説明

排泥処理用凝集剤液の製造方法及び製造装置

【課題】特に工事現場において、比較的簡易な製造装置を使用しながら、排泥処理用凝集剤液を適正な性状と均一化を充足しながら大量製造可能にする。
【解決手段】排泥を略カンテン状の凝集物に処理可能な凝集剤液の製造方法において、助剤と水とを混合して所定量の助剤液を作る助剤液作成工程と、前記工程で作られた助剤液の一部をミキサー室に供給するとともに、前記ミキサー室に前記凝集剤粉を適量づつ供給し前記助剤液に混合溶解する凝集剤混合工程と、前記工程で作られた混合溶液を前記ミキサー室外に排出して前記助剤液の残部に混合した後、その混合溶液の一部を再び前記ミキサー室に供給するとともに、前記凝集剤混合工程と同様な混合溶解作業を順に繰返すことにより、所定濃度まで高めた凝集剤液を作る濃度調整工程と、前記工程で作られた凝集剤液を攪拌しつつ所要粘度まで養生する養生工程とを経る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良等で発生した排泥のうち、特に再利用し難いセメントを含む排泥を工事現場にて連続的に固化処理する際に用いられる排泥処理用凝集剤液の製造方法及び製造装置に関する。なお、本明細書において、「粉」は、粉状に限らず粒状を含む広義なものを意味している。
【背景技術】
【0002】
地盤改良工法では、セメント系の改良材を地盤に貫入したり引き抜かれる撹拌軸に沿って供給し地中に噴射して原位置土と混合し地盤強度を改良することがある。この工法では、地中に噴射された改良材のうち、一部が撹拌軸に沿って地表側に軸周りの土などと共に上昇排出される。この排泥は、セメントを含むために、一般的には再利用されることなく産業廃棄物として搬出処理されている。このような排泥は、含水比が高いため容量が増し、その分運搬費がかかり改良施工費に対する産廃処理費が割高なものとなっている。対策としては、排泥から水分を簡単に脱水したり分離できれば、水の再利用が可能となるだけではなく、脱水後の残滓も減容化されるため運送総量の減少により運搬経費も安価となる。
【0003】
下記特許文献1は、以上のような排泥の脱水ないしは分級方法及び装置を開示しており、まず、ミキサー車等の攪拌機能付きのタンクに対し泥水を投入するとともに薬剤として凝集剤(強アニオン性ポリマー等)及び分離剤(塩基性ポリ無機塩等)を添加攪拌して泥水中の泥を固まりに処理する。その後、処理したもの(以下、凝集物と称する)を、固まりとなった泥を通さず水を通す装置側の水抜き部に通して泥と水とを分離するものである。また、ここには、操作手順として、泥水に対し凝集剤を最初に添加し、次に分離剤を添加して攪拌すること、泥水に対し凝集剤を0.1〜0.2重量%、分離剤を0.2〜0.8重量%の割合で添加することが記載されている。
【特許文献1】特開2004−337757号公報(段落0016〜0018)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した排泥処理においては、特許文献1に記載のように、泥水(本発明の排泥に相当)に凝集剤粉を添加した後、分離剤を加えて混合攪拌しても、凝集剤粉が難溶解性のため大量の泥水を均一な凝集物に処理できない。このため、現在は、メーカ側で凝集剤粉を水溶液に調整した凝集剤液を購入し用いているが、大量に必要とする場合は原料を購入し、使用箇所である工事現場かその付近で調剤する方が品質及び経済的に有利である。なお、排泥処理用薬剤としては、アニオン系高分子凝集剤の水溶液つまり凝集剤液が好ましいとされている。
【0005】
ところが、以上の凝集剤液の製造では、ミキサー室で塩化カルシウム等の助剤を水に溶解して助剤液を作った後、該助剤液を攪拌混合しながら、凝集剤粉をミキサー室の助剤液に徐々に溶解する必要があるが、例えば、凝集剤粉を一度に溶解しようとすると部分的なゲル化現象などが生じて均一性状の凝集剤液として作成できず、また、適正な性状と均一化の問題は攪拌時間を長くしても解消されない。そこで、本発明の目的は、以上のような課題を解消して、特に工事現場において、比較的簡易な製造装置を使用しながら、排泥処理用凝集剤液を適正な性状と均一化を充足しながら大量製造可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1の発明は、凝集剤と助剤と水とからなり、処理対象の排泥に所定割合で添加混合されることで、前記排泥を略カンテン状の凝集物に処理可能な凝集剤液の製造方法において、前記助剤と水とを混合して所定量の助剤液を作る助剤液作成工程と、前記助剤液作成工程で作られた助剤液の一部をミキサー室に供給するとともに、前記ミキサー室に前記凝集剤粉を適量づつ供給し前記助剤液に混合溶解する凝集剤混合工程と、前記凝集剤混合工程で作られた混合溶液を前記ミキサー室外に排出して前記助剤液の残部に混合した後、その混合溶液の一部を再び前記ミキサー室に供給するとともに、前記凝集剤混合工程と同様な混合溶解作業を順に繰返すことにより、所定濃度まで高めた凝集剤液を作る濃度調整工程と、前記濃度調整工程で作られた凝集剤液を攪拌しつつ所要粘度まで養生する養生工程とを経ることを特徴としている。
【0007】
以上の製造方法において、前記凝集剤混合工程では、前記助剤液作成工程で作られた助剤液の一部を前記ミキサー室の供給口側でサイクロン流を生じさせつつミキサー室内に供給し、かつ前記サイクロン流に前記凝集剤粉を適量づつ供給すること(請求項2)、前記助剤液作成工程は、前記ミキサー室に前記水及び助剤を供給して助剤液を作った後、前記ミキサー室外へ一旦排出すること(請求項3)、前記水を前記ミキサー室の供給口側でサイクロン流を生じさせつつミキサー室内に供給し、かつ前記サイクロン流に前記助剤を適量づつ供給すること(請求項4)、が好ましい。
【0008】
これに対し、請求項5の発明装置は、請求項1から4の何れかに記載の製造方法に用いられて、ミキサー室と前記ミキサー室の上側に設けられた供給口及び前記ミキサー室の下側に設けられ排出口を有した横型ミキサーと、上側に設けられた供給口及び下側に設けられた排出口を有した攪拌タンクと、前記ミキサーの供給口に対し前記助剤を供給する助剤供給手段及び前記凝集剤粉を供給する凝集剤供給手段並びに水を供給する水供給手段と、前記ミキサー室で作られた混合溶液をミキサー排出口から入れる第1液槽及び前記第1液槽内の混合溶液を前記攪拌タンクの供給口に送る第1移送手段と、前記攪拌タンクで攪拌された混合溶液をタンク排出口から入れる第2液槽及び前記第2液槽内の混合溶液を前記ミキサーの供給口に送る第2移送手段とを備えていることを特徴としている。
【0009】
以上の製造装置において、前記ミキサーは、前記供給口を離れた2カ所に有し、一方の供給口に対し前記水供給手段から水を供給したり前記助剤供給手段から助剤を供給し、他方の供給口に対し前記第2移送手段から第2液槽内の混合溶液を供給したり前記凝集剤供給手段から凝集剤粉を供給すること(請求項6)、前記供給口が略円筒状をなしているとともに、前記水供給手段及び第2移送手段が前記供給口の円筒形内周方向へ水や混合溶液を噴射することでサイクロン流をそれぞれ形成可能になっていること(請求項7)、が好ましい。
【発明の効果】
【0010】
・請求項1の発明方法では、特に工事現地において、製造過程途中の凝集剤液濃度を順次に上げて目的の濃度に調整しながら製造可能なため、また凝集剤混合工程と共に濃度調整工程によって凝集剤液濃度を順次に上げるため、例えば、局部的なゲル化及び付着を防いで大容量の凝集剤液を適正な性状と均一化を維持しながら製造できる。
・請求項2の発明方法では、助剤液と凝集剤液とを混合初期段階からサイクロン流を介して混合攪拌するため、凝集剤混合工程を攪拌度合い維持しながら作業時間を短縮できる。
・請求項3の発明方法では、同一のミキサー室を助剤液作成工程と凝集剤混合工程とで兼用できる。
・請求項4の発明方法では、助剤と水とを混合初期段階からサイクロン流を介して混合攪拌するため、助剤液作成工程を攪拌度合いを維持しながら作業時間を短縮できる。
・請求項5の発明装置では、ミキサーと、攪拌タンクと、助剤供給手段と凝集剤供給手段並びに水供給手段と、第1液槽及び第1移送手段と、第2液槽及び第2移送手段とから構成されているため、汎用の装置や機器だけで請求項1〜4の製造方法を実施可能にする。
・請求項6と7の発明装置では、例えば、ミキサーが供給口を2つ有し、各供給口が筒形をなしていることにより、水や混合溶液を噴射してサイクロン流として簡単に供給できるようにする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の好適な実施形態について添付図面を参照して説明する。この説明では概要、凝集剤液、その製造装置及び方法、該凝集剤液を使用する排泥処理設備及び処理方法の順に詳述する。
【0012】
(概要)図1は地盤改良工法と排泥処理の関係を示し、符号1はセメントミルク製造プラント、符号2は改良対象地盤の地表部GLに設置された混合撹拌装置、符号15は排泥処理プラント(設備)である。ここで、攪拌混合装置2は、キャタピラ走行式のベースマシン3と、ベースマシン3の先端側に立設された起倒式の鉛直ガイド4と、ガイド4に沿って昇降可能な駆動ヘッド5と、駆動ヘッド5の下部に回転可能に垂設された中空の攪拌軸6と、攪拌軸6の下側外周に配置された複数の攪拌翼7とを備えている。セメントミルク製造プラント1は、サイロ8から供給されるセメント及び水道ないしは排泥処理プラント15で生成される水の供給を受けてセメントミルクを製造する。製造されたセメントミルクは、ポンプ9によりヘッド5の直下に設けたスイベルジョイント5aを介して攪拌軸6内の供給管に圧送され、攪拌軸6の下端側又は攪拌翼7に設けられた噴出口を通じて地中に噴出される。噴射後は、攪拌翼7で原位置土と混合され改良杭10として造成される。
【0013】
以上の造成作業に先立ち、地表部付近には、攪拌軸6の貫入予定部に連絡溝11によって連通する、いわゆる釜揚と称される一時貯留ピット12を造成し、該貯留ピット12の近傍に排泥処理プラント15を設置しておく。実施工では、改良杭10の造成に伴い、攪拌軸25に沿って地表部に上昇排出される排泥(セメント−水−土の混合物で、前記噴射口からの噴射量に比例した量)が連絡溝11を通じて貯留ピット12内に貯留される。そして、貯留ピット12内に一時貯留された排泥は、排泥処理プラント15に取り入れられ、該排泥処理プラントで各種処理を行うことにより、水分分離された後、ベルトコンベア16を介してダンプトラックなどの運搬車両17に移し替えられ、産業廃棄物として運搬車両17により運送排出される。
【0014】
また、図2は排泥処理プラントの構成を模式的に示している。排泥処理プラント15は、設備本体20と、設備本体20に凝集剤液を供給するための凝集剤液製造プラント21と、前記貯留ピット12内に投入された複数の小型水中ポンプ22(図では1つのみ示している)と、ポンプ22に接続された中継槽23と、中継槽23内にあって、ここに集積された排泥を設備本体20に供給する第2の水中ポンプ24などを備えている。
【0015】
設備本体20には、ポンプ24及び凝集剤液製造プラント21から供給される排泥と凝集剤液を適宜の混合比で混練する混練装置25と、混練装置25の排出端下部に配置された振動式分級装置26と、振動式分級装置26の排出端下部に配置された加圧式分級装置27と、これら各装置及び凝集剤液製造プラント21、ポンプ22や23を連繋させつつ駆動制御するための制御盤(制御装置)28とを具備している。なお、制御盤28と前記各装置とは、破線で例示されるような電気信号線により接続されている。
【0016】
ここで、貯留ピット12内に投入されている小型水中ポンプ22は、大型ポンプを用いる場合に比べて、取扱い性に優れているとともに、ポンプ吸込み口の網径がφ2インチであり、第2のポンプ24の網径φ3インチに比べて小さく、これによって排泥を吸引した時点で、排泥中に混在するゴミ、ガラ、砂利、土塊等の粗粒成分は濾過される。しかし、このようにすると配管抵抗が上がる。そこで、この形態では、図2の一部に拡大して示すように、配管22a中にエアノズル22bを挿入し、該エアノズル22b中に図示しない気体供給手段からの加圧空気を注入して空気輸送することで、ポンプ22の駆動能力が小さくても、流動抵抗を小さくして中継槽23まで連続輸送可能になるようしている。
【0017】
(凝集剤液)凝集剤製造プラント21は、処理方法により異なるが以下に示す凝集剤液を作液することができるが、必ずしも本凝集剤液に限定されるものではない。
(1)一液型凝集剤の作液方法及び処理方法
水道水100重量部に対し、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの少なくとも一種類以上の無機塩を1重量部〜5重量部の範囲で溶解した溶液にアクリルアミド/ジメチルアミノエチルメタリレート塩化メチル4級塩共重合物とアクリルアミドアクリル酸ソーダ共重合物の混合物(テルフロックTG;株式会社テルナイト社製品)を0.5重量部から2.0重量部の範囲で添加したポリマー溶液を作液する。そして、本ポリマー水溶液に含まれるテルフロックTGを粉末換算でセメント混じり排泥中に含まれる乾燥固形分当り0.20〜0.40w/w%の添加率になるように添加、攪拌混合し、カンテン状凝集物を形成せしめる。
(2)二液型凝集剤の作液方法及び処理方法
二液型凝集剤を用いて処理する場合の凝集剤製造プラント21に於ける作液は、ポリマー水溶液のみの作液になる。一方で使用する無機凝集剤は、液体品であるため、そのまま、混練装置25で添加するか、或いは、一旦、別のタンクで希釈して、混練装置25で添加する。ポリマー溶液は、水道水100重量部に対し、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの少なくとも一種類以上の無機塩を0重量部〜1.0重量部の範囲で溶解した溶液にポリアクリルアミド加水分解物、アクリルアミドアクリル酸ソーダ共重合物、(テルフロックAH、HS-916;株式会社テルナイト社製品)ポリアクリル酸ナトリウム、ポリアクリレートの粉末品或いは逆相エマルジョン品を0.5から1.5重量部の範囲で添加し、本ポリマー水溶液に含まれる高分子凝集剤を粉末換算でセメント混じり排泥中に含まれる乾燥固形分当り0.10〜0.40w/w%の添加率になるように添加、攪拌混合し、高粘性のカンテン状物を形成せしめた後、ポリ塩化アルミニウム、硫酸バンド溶液を0.10から9.0重量部を添加、攪拌混合し、カンテン状凝集物を形成せしめる。
また、具体例として、上述した何れの処理方法においても100m/1日の排泥を処理する場合には、凝集剤液が20m程度必要となるなど、処理対象の排泥総量に比例して凝集剤液の使用量も多くなる。一般的には凝集剤液を工場で製造して現場に持ち込んでいる。しかし、以上のように使用量が多い場合には、工事現場で製造する方が品質及びコスト的に有利となる。
【0018】
図3は凝集剤液製造プラント21で凝集剤液を製造する手順例を示している。この製造では、最初に、水と無機塩を混合し、所要量の無機塩水溶液を作る。その攪拌時間は10sec以上である。次に、無機塩水溶液に凝集剤を順次添加して溶解させる。なお、この製造では、例えば、凝集剤を急激に溶解させると、ゲル化して、いわゆるダマを作り、均一な凝集剤液にならないので、例えば、凝集剤を少しづつ無機塩水溶液に添加して、所要濃度にまで上げることが好ましい。所定濃度に達した後は、全体を攪拌しつつ養生を行う。養生時間は2時間程度であり、養生後は粘調な液となる。養生後は、排泥処理作業に連動して配管系を通じて設備本体20側へポンプ圧送する。
【0019】
(製造装置)図4は、図3の製造手順をベースとした本発明の製造方法を実施する上で好適な製造プラント(装置)を示している。すなわち、同図の製造プラント21は、水源となる水槽30と、一時貯留用液槽31と、上両側に略円筒状の供給口32a、32bを有した横型ミキサー32と、ミキサー32の上側左右に配置された助剤供給手段33及び凝集剤供給手段34と、ミキサー32の片側に配置された攪拌タンク35とを備えている。
【0020】
水槽30は、槽内の水をポンプ50と配管53及び該配管途中に設けられた流量弁等を介してミキサー32の一方供給口32aへ所定流量で導入可能になっている。液槽31は、槽内が隔壁36によりミキサー32の真下に位置している第1液槽37と、攪拌タンク35の下部側に位置している第2液槽38に区画されている。第1液槽37は、ミキサー32内の液を後述する排出部に設けられバルブ42,43を介して受け入れて貯留するとともに、槽内に貯留した液をポンプ51及び配管54等を介して撹拌タンク35の上側入口に移送可能となっている。第2液槽38は、撹拌タンク35内の液を下側出口及び該出口に設けられたバルブ46を介して受け入れて貯留するとともに、槽内に貯留した液をポンプ52及び配管55等を介してミキサー32の他方供給口32bに移送可能となっている。
【0021】
ミキサー32は、ミキサー室両側で枢支した状態に設けられ、攪拌翼39を略等間隔で複数軸装した回転軸40を有している。該回転軸40は、図示しない駆動モータ及び減速機構等を介して任意の早さで回転調整可能となっている。ミキサー32の下両側には、排出部及び該排出部に設けられバルブ42,43が設けられている。また、供給口32aと配管53との接続部、及び供給口32bと配管55との接続部は、図4の上側部分に断面して示したように、各管端を円筒内の内周接線方向に接合しており、水又は液が供給口32a,32b内で吐出されると、渦巻き状のサイクロン流を生じつつミキサー32内に導入されるようになっている。つまり、この構成は、水をサイクロン流で供給しつつ供給手段33から助剤を混入したり、混合溶液(助剤液と凝集剤)をサイクロン流で供給しつつ供給手段34から凝集剤粉を混入することで、初期段階から混合度を高めるようにする。
【0022】
攪拌タンク35は、縦型であり、複数の攪拌翼44を軸装した回転軸45を有している。回転軸45は、中心上下方向に配置され、上部に設けられたモータMに連繋して回転可能となっている。下部一側部には、第2液槽38に対応して排出部及びバルブ46が設けられている。また、下端には、コンプレッサ48が流量制御系などを介して接続されている。該コンプレッサ48は、圧縮空気をタンク内に送って初期の空気攪拌を行うとともに、例えば、タンク内容量が少ない状態になったときにも用いられる。
【0023】
(製造方法)次に、以上の製造プラント21を用いた凝集剤液の製造手順を説明する。この製造方法では、助剤(助剤粒子又は助剤粉)と水とを混合して所定量の助剤液を作る助剤液作成工程と、前記助剤液の一部をミキサー32内に供給すると同時に、ミキサー32内に凝集剤粉を適量づつ供給し前記助剤液に混合溶解する凝集剤混合工程と、ミキサー32内の混合溶液をミキサー32外に排出して前記助剤液の残部に混合した後、その混合溶液の一部を再びミキサー32に供給すると同時に、前記凝集剤混合工程と同様な混合溶解作業を順に繰返すことで所定濃度まで高めた凝集剤液を作る濃度調整工程と、前記凝集剤液を攪拌しつつ所要粘度まで養生する養生工程とを経る。
【0024】
詳述すると、助剤液作成工程では、ミキサー32のバルブ42,43を閉じ、ポンプ50を駆動して調整された水流で水を供給口32aに流しつつ、供給手段33を駆動してその水流に応じた供給量で順次助剤(塩化カルシウムで、粉又は粒子)を供給口32aの渦流中心位置に落下させる。これによって、助剤は、サイクロン流により水に強制的に混合され、次いでミキサー32内の攪拌翼39によりさらに均一に混合される。この操作は設計上の助剤液総量に達するまで行われる。また、供給口32aとは逆側のバルブ42を開け、タンク室内から作成された助剤溶液を一旦第1液槽37内に排出するとともに、第1液槽37に貯まった助剤液をポンプ51により、攪拌タンク35内に移送する。なお、攪拌タンク35は、回転軸45が回転されており、収容された助剤液について引続き溶解操作(水に対する助剤の溶解)を継続して行う。
【0025】
助剤液の作成後は凝集剤混合工程及び濃度調整工程が連続して行われる。すなわち、この工程では、ミキサー32の排出側バルブ42,43を閉じ、又、攪拌タンク35のバルブ46を開けて助剤液の一部を第2液槽38に移し、該液槽38内の助剤液をポンプ52により配管55及び供給口32bを通じてミキサー32内に流しつつ、供給手段34を駆動して凝集剤粉をその渦流中心位置に落下供給させる。これによって、凝集剤は、サイクロン流により助剤液に強制的に混合され、次いでミキサー32内の攪拌翼39の回転によりさらに均一に混合される。なお、凝集剤粉は、上述したごとく溶け難いため、例えば、前記サイクロン流の流速を速く、かつ時間当りの供給量を少なく設定する必要がある。したがって、濃度調整工程では、ミキサー32の一作業毎の作液濃度は薄いが、作液後は供給口32bとは反対側のバルブ43を開けて第1液槽37内に排出し、直ちにポンプ51を通じて攪拌タンク35内に戻し、残部の助剤液に攪拌混合することで、一作業毎に順次目標とする濃度に近づくようにする。
【0026】
以上の攪拌混合作業を繰返し、所定の濃度到達したら、養生工程が行われる。この工程では、作成された凝集剤液の全てを攪拌タンク35内に移すよう操作され、攪拌タンク35内で凝集剤液をさらに2時間程度、攪拌養生を行う。この攪拌養生中に作液された凝集剤液は、反応進行して増粘し、排泥処理用凝集剤液として使用可能となる。その後は、例えば、攪拌タンク35のバルブ46を図示省略した貯留タンク内に接続し、該貯留タンク内に移送すれば、一回の作液作業が完了し、再び助剤液の作液と、引続く凝集剤液の作液を一日の必要量となるまで繰返す。また、作成された凝集剤液は、上記した混練装置25側に供給されることになる。このような、製造プラントでは、助剤液の作液も同一のミキサー32を共用でき、製造装置ないしは設備を小型化できる利点がある。
【0027】
(排泥処理設備及び処理方法)図5と図6は、以上作成された凝集剤液を使用する排泥処理プラント(設備)15の一例を示している。この設備本体20は、矩形立体枠状のフレーム60上にあって、最上段に前述の混練装置25を配置するとともに、その先端下部に位置して混練装置の25の長手方向と直交して振動式分級装置26を配置し、更に分級装置26の排出端下部に位置して該分級装置26と略平行して加圧式分級装置27を配置している。また、フレーム60には、点検等で使用される階段60aが一側部に設けられているとともに、混練装置25の下側スペースに制御盤28などを配置している。
【0028】
そして、この排泥処理操作では、上記した一液型凝集剤を用いる場合、処理対象の排泥を、ほぼ定量ずつ、且つ凝集液を同時に加えつつ混練装置25に導入して練り混ぜることで、ほぼカンテン状の凝集物に処理できる。一方、二液型凝集剤を用いて処理する場合は、処理対象の排泥を、ほぼ定量ずつ、かつポリマー水溶液を同時に加えつつ混練装置25に導入して練り混ぜ、混練装置25の出口部分で、無機凝集剤の水溶液を添加し、混合することにより、ほぼカンテン状の凝集物に処理できる。その後、カンテン状凝集物を後述する混合装置の排出部から下側の振動式分級装置26に落下する。分級装置26では、受け止めた凝集物に振動を加えて当該凝集物から水分の一部を分離しつつ、凝集物を加振方向である装置一端側から他端側へ移送して、不図示のガイドシュート内に落下し、該ガイドシュートを介して加圧式分級装置27に投入可能にする。分級装置27では、分級装置26で水分の一部を分離除去した凝集物を内部に受け入れるとともに、ピストン方式でその凝集物を圧縮して強制的に脱水することで略ペレット状の硬固化体に処理し、前開口を閉じている蓋を開操作することでその硬固化体を外部に押し出す。押し出された硬固化体は、上述した図2のベルトコンベア16を介して運搬車両等に移し替えられる。また、分級装置26と27で脱水された水は、各分級装置26と27の下方へ流下し、不図示の水槽などに貯留された後、外部に放流されるか、或いは前記セメントミルク製造プラント1や凝集剤液製造プラント21の水つまり図4の水槽30に送られて循環使用される。以上のようにして、形態例の排泥処理方法では、処理対象の排泥がペレット状の硬固化体に処理されることで、容積及び重量共に大幅に圧縮され、減容化及び減量化を達成できる。
【0029】
なお、以上の形態例は本発明を何ら制約するものではない。本発明は、請求項1や5で特定される技術要素を備えておればよく、細部は必要に応じて種々変更可能なものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】工事現場で行われる排泥処理法の全体の流れを示す説明図である。
【図2】上記排泥処理方法と凝集剤液との関係を示す説明図である。
【図3】上記凝集剤液を作る製造手順を示す流れ図である。
【図4】上記凝集剤液の製造装置を模式的に示す構成図及びA−A線断面図である。
【図5】上記排泥処理法に適用される排泥処理設備を示す平面図及び正面図である。
【図6】上記排泥処理設備の背面図と左側面図である。
【符号の説明】
【0031】
20…設備本体
21…凝集剤液製造プラント(装置)
25…混練装置(手段)
26…振動式分級装置(手段)
27…加圧式分級装置(手段)
30…水槽
31…液槽(37は第1液槽、38は第2液槽)
32…ミキサー(32a,32bは供給口、42,43は排出部のバルブ)
33…助剤用供給手段
34…凝集剤用供給手段
35…攪拌タンク(46は排出部のバルブ)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
凝集剤と助剤と水とからなり、処理対象の排泥に所定割合で添加混合されることで、前記排泥を略カンテン状の凝集物に処理可能な凝集剤液の製造方法において、
前記助剤と水とを混合して所定量の助剤液を作る助剤液作成工程と、
前記助剤液作成工程で作られた助剤液の一部をミキサー室に供給するとともに、前記ミキサー室に前記凝集剤粉を適量づつ供給し前記助剤液に混合溶解する凝集剤混合工程と、
前記凝集剤混合工程で作られた混合溶液を前記ミキサー室外に排出して前記助剤液の残部に混合した後、その混合溶液の一部を再び前記ミキサー室に供給するとともに、前記凝集剤混合工程と同様な混合溶解作業を順に繰返すことにより、所定濃度まで高めた凝集剤液を作る濃度調整工程と、
前記濃度調整工程で作られた凝集剤液を攪拌しつつ所要粘度まで養生する養生工程
とを経ることを特徴とする排泥処理用凝集剤液の製造方法。
【請求項2】
前記凝集剤混合工程では、前記助剤液作成工程で作られた助剤液の一部を前記ミキサー室の供給口側でサイクロン流を生じさせつつミキサー室内に供給し、かつ前記サイクロン流に前記凝集剤粉を適量づつ供給する請求項1に記載の排泥処理用凝集剤液の製造方法。
【請求項3】
前記助剤液作成工程は、前記ミキサー室に前記水及び助剤を供給して助剤液を作った後、前記ミキサー室外へ一旦排出する請求項1に記載の排泥処理用凝集剤液の製造方法。
【請求項4】
前記水を前記ミキサー室の供給口側でサイクロン流を生じさせつつミキサー室内に供給し、かつ前記サイクロン流に前記助剤を適量づつ供給する請求項3に記載の排泥処理用凝集剤液の製造方法。
【請求項5】
請求項1から4の何れかに記載の製造方法に用いられて、
ミキサー室と前記ミキサー室の上側に設けられた供給口及び前記ミキサー室の下側に設けられ排出口を有した横型ミキサーと、
上側に設けられた供給口及び下側に設けられた排出口を有した攪拌タンクと、
前記ミキサーの供給口に対し前記助剤を供給する助剤供給手段及び前記凝集剤粉を供給する凝集剤供給手段並びに水を供給する水供給手段と、
前記ミキサー室で作られた混合溶液をミキサー排出口から入れる第1液槽及び前記第1液槽内の混合溶液を前記攪拌タンクの供給口に送る第1移送手段と、
前記攪拌タンクで攪拌された混合溶液をタンク排出口から入れる第2液槽及び前記第2液槽内の混合溶液を前記ミキサーの供給口に送る第2移送手段
とを備えていることを特徴とする排泥処理用凝集剤液の製造装置。
【請求項6】
前記ミキサーは、前記供給口を離れた2カ所に有し、一方の供給口に対し前記水供給手段から水を供給したり前記助剤供給手段から助剤を供給し、他方の供給口に対し前記第2移送手段から第2液槽内の混合溶液を供給したり前記凝集剤供給手段から凝集剤粉を供給する請求項5に記載の排泥処理用凝集剤液の製造装置。
【請求項7】
前記供給口が略円筒状をなしているとともに、前記水供給手段及び第2移送手段が前記供給口の円筒形内周方向へ水や混合溶液を噴射することでサイクロン流をそれぞれ形成可能になっている請求項5又は6に記載の排泥処理用凝集剤液の製造装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−7549(P2007−7549A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191468(P2005−191468)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000236610)株式会社不動テトラ (136)
【出願人】(390026446)株式会社テルナイト (17)
【Fターム(参考)】