説明

排水材及び排水処理方法並びに排水工法

【課題】 浚渫土などの軟弱地盤上におけるサンドマット層造成の作業性を向上させ、且つ透水性の面でも優れた排水材及び排水処理方法並びにそれを用いた排水工法を提供する。
【解決手段】 砂質土と石炭灰とを重量比で40:60〜60:40の範囲で混合した排水材を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、海域、河川、湖沼等の浚渫土などの軟弱地盤からの排水を促進するための排水工法に用いられて好適な排水材及び排水処理方法並びにこれを用いた排水工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の改良のため、軟弱地盤上へ砂を積層してサンドマット層を形成し、その後、バーチカルドレーン材を用いて、例えば、サンドドレーンなどのバーチカルドレーンを形成する排水工法などが知られている(特許文献1など参照)。
【0003】
このようなサンドマット層を造成する工法は、その透水性とサンドドレーン施工機を支持する強度が必要であり、また、サンドマット層を造成する作業性も大きな問題となる。
【0004】
【特許文献1】特開2002−4263号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような従来の問題に鑑み、浚渫土などの軟弱地盤上におけるサンドマット層造成の作業性を向上させ、且つ透水性の面でも優れた排水材及び排水処理方法並びにそれを用いた排水工法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、砂質土と石炭灰とを重量比で40:60〜60:40の範囲で混合したことを特徴とする排水材にある。
【0007】
かかる第1の態様では、砂質土と石炭灰とを所定割合で混合することにより、空気搬送性に優れると共に透水性の向上した排水材とすることができる。
【0008】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の排水材において、前記排水材の透水係数が前記砂質土の透水係数に対して10倍以上であることを特徴とする排水材にある。
【0009】
かかる第2の態様では、砂質土と石炭灰とを所定割合で混合することにより、透水性が向上し、サンドマット層とした場合に排水性に優れたものとなる。
【0010】
本発明の第3の態様は、第2の態様に記載の排水材において、前記排水材の透水係数が0.1cm/secより大きいものであることを特徴とする排水材にある。
【0011】
かかる第3の態様では、透水性がさらに確実に向上し、サンドマット層とした場合に排水性に優れたものとなる。
【0012】
本発明の第4の態様は、第1〜3の何れかの態様に記載の排水材を使用することを特徴とする排水処理方法にある。
【0013】
かかる第4の態様では、砂質土と石炭灰とを所定割合で混合して空気搬送性に優れると共に、透水性の向上した排水材を用いることにより、サンドマット層形成の作業性を向上させることができる。
【0014】
本発明の第5の態様は、砂質土と石炭灰とを重量比で40:60〜60:40の範囲で混合して排水材とし、この排水材を軟弱地盤上へ空気搬送することにより当該軟弱地盤上にサンドマット層を形成する工程を含むことを特徴とする排水工法にある。
【0015】
かかる第5の態様では、砂質土と石炭灰とを所定割合で混合し、空気搬送性に優れた排水材を空気圧送することにより、作業性よくサンドマット層を造成することができる。
【0016】
本発明の第6の態様は、第5の態様に記載の排水工法において、前記排水材の透水係数が0.1cm/secより大きいか又は前記砂質土の透水係数に対して10倍以上の何れかを満たすものであることを特徴とする排水工法にある。
【0017】
かかる第6の態様では、砂質土と石炭灰とを所定割合で混合することにより、透水性が向上したサンドマット層となり、排水性に優れたものとなる。
【0018】
本発明の第7の態様は、第6の態様に記載の排水工法において、前記排水材の透水係数が0.1cm/secより大きいものであることを特徴とする排水工法にある。
【0019】
かかる第7の態様では、砂質土と石炭灰とを所定割合で混合することにより、透水性がさらに確実に向上したサンドマット層となり、排水性に優れたものとなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、浚渫土などの軟弱地盤上にサンドマット層を形成する際に、砂質土と石炭灰とを用いて所定割合で混合して用いることにより、石炭灰、特に埋立処分された石炭灰を有効利用でき、且つ空気圧送性及び透水性の優れた排水材とすることができるので、軟弱地盤上に作用性よく効率的にサンドマット層を形成することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明を実施するための装置の一例の概略を示している。図面に示すように、砂質土を輸送してくる土運船10には、揚土用のサンドポンプ11が設けられており、サンドポンプ11には揚土管12が連結されており、揚土管12は混合装置30に導入されている。混合装置30は図2及び図3を参照しながら後述するが、この例では回転式破砕混合装置である。混合装置30には砂質土と共に石炭灰等を投入するためのホッパ14が設けられており、また、混合装置30で破砕混合された排水材は、その下部に連結された一時貯留槽15に一時的に貯留されるようになっている。また、一時貯留槽15の下部には、搬送管16の始端が連結され、搬送管16には、空気圧送管17が連通され、排水材を空気圧送するようになっている。
【0023】
ここで、回転式破砕混合装置である混合装置30は、縦断面の概略を表す図2及び主要部の横断面の概略を表す図3に示すように、ケーシング31の内側には、支持台32が設けられ、支持台32の起立壁33を水平方向に貫通する水平軸に回転自在に設けられた支持ローラ34が周方向に複数個設けられており、支持ローラ34上には、上下両面が開放された円筒形状の縦型処理容器35がその中心軸を中心として回転自在に載置されている。すなわち、縦型処理容器35の外周面にはフランジ状のレール36及び歯車37が固着されており、縦型処理容器35はレール36を介して支持ローラ34により回転自在に支持されている。また、ケーシング31の内側に支持台32の上方には、複数個の電動機38が設けられ、その回転軸には縦型処理容器35の歯車37と噛み合うピニオン39が取り付けられている。
【0024】
ケーシング31の上部は上蓋40により覆われており、上蓋40の略中央部に設けられた軸受41で回転自在に支持された回転軸42が縦型処理容器35を貫通するように設けられている。回転軸42の外周面には周方向に複数箇所、実施例では4個、軸方向に複数箇所、実施例では4箇所に取付部43が設けられ、各取付部43には複数のリングを鎖状に連結した回転部材44が取り付けられている。なお、回転軸42の上端にはプーリ45が設けられており、プーリ45は電動機46の回転軸に設けられたプーリ47と駆動ベルト48で連結されている。
【0025】
また、上蓋40上には、スクレーパ50が設けられている。スクレーパ50は、縦型処理容器35の内周面に近接して配置される掻取部材51を有し、掻取部材51は、その上部に連結されたクランク軸52と電動機53に設けられたクランク盤54とからなるクランク機構により上下方向に往復移動されるようになっている。
【0026】
なお、縦型処理容器35の上端部と上蓋40との間には円筒形状の上部シュート55が上蓋40の下面に固定されて設けられており、上部シュート55の開口部は上蓋40に設けられて混合処理する材料を投入するための図示しない投入口に連通している。一方、縦型処理容器35の下部には逆円錐筒状を有し、破砕混合処理されて形成された固化処理土を排出するための下部シュート56が設けられている。
【0027】
このような混合装置30により砂質土と石炭灰とを混合するには、まず、電動機38を駆動することにより、ピニオン39及び歯車37を介して縦型処理容器35を自転させると共に、電動機46を駆動することにより、上述した駆動伝達系を介して回転軸42を高速回転させ、自重で垂れ下がっていた複数本の回転部材44を水平に浮揚させて高速回転させる。この状態で図示しない投入口から軟弱土及び石炭灰、必要に応じてさらにセメントを所定の比率で投入すると、投入された材料は上部シュート55から縦型処理容器35中に落下し、さらに落下しながら高速で回転駆動される回転体である回転部材44で打撃されながら破砕混合され、排水材が下部シュート56から排出される。なお、このとき、破砕混合途中の又は破砕混合された材料が縦型処理容器35の内周面に堆積成長しようとするが、電動機53により上下方向に往復移動されるスクレーパ50の掻取部材51と自転する縦型処理容器35とが協働して堆積成長を防止する。
【0028】
このように砂質土と石炭灰とが重量比で40:60〜60:40の範囲で混合された排水材は、かさ密度が9kN/m以下であり、空気圧送性が著しく向上したものである。また、砂質土の透水係数の10倍以上であり、例えば、透水係数が0.1cm/secより大きいものである。
【0029】
ここで、砂質土は、特に限定されず、山砂でも海砂でもよく、例えば、含水比が10%程度のものを用いるのが好ましい。また、石炭灰とは、クリンカアッシュやフライアッシュであり、好ましくはクリンカアッシュである。なお、石炭灰としては、既に埋立処理されたものを用いてもよく、このような石炭灰を用いても、空気圧送性が良好で、透水係数の大きな排水材とすることができる。
【0030】
また、砂質土と石炭灰との好ましい混合比率は、それぞれの含水比率などによって異なるが、重量比で1:3〜3:1の範囲であれば、かさ密度が9kN/m以下のフレーク状となり、また、重量比で40:60〜60:40の範囲であればよい。石炭灰がこれより少ない場合には、透水係数が十分に大きくならず、また、砂質土がこれより多い場合には、かさ密度が大きく、空気圧送性が十分に大きくはならず、透水係数の増加も顕著ではない。
【0031】
このようにして得られる排水材は、空気圧送性に優れるものであるので、搬送管16内を空気圧送されると共に、搬送管16の出口から噴出して空中を飛行し、広範囲に亘って空気圧送により堆積させることができ、軟弱埋立地盤21の表面に、非常に作業性良好に層状に堆積させてサンドマット層22を造成することができる。
【0032】
かかるサンドマット層22は、サンドドレーン施工機などを支持することができる程度に強度が十分であり、また、透水係数が十分に大きなものである。
【0033】
本発明では、このように予め砂質土と石炭灰とを回転式の破砕混合することにより、9kN/m以下の所定のかさ密度を有する排水材とすることができるので、空気圧送性の優れた排水材を得ることができ、これを空気圧送により空中を飛行させて堆積させることにより、非常に作業性良好にサンドマット層を形成することができる。
【0034】
また、このような排水材を製造する場合の混合装置30としては、上述した装置に限定されず、従来から公知の各種装置を使用することができる。
【0035】
混合装置30の他の例を図4〜図6に示す。図4は、例えば、特開昭63−217015号公報に開示される、ベルトコンベア式の混合装置30Aであり、複数のベルトコンベア301、302によりそれぞれ搬送される原料がダンパシュート303を介して他のベルトコンベア304上へ混合された状態で落下されるようになっており、混合された混合物がベルトコンベア304で搬送されるようにしたものである。
【0036】
また、図5は、例えば、特開平10−280471号公報に開示される、重力落下式の混合装置30Bであり、ホッパ311、312から投入され、ベルトコンベア313、314により搬送された原料は、混合容器315の上部から投入されると、下方に落下する間に種々の形状の図示しない邪魔板に衝突して混合されるようになっており、混合物は下方に配置されたベルトコンベア316上に落下するようになっている。
【0037】
さらに、図6は、重力式の混合容器として特に優れた、いわゆるロックラダー式のものの一例であり、例えば、特開2001−182094号公報に開示されるものである。この混合容器は、例えば、円筒容器の混合容器321の中に、内壁に対して回転自在且つ弾性部材に支持されて設けられた邪魔板322が、複数段設けられているものである。
【0038】
(実施例1)
次に、山砂に対して、クリンカアッシュを所定割合で添加し、上述したロックラダー式の混合装置を用いて破砕混合して排水材を得た実施例を示す。
【0039】
山砂(含水比10%)とクリンカアッシュとを1:1の湿潤重量比で混合し、排水材を製造した。なお、以下、クリンカアッシュをC、山砂をSと表記する。
【0040】
(比較例1、2)
次に、山砂とクリンカアッシュとを3:1、1:3で混合し、上述したロックラダー式の混合装置を用いて破砕混合して排水材を比較例1、2とする。
【0041】
(試験例)
製造した排水材のかさ密度、空気による搬送距離別の重量比分布により、製造した排水材の空気圧送性を評価した。
【0042】
製造した排水材のかさ密度、空気による搬送距離別の重量比分布により、製造した排水材の空気圧送性を評価した。これらの結果を図7、図8に示す。また、表1には空気圧送された距離別の重量比を示す。
【0043】
さらに、透水係数を測定した結果を図9に示す。なお、透水係数の測定は、定水位透水試験(JIS A 1218)によるものである。
【0044】
【表1】

【0045】
図9に示すように、混合材料のかさ密度はクリンカアッシュの混合比が大きくなると小さくなるという傾向があるが、両者の混合比が1:1の実施例1と比較してC:S=3:1の比較例2ではかさ比重の増大が顕著ではないこととも認められた。
【0046】
一方、図8に示す空気搬送による距離別の重量比の結果から、比較例1と比較して混合比が1:1の実施例1の搬送性が顕著に大きくなっているが、C:S=3:1の比較例2では搬送性の大きな向上は認められなかった。また、透水係数もC:S=1:3の比較例1と比較して混合比が1:1の実施例1の透水係数が顕著に大きくなっているが、C:S=3:1の比較例2では透水係数の大きな向上は認められなかった。
【0047】
この結果、砂質土とクリンカアッシュの配合比は概ね1:1、すなわち、40:60〜60:40の間が好ましいことが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明を実施するための装置の一例の概略を示す図である。
【図2】図1の混合装置の縦断面の概略を示す図である。
【図3】図1の主要部の横断面の概略を示す図である。
【図4】他の例に係る混合装置の概略を示す図である。
【図5】他の例に係る混合装置の概略を示す図である。
【図6】他の例に係る混合装置の概略を示す図である。
【図7】混合材料のかさ密度を示す図である。
【図8】空気搬送による距離別の重量比の結果を示す図である。
【図9】混合材料の透水係数を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
11 サンドポンプ
12 揚土管
14 ホッパ
15 一時貯留槽
16 搬送管
17 空気圧送管
21 軟弱埋立地盤
22 サンドマット層
30,30A,30B 混合装置
31 ケーシング
32 支持台
33 起立壁
34 支持ローラ
35 縦型処理容器
36 レール
37 歯車
38 電動機
39 ピニオン
40 上蓋
41 軸受
42 回転軸
43 取付部
44 回転部材
45,47 プーリ
46 電動機
48 駆動ベルト
50 スクレーパ
51 掻取部材
52 クランク軸
53 電動機
54 クランク盤
55 上部シュート
56 下部シュート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
砂質土と石炭灰とを重量比で40:60〜60:40の範囲で混合したことを特徴とする排水材。
【請求項2】
請求項1に記載の排水材において、前記排水材の透水係数が前記砂質土の透水係数に対して10倍以上であることを特徴とする排水材。
【請求項3】
請求項2に記載の排水材において、前記排水材の透水係数が0.1cm/secより大きいものであることを特徴とする排水材。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の排水材を使用することを特徴とする排水処理方法。
【請求項5】
砂質土と石炭灰とを重量比で40:60〜60:40の範囲で混合して排水材とし、この排水材を軟弱地盤上へ空気搬送することにより当該軟弱地盤上にサンドマット層を形成する工程を含むことを特徴とする排水工法。
【請求項6】
請求項5に記載の排水工法において、前記排水材の透水係数が0.1cm/secより大きいか又は前記砂質土の透水係数に対して10倍以上の何れかを満たすものであることを特徴とする排水工法。
【請求項7】
請求項6に記載の排水工法において、前記排水材の透水係数が0.1cm/secより大きいものであることを特徴とする排水工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−297708(P2008−297708A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−141876(P2007−141876)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504002193)株式会社エネルギア・エコ・マテリア (24)
【出願人】(000231198)日本国土開発株式会社 (51)
【Fターム(参考)】