説明

排水処理装置及び排水処理装置を利用した排水処理システム

【課題】排水処理を効率よく行うことができる排水処理装置の提供、並びに、その排水処理装置を利用することによって、省スペース化が可能で、制御及びメンテナンスが容易な排水処理システムを提供すること。
【解決手段】排水処理装置4は、排水に含まれる固形分及び油脂分を微生物分解する小細片42が充填され、底部5にスリット及び/又は孔が形成されている処理部41と、処理部41に残渣する固形分及び油脂分と小細片42とを定期的に撹拌する撹拌手段43とを有し、固形分及び油脂分含む排水を小細片42でろ過すること、並びに/又は、処理部41に残渣する固形分及び油脂分と小細片42とを撹拌手段43が定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固形分及び油脂分を含んだ排水を処理する排水処理装置並びにこの排水処理装置を利用した排水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
固形分及び油脂分を含んだ排水はそのまま下水道等に放流すると、下水処理場の処理負荷が増大や水質汚染が発生する。したがって、下水道等に放流する水質の基準が定められており、放流前にその水質基準を満たすように排水を処理しなければならない。
【0003】
排水を処理するシステムの例として、生ごみ等を厨房に設置したディスポーザ等の破砕装置で破砕し、排水管を通して破砕した固形分及び油脂分を含んだ厨房排水を処理装置に流入させ、厨房排水を浄化処理して公共下水道等に放流する排水処理システムがある。
【0004】
このような排水処理システムは、厨房で発生した生ごみをゴミ袋に詰めてごみ集積所まで運ぶ必要をなくすことができ、家事の手間を減らすことができる。排水処理システムによって家事の手間を減らすことができるので、特に家事が大きな負担になりがちな高齢者の生活の質を向上させることができる。このような理由によって、排水処理システムの普及が進んでいる。
【0005】
また、生ごみ等を含む排水に限らず生活排水や畜産糞尿等が含まれる畜産農業排水等も、放流前にその水質基準を満たすように排水処理を行った上で下水道等に放流しなければならない。したがって、畜産農業排水等も排水処理システムによる排水処理が必要となっている。
【0006】
このような排水処理システムに使用される排水処理装置として、特許文献1に示すような湿式分解槽がある。湿式分解槽は好気性微生物を用いて厨房排水中の破砕された固形分及び油脂分を分解浄化する。固形分及び油脂分を分解浄化するために湿式分解槽内に充分な酸素を供給する必要がある。
【0007】
また、湿式分解槽以外の処理装置を有する排水処理システムとしては、排水から固形分及び油脂分を分離する分離装置と、分離装置から送られてきた固形分及び油脂分の圧縮等を行う処理機械又は固形分及び油脂分を乾式で微生物分解する排水処理装置とを備える排水処理システムも提案されてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2007−167740
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、排水処理装置が湿式分解槽の場合、湿式分解槽内に充分な酸素を供給するためには、湿式分解槽に出力が大きなポンプ等の送風機を取り付ける必要がある。出力が大きな送風機は消費電力が大きいため、エネルギー消費が大きくなりCO2排出量が増えるという問題があった。
【0010】
また、湿式分解槽を有する処理システムを既存の住宅に設置する場合、既設の住宅は、厨房から出る厨房排水、洗面所、風呂及び洗濯機から出る排水並びに掃除排水からなる雑排水とが屋内で一本の排水管に流入している場合がある。厨房排水と雑排水とを湿式分解槽で処理する際には、固形分及び油脂分の増加に対応するために湿式分解槽の処理能力を上げる必要があった。湿式分解槽の処理能力を上げることによって、エネルギー消費増大、CO2排出量増大及び処理装置の大型化を招くという問題があった。
【0011】
処理機械又は排水処理装置を有する排水処理システムの場合、固形分及び油脂分を分離する分離装置が必要となることから、排水処理システムが大型化するという問題があった。さらに、固形分及び油脂分を分離させた残りの液体も水質基準を満たすために液体処理装置が必要となる場合があると、排水処理システム全体が大型化し大きな設置スペースを確保する必要があるという問題があった。
【0012】
また、このような排水処理システムは、複数の機械、装置を備えるので、システム全体の制御が複雑になるという問題もある。
【0013】
さらに、このような排水処理システムは、複数の機械、装置を個別にメンテナンスしなければならないので、メンテナンスの手間がかかるという問題もある。
【0014】
上記点より本発明は、排水処理を効率よく行うことができる排水処理装置の提供、並びに、その排水処理装置を利用することによって、省スペース化が可能で制御及びメンテナンスが容易な排水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1の排水処理装置は、排水に含まれる固形分及び油脂分を微生物分解する小細片が充填され、底部にスリット及び/又は孔が形成されている処理部と、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌する撹拌手段とを有し、固形分及び油脂分含む排水を小細片でろ過すること、並びに/又は、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを撹拌手段が定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解するようになっている。
【0016】
請求項2の排水処理装置は、排水に含まれる固形分及び油脂分を微生物分解する小細片が充填され、底部にスリット及び/又は孔が形成されている処理部と、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌する撹拌手段とを有し、固形分及び油脂分含む排水を小細片でろ過すること、並びに/又は、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを撹拌手段が定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解し、小細片、固形分及び油脂分を堆肥化するようになっている。
【0017】
請求項3の排水処理装置は、撹拌手段が定期的に撹拌する際に、撹拌手段の一部が底部を掃き払うようになっている。
【0018】
請求項4の排水処理装置は、処理部の下方に設けられ、処理部でろ過された水分が底部のスリット及び/又は孔を通過して貯留する貯留部を有する。
【0019】
請求項5の排水処理装置は、小細片が繊維質材料を含む。
【0020】
請求項6の排水処理装置は、繊維質材料が籾殻である。
【0021】
請求項7の排水処理装置は、小細片が樹脂材料を含む。
【0022】
請求項8の排水処理システムは、住宅の屋外に設けられており、住宅の厨房に設けられた粉砕装置で粉砕された固形分及び油脂分を含む厨房排水が流入する集水槽と、内部に小細片が充填されており、集水槽から送られてきた排水を小細片でろ過すること、並びに/又は、残渣した固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解する排水処理装置とを備える。
【0023】
請求項9の排水処理システムは、集水槽には、洗面所、風呂及び洗濯機から出る排水並びに掃除排水からなる雑排水が流入するようになっている。
【0024】
請求項10の排水処理システムでは、排水処理装置は、小細片が充填され、底部にスリット及び/又は孔が形成されている処理部と、処理部に残渣した固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌する撹拌手段と、処理部の下方に設けられ、処理部でろ過された水分が底部のスリット及び/又は孔を通過して貯留する貯留部とを有し、撹拌手段が固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌するとともに撹拌手段の一部が底部を掃き払うようになっている。
【0025】
請求項11の排水処理システムは、小細片が繊維質材料を含む。
【0026】
請求項12の排水処理システムは、繊維質材料が籾殻である。
【0027】
請求項13の排水処理システムは、小細片が樹脂材料を含む。
【0028】
請求項14の排水処理システムは、排水処理装置から固形分及び油脂分を微生物分解する過程で発生した臭気成分を含む気体を排気する排気装置と、排水処理装置とは独立に設けられており、排気された気体を分散させる礫層と、気体中の臭気成分を分解する土壌微生物が混合され礫層に積層した土壌層とを備え、排気された気体を礫層、土壌層の順に通過させることによって、排気された気体を脱臭することができる土壌脱臭装置をさらに備えるようになっている。
【発明の効果】
【0029】
請求項1の排水処理装置は、排水処理装置内で排水をろ過することと固形分及び油脂分を微生物分解することができる。したがって、排水を固液分離することなく排水処理装置に固形分及び油脂分を含む排水をそのまま投入できるので、排水処理を効率よく行うことができる。
【0030】
また、排水を固液分離する装置が必要ないので、本排水処理装置を備える排水処理システム全体の省スペース化を実現できる。さらに、排水を固液分離する装置が必要ないので、本排水処理装置を備える排水処理システムを構成する機械、装置を減少させることができるので、制御及びメンテナンスが容易な排水処理システムを実現できる。
【0031】
さらに、撹拌手段による撹拌によって、固形分及び油脂分を微生物分解することができるので、排水処理装置全体のエネルギー消費減少及びCO2排出量を減少させることができる。
【0032】
請求項2の排水処理装置は、排水処理装置内で排水をろ過することと固形分及び油脂分を微生物分解し小細片、固形分及び油脂分を堆肥化することができる。したがって、排水を固液分離することなく排水処理装置に固形分及び油脂分を含む排水をそのまま投入できるので、排水処理と小細片の堆肥化を効率よく行うことができる。
【0033】
また、排水を固液分離する装置が必要ないので、本排水処理装置を備える排水処理システム全体の省スペース化を実現できる。さらに、排水を固液分離する装置が必要ないので、本排水処理装置を備える排水処理システムを構成する機械、装置を減少させることができるので、制御及びメンテナンスが容易な排水処理システムを実現できる。
【0034】
請求項3の排水処理装置は、撹拌手段が固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌するとともに撹拌手段の一部が底部を掃き払うので、スリット及び/又は孔が詰まることを防止できる。したがって、ろ過された水分を処理部の外へ効率よく排出でき、処理部において、余分な水分が除かれ軽量化された固形分及び油脂分と小細片とを撹拌することができるので、撹拌に必要なエネルギーを削減することができる。
【0035】
請求項4の排水処理装置は、排水処理装置内において、処理部でろ過された水分を貯留部で貯留することができるので、排水処理装置とは別体の貯留設備を設ける必要がない。したがって、本排水処理装置を備える排水処理システム全体の省スペース化を実現できる。
【0036】
請求項5の排水処理装置では、小細片は、繊維質材料に含まれるリグニン・セルロース等によって腐朽しにくいことから固形分及び油脂分を分解する分解菌を保持する役割を長期間にわたって果たすことができる。したがって、小細片の交換サイクルを長期化することができ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0037】
請求項6の排水処理装置では、小細片が籾殻を含むので、処理部に存在する固形分及び油脂分と小細片との混合物の気相率が上がり、効率よく固形分及び油脂分を微生物分解することができる。
【0038】
また、籾殻は油脂吸着性を有しており、排水から油脂分を効率的にろ過することができる。
【0039】
籾殻は腐朽しにくい材料ではあるが、処理部において籾殻が腐朽し分解される際に窒素を吸収する。処理部に投入する籾殻の量を調整することによって、排水処理装置で製造される堆肥中の窒素量を調整することができる。
【0040】
籾殻は、分解されにくいリグニン・セルロース層と撥水性のあるロウ層のクチクラ層を備えており、腐朽されにくく長期間にわたり分解菌を保持することができる。また、籾殻の表面のクチクラ層が水をはじくので、排水のろ過材に適している。
【0041】
また、籾殻は、比重が小さいため容易に撹拌することができる。さらに、排水処理システムでの分解菌保持体として籾殻を利用することは、籾殻の再利用方法の一つとなる。したがって、腐朽しにくい材料であるが故に再利用が難しく廃棄、焼却等していた籾殻を、資源として有効活用することができる。
【0042】
請求項7の排水処理装置では、小細片が樹脂材料であって腐朽しにくいことから固形分及び油脂分を分解する分解菌を保持する役割を長期間にわたって果たすことができる。
【0043】
請求項8の排水処理システムでは、排水処理装置内で排水をろ過するとともに固形分及びを微生物分解することができる。したがって、排水処理システムは排水を固体及び液体に分離する装置を必要としないので、システム全体の省スペース化を実現することができる。
【0044】
さらに、排水処理システムは、集水槽を住宅の屋外に設けているので、住宅の屋外に延出する排水管を集水槽と接続することができる。排水管を集水槽と接続することによって、新設の住宅に加えて既設の住宅にも住宅の屋内の配管工事を行うことなく排水処理システムを設置できる。
【0045】
請求項9の排水処理システムでは、集水槽に雑排水が厨房排水とともに流入することによって、雑排水に含まれる固形分及び油脂分も微生物分解することができる。
【0046】
請求項10の排水処理システムでは、処理部の底部にスリット及び/又は孔が形成されていることによって、ろ過された水分が処理部から貯留部へ流入するようになっている。また、撹拌手段が固形分及び油脂分と小細片を定期的に撹拌するとともに撹拌手段の一部が底部を掃き払うので、スリット及び/又は孔が詰まることを防止できる。
【0047】
請求項11の排水処理システムでは、小細片は、繊維質材料に含まれるリグニン・セルロース等によって腐朽しにくいことから、小細片の交換サイクルを長期化することができ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0048】
請求項12の排水処理システムでは、小細片が籾殻を含むので、処理部に存在する固形分及び油脂分と小細片との混合物の気相率が上がり、効率よく微生物分解することができる。
【0049】
また、籾殻は油脂吸着性を有しており、排水から油脂分を効率的にろ過することができる。
【0050】
籾殻は本来腐朽しにくい材料ではあるが、処理部において腐朽分解する際に窒素を吸収する。処理部に投入する籾殻の量を調整することによって、排水処理装置で製造される堆肥中の窒素量を調整することができる。
【0051】
請求項13の排水処理システムでは、小細片が樹脂材料であって腐朽しにくいことから、小細片の交換サイクルを長期化することができ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0052】
請求項14の排水処理システムでは、排水処理システムは、臭気成分を含む気体を排気する排気装置と臭気成分を含む気体を脱臭することができる土壌脱臭装置とを備えることによって、排水処理装置内に悪臭が充満することを防止できる。
【0053】
また、土壌脱臭装置が排水処理装置とは独立に設けられているので、排水処理装置の設置場所に依存することなく土壌脱臭装置を設置することができる。
【0054】
さらに、土壌脱臭装置が気体を分散させる礫層と、気体中の臭気成分を分解する土壌微生物が混合された土壌層とを備えるので、排水処理システムは、エネルギー消費及びCO2排出量の低減と気体の脱臭とを両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施形態の排水処理装置4の断面図である。
【図2】図1に示す底部5の斜視図である。
【図3】本発明の一実施形態である排水処理システム1を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0056】
以下、本発明の一実施形態について図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態の排水処理装置4の断面図である。図2は、図1に示す処理部41の底部5の斜視図である。図3は、本発明の一実施形態である排水処理システム1を示す概略図である。
【0057】
図1に示すように、排水処理装置4は、分解菌を保持する小細片42が充填され、底部5にスリット53及び孔54が形成されている処理部41と、固形分及び油脂分と小細片42とを定期的に撹拌する撹拌手段43と、処理部41の下方に設けられ、処理部41でろ過された水分45が底部5のスリット53及び孔54を通過して貯留する貯留部44とを有する。
【0058】
排水処理装置4内で排水をろ過することと固形分及び油脂分を微生物分解することができる。したがって、排水を固液分離することなく排水処理装置4に固形分及び油脂分を含む排水をそのまま投入できるので、排水処理を効率よく行うことができる。
【0059】
また、排水を固液分離する装置が必要ないので、本実施形態の排水処理装置4を備える排水処理システム全体の省スペース化を実現できる。
【0060】
また、排水処理装置4は、排水処理装置4内で排水から固形分及び油脂分を分離し、分離された固形分及び油脂分を乾式で微生物分解することができるので、排水処理装置4とは別体の固形分及び油脂分を分離する分離装置が必要ない。したがって、本実施形態の排水処理装置4を備える排水処理システム全体の省スペース化を実現できる。
【0061】
さらに、撹拌手段43による撹拌によって、固形分及び油脂分を微生物分解することができるので、排水処理装置4全体のエネルギー消費減少及びCO2排出量を減少させることができる。
【0062】
また、排水処理装置4は、排水処理装置4内において、処理部41でろ過された水分を貯留部44で貯留することができるので、排水処理装置4とは別体の貯留設備を設ける必要がない。したがって、本実施形態の排水処理装置4を備える排水処理システム全体の省スペース化を実現できる。
【0063】
本実施形態の排水処理装置4では、小細片42は繊維質材料の籾殻を含むようになっている。
【0064】
小細片42が籾殻を含むので、処理部41に存在する固形分及び油脂分と籾殻を含む小細片42との混合物の気相率が上がり、効率よく固形分及び油脂分を微生物分解することができる。
【0065】
本実施形態では、籾殻に含まれるリグニン・セルロース等によって腐朽しにくいことから固形分及び油脂分を分解する分解菌を保持する役割を長期間にわたって果たすことができる。したがって、籾殻を含む小細片の交換サイクルを長期化することができ、メンテナンスの手間を省くことができる。
【0066】
また、籾殻は油脂吸着性を有しており、排水から油脂分を効率的にろ過することができる。
【0067】
籾殻は腐朽しにくい材料ではあるが、処理部41において籾殻が腐朽し分解される際に窒素を吸収する。処理部41に投入する籾殻の量を調整することによって、排水処理装置4で製造される堆肥中の窒素量を調整することができる。
【0068】
籾殻は、分解されにくいリグニン・セルロース層と撥水性のあるロウ層のクチクラ層を備えており、腐朽されにくく長期間にわたり分解菌を保持することができる。また、籾殻の表面のクチクラ層が水をはじくので、排水のろ過材に適している。
【0069】
また、籾殻は比重が小さいため、撹拌手段によって容易に撹拌することができる。さらに、排水処理システムでの分解菌保持体として籾殻を利用することは、籾殻の再利用方法の一つとなる。したがって、腐朽しにくい材料であるが故に再利用が難しく廃棄、焼却等していた籾殻を、資源として有効活用することができる。
【0070】
本実施形態の排水処理装置では、図1及び図2に示すように、処理部41の底部5は断面視で中央に凸部が形成された板材である。凸部は第一平面部51を有する。底部5は、さらに断面視で凸部の両側に凸部の第一平面部51と段差になっている第二平面部52、52を有する。
【0071】
凸部の第一平面部51には、板材を貫通する複数のスリット53が形成されている。本実施形態では、スリット53の長軸が後述する撹拌翼43bの先端の回転軌道の接線と平行になるように形成されている。スリット53の幅は、前述の小細片42の最小幅よりも小さくなっているので、小細片42がスリット53を通過することを防止できるようになっている。
【0072】
第二平面部52には、板材を貫通する複数の孔54が形成されている。孔54の直径は前述の小細片42の最小幅よりも小さくなっているので、小細片42が孔54を通過することを防止できるようになっている。
【0073】
貯留部44の水分45は排水処理装置4の外に排出され、後述する排水処理システム4では、公共下水道8に放流されるようになっている(図3参照)。
【0074】
撹拌手段43は、処理部41の内部において、撹拌軸43aに撹拌翼43bが取り付けられている。撹拌翼43bは撹拌軸43aを中心として放射状に広がっている。
【0075】
各撹拌翼43bの先端には、ゴムの掃払体43cが取り付けられている。撹拌軸43bの中心から掃払体43cまでの距離は、撹拌軸43bの中心から前述の底部5の凸部の第一平面部51までの距離より長くなっている。
【0076】
処理部41では、撹拌軸43aを回転させることで、撹拌翼43bが固形分及び油脂分並びに籾殻を含む小細片を定期的に撹拌し、固形分及び油脂分を乾式で微生物分解することができるようになっている。
【0077】
また、撹拌軸43aを回転させることで、撹拌翼43bの先端の掃払体43cが底部5の凸部の第一平面部51を掃き払うことができるようになっている。掃払体43cが底部5の第一平面部51を掃き払うので、スリット53が詰まることを防止できる。したがって、ろ過された水分を処理部41の外へ効率よく排出でき、処理部41において余分な水分が除かれ軽量化された固形分及び油脂分と小細片とを撹拌することができるので、撹拌に必要なエネルギーを削減することができる。
【0078】
上記の排水処理装置4では、排水処理装置4が排水から固形分及び油脂分を分離し、分離された固形分及び油脂分を乾式で微生物分解する場合について説明したが、これに限定されることなく、排水処理装置4が排水から固形分及び油脂分を分離する機能のみを有していてもよく、また、固形分及び油脂分を乾式で微生物分解する機能のみを有していてもよい。
【0079】
上記の排水処理装置4では、排水処理装置内で排水をろ過することと固形分及び油脂分を微生物分解することができる場合について説明したが、これに限定されることなく、排水処理装置内で排水をろ過することと、及び/又は、固形分及び油脂分を微生物分解し小細片、固形分及び油脂分を堆肥化することができるようになっていてもよい。
【0080】
小細片42、固形分及び油脂分を堆肥化する場合、小細片42に含まれる籾殻は腐朽しにくい材料ではあるが、処理部41において籾殻が腐朽し分解される際に窒素を吸収する。処理部41に投入する籾殻の量を調整することによって、排水処理装置4で製造される堆肥中の窒素量を調整することができる。
【0081】
上記の排水処理装置では、小細片42は繊維質材料の籾殻を含む場合について説明したが、これに限定されることなく、小細片42は、籾殻以外の繊維質材料、例えば、おが屑、稲わら等を含んでいてもよい。
【0082】
上記の排水処理装置4では、小細片42は繊維質材料の籾殻を含む場合について説明したが、これに限定されることなく、小細片が樹脂材料を含んでいてもよい。
【0083】
上記の排水処理装置4では、底部5は断面視で中央に凸部が形成された板材である場合について説明したが、これに限定されることなく、例えば、撹拌手段の一部が底部を掃き払うように設けられた平板、湾曲板等の板材であってもよい。
【0084】
上記の排水処理装置4では、スリット53の長軸が撹拌翼43bの先端の回転軌道の接線と平行になるように形成されている場合について説明したが、これに限定されることなく、例えばスリット53の長軸が撹拌翼43bの回転軌道の接線に対して、ねじれの位置又は所定の角度をなすように形成されていてもよい。
【0085】
上記の排水処理装置4では、各撹拌翼43bの先端には、ゴムの掃払体43cが取り付けられている場合について説明したが、これに限定されることなく、例えば、刷毛等の可撓性があって底部を掃き払うことができるものが取り付けられていてもよい。
【0086】
上記の排水処理装置4は、生ごみ等を含む排水に限らず生活排水や畜産糞尿等が含まれる畜産農業排水等を処理することができる。
【0087】
以下、上記の排水処理装置4を備える排水処理システムの一実施形態について説明する。図3に示すように、排水処理システム1は、住宅2の屋外に設けられており、住宅2の厨房21に設けられた破砕装置21Aで粉砕された生ごみ等を含む厨房排水が流入する集水槽3と、内部に分解菌保持体である小細片42が充填されており、集水槽3から送られてきた排水を分解菌保持体である小細片42でろ過するとともに、残渣した固形分及び油脂分と分解菌保持体である小細片42とを定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解する排水処理装置4とを備える。
【0088】
排水処理装置4は、小細片42は繊維質材料の籾殻を含むようになっている。排水処理装置4内で排水をろ過するとともに固形分及び油脂分を微生物分解することができる。したがって、排水処理システム1は、排水を固体及び液体に分離する装置を必要としないので、システム全体の省スペース化を実現するとともに、システム全体の制御及びメンテナンスが容易となる。
【0089】
厨房21の破砕装置21Aは、例えば、シンクの排水口に設置したディスポーザである。破砕装置21Aは、厨房21で発生する生ゴミ等を粉砕できるようになっている。
【0090】
破砕装置21Aには、排水管22が接続されている。破砕された固形分及び油脂分を含む厨房排水は、排水管22を介して集水槽3に流入するようになっている。
【0091】
また、住宅2内では、洗面所23、風呂24及び洗濯機25から出る雑排水が生じる。本実施形態では、洗面所23、風呂24及び洗濯機25で生じる雑排水を排水するための雑排水枝管26、27、28が設けられている。雑排水枝管26、27、28は排水管22に接続されており、雑排水は排水管22を介して集水槽3に流入するようになっている。図3では省略してあるが、掃除排水等の雑排水も雑排水枝管及び排水管を介して集水槽3に流入するようになっていてもよい。
【0092】
本実施形態では、排水管22を介して集水槽3に雑排水が厨房排水とともに流入するので、雑排水に含まれる固形分及び油脂分も排水処理装置4によって処理することができる。
【0093】
本実施形態では、集水槽3が住宅2の屋外に設けられている。したがって、住宅2の屋外に延出する排水管22を集水槽3と接続することによって、住宅2の屋内の配管工事を行うことなく、新設の住宅に加えて既設の住宅にも排水処理システム1を設置することができる。集水槽3に溜まった排水は、ポンプ31によって投入管32を通して排水処理装置4に送られるようになっている。
【0094】
集水槽3に溜まった排水がポンプ31によって投入管32を通して排水処理装置4に送られることによって、排水処理装置4を地中に埋設する必要がない。したがって、排水処理装置4の設置及びメンテナンスが容易に行える。
【0095】
また、本実施形態の排水処理システム1は、図3に示すように、排水処理装置4から固形分及び油脂分を微生物分解する過程で発生した臭気成分を含む気体を排気する排気装置6と、排水処理装置4とは独立に設けられており、排気装置6によって排気された臭気成分を含む気体を脱臭することができる土壌脱臭装置7とをさらに備える。
【0096】
排水処理システム1が臭気成分を含む気体を排気する排気装置6と臭気成分を含む気体を脱臭することができる土壌脱臭装置7とを備えることによって、排水処理装置4内に悪臭が充満することを防止できる。
【0097】
また、土壌脱臭装置7が排水処理装置4とは独立に設けられていることによって、排水処理装置4の設置場所に依存することなく土壌脱臭装置7を設置することができる。
【0098】
排水処理装置4の内部には、排気ダクト61が設けられている(図1参照)。排気装置6は排気ダクト61を介して排水処理装置4の内部の臭気成分を含む気体を土壌脱臭装置7へと排気できるようになっている。
【0099】
土壌脱臭装置7は、排気された気体を分散させる礫層71と、気体中の臭気成分を分解する土壌微生物が混合され、礫層に積層した土壌層72とを備える。排気された気体を礫層71、土壌層72の順に通過させることによって、排気された気体を脱臭することができる。
【0100】
土壌脱臭装置7が礫層71と、気体中の臭気成分を分解する土壌微生物が混合された土壌層72とを備えることによって、エネルギー消費及びCO2排出量の低減と気体の脱臭とを両立することができる。
【0101】
上記の排水処理システム1では、雑排水枝管26、27、28が排水管22に接続されている場合について説明したが、雑排水枝管26、27、28が排水管22に接続されておらず、厨房排水のみが集水槽3に流入するようになっていてもよい。
【0102】
上記の排水処理システム1では、雑排水枝管26、27、28が排水管22に接続されている場合について説明したが、雑排水枝管26、27、28が排水管22とは別の雑排水管に接続されており、住宅の屋外に延出する雑排水管が集水槽3に接続するようになっていてもよい。
【0103】
上記の排水処理システム1では、小細片42は繊維質材料の籾殻を含む場合について説明したが、これに限定されることなく、小細片42は、籾殻以外の繊維質材料、例えば、おが屑、稲わら等を含んでいてもよい。
【0104】
上記の排水処理システム1では、小細片42は繊維質材料の籾殻を含む場合について説明したが、これに限定されることなく、小細片が樹脂材料を含んでいてもよい。
【0105】
上記の排水処理システム1では、集水槽3に流入する排水が、生ごみ等を含む厨房排水並びに洗面所23、風呂24及び洗濯機25から出る雑排水からなる生活排水である場合について説明したが、これに限定されることなく、集水槽3に流入する排水が、例えば畜産糞尿等が含まれる畜産農業排水等をであってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 排水処理システム
2 住宅
3 集水槽
4 排水処理装置
5 底部
6 排気装置
7 土壌脱臭装置
8 公共下水道
21 厨房
21A 破砕装置
22 排水管
23 洗面所
24 風呂
25 洗濯機
26、27、28 雑排水枝管
31 ポンプ
32 投入管
41 処理部
42 小細片
43 撹拌手段
43a 撹拌軸
43b 撹拌翼
43c 掃払体
44 貯留部
45 水分
51 第一平面部
52 第二平面部
53 スリット
54 孔
61 排気ダクト
71 礫層
72 土壌層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水に含まれる固形分及び油脂分を微生物分解する小細片が充填され、底部にスリット及び/又は孔が形成されている処理部と、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌する撹拌手段とを有し、
固形分及び油脂分含む排水を小細片でろ過すること、並びに/又は、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを撹拌手段が定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解することを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
排水に含まれる固形分及び油脂分を微生物分解する小細片が充填され、底部にスリット及び/又は孔が形成されている処理部と、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌する撹拌手段とを有し、
固形分及び油脂分含む排水を小細片でろ過すること、並びに/又は、処理部に残渣する固形分及び油脂分と小細片とを撹拌手段が定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解し、小細片、固形分及び油脂分を堆肥化することを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
撹拌手段が定期的に撹拌する際に、撹拌手段の一部が底部を掃き払うことを特徴とする請求項1または2に記載の排水処理装置。
【請求項4】
排水処理装置は、処理部の下方に設けられ、処理部でろ過された水分が底部のスリット及び/又は孔を通過して貯留する貯留部を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項5】
小細片は、繊維質材料を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項6】
繊維質材料は、籾殻であることを特徴とする請求項5に記載の排水処理装置。
【請求項7】
小細片は、樹脂材料を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の排水処理装置。
【請求項8】
住宅の屋外に設けられており、住宅の厨房に設けられた粉砕装置で粉砕された固形分及び油脂分を含む厨房排水が流入する集水槽と、
内部に小細片が充填されており、集水槽から送られてきた排水を小細片でろ過すること、並びに/又は、残渣した固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌することによって固形分及び油脂分を乾式で微生物分解する排水処理装置とを備える排水処理システム。
【請求項9】
集水槽には、洗面所、風呂及び洗濯機から出る排水並びに掃除排水からなる雑排水が流入することを特徴とする請求項8に記載の排水処理システム。
【請求項10】
排水処理装置は、小細片が充填され、底部にスリット及び/又は孔が形成されている処理部と、処理部に残渣した固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌する撹拌手段と、処理部の下方に設けられ、処理部でろ過された水分が底部のスリット及び/又は孔を通過して貯留する貯留部とを有し、
撹拌手段が固形分及び油脂分と小細片とを定期的に撹拌するとともに撹拌手段の一部が底部を掃き払うことを特徴とする請求項8または9に記載の排水処理システム。
【請求項11】
小細片は、繊維質材料を含むことを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項12】
繊維質材料は、籾殻であることを特徴とする請求項11に記載の排水処理システム。
【請求項13】
小細片は、樹脂材料を含むことを特徴とする請求項8乃至10のいずれかに記載の排水処理システム。
【請求項14】
排水処理装置から固形分及び油脂分を微生物分解する過程で発生した臭気成分を含む気体を排気する排気装置と、
排水処理装置とは独立に設けられており、排気された気体を分散させる礫層と、気体中の臭気成分を分解する土壌微生物が混合され礫層に積層した土壌層とを備え、排気された気体を礫層、土壌層の順に通過させることによって、排気された気体を脱臭することができる土壌脱臭装置をさらに備えることを特徴とする請求項8乃至13のいずれかに記載の排水処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−110748(P2010−110748A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−17891(P2009−17891)
【出願日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【出願人】(509114343)
【Fターム(参考)】