説明

排水処理装置

【課題】排水の処理を行う排水処理装置において、排水中に浸漬される排水浸漬部材に付着した付着物を簡便かつ確実に除去することができる合理的な付着物除去技術を提供する。
【解決手段】排水処理槽1において、担体流動生物濾過槽30には、槽内のリン成分を除去するためのリン除去装置60が設置されている。このリン除去装置60の金属電極62は、担体流動生物濾過槽30内の排水中に浸漬された状態で、支持部材80によって支持されるように構成されている。すなわち、一対の金属電極62は、一対のスリット部82に差込まれることによって支持部材80の支持部81aを跨ぎ、電極保持具61ごと支持部81a上に載置される。そして、金属電極62をスリット部82から引き上げることで、金属電極62の表面に付着した付着物とスリット部82との当接作用によりこの付着物が除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理技術に係り、詳しくは排水中に浸漬される排水浸漬部材に付着する付着物を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境対策への積極的な取り組みが進み、家庭用排水に含まれる窒素やリンが河川や湖の富栄養化に及ぼす影響が問題視されはじめている。そこで、排水中の窒素やリンを浄化する技術の開発が行われており、特に排水中のリン成分を電気分解法で除去する方法として、例えば、鉄の電解溶出法を用いた排水処理技術(特許文献1)が開示されている。この技術は、排水中のリン酸イオンを鉄イオンと反応させ、水不溶性の塩、例えばFePO4などのリン酸鉄として凝集沈殿させて除去する技術であり、電解槽中に設置された鉄製の金属電極に通電することで排水中に鉄イオンを溶出させるものである。そして、かかる電極溶解法を用いた排水処理装置として、従来、例えば嫌気槽、好気槽、処理水槽および消毒槽を有し、該処理水槽の排水を金属電極が設けられた電解槽を介して放流させるように構成されたものがある。この電解槽により、処理水槽の排水に含まれるリン成分の除去を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平3−89998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構成の排水処理装置は、排水に含まれるリン成分の除去を効率よく行うことができる点において有効である。しかしながら、上記従来の排水処理装置において、金属電極の表面に生物膜等の付着物が付着すると、金属電極からの鉄イオンの溶出機能が阻害され、リン成分の安定した除去効果を得るのが難しいという問題がある。従って、定期的に電解槽から金属電極を取り出し、金属電極の表面に付着した付着物を除去する作業、例えば金属電極の表面をブラシによって擦る作業が必要であり面倒であった。なお、このような生物膜等の付着の問題は、上記のような金属電極に限らず排水中に浸漬される種々の浸漬部材に一般に発生するものである。
【0005】
そこで、本発明は、以上のような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、排水の処理を行う排水処理装置において、排水中に浸漬される排水浸漬部材に付着した付着物を簡便かつ確実に除去することができる合理的な付着物除去技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明の排水処理装置は請求項1〜4に記載の通りに構成されている。また、本発明の排水処理方法は請求項5〜8に記載の通りである。
【0007】
請求項1に記載の排水処理装置において、排水浸漬部材は、排水中に浸漬され排水容器(側)に着脱させることができる。また、当接部材は、排水浸漬部材に付着した付着物と当接する。そして、当接部材と排水浸漬部材とが相対移動すると、その当接作用によって排水浸漬部材に付着した付着物が除去されることとなる。これにより、例えば、当接部材に対して排水浸漬部材を移動させることで付着物を除去することができるため、付着物の除去作業が簡便である。また、当接部材と排水浸漬部材とは実際に当接しており、この当接状態を好適に調整することで付着物の除去を確実に行うことができる。
なお、本発明の当接部材と排水浸漬部材との相対移動の移動方向としては、排水浸漬部材を排水容器に対して着脱させる際の移動方向と同一であることが好ましい。これにより、排水浸漬部材を着脱する操作に合わせて排水浸漬部材に付着した付着物を除去することができるため合理的である。
ここで、本発明でいう「排水浸漬部材」とは、排水処理設備において排水に浸漬される部材であって、例えば排水中のリン成分の電気分解除去に用いられる金属電極をはじめ、排水中の付着物が付着する種々の部材を広く含むものとする。また、「付着物」には、例えば、排水中の有機汚濁物質による生物膜や種々のスケール、またこれらが複合して形成されたもの等、排水中において浸漬部材に付着するものを広く含むものとする。
以上のように、請求項1に記載した排水処理装置によれば、排水浸漬部材に付着した付着物の除去を簡便かつ確実に行うことができる。
【0008】
また、請求項2に記載の排水処理装置において、排水浸漬部材は当接部材の挿入部に挿入出させることができ、当接部材の挿入部は、排水浸漬部材に付着した付着物と当接する。そして、排水浸漬部材を挿入部へ挿入、挿出させることで、付着物が除去されることとなる。ここで当接部材の挿入部は、排水浸漬部材の形状に対応した大きさに形成され、排水浸漬部材の挿入状態において挿入部と排水浸漬部材との間に微小隙間を有していることが好ましい。これにより、排水浸漬部材が当接部材によって支持された挿入状態から挿出状態へ移動させる過程において、排水浸漬部材の表面に付着した付着物は挿入部と当接し、この挿入部の当接箇所によって排水浸漬部材の表面から除去されることとなる。
従って、請求項2に記載した排水処理装置によれば、排水浸漬部材に付着した付着物の除去を簡便かつ確実に行うことができるうえに、当接部材が、排水浸漬部材に付着した付着物を除去する機能と排水浸漬部材を支持する機能の両機能を有するため合理的である。
【0009】
また、請求項3に記載の排水処理装置において、金属電極が排水中に浸漬されている。この金属電極としては、例えば、排水中のリン成分を除去するために用いられるリン除去装置の電気分解用金属電極がある。そして、この金属電極と当接部材との相対移動によって、金属電極に付着した付着物が除去される。これにより、金属電極に付着した付着物の除去を簡便かつ確実に行うことができ、付着物の除去によってリン除去装置の安定したリン除去性能が得られることとなる。
従って、請求項3に記載した排水処理装置を、例えば電気分解用の金属電極における付着物の除去に好適に用いることができる。
【0010】
また、請求項4に記載の排水処理装置において、金属電極と挿入部との数が対応し、金属電極は挿入部へ挿入される際に各挿入部の間に形成される支持部を跨ぐようになっている。これにより、例えば、二片の金属電極に対応して当接部材の2箇所にスリット部(挿入部)が設けられている場合、金属電極を挿入部に挿入した状態では、金属電極は各スリット部間の支持部を跨いで安定的に支持されることとなる。そして、各スリット部間に形成された支持部は、金属電極を安定的に支持することができるうえに、排水容器内を流動する担体が例えば排水容器外へ流出するのを阻止することができる。
【0011】
また、請求項5に記載の排水処理方法において、所定の操作を順次実施することによって、排水浸漬部材に付着した付着物の除去を簡便かつ確実に行うことができる。
【0012】
また、請求項6に記載の排水処理方法において、所定の操作を順次実施することによって、排水浸漬部材に付着した付着物の除去を簡便かつ確実に行うことができるうえに、当接部材によって排水浸漬部材に付着した付着物を除去する機能と排水浸漬部材を支持する機能の両機能を得ることができるため合理的である。
【0013】
また、請求項7に記載の排水処理方法において、所定の操作を順次実施することによって、金属電極に付着した付着物の除去を簡便かつ確実に行うことができ、例えばリン除去装置の安定したリン除去性能が得られることとなる。
従って、請求項7に記載した排水処理方法を、例えば電気分解用の金属電極における付着物の除去に好適に用いることができる。
【0014】
また、請求項8に記載の排水処理方法において、所定の操作を順次実施することによって、各挿入部間に形成される支持部によって金属電極を安定的に支持することができるうえに、排水容器内を流動する担体が例えば排水容器外へ流出するのを阻止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上説明したように、本発明によれば、排水の処理を行う排水処理装置において、排水中に浸漬される排水浸漬部材に付着した付着物を簡便かつ確実に除去することができる合理的な付着物除去技術を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明における一実施の形態の排水処理槽の概略を示す概略図である。
【図2】図1中のリン除去装置60および支持部材80の構成を示す斜視図である。
【図3】金属電極62が支持部材80に装着された状態を示す断面図である。
【図4】金属電極62を支持部材80から引き上げる途中の状態を示す断面図である。
【図5】別の実施の形態のリン除去装置60および支持部材80の構成等を示す断面図である。
【図6】別の実施の形態のリン除去装置60および支持部材80の構成等を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明における一実施の形態の排水処理槽の構成等を図面に基づいて説明する。なお、本実施の形態は、一般家庭等から排出される排水の排水処理(生物処理)を行う過程において、リン除去装置の金属電極に付着する付着物の除去技術について説明するものである。ここで、図1は本発明における一実施の形態の排水処理槽の概略を示す概略図である。また図2は、図1中のリン除去装置60および支持部材80の構成を示す斜視図である。
【0018】
図1に示すように、本発明における排水処理装置としての排水処理槽1には、例えば一般家庭から排出された家庭用排水を排水処理槽1へ受入れるための流入管2と、浄化処理された処理水を排水処理槽1から放流するための放流管3が設けられ、流入管2から受入れられた排水は、排水処理槽1で連続的に浄化処理されるように構成されている。
【0019】
排水処理槽1は、処理行程の順に対応して、上流(図1中の左側)から第1嫌気濾床槽10、第2嫌気濾床槽20、担体流動生物濾過槽30(本発明における排水容器に対応している)、処理水槽40、消毒槽50を備えている。また、第1嫌気濾床槽10と第2嫌気濾床槽20とは仕切壁4によって区画され、第2嫌気濾床槽20と担体流動生物濾過槽30とは仕切壁5によって区画されている。また、担体流動生物濾過槽30と処理水槽40とは仕切壁6によって区画され、処理水槽40と消毒槽50とは越流堰7によって区画されている。
【0020】
すなわち、流入管2から受入れられた排水は、まず第1嫌気濾床槽10で処理され、次いで第1嫌気濾床槽10から仕切壁4を越えて第2嫌気濾床槽20へ移流し、第2嫌気濾床槽20で処理される。また、第2嫌気濾床槽20で処理された処理水は、仕切壁5を越えて担体流動生物濾過槽30へ移流し、担体流動生物濾過槽30で処理される。また、担体流動生物濾過槽30で処理された処理水は処理水槽40へ移流する。処理水槽40内の処理水は、その一部はエアリフトポンプ70を介して第1嫌気濾床槽10へ戻され、残りは越流堰7を越えて消毒槽50へ移流し、その後、放流管3から系外へ放流されるように構成されている。
処理水槽40のエアリフトポンプ70は、エアーリフト式の流体移送構造を有している。すなわち、エアリフトポンプ70にエアー配管(図示省略)が接続されており、エアリフトポンプ70にエアーが供給されることで、そのエアー流によって処理水槽40の処理水が第1嫌気濾床槽10へ移送されることとなる。
【0021】
次に、排水処理槽1の各槽の構成を詳細に説明する。
まず、嫌気濾床槽10,20には各々濾床11,21が形成され、この濾床11,21には、有機汚濁物質を嫌気性分解する嫌気性微生物を着床させた所定量の濾材C1,C2が充填されている。そして、嫌気濾床槽10,20で処理された処理水は、各々濾床11,21を図1中の矢印方向へ降流するように構成されている。
また、消毒槽50は消毒剤注入装置(図示省略)を備えており、放流する前の処理水を消毒するように構成されている。
【0022】
担体流動生物濾過槽30には、有機汚濁物質を好気性分解する好気性微生物を着床させた所定量の担体C3が槽内を流動できる程度に充填されている。この担体C3は、例えば粒状の中空円筒形に形成されている。担体C3の流動領域の上下には、流体の移動は許容するが担体C3の移動は防止する担体移動防止用部材(図示省略)が設けられている。また、担体流動生物濾過槽30には、槽内へ好気性処理に用いるエアーを供給するための散気装置(図示省略)が設けられ、エアーが供給されることで担体C3は槽内を流動するように構成されている。
【0023】
また、担体流動生物濾過槽30には、槽内のリン成分を除去するためのリン除去装置60が設置されている。このリン除去装置60は、電極保持具61に固定された一対(二片)の金属電極62(本発明における排水浸漬部材に対応している)、給電用ケーブル63、電源制御装置64等を備え、この電源制御装置64において発生する直流電流は、給電用ケーブル63を介して金属電極62へ供給されることとなる。なお、一対の金属電極62の設置数は、処理される排水の量や性状等に応じて種々変更可能である。
【0024】
電極保持具61は、取っ手61cを有する保持具本体61a、この保持具本体61aに内蔵される端子類(図示省略)を密閉するための密閉蓋61b等によって構成されている。この保持具本体61aおよび密閉蓋61bはともに合成樹脂材料、例えば塩化ビニル樹脂などの電気絶縁性材料によって作製されており、取っ手61cへの漏電が遮断されている。
【0025】
二片の金属電極62はいずれも平板状に形成され、ほぼ平行に対向し、所定のクリアランスを有した状態で配置されている。そして、この二片の金属電極62によって陽極および陰極が構成される。また、金属電極62は、例えば鉄、鉄合金、アルミニウム、アルミニウム合金、鉄―アルミニウム合金等によって作製され、電源制御装置64による通電時に排水中への金属イオン(鉄イオン、アルミニウムイオン等)の供給源となる。この金属イオンは、後述するようにリン酸イオンと反応することでリン成分の除去に用いられることとなる。また、電源制御装置64には、金属電極62の極性を所定時間毎、例えば24時間毎に切り換えるための極性反転回路(図示省略)が設けられている。従って、各金属電極が陽極あるいは陰極となり得る。
【0026】
図2に示すように、金属電極62を支持する支持部材80の平板部81には、金属電極62に対応した形状、間隔を有する一対のスリット部82(本発明における挿入部に対応している)が設けられている。すなわち、金属電極62とスリット部82の数は対応している。また、各スリット部の間には、支持部81aが形成されている。この支持部材80のスリット部82は、スリット幅t2が金属電極62の厚みt1よりも若干広く(例えば、1mm程度広く)なるように構成されている。従って、スリット部82に金属電極62が挿入された状態では、スリット部82と金属電極62との間には微小隙間が形成される。また、各スリット部の間に支持部81aを形成し、しかもスリット部82のスリット幅t2は、担体C3の大きさよりも狭く形成されている。すなわち、担体流動生物濾過槽30内の担体C3がスリット部82から流出するのを防止するようになっている。
【0027】
電極保持具61に固定された金属電極62は、担体流動生物濾過槽30内の排水中に浸漬された状態で、支持部材80によって支持されるように構成されている。すなわち、一対の金属電極62は、一対のスリット部82に差込まれることによって支持部材80の支持部81aを跨ぎ、電極保持具61ごと支持部81a上に載置される。これにより、金属電極62は支持部材80に対して所定位置に支持されることとなる。また、金属電極62は、図2中の矢印90あるいは92方向へ上下動可能であり、この上下動によってスリット部82に対して挿入出される。
そして、後述するように、例えば金属電極62をスリット部82から引き上げる(挿出させる)ことで、金属電極62の表面に付着した付着物とスリット部82との当接作用によりこの付着物が除去されることとなる。このように、支持部材80は金属電極62を支持する機能と、金属電極62の表面に付着した付着物を除去する機能の両機能を有する。
【0028】
なお、スリット部82に金属電極62が挿入された際のスリット部82と金属電極62との間には微小隙間、すなわち金属電極62の厚みt1とスリット部82のスリット幅t2との寸法差は、金属電極62の付着物の除去状態、金属電極62の挿入出のし易さ等、必要に応じて種々選択可能である。
【0029】
次に、上記構成の排水処理槽1における排水処理過程において担体流動生物濾過槽30の金属電極62に付着した付着物を除去する手順について説明する。
【0030】
まず、排水処理槽1における排水処理の概要について説明する。
排水処理槽1で排水を処理する場合は、流入管2から第1嫌気濾床槽10へ排水を受入れ、各槽において順次処理していく。すなわち、排水中の有機汚濁物質は、嫌気濾床槽10,20の嫌気性微生物によって嫌気性分解され、次いで、担体流動生物濾過槽30の好気性微生物によって好気性分解される。そして、処理水槽40の処理水は消毒槽50において消毒され、放流管3を介して系外へ放流される。
【0031】
また、排水に含まれるリン成分は、担体流動生物濾過槽30に設置されたリン除去装置60によって除去される。すなわち、リン除去装置60において、電源制御装置64により金属電極62へ直流電流が供給されると、電気分解によって陽極の金属から担体流動生物濾過槽30の排水中へ金属イオン、例えば鉄イオンが溶出する。そして、この金属イオンは、排水中のリン成分と反応する。リン成分は一般にリン酸イオンとして排水に溶解しているので、溶出された金属イオンはリン酸イオンと反応して水に難溶性の金属リン酸塩が生成される。例えば、金属電極62が鉄で作製されている場合には鉄イオンが溶出し、この鉄イオンがリン酸イオンと反応して水に難溶性のリン酸鉄(FePO4など)が生成される。また、金属電極62がアルミニウムで作製されている場合にはアルミニウムイオンが溶出し、このアルミニウムイオンがリン酸イオンと反応して水に難溶性のリン酸アルミニウムが生成される。このように、リン除去装置60を用いてリン成分を含む排水を電気分解することによって、排水中のリン成分は水に難溶性の金属リン酸塩として析出し除去されることとなる。
【0032】
次に、金属電極62に付着した付着物(生物膜等)を除去する手順について図3および図4を参照しながら説明する。ここで、図3は金属電極62が支持部材80に装着された状態を示す断面図である。また、図4は金属電極62を支持部材80から引き上げる途中の状態を示す断面図である。
【0033】
図3に示すように、金属電極62が担体流動生物濾過槽30の排水中に浸漬された状態では、排水中の有機汚濁物質等は金属電極62の表面に生物膜S(本発明における付着物に対応している)として付着する。この生物膜Sを金属電極62の表面から除去する場合には、保持具本体61aの取っ手61cを手で掴み、図3中の矢印90方向へ金属電極62を引き上げる。この際、スリット部82と金属電極62との間には金属電極62を挿入出可能な微小隙間しか形成されていないため、金属電極62を引き上げると、図4に示すように、金属電極62の表面に付着した生物膜Sはスリット部82の内周面との当接作用によって除去される(剥離する)。なお、金属電極62から除去される付着物は、生物膜S以外に種々の要因によって付着されたものであってもよい。このようにして、生物膜Sは金属電極62の表面から除去されることとなる。なお、図4では、金属電極62の表面から除去された生物膜Sを二点鎖線で示している。
なお、金属電極62の種々の点検(定期点検など)を行う際に金属電極62の着脱(引き上げ)操作を行うが、この金属電極62の着脱操作に合わせて生物膜Sの除去をも行うことができるため合理的である。
【0034】
以上のように構成した本実施の形態の排水処理槽1を用いた排水処理技術によれば、金属電極62を支持部材80から引き上げるのみで、スリット部82によって金属電極62の表面に付着する生物膜Sを除去することができるため、付着物(生物膜S等)の除去を簡便に行うことができる。特に、支持部材80に対する金属電極62の着脱操作と、金属電極62の付着物除去操作を同時に行うことができるため合理的である。また、支持部材80のスリット部82と金属電極62に付着する生物膜Sとの当接状態を好適に調整することで生物膜Sの除去を確実に行うことができる。
また、金属電極62を支持する支持部材80が付着物の除去機能をも有するため合理的である。そして、金属電極62の表面に付着した付着物の除去を行うことで、リン除去装置60の安定したリン除去性能を得ることができる。
また、各スリット部82の間に形成される支持部81aによって金属電極62を安定的に支持することができるうえに、スリット部82および支持部81aの作用によって、担体C3が担体流動生物濾過槽30外へ流出するのを阻止することができる。
【0035】
〔他の実施の形態〕
なお、本発明は上記の実施の形態のみに限定されるものではなく、種々の応用や変形が考えられる。例えば、上記実施の形態を応用した次の各形態を実施することもできる。
【0036】
(A)上記実施の形態では、支持部材80のスリット部82を、金属電極62に付着した付着物(生物膜S)を除去する手段として用いる場合について記載したが、金属電極62の付着物の除去を別の部材を用いて行うこともできる。この例について図5を参照しながら説明する。ここで、図5は別の実施の形態のリン除去装置60および支持部材80等の構成を示す断面図である。なお、この図において図3中の要素と同一の要素には同一の符号を付している。
図5に示すように、支持部材80の挿入孔83の下面側に付着物除去部材100が設置されている。この付着物除去部材100はスリット部102を有し、このスリット部102は、本実施の形態のスリット部82と同様の形状(スリット幅t2)に形成されている。そして、金属電極62をスリット部102から引き上げることで、金属電極62とスリット部102との当接作用によって、金属電極62に付着した付着物が除去されることとなる。
【0037】
(B)また、上記実施の形態では、金属電極62に付着した付着物(生物膜S)を除去する際に、金属電極62を支持部材80に対して上下方向へスライドさせる場合について記載したが、金属電極62と支持部材80との相対移動の方向は上下方向に限定されない。例えば、金属電極62を支持部材80に対して左右方向へスライドさせることで、金属電極62の表面に付着した付着物を除去するように構成することもできる。この例について図6を参照しながら説明する。ここで、図6は別の実施の形態のリン除去装置60および支持部材80等の構成を示す斜視図である。なお、この図において図2中の要素と同一の要素には同一の符号を付している。
図6に示すように、支持部材80には、本実施の形態のスリット部82と同様のスリット幅t2を有し、金属電極62を電極保持具61ごと図中の実線位置から二点鎖線で示す位置までスライドさせることができる長さのスリット部84が設けられている。また、支持部材80の下面側においてスリット部84のほぼ中央位置には、付着物除去部材110が設置されている。そして、金属電極62を電極保持具61ごと支持部材80に対してスライドさせることで、金属電極62の表面の付着物と付着物除去部材110とが当接し、これにより金属電極62に付着した付着物が除去されることとなる。
【0038】
(C)また、上記実施の形態では、金属電極62の表面に付着した付着物を除去する際に、支持部材80に対し金属電極62を移動させる場合について記載したが、金属電極62に対し支持部材80を移動させるように構成することもできる。
【0039】
(D)また、上記実施の形態では、金属電極62とスリット部82の数が対応している場合について記載したが、金属電極62とスリット部82の数は対応していなくてもよい。例えば、1つのスリット部に一対の金属電極を挿入出させるように構成することもできる。
【0040】
(E)また、上記実施の形態では、金属電極62に付着した付着物(生物膜S)を除去する場合について記載したが、付着物の除去対象は金属電極62に限定されず、本発明を排水中に浸漬した種々の浸漬部材に付着する付着物の除去に適用することができる。
【0041】
(F)また、上記実施の形態では、担体流動生物濾過槽30にリン除去装置60を設置する場合について記載したが、リン除去装置60の設置箇所はこれに限定されない。このリン除去装置60を、例えば、接触曝気槽、活性汚泥法における曝気槽、また好気処理等の生物処理を行わない嫌気処理槽や溶出槽などに設置することもできる。
【0042】
(G)また、上記実施の形態では、支持部材80に対して金属電極62を移動させる操作を手動操作で行う場合について記載したが、この操作を機械式操作で行うように構成することもできる。
【0043】
なお、以上説明してきた本実施の形態では、金属電極62の表面に付着した付着物を除去する場合について記載したが、金属電極62自体を支持部材80によって支持する形態の説明に鑑みた場合、本発明では、以下の構成を採り得る。すなわち、「排水の処理を行う排水処理装置であって、排水中に浸漬され排水容器側に着脱可能な金属電極と、該金属電極を挿入出可能なスリット部を備えた支持部材とを有し、前記金属電極と前記スリット部との数が対応しており、前記金属電極は、前記スリット部へ挿入される際に各スリット部の間に形成される支持部を跨ぐように構成されていることを特徴とする排水処理装置。」という構成が考えられる。すなわち、金属電極はスリット部へ挿入される際に各スリット部の間に形成される支持部を跨ぐようになっている。これにより、金属電極をスリット部に挿入した状態では、金属電極は支持部を跨いで安定的に支持されることとなる。従って、排水の処理を行う排水処理装置において、排水中に浸漬される金属電極のより確実な支持構造を実現することができる。そして、金属電極が支持部を跨ぐ構成ゆえ、支持部材が支持部によって部分的に閉塞され、排水容器内を流動する担体が例えば排水容器外へ流出することが阻止される。
【符号の説明】
【0044】
1…排水処理槽(排水処理装置)
10…第1嫌気濾床槽
20…第2嫌気濾床槽
30…担体流動生物濾過槽
40…処理水槽
50…消毒槽
60…リン除去装置
62…金属電極(排水浸漬部材)
80…支持部材(当接部材)
81…平板部、81a…支持部
82,84,102…スリット部(挿入部)
100,110…付着物除去部材
S…生物膜(付着物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水の処理を行う排水処理装置であって、
排水中に浸漬され排水容器側に着脱可能な排水浸漬部材と、前記排水浸漬部材に付着した付着物と当接する当接部材とを有し、前記排水浸漬部材と前記当接部材との相対移動によって前記付着物が除去されるように構成されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載した排水処理装置であって、
前記当接部材は、前記排水浸漬部材を挿入出可能で前記付着物と当接する挿入部を有し、前記排水浸漬部材を前記挿入部へ挿入出させることで、前記付着物が除去されるように構成されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載した排水処理装置であって、
前記排水浸漬部材は、金属電極であることを特徴とする排水処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載した排水処理装置であって、
前記金属電極と前記挿入部との数が対応しており、前記金属電極は、前記挿入部へ挿入される際に各挿入部の間に形成される支持部を跨ぐように構成されていることを特徴とする排水処理装置。
【請求項5】
排水の処理を行う排水処理方法において、
排水中に浸漬され排水容器側に着脱可能な排水浸漬部材と、該排水浸漬部材に付着した付着物と当接する排水容器側の当接部材とを設け、前記排水浸漬部材と前記当接部材とを相対移動させ、前記当接部材を介して前記付着物を除去することを特徴とする排水処理方法。
【請求項6】
請求項5に記載した排水処理方法であって、
前記当接部材に前記排水浸漬部材を挿入出可能であり前記付着物と当接する挿入部を設け、前記排水浸漬部材を前記挿入部へ挿入出させることで、前記付着物を除去することを特徴とする排水処理方法。
【請求項7】
請求項6に記載した排水処理方法であって、
前記排水浸漬部材は、金属電極であることを特徴とする排水処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載した排水処理方法であって、
前記金属電極と前記挿入部との数が対応しており、前記金属電極は、前記挿入部へ挿入される際に各挿入部の間に形成される支持部を跨ぐことを特徴とする排水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−161798(P2012−161798A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−102852(P2012−102852)
【出願日】平成24年4月27日(2012.4.27)
【分割の表示】特願2009−218885(P2009−218885)の分割
【原出願日】平成12年10月12日(2000.10.12)
【出願人】(390021348)フジクリーン工業株式会社 (71)
【Fターム(参考)】