサ13,14からの検出信号に基づき、DPF12の前後の差圧ΔPが所定値Ptより大きいか否かを判定する。この処理はDPF12の再生の要否を判定するための処理である。すなわちDPF12でPMを捕集すると、目詰まりが発生して差圧ΔPが大きくなるため、DPF12の再生が必要と判定する。
【0018】
ステップS1が肯定されるとステップS2に進み、否定されると処理を終了する。ステップS2では、精密な制御のために、回転センサ16と排気温度センサ15からの検出信号、ECU20で検出されたエンジン負荷、および予め定められたエンジン1の制御マップに基づいて現在の運転状況を推定し、プラズマ発生装置4によるプラズマ発生の要否を判定する。すなわち、現在の排気温度だけでなく、エンジン回転数とエンジン負荷の両方またはいずれか一方を監視して、アイドリング時や急なエンジン負荷変動による排気温度の変動に応じて、排気に含まれる燃料の未燃成分を酸化触媒11にて燃焼できない場合に、プラズマ放電による燃料の改質が必要と判定する。なお、簡便には、排気温度センサ15の検出値が軽油の燃焼可能温度t1以下で、酸化触媒11を通過する排気がHの燃焼可能温度t2以上となる運転状況下で、プラズマ放電が必要な状況と判定してもよい。
【0019】
ステップS2が肯定されるとステップS3に進み、否定されるとステップS4に進む。ステップS4では、ポスト噴射用の燃料噴射信号を出力し、燃料噴射部6にて燃料の主噴射の直後に所定量q2の燃料をポスト噴射させ、空燃比をリッチ状態とする。次いで、ステップS8に進む。
【0020】
一方、ステップS3では、ポスト噴射用の燃料噴射信号を出力し、燃料噴射部6にて燃料の主噴射の直後に所定量q1の燃料をポスト噴射させ、空燃比をリッチ状態とする。この場合、q1はq2より大きく、プラズマ放電が必要な状況の場合には、よりリッチな状態とする。次いで、ステップS5で電力供給装置5に制御信号を出力し、プラズマ発生装置4からのプラズマ放電を開始する。これにより排気通路7内の燃料の未燃成分がHとCOに改質される。
【0021】
ステップS6では、排気温度センサ15により検出された排気温度がt1より高いか否か、すなわち酸化触媒11にて燃料である軽油が燃焼可能な温度まで排気温度が上昇したか否かを判定する。ステップS6が肯定されるとステップS7に進み、否定されるとステップS3に戻る。ステップS7では、電力供給装置5に制御信号を出力し、プラズマ発生装置4からのプラズマ放電を停止する。
【0022】
ステップS8では、排気温度がPMの燃焼可能温度t0より高いか否か、すなわちDPF12が再生されているか否かを判定する。ステップS8が肯定されるとステップS1に、否定されるとステップS4に戻り、同様の処理を繰り返す。
【0023】
本実施の形態の主要な動作を説明する。DPF12の前後の差圧ΔPが所定値Ptより大きくなると、燃料噴射部6にて燃料がポスト噴射され、排気通路7内の排気の空燃比がリッチ状態となる。この場合、排気温度が低くプラズマ放電が必要な状況にあれば、プラズマ放電が開始される(ステップS5)。これにより排気に含まれる燃料の未燃成分がHとCOに改質される。このとき排気がHの燃焼可能温度t2以上であれば、Hが酸化触媒11で燃焼し、排気温度が上昇する。Hの燃焼により排気温度がCOの燃焼可能温度t3(>t2)以上になると、COも燃焼する。
【0024】
とCOの燃焼により排気温度が軽油の燃焼可能温度t1(>t3)以上になると、プラズマ放電が終了する(ステップS7)。このときプラズマ放電が終了した後もポスト噴射は継続される(ステップS4)。このため排気通路7内の排気はリッチ状態であり、酸化触媒11で軽油が燃焼され、排気温度が上昇する。排気温度がPMの燃焼可能温度t0以上になると、DPF12に捕集されたPMが燃焼除去され、DPF12の前後差圧ΔPが小さくなる。差圧ΔPが所定値Pt以下になると、ポスト噴射が終了される。
【0025】
本実施の形態によれば以下のような作用効果を奏することができる。
(1)排気通路7に酸化触媒11とDPF12を配設するとともに、プラズマ発生装置4を設け、さらに燃料噴射部6から燃料をポスト噴射することにより空燃比をリッチ状態とし、このリッチ状態の排気に対してプラズマ発生装置4からプラズマを発生してHとCOの改質ガスを生成するようにした。生成されたHは120℃程度の低温から燃焼するため、これにより排気温度を容易に高めることができ、DPF12内のPMを燃焼除去することができる。すなわち改質ガスを生成するためのバーナ等が不要であり、装置を大型化することなく簡易な構成によりDPF12の再生が可能である。
【0026】
(2)燃料噴射部6のインジェクタから燃料を主噴射後、ポスト噴射することにより排気の空燃比をリッチ状態としたので、軽油供給装置等を別途設ける必要がなく、構成が容易である。
(3)酸化触媒11を通過する排気の温度が低くプラズマ放電が必要な状況下でプラズマ発生装置12からプラズマを発生させ、その後、排気温度が軽油の燃焼可能温度t1以上になるとプラズマの発生を停止するようにした。これにより必要以上に電力供給装置5から高電圧が印加されず、消費電力を節約できる。
(4)プラズマ放電が必要な状況にある場合のポスト噴射量q1をその状況にない場合のポスト噴射量q2よりも多くしたので、プラズマ放電が必要な状況下では放電プラズマ改質によってHとCOのガスが発生しやすくなり、酸化触媒11での燃焼を短時間で開始することができる。
【0027】
なお、上記実施の形態では、ディーゼルエンジン1の燃料噴射部6のインジェクタから燃料をポスト噴射することにより排気の空燃比をリッチ状態としたが、ポスト噴射以外の構成によってリッチ状態としてもよく、排気リッチ手段は上述したものに限らない。酸化触媒11を通過する排気がHの燃焼可能温度t2以上となる運転状況下でプラズマ発生装置12からプラズマを発生して、燃料の未燃成分からHとCOに改質された改質ガスを生成し、排気温度が軽油の燃焼可能温度t1以上になるプラズマの発生を停止するようにしたが、プラズマ発生手段の構成はこれに限らない。例えば所定時間だけプラズマを発生させるようにしてもよく、ECU20における処理は図2に示した以外のものであってもよい。すなわち、本発明の特徴、機能を実現できる限り、本発明は実施の形態の排気浄化装置に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の実施の形態に係る排気浄化装置の全体構成を概略的に示す図。
【図2】図1のECUにおける処理の一例を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0029】
1 ディーゼルエンジン
4 プラズマ発生装置
5 電力供給装置
6 燃料噴射部
11 酸化触媒
12 パティキュレートフィルタ(DPF)
15 排気温度センサ
20 電子制御装置(ECU)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジンの排気通路に配設され、排気中のパティキュレートを捕集するパティキュレートフィルタと、
前記排気通路内の前記パティキュレートフィルタの上流側に配設された酸化触媒と、
前記酸化触媒に至る排気通路内の排気の空燃比をリッチ状態とする排気リッチ手段と、
前記リッチ状態の排気に対してプラズマを発生してHとCOに改質された改質ガスを生成するプラズマ発生手段とを備えることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気浄化装置において、
前記排気リッチ手段は、前記ディーゼルエンジンの燃料噴射用のインジェクタからポスト噴射させることにより空燃比をリッチ状態とすることを特徴とする排気浄化装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の排気浄化装置において、
前記プラズマ発生手段は、前記酸化触媒を通過する排気がHの燃焼可能温度以上となる運転状況下でプラズマの発生を開始することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排気浄化装置において、
前記プラズマ発生手段は、プラズマ発生の開始後、排気温度が燃料の燃焼可能温度以上になるとプラズマの発生を停止することを特徴とする排気浄化装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の排気浄化装置において、
前記プラズマ発生手段は、排気温度とエンジン回転数およびまたはエンジン負荷に基づいて、プラズマ放電が必要な運転状況にあるか否かを判定し、プラズマ放電が必要な運転状況にあると判定すると、プラズマの発生を開始することを特徴とする排気浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−77916(P2010−77916A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247796(P2008−247796)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】