説明

排気装置

【課題】本発明は、隣接する排気管同士を連通するジョイント部材の取付工数の増加を抑えることができる排気装置を提供することを課題とする。
【解決手段】接続部67は、隣接する排気管31、32に各々開けた開口82と、これら開口82を覆う皿状のジョイント部材79とからなる。ジョイント部材79の外周79uには溶接が施されており、気密性が確保されている。このジョイント部材79の外周79uを排気管31、32に取り付けることで、ジョイント部材79と排気管31、32とで囲まれる連通空間83を形成し、開口82と連通空間83とを介して隣接する排気管31、32の間に排気ガスが通過するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのシリンダブロックから延設される複数本の排気管と、これらの排気管の間に設けられ排気管同士を連通する連通部と、を備える排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンのシリンダブロックから延設される複数本の排気管と、これらの排気管の間に設けられ排気管同士を連通する連通部と、この連通部の後方に設けられ排気管同士を集合する集合管と、を備える排気装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特許第3321958号公報(図3)
【0003】
特許文献1の図3において、排気装置14(符号は同公報のものを使用する。以下同じ。)は、4本の排気管15〜18と、これらの排気管15〜18のうちの隣接する2本の排気管16、17の間に設けられ排気管16、17間を連通する連通部としてのバイパス管35と、このバイパス管35の後方に設けられ排気管15、16が集合する1次集合箱25及び排気管17、18が集合する1次集合箱26と、これら1次集合箱25、26の後方に設けられ1次集合箱25、26が集合する2次集合箱29とからなる。
【0004】
ところで、バイパス管35の両端部は、バイパス管35と排気管16、17間の気密性を確保するため、バイパス管35の全周にわたって溶接を行うことにより排気管16、17に取り付けられている。
【0005】
しかし、筒状の部材であるバイパス管35の外周を全周にわたり溶接する場合に、作業者は、溶接箇所に合わせて姿勢を変えながら溶接する必要がある。このため、溶接作業は煩雑となり、バイパス管35(以下、「ジョイント部材」とも云う。)を排気管16、17に取り付ける工数が増加するという問題がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、隣接する排気管同士を連通するジョイント部材の取付工数の増加を抑えることができる排気装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、エンジンのシリンダブロックから延設される複数本の排気管と、これらの排気管の間に設けられ排気管同士を連通する連通部と、を備える排気装置において、複数本の排気管のうちの隣接する排気管は、並列に配置されるとともに、連通部よりも上流側に隣接する排気管が集合する集合部を備え、この集合部よりも上流側に隣接する排気管が連通する接続部を備え、この接続部は、隣接する排気管に各々開けた開口と、これら開口を覆う皿状のジョイント部材とからなり、このジョイント部材の外周を排気管に取り付けることで、ジョイント部材と排気管とで囲まれる連通空間を形成し、開口と連通空間とを介して隣接する排気管の間に排気ガスが通過するように構成することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明では、排気管とジョイント部材は、各々金属を成形したものであり、ジョイント部材を、排気管に溶接にて接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に係る発明では、隣接する排気管は、集合部よりも上流側に、これら隣接する排気管が互いに連通する接続部を備える。この接続部には、皿状のジョイント部材が設けられており、この皿状のジョイント部材と隣接する排気管との間に連通空間を形成し、この連通空間に排気ガスが通過するように構成する。ジョイント部材と排気管との間に、気密性が確保されるように、ジョイント部材は、その全周にわたり排気管に密着させて取り付けられている。
【0010】
本発明では、ジョイント部材は皿状の部材としたので、排気管の一方の側からの作業だけで、ジョイント部材の外周全体を排気管に密着させて取り付けることができる。
排気管の一方の側からの作業だけで、ジョイント部材の外周を全周にわたり排気管に密着させて取付可能となるため、取付の作業性を大幅に高めることができ、取付工数の増加を抑えることができる。また、取付作業を機械化する場合には、一方の側からの作業で済むため、設備の構造を簡便にでき、設備費を抑えることができる。
【0011】
請求項2に係る発明では、排気管にジョイント部材を重ね、ジョイント部材を排気管に溶接にて接合させる。皿状のジョイント部材をその外周の全周にわたり排気管に溶接するので、排気管の剛性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を実施するための最良の形態を添付図に基づいて以下に説明する。図中、「左」、「右」、「上」、「下」、「前」、「後」は各々運転者からみた方向を示す。なお、図面は符号の向きにみるものとする。
図1は本発明に係る排気装置を備える自動二輪車の左側面図であり、自動二輪車10は、車体フレーム11を備え、この車体フレーム11を、前端に設けられるヘッドパイプ12と、このヘッドパイプ12からエンジン13の上部を通過させた後下方に延出される左右一対のメインフレーム14、14(手前側の符号14のみ示す。)と、ヘッドパイプ12からエンジン13の前部を通過させて下方に延出される左右一対のダウンフレーム15、15(手前側の符号15のみ示す。)と、これらのメインフレーム14、14の屈曲部14k、14k(手前側の符号14kのみ示す。)から後方に延出されるシートレール16、16(手前側の符号16のみ示す。)と、これらのシートレール16、16を支持するようにメインフレーム14、14の下端部との間に連結されるシートステー17、17(手前側の符号17のみ示す。)とで構成した車両である。
【0013】
ヘッドパイプ12に操舵軸18が回動可能に設けられ、この操舵軸18にフロントフォーク21が取り付けられ、このフロントフォーク21の下端に前輪22が取り付けられ、フロントフォーク21の上部に操舵用ハンドル23が取り付けられている。
【0014】
メインフレーム14、14(手前側の符号14のみ示す。)の後部には、ピボット軸24を介してリヤスイングアーム25が上下揺動可能に設けられ、このリヤスイングアーム25を揺動可能に支持するリンク機構26が設けられ、このリンク機構26とリヤスイングアーム25の間にリヤクッションユニット27が設けられ、リヤスイングアーム25の後端に後輪28が設けられている。車体30には車体フレーム11が含まれている。
【0015】
エンジン13のシリンダブロック33から、左右の側方に複数本の排気管31、32、31、32(手前側の符号31、32のみ示す。)が延設され、これらの排気管31、32、31、32のうち、左側方に設けられている排気管31、32は、前方から後方に屈曲された後、後方に延出するように設けられている。左側方に設けられている排気管31、32の後端部は、集合部61に連結され1本になるとともに、この集合部61は、消音器36に連結される。なお、消音器36は、シートステー17から後方に延出されるブラケット38に取り付けられる。
シリンダブロック33の右側方については、上述した左側方と同様の構成にて、排気管、集合管、消音器が接続されている。
【0016】
エンジン13は、ダウンフレーム15の下端部でエンジン13の前部を支持する前支持部41と、メインフレーム14の下端部でエンジン13の後下部を支持する後下支持部42と、ピボット軸24よりも上方でメインフレーム14の後部14bを介してエンジン13の後部を保持する後支持部43とによって支持されている。
【0017】
図中、45はフロントブレーキユニット、46はリヤブレーキユニット、47は燃料タンク、48は乗員シート、49はラジエータユニット、51はフロントカウル、52はフロントフェンダ、53はメインカウル、54はリヤフェンダ、55はサイドトランク、56はリヤトランク、57はメインスタンドである。
【0018】
図2は本発明に係る排気装置を説明する平面図であり、排気装置60は、複数本の排気管から構成され隣接する排気管31、32、31、32と、これら隣接する排気管31、32、31、32の後端部に設けられ隣接する排気管31、32、31、32が集合する集合部61、61と、これらの集合部61、61の後端部に連結されている後部排気管62、62と、これら後部排気管62、62の間に設けられ後部排気管62、62同士を連通する連通部の1つとしての後連通部63と、を備える。
【0019】
なお、排気管31、32の総数は、エンジン(図1の符号13)の気筒数に等しい。本実施例において、エンジンの気筒数は4つであるが、エンジンの気筒数に合わせて前部排気管31、32の数は変更するものである。
後部排気管62、62には出口部66、66が設けられ、これらの出口部66、66には、各々消音器(図1の符号36)が連結される。
【0020】
図中、69、69は触媒ユニット、71・・・(・・・は複数を示す。以下同じ。)は排気ガスの入口、72・・・は排気ガスの入口71・・・に設けられているフランジ部である。フランジ部72・・・は、隣接する排気管31、32、31、32をエンジンのシリンダブロック(図1の符号33)に固定する部材である。
【0021】
図3は本発明に係る排気装置の一部を説明する斜視図であり、排気装置の右側部分を示す。
排気管31、32は、並列に配置されているとともに、隣接する排気管31、32の間に排気ガスが通過する接続部67が備えられている。接続部67は、隣接する排気管31、32の一部が連通するものであり、隣接する排気管31、32が集合する集合部61よりも上流側に配置されている。接続部67の詳細な構造については後述する。
なお、左側の排気管31、32について、上記と同じ構成であり説明を省略する。
【0022】
排気装置60は、集合部61よりも上流側で且つ後連通部63よりも上流側に、隣接する排気管31、32が集合する集合部61を備え、この集合部61よりも上流側に隣接する排気管31、32が連通する連通部としての接続部67を備える。
排気装置60は、前後に、接続部67と、集合部61と、後連通部63とをこの順に備える。連通部64には、接続部67と後連通部63とを含む。
【0023】
隣接する排気管31、32は一部が並列に配置され、並列に配置された部分73に接続部67が設けられている。この接続部67は、車体の内方に向け配置されている。
接続部67は外方から見え難い位置に設けられているので、車両の外観性を損なうことはなく好適である。
74は連通部(図2の符号63)が連結される連通口、75は排気装置60を車体に取り付けるブラケットである。
【0024】
図4は図3の4部拡大図であり、隣接する排気管31、32の側面76、76を合わせ、これらの側面76、76を合わせた合わせ部77に沿って合わせ部77から排気ガスが漏れないように溶接を施した後、皿状のジョイント部材79を所定の位置にセットし、このジョイント部材79の外周と隣接する排気管31、32の側面76、76の間を全周にわたり溶接した。
【0025】
隣接する排気管31、32とジョイント部材79は、例えば、ステンレス鋼、チタン、炭素鋼などの金属を成形したものであり、ジョイント部材79を、隣接する排気管31、32に溶接にて接合する。
【0026】
ジョイント部材79は、隣接する排気管31、32に溶接にて接合されるので、排気管31、32にジョイント部材79を重ねるように固定することができる。このとき、皿状のジョイント部材79をその外周の全周にわたり排気管31、32との境界部81に溶接を施したので、補強部材として排気管31、32を含む排気装置60の剛性を高めることができる。
【0027】
図5は図4の5−5線断面図であり、排気管31に開口82が設けられ、この開口82を覆うようにジョイント部材79が溶接されている。ジョイント部材79の外周は溶接されているので、境界部81における気密性を確保することができる。
【0028】
図6は図4の6−6線断面図であり、接続部67は、隣接する排気管31、32に各々開けた開口82、82と、これら開口82、82を覆う皿状のジョイント部材79とからなる。
ジョイント部材79の外周79uには溶接が施されており、気密性が確保されている。
【0029】
すなわち、このジョイント部材79の外周79uを排気管31、32に取り付けることで、ジョイント部材79と排気管31、32とで囲まれる連通空間83を形成し、開口82、82と連通空間83とを介して隣接する排気管31、32の間に排気ガスが通過するように構成する。
【0030】
図7は図4の7−7線断面図であり、前図と同様にジョイント部材79の外周79uには溶接が施されており、隣接する排気管31、32の合わせ部77とジョイント部材79間には溶接が施されているので、接続部67の気密性を確保することができる。
【0031】
図6に戻って、接続部67には、皿状のジョイント部材79が設けられており、この皿状のジョイント部材79と隣接する排気管31、32との間に排気ガスが通過するように構成する。ジョイント部材79の外周は、排気ガスが接続部67から漏れることがないように、全周にわたり排気管31、32に密着させて取り付けられている。つまり、ジョイント部材79と排気管16、17との間に気密性が確保されるようにジョイント部材79取り付ける。
【0032】
以上に述べた接続部を備える排気装置の作用を次に述べる。
図8はジョイント部材を排気管に取り付けることを説明する作用図及びその比較例図である。
(a)は実施例を示し、皿状のジョイント部材79を隣接する排気管31、32の所定位置に取り付ける。ジョイント部材79は皿状の部材とし、この皿状のジョイント部材79は、隣接する排気管31、32の上方から排気管31、32に取り付けられている。ジョイント部材79の外周全体を排気管31、32に密着させて取り付けるときに、溶接棒Gがジョイント部材79に干渉することなく、排気管31、32の一方の側からの作業だけで、ジョイント部材79と排気管31、32との間に気密性が確保されるように、取り付けることができる。
なお、溶接法は、手溶接の他、半自動溶接や自動溶接でも良い。
【0033】
(b)は比較例を示し、筒状のジョイント部材79Bを隣接する排気管31B、32Bの所定位置に取り付ける。ジョイント部材79Bは筒状の部材であるため、ジョイント部材79Bの外周全体を排気管31B、32Bに密着させて取り付ける場合に、溶接棒Gがジョイント部材79Bに干渉して溶接棒Gの先が溶接部に届くように、作業者は、溶接箇所に合わせて姿勢を変えながら溶接する。このため、煩雑な作業となり取付工数が増加する。加えて、この溶接作業を機械化する場合に、装置の構造が複雑化し設備費が嵩む。
【0034】
この点、本発明では、排気管31、32の一方の側からの作業で、ジョイント部材79の外周全体を排気管31、32に密着させて取り付けることができるため、取付の作業性を大幅に高めるとともに、取付工数の増加を抑えることができる。加えて、機械化する場合において、一方の側からの作業で済むため、構造が簡便となり、設備費を抑えることができる。
【0035】
尚、本発明は、実施の形態では自動二輪車に適用したが、四輪自動車にも適用可能であり、一般の車両に適用することは差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の排気装置は、自動二輪車に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係る排気装置を備える自動二輪車の左側面図である。
【図2】本発明に係る排気装置を説明する平面図である。
【図3】本発明に係る排気装置の一部を説明する斜視図である。
【図4】図3の4部拡大図である。
【図5】図4の5−5線断面図である。
【図6】図4の6−6線断面図である。
【図7】図4の7−7線断面図である。
【図8】ジョイント部材を排気管に取り付けることを説明する作用図及びその比較例図である。
【符号の説明】
【0038】
12…エンジン、31…排気管、32…排気管、33…シリンダブロック、60…排気装置、61…集合部、64…連通部、67…接続部、79…ジョイント部材、79u…ジョイント部材の外周、82…開口、83…連通空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンのシリンダブロックから延設される複数本の排気管と、これらの排気管の間に設けられ排気管同士を連通する連通部と、を備える排気装置において、
前記複数本の排気管のうちの隣接する排気管は、並列に配置されるとともに、前記連通部よりも上流側に前記隣接する排気管が集合する集合部を備え、この集合部よりも上流側に前記隣接する排気管が連通する接続部を備え、
この接続部は、前記隣接する排気管に各々開けた開口と、これら開口を覆う皿状のジョイント部材とからなり、このジョイント部材の外周を前記排気管に取り付けることで、前記ジョイント部材と前記排気管とで囲まれる連通空間を形成し、
前記開口と前記連通空間とを介して前記隣接する排気管の間に排気ガスが通過するように構成することを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記排気管と前記ジョイント部材は、各々金属を成形したものであり、前記ジョイント部材を、前記排気管に溶接にて接合することを特徴とする請求項1記載の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−138646(P2008−138646A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−328621(P2006−328621)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【出願人】(000175766)三恵技研工業株式会社 (50)
【Fターム(参考)】