説明

排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置。

【課題】排水管の曲折部に適用した場合において、摩擦により曲折部に損傷を与えることが少ない洗浄ワイヤー装置を提供する。
【解決手段】排水管の管内洗浄に使用し、排水管の曲折部にほぼ追随して変形可能なワイヤー本体を有する洗浄ワイヤー装置であり、鋳鉄製屈曲部を含む排水管の管内洗浄を目的とし、排水管の内部を直進可能にする剛性と、排水管の鋳鉄製曲折部を通過可能にする可撓性を併有したワイヤー層12を外表面に有し、上記ワイヤー層により、深部に位置する洗浄液パイプ13を被覆しているワイヤー本体11と、ワイヤー本体の変形に伴って変形可能な構造を有して鋳鉄製曲折部に対する摩擦係数の小さい素材より成り、排水管の鋳鉄製曲折部に摺接するワイヤー層の摩擦を低減する手段として、プラスチックより成るらせん被覆体14により上記ワイヤー本体を覆った構成を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は排水管の管内洗浄等に使用され、排水管の曲折部にほぼ追随して変形可能な、ワイヤー本体を有する排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば厨房において、排水システムは給水、給湯設備、各種衛生器具等と一体となって建物内部の衛生、環境を担保するために不可欠な設備である。厨房では、調理において使用した大量の油脂類(グリース、油類)や、食器洗浄において使用した多量の油脂類が混入し、さらにディスポーザーから排出された繊維も混入する。これらが混合した厨房排水は重力排水で排出されるため搬送能力が脆弱であり、特に、床下に横に配設される排水横枝管については取り得る傾斜に限界がある。それにも拘らず、湯水に油脂や雑汚物が混在している厨房排水を管路途中に停滞させることなく流れ去るようにしなければならない。厨房という環境では僅かな溢水や漏水でも悪臭、非衛生、病原菌発生の原因となりやすいから、一旦排水不良を起こすとその害は大きく波及する可能性があり、改善が望まれる状態にある。
【0003】
図1は建築物に設置されている各種設備と排水管網を示しており、各階に浴室、手洗いや便所、台所等の流し、床排水、掃除口その他のドレン等様々な用途の排水管が設置されている。各排水管は緩い傾斜の排水横枝管から排水立て管に接続され、排水横主管に集合され下水管に排出されるが、上記の各排水管の接続ではその多くの箇所にエルボ継手が使用されている。エルボに継手には屈曲角度の緩いものから急なものまで各種あるが曲折部であることに変わりはなく、そこに、可撓性を有するものの直線状の洗浄パイプを通さねばならないことから通過させるには困難が伴う。
【0004】
このような事情から、配管の屈曲部を通過させる技術が提案されている。例えば実開平7−3780号の考案では、エルボ等の屈曲管路を円滑に曲がり得るようにするために、ステンレスバネ線をコイル巻きし、先端に円弧状膨出部を設けた洗浄ノズル用ガイドを提案している。また、特開平11−125400号の発明では、フレキシブルホースと連結した洗浄ノズルを有する配管洗浄装置を開示している。しかし、これらは屈曲部をどのように通過するかを開示しているけれども、通過時に摩擦を伴う抵抗を生じることに対する問題意識は見られない。このため、後述する漏水の問題を解決する上では、これらの考案発明は有効なものではない。むしろ問題意識がなかったために、以下に説明する問題が引き起こされたと考えることもできる。
【0005】
【特許文献1】実開平7−3780号
【特許文献2】特開平11−125400号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
排水システムにおいては衛生管理が重要であり、例えば建築物衛生法では、特定建物の清掃を6ヶ月以内に1回定期的に行わなければならないとしているが、これは最低限度の基準であり、前述の業務用厨房における排水システムの場合には、1ヶ月毎の点検及び3ヶ月毎の清掃が望まれており、これは事実上必須の要件とみなされている。そこで前述のような洗浄ワイヤーを用いた高圧洗浄が定期的に繰り返されているものであるが、その清掃作業の後で排水路から漏水が発生するという事故が多数報告されている。漏水箇所は排水横主管、排水横枝管が大半を占めており、管内洗浄の直後に発見されるため洗浄工程での摩耗が原因ではないかと推測されている。なお、排水管内壁に油脂類が付着し、排水不良が重症化すると、最悪の場合には、建物の床を剥がして排水管又はエルボを取り外す大工事が必要になる。しかしこのような大工事は、できる限り避けたいところである。
【0007】
本発明者は実験により上記の推測の正しいことを確認したが、その原因は、複数の要素が複合した複雑なものであった。図2Aを参照して説明すると、配水管aに洗浄ワイヤーbを挿入するときは、排水管の内部のあちこちに接触しながら移動し、曲折部の外側cは曲げの限界を規定するだけである。しかし、図2Bに示す洗浄ワイヤーの引き抜き時には、曲折部の内側dに向かって洗浄ワイヤーが移動する傾向になり、摩耗が早く進行する。摩耗の進行により曲折部が削られ内側dの肉厚が減少し、ついには削壊に至るものであるけれども、そのメカニズムには排水管曲折部の形状、構造及び材質、洗浄ワイヤーの形状、構造等の要素が絡み合っている。要素としては次のものが挙げられる。
〈排水管曲折部の要素〉
ア.排水管曲折部がエルボ継手と呼ばれる鋳鉄性部材fから成る場合(図3)、その曲折部内側dの部分の形状が複雑で、管路内に突き出した部分eになっており、削られ易い形状である(図4)。
イ.曲折部の内側の部分にはヒケスと呼ばれる鋳造欠陥が出来易い(極率が大きく、鋳湯の流れが円滑でない箇所である、図4参照)。
〈洗浄ワイヤーの要素〉
ウ.排水管内を長距離(最大25m程度)に渡って移動させるため、洗浄ワイヤーの剛性が必要であり、シースとして金属繊維から成る編織構造材料によりワイヤー外周を覆うことになり、それがヤスリの作用を発揮する。
エ.洗浄ワイヤーの特に引き抜き時の摩擦を避ける方法がないため、摩擦長さ数十メートルで排水管内塗膜が剥れ、鋳造素地を削り始めてしまう。
〈その他の要素〉
オ.厨房排水に含まれる排水成分が酸性化しており、排水管曲折部内側の削られた素地と接触することにより、腐食を進行させ易い環境が整っている。
【0008】
これらの要素が相乗すると、上記のような洗浄ワイヤーを用いた定期的な高圧洗浄を数回繰り返しただけでも簡単に削壊する(穴が開く)に至るのである。なお、上記のメカニズムは、洗浄パイプについてのみならず、排水管の内面に付着したグリスを除去するためのカッターを先端に有し、洗浄液パイプを中心部に有していないグリス除去用装置についても、殆どそのまま当て嵌まることである。従って、本発明の洗浄用ワイヤー装置においては、排水管の曲折部の形状にほぼ追随して変形可能なワイヤー本体を有する点において共通するこれらの洗浄用パイプ装置及びグリス除去用装置を含むものである。そして、本発明の課題は、排水管の曲折部に適用した場合において、摩擦により曲折部に損傷を与えることが少ない洗浄ワイヤー装置を提供することである。また、本発明の他の課題は、悪臭、非衛生、病原菌発生の原因を取り除き、排水管の保守管理延いては建物の保守管理の容易化に寄与することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するため、本発明は、排水管の管内洗浄に使用され、排水管の曲折部にほぼ追随して変形可能なワイヤー本体を有する洗浄ワイヤー装置について、鋳鉄製屈曲部を含む排水管の管内洗浄を目的とし、排水管の内部を直進可能にする剛性と、排水管の鋳鉄製曲折部を通過可能にする可撓性を併有したワイヤー層を外表面に有するワイヤー本体と、上記ワイヤー本体の変形に伴って変形可能な構造を有し、かつ上記鋳鉄製曲折部に対する摩擦係数の小さい素材より成り、排水管の鋳鉄製曲折部に摺接するワイヤー層の摩擦を低減する手段として、プラスチックより成るらせん被覆体により上記ワイヤー本体を覆った構成とするという手段を講じたものである(請求項1)。
【0010】
本発明における洗浄ワイヤー装置は、主として、排水管の管内洗浄に使用するもので、曲折部における排水の流れ方向にほぼ沿った移動、殊に、引き抜き方向への移動に効果を発揮し、しかも、ワイヤー本体の構造はその基本構造を踏襲しているので、管内洗浄の妨げとはならないものである。上記基本構造とは、排水管の内部を直進可能にする剛性と、排水管の鋳鉄製曲折部を通過可能にする可撓性を併有したワイヤー層を外表面に有している構造である。剛性を有していることにより、排水管の内壁に付着している油脂類等の汚れを効果的に除去することも可能になる。
【0011】
上記ワイヤー層は、図5等に示した洗浄パイプ装置の場合には深部に位置する洗浄ワイヤーを被覆しており、洗浄液パイプとともにワイヤー本体を構成している。このワイヤー本体を構成している洗浄液パイプはナイロンチューブ、或いはポリエステルチューブなどから成り、所望の可撓性を有している。またワイヤー層としては、上記パイプ本体の外表面に繊維状のワイヤーを網状に編み上げたものや、或いは太いワイヤーをコイル状に巻いたものがあり、どちらのものもパイプ本体と一体化して洗浄ワイヤーを構成している。洗浄ワイヤーは例えば5m、或いは10m等の一定長さを単位としており、基端部にて洗浄機に接続され、先端部に備わっているノズルから洗浄液を噴射して洗浄するもので、高圧洗浄に用いられる。また、先端にカッターを有するグリス除去用装置(図10参照)の場合には、洗浄液パイプを有していないが除去作業を行うカッターを有しており、ワイヤー本体は、その回転のための駆動軸を構成している。
【0012】
本発明の装置は、上記ワイヤー本体の変形に伴って変形可能な構造を有し、かつ上記鋳鉄製曲折部に対して摩擦係数の小さい素材より成り、排水管の鋳鉄製曲折部に摺接するワイヤー層の摩擦を低減する手段として、プラスチックより成るらせん被覆体により上記ワイヤー本体を覆った構成を具備している。らせん被覆体は、例えばポリエチレンなどのプラスチック材料を用いて文字通りらせん状に形成したもので、ワイヤー本体の外表面に事実上隙間を生じないように巻き付けられる形状、構造を有している。
【0013】
本発明の装置は、排水管の鋳鉄製曲折部において、次式:
=W/α*m+β
(N:年数、W:管壁の厚み、α:1回の洗浄による削滅深度、m:洗浄回数、β:1年間の侵食予測値、厚み以下の単位はいずれもmm)、
で推定される耐用年数の間、排水管の管内洗浄に使用できるものであることが望まれる。
従来は、仮にα=0.2(4インチ用90°エルボ鋳鉄継手の実測値)、最初の洗浄で内壁塗装が剥離されるのでβ=0.1、m=2とすると、N=3.5、つまり3年半程度の耐久性しかなかったが、本発明によればα=0.01(同じく実測値)、塗装の剥離は起こらずβ=0.01であるので、14年程度まで耐久性が延びることになり、漏水の危険性は著しく減少する(請求項2)。
【0014】
本発明の装置は、排水管が厨房排水のための排水管であり、鋳鉄製曲折部がダクタイル鋳鉄製のエルボ継手であり、ワイヤー本体のワイヤー層がステンレススチール繊維から成る被覆構造を有している場合に顕著な効果を得ることができる(請求項3)。即ち、ワイヤー層がステンレススチール繊維から成る編組構造を有しているワイヤー本体から成る洗浄ワイヤー装置では、鋳鉄製曲折部がダクタイル鋳鉄製のエルボ継手であっても、上記のとおり数年以下の程度の耐用年数しか期待できないのであるが、本発明の装置による場合にはダクタイル鋳鉄製曲折部の内側に接触したとしても直ちに摩耗に結び付くものではない。即ち、排水管曲折部削壊に至るには十数年程度の年数が掛かることになるとともに、仮に厨房排水に含まれる排水成分が酸性化して、腐食を進行させ易い環境が整った状態にあったとしてもその影響からほぼ免れることとなる。なお、本発明の装置は、鋳鉄製曲折部がねずみ鋳鉄より成るエルボ継手においても当然有効であり、上記試算とほぼ同様に従来比で約数倍の耐久性の伸びが期待される。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成されかつ作用するものであるから、排水管の曲折部に適用した場合において、仮に曲折部の内側の部分が内方へ突き出した形状を持ち、かつ上記内側の部分にヒケスがあり、さらにそこに繰り返し洗浄ワイヤーを引き抜く力が加えられた場合でも、摩擦により曲折部に損傷を与えることが殆どないので、鋳鉄製曲折部における耐久性が著しく向上するという効果を奏する。また、本発明によれば、定期的に排水管内の清掃を実施することにより、排水管内に油脂類の付着堆積することを防止することができるから、悪臭、非衛生、病原菌発生の原因が確実に取り除かれ、排水管の保守管理を万全のものとすることができ、建物の保守管理の容易化にも寄与することとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下図示の実施形態を参照し、本発明に係る排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置について、より詳細に説明する。図5は、図1ないし図3を参照して説明したような排水管aの管内洗浄に使用され、その曲折部にほぼ追随して変形可能な排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置10の一例を示すものである。なお、曲折部はダクタイル鋳鉄製のエルボ継手から成るものとし、エルボ継手は、その軸線が形成する屈曲角度はほぼ90°以下の任意の角度のものとする。
【0017】
図5の例において、本発明の洗浄ワイヤー装置10は、上記ダクタイル鋳鉄製のエルボ継手を屈曲部に有する排水管aの管内洗浄のために(図2参照)、排水管aの内部を直進可能にする剛性と、ダクタイル鋳鉄製曲折部を通過可能にする可撓性を併有したワイヤー被覆層12を外表面に有し、上記ワイヤー被覆層12が深部に位置する洗浄液パイプ13を被覆した構造のワイヤー本体11を有している。本例において、上記ワイヤー本体11を構成するワイヤー被覆層12はステンレススチール繊維から成り、洗浄液パイプ13はナイロンチューブから成り、ステンレスワイヤーから成る被覆層12は上記洗浄液パイプ13と一体化している。
【0018】
さらに、洗浄ワイヤー装置10は、ワイヤー本体11の変形に伴って変形可能な構造を有するとともに、ダクタイル鋳鉄製曲折部であるエルボ継手の内側dに摺接するステンレスワイヤー被覆層12の摩擦を低減する手段として、上記ダクタイル鋳鉄製曲折部に対する摩擦係数の小さい素材より成るらせん被覆体14を有している。本例において、らせん被覆体14にはポリエチレンより成るものを使用しており、これにより上記ワイヤー本体11の外周全部を覆った構造としている。なお、15、16は夫々可変向ノズルを示している。
【0019】
上記らせん被覆体14は、一定の巻き径を保持することができるもので、その内径は上記ワイヤー本体11の外径と略同程度ないしやや狭小とし、巻き癖によりワイヤー本体11の外周に巻き付いて一体的になるものとする。らせん被覆体14を用いてワイヤー本体11の外表面を被覆することにより、本発明の洗浄ワイヤー装置10の外面にはらせん状の筋となって現れるが、隙間なく巻き付けられて大きな隙間に広がらないようにしなければならない。ワイヤー本体11とらせん被覆体14とは相対的にずれ動ける関係であって良く、接着することを必要としないが、巻き付け始点と終点等の要所は必要に応じて固定することが望ましい。
【0020】
本発明の洗浄ワイヤー装置10においては、ワイヤー編組構造を有しないものについても適用することができるのでその例を次に示す。その例は図9に詳細に図示したとおりであり、線径約2〜3mmのステンレスワイヤーを巻き径約8mmのらせん状にして洗浄液パイプ13の外表面に巻き付け、ワイヤー被覆層18として一体化した構造を有する洗浄液パイプのワイヤー本体19に本発明を適用したものである。らせん被覆体14はこのワイヤー本体19の外表面を被覆しており、前記の例のものと同様に使用される。
【0021】
さらに本発明の洗浄ワイヤー装置10は、図10に示した如く、先端にカッター21、22を有するグリス除去装置についても適用することができる。このグリス除去装置は、図9におけるものと同様の太さのステンレスワイヤーをほぼ同形のらせん状に卷回して形成したワイヤー本体20の外表面にらせん被覆体14を巻き付けたものである。カッターには様々な種類があるが、2翼及び4翼のもののみを例示した。らせん被覆体14はこのワイヤー本体20の外表面全面を被覆しており、前記の例のものと同様ワイヤー本体外周に隙間なく固定される。
【0022】
さらに、本発明の洗浄ワイヤー装置10について、以下に一つの具体例を挙げる。内径100mmのダクタイル製エルボ継手(曲げ角度90°のもの)に対して、ステンレスワイヤー被覆層12を外表面とするワイヤー本体11の外径が約10mmのもの、らせん被覆体14には内径約8mm、厚み約1mm、平板幅hが約8mmのスパイラルチューブ(東方電材株式会社製品の商品名)を使用し、巻き付け始点と終点を長さ約15mmの熱収縮性チューブを用いている。図7の例によると、符号17が熱収縮性チューブからなる固定部材であり、らせん被覆体14の固定のために好結果を得ている。また、らせん被覆体14としては、図8A、B、Cに示したように扁平な断面形の平板を使用することができる。摺動抵抗を減少させるために、らせん被覆体14の外表面にワイヤー本体11の軸線方向と平行な凹凸を設けたものを使用しても良い。なお、らせん被覆体14によって最外部の表面に生じるらせん状の筋は、本発明の洗浄用ワイヤー装置10の挿入と引き抜き時に抵抗を軽減させると判断される。
【0023】
このような構成を有する本発明の洗浄ワイヤー装置10を用いて、ダクタイル製エルボ継手(曲げ角度90°のもの)の洗浄試験を行なうために排水管内に挿入し、挿入と引き抜きを繰り返して、上記エルボ継手の内側dに摺接した結果を観察する試験を行なった。その結果、引き抜き距離50m以上200mまで汚れ付着が見られただけで、塗膜はほぼ残存していることを確認した。これらの状況から、前述の式:
=W/α*m+β
に代入すべき数値は、従来例に比較して少なくとも1/10乃至1/20程度小さい値となり、耐用年数も十数年程度まで延長されることが分かる。
【0024】
上記のように本発明の洗浄ワイヤー装置10によれば、
・建築物に設置されている排水管網に直ちに適応可能、かつ恒久策としても有効であり、
・比較的低価格の一般部品を用いて対応可能であり、
・新設の排水システムは当然のこととして、既存の排水システムを延命可能であり、
・管洗浄協会の理解と協力を得ることで容易に実施することができる、
など、実用面においても優れている。
【0025】
現在多発している厨房排水システムにおける漏水事故は、単に一テナントの問題ではなく、公衆衛生、環境保全等社会問題化しつつある事柄であることを認識すべきである。本発明の洗浄ワイヤー装置10によれば、排水管のみならず洗浄機の耐用年数も延長され、排水管内壁に油脂類が付着して排水不良の重症化することを効果的に防止することができるので、公衆衛生、環境保全について非常に有効であり、上記の社会問題に対する効果的な改善策の一つとなる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置を適用すべき建築物に設置されている各種設備と排水管網を示す説明図である。
【図2】同上の排水管の曲折部に対する洗浄ワイヤーの関係を示すもので、Aは洗浄ワイヤー挿入時の、Bは同引き抜き時の説明図である。
【図3】同じく排水管の曲折部を示す説明図である。
【図4】同上部分のエルボ継手に生じた削壊を示す断面図である。
【図5】本発明に係る排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置の一例を分解して示す外観説明図である。
【図6】同じく本発明に係る洗浄ワイヤー装置の一例を示す外観説明図である。
【図7】らせん被覆体の固定部の例を示す説明図である。
【図8】らせん被覆体の変形例を示すものでA、B、Cは平板の断面形を示す断面図である。
【図9】本発明に係る洗浄ワイヤー装置の他の例を分解して示す外観説明図である。
【図10】本発明に係る洗浄ワイヤー装置の他の例を分解して示す外観説明図である。
【符号の説明】
【0027】
a 配水管
b 洗浄ワイヤー
c 外側
d 内側
e 管路内に突き出した部分
f 鋳鉄製部材即ちエルボ継手
h 平板幅
10 洗浄ワイヤー装置
11 ワイヤー本体
12 ワイヤー被覆層
13 洗浄液パイプ
14 らせん被覆体
15、16 ノズル
17 固定部材
18 ワイヤー被覆層
19 ワイヤー本体
20 ワイヤー本体
21、22 カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水管の管内洗浄等に使用され、排水管の曲折部にほぼ追随して変形可能なワイヤー本体を有する洗浄ワイヤー装置であって、鋳鉄製屈曲部を含む排水管の管内洗浄を目的とし、排水管の内部を直進可能にする剛性と、排水管の鋳鉄製曲折部を通過可能にする可撓性を併有したワイヤー層を外表面に有するワイヤー本体と、上記ワイヤー本体の変形に伴って変形可能な構造を有し、かつ上記鋳鉄製曲折部に対する摩擦係数の小さい素材より成り、排水管の鋳鉄製曲折部に摺接するワイヤー層の摩擦を低減する手段として、プラスチックより成るらせん被覆体により上記ワイヤー本体を覆った構成を有することを特徴とする排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置。
【請求項2】
排水管の鋳鉄製曲折部において、次式:
=W/α*m+β
(N:年数、W:管壁の厚み、α:1回の洗浄による削減深度、m:洗浄回数、β:1年間の侵食予測値、厚み以下の単位はいずれもmm) 、
で推定される耐用年数の間排水管の管内洗浄に使用する請求項1記載の排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置。
【請求項3】
排水管が厨房排水のための排水管であり、鋳鉄製曲折部がダクタイル鋳鉄製のエルボ継手であり、ワイヤー本体のワイヤー層がステンレススチール繊維から成る編組構造を有している請求項1又は2記載の排水管の曲折部に適した洗浄ワイヤー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−233546(P2009−233546A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81518(P2008−81518)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000118590)伊藤鉄工株式会社 (13)
【Fターム(参考)】