説明

排水処理装置

【課題】油脂分を多く含んだ排水を適切に浄化処理できる排水処理装置を提供する。
【解決手段】排水処理装置1は、第1処理槽11、第2処理槽12および第3処理槽13を有する槽本体4を備える。排水処理装置1は、第1処理槽11内の排水の水面に浮かんだ浮上油脂分を排水とともに吸い込む第1吸込管23と、第1処理槽11の底部に沈んだ沈殿油脂分を排水とともに吸い込む第2吸込管25とを備える。排水処理装置1は、第1吸込管23側からの浮上油脂分および排水を乳化水溶液にするとともに第2吸込管25側からの沈殿油脂分および排水を乳化水溶液にする界面活性機能を有するセラミック31を備える。排水処理装置1は、乳化水溶液を第1処理槽11内に吐き出す吐出管29を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油脂分を含んだ排水を適切に浄化処理できる排水処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば牛等の家畜の畜舎からの尿を含む排水が流入される反応槽と、この反応槽に流入された排水を35℃〜65℃に加温して排水中に含まれる微生物により醗酵させて有機物を分解するための加温手段と、活性炭等の吸着剤が配置され反応槽から流入された排水中の有機物を吸着除去する吸着槽とを備える排水処理装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平6−15296号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記のような排水処理装置では、例えば牧場等においてミルキングパーラー等から排出される乳脂肪分等を含んだ排水の浄化処理が不十分となる場合がある。そこで、例えば貯留槽内の排水の水面に浮かんだ浮上乳脂肪分(浮上油脂分)を排水とともに吸込口部から吸い込んで界面活性機能を有するセラミックに接触させて乳化水溶液にしてこの乳化水溶液を吐出口部から吐き出す水中ポンプ手段を利用することが考えられる。
【0004】
しかしながら、この水中ポンプ手段を利用した構成であっても、貯留槽の底部に乳脂肪分が沈んで溜まり、排水の浄化処理が適切に行われないおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、油脂分を多く含んだ排水を適切に浄化処理できる排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の排水処理装置は、排水が貯留される貯留槽と、この貯留槽内の排水の水面に浮かんだ浮上油脂分を排水とともに吸い込む第1吸込管と、前記貯留槽の底部に沈んだ沈殿油脂分を排水とともに吸い込む第2吸込管と、前記第1吸込管にて吸い込まれた浮上油脂分および排水を乳化水溶液にするとともに、前記第2吸込管にて吸い込まれた沈殿油脂分および排水を乳化水溶液にする乳化手段と、前記乳化水溶液を前記貯留槽内に吐き出す吐出管とを備えるものである。
【0007】
請求項2記載の排水処理装置は、請求項1記載の排水処理装置において、貯留槽内の排水に空気を供給する曝気手段と、貯留槽内の排水を浄化処理する好気性微生物の棲家となる活性化石炭とを備えるものである。
【0008】
請求項3記載の排水処理装置は、請求項1または2記載の排水処理装置において、第2吸込管および吐出管の少なくともいずれか一方に空気供給管が接続されているものである。
【0009】
請求項4記載の排水処理装置は、請求項1ないし3のいずれか一記載の排水処理装置において、貯留槽内に配置された水中ポンプを備え、前記水中ポンプに第1吸込管、第2吸込管および吐出管が接続され、前記吐出管の途中に乳化手段が設けられているものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乳化手段によって第1吸込管からの浮上油脂分および排水を乳化水溶液にできるとともに第2吸込管からの沈殿油脂分および排水を乳化水溶液にできるため、浮上油脂分の腐敗を防止できるばかりでなく、沈殿油脂分をなくすことができ、油脂分を多く含んだ排水を適切に浄化処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0012】
図1において、1は排水処理装置で、この排水処理装置1は、例えば搾乳処理施設等から排出される乳脂肪分(油脂分)および牛糞尿を含んだ排水を浄化処理する装置である。
【0013】
排水処理装置1は、流入管2から流入される排水を一旦貯留し、浄化処理後の排水を処理済水として流出管3から流出させる槽本体4を備えている。
【0014】
槽本体4は、例えば2枚の仕切板5,6にて仕切られて形成された3つの槽、すなわち上流から下流に向って順に、貯留槽である第1処理槽11、第2処理槽12および第3処理槽13を有している。また、第1処理槽11と第2処理槽12とは上部連通部14にて連通され、第2処理槽12と第3処理槽13とは下部連通部15にて連通されている。
【0015】
第1処理槽11内には、1つの圧送手段である水中ポンプ21が第1処理槽11内の排水中に配置されている。
【0016】
そして、水中ポンプ21には、この水中ポンプ21の作動時に、第1処理槽11内の排水の水面に浮かんだ浮上油脂分である浮上乳脂肪分を吸込口部22から排水とともに吸い込む第1吸込管23が接続されている。この第1吸込管23の吸込口部22は、第1処理槽11内の排水の水面付近で上方に向って開口している。また、水中ポンプ21には、この水中ポンプ21の作動時に、第1処理槽11の底部に沈んだ沈殿油脂分である沈殿乳脂肪分を吸込口部24から排水とともに吸い込む第2吸込管25が接続されている。この第2吸込管25の吸込口部24は、第1処理槽11の底部付近で下方に向って開口している。また、第2吸込管25の途中には、この第2吸込管25内を流れる排水に空気を供給する空気供給管26の下流端部が接続され、この空気供給管26の上流端部は第1処理槽11内の排水の水面上の位置で開口している。空気供給管26の途中には、この空気供給管26を流れる空気量を調整する流量調整用バルブ27が設けられている。
【0017】
なお、水中ポンプ21には、流路切換手段(図示せず)が設けられ、この流路切換手段は、タイマ機能を有する制御手段(図示せず)によって制御される。そして、この制御手段による制御により、予め設定された設定時間に基づいて、第1吸込管23から浮上乳脂肪分および排水が吸い込まれる浮上油吸込状態と、第2吸込管25から沈殿乳脂肪分および排水が吸い込まれる沈殿油吸込状態との切換が行われる。
【0018】
また、水中ポンプ21には、この水中ポンプ21の作動時に、乳化した油脂分を含む乳化水溶液(乳濁液)を吐出口部28から第1処理槽11内に排水の水面に向って吐き出す吐出管29が接続されている。この吐出管29の吐出口部28は、第1処理槽11内の排水の水面上の位置で、斜め下方に向って開口している。
【0019】
そして、この吐出管29の途中、すなわち例えば吐出管29の水中ポンプ21側の部分に形成された収容部30内に、第1吸込管23にて吸い込まれた浮上乳脂肪分および排水を乳化水溶液にするとともに第2吸込管25にて吸い込まれた沈殿乳脂肪分および排水を乳化水溶液にする乳化手段、すなわち例えば界面活性機能を有するセラミック31が出し入れ可能に収容されている。
【0020】
この乳化手段であるセラミック31は、例えば鉱石および活性化石炭等を利用してつくったもので、流路切換手段の浮上油吸込状態時には第1吸込管23にて吸い込まれた浮上乳脂肪分および排水と接触してこれら浮上乳脂肪分および排水を乳化水溶液にし、流路切換手段の沈殿油吸込状態時には第2吸込管25にて吸い込まれた沈殿乳脂肪分および排水と接触してこれら沈殿乳脂肪分および排水を乳化水溶液にする。そして、このセラミック31との接触により触媒作用、物理的現象および界面活性機能等に基づいて生成された乳化水溶液は、2つの吸込管23,25に対して共通の吐出管29内を流れて吐出口部28から吐き出される。
【0021】
なお、吐出管29には、この吐出管29を流れる乳化水溶液に空気を供給する空気供給管26aの下流端部が接続され、この空気供給管26aの上流端部は第1処理槽11内の排水の水面上の位置で開口している。空気供給管26aは、例えば吐出管29の管部29aおよび収容部30の2箇所にオリフィス等を介して接続されている。なお、吐出管29の管部29aおよび収容部30のいずれか一方にのみ空気供給管26aを接続した構成でもよい。
【0022】
また、第1処理槽11内には、この第1処理槽11内の排水に空気を供給する曝気手段41が配置されている。この曝気手段41は、例えば第1処理槽11内の下部に水平状に配設され多数の孔42が形成された散気管43にて構成され、この散気管43には配管(図示せず)を介してエアーポンプ44が接続されている。配管の途中にはこの配管を流れる空気量を調整する流量調整用バルブ(図示せず)が設けられている。
【0023】
さらに、第1処理槽11内には、この第1処理槽11内の排水を浄化処理する好気性微生物の棲家となる多孔質性の活性化石炭46が第1処理槽11内の排水中で散気管43の上方に位置するように配置されている。この活性化石炭46は、例えば石炭を希塩酸で処理して微細な孔を形成したもので、この微細な孔に好気性微生物が定着し、この定着した好気性微生物等によって乳化水溶液状態にある排水中の乳化した乳脂肪分等が分解処理される。
【0024】
第2処理槽12は、第1処理槽11からの排水を受け入れて貯留し、この第2処理槽12内に貯留された排水は好気性微生物によって浄化処理される。この第2処理槽12内には、第1処理槽11と同様、この第2処理槽12内の排水に空気を供給する曝気手段51が配置されている。この曝気手段51は、例えば第2処理槽12内の下部に水平状に配設され多数の孔52が形成された散気管53にて構成され、この散気管53には配管54を介してエアーポンプ44が接続されている。配管54の途中にはこの配管54を流れる空気量を調整する流量調整用バルブ55が設けられている。
【0025】
また、第2処理槽12内には、この第2処理槽12内の排水を浄化処理する好気性微生物の棲家となる多孔質性の活性化石炭56,57が第2処理槽12内の排水中で散気管53の上方に位置するように上下2段に配置されている。この活性化石炭56,57は、第1処理槽11内の活性化石炭46と同様、例えば石炭を希塩酸で処理して微細な孔を形成したもので、この微細な孔に好気性微生物が定着し、この定着した好気性微生物等によって第1処理槽11で処理しきれなかった乳脂肪分等が分解処理される。
【0026】
第3処理槽13は、第2処理槽12からの排水を受け入れて貯留し、この第3処理槽13内に貯留された排水はこの排水の水面で繁殖する藍藻類にて浄化処理され、流出管3から処理済水として流出する。
【0027】
なお、図1において2点鎖線で示すように、排水を消毒する消毒器50を第3処理槽13内に配置してもよく、また例えば第3処理槽13の下流に、排水を消毒する第5処理槽(消毒槽)を設けてもよい。また、藍藻類の代わりに、キャベツ等の植物を水耕栽培して排水の浄化処理を行うようにしてもよい。
【0028】
また一方、排水処理装置1は、図2に示すように、少なくとも第3処理槽13を覆う透明ハウス、すなわち例えば槽本体4全体を覆う透明ハウス60を備えている。このため、第3処理槽13では、四季の変化に拘わらず、この第3処理槽13内が水温調整および太陽光により藍藻類の成育に適した状態に設定され、その藍藻類によって前工程の処理槽11,12で処理しきれなかった乳脂肪分等が分解処理される。なお、図示しないが、上面開口状の第3処理槽13のみを透明ハウスで覆うようにしてもよい。
【0029】
次に、上記排水処理装置1の作用等を説明する。
【0030】
乳脂肪分および牛糞尿を含んだ排水が流入管2を流れて第1処理槽11に流入すると、この第1処理槽11では、排水中の乳脂肪分が水面に浮上して分離される。また、第1処理槽11の底部付近には、沈殿乳脂肪分が停留する。
【0031】
そして、水中ポンプ21が作動すると、流路切換手段の浮上油吸込状態時には、浮上乳脂肪分(浮上油脂分)が排水とともに第1吸込管23の吸込口部22から吸い込まれ、吐出管29の収容部30内のセラミック31と接触して乳化水溶液が生成され、この乳化水溶液が吐出管29の吐出口部19から吐き出される。また、制御手段の制御により流路切換手段が沈殿油吸込状態になると、沈殿乳脂肪分(沈殿油脂分)が排水とともに第2吸込管25の吸込口部24から吸い込まれ、吐出管29の収容部30内のセラミック31と接触して乳化水溶液が生成され、この乳化水溶液が吐出管29の吐出口部19から吐き出される。
【0032】
このため、第1処理槽11内の排水の水面上の浮上乳脂肪分の腐敗が防止されるとともに、第1処理槽11の底部に沈殿乳脂肪分が停留することもなく、第1処理槽11内の排水全体が攪拌され、この攪拌により細かくなった乳化状態の乳脂肪分等が、活性化石炭46に棲みついた好気性微生物によって効果的に分解処理される。
【0033】
なお、空気供給管26,26aによる空気供給と曝気手段41である散気管43による空気供給とによって、好気性微生物にとって必要な酸素が十分供給されるため、好気性微生物の活性化を促進できる。また、散気管43による空気供給によって排水中の塩素系殺菌剤や洗浄剤等を飛散させることができる。
【0034】
そして、排水が上部連通部14を流れて第2処理槽12に流入すると、この第2処理槽12では、前工程の第1処理槽11で処理しきれなかった乳脂肪分等が、活性化石炭56,57に棲みついた好気性微生物によって分解処理される。なお、散気管53による空気供給により好気性微生物の活性化が促進される。
【0035】
次いで、排水が下部連通部15から第3処理槽13に流入すると、この第3処理槽13では、排水中に残っている乳脂肪分等が藍藻類にて分解処理され、処理済水となって流出管3から流出する。
【0036】
このように、排水処理装置1によれば、界面活性機能を有するセラミック31によって、第1吸込管23からの浮上乳脂肪分および排水を乳化水溶液にできるとともに第2吸込管25からの沈殿乳脂肪分および排水を乳化水溶液にできるため、浮上乳脂肪分の腐敗を防止できるばかりでなく、沈殿乳脂肪分をなくすことができ、乳脂肪分を多く含んだ排水を適切にかつ効率よく浄化処理でき、よって例えば槽本体4を小型化でき、製造コストの低減等を図ることができる。
【0037】
なお、上記実施の形態では、槽本体4が第1処理槽11、第2処理槽12および第3処理槽13を有する構成について説明したが、例えば図3に示すように、槽本体4が貯留槽である第1処理槽11のみを有する構成でもよく、この構成では第1処理槽11内で浄化処理された処理済水が流出管3から流出する。
【0038】
また、水中ポンプ21に流路切換手段を設けた構成には限定されず、流路切換手段を有さず、第1吸込管23および第2吸込管25の両方から同時に吸い込むようにしてもよい。
【0039】
さらに、第1吸込管23および第2吸込管25を共通の水中ポンプ21に接続した構成には限定されず、例えば第1吸込管23に浮上油脂分を吸い込ませるポンプと、第2吸込管25に沈殿油脂分を吸い込ませるポンプとをそれぞれ別に設けてもよい。
【0040】
また、排水処理装置1は、搾乳処理施設等から排出される乳脂肪分を多く含むパーラー排水の他、飲食店或いは工場等から排出される油脂分を多く含んだ排水等の浄化処理にも適用できる。
【0041】
さらに、空気供給管26,26aを第2吸込管25および吐出管29の両方に接続した構成には限定されず、空気供給管26を第2吸込管25のみに接続した構成や、空気供給管26aを吐出管29の収容部30のみに接続した構成等でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の一実施の形態に係る排水処理装置の概略断面図である。
【図2】同上排水処理装置の概略斜視図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る排水処理装置の概略断面図である。
【符号の説明】
【0043】
1 排水処理装置
11 貯留槽である第1処理槽
21 水中ポンプ
23 第1吸込管
25 第2吸込管
26,26a 空気供給管
29 吐出管
31 乳化手段であるセラミック
41 曝気手段
46 活性化石炭

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水が貯留される貯留槽と、
この貯留槽内の排水の水面に浮かんだ浮上油脂分を排水とともに吸い込む第1吸込管と、
前記貯留槽の底部に沈んだ沈殿油脂分を排水とともに吸い込む第2吸込管と、
前記第1吸込管にて吸い込まれた浮上油脂分および排水を乳化水溶液にするとともに、前記第2吸込管にて吸い込まれた沈殿油脂分および排水を乳化水溶液にする乳化手段と、
前記乳化水溶液を前記貯留槽内に吐き出す吐出管と
を備えることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
貯留槽内の排水に空気を供給する曝気手段と、
貯留槽内の排水を浄化処理する好気性微生物の棲家となる活性化石炭とを備える
ことを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
第2吸込管および吐出管の少なくともいずれか一方に空気供給管が接続されている
ことを特徴とする請求項1または2記載の排水処理装置。
【請求項4】
貯留槽内に配置された水中ポンプを備え、
前記水中ポンプに第1吸込管、第2吸込管および吐出管が接続され、
前記吐出管の途中に乳化手段が設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−11945(P2009−11945A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−177429(P2007−177429)
【出願日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(506310050)株式会社アクト (16)
【Fターム(参考)】