説明

排気装置の支持構造

【課題】支持強度を確保することができると共に、部品点数及び作業工数を削減することができる排気装置の支持構造を提供する。
【解決手段】内燃機関50の排気ガスを外部に排出する排気装置70と、排気装置70に設けられ、排気装置70を車両10側に取り付ける支持部材80と、を備え、支持部材80は、締結部材61が内部に挿通され、車両10側に固定される円筒部81と、円筒部81の外周面のうち、排気装置70から離間する外半面81aに沿わせて囲むように一体に形成されると共に、排気装置70に臨む内半面81b側において排気装置70に連結される連結部材82と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気装置の支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の排気装置の支持構造としては、排気装置の排気管と雌ねじ部が内部に形成された円筒状のナットとを、一対の構成された半体にて相互に固着することにより、排気装置を支持するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平3−118219号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載の支持構造では、一対の半体の上端部とナットの外周面の下半面とがすみ肉溶接により固着され、ナットに螺着するボルトによりゴムブッシュが固定されているが、このゴムブッシュがオフセットしていると共に、一対の半体の上端部が先細り形状に形成されているため、溶接部に作用する応力が大きくなる可能性がある。そこで、上記特許文献1に記載の支持構造では、コ字形状に形成した半体を相互に接合して箱型に形成したのち、一対の半体の上端部をナットにロ字形状に溶接することで溶接長さを稼いで接合強度を高めている。しかしながら、このような対策構造では、部品点数が増加する上に溶接作業が増えて、作業工数が増加するため、支持強度を確保しながら簡素な構造が望まれていた。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、支持強度を確保することができると共に、部品点数及び作業工数を削減することができる排気装置の支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、車両の内燃機関の排気ガスを外部に排出する排気装置と、排気装置に設けられ、排気装置を車両側に取り付ける支持部材と、を備える排気装置の支持構造において、支持部材は、締結部材が内部に挿通され、車両側に固定される円筒部と、円筒部の外周面のうち、排気装置から離間する外半面に沿わせて囲むように一体に形成されると共に、排気装置に臨む内半面側において排気装置に連結される連結部材と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の構成に加えて、連結部材が単一部品で構成され、連結部材の中間部が、円筒部を囲んで且つ円筒部に密着された状態で円筒部に固着され、連結部材の両端部が、排気装置にそれぞれ固着されることを特徴とする。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項2に記載の構成に加えて、連結部材と円筒部との密着範囲が、円筒部の外周長さの半分以上に設定されることを特徴とする。
【0009】
請求項4に係る発明は、請求項2又は3に記載の構成に加えて、連結部材の端部が、連結部材の中間部よりも幅広に形成されることを特徴とする。
【0010】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の構成に加えて、連結部材の端部が、排気装置の長手方向に沿って折り曲げられると共に、排気装置の外周面に沿って断面視円弧状に形成されることを特徴とする。
【0011】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれか1項に記載の構成に加えて、円筒部と排気装置との間に隙間が設けられることを特徴とする。
【0012】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の構成に加えて、円筒部が長円状に形成され、連結部材と円筒部との固着位置が、円筒部の円弧面上に配置されることを特徴とする。
【0013】
請求項8に係る発明は、請求項1〜7のいずれか1項に記載の構成に加えて、連結部材にアース取付部が一体に形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、支持部材は、締結部材が内部に挿通され、車両側に固定される円筒部と、円筒部の外周面のうち、排気装置から離間する外半面に沿わせて囲むように一体に形成されると共に、排気装置に臨む内半面側において排気装置に連結される連結部材と、を備えるため、従来のような溶接部における応力集中を抑制して、支持強度を確保することができる。また、簡素な構造なため、部品点数及び作業工数を削減することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、連結部材が単一部品で構成され、連結部材の中間部が、円筒部を囲んで且つ円筒部に密着された状態で円筒部に固着され、連結部材の両端部が、排気装置にそれぞれ固着されるため、連結部材に作用する応力を均等に分散することができ、支持強度を高めることができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、連結部材と円筒部との密着範囲が、円筒部の外周長さの半分以上に設定されるため、連結部材が円筒部にかしめ固定されることで、支持強度を高めることができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、連結部材の端部が、連結部材の中間部よりも幅広に形成されるため、排気装置への溶接長さを稼ぐことができ、支持強度を高めることができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、連結部材の端部が、排気装置の長手方向に沿って折り曲げられると共に、排気装置の外周面に沿って断面視円弧状に形成されるため、連結部材が3次元的に曲げられて、連結部材の剛性を高めることができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、円筒部と排気装置との間に隙間が設けられるため、排気装置から伝達される熱を抑えて、熱影響を抑制することができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、円筒部が長円状に形成され、連結部材と円筒部との固着位置が、円筒部の直線面上と比較して密着度が低くなる円筒部の円弧面上に配置されるため、固着により連結部材と円筒部の密着度を高めることができ、一体化効果により支持強度の高めることができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、連結部材にアース取付部が一体に形成されるため、部品を共用化して、部品点数を削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る排気装置の支持構造の一実施形態が搭載された自動二輪車を説明する左側面図である。
【図2】図1に示す内燃機関の周辺の左側面図である。
【図3】図1に示す内燃機関の周辺の右側面図である。
【図4】図2に示す排気管の左側面図である。
【図5】図4に示す排気管の上面図である。
【図6】図4に示す支持部材の左側面図である。
【図7】図6に示す支持部材の上面図である。
【図8】図6に示す支持部材の正面図である。
【図9】図6に示す支持部材を矢印A方向から見た図である。
【図10】本発明に係る排気装置の支持構造の変形例を説明する図6に対応する左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る排気装置の支持構造の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、図面は符号の向きに見るものとし、以下の説明において、前後、左右、上下は、操縦者から見た方向に従い、図面に車両の前方をFr、後方をRr、左側をL、右側をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0024】
本実施形態の自動二輪車10は、図1及び図2に示すように、車体フレーム11を、前端に設けられるヘッドパイプ12と、ヘッドパイプ12から後方且つ下方に延びる左右一対のメインフレーム13と、左右一対のメインフレーム13の前部下面から下方に延びる左右一対のダウンフレーム14と、左右一対のメインフレーム13の後端部に連結され下方に延びる左右一対のピボットプレート15と、左右一対のピボットプレート15の上部に連結され後方且つ上方に延びる左右一対のシートフレーム16と、から構成し、メインフレーム13、ダウンフレーム14、及びピボットプレート15に内燃機関50が取り付けられる。
【0025】
また、自動二輪車10は、ヘッドパイプ12に操舵自在に支持されるフロントフォーク21と、フロントフォーク21の下端部に回転可能に支持される前輪WFと、フロントフォーク21の上端部に取り付けられる操舵用のハンドル22と、ピボットプレート15に揺動自在に支持されるスイングアーム23と、スイングアーム23の後端部に回転可能に支持される後輪WRと、メインフレーム13上に取り付けられる収納ボックス24と、シートフレーム16上に取り付けられる燃料タンク25と、燃料タンク25上に取り付けられるシート26と、を備える。
【0026】
なお、図1中の符号31はフロントカウル、32はフロントサイドカウル、33はシートカウル、34はリヤカウル、35はヘッドライト、36はサイドミラー、37はフロントフェンダ、38はメインステップ39はピリオンステップである。
【0027】
内燃機関50は、図2及び図3に示すように、クランクケース51と、クランクケース51の前方上部に取り付けられるシリンダブロック52と、シリンダブロック52の上端部に取り付けられるシリンダヘッド53と、シリンダヘッド53の上端部に取り付けられるシリンダヘッドカバー54と、クランクケース51の左側面に取り付けられる発電機カバー55と、クランクケース51の右側面に取り付けられるクラッチカバー56と、を備える。そして、シリンダヘッド53の不図示の排気ポートには、内燃機関50の排気ガスを外部に排出する排気装置70が接続されている。
【0028】
排気装置70は、図2〜図5に示すように、シリンダヘッド53の不図示の排気ポートに接続される排気管71と、排気管71の下流端に接続されるマフラー72と、を備える。そして、排気管71は、その中間部分に設けられる支持部材80がピボットプレート15の下端部に形成されるブラケット15aに締結ボルト(締結部材)61で締結されることによって、ブラケット15aに取り付けられる(図3参照)。
【0029】
支持部材80は、図6〜図9に示すように、締結ボルト61が内部に挿通され、ピボットプレート15のブラケット15aに固定される長円状の円筒部81と、円筒部81の外周面のうち、排気管71から離間する外半面81aに沿わせて囲むように一体に形成されると共に、排気管71に臨む内半面81b側において排気管71に連結される連結部材82と、を備える。また、図4に示すように、円筒部81内には、ゴム製のマウント62が嵌合されており、締結ボルト61は、マウント62に形成される長円状のボルト挿通穴62aに挿通されている。
【0030】
連結部材82は、単一部品で構成され、円筒部81を囲んで且つ円筒部81に密着された状態で円筒部81に溶接により固着される中間部83と、中間部83の前側端部から下方に延び排気管71に溶接により固着される前側脚部84と、中間部83の後側端部から下方に延び排気管71に溶接により固着される後側脚部85と、を備える。また、連結部材82の中間部83と円筒部81との密着範囲は、円筒部81の外周長さの半分以上に設定されている。また、本実施形態では、前側及び後側脚部84,85により、円筒部81と排気管71との間に隙間Sが設けられている。
【0031】
また、連結部材82の中間部83と円筒部81との固着位置は、円筒部81の前後の円弧面上にそれぞれ配置されており、中間部83の上記前後の固着位置に対応する部分には、円筒部81と連結部材82とを溶接するための長穴83aがそれぞれ形成されている。
【0032】
また、連結部材82の後側脚部85は、連結部材82の中間部83よりも幅広に形成されている。さらに、後側脚部85は、排気管71の長手方向に沿って後方に折り曲げられると共に、排気管71の外周面に沿って断面視円弧状に形成されている。
【0033】
また、連結部材82の中間部83の上面には、不図示のアース配線を接続するためのアース取付部86が上方に向けて一体に突設されている。
【0034】
以上説明したように、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、支持部材80は、締結ボルト61が内部に挿通され、車両10側に固定される円筒部81と、円筒部81の外周面のうち、排気管71から離間する外半面81aに沿わせて囲むように一体に形成されると共に、排気管71に臨む内半面81b側において排気管71に連結される連結部材82と、を備えるため、従来のような溶接部における応力集中を抑制して、支持強度を確保することができる。また、簡素な構造なため、部品点数及び作業工数を削減することができる。
【0035】
また、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、連結部材82が単一部品で構成され、連結部材82の中間部83が、円筒部81を囲んで且つ円筒部81に密着された状態で円筒部81に固着され、連結部材82の前側及び後側脚部84,85が、排気管71にそれぞれ固着されるため、連結部材82に作用する応力を均等に分散することができ、支持強度を高めることができる。
【0036】
また、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、連結部材82と円筒部81との密着範囲が、円筒部81の外周長さの半分以上に設定されるため、連結部材82に作用する応力を分散して、支持強度を高めることができる。
【0037】
また、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、連結部材82の後側脚部85が、連結部材82の中間部83よりも幅広に形成されるため、排気管71への溶接長さを稼ぐことができ、支持強度を高めることができる。
【0038】
また、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、連結部材82の後側脚部85が、排気管71の長手方向に沿って折り曲げられると共に、排気管71の外周面に沿って断面視円弧状に形成されるため、連結部材82が3次元的に曲げられて、連結部材82の剛性を高めることができる。
【0039】
また、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、円筒部81と排気管71との間に隙間Sが設けられるため、排気管71から伝達される熱を抑えて、支持部材80への熱影響を抑制することができる。
【0040】
また、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、円筒部81が長円状に形成され、連結部材82と円筒部81との固着位置が、円筒部81の直線面上と比較して密着度が低くなる円筒部81の円弧面上に配置されるため、固着により連結部材82と円筒部81の密着度を高めることができ、一体化効果により支持強度の高めることができる。
【0041】
また、本実施形態の排気装置70の支持構造によれば、連結部材82にアース取付部86が一体に形成されるため、部品を共用化して、部品点数を削減することができる。
【0042】
なお、本実施形態の変形例として、図10に示すように、前側及び後側脚部84,85を円筒部81の内半面81bにかしめることによって、円筒部81に連結部材82を固定してもよい。この場合、溶接を行う必要はないが、かしめに合わせて溶接を行ってもよい。
【0043】
また、本変形例では、かしめにより前側及び後側脚部84,85が円筒部81の内半面81bの下側まで回り込むので、連結部材82と円筒部81との密着範囲が上記実施形態よりも広くなる。これにより、連結部材82に作用する応力を更に分散して、支持強度を更に高めることができる。
【0044】
なお、本発明は上記実施形態に例示したものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0045】
10 自動二輪車
50 内燃機関
61 締結ボルト(締結部材)
62 マウント
70 排気装置
71 排気管
72 マフラー
80 支持部材
81 円筒部
81a 外半面
81b 内半面
82 連結部材
83 中間部
84 前側脚部(端部)
85 後側脚部(端部)
86 アース取付部
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(10)の内燃機関(50)の排気ガスを外部に排出する排気装置(70)と、
前記排気装置に設けられ、前記排気装置を車両側に取り付ける支持部材(80)と、を備える排気装置の支持構造において、
前記支持部材は、
締結部材(61)が内部に挿通され、前記車両側に固定される円筒部(81)と、
前記円筒部の外周面のうち、前記排気装置から離間する外半面(81a)に沿わせて囲むように一体に形成されると共に、前記排気装置に臨む内半面(81b)側において前記排気装置に連結される連結部材(82)と、を備えることを特徴とする排気装置の支持構造。
【請求項2】
前記連結部材(82)が単一部品で構成され、
前記連結部材の中間部(83)が、前記円筒部(81)を囲んで且つ前記円筒部に密着された状態で前記円筒部に固着され、
前記連結部材の両端部(84,85)が、前記排気装置(70)にそれぞれ固着されることを特徴とする請求項1に記載の排気装置の支持構造。
【請求項3】
前記連結部材(82)と前記円筒部(81)との密着範囲が、前記円筒部の外周長さの半分以上に設定されることを特徴とする請求項2に記載の排気装置の支持構造。
【請求項4】
前記連結部材(82)の端部(85)が、前記連結部材の中間部(83)よりも幅広に形成されることを特徴とする請求項2又は3に記載の排気装置の支持構造。
【請求項5】
前記連結部材(82)の端部(85)が、前記排気装置(70)の長手方向に沿って折り曲げられると共に、前記排気装置の外周面に沿って断面視円弧状に形成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の排気装置の支持構造。
【請求項6】
前記円筒部(81)と前記排気装置(70)との間に隙間(S)が設けられることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の排気装置の支持構造。
【請求項7】
前記円筒部(81)が長円状に形成され、
前記連結部材(82)と前記円筒部との固着位置が、前記円筒部の円弧面上に配置されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の排気装置の支持構造。
【請求項8】
前記連結部材(82)にアース取付部(86)が一体に形成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の排気装置の支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−32724(P2013−32724A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168545(P2011−168545)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】