説明

排水処理方法

【課題】トナー製造における排水の着色除去を行う。
【解決手段】排水処理方法は、静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する少なくとも着色成分を含む排水を処理対象とする排水処理方法であって、凝集沈殿処理または加圧浮上処理の後に、前記製造工程から発生する着色成分を有機物酸化処理により除去する工程を備え、前記着色成分を除去する工程が、促進酸化処理からなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の製造工程から発生する少なくとも着色成分を含む排水を処理対象とする排水処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、トナー製造工場から発生する排水として、界面活性剤水溶液や、顔料分散液等の着色成分、ワックス分散液、エマルション水溶液等を含有する排水が発生している。これらの排水には、上述した界面活性剤や、着色成分である顔料等が含まれているため、このままの状態で、河川や下水道等に排出することはできない。このため、これらの排水は、工場内の排水処理施設にて処理された後に外部に排出される。排水処理としては、凝集沈殿処理が利用される場合が多い。凝集沈殿処理とは、五訂公害防止の技術と法規水質編(通商産業省環境立地局監修、平成13年発行)p141にも記載されているように、排水処理の分野において最も一般的に用いられている固液分離操作の一つであり、広く用いられている。凝集沈殿処理は、排水に凝集剤を添加することによりフロック(凝集により生じた粗大粒子)を生じさせ、水とフロックとの比重差により、フロックが沈殿し固液分離を行う処理方法である。こうして固体として分離されたフロックは、産業廃棄物の汚泥として処理され、固体を分離した水は、河川や下水道等へ排出されている。
【0003】
特許文献1では、有機物質含有排水を、粒状無機担体に触媒活性成分を担持させてなる触媒酸化法による排水処理方法を用いることにより、有機性排水の処理方法が開示されている。しかし、この方法を着色成分を含む水溶液の処理に用いる場合、その着色成分と界面活性剤の作用により、メカニズムはよくわからないが、着色成分が除去しにくいという問題を生じてしまう。一方、特許文献2では、有機物酸化処理に、電気化学的除去工程を行う方法が開示されている。しかし、この方法は、有機物含有排水の処理は可能であるが、トナー製造工場から発生する全ての種類の排水にそのまま適用することはできない。
【0004】
【特許文献1】特開2003−251375号公報
【特許文献2】特開平6−121978号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
たとえば、トナー製造工場から発生する多成分含有排水の凝集沈殿処理では、フロックの沈殿槽等における沈降性が悪く、固液分離に際し非常に長時間の沈降処理が要求される。更に、排水中に含まれる顔料分散液等の着色成分を凝集沈殿処理するために、多量の凝集剤を添加する必要があることから、産業廃棄物として処理する汚泥が多量に発生するという問題がある。
【0006】
一般に、トナー製造工程から排出される割合が、全排水量に対して80重量%を占める界面活性剤水溶液を含有する排水と、着色成分を含有する排水を混合すると、メカニズムはよくわからないが、界面活性剤による着色成分の分散安定化作用により、凝集沈殿処理での沈降時間が長くなり、着色成分の除去が困難となり、凝集沈殿させ、着色成分を除去するために使用する無機凝集剤、例えば塩化第二鉄の添加量が増加し、その結果、凝集沈殿物の量、つまり、産業廃棄物として処理する汚泥が多量に発生する。これは、無機凝集剤として使用している塩化第二鉄の一定量が、排水中に含まれる界面活性剤と電荷中和反応し、凝集剤としての作用を阻害しているためと考えられる。
【0007】
また、近年、グリーンケミカルの意識が高まり、排水の着色除去も望まれてきている。一方、排水の着色除去のために活性炭を用いるのは有効な手段であるが、使用した活性炭の再生に多大なコストを要するという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、凝集剤使用量と汚泥の発生量を削減するとともに着色がほとんどないまたはない排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の特徴を有する。
【0010】
(1)静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する少なくとも着色成分を含む排水を処理対象とする排水処理方法であって、前記製造工程から発生する着色成分を、有機物酸化処理により除去する工程を備えた排水処理方法である。
【0011】
(2)上記(1)に記載の排水処理方法において、前記着色成分を処理する工程が、促進酸化処理からなる排水処理方法である。
【0012】
(3)静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する少なくとも着色成分を含む排水を処理対象とする排水処理方法であって、前記製造工程から発生する着色成分を含む排水に対し凝集沈殿処理を行った後、促進酸化処理により除去する工程とを備えた排水処理方法である。
【0013】
(4)静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する少なくとも着色成分を含む排水を処理対象とする排水処理方法であって、前記製造工程から発生する着色成分を含む排水の加圧浮上処理を行った後、促進酸化処理により除去する工程を備えた排水処理方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、製造工程から発生する、少なくとも着色成分を含有する排水の処理に使用する凝集剤量と、排水処理によって発生する汚泥の発生量を削減することができる。さらに、処理された排水に着色がほとんどないまたはなく、環境により配慮された排水処理を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
上記排水処理が必要な製造工程として、トナー製造工程を例にして以下に説明する。
【0016】
トナー製造工程は、大きくトナーの原材料となるラテックスポリマーの製造工程と、現像用トナーの製造方法に分けられる。以下に、それぞれについて一例を挙げ説明する。
【0017】
[ラテックスポリマーの製造工程]
ラテックスポリマーを生成するには、通常モノマーとアニオン性界面活性剤とを水に加え、攪拌してエマルションとする。モノマーエマルションが生成したら、該モノマーエマルションの25重量%以下(すなわち、少量のモノマーエマルション)と遊離基開始剤とを、水相に加えて混合し、所望の反応温度で種重合を開始する。種粒子の生成後、この種粒子含有組成物に更にモノマーエマルションを追加し、規定の温度で所望の時間、重合を続けて重合を完了し、ラテックスポリマーを生成させる。ラテックスポリマーが生成したら、後述の現像剤トナーの製造方法に記載した通り、着色剤とともに凝集させて凝集体粒子とし、次にこれを融合させてトナー粒子とする。このラテックスポリマーの製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生したエマルション水溶液が排出される。
【0018】
前記モノマーの種類としては遊離基開始剤と反応しうるものであれば特に制限はない。モノマーの具体例としてはスチレン、パラクロロスチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類の単独重合体または共重合体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−エチルヘキシル等のビニル基を有するエステル類の単独重合体または共重合体;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のビニルニトリル類の単独重合体または共重合体を挙げることができる。
【0019】
また自己乳化性を持つポリエステル、ポリウレタンのような樹脂を界面活性剤とともに水系媒体中でせん断し分散させても良い。また、ラテックスポリマーとして、アンモニア成分を含むものも用いられる。
【0020】
[現像用トナーの製造方法]
上記調製法により得られたラテックスポリマーは、次のような方法でトナーの調製に用いられる。本件に述べる方法で調製したラテックスポリマーと、少なくとも着色剤を含む複数種の分散液に、必要に応じて凝集剤及び/又は電荷添加剤及び/又は他の添加剤を混合し、得られた混合物をラテックスポリマーのTg近辺の温度、望ましくはラテックスポリマーのTg±10℃で効果的な時間、例えば1〜8時間加熱して、トナー大の凝集体を生成する。次に、凝集体懸濁液を、ラテックスポリマーのTg又はそれより高い温度、例えば約60〜約120℃に加熱して合体又は融合させてトナー粒子を造粒し、このトナー粒子をろ過などの手段で母液から分離して、イオン交換水などで洗浄(洗浄工程)した後、乾燥する。
【0021】
ラテックスポリマーは、通常トナーの結着樹脂として用いられ、75〜98重量%程度トナー内に存在する。本発明の製法に適したラテックスポリマーの大きさはレーザー回折式粒度分布測定機等で測定することができ、例えば、マイクロトラック(日機装社製)で測定した体積平均粒径で、0.05〜1μm程度である。
【0022】
本実施形態におけるトナーに用いられる着色剤としては、例えばカーボンブラック、クロムイエロー、ハンザイエロー、ベンジジンイエロー、スレンイエロー、キノリンイエロー、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、ウオッチヤングレッド、パーマネントレッド、ブリリアントカーミン3B、ブリリアントカーミン6B、デュポンオイルレッド、ピラゾロンレッド、リソールレッド、ローダミンBレーキ、レーキレッドC、ローズベンガル、アニリンブルー、ウルトラマリンブルー、カルコオイルブルー、メチレンブルークロライド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、マラカライトグリーンオキサレート、などの種々の顔料:アクリジン系、キサンテン系、アゾ系、ベンゾキノン系、アジン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、チアジン系、アゾメチン系、インジコ系、チオインジコ系、フタロシアニン系、アニリンブラック系、ポリメチン系、トリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、チアゾール系、キサンテン系などの各種染料などを挙げることができる。これらの着色剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
着色剤は、通常トナー中に効果的な量、例えばトナーの1〜15重量%程度、好ましくは3〜10重量%程度存在する。また、その大きさは、例えば、該マイクロトラックで測定した体積平均粒径で、0.05〜0.5μm程度である。
【0024】
該凝集剤は効果的な量、例えばトナーの固形分に対して0.01〜10重量%程度を用いることができる。使用する凝集剤としては、一価以上の電荷を有する化合物が好ましく、その化合物の具体例としては、前述のイオン性界面活性剤類、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、シュウ酸等の酸類、塩化マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウム、硫酸カルシウム、硫酸アンモニウム、硝酸アルミニウム、硝酸銀、硫酸銅、炭酸ナトリウム、ポリ塩化アルミニウム等が挙げられるが、これらに限るものではない。
【0025】
帯電制御剤も効果的な量、例えばトナーの0.1〜5重量%を使用しても良い。適当な帯電制御剤としては、アルキルピリジニウムハロゲン化物類、重硫酸塩類、シリカ等の帯電制御剤類、アルミニウム錯体のような陰帯電制御剤等が挙げられるが、これらに限るものではない。使用する他の添加剤としては、離型剤として働くワックス類などが挙げられる。ワックスの好ましい量としては、トナーの固形分に対して、5〜20重量%程度である。
【0026】
またワックスの種類としては特に制限はないが、たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等の低分子量ポリオレフィン類;軟化点を有するシリコーン類;オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、リシノール酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪酸アミド類;カルナウバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、木ロウ、ホホバ油等の植物系ワックス;ミツロウ等の動物系ワックス類;モンタンワックス、 オゾケライト、セレシン、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス等の鉱物・石油系ワックス類;ステアリン酸ステアリル、ベヘン酸ベヘニル等の高級脂肪酸と高級アルコールとのエステルワックス類などが挙げられる。
【0027】
湿式添加する無機微粒子としては、シリカ、アルミナ、チタニア、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸三カルシウムなど、通常トナー表面の外添剤として使用される全てのものを、イオン性界面活性剤や高分子酸、高分子塩基で水に分散して湿式添加することができる。
【0028】
[排水処理方法]
本実施の形態の排水処理方法を、図面を用いて説明する。
【0029】
上記トナー製造工程から、製造工程で不要となったり、その製造工程の設備メンテナンス等にて発生した界面活性剤水溶液、顔料分散液等の着色成分、ワックス分散液が、排出される。
【0030】
図1には実施形態に係る排水処理方法が示され、図2には、従来の排水処理方法が示されている。
【0031】
図1において、少なくとも着色成分を含む排水は、まず始めに、凝集沈殿処理または加圧浮上処理が行われる。以下、凝集沈殿処理を例にとって、排水からの着色成分除去プロセスを説明する。
【0032】
上記凝集沈殿処理では、まず反応槽において、排水に対し無機凝集剤である塩化第二鉄が添加され、フロックを生成させる。このフロック中には、主に、着色成分である顔料やワックス等が含まれている。次に、凝集槽において、高分子凝集剤が添加され、無機凝集剤にて生成したフロックが成長する。最後に、沈殿槽において、沈殿したフロックが除去される。この凝集沈殿処理にて、顔料やワックス等が除去されるが、排水の固形分濃度が高い場合、着色成分を完全に除去することはできない。
【0033】
また、加圧浮上処理は、次のように行われる。まず、反応槽において、排水に対し無機凝集剤である塩化第二鉄が添加され、フロックを生成させ、次に、高分子凝集剤が添加され、無機凝集剤にて生成したフロックが成長する。その後、加圧浮上槽において、槽内に導入した気泡の表面にこのフロックが吸着し、槽表面に浮上したフロックが除去される。
【0034】
次いで、フロックを除去した後、促進酸化処理が行われ、着色成分が完全に除去される。
【0035】
これらの各処理が実施された後、河川等に放流される。一方、凝集沈殿後の沈殿物(フロック)は、汚泥脱水処理工程を経て、産業廃棄物の汚泥として処理される。
【0036】
この排水処理設備で使用する凝集剤としては、無機凝集剤と有機凝集剤とが用いられる。無機凝集剤としては、例えば、硫酸アルミニウム、塩化第二鉄、ポリ塩化アルミニウム等が用いられる。この無機凝集剤の添加量は、排水100重量部に対して0.005〜1部、より好ましくは0.01〜0.5部程度である。但し、無機凝集剤は、必ずしもこれらに限定されるわけではない。さらに、フロックを成長させるために、高分子凝集剤として、例えば、アクリルアミド系アニオン性凝集剤等を使用することができる。添加量としては、排水100重量部に対して0.00001〜0.001部程度である。なお、高分子凝集剤は、必ずしもアクリルアミド系アニオン性凝集剤に限定されるわけではなく、他のアニオン性凝集剤または、カチオン性凝集剤や、ノニオン性凝集剤の使用も可能である。また、これらを組み合わせて使用しても構わない。
【0037】
また、本発明で用いる促進酸化処理法とは、オゾンと過酸化水素の組み合わせ、さらに紫外線等の酸化剤をさらに組み合わせて強力な酸化力を有するヒドロキシラジカルを発生させ、有機物を分解処理する方法で、排水処理工程に用いることによって、排水中に含まれる着色成分の除去に有効な方法である。
【0038】
すなわち、本発明者は鋭意検討の結果、着色成分を含む排水中の着色成分を、促進酸化処理により除去することで、水中に存在している着色成分を除去することができ、その結果、凝集沈殿または、加圧浮上処理させるために必要な無機凝集剤の量を削減することができることから、本発明の目的を達成することを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0039】
本実施の形態で使用する促進酸化処理は、ヒドロキシラジカルの作用により、有機物を酸化分解する方法である。ヒドロキシラジカルの生成は、オゾンと過酸化水素とを反応させることにより得られるが、この方法に限定されるわけではない。なお、排水中に含まれる着色成分の含有量は、排水100部に対して0.00001部〜0.04部である。
【0040】
上述の排水の着色は、色度計(日本電色工業(株)社製、上水色度・濁度測定器Water Analyzer 2000N)にて測定され (測定方法は、厚生労働大臣が定める上水試験方法に基づく)、この色度計による着色度が100〜1000の範囲である場合に、オゾンを排水1000部に対して0.00001〜0.0001部、過酸化水素は、30重量%溶液で排水1000部に対して0.01〜0.1重量部用いることが好ましい。なお、色度計による着色測定は、次のように行われる。色度用標準液を用いて、色度検量線を作成する。次に、排水の着色度を測定し、検量線から、排水の色度を求める。
【0041】
図2の従来の排水処理では、凝集沈殿処理または加圧浮上処理のみ実施された後、河川等に放流される。一方、凝集沈殿後の沈殿物(汚泥)は、汚泥脱水処理工程を経て、産業廃棄物の汚泥として処理される。
【実施例】
【0042】
次に実施例および比較例にて、本発明を更に具体的に説明する。
【0043】
以下に、本実施例および比較例に供される静電荷現像用トナーの製造例を示す。
【0044】
[トナーの製造例1]
<第1工程>
――分散液(1)の調製――
スチレン 320重量部
n−ブチルアクリレート 80重量部
アクリル酸 10重量部
ドデカンチオール 10重量部
【0045】
この溶液434重量部と、非イオン性界面活性剤(三洋化成社製、ノニポール400)6重量部、及びアニオン性界面活性剤(第一製薬社製、ネオゲンR)10重量部をイオン交換水550重量部に溶解した溶液をフラスコ中に入れて分散、乳化し、10分間ゆっくりと攪拌・混合しながら、過硫酸アンモニウム4重量部を溶解したイオン交換水50重量部を投入した。その後、フラスコ内を窒素で充分に置換してから攪拌しながらオイルバスで系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、樹脂微粒子分散液A−1を得た。
【0046】
樹脂微粒子分散液A−1で得られたラテックスは、レーザー回折式粒度分布測定装置(堀場製作所製、LA−700)で樹脂微粒子の体積平均粒子径(D50)を測定したところ155nmであり、示差走査熱量計(島津制作所社製、DSC−50)を用いて昇温速度10℃/minで樹脂のガラス転移点を測定したところ54℃であり、分子量測定器(東ソー社製、HLC−8020)を用い、THFを溶媒として重量平均分子量(ポリスチレン換算)を測定したところ33000であった。
【0047】
――離型剤分散液(1)の調製――
パラフィンワックス・・・・・・・・・・ 50重量部
(日本精蝋(株)製:HNP0190、融点85℃)
カチオン性界面活性剤・・・・・・・・・ 5重量部
(花王(株)製:サニゾールB50)
イオン交換水・・・・・・・・・・・・・200重量部
【0048】
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、平均粒径が550nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(1)を調製した。
【0049】
――着色剤分散液(1)の調製――
カーボンブラック顔料(キャボット社製:リーガル330) 70部
アニオン界面活性剤(和光純薬社製) 3部
イオン交換水 400部
【0050】
上記各成分を混合して溶解させた後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)を用いて分散させ、平均粒径150nmの着色剤(カーボンブラック顔料)を分散させてなる着色剤分散液(1)を得た。
【0051】
――凝集粒子の調製――
分散液(1)・・・・・・・・・・・・200重量部
着色剤分散液(1)・・・・・・・・・ 30重量部
離型剤分散液(1)・・・・・・・・・ 70重量部
カチオン性界面活性剤・・・・・・・・1.5重量部
(花王(株)製:サニゾールB50)
【0052】
以上を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が約5μmである凝集粒子(体積:95cm)が形成されていることが確認された。
【0053】
――付着粒子の調製――
ここに、樹脂含有微粒子分散液としての分散液(1)を緩やかに60重量部追加した。なお、前記分散液(1)に含まれる樹脂粒子の体積は(25cm)である。そして、加熱用オイルバスの温度を50℃に上げて1時間保持した。光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.7μmである付着粒子が形成されていることが確認された。
【0054】
<第3工程>
その後、ここにアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3gを追加した後、前記ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら、105℃まで加熱し、3時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、静電荷像現像用トナーを得た。
【0055】
上記製造例1の製造に際し排出された排水Aの着色度は、上述した色度計にて測定され、色度100であった。
【0056】
[トナーの製造例2]
――着色剤分散液(2)の調製――
カーボンブラック顔料(キャボット社製:リーガル330) 140部
アニオン界面活性剤(和光純薬社製) 3部
イオン交換水 330部
【0057】
上記各成分を混合して溶解させた後、ホモジナイザー(IKA社製、ウルトラタラックス)を用いて分散させ、平均粒径150nmの着色剤(カーボンブラック顔料)を分散させてなる着色剤分散液(2)を得た。
【0058】
――凝集粒子の調製――
分散液(1)・・・・・・・・・・・・200重量部
着色剤分散液(2)・・・・・・・・・ 30重量部
離型剤分散液(1)・・・・・・・・・ 70重量部
カチオン性界面活性剤・・・・・・・・1.5重量部
(花王(株)製:サニゾールB50)
【0059】
以上を丸型ステンレス製フラスコ中でホモジナイザー(IKA社製:ウルトラタラックスT50)を用いて混合し、分散した後、加熱用オイルバス中でフラスコ内を攪拌しながら48℃まで加熱した。48℃で30分間保持した後、光学顕微鏡にて観察すると平均粒径が約5μmである凝集粒子(体積:95cm)が形成されていることが確認された。
【0060】
――付着粒子の調製――
ここに、樹脂含有微粒子分散液としての分散液(2)を緩やかに60重量部追加した。なお、前記分散液(1)に含まれる樹脂粒子の体積は(25cm)である。そして、加熱用オイルバスの温度を50℃に上げて1時間保持した。光学顕微鏡にて観察すると、平均粒径が約5.9μmである付着粒子が形成されていることが確認された。
【0061】
<第3工程>
その後、ここにアニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)製:ネオゲンSC)3重量部を追加した後、前記ステンレス製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて攪拌を継続しながら、105℃まで加熱し、3時間保持した。そして、冷却後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分に洗浄した後、乾燥させることにより、静電荷像現像用トナーを得た。
【0062】
上記製造例2の製造に際し排出された排水Bの着色度は、上述した色度計にて測定され、色度1000であった。
【0063】
[排水Aの組成]
排水Aは、上記製造例1の製造により排出される排水であり、その中には、少なくとも顔料、ワックス、エマルション、界面活性剤が含まれる排水である。排水Aの主な組成について以下に示す。
【0064】
アニオン界面活性剤(「ネオゲンSC」第一工業製薬(株)製):0.08重量部
ラテックスポリマー: 0.4重量部
着色剤: 0.016重量部
ワックス(「ポリワックス725」 東洋ペトロライト(株)製):0.12重量部
水: 999.5重量部
【0065】
[排水Bの組成]
排水Bは、上記製造例2の製造により排出される排水であり、その中には、顔料、ワックス、エマルション、界面活性剤が含まれる排水である。排水Bの主な組成について以下に示す。
【0066】
アニオン界面活性剤(「ネオゲンSC」第一工業製薬(株)製):0.09重量部
ラテックスポリマー: 0.5重量部
着色剤: 0.12重量部
ワックス(「ポリワックス725」 東洋ペトロライト(株)製):0.22重量部
水: 999.1重量部
【0067】
(実施例1)
排水Aの処理性
被処理物質固形分濃度0.5wt%の排水A(色度300)、1000部を、図1に記載の排水処理設備を用いて処理した。凝集沈殿処理には、無機凝集剤(塩化第二鉄)を排水A1000部に対して1重量部、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100:ハイモ社製)を排水A1000部に対して0.001重量部添加し、18mの凝集沈殿槽を持つ排水処理設備で、バッチ式で処理した。促進酸化処理は、100mの処理槽で、3時間にて処理した。促進酸化処理の条件は、オゾン量、排水A1000部に対して0.00002重量部、過酸化水素量(30wt%溶液で)排水A1000部に対して0.01重量部であった。この結果、汚泥発生量は、6部で、処理された排水は着色なく、上述の色度計にて「色度1」で透明であり、処理性も問題なかった。
【0068】
(実施例2)
排水B処理性
被処理物質固形分濃度0.9wt%の排水B(色度500)、1000部を、図1に記載の排水処理設備を用いて、実施例1と同様に処理した。この時、無機凝集剤(塩化第二鉄)を排水B1000部に対して2重量部、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100)を排水B1000部に対して0.002重量部添加し、18mの凝集沈殿槽を持つ排水処理設備で、バッチ式で処理した。促進酸化処理は、100mの処理槽で、5時間にて処理した。促進酸化処理の条件は、オゾン量排水A1000部に対して0.00005重量部、過酸化水素量(30wt%溶液で)排水A1000部に対して0.04重量部であった。この結果、汚泥発生量は、10重量部で、処理された排水は着色なく、上述の色度計にて「色度5」で透明であり、処理性も問題なかった。
【0069】
(実施例3)
排水Cの処理性
被処理物質固形分濃度0.5wt%の排水C(色度900)を濃縮し5wt%にした排水C、1000部を、図1に記載の排水処理設備を用いて処理した。加圧浮上処理には、無機凝集剤(塩化第二鉄)を排水C1000部に対して5重量部、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100:ハイモ社製)を排水C1000部に対して0.01重量部添加し、18mの加圧浮上槽を持つ排水処理設備で、バッチ式で処理した。促進酸化処理は、100mの処理槽で、5時間にて処理した。促進酸化処理の条件は、オゾン量排水C1000部に対して0.0001重量部、過酸化水素量30wt%溶液で)排水C1000部に対して0.09重量部であった。この結果、汚泥発生量は、55部で、処理された排水は着色なく、上述の色度計にて「色度1」で透明であり、処理性も問題なかった。
【0070】
(比較例1)
排水Cの処理性
被処理物質固形分濃度5wt%の排水C(色度900)、1000部を、図2の排水処理設備を用いて処理した。この時、無機凝集剤(塩化第二鉄)を排水C1000部に対して45重量部、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100)を排水C1000部に対して0.2重量部添加し、18mの凝集沈殿槽を持つ排水処理設備で、バッチ式で処理した。なお促進酸化処理はおこなわなかった。その結果、排水の処理に12時間を要し、汚泥発生量は95重量部で、実施例3の約1.7倍の汚泥を発生し、上述の色度計にて「色度200」で、処理性は悪かった。
【0071】
(比較例2)
排水Aの処理性
被処理物質固形分濃度0.5wt%の排水A(色度300)1000重量部を、図2の排水処理設備を用いて処理した。この時、無機凝集剤(塩化第二鉄)を排水A1000部に対して5重量部、高分子凝集剤(アクリルアミド系高分子凝集剤:ハイモロックSS−100)を排水A1000部に対して0.002重量部添加し、18mの凝集沈殿槽を持つ排水処理設備で、バッチ式で処理した。なお促進酸化処理はおこなわなかった。その結果、排水の処理に10時間を要し、汚泥発生量は10重量部で、実施例1の約1.7倍の汚泥を発生し、上述の色度計にて「色度100」で、処理性は悪かった。100mの排水の処理に7時間を要した。この結果、汚泥発生量は185g/Lで、実施例2の約2.5倍の量の汚泥が発生した。また、凝集沈殿処理後も顔料等による排水の着色が残り、上述の色度計にて「色度100」で、処理性は悪かった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の排水処理方法は、静電荷現像用トナーの製造時に排出される排水処理に特に有用であるが、有機無機の特性の異なる物質を有する着色工業排水処理においても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】実施形態にかかる排水処理方法を説明する図である。
【図2】従来の排水処理方法を説明する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静電荷像現像用トナーの製造工程から発生する少なくとも着色成分を含む排水を処理対象とする排水処理方法であって、
前記製造工程から発生する着色成分を有機物酸化処理により除去する工程を備えたことを特徴とする排水処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の排水処理方法において、
前記着色成分を除去する工程が、促進酸化処理からなることを特徴とする排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−7016(P2006−7016A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184471(P2004−184471)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】