説明

排水浄化処理装置

【課題】懸濁物質を含有する排水を連続処理可能であり、全体の小型化が可能な排水浄化処理装置の提供。
【解決手段】第1の槽10と第2の槽20とを備える排水浄化処理装置1において、第2の槽20内に、上方が尖った円錐形の内部構造物35を設置し、第2の槽20の円筒形をなす内壁21上の下部に、第1の槽10から混合水W2が流入する流入口23を、形成し、流入口23において、混合水W2が流入する向きが、横向きであり、かつ、内壁21と内部構造物35の外壁36との間に向かう向きであり、第2の槽20の上部に、混合水W2が流出する流出口23を、形成し、流出口23にフィルタ27を設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、懸濁物質を含有する排水を凝集剤によって浄化処理する際に使用される排水浄化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
日々、懸濁物質を含有する排水が我々の周囲において発生している。かかる排水は浄化処理を施されてから外界に放出される。排水の浄化処理においては、凝集剤が一般的に用いられている。
代表的な凝集剤として、PAC(ポリ塩化アルミニウム、[Al(OH)Cl6−n)や硫酸バンド(硫酸アルミニウム、Al(SO)・nHO)を挙げることができる。
【0003】
排水中の懸濁物質は凝集剤によってフロックとなる。そして、フロックが排水から分離される。
排水を凝集剤によって浄化処理するために、様々な排水浄化処理装置が提唱されている。一般的に用いられている排水浄化処理装置は、反応槽、撹拌槽及び沈降分離槽を有している(例えば、特許文献1を参照)。このような排水浄化処理装置において、排水の浄化処理は以下のようにして行われる。
【0004】
まず、反応槽において、凝集剤が排水に加えられて、混合水がつくられる。混合水中において、凝集剤が懸濁物質を引き寄せ、小さなフロックが形成される。次いで、混合水は撹拌槽に送られる。撹拌槽内において、混合水がゆっくりと撹拌される。この撹拌により、小さなフロックどうしが集まり、大きなフロックが形成される。大きなフロックが形成されたら、混合水は沈降分離槽に送られる。沈降分離槽において、混合水は静置され、フロックが沈降する。そして、混合水は沈降したフロックと上澄み液とに分離される。
混合水から分離された上澄み液は、そのまま外界に放流される。あるいは、上澄み液は、その性状に応じてさらに別の処理を施される。また、沈降したフロックは、水切りされてから地中に埋設される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−119563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した排水浄化処理装置において、反応槽、撹拌槽及び沈降分離槽が必須の構成要素となっている。撹拌槽においては、混合水中で大きなフロックが形成されまでの間、混合水を撹拌し続けることが必要である。また、沈降分離槽においては、フロックが沈降するまでの間、混合水を静置しておくことが必要である。
【0007】
このような排水浄化処理装置においては、排水を撹拌槽及び沈降分離槽に連続供給することができない。すなわち、排水浄化処理装置における排水の浄化処理は、回分処理にならざるを得ない。したがって、未処理の排水を貯めておく槽が必要になる。また、排水の量が多くなれば、撹拌槽及び沈降分離槽の容積を大きくして対応しなければならないし、未処理の排水を貯めておく槽の容積をも大きくしなければならない。結果として、排水浄化処理装置の全体が大型化してしまう。
本発明は、上記問題を解決するものであり、その目的とするところは、排水を連続処理可能であり、全体の小型化が可能である排水浄化処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その課題を解決するために以下のような構成をとる。請求項1の発明に係る排水浄化処理装置は、懸濁物質を含有する排水と凝集剤とが混合されて混合水となる第1の槽と、混合水が当該第1の槽から流入する第2の槽と、を有し、前記第2の槽の内壁は、円形の横断面が上下方向に連続する形状を有し、前記第2の槽の内部に、内部構造物が設置されており、当該内部構造物は、円形の横断面が上下方向に連続する形状を有し、前記第2の槽の横断面において、前記第2の槽の内壁と、前記内部構造物の外壁と、の間に挟まれた環状部分の面積が、下から上に向かって徐々に大きくなっており、前記第2の槽の下部の内壁上に、前記第1の槽から混合水が流入する流入口が、形成されており、当該流入口において、混合水が流入する向きは、横向きであり、かつ、前記第2の槽の内壁と前記内部構造物の外壁との間に向かう向きであり、前記第2の槽の上部に、前記第2の槽の上部まで上昇した混合水が流出する第1の流出口が、形成されており、前記第2の槽の上部と、前記第1の流出口と、のうちの少なくともいずれか一方に、混合水からフロックを捕捉する第1の捕捉手段が、形成されている。
【0009】
第1の槽内において、排水と凝集剤とが混合して混合水となる。排水と凝集剤との混合手段は特に限定されない。第1の槽内に、排水の流れが形成されると、凝集剤はこの流れにのって排水中に拡散する。また、第1の槽の内壁上に突出物が形成されていてもよい。排水の流れが突出物に当たると、排水の流れが乱れる。排水の流れの乱れが排水と凝集剤との混合を促進する。混合水中では、凝集剤が懸濁物質を引き寄せ、小さなフロックが形成される。
【0010】
第1の槽の混合水は、流入口から第2の槽に流入する。第1の槽から第2の槽への混合水の移送手段は特に限定されない。第1の槽における混合水の水位が第2の槽における混合水の水位よりも高く維持されていれば、水頭差により、混合水は第1の槽から第2の槽へ流れる。また、ポンプ等を用いて混合水を第1の槽から第2の槽へ流すことも可能である。
流入口において、混合水の流れの向きは、横向きであり、かつ、第2の槽の内壁と内部構造物の外壁との間に向かう向きである。第2の槽内では、第2の槽の内壁と内部構造物の外壁とが混合水の流れを案内する。この結果、混合水は第2の槽の内壁と内部構造物の外壁との間の環状部分を旋回しつつ流れる。
【0011】
第2の槽の横断面において、環状部分の面積が下から上に向かって徐々に大きくなっている。このため、第2の槽の内壁と内部構造物の外壁とのうちの少なくともいずれか一方は、斜め上向きの面となる。環状部分を旋回して流れる混合水はこの斜め上向きの面から上方への力を受ける。結果として、混合水は環状部分において上向きの螺旋流を形成する。この螺旋流の流速は下から上に向かって徐々に遅くなる。
【0012】
混合水中のフロックは螺旋流にのって環状部分を徐々に上昇する。この上昇過程において、混合水中のフロックが互いに集まる。螺旋流が第2の槽の上部に達するまでの間に、大きなフロックが混合水中に形成される。
環状部分において、混合水が螺旋流となって流れる距離は、螺旋流が描く螺旋のピッチに応じて変化する。螺旋のピッチが短くなれば、混合水が螺旋流となって流れる距離が長くなる。また、上方における環状部分の横断面積が大きくなればなるほど、螺旋流の流速が遅くなる。そして、混合水が螺旋を描きつつ流れる時間が長くなる。螺旋流の螺旋のピッチや環状部分の横断面積を調節することで、混合水中で形成されるフロックの大きさを調節することができる。
【0013】
第2の槽の上部に大きなフロックが集まる。そして、第2の槽の上部に達した混合水は第1の流出口から流出する。第2の槽の上部または第1の流出口において、第1の捕捉手段が混合水からフロックを捕捉する。
排水浄化処理装置に懸濁物質を含有する排水を連続供給することが可能である。そして、必要な槽の数は2つで足り、沈降分離槽が不要である。
【0014】
第2の槽の内壁の横断面は、真円であってもよいし、真円以外の楕円等であってもよい。また、内部構造物の横断面は、真円であってもよいし、真円以外の楕円等であってもよい。なお、環状部分において、混合水の螺旋流に乱れが生じることを防止することは、混合水中に大きなフロックを形成する観点から好ましい。したがって、第2の槽の内壁の横断面と内部構造物の横断面とは、ともに真円または真円に近い形状であることが好ましい。
【0015】
第2の槽の内壁において、同じ大きさの円形横断面が上下に連続していてもよいし、円形横断面の大きさが上下方向に連続して変化していてもよい。内部構造物においても、同じ大きさの円形横断面が上下に連続していてもよいし、円形横断面の大きさが上下方向に連続して変化していてもよい。
第1の捕捉手段は、例えば、混合水を濾過するフィルタであればよい。また、第1の捕捉手段は、混合水の水面からフロックを掻き取るスキマであってもよい。
【0016】
請求項2の発明に係る排水浄化処理装置は、請求項1に記載の排水浄化処理装置であって、前記第1の槽と前記第2の槽とを接続する混合水の流路に、気泡の噴出口が形成されており、当該噴出口から噴出される気泡の径が、20〜60μmである。
混合水中に、気泡の噴出口から20〜60μmの径を有する気泡が噴出される。本願発明者の知見によれば、混合水中において、20〜60μmの径を有する気泡は以下の効果を奏する。すなわち、混合水中において、気泡の表面はプラスかマイナスに帯電している。また、気泡は螺旋流にのって流れる。螺旋流中において、気泡がフロックを形成する凝集剤または懸濁物を引き寄せる。そして、気泡がフロックの沈降を防止する。また、同時に、気泡はフロックどうしが集まって大きくなることを促進する。
【0017】
気泡の噴出口から噴出する気泡の径が20μm未満である場合、本願発明者の知見によれば、以下の不具合が生じる。すなわち、気泡が混合水中で収縮してしまう。そして、気泡が混合水中から消滅してしまう。
また、気泡の噴出口から噴出する気泡の径が60μmを超える場合、本願発明者の知見によれば、以下の不具合が生じる。すなわち、気泡の噴出口から噴出する気泡は、膨張し、螺旋流にのることなくまっすぐに上昇してしまう。また、単位体積当たり気泡に引き寄せられるフロックの量も少ない。
【0018】
したがって、フロックの沈降を防止するとともに大きなフロックを形成する観点から、気泡の噴出口から噴出する気泡は20〜60μmの径を有していることが好ましい。
なお、第1の槽と第2の槽とを接続する混合水の流路には、第2の槽における混合水の流入口も含まれる。
【0019】
請求項3の発明に係る排水浄化処理装置は、請求項1又は請求項2に記載の排水浄化処理装置であって、前記第2の槽の下部において、前記流入口よりも低い位置に、混合水が流出する第2の流出口が形成されており、前記吐出口と前記第2の流出口との間と、前記第2の流出口と、のうちの少なくともいずれか一方に、前記第2の流出口から流出する混合水からフロックを捕捉する第2の捕捉手段が、形成されている。
【0020】
混合水の一部が第2の流出口から流出する。この流出量を調節することにより、環状部分における混合水の流量や流速が調節される。そして、環状部分における混合水の流量や流速を調節することにより、第2の槽の上部に集まるフロックの大きさを調節することができる。
第2の槽内において、流入口と第2の流出口との間に、第2の流出口から流出する混合水の流量制御手段を設けることが可能である。また、第2の流出口に、混合水の流量制御手段を設けることも可能である。この流量制御手段は、例えば、流量制御弁であってもよいし、可変絞りであってもよい。
【0021】
第2の流出口は流入口よりも低い位置にある。混合水中のフロックの大半は螺旋流にのって環状部分を上昇してしまう。したがって、第2の流出口に向かって流れるフロックの量は少ない。また、第2の捕捉手段が第2の流出口に向かって流れるフロックを捕捉し、第2の流出口からフロックが流出することを防止する。
【0022】
請求項4の発明に係る排水浄化処理装置は、請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の排水浄化処理装置であって、前記内部構造物の内部に、空洞が形成されており、前記内部構造物の上端部と下端部とにおいて、当該空洞が開口しており、前記内部構造物の下端部における前記空洞の開口と前記吐出口との間と、前記空洞と、のうちの少なくともいずれか一方に、前記空洞に流れる混合水からフロックを捕捉する第3の捕捉手段が、形成されている。
【0023】
混合水の一部が空洞を通って第2の槽の上部に流れる。空洞を流れる混合水の流量を調節することにより、環状部分における混合水の流量や流速を調節することができる。そして、環状部分における混合水の流量や流速を調節することにより、第2の槽の上部に集まるフロックの大きさを調節することができる。
【0024】
第2の槽内において、流入口と空洞との間に空洞を流れる混合水の流量制御手段を設けることが可能である。また、空洞の内部に空洞を流れる混合水の流量制御手段を設けることも可能である。この流量制御手段は、例えば、流量制御弁であってもよいし、可変絞りであってもよい。
第3の捕捉手段が空洞を流れる混合水からフロックを捕捉する。この結果、小さなフロックが第2の槽の上部に集まることが防止される。
【0025】
請求項5の発明に係る排水浄化処理装置は、請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の排水浄化処理装置であって、前記第1の槽の底部の内面が、下に尖ったコーン状をなし、前記第1の槽の底部に、排水の流入口が形成されており、当該流入口から排水が流入する向きが、前記第1の槽の底部の内面に沿った向きである。
第1の槽に流れ込んだ排水は第1の槽の底部の内面に案内され、螺旋流となって上昇する。この排水の螺旋流内において、凝集剤が排水中に拡散し、排水と凝集剤とが混合される。
【0026】
なお、排水が流入口から第1の槽に流入するに際し、排水が流入する向きは、第1の槽の内面に沿った向きであれば良く、横向きであっても良いし、斜め上向きであっても良いし、斜め下向きであっても良い。ただし、第1の槽内において、攪拌機を使わずに排水と凝集剤とを混合する場合、排水が流入する向きは、横向きであることが最も好ましい。排水が流入する向きが横向きであれば、排水の螺旋流のピッチが短くなり、排水が螺旋流となって流れる距離が長くなる。そして、凝集剤が排水中に拡散する時間が長くなり、排水と凝集剤との混合がすすむ。
【0027】
請求項6の発明に係る排水浄化処理装置は、請求項5に記載の排水浄化処理装置であって、前記第1の槽の底部に、凝集剤の投入口が形成されており、凝集剤の当該投入口は、空気の噴出口を兼ねている。
凝集剤は、空気の流れに乗って投入口から第1の槽に入る。また、この空気の流れは、第1の槽内で排水の螺旋流と一緒に流れる。排水と空気とが一緒に流れることにより、排水の螺旋流に乱れが生じる。そして、空気の流れにのった凝集剤は、排水中に拡散し、排水と凝集剤とが混合される。
【0028】
なお、第1の槽において、凝集剤が空気の流れにのって流入する向きは、排水が流入する向きと同じであることが好ましい。両方を同じ向きとすることにより、第1の槽において、排水の螺旋流の乱れが大きくなりすぎることを抑制できる。また、混合水中に形成されたフロックが、螺旋流の乱れによって壊れることを抑制できる。
【0029】
請求項7の発明に係る排水浄化処理装置は、請求項6に記載の排水浄化処理装置であって、前記第1の槽の上部に、前記第1の槽から前記第2の槽への混合水の流出口が形成されている。
排水の流入口と凝集剤の投入口は、第1の槽の底部に形成されている。第1の槽の底部において、排水の流れと空気の流れが一緒になるとき、排水の螺旋流に大きな乱れが生じる。排水の螺旋流に生じる乱れは、第1の槽の上部に近づくにつて小さくなる。第1の槽の底部において、螺旋流の乱れが、排水と凝集剤との混合を促進する。第1の槽の上部においては、螺旋流の乱れが小さくなるので、混合水中で壊れるフロックが少ない。第1の槽の上部に混合水の流出口を形成することにより、第1の槽の上部に集まったフロックをそのまま第2の槽へ送ることができる。
【発明の効果】
【0030】
上記のような排水浄化処理装置であるので、排水を連続処理可能であり、全体の小型化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】排水浄化処理装置の構成図である。
【図2】第2の槽の縦断面の部分構成図である。
【図3】第2の槽の横断面の構成図である。
【図4】変形例に係る第1の槽の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の実施の形態を図1から図3を参照しつつ説明する。
以下の説明において、混合水W2とは、「懸濁物質Sを含有する排水W1と、凝集剤Aと、が混合してなる水」のことをいうものとし、浄化水W3とは、「混合水W2からフロックFを除去した水」のことをいうものとする。
排水浄化処理装置1は、第1の槽10及び第2の槽20を有する。第1の槽10と第2の槽20とは配管42を介して互いに接続されている。配管42が混合水W2の流路をなしている。
【0033】
第1の槽10の上部に、排水W1の流入口13と凝集剤Aの投入口14とが形成されており、第1の槽10の下部に、混合水W2の流出口15が形成されている。流出口15は配管42の第1の槽10側端部である。ポンプ43が流入口13の上流側に設置されており、排水W1を第1の槽10内に吐出可能に構成されている。第1の槽10内の上部近傍と底部近傍と中央部近傍とには、攪拌機17がそれぞれ設置されている。第1の槽10の内壁11上に、板状体18が脚18Aを介して突出して設置されている。板状体18の内壁11側の縁と内壁11との間には隙間18Bが形成されている。攪拌機17と板状体18とが撹拌手段をなしている。
【0034】
第2の槽20は円筒形容器である。第2の槽20の内壁21は同じ大きさと形の円形横断面を上下方向に連続して有している。内壁21の円形横断面の形は真円である。
第2の槽20の下部において、内壁21上に混合水の流入口23が形成されている。流入口23は配管42の第2の槽20側端部であり、配管42の一部をなしている。流入口23において、混合水W2が流れる向きは、横向きであり、かつ、内壁21と後述する内部構造物35の外壁36との間に向かう向きである。
【0035】
流入口23に、気泡Bの噴出口24が形成されている。噴出口24は気泡発生手段44に連なっている。噴出口24は、配管42を流れる混合水W2中に20〜60μmの径を有する気泡Bを噴出可能に構成されている。
第2の槽20の上部に、混合水W2の流出口26が形成されている。流出口26が第1の流出口をなしている。流出口26が形成されている位置の高さは第1の槽10の上端部の位置の高さよりも低い。流出口26には、フィルタ27が形成されている。フィルタ27が第1の補足手段をなしている。また、流出口26には、流量制御弁28が設置されている。
【0036】
第2の槽20の底部に、混合水W2の流出口30が形成されている。流出口30が第2の流出口となしている。流出口30には、流量制御弁31が設置されている。
網33が第2の槽20内に水平に張られている。網33の位置は流入口23の位置よりも下方である。網33は第2の槽20内を上下に二分している。流入口23と流出口30との間は、網33によって隔てられている。網33が第2の補足手段をなしている。
【0037】
第2の槽20内に、内部構造物35が設置されている。内部構造物35は上部が尖った円錐形をなし、その円形横断面の径が下から上に向かって徐々に小さくなっている。内部構造物35の円形横断面の形は真円である。
内部構造物35は網33の上に支承されている。内部構造物35の上下方向の中心軸線は、第2の槽20の上下方向の中心軸線と一致している。内部構造物35の上端部がある位置の高さは、流出口26が形成されている位置の高さよりも低い。
【0038】
第2の槽20において、内壁21と内部構造物35の外壁36との間に挟まれた部分が、環状部分40をなしている。環状部分40の横断面積は下から上に向かって徐々に大きくなっている。
内部構造物35は内側に空洞37を有している。空洞37は、内部構造物35の上端部において開口し、第2の槽20内につながっている。また、空洞37は、内部構造物35の下端部においても開口し、網33を介して第2の槽20内につながっている。網33は第3の補足手段をも兼ねている。空洞37内には、流量制御弁38が設置されている。
【0039】
以上が排水浄化処理装置1の構成である。次に、排水浄化処理装置1が奏する作用効果について説明する。
最初、作業員は、流量制御弁28、流量制御弁31及び流量制御弁38を閉じておく。そして、作業員は、第1の槽10と第2の槽20とに清浄な水を満たす。
次いで、作業員は、流量制御弁28を開く。そして、作業員は、ポンプ43を稼働させて排水W1を流入口13から第1の槽10内に吐出する。同時に、作業員は、凝集剤Aを投入口14から第1の槽10内に投入する。さらに、作業員は、気泡発生手段44を稼働させ、噴出口24から気泡Bの噴出を開始する。
【0040】
作業員は、攪拌機17により、第1の槽10内で排水W1を撹拌する。第1の槽10内において、排水W1が撹拌され、流れf1が形成される。凝集剤Aが流れf1にのり排水W1中に拡散する。そして、排水W1と凝集剤Aとが混合し、混合水W2がつくられる。流れf1は、板状体18に当たって乱れる。また、流れf1が、板状体18と内壁11との間の隙間18Bを通ることによって、流れf1の乱れがさらに大きくなる。流れf1が乱れることにより、排水W1と凝集剤Aとの混合が促進される。混合水W2中において、凝集剤Aが懸濁物質Sを引き寄せ、小さなフロックFが形成される。
【0041】
また、作業員は、ポンプ43の吐出量と流量制御弁28の開度とを調節し、第1の槽10内の水面の高さを、第2の槽20内の水面の高さよりも高く維持する。この結果、第1の槽10内の混合水W2は流出口15から配管42に流れ込む。配管42に流れ込んだ混合水W2は、流入口23から第2の槽20内に流入する。
流入口23において、気泡Bが噴出口24から混合水W2中に噴出される。そして、気泡Bが混合水W2とともに第2の槽20内に流入する。
【0042】
流入口23において、混合水W2の流れは、部分40に向かう横向きの流れであり、かつ、内壁21と外壁36との間に向かう向きの流れである。流入口23を出た混合水W2の流れは、第2の槽20の内壁21と内部構造物35の外壁36とによって案内され、環状部分40を旋回する。また、混合水W2の流れは外壁36から上向きの力を受ける。この結果、混合水W2の流れは上向きの螺旋流f2を形成する。また、環状部分40の横断面積が下から上に向かって徐々に大きくなっているので、螺旋流f2の流速は下から上に向かって徐々に遅くなる。
【0043】
気泡BとフロックFは螺旋流f2にのって環状部分40を旋回しつつ徐々に上昇する。螺旋流f2中において、小さなフロックFどうしが集まり、大きなフロックFが形成される。また、気泡BがフロックFを形成する凝集剤A又は懸濁物質Sを引き寄せる。気泡BはフロックFの沈降を防止し、大きなフロックFの形成を促進する。そして、螺旋流f2中で形成された大きなフロックFは第2の槽20の上部に集まる。
【0044】
第2の槽20の上部において、混合水W2は大きなフロックFとともに流出口26へ流れる。流出口26において、フィルタ27がフロックFを捕捉する。したがって、流出口26において、混合水W2はフロックFを除去されて浄化水W3となる。
螺旋流f2の流量と流速が変化すると、混合水W2が螺旋流f2となって環状部分40を流れる時間が変化する。また、螺旋流f2中で互いに集まるフロックFの量が変化する。したがって、環状部分40における螺旋流f2の流量と流速を調節することによって、第2の槽20の上部に集まるフロックFの大きさを調節することができる。螺旋流f2の流量と流速の調節は、流量制御弁31及び流量制御弁38の開度をそれぞれ調節することによって可能である。
【0045】
作業員が流量制御弁31を開くと、混合水W2の一部が、流入口23から流出口30へ流れる。この結果、螺旋流f2の流量が減り、螺旋流f2の流速が遅くなる。また、網33が流出口30に流れる混合水W2からフロックFを除去する。そして、混合水W2は浄化水W3となって流出口30から流出する。
作業員が流量制御弁38を開くと、混合水W2の一部が流入口23から空洞37へ流れる。この結果、環状部分40における螺旋流f2の流量が減り、螺旋流f2の流速が遅くなる。また、網33が空洞37に流れる混合水W2からフロックFを捕捉する。したがって、小さなフロックFが空洞37を通って第2の槽20の上部に集まることが防止されている。
【0046】
なお、第1の槽10の底部の形状と、排水W1の流入口13の位置と、凝集剤Aの投入口14の位置と、混合水W2の流出口15の位置とを、図4の変形例に示す構成とすることが可能である。
すなわち、変形例において、第1の槽10の底部の内面は下方に尖ったコーン状をなしている。そして、第1の槽10の底部に、排水W1の流入口13と凝集剤Aの投入口14が隣り合って形成されている。流入口13は、第1の槽10の底部の内面に沿って横方向を向いている。投入口14も、第1の槽10の底部の内面に沿って横方向を向いている。
【0047】
また、第1の槽10の内壁11上には、板状体が設置されていない。混合水W2の流出口15が、第1の槽10の上部に形成されている。そして、第1の槽10内の底部近傍に、攪拌機17が設置されている。
投入口14は配管50を介してエアコンプレッサ55に接続されている。配管50の途中にはベンチュリ53が設置されている。ベンチュリ53のオリフィスの上流側において、配管50には配管51の一端が接続されており、配管51の他端は凝集剤Aのホッパー56に接続されている。第1の槽10において、投入口14は、空気の噴出口を兼ねている。
【0048】
作業員は、ポンプ43を稼働させて、排水W1を流入口13から第1の槽10内に吐出する。同時に、作業員は、エアコンプレッサ55を稼働させ、配管50に空気を流す。また、ホッパー56の凝集剤Aを配管51に送る。
配管50中の空気の流れは、ベンチュリ53において速度を増し、凝集剤Aを配管51から吸引する。そして、凝集剤Aは空気の流れにのって投入口14から第1の槽10内に吐出される。
排水W1は、流入口13から第1の槽10内に吐出されて、流れf1を形成する。流れf1は、第1の槽10の底部の内面に案内され、螺旋流となって上昇する。
【0049】
投入口14が流入口13に隣接しているので、投入口14から吐出される空気の流れは、排水W1と一緒になって第1の槽10に流入する。この際、排水W1と凝集剤Aとが混合する。投入口14から吐出される空気の流れは、凝集剤Aともに第1の槽10の底部の内面に案内され、流れf1の一部を形成し、螺旋流となって上昇する。流れf1が上昇する過程においても、凝集剤Aが排水W1中に拡散し、排水W1と凝集剤Aとが混合する。さらに、作業員は、攪拌機17を用いて、排水W1と凝集剤Aとの混合を促進することができる。
【0050】
排水W1と凝集剤Aとが混合して混合水W2となる。そして、混合水W2は第1の槽10の上部まで流れ、流出口15から配管42に流れる。
第1の槽10内において、流れf1に生じる乱れは、第1の槽10の底部近傍において大きく、第1の槽10の上部近傍では小さい。なぜならば、流れf1における大きな乱れの原因は、第1の槽10の底部近傍に存在するからである。原因の一つは、流入口13から吐出される排水W1と投入口14から吐出される空気とが、第1の槽10の底部において、一緒になることである。また、他の原因は、第1の槽10の底部近傍において、攪拌機17が排水W1と凝集剤Aとを混合することである。流れf1が第1の槽10内を上昇するにつれて、流れf1の乱れは小さくなる。
【0051】
第1の槽10の底部近傍では、流れf1の乱れが、排水W1と凝集剤Aとの混合を促進する。流れf1が第1の槽10の上部に近づくにつれて、排水W1と凝集剤Aとの混合が進み、混合水W2中に形成されるフロックFが多くなる。第1の槽10の上部近傍では、流れf1の乱れによって小さく壊れるフロックFの量が少ない。したがって、第1の槽10の上部近傍に、大きなフロックFが多く集まる。そして、第1の槽10の上部近傍に集まったフロックFが、流出口15へ混合水W2とともに流れる。第2の槽20においては、第1の槽10から流入するフロックFがより大きくなる。
なお、作業員は、排水W1と凝集剤Aとの混合状態と、第1の槽10の上部に集まるフロックFの大きさと、に応じて、攪拌機17の使用を決定する。
【符号の説明】
【0052】
1 排水浄化処理装置
10 第1の槽
11 第1の槽の内壁
13 排水の流入口
14 凝集剤の投入口
15 混合水の流出口
17 攪拌機
18 板状体
18A 脚
18B 隙間
20 第2の槽
21 第2の槽の内壁
23 混合水の流入口
24 気泡の噴出口
26 混合水の流出口
27 フィルタ
28 流量制御弁
30 混合水の流出口
31 流量制御弁
33 網
35 内部構造物
36 内部構造物の外壁
37 空洞
38 流量制御弁
40 環状部分
42 配管
43 ポンプ
44 気泡発生手段
50、51 配管
53 ベンチュリ
55 エアコンプレッサ
56 ホッパー
W1 懸濁物質を含有する排水
W2 排水と凝集剤とが混合した水
W3 浄化水
A 凝集剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁物質を含有する排水と凝集剤とが混合されて混合水となる第1の槽と、混合水が当該第1の槽から流入する第2の槽と、を有し、
前記第2の槽の内壁は、円形の横断面が上下方向に連続する形状を有し、
前記第2の槽の内部に、内部構造物が設置されており、当該内部構造物は、円形の横断面が上下方向に連続する形状を有し、
前記第2の槽の横断面において、前記第2の槽の内壁と、前記内部構造物の外壁と、の間に挟まれた環状部分の面積が、下から上に向かって徐々に大きくなっており、
前記第2の槽の下部の内壁上に、前記第1の槽から混合水が流入する流入口が、形成されており、当該流入口において、混合水が流入する向きは、横向きであり、かつ、前記第2の槽の内壁と前記内部構造物の外壁との間に向かう向きであり、
前記第2の槽の上部に、前記第2の槽の上部まで上昇した混合水が流出する第1の流出口が、形成されており、
前記第2の槽の上部と、前記第1の流出口と、のうちの少なくともいずれか一方に、混合水からフロックを捕捉する第1の捕捉手段が、形成されていることを特徴とする排水浄化処理装置。
【請求項2】
前記第1の槽と前記第2の槽とを接続する混合水の流路に、気泡の噴出口が形成されており、当該噴出口から噴出される気泡の径が、20〜60μmであることを特徴とする請求項1に記載の排水浄化処理装置。
【請求項3】
前記第2の槽の下部において、前記流入口よりも低い位置に、混合水が流出する第2の流出口が形成されており、
前記吐出口と前記第2の流出口との間と、前記第2の流出口と、のうちの少なくともいずれか一方に、前記第2の流出口から流出する混合水からフロックを捕捉する第2の捕捉手段が、形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の排水浄化処理装置。
【請求項4】
前記内部構造物の内部に、空洞が形成されており、前記内部構造物の上端部と下端部とにおいて、当該空洞が開口しており、
前記内部構造物の下端部における前記空洞の開口と前記吐出口との間と、前記空洞と、のうちの少なくともいずれか一方に、前記空洞に流れる混合水からフロックを捕捉する第3の捕捉手段が、形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3のうちのいずれかの請求項に記載の排水浄化処理装置。
【請求項5】
前記第1の槽の底部の内面が、下に尖ったコーン状をなし、
前記第1の槽の底部に、排水の流入口が形成されており、当該流入口から排水が流入する向きが、前記第1の槽の底部の内面に沿った向きであることを特徴とする請求項1から請求項4のうちのいずれかの請求項に記載の排水浄化処理装置。
【請求項6】
前記第1の槽の底部に、凝集剤の投入口が形成されており、凝集剤の当該投入口は、空気の噴出口を兼ねていることを特徴とする請求項5に記載の排水浄化処理装置。
【請求項7】
前記第1の槽の上部に、前記第1の槽から前記第2の槽への混合水の流出口が形成されていることを特徴とする請求項6に記載の排水浄化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−56304(P2013−56304A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196633(P2011−196633)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【出願人】(301069030)株式会社トヨタ車体研究所 (4)
【Fターム(参考)】